(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158593
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】毛髪脱色・脱染剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/20 20060101AFI20221006BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221006BHJP
A61K 8/22 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K8/20
A61K8/73
A61K8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063603
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由季
(72)【発明者】
【氏名】水上 洋平
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB331
4C083AB332
4C083AB352
4C083AB371
4C083AB372
4C083AB411
4C083AB412
4C083AC072
4C083AC242
4C083AC542
4C083AD042
4C083AD271
4C083AD272
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD351
4C083AD352
4C083CC35
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】吐出後の垂れ落ちを抑制しつつ、アプリケータからの吐出性を向上させる。
【解決手段】吐出部を備えるアプリケータを用いて混合及び塗布される2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物は、アルカリ剤を含有する粉末状の第1剤と、酸化剤を含有する液状の第2剤とを備えている。第1剤は、(A)特定の増粘剤として、ノニオン性増粘剤及びアニオン性増粘剤から選ばれる少なくとも一種を含有する。第1剤は、(B)カチオン性ポリマーを含有する。第1剤及び第2剤の混合時における(A)特定の増粘剤の含有量が0.4質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出部を備えるアプリケータを用いて混合及び塗布される2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物であって、
アルカリ剤を含有する粉末状の第1剤と、
酸化剤を含有する液状の第2剤とを備え、
前記第1剤は、ノニオン性増粘剤及びアニオン性増粘剤から選ばれる少なくとも一種の増粘剤と、カチオン性ポリマーとを含有し、
前記第1剤及び前記第2剤の混合時における前記増粘剤の含有量が0.4質量%以下である毛髪脱色・脱染剤組成物。
【請求項2】
前記第1剤及び前記第2剤の混合時における
前記増粘剤の含有量と前記カチオン性ポリマーの含有量の和が1質量%以下であり、
前記カチオン性ポリマーの含有量に対する前記増粘剤の含有量の比率が0.1以上1.3以下である請求項1に記載の毛髪脱色・脱染剤組成物。
【請求項3】
前記第1剤は、塩化アンモニウムを含有する請求項1又は請求項2に記載の毛髪脱色・脱染剤組成物。
【請求項4】
前記第1剤及び前記第2剤の混合時において、総アンモニウムイオンに占める塩化アンモニウム由来のアンモニウムイオンの割合が60%以上である請求項3に記載の毛髪脱色・脱染剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の薬剤を混合することにより効果を発揮する多剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物が知られている。例えば、特許文献1及び特許文献2には、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とから構成される2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物が知られている。アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪の脱色・脱染性を向上させる。また、上記の第1剤及び第2剤に加えて、第1剤及び第2剤とは別の第3剤を備える3剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物も知られている。第3剤には、例えば、第1剤及び第2剤と分けて保存することが好ましい成分が含有される。
【0003】
また、特許文献1及び特許文献2には、第1剤及び第2剤をアプリケータ内で混合した後、混合された混合物をアプリケータの吐出口から吐出させながら毛髪に塗布する使用方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-226344号公報
【特許文献2】特開2013-147467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
毛髪脱色・脱染剤組成物には、脱色力・脱染力及び仕上がりの感触が優れていることが求められる。一方、アプリケータを用いて混合及び塗布される毛髪脱色・脱染剤組成物には、上記の性質に加えて、アプリケータからの吐出性に優れていること、具体的には、吐出後に垂れ落ちが抑制されつつ、吐出時に詰まりが生じ難い性質が求められる。
【0006】
特許文献1及び特許文献2の2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物は、アプリケータからの吐出性の観点において改善の余地があった。特に、毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤が粉末状であり、第2剤が液状である場合には、第1剤の粉末が完全に溶解せずに凝集し、その凝集物に起因してアプリケータの吐出口からの吐出性が低下したり、粘度不足により塗布時に垂れ落ちが生じたりすることがあった。
【0007】
なお、アプリケータを用いて混合及び塗布される毛髪脱色・脱染剤組成物とする場合には、3剤式の構成を採用することが一般的である。2剤式の構成を採用した場合には、3剤式の構成と比較して、アプリケータからの吐出性及び仕上がりの感触を調整するために使用可能な配合成分の種類が限定される。そのため、アプリケータからの吐出性と仕上がりの感触とを両立できないという問題が生じやすい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する毛髪脱色・脱染剤組成物は、吐出部を備えるアプリケータを用いて混合及び塗布される2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物であって、アルカリ剤を含有する粉末状の第1剤と、酸化剤を含有する液状の第2剤とを備え、前記第1剤は、ノニオン性増粘剤及びアニオン性増粘剤から選ばれる少なくとも一種の増粘剤と、カチオン性ポリマーとを含有し、前記第1剤及び前記第2剤の混合時における前記増粘剤の含有量が0.4質量%以下である。
【0009】
毛髪脱色・脱染剤組成物の一態様は、前記第1剤及び前記第2剤の混合時における前記増粘剤の含有量と前記カチオン性ポリマーの含有量の和が1質量%以下であり、前記カチオン性ポリマーの含有量に対する前記増粘剤の含有量の比率が0.1以上1.3以下である。
【0010】
毛髪脱色・脱染剤組成物の一態様の第1剤は、塩化アンモニウムを含有する。
毛髪脱色・脱染剤組成物の一態様は、前記第1剤及び前記第2剤の混合時において、総アンモニウムイオンに占める塩化アンモニウム由来のアンモニウムイオンの割合が60%以上である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吐出後の垂れ落ちを抑制しつつ、アプリケータからの吐出性を向上させることができるとともに、仕上がりの感触を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物は、吐出部を備えるアプリケータを用いて混合及び塗布される2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物であり、アルカリ剤を含有する粉末状の第1剤と、酸化剤を含有する液状の第2剤とから構成される。また、以下では、第1剤と第2剤とを混合した毛髪脱色・脱染剤組成物を混合物と記載する場合がある。
【0013】
<アプリケータ>
アプリケータは、第1剤及び第2剤を混合して混合物を調製するための容器部と、容器部にて調製された混合物を吐出させる吐出部とを備える道具を意味する。アプリケータは、例えば、開口を有する容器状の本体部と、本体部の開口に着脱可能に取り付けられる蓋部とにより構成することができる。この場合、本体部と蓋部とにより容器部が構成され、蓋部に吐出部が設けられる。このアプリケータは、外部から圧力を加えて内圧を高める操作を行うことにより、容器部に収容された混合物を吐出部から吐出させることができる。
【0014】
アプリケータの具体例としては、ノズル形状の吐出部を有するノズル式のアプリケータ、コーム形状の吐出部を有するコーム一体型のアプリケータが挙げられる。コーム一体型のアプリケータは、コーム形状の吐出部の櫛歯部分に設けられた複数の吐出口から混合物を吐出させるように構成されており、コーム形状の吐出部を用いてコーミングしながら毛髪に混合物を塗布することができる。コーム形状の吐出部の櫛歯部分における吐出口の形成位置は特に限定されるものではないが、例えば、先端及び周面の一方又は両方が挙げられる。
【0015】
アプリケータの吐出部には、容器部に収容された混合物を外部へ吐出させるための単数又は複数の吐出流路が設けられている。吐出流路の下流側の端部が吐出口である。垂れ落ちが少なくかつ圧力を加えずに吐出ができる点から、吐出流路及び吐出口における最狭部分の断面積は、例えば7mm2以下であり、好ましくは5mm2以下である。また、上記断面積は、例えば0.7mm2以上である。
【0016】
<第1剤>
第1剤は、必須成分として、アルカリ剤と、(A)特定の増粘剤と、(B)カチオン性ポリマーとを含有する。また、第1剤は、(C)塩化アンモニウムを含有することが好ましい。
【0017】
(アルカリ剤)
アルカリ剤としては、公知の2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤に一般的に含有される成分を適用できる。アルカリ剤としては、例えば、水に溶解して塩基性を示す物質(以下、第1アルカリ剤と記載する。)、及び第2剤と混合することによりアンモニアを生成する物質(以下、第2アルカリ剤と記載する。)が挙げられる。
【0018】
第1アルカリ剤の具体例としては、例えばアンモニア、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えばグアニジン等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0019】
アンモニアを生成する第2アルカリ剤の具体例としては、例えばアンモニウム塩が挙げられる。アンモニウム塩の具体例としては、例えば塩化アンモニウム、過硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムが挙げられる。なお、アンモニウム塩かつ炭酸塩又は炭酸水素塩である炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムは、第1アルカリ剤及び第2アルカリ剤の両方に該当する。
【0020】
第1剤に含有されるアルカリ剤は、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。第1剤に含有されるアルカリ剤は、第1アルカリ剤及び第2アルカリ剤の一方のみであってもよいし、両方であってもよい。なお、第1剤に含有されるアルカリ剤の少なくとも一種は、アンモニウム塩であることが好ましく、塩化アンモニウムであることがより好ましい。塩化アンモニウムを含有する場合の詳細については後述する。
【0021】
アルカリ剤として第1アルカリ剤が用いられる場合、混合物中におけるアルカリ剤の含有量は、混合物のpHが8.5~11.0の範囲となる量が好ましく、pH9.0~10.5の範囲となる量がより好ましい。混合物のpHを8.5以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤の作用を促進することができる。それにより、脱色・脱染性をより向上させる。混合物のpHを10.5以下とすることにより、混合物の塗布による毛髪のダメージを抑制することができる。それにより、毛髪の感触をより向上させる。なお、混合物のpHは、混合物を水に1質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。また、第1アルカリ剤と第2アルカリ剤が併せて用いられる場合、第2アルカリ剤の種類及びアルカリ剤に占める第2アルカリ剤の割合によっては、混合物のpHが7.0以下となる場合もある。
【0022】
アルカリ剤として第2アルカリ剤が用いられる場合、第1剤中における第2アルカリ剤の含有量は、例えば3.0質量%以上であり、好ましくは5.5質量%以上である。また、第1剤中における第2アルカリ剤の含有量は、例えば、30.0質量%以下であり、好ましくは27.0質量%以下である。混合物中における第2アルカリ剤の含有量は、5.5質量%以下であり、好ましくは5.0質量%以下である。混合物中における第2アルカリ剤の含有量は、例えば0.5質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上である。
【0023】
(A)特定の増粘剤
特定の増粘剤は、ノニオン性増粘剤及びアニオン性増粘剤から選ばれる少なくとも一種である。
【0024】
ノニオン性増粘剤は、天然又は合成のいずれも使用することができる。ノニオン性増粘剤の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルピロリドン(PVP)、(PVP/VA)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、デキストリン、グアーガム、デンプン、プルラン等が挙げられる。
【0025】
アニオン性増粘剤は、天然又は合成のいずれも使用することができる。天然のアニオン性増粘剤の具体例としては、例えばキサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、ファーセラン、アラビアガム、ガッチガム、カラヤガム、トラガントガム、カンテン粉末等が挙げられる。半合成のアニオン性増粘剤の具体例としては、例えばセルロースをカルボキシメチル化したカルボキシメチルセルロース及びその塩等が挙げられる。
【0026】
合成のアニオン性増粘剤の具体例は、例えば酸性ビニル単量体又はその塩を重合することによって得られる重合体又は共重合体を挙げることができる。酸性ビニル単量体の具体的として、酸性基、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、及びリン酸基と、重合可能なビニル基とを有する化合物等が挙げられる。かかる化合物として、例えば不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、及びこれらのモノエステルを挙げることができる。
【0027】
第1剤に含有される特定の増粘剤は、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。混合物を増粘させる効果の観点から、特定の増粘剤は、アニオン性増粘剤を含むことが好ましく、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース及びその塩のいずれかを含むことがより好ましい。特に、キサンタンガムを含む場合には、増粘作用が発現するまでの時間が短くなるため、第1剤及び第2剤を混合してからの待機時間を短くできるとともに、経時的の吐出安定性に優れた混合物が得られる。
【0028】
第1剤中における特定の増粘剤の含有量は、例えば0.055質量%以上であり、好ましくは0.275質量%以上である。また、第1剤中における特定の増粘剤の含有量は、例えば、19.5質量%以下であり、好ましくは16.5質量%以下である。
【0029】
混合物中における特定の増粘剤の含有量は、0.4質量%以下であり、好ましくは0.35質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。混合物中における特定の増粘剤の含有量は、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上である。
【0030】
特定の増粘剤は、アプリケータの吐出部からの混合物の吐出性を向上させる。具体的には、混合物中における含有量が0.4質量%以下となる範囲にて特定の増粘剤を含有させることにより、第1剤を構成する粉末に由来する凝集物の発生を抑制しつつ、混合物の粘度を向上させることができる。
【0031】
(B)カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーは、天然又は合成のいずれも使用することができる。カチオン性ポリマーの具体例としては、例えば塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム等のカチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0032】
第1剤に含有されるカチオン性ポリマーは、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。感触の向上の観点から、カチオン性ポリマーは、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースと塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガムを組み合わせて使用することが好ましい。
【0033】
第1剤中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、感触の向上の観点から、例えば、0.55質量%以上であり、好ましくは0.85質量%以上である。また、第1剤中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、吐出性の向上の観点から、例えば、5.5質量%以下である。
【0034】
混合物中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、感触の向上の観点から、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.15質量%以上である。また、混合物中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、吐出性の向上の観点から、例えば、1.0質量%以下である。
【0035】
また、混合物中におけるカチオン性ポリマーの含有量は、混合物中における(A)特定の増粘剤の含有量との関係が下記の条件1及び条件2を満たす含有量であることが好ましい。
【0036】
条件1:(A)特定の増粘剤の含有量と(B)カチオン性ポリマーの含有量との和が1質量%以下である。
条件2:(B)カチオン性ポリマーの含有量に対する(A)特定の増粘剤の含有量の比率(A/B)が0.1以上1.3以下である。なお、上記比率(A/B)は、好ましくは0.1以上1.2以下であり、より好ましくは0.1以上1.1以下である。
【0037】
カチオン性ポリマーは、毛髪脱色・脱染剤組成物により処理された毛髪の感触を向上させる。上記条件1及び条件2を満たすようにカチオン性ポリマーの含有量を調整した場合には、(A)特定の増粘剤による、アプリケータの吐出部からの混合物の吐出性を向上させる効果が高くなる。また、上記の場合には、毛髪脱色・脱染剤組成物により処理された毛髪の感触を向上させる効果がより高くなる。
【0038】
(C)塩化アンモニウム
塩化アンモニウムは、第2アルカリ剤の一種である。第1剤中における塩化アンモニウムの含有量は、明度の向上の観点から、例えば、3.0質量%以上であり、好ましくは5.5質量%以上である。また、第1剤中における塩化アンモニウムの含有量は、吐出性の向上の観点から、例えば、22.0質量%以下であり、好ましくは16.5質量%以下である。
【0039】
混合物中における塩化アンモニウムの含有量は、明度の向上の観点から、例えば、0.5質量%以上であり、好ましくは1.0質量%以上である。また、混合物中における塩化アンモニウムの含有量は、吐出性の向上の観点から、例えば、4.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下である。
【0040】
また、混合物に含まれる総アンモニウムイオンに占める塩化アンモニウム由来のアンモニウムイオンの割合は、60%以上であることが好ましく、100%であることが更に好ましい。つまり、塩化アンモニウム以外のアンモニウム塩の含有量が相対的に少ないことが好ましい。
【0041】
上記割合は、混合物に含まれる全てのアンモニウム化合物のアンモニウムイオン換算のモル数の総和に占める塩化アンモニウムのアンモニウムイオン換算のモル数の割合を意味する。したがって、上記割合は、混合物に含まれるアンモニウム化合物の分子式及びモル濃度に基づいて算出できる。具体的には、混合物に含まれる全てのアンモニウム化合物について、アンモニウム化合物1分子に含まれるアンモニウムイオンの数とモル濃度との積をそれぞれ算出するとともに、それらの積の総和Xを求める。また、混合物に含まれる塩化アンモニウムのモル濃度と、塩化アンモニウム1分子に含まれるアンモニウムイオンの数である「1」との積Yを求める。そして、下記式により総和X及び積Yから上記割合を算出する。
【0042】
割合(%)=Y/X×100
塩化アンモニウムは、(A)特定の増粘剤による、アプリケータの吐出部からの混合物の吐出性を向上させる効果を高める。混合物における塩化アンモニウム由来のアンモニウムイオンの割合を60%以上とした場合には、アプリケータの吐出部からの混合物の吐出性を向上させる効果がより高くなる。
【0043】
(その他成分)
第1剤は、前述した各成分以外の成分であって、2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しないその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば、分散剤、金属封鎖剤、pH調整剤、各種界面活性剤、保湿剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、酸化防止剤、防腐剤、金属封鎖剤、賦形剤、色素、香料、潤沢剤等が挙げられる。
【0044】
<第2剤>
第2剤は、液状であり、必須成分として、酸化剤を含有する。
上記の液状は、一定の体積を有するが一定の形状を持たない液体の状態のことをいい、水のように粘度の低いものも乳液状の粘度のやや高いものも含む概念である。第2剤の25℃における粘度は、例えば500mPa・s以上10000mPa・s以下である。第2剤の粘度は、例えば、B型粘度計を用い、25℃及び1分間の測定条件で求めることができる。B型粘度計としては、例えば、BL型粘度計VISCOMETER(東機産業社製)が挙げられる。測定に使用するロータ及び回転速度は、粘度計ごとに設定される測定可能な粘度範囲に従い適宜選択される。測定に使用するロータは、例えば3号ロータであり、回転速度は、例えば12rpmである。
【0045】
(酸化剤)
酸化剤の具体例としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。第2剤に含有される酸化剤は、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
第2剤中における酸化剤の含有量は、例えば、4.0質量%以上であり、好ましくは4.2質量%以上であり、より好ましくは4.5質量%以上である。また、第2剤中における酸化剤の含有量は、例えば、6.0質量%以下であり、好ましくは5.8質量%以下であり、より好ましくは5.5質量%以下である。
【0047】
混合物中における酸化剤の含有量は、例えば、0.70質量%以上であり、好ましくは0.75質量%以上であり、より好ましくは0.80質量%以上である。混合物中における酸化剤の含有量は、例えば、1.10質量%以下であり、好ましくは1.05質量%以下であり、より好ましくは1.00質量%以下である。
【0048】
第2剤は、可溶化剤を含有することが好ましい。可溶化剤は、例えば、第2剤を液状にするために配合される。可溶化剤としては、例えば水及び有機溶媒又は溶剤が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。溶剤の具体例としては、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0049】
上述した可溶化剤の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第2剤中の他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。
【0050】
水が用いられる場合、第2剤中における水の含有量は、例えば、40質量%以上であり、好ましくは70質量%以上である。また、第2剤中における水の含有量は、例えば、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。混合物中における水の含有量は、例えば、7.0質量%以上であり、好ましくは12質量%以上である。また、混合物中における水の含有量は、例えば、18質量%以下であり、好ましくは17質量%以下である。
【0051】
(その他成分)
第2剤は、酸化剤及び可溶化剤以外の成分であって、2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第2剤に一般的に含有されるその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば、油性成分、界面活性剤、pH調整剤、保湿剤、帯電防止剤、毛髪柔軟剤、防腐剤、金属封鎖剤、香料等が挙げられる。
【0052】
<第1剤及び第2剤の混合比>
2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤及び第2剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性等を考慮して適宜設定されるが、例えば、質量比で1:2~1:7の範囲であり、好ましくは1:3~1:6の範囲であり、より好ましくは1:4~1:5の範囲である。
【0053】
次に、本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物の使用方法について説明する。
本実施形態の毛髪脱色・脱染剤組成物の第1剤及び第2剤は、それぞれ個別の容器に収容された状態で用時まで保存される。用時には、使用者がアプリケータ内に第1剤及び第2剤を投入して、振盪などにより混合する。これにより、アプリケータ内にて混合物が調製されて、調製された混合物がアプリケータ内の容器部に収容される。
【0054】
次いで、アプリケータ内から混合物を吐出し、吐出した混合物を毛髪に塗布する。アプリケータ内に収容された混合物は、容器部を押圧するなどの吐出部に応じた所定の操作を行うことにより、吐出部に設けられた吐出路を通り吐出口から吐出される。混合物の毛髪への塗布は、公知の方法、例えば吐出された混合物を薄手の手袋をした手、コーム又は刷毛に付着させて毛髪に塗布する方法、コーム形状の吐出部を用いてコーミングしながら、混合物を吐出させて毛髪に塗布する方法を適用することができる。
【0055】
混合物が毛髪に塗布された後、所定時間経過後、常法に従い毛髪に塗布した混合物を水ですすぐ工程が行われる。次に、好ましくは常法に従いシャンプー用組成物を使用して、毛髪を洗浄し、水で洗い流す工程が行われる。次に、好ましくは常法に従いリンス用組成物を使用して、毛髪をリンス処理し、水で洗い流す工程が行われる。リンス用組成物は、毛髪のリンス用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のリンス用組成物を適用することができる。次に、好ましくは常法に従い毛髪を乾燥する工程が行われる。
【0056】
次に、本実施形態の効果について記載する。
(1)吐出部を備えるアプリケータを用いて混合及び塗布される2剤式の毛髪脱色・脱染剤組成物は、アルカリ剤を含有する粉末状の第1剤と、酸化剤を含有する液状の第2剤とを備えている。第1剤は、(A)特定の増粘剤として、ノニオン性増粘剤及びアニオン性増粘剤から選ばれる少なくとも一種を含有する。第1剤は、(B)カチオン性ポリマーを含有する。第1剤及び第2剤の混合時における(A)特定の増粘剤の含有量が0.4質量%以下である。
【0057】
上記構成によれば、粉末状の第1剤と液体状の第2剤とを混ぜて混合物を調製する際に、第1剤を構成する粉末に由来する凝集物の発生を抑制しつつ、混合物の粘度を向上させることができる。これにより、吐出後の混合物の垂れ落ちを抑制できるとともに、アプリケータからの混合物の吐出性を向上させることができる。具体的には、混合物をアプリケータから吐出させる場合、即ち、狭い部分を有する吐出流路を通過させて混合物を吐出させる場合に、吐出流路における上記凝集物による詰まりが抑制されてスムーズに混合物を吐出できる。その結果、アプリケータとして、より狭い部分を有する吐出流路が設けられたアプリケータを用いることが可能になり、アプリケータの選択の自由度が向上する。更に、第1剤に(B)カチオン性ポリマーを含有させることにより、毛髪脱色・脱染剤組成物により処理された毛髪の感触を向上させることができる。
【0058】
(2)混合物における(A)特定の増粘剤の含有量と(B)カチオン性ポリマーの含有量との和が1質量%以下であり、(B)カチオン性ポリマーの含有量に対する(A)特定の増粘剤の含有量の比率(A/B)が0.1以上1.3以下である。
【0059】
この場合には、吐出後の混合物の垂れ落ちを抑制しつつ、アプリケータから吐出性を向上させる効果、及び毛髪の感触を向上させる効果をより高いレベルで両立させることができる。
【0060】
(3)第1剤は、(C)塩化アンモニウムを含有する。
この場合には、吐出後の混合物の垂れ落ちを抑制しつつ、アプリケータから吐出性を向上させる効果が向上する。
【0061】
(4)混合物に含まれる総アンモニウムイオンに占める(C)塩化アンモニウム由来のアンモニウムイオンの割合が60%以上である。
この場合には、吐出後の混合物の垂れ落ちを抑制しつつ、アプリケータから吐出性を向上させる効果が更に向上する。
【実施例0062】
次に、実施例及び比較例を挙げて上記実施形態を更に具体的に説明する。なお、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
以下では、(A)特定の増粘剤、(B)カチオン性ポリマー、及び(C)塩化アンモニウムをそれぞれA成分、B成分、及びC成分と記載する場合がある。また、下記の表2~4中の「成分」欄における(A)~(C)の表記は、上記の各成分に対応する物質を示す。
【0063】
得られた毛髪脱色・脱染剤組成物としての第1剤及び第2剤を用いて、下記に示す吐出性、垂れ落ち、及び感触の各評価を行った。
表1~4に示す各成分を含有する毛髪脱色・脱染剤組成物としての第1剤及び第2剤をそれぞれ調製した。各例において、第2剤は同じ組成のものを用い、第1剤と第2剤の配合比(第1剤:第2剤)は全て質量比1:4.5とした。
【0064】
なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)~(C)の表記は、上記の各成分に対応する物質を示す。得られた毛髪脱色・脱染剤組成物としての第1剤及び第2剤を用いて、下記に示す吐出性、垂れ落ち、及び感触の各評価を行った。
【0065】
(吐出性・垂れ落ち)
各例の第1剤20g及び、第2剤90gをアプリケータに投入し、上下に50回振って混合した。5分間静置した後、吐出部を下側に向けるようにアプリケータを逆さまにした状態として、外部から手で圧力を加えて内圧を高めることにより、アプリケータ内の混合物の全量をアプリケータの吐出口から吐出させる吐出操作を行った。アプリケータとしては、ホーユー社製ビューティーンベースアップブリーチに付属のコーム一体型のアプリケータを用いた。当該アプリケータは、コーム形状の吐出部の櫛歯部分の各先端に吐出口が設けられている。当該アプリケータの吐出部に設けられる吐出流路における最狭部分は、吐出流路の下流側の端部に位置する吐出口であり、その断面積は、5mm2である。
【0066】
上記の吐出操作時において、アプリケータから操作者に伝わる抵抗感、及びアプリケータに加える圧力を高める必要があるか否かの観点にて以下の基準で吐出性を評価した。抵抗感の強まりを感じることなく全量を吐出できた場合を「優れる:5」、抵抗感の強まりを僅かに感じるが、圧力を高めることなく全量を吐出できた場合を「良好:4」、抵抗感の強まりを感じるが、圧力を高めることなく全量を吐出できた場合を「可:3」、抵抗感の強まりを感じ、全量を吐出するために圧力を高める必要があった場合を「やや不良:2」、混合物の詰まりが生じた場合を「不良:1」とした。
【0067】
また、以下の基準でアプリケータからの垂れ落ちを評価した。吐出部を下側に向けるようにアプリケータを逆さまにした状態かつ外部から手で圧力を加えていない状態として30秒間保持して、混合物がコーム部に保持されずに吐出されるか否かを評価した。30秒間、混合物が吐出されなかった場合を「優れる:5」、10秒以上30秒未満の間で混合物が吐出された場合を「可:3」、10秒未満で混合物が吐出された場合を「不良:1」とした。これらの結果を表2~4に示す。
【0068】
(感触(仕上がり))
毛髪脱色・脱染剤組成物としての第1剤及び第2剤を混合して各例の毛髪脱色・脱染剤組成物の混合物を調製した。黒色毛束(ビューラックス社製)に対して刷毛を用いて混合物を塗布し、30℃にて30分間放置した。次に、毛束に付着した混合物を水ですすいだ後、毛束にシャンプー(シャンプー用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(リンス用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。なお、シャンプー用組成物及びリンス用組成物は、処理ごとに水で洗い流した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置することにより、脱色処理された毛束を得た。
【0069】
毛束の感触(仕上がり)について、上記脱色処理された毛束を使用してパネラー10名が以下の基準で評価した。毛束の感触が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)、及び不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を表2~4に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【表4】
表2~4に示すように、ノニオン性増粘剤及びアニオン性増粘剤であるA成分を含有し、その混合物中の含量が0.4質量%以下の範囲である各実施例は、垂れ落ちの評価が「可:3」以上の結果であり、吐出性の評価が「可:3」以上の結果であることが確認された。一方、A成分を含有しない比較例1は、垂れ落ちの評価が「不良:1」であった。また、A成分を含有し、その混合物中の含量が0.4質量%を超える比較例3は、吐出性の評価が「やや不良:2」であった。具体的には、比較例3では、吐出操作時に抵抗感の強まりを感じ、全量を吐出するために圧力を高める必要があった。また、B成分を含有する各実施例は、感触の評価が「可:3」以上の結果であることが確認された。一方、B成分を含有しない比較例2は、感触の評価が「不良:1」であった。
【0074】
実施例6~11では、A成分、及びカチオン性ポリマーであるB成分の含有量を異ならせている。これらの結果から、A成分とB成分の含有量に関する条件1及び条件2を満たす実施例7,9は、吐出性の評価、及び感触の評価が共に「良好:4」以上であることが確認された。
【0075】
実施例1~4では、塩化アンモニウムであるC成分、及びC成分以外のアンモニウム塩の含有量を異ならせている。C成分を含有する実施例1~3は、C成分を含有しない実施例4に対して、吐出性の評価が向上した。特に、混合物に含まれる総アンモニウムイオンに占めるC成分由来のアンモニウムイオンの割合が60%以上の範囲である実施例1,2は、吐出性の評価が顕著に向上した。なお、詳細なデータは省略するが、上記割合が100%である実施例1は、上記割合が68%である実施例2と比較して、よりスムーズに混合物を吐出させることができた。
【0076】
実施例1,5では、A成分の種類を異ならせている。A成分として、キサンタンガムを用いた実施例1は、A成分として、ヒドロキシエチルセルロースを用いた実施例5に対して、吐出性の評価が向上した。