(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158572
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】細胞凍結保存装置
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20221006BHJP
C12N 1/04 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063567
(22)【出願日】2021-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.発行日 令和 2年 5月27日 2.刊行物 ロボティクス・メカトロニクス 講演会 2020 in Kanazawa 要旨 https://www.dropbox.com/s/h65nj0ukdmge390/ROBOMECH2020proceedings.zip?dl=0 https://drive.google.com/file/d/1b27xD_AHSQWsVkqzKaCSrSYH0dwbrabq/view?usp=sharing 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機 [刊行物等] 1.開催日 令和 2年 5月27日~令和 2年 5月30日 2.集会名、開催場所 ロボティクス・メカトロニクス講演会 2020 in Kanazawa 発表 https://robomech.org/2020/onlineconf/(オンライン開催) 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機 [刊行物等] 1.発行日 令和 2年 9月16日 2.刊行物 Cryobiology Volume 96,October 2020,Pages 12-18 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0011224020302364?dgcid=author 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機 [刊行物等] 1.開催日 令和 2年 7月21日~令和 2年 7月23日 2.集会名、開催場所 CRYO2020,the 57th Annual Meeting of the Society for Cryobiology https://cryo2020.com/(オンライン開催) 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機 [刊行物等] 1.発行日 令和 2年 7月16日 2.刊行物 CRYO2020,the 57th Annual Meeting of the Society for Cryobiology https://cryo2020.com/ (webのみにて公開) 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [刊行物等] 1.開催日 令和 2年11月26日~令和 2年11月27日 2.集会名、開催場所 Cryopreservation Conference 2020 発表 https://ibbp.jp/cryoconf2020/(オンライン開催) 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機 [刊行物等] 1.発行日 令和 2年11月20日 2.刊行物 Cryopreservation Conference 2020 https://ibbp.jp/cryoconf2020/(オンライン公開) 3.公開者 秋山 佳丈、渡部 広機
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】597128004
【氏名又は名称】国立医薬品食品衛生研究所長
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】秋山 佳丈
(72)【発明者】
【氏名】渡部 広機
(72)【発明者】
【氏名】諫田 泰成
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 弘人
(72)【発明者】
【氏名】八巻 和正
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B065AA91X
4B065AA93X
4B065BD09
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞を含んだ微小液滴を容器に回収する際の細胞生存率を上昇させることが可能な、細胞凍結保存装置を提供する。
【解決手段】細胞凍結保存装置は、細胞入りの液滴を滴下する滴下装置11と、滴下装置から滴下された液滴を運搬する運搬体12と、運搬体を回転軸の周りに回転させ、反転させる回転機構13と、液滴を冷却するための冷媒を収容した冷却容器14と、運搬体によって運搬された液滴を回収する回収容器15と、を備える。滴下装置から滴下された液滴は、冷媒によって運搬体上で凍結される。運搬体は、回転機構によって回転されることにより、凍結された液滴を回収容器に向けて運搬する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞入りの液滴を滴下する滴下装置と、
前記滴下装置から滴下された前記液滴を運搬する運搬体と、
前記運搬体を回転軸の周りに回転させ、反転させる回転機構と、
前記液滴を冷却するための冷媒を収容した冷却容器と、
前記運搬体によって運搬された前記液滴を回収する回収容器と、を備え、
前記滴下装置から滴下された前記液滴は、前記冷媒によって前記運搬体上で凍結され、 前記運搬体は、前記回転機構によって回転されることにより、凍結された前記液滴を前記回収容器に向けて運搬する、細胞凍結保存装置。
【請求項2】
前記回転軸は、平面視で、前記液滴が滴下される領域の外側に位置する、請求項1に記載の細胞凍結保存装置。
【請求項3】
前記回転軸は、平面視で、前記液滴が滴下される領域内に位置する、請求項1に記載の細胞凍結保存装置。
【請求項4】
前記回収容器は、前記冷却容器内に位置する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の細胞凍結保存装置。
【請求項5】
前記運搬体の材料は、アルミニウム、チタン、チタン系合金又はアルミナである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の細胞凍結保存装置。
【請求項6】
前記回収容器の中心軸は、鉛直方向に対して傾いている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の細胞凍結保存装置。
【請求項7】
前記冷却容器は、蓋によって覆われ、前記蓋のうち、前記液滴が通過する部分には、開口が形成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の細胞凍結保存装置。
【請求項8】
前記運搬体上には、基材が配置され、前記液滴は前記基材上に堆積される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の細胞凍結保存装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞凍結保存装置に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の凍結保存技術は、細胞を取り扱う多くの研究分野及び臨床医療において必要不可欠な技術のひとつである。細胞をそのまま通常の速度で凍結すると、凍結過程において細胞内外の水分子が結晶化し、これが細胞膜や細胞小器官を傷つけることにより、細胞に致死的ダメージを与える。そのため既存の凍結手法では、ジメチルスルホキシド(DMSO)やグリセロールなどの凍結保護剤(CPA)を添加し、細胞内部の水分子の結晶化を抑制しガラス化状態にすることで凍結保存を実現していた。しかし、凍結保護剤の細胞毒性や、凍結過程における細胞内部への浸透圧差による脱水作用が問題視されている。
【0003】
これに対して近年、細胞を含んだ微小液滴を瞬間凍結することにより、凍結保護材を用いることなく細胞を凍結保存する技術が開発されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y. Akiyama et al., “Cryoprotectant-free cryopreservation of mammalian cells by superflash freezing,” Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 116(16), pp.7738-7743, 2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献では、凍結させた微小液滴を容器に回収する工程を手作業にて行っている。このように微小液滴を容器に回収する作業を手作業で行うと、容器へ回収するまでの間に液滴の温度が上昇し、細胞内外の水分子が急速に結晶化するために細胞生存率が低下してしまうことがある。
【0006】
本開示は、細胞を含んだ微小液滴を容器に回収する際の細胞生存率を上昇させることが可能な、細胞凍結保存装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施の形態による細胞凍結保存装置は、細胞入りの液滴を滴下する滴下装置と、前記滴下装置から滴下された前記液滴を運搬する運搬体と、前記運搬体を回転軸の周りに回転させ、反転させる回転機構と、前記液滴を冷却するための冷媒を収容した冷却容器と、前記運搬体によって運搬された前記液滴を回収する回収容器と、を備え、前記滴下装置から滴下された前記液滴は、前記冷媒によって前記運搬体上で凍結され、前記運搬体は、前記回転機構によって回転されることにより、凍結された前記液滴を前記回収容器に向けて運搬する。
【0008】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記回転軸は、平面視で、前記液滴が滴下される領域の外側に位置しても良い。
【0009】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記回転軸は、平面視で、前記液滴が滴下される領域内に位置しても良い。
【0010】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記回収容器は、前記冷却容器内に位置しても良い。
【0011】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記運搬体の材料は、アルミニウム、チタン、チタン系合金又はアルミナであっても良い。
【0012】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記回収容器の中心軸は、鉛直方向に対して傾いていても良い。
【0013】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記冷却容器は、蓋によって覆われ、前記蓋のうち、前記液滴が通過する部分には、開口が形成されても良い。
【0014】
本実施の形態による細胞凍結保存装置において、前記運搬体上には、基材が配置され、前記液滴は前記基材上に堆積されても良い。
【発明の効果】
【0015】
本実施の形態によれば、細胞を含んだ微小液滴を容器に回収する際の細胞生存率を上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施の形態による細胞凍結保存装置を示す垂直断面図である。
【
図2】一実施の形態による細胞凍結保存装置を示す平面図である。
【
図3】実施例1、比較例1及び比較例2との間で細胞生存率を比較したグラフ(
図3(a))及び実施例2、比較例3及び比較例3との間で細胞生存率を比較したグラフ(
図3(b))である。
【
図4】第1の変形例による細胞凍結保存装置を示す垂直断面図である。
【
図5】第2の変形例による細胞凍結保存装置を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら一実施の形態について具体的に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものである。そのため、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために、適宜誇張している。また、技術思想を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、以下に示す各図において、同一部分には同一の符号を付しており、一部詳細な説明を省略する場合がある。また、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名は、実施の形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。本明細書において、形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば平行や直交、垂直等の用語については、厳密に意味するところに加え、実質的に同じ状態も含むものとする。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
【0018】
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施の形態による細胞凍結保存装置の構成について説明する。
図1は、本実施の形態による細胞凍結保存装置10を示す垂直断面図であり、
図2は、本実施の形態による細胞凍結保存装置10を示す平面図である。
【0019】
本実施の形態による細胞凍結保存装置10は、ジメチルスルホキシド(DMSO)やグリセロールなどの凍結保護剤(CPA)を用いることなく、細胞Cを凍結保存することを可能にする装置である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、細胞凍結保存装置10は、滴下装置11と、運搬体12と、回転機構13と、冷却容器14と、回収容器15と、を備えている。このうち滴下装置11は、細胞C入りの液滴Dpを運搬体12側に向けて滴下する。運搬体12は、滴下装置11から滴下された液滴Dpを運搬する。回転機構13は、運搬体12を第1回転軸A1の周りに回転させる。冷却容器14には、液滴Dpを冷却するための冷媒L1が収容されている。回収容器15は、運搬体12によって運搬された液滴Dpを回収する。このような細胞凍結保存装置10において、滴下装置11から滴下された液滴Dpは、冷媒L1によって運搬体12上で凍結される。その後、運搬体12は、回転機構13によって回転されることにより、凍結された液滴Dpを回収容器15に向けて運搬する。
【0021】
次に、細胞凍結保存装置10の詳細な構成について更に説明する。
【0022】
滴下装置11は、上述したように、細胞C入りの液滴Dpを運搬体12側に向けて滴下するものであり、例えばインクジェット技術を用いたインクジェットヘッドであってもよい。この場合、滴下装置11は、筒状のノズル16を有している。滴下装置11は、冷却容器14の上方に配置され、ノズル16の先端が、滴下位置(後述)にある運搬体12の鉛直方向上方に位置する。滴下装置11には、多数の細胞Cを内包した細胞懸濁液が収容される。ノズル16からは、この細胞懸濁液が液滴Dpとなって1滴ずつ吐出し、重力によって落下して運搬体12上に配置された基材17上に堆積される。ノズル16の内径は、例えば10μm以上80μm以下としても良く、40μm以上60μm以下とすることが好ましい。各液滴Dpには、1つの細胞Cが内包されているが、これに限らず、複数の細胞Cが内包されていても良い。各液滴Dpのサイズは微小であり、例えば、20pL以上200pL以下としても良く、30pL以上100pL以下とすることが好ましく、約40pLとすることが更に好ましい。
【0023】
運搬体12は、滴下装置11から滴下された液滴Dpを保持するとともに、液滴Dpを回収容器15に向けて運搬するものである。この場合、運搬体12には、平面視で矩形状の基材17が保持され、基材17上に液滴Dpが堆積される。基材17は、例えばガラス基板であっても良く、可撓性を有する樹脂フィルムであっても良い。基材17がガラス基板である場合、その厚みは例えば1μm以上500μm以下としても良く、3μm以上150μm以下とすることが好ましい。基材17が樹脂フィルムである場合、その厚みは例えば1μm以上100μm以下としても良く、20μm以上50μm以下とすることが好ましい。このように、運搬体12上に基材17を配置することにより、例えば金属製の運搬体12と細胞Cとの直接の接触を防ぎ、細胞生存率を向上させることができる。また、液滴Dpを回収容器15に回収する際の回収率を向上させることができる。
【0024】
運搬体12は、基材17を保持する基材保持部18と、基材保持部18に連結された延伸部19とを有する。
【0025】
基材保持部18には、基材17を収容する凹部21が設けられている。基材保持部18に凹部21が設けられていることにより、基材保持部18上で基材17の位置がずれることを抑制することができる。また凹部21の深さd1は、基材17の厚みよりも厚くしても良い。この場合、凹部21内の空間に冷気を滞留させ、運搬体12の回転中に液滴Dpの温度が上昇することを抑制することができる。一例として、凹部21の深さd1は、0.5mm以上5mm以下としても良い。また基材17は、基材保持部18に対して第2回転軸A2を中心として回転自在となっている。第2回転軸A2は、基材17のうち、第1回転軸A1から遠い側に位置する。第2回転軸A2は、第1回転軸A1に対して平行に延びていても良い。なお、基材17を介することなく、運搬体12上に直接液滴Dpを滴下しても良い。
【0026】
延伸部19は、基材保持部18から側方(水平方向)に延びている。また延伸部19は、冷却容器14に固定されたヒンジ保持部22に第1回転軸A1を中心として回転自在に取り付けられている。延伸部19は基材保持部18と一体となって、ヒンジ保持部22に対して第1回転軸A1を中心として回転する。第1回転軸A1は、平面視で(基材17の法線方向から見て)、液滴Dpが滴下される領域の外側に位置している。この場合、第1回転軸A1は、平面視で基材17よりも外側であって、冷却容器14の外壁25よりも内側に位置している。なお、本実施の形態において、液滴Dpが滴下される領域とは、基材17上の領域である。
【0027】
また運搬体12は、冷媒L1によって冷却されている。これにより、滴下装置11から滴下され、基材17上に堆積した液滴Dpを凍結することができる。この場合、液滴Dpに含まれる細胞Cの内外に存在する水分子は、結晶化する前にガラス転移温度(Tg:-137℃)以下まで冷却され、ガラス化状態にされる。これにより液滴Dpは、冷媒L1によって運搬体12上で凍結される。このため運搬体12は、熱伝導率が高く、細胞毒性がない材料を用いることが好ましい。例えば、運搬体12の材料としては、アルミニウム、チタン、チタン系合金等の金属又はアルミナ等のセラミックスを用いても良い。運搬体12の最も厚い部分における厚みは、例えば1mm以上10mm以下としても良い。
【0028】
運搬体12は、上述したように第1回転軸A1の周りに回転可能であり、これにより回転前の滴下位置(
図1の実線)と、回転後の回収位置(
図1の右側の仮想線)とをとることができる。運搬体12が滴下位置にある場合、基材17の表面は水平位置にある。このため、滴下装置11から滴下された液滴Dpを基材17上に堆積することができる。一方、運搬体12が第1回転軸A1の周りに回転し、回収位置に移行したとき、基材17が回収容器15の上方に移動する。このとき、基材17の表面(液滴Dpが堆積した面)が、鉛直方向略下方を向く。このため、基材17上に存在する凍結された液滴Dpを回収容器15に向けて落下させることができる。運搬体12は、滴下位置と回収位置との間で、第1回転軸A1の方向から見て、120°以上210°以下の回転角度で回転しても良く、150°以上190°以下の回転角度で回転しても良く、180°の回転角度で回転しても良い。
【0029】
回転機構13は、運搬体12を第1回転軸A1の周りに回転させる機構である。本実施の形態において、回転機構13は、第1回転軸A1の周りに設けられたヒンジバネである。この場合、ヒンジバネからなる回転機構13は、延伸部19とヒンジ保持部22とを連結している。また回転機構13は、運搬体12が回収位置(
図1の右側の仮想線)側に回転するように弾性力を付与する。すなわちヒンジバネからなる回転機構13は、バネに蓄えられたエネルギーを利用して、運搬体12を自動的に回転させる機構である。またヒンジバネのトルクを調整することで運搬体12の回転速度を制御することができる。
【0030】
冷却容器14には、さらにロック機構23が設けられている。ロック機構23は、運搬体12を滴下位置にロックするロック位置(
図1の実線)と、運搬体12を解放し、運搬体12を回収位置側に回転可能にする解放位置(
図1の仮想線)とをとることができる。ロック位置において、ロック機構23は、運搬体12を上方から係止する。これにより、運搬体12は、回転機構13の弾性力に抗して、回転することなく滴下位置に保持される。一方、解放位置において、ロック機構23は運搬体12に対してずらされ、運搬体12との係止が解除される。これにより、回転機構13の弾性力によって運搬体12が回転し、運搬体12が回収位置に向けて回転移動する。
【0031】
なお、回転機構13は、運搬体12を第1回転軸A1の周りに回転させることができるものであれば良く、ヒンジバネに限られるものではない。回転機構13としては、例えばモーター等の駆動装置を用いても良い。
【0032】
冷却容器14は、液状の冷媒L1を収容する容器である。冷却容器14は、底部24と、底部24から上方に延びる外壁25とを有する。冷却容器14に収容される冷媒L1は、運搬体12上に堆積した液滴Dpを冷却するためのものである。冷媒L1としては、例えば液体窒素(沸点-196℃)等を用いることができる。冷却容器14は、断熱性の高い材料から作製されることが好ましい。冷却容器14の材料としては、例えばポリスチレン発泡体又はポリウレタン発泡体等の発泡断熱材を用いても良い。この場合、冷媒L1の蒸発を抑制することができる。あるいは、冷却容器14としては、ステンレス製のデュワー瓶等の断熱性容器を用いても良い。
【0033】
冷却容器14内には、土台26が配置されている。土台26は、冷媒L1内に浸漬されることにより冷却されている。土台26は、滴下位置にある回転機構13を保持するとともに、冷媒L1による回転機構13の冷却を促進するものである。このため、土台26は、熱伝導率が高い材料を用いることが好ましい。土台26の材料としては、例えばアルミニウム、チタン、チタン系合金等の金属又はアルミナ等のセラミックスを用いても良い。なお、このような土台26を用いることなく、運搬体12の下面を直接冷媒L1に浸漬させても良い。
【0034】
また冷却容器14は、板状の蓋27によって覆われている。蓋27は、可撓性を有さない板状のものであっても良く、可撓性を有するフィルム状のものであっても良い。蓋27のうち、液滴Dpが通過する部分には、開口28が形成されている。開口28は、液滴Dpが滴下される領域、例えば基材17に対応する領域に設けられていても良い。蓋27は、冷却容器14から除去可能となっており、運搬体12を滴下位置から回収位置まで回転させる前に冷却容器14から取り除かれる。冷却容器14が蓋27によって覆われていることにより、運搬体12の周囲の温度を例えば-190度以下に保持し、着適した液滴Dpの温度を急激に低下させることができる。
【0035】
冷却容器14は、直動ステージ29上に配置されている。直動ステージ29は、冷却容器14を水平方向(鉛直方向に対して垂直な平面方向)に沿って平行に移動させるものである。直動ステージ29を用いて冷却容器14を水平移動させることにより、冷却容器14上に位置する運搬体12及び基材17も一体となって移動する。この場合、滴下装置11から液滴Dpが1滴ずつ滴下するごとに、運搬体12及び基材17を移動させても良い。これにより、滴下装置11から滴下された液滴Dpが他の液滴Dpと重なることなく、複数の液滴Dpを基材17上に互いに間隔を空けて配置することができる。このような直動ステージ29としては、例えば2軸自動ステージを用いることができる。なお、これに限らず、冷却容器14を固定するとともにノズル16を水平移動しても良い。あるいは、冷却容器14及びノズル16の両方をそれぞれ独立して水平移動しても良い。また、基材17に液滴Dpを1滴滴下するごとに液滴Dpを回収容器15に回収する場合には、冷却容器14及びノズル16を水平移動させなくても良い。
【0036】
回収容器15は、運搬体12によって運搬されてきた凍結された液滴Dpを回収するものである。回収容器15は、例えばキャップ付きのチューブであっても良い。回収容器15には、保存液L2が充填されている。保存液L2は、凍結した液滴Dpを解凍する解凍液であっても良い。解凍液の温度は、約37℃であってもよい。あるいは、保存液L2は、液滴Dpを凍結する凍結液であっても良い。凍結液は、例えば液体窒素により約-196℃に冷却されていてもよい。回収容器15は、冷却容器14の外方に配置されているが、これに限られるものではない。例えば保存液L2を約-196℃に冷却する場合には、回収容器15を冷却容器14内に配置し、冷媒L1に浸漬しても良い。
【0037】
回収容器15の中心軸は、鉛直方向に対して傾いている。すなわち回収容器15の開口部は、底部よりも冷却容器14側に位置する。これにより、凍結した液滴Dpを回収容器15に受け入れやすくすることができる。なお、これに限らず、回収容器15の中心軸は、鉛直方向に対して平行であっても良い。
【0038】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
【0039】
まず、運搬体12を滴下位置(
図1の実線)に配置する。このときロック機構23はロック位置(
図1の実線)にあり、運搬体12を上方から係止している。
【0040】
次に、滴下装置11のノズル16から細胞C入りの液滴Dpを運搬体12に配置された基材17に向けて滴下する。滴下装置11には、多数の細胞Cを内包した細胞懸濁液が収容され、ノズル16から細胞懸濁液が液滴Dpとなって1滴ずつ吐出される。液滴Dpは、重力によって落下して運搬体12上に配置された基材17上に堆積される。この場合、基材17は、冷媒L1によって冷却されている。このため、滴下装置11から滴下した液滴Dpは瞬時に凍結される。このとき、液滴Dpに含まれる細胞Cの内外に存在する水分子は、結晶化する前にガラス転移温度(Tg:-137℃)以下まで瞬時に冷却され、ガラス化状態にされる。このように液滴Dpを瞬時に凍結することにより、通常の凍結速度で凍結する場合と異なり、細胞膜や小器官の損傷により致死的な損傷を引き起こすおそれのある氷結晶が細胞Cの内外に発生することを抑制することができる。
【0041】
続いて、直動ステージ29を用いて冷却容器14を移動させることにより、基材17の位置を平行移動する。次いで、上記と同様にして、滴下装置11のノズル16から細胞C入りの液滴Dpを運搬体12に配置された基材17に向けて滴下する。このとき、基材17の位置は、前回液滴Dpを滴下したときの基材17の位置からずれているので、液滴Dp同士が重なることなく、複数の液滴Dpを基材17上に互いに間隔を空けて配置することができる。
【0042】
このようにして、所定数の液滴Dpを基材17上に配置した後、蓋27を冷却容器14から取り除く。次に、運搬体12を滴下位置から回収位置(
図1の右側の仮想線)側に回転する。この間、まずロック機構23をロック位置(
図1の実線)から解放位置(
図1の仮想線)に移動する。ロック機構23による係止が解除されることにより、運搬体12は、回転機構13の弾性力によって第1回転軸A1の周りに回転し、回収位置まで瞬時に移動する。運搬体12が滴下位置から回収位置に到達するまでの運搬時間は、10ms以上としても良く、20ms以上とすることが好ましい。運搬時間を上記範囲とすることにより、運搬体12の高速回転時に生じる気流の影響を低減し、回転中に液滴Dpの温度が上昇することを抑えることができる。
【0043】
運搬体12が回収位置に到達したとき、運搬体12は停止する。具体的には、例えば回転機構13がヒンジバネである場合、ヒンジバネが初期状態に戻ることにより運搬体12が停止しても良い。あるいは、運搬体12が、ヒンジ保持部22、冷却容器14及び回収容器15のいずれかに衝突することにより停止しても良い。このように運搬体12が停止した場合、運搬体12の慣性力により、基材17が第2回転軸A2を中心として回転する。これにより、基材17上の複数の液滴Dpが、回収容器15に充填された保存液L2中に落下する。
【0044】
このようにして、運搬体12が迅速に反転して、複数の液滴Dpが回収容器15内の保存液L2に回収される。運搬体12によって運搬される間、液滴Dpの温度は水のガラス転移温度(Tg:-137℃)以上に上昇することがない。このため、水のガラス転移温度(Tg:-137℃)以上に液滴Dpが温まる前に、液滴Dp内の細胞Cを急速に保存液L2に投入することができる。すなわち保存液L2が約37℃の温度の解凍液である場合、液滴Dpが水のガラス転移温度(Tg:-137℃)以上に温まる前に、液滴Dp内の細胞Cを急速に融解することができる。また、保存液L2が約-196℃の温度の凍結液である場合、液滴Dpが水のガラス転移温度(Tg:-137℃)以上に温まることなく、液滴Dp内の細胞Cを急速に凍結することができる。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、運搬体12は、回転機構13によって回転されることにより、凍結された液滴Dpを回収容器15に向けて運搬する。この場合、凍結保護剤(CPA)を用いることなく、細胞Cを迅速に回収容器15に移動して、解凍又は凍結保存することができる。とりわけ運搬体12による運搬中に細胞Cの温度がガラス転移温度(Tg:-137℃)以上に上昇することが抑えられる。このため、細胞膜や小器官の損傷により致死的な損傷を引き起こす氷結晶が、細胞Cの内外に発生することが抑制される。この結果、細胞Cの凍結及び解凍時における細胞生存率を向上することができる。
【0046】
また本実施の形態によれば、運搬体12は、回転機構13によって液滴Dpを自動で回収容器15まで運搬する。これにより、凍結させた液滴を回収容器15に回収する工程を手作業にて行う場合と比較して、手作業による条件のばらつきを低減し、細胞Cの凍結及び解凍時における細胞生存率を向上することができる。
【0047】
[実施例]
次に、本実施の形態における具体的実施例について説明する。
【0048】
(実施例1:自動解凍法)
図1に示す細胞凍結保存装置を作製した。運搬体、土台、ロック機構はそれぞれアルミニウム製のものを用いた。冷却容器としては発泡ポリスチレン製のものを使用し、その上にポリメチルメタクリレート(PMMMA)製の蓋を配置した。冷媒としては液体窒素を用いた。続いて、3T3細胞懸濁液(1.0×10
7cells/mL)をインクジェットヘッド(IJHD-100、MICROJET)内に充填し、約40pLの微小液滴内に細胞を内包した状態で吐出し、液体窒素で冷却されたガラス基材に着滴し、超瞬間凍結させた。液滴を凍結している間、運搬体は、液体窒素で冷却された土台上にロック状態で固定されていた。解凍時には、ロック機構を引っ張ることにより運搬体を解放し、ヒンジバネ(HHSP20、Misumi)からなる回転機構により運搬体を反転させた。運搬体が約180°回転したところで、液滴は運搬体から剥離し、約37℃に予温した培地を入れた5mLチューブである回収容器に落下した。
【0049】
(比較例1:手動解凍法)
解凍作業を手動で行ったこと、以外は、実施例1と同様にして、細胞入りの液滴を回収容器に投入した。この場合、液滴は、ピンセットを用いることにより、約37℃に予温した培地を含む回収容器に手動で浸漬することによって融解させた。
【0050】
(比較例2:凍結保護剤を用いた緩速凍結法)
凍結保護剤であるDMSOを用いた従来法により、細胞を凍結し、その後解凍した。この場合、細胞を10%DMSOで処理した後、クライオバイアル中で緩速凍結し、その後、クライオバイアルを37℃の水に浸漬して解凍した。
【0051】
実施例1、比較例1及び比較例2の各手法を用いて処理した細胞の生存率を、Live-Dead染色法を用いて比較した。具体的には、マウスNIH3T3線維芽細胞を、高濃度のグルコース(044-29765;和光純薬)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養し、その後10vol/vol%ウシ胎児血清(FBS)と1vol/vol%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(168-23191;和光純薬)を添加した。細胞膜はインクジェット印刷によって損傷を受けるが、数時間以内に回復するので、細胞は解凍後3時間後に染色した。細胞を細胞二重染色キット(Double Staining Kit CS01;同仁化学研究所)中で37℃の温度で15分間培養した。生細胞と死細胞をそれぞれカルセイン-AM(緑)とヨウ化プロピジウム(赤)で染色した。蛍光顕微鏡(EXLIPSTi-E;ニコン)を用いて細胞の蛍光像を記録し、生細胞と死細胞を手作業で計数した。細胞の生存率は、全細胞に対する生細胞の比率として定義した。
【0052】
実施例1による手法(自動解凍法)を用いた場合、解凍後に採取した細胞数は480個(標準偏差:184個)であった。細胞生存率は平均で84.0%であった。この値を比較例1(手動解凍法)及び比較例2(緩速凍結法)の手法と比較したものを
図3(a)に示す。実施例1による手法を用いた場合の細胞生存率は、比較例1で得られた細胞生存率よりも約9%高く、比較例2の10%DMSOを用いた緩速凍結法と同程度であった。比較例2における計数細胞数は674個(標準偏差:83.4)であった。また、実施例1による手法は、比較例1の手法に比べて再現性が向上しており、細胞生存率の標準偏差は4.1%から1.3%に低下しており、この値も比較例2の手法(2.3%)よりも低い。これらの比較から、実施例1による手法は細胞の生存率を向上させるだけでなく、再現性も向上させていることがわかる。
【0053】
(実施例2:自動解凍法)
細胞種としてヒト間葉系幹細胞(ロンザ社)を用いたこと、インクジェットヘッドから細胞を吐出する際に密度調整剤(パーコール)を用いなかったこと、以外は、実施例1と同様にして、細胞凍結保存装置を用いて、細胞入りの液滴を回収容器に投入した。
【0054】
(実施例3:自動解凍法)
ガラス基材を用いることなく、アルミニウム製の運搬体上に微小液滴を着滴させたこと、以外は、実施例2と同様にして、細胞入りの液滴を回収容器に投入した。
【0055】
(比較例3:手動解凍法)
解凍作業を手動で行ったこと、以外は、実施例2と同様にして、細胞入りの液滴を回収容器に投入した。この場合、液滴は、ピンセットを用いることにより、約37℃に予温した培地を含む回収容器に手動で浸漬することによって融解させた。
【0056】
実施例2、実施例3及び比較例3の各手法を用いて処理した細胞の生存率を、Live-Dead染色法を用いて比較した。具体的には、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)を5.0×105~6.0×105cells/cm2となるよう播種し、回収容器に液体培地(MSCGMTM(PT-3001、ロンザ社))を添加した。次に、得られた回収容器をインキュベータ内にて37℃で置き、3~4日に一度培地交換を実施し、約1週間後に継代した。その後、培地を除去し、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))を用いて十分洗浄したのち、トリプシン/EDTA(CC-3232、ロンザ社)を用いて細胞を剥離した。その後、1.0×106cells/mLになるように、液体培地(MSCGMTM(PT-3001、ロンザ社))にて懸濁した。その後、生細胞と死細胞をそれぞれカルセイン-AM(緑)とヨウ化プロピジウム(赤)で染色した。蛍光顕微鏡(EXLIPSTi-E;ニコン)を用いて細胞の蛍光像を記録し、生細胞と死細胞を手作業で計数した。細胞の生存率は、全細胞に対する生細胞の比率として定義した。
【0057】
この結果を
図3(b)に示す。実施例2による手法(自動解凍法)を用いた場合、細胞生存率は41.5%(n=1)であった。また、実施例3による手法(自動解凍法)を用いた場合、細胞生存率は45.2%(n=1)であった。一方、比較例3による手法(手動解凍法)を用いた場合、細胞生存率は26.8±4.1%(n=3)であった。これらの比較から、実施例2及び実施例3による手法(自動解凍法)を用いることにより、比較例3による手法(手動解凍法)を用いる場合と比較して、細胞の生存率を向上させることができることがわかる。
【0058】
[変形例]
次に、
図4及び
図5を参照して、本開示の各変形例について説明する。
図4及び
図5は、それぞれ本開示の変形例による細胞凍結保存装置を示す図である。
図4及び
図5において、
図1及び
図2に示す形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
(第1の変形例)
図4は、第1の変形例による細胞凍結保存装置10を示している。
図4に示すように、運搬体12がその周りを回転する第1回転軸A1は、平面視で、液滴Dpが滴下される領域内に位置している。この場合、第1回転軸A1は、平面視で、冷却容器14の外壁25よりも内側であって、基材17内を通過する。第1回転軸A1は、平面視で、運搬体12及び/又は基材17の重心を通過していても良い。なお、本変形例において、液滴Dpが滴下される領域とは、基材17に対応する領域である。
【0060】
図4において、運搬体12は、基材17を保持する基材保持部18を有する。基材保持部18の底面(基材17の反対側の面)には、回転機構13が設けられる。回転機構13により、運搬体12を第1回転軸A1の周りに回転させることができる。これにより、運搬体12は、回転前の滴下位置(
図4の実線)と、回転後の回収位置(
図4の仮想線)とをとることができる。また、回収容器15は、冷却容器14内に位置しており、液体窒素からなる冷媒L1内に浸漬されている。回収容器15内の保存液L2は、冷却容器14に収容された冷媒L1により、例えば約-196℃に冷却されている。さらに回収容器15には、回転してきた運搬体12を係止するストッパ31が設けられていても良い。
【0061】
本変形例において、所定数の液滴Dpを基材17上に配置した後、蓋27を冷却容器14から取り除く。次に、運搬体12を滴下位置から回収位置側に回転する。この間、まずロック機構23による係止が解除されることにより、運搬体12は、回転機構13の弾性力によって第1回転軸A1の周りに回転し、回収位置まで瞬時に移動する。そして運搬体12が回収位置に到達したとき、運搬体12はストッパ31に当接して停止する。運搬体12が停止した場合、運搬体12の慣性力により、基材17上の複数の液滴Dpが、回収容器15に充填された保存液L2中に落下する。このようにして、基材17が迅速に反転して、複数の液滴Dpが回収容器15内の保存液L2に回収される。
【0062】
本変形例によれば、運搬体12の第1回転軸A1が、平面視で、液滴Dpが滴下される領域内に位置する。この場合、運搬体12の位置を大きく変えることなく、運搬体12の表面と裏面とが反転するように回転させることができる。これにより、回転に伴う運搬体12の移動距離が減少するので、細胞Cの温度変化をより抑えることができる。
【0063】
(第2の変形例)
図5は、第2の変形例による細胞凍結保存装置10を示している。
図5に示すように、冷却容器14は、フレーム32上に配置されている。また回収容器15は、回収容器保持部34を介してフレーム32上に配置されている。回収容器15は、全体として箱状であり、上面に複数の凹状の収容部33を有する。各収容部33は、運搬体12が回収位置(
図5の仮想線)にあるとき、基材17上に配置された各液滴Dpに対向する位置にそれぞれ配置される。このため、各収容部33には、細胞Cが1つずつ収容される。
【0064】
本変形例において、所定数の液滴Dpを基材17上に配置する。次に、運搬体12を滴下位置から回収位置側に回転する。この間、まずロック機構23による係止を解除することにより、運搬体12は、回転機構13の弾性力によって第1回転軸A1の周りに回転し、回収位置まで瞬時に移動する。そして運搬体12が回収位置に到達したとき、運搬体12は回収容器15に当接して停止する。運搬体12が停止した場合、運搬体12の慣性力により、基材17上の複数の液滴Dpが、それぞれ回収容器15の各収容部33に充填された保存液L2中に落下する。このようにして、基材17が迅速に反転して、各液滴Dpが回収容器15の収容部33に1滴ずつ回収される。
【0065】
本変形例によれば、回収容器15は、複数の収容部33を有する。各収容部33には、細胞Cが1つずつ収容される。これにより、細胞Cを1つずつ分離して回収し、解凍又は凍結することができる。
【0066】
上記実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 細胞凍結保存装置
11 滴下装置
12 運搬体
13 回転機構
14 冷却容器
15 回収容器
16 ノズル
17 基材
18 基材保持部
19 延伸部
21 凹部
22 ヒンジ保持部
23 ロック機構
24 底部
25 外壁
26 土台
27 蓋
28 開口
29 直動ステージ