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  • 特開-車傾調整装置 図1
  • 特開-車傾調整装置 図2
  • 特開-車傾調整装置 図3
  • 特開-車傾調整装置 図4A
  • 特開-車傾調整装置 図4B
  • 特開-車傾調整装置 図4C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158576
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】車傾調整装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/0165 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B60G17/0165
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063574
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 祐希
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大治朗
(72)【発明者】
【氏名】森下 文寛
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓巳
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AB23
3D301CA10
3D301DA08
3D301DA33
3D301DA90
3D301EA48
3D301EA52
(57)【要約】
【課題】車両が坂道を下るときはエアブレーキによって車両の減速度を効果的に高めることができる車傾調整装置を提供する。
【解決手段】車両前部及び、又は車両後部の車高を調節する車高調整装置15と、車両が坂道を走行している場合且つアクセル開度が0である場合に車高調整装置15により車両を前傾させる制御部11とを備えている。制御部11は、アクセル開度が0より大きい場合は車両を前傾させない。制御部11は、ブレーキが踏まれている場合は車両を前傾させない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部及び、又は車両後部の車高を調節する車高調整装置と、
車両が坂道を走行している場合且つアクセル開度が0である場合に前記車高調整装置により車両を前傾させる制御部とを備えていることを特徴とする車傾調整装置。
【請求項2】
前記制御部は、アクセル開度が0より大きい場合は車両を前傾させないことを特徴とする請求項1に記載の車傾調整装置。
【請求項3】
前記制御部は、ブレーキが踏まれている場合は車両を前傾させないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車傾調整装置。
【請求項4】
前記車高調整装置は、車両前部を通常時よりも低くすることで車両を前傾させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかの一項に記載の車傾調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車傾調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両が平坦路から下り坂に移行するときに車両を前傾させる(車体前部の高さを低くする又は車体後部の高さを高くする)ことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-234470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は視認性の向上を目的としているため、下り坂を走行している最中においては、車両の傾きを走行路面に平行になるように戻すことが記載されている。
そのため、運転者が下り坂でエンジンブレーキを求めている局面で走行風の抵抗(エアブレーキ)を高めることで車両の減速度を高めることができなかった。
そこで、本発明の課題は、車両が坂道を下るときはエアブレーキによって車両の減速度を効果的に高めることができる車傾調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両前部及び、又は車両後部の車高を調節する車高調整装置と、車両が坂道を走行している場合且つアクセル開度が0である場合に前記車高調整装置により車両を前傾させる制御部とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両が坂道を下るときはエアブレーキによって車両の減速度を効果的に高めることができる車傾調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態にかかる車傾調整装置の全体構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる車傾調整装置の車高調整装置の車両内での配置例を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる車傾調整装置の動作を示すフローチャートである。
図4A】本発明の一実施形態にかかる車両が受ける気流や圧力を説明する車両の側面図である。
図4B図4AのA部分の拡大図である。
図4C】本発明の一実施形態にかかる車両が受ける圧力を説明する車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、車傾調整装置の全体構成を示すブロック図である。車載されている車傾調整装置1は、制御部11を備えている。制御部11はGセンサ12から車両の傾きの情報を取得する。また、制御部11は車両のアクセルペダル13からアクセルペダル開度の情報を取得する。ブレーキペダルストロークセンサ14は車両のブレーキペダル(図示せず)の踏力(踏量)を検出して、その情報を制御部11に伝達する。
【0009】
車高調整装置15は、車両前部及び、又は車両後部の車高を調節する装置である。車高調整装置15は、4輪独立制御できる構造に限定されるものではなく、前2輪、後2輪を同時に制御する構成としてもよい。車高調整装置15は、前2輪だけ、又は後2輪だけに設けられていてもよい。制御部11は、車高調整装置15を制御する。
【0010】
図2は、車高調整装置15の車両内での配置例を示す斜視図である。符号10は、フロントサスペンションであり、いわゆるダブルウィッシュボーン式サスペンションの例である。ナックル2は、ハブベアリング(図示せず)を介してホイールWを回転自在に支持する。アッパアーム3は、ナックル2の上端を車体側に連結する。ロアアーム4は、ナックル2の下端を車体側に連結する。ダンパ6は、ロアアーム4とダンパベース(車体)5との間に介装されている。スプリング7は、ダンパ6の上部外周に装着された緩衝用のものである。マウントプレート8は、ダンパ6をダンパベース5に締結する。車高調整装置15は、ダンパ6およびスプリング7とダンパベース5との間に設置されている。車高調整装置15の機構については公知であるため、詳細な構成の説明は省略する。
【0011】
次に、制御部11の制御内容について説明する。図3は、車傾調整装置の動作を示すフローチャートである。まず、制御部11は、Gセンサ12の情報から車両が下り坂道を走行しているのを検知したか否かを判断する(S1)。制御部11は、車両が下り坂道を走行しているのを検知したときは(S1のYes)、アクセルペダル13、ブレーキペダルストロークセンサ14により、ブレーキ踏力(踏量)0かつアクセルペダル開度が0か否かを判断する(S2)。ブレーキ踏力(踏量)0かつアクセルペダル開度が0であるときは(S2のYes)、運転者は下り坂走行において惰性走行をしたいということである。これは運転者がエンジンブレーキによって下り坂を走行しようとしていることでもある。ブレーキ踏力(踏量)0かつアクセルペダル開度が0であるときは(S2のYes)、制御部11は、車高調整装置15によって車両を前傾させる(S3)。具体的には、車両の前部を下げるか、又は車両の後部を上げることによって車両を前傾させる。本例では、車両の前部を下げることで車両を前傾させている。
【0012】
このように、運転者が下り坂でエンジンブレーキを求めているときは、車両を前傾させることで車両の前投影面積を増加させて走行風の抵抗を高める(エアブレーキ)ことで、車両の減速度を高めることができる。また、この場合に、前傾ではなく後傾にすると車両が浮かび上がる力を受けて安定性が低下するため、車両の安定性の向上のためにも車両を前傾させることが望ましい。
また、アクセル開度が0より大きい場合は、(S2のNo)、車両を前傾させない。すなわち、運転者がアクセルペダル13を操作している場合は、運転者が車両を所定の速度に調整したいと考えているときなので、エアブレーキを高めると無駄にエンジンやモータの出力を高めて燃費や電費が悪化してしまう恐れがあるのを防止することができる。
【0013】
さらにブレーキペダルが踏まれているときも(S2のNo)、車両を前傾させない。すなわち、ブレーキ操作時は減速の加速度により車両の前傾が起こることが予想されるため、ブレーキ操作時にさらに車両を前傾させることでフロントバンパー等が路面に接することを防止することができる。さらに、車両の前傾中は後輪接地荷重が小さくなる傾向にあるため、リアブレーキの効きが悪化することを防止することができる。
前記のとおり、本例では車両の前部を下げて車両の前傾を実現するので、この場合の作用について説明する。
【0014】
図4Aは、車両が受ける気流や圧力を説明する車両の側面図である。符号22は車両21の上部の気流の流れである。符号23は車両21の下部の気流の流れである。車両の前部を下げても下げる前とは車両21の上部の気流の流れ22は略変わらないため、車両21が上部から受ける大気圧26も略変わらない。
【0015】
図4Bは、図4AのA部分の拡大図である。車両21の前部を下げると、車両21下部に入る大気流入口24は狭くなる。すると車両21の下部に流入する大気27は加速する。大気27が加速すると車両21の下部で車両21が受ける大気圧25は、車両21の前部を下げる前よりも下がる。
【0016】
図4Cは、車両が受ける圧力を説明する車両の側面図である。したがって、車両21の前部を下げることで、車両21への下部からの圧力25が小さくなり、相対的に上部からの圧力26が大きくなる。よって、車両21が上から押さえつけられることで接地荷重を増すことができる。
【符号の説明】
【0017】
1 車傾調整装置
11 制御部
13 アクセルペダル
14 ブレーキペダルストロークセンサ
15 車高調整装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C