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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158601
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】空気袋及び車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20221006BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20221006BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20221006BHJP
   A47C 7/14 20060101ALI20221006BHJP
   A47C 7/46 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A47C7/62 Z
B60N2/22
B60N2/64
A47C7/14 Z
A47C7/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063614
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小木曽 隆
(72)【発明者】
【氏名】神原 朋子
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢志
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084BA01
3B084HA05
3B084HA12
3B084JA03
3B084JA06
3B084JC13
3B087BD02
3B087BD13
3B087DE04
(57)【要約】
【課題】好適な拡張形状を確保する。
【解決手段】空気袋10は、二枚のシート材30,30を貼り合わせてなる袋部40を有する。また、この袋部40は、環状に延在する環状接合部α1を有した拡張部41と、並行する一対の線状接合部α2,α2を有して拡張部41に接続された流路部42と、を備える。更に、空気袋10においては、袋部40内に充填された空気が、その環状接合部α1に囲まれた拡張部41の内部空間X1、及び、その流路部42を構成する一対の線状接合部α2,α2に挟まれた流路X2内を流通する。そして、空気袋10は、その拡張部41と流路部42との接続部50において、その一対の線状接合部α2,α2が平行に延在するように構成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を有し、
前記袋部は、
環状に延在する環状接合部を有した拡張部と、
並行する一対の線状接合部を有して前記拡張部に接続された流路部と、を備え、
前記袋部内に充填された空気が、前記環状接合部に囲まれた前記拡張部の内部空間及び前記流路部を構成する前記一対の線状接合部に挟まれた流路内を流通するとともに、
前記拡張部と前記流路部との接続部において、前記一対の線状接合部が平行に延在する、又は、前記拡張部の内部空間に対する前記流路の開口位置から該流路の奥側に向かって前記一対の線状接合部が拡開して延在するように構成された空気袋。
【請求項2】
請求項1に記載の空気袋において、
前記各シート材を重ね合わせた方向から見て前記拡張部が多角形状をなすとともに、前記流路部が前記多角形状の頂部に接続されていること、を特徴とする空気袋。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の空気袋において、
前記拡張部及び前記流路部は、直線状に延びる前記流路部の軸線を対称軸とした線対称形状をなすこと、を特徴とする空気袋。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の空気袋において、
前記流路部を介して接続された一対の前記拡張部を有すること、を特徴とする空気袋。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の空気袋をシート表皮の内側に配置する
車両用シート装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シート装置において、
前記空気袋を拡縮させることにより前記シート表皮を内側から押圧するリフレッシュ機能を備えること、を特徴とする車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気袋及び車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を有した空気袋がある。例えば、特許文献1には、複数の袋部をシート材の厚み方向に重ねることで、空気の充填により空気袋が拡張する際、その各シート材を重ね合わせた方向に大きなストローク量を確保する構成が開示されている。また、特許文献2に記載の空気袋は、複数の拡張部と、これらの各拡張部を接続する流路部と、を有した袋部を備えている。更に、この空気袋においては、流路部を折り曲げることにより複数の拡張部が重ねて配置されている。そして、これにより、簡素な構成にて、大きなストローク量を確保することのできる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-95015号公報
【特許文献2】特開2016-216003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように、拡張部に接続された流路部を有する構成では、袋部に空気を充填した際、拡張部とともに、この拡張部と流路部との接続部が拡張することで、その拡張形状が崩れやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する空気袋は、二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を有し、前記袋部は、環状に延在する環状接合部を有した拡張部と、並行する一対の線状接合部を有して前記拡張部に接続された流路部と、を備え、前記袋部内に充填された空気が、前記環状接合部に囲まれた前記拡張部の内部空間及び前記流路部を構成する前記一対の線状接合部に挟まれた流路内を流通するとともに、前記拡張部と前記流路部との接続部において、前記一対の線状接合部が平行に延在する、又は、前記拡張部の内部空間に対する前記流路の開口位置から該流路の奥側に向かって前記一対の線状接合部が拡開して延在するように構成される。
【0006】
上記構成によれば、空気の充填時、その拡張部と流路部との境界が維持された状態で袋部を拡張させることができる。そして、これにより、好適な拡張形状を確保することができる。更に、拡張形状の崩れが小さいことから、空気の充填時、特定の箇所に応力が集中し難い。そして、これにより、高い信頼性と耐久性を確保することができる。
【0007】
上記課題を解決する空気袋は、前記各シート材を重ね合わせた方向から見て前記拡張部が多角形状をなすとともに、前記流路部が前記多角形状の頂部に接続されていることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、拡張部に接続された流路部が、その拡張部の拡張を阻害し難い。そして、これにより、好適な拡張形状を確保することができる。
上記課題を解決する空気袋において、前記拡張部及び前記流路部は、直線状に延びる前記流路部の軸線を対称軸とした線対称形状をなすことが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、バランスよく、その拡張部を拡張させることができる。
上記課題を解決する空気袋は、前記流路部を介して接続された一対の前記拡張部を有することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、互いに離間して配置された一対の拡張部が、それぞれ、その流路部との境界が維持された状態で拡張する好適な拡張形状を確保することができる。
上記課題を解決する車両用シート装置は、上記何れかに記載の空気袋をシート表皮の内側に配置する。
【0011】
上記構成によれば、シート表皮の内側に設けられた空気袋の好適な拡張形状に基づいて、そのシートに着座する乗員に対して適切な押圧力を付与することができる。
上記課題を解決する車両用シート装置は、前記空気袋を拡縮させることにより前記シート表皮を内側から押圧するリフレッシュ機能を備えることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、その空気袋の好適な拡張形状に基づいて、シートに着座する乗員に対して適切なリフレッシュ作用を付与することができる。即ち、流路部との境界が維持された状態で拡張する拡張部が、ピンポイントで、そのシートに着座する乗員を押圧する。その結果、所謂指圧感を好適に再現することができる。そして、これにより、高いリフレッシュ効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、好適な拡張形状を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】シート表皮の内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
図2】シート装置の概略構成図。
図3】空気が充填されていない空気袋の断面図。
図4】空気が充填された空気袋の断面図。
図5】空気袋の平面図。
図6】拡張部と流路部との接続部近傍の拡大図。
図7】参考例の空気袋における拡張部と流路部との接続部近傍の拡大図。
図8】参考例の空気袋の平面図。
図9】空気が充填された参考例の空気袋の斜視図。
図10】空気が充填された参考例の空気袋の斜視図。
図11】空気が充填された空気袋の斜視図。
図12】空気が充填された空気袋の斜視図。
図13】別例の空気袋の形状を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、空気袋及び車両用シート装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0016】
また、本実施形態のシート1には、シートクッション2及びシートバック3の内側で拡縮することにより、その着座面2s及び背もたれ面3sを構成するシート表皮1xを内側から押圧する複数の空気袋10が設けられている。具体的には、シートクッション2には、そのシート1に着座する乗員の臀部や大腿部に対応する位置に、それぞれ、独立したシートクッション2用の空気袋12が設けられている。更に、シートバック3についてもまた、その背もたれ面3sにもたれ掛かった乗員の肩部や腰部に対応する位置に、それぞれ、独立したシートバック3用の空気袋13が設けられている。そして、本実施形態のシート1においては、これらの各空気袋10が拡縮することで、そのシート1に着座する乗員に対してリフレッシュ効果を付与することのできる車両用のシート装置20が形成されている。
【0017】
詳述すると、図2に示すように、本実施形態のシート装置20は、シート1に設けられた各空気袋10に空気を圧送する空気ポンプ21を備えている。更に、この空気ポンプ21と各空気袋10との間には、給排気バルブ装置22が介在されている。そして、本実施形態のシート装置20において、これらの空気ポンプ21及び給排気バルブ装置22は、制御装置23によって、その作動が制御されている。
【0018】
具体的には、本実施形態の空気ポンプ21には、モータ24を駆動源とする電動ポンプが用いられている。更に、給排気バルブ装置22は、可撓性を有する樹脂製のエアチューブ25を介して各空気袋10及び空気ポンプ21に接続されている。即ち、本実施形態のシート装置20は、これらのエアチューブ25及び給排気バルブ装置22の内部通路によって、その各空気袋10と空気ポンプ21との間を連通する空気の流路、つまりは給排気流路Loが形成されている。そして、本実施形態の給排気バルブ装置22は、これにより、その給気バルブ26及び排気バルブ27を給排気流路Loの途中に配置する構成になっている。
【0019】
また、本実施形態の制御装置23には、シート1に設けられた操作入力部28に対する操作入力信号Scrが入力されるようになっている。そして、本実施形態の制御装置23は、この操作入力信号Scrに示される作動要求に基づいて、各空気袋10を拡縮させるべく、その空気ポンプ21及び給排気バルブ装置22の作動を制御する構成になっている。
【0020】
具体的には、本実施形態の制御装置23は、操作入力部28から入力される操作入力信号Scrに対応した所定の動作パターンに基づいて、その拡張状態となる各空気袋10を順次切り替える。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、各空気袋10が断続的に拡縮することで、そのシート1に着座する乗員が所望のリフレッシュ効果を得られる構成になっている。
【0021】
(空気袋)
次に、本実施形態のシート装置20に用いられた空気袋10の構成を説明する。
図3及び図4に示すように、本実施形態のシート装置20において、各空気袋10は、二枚のシート材30,30を貼り合わせることにより形成された袋部40を有している。即ち、本実施形態の各空気袋10は、その周縁部分の全周に亘って延在する接合部αを有して互いに貼り合わされた二枚のシート材30,30間に空気を充填することにより、その接合部αに囲まれた袋部40が拡張する。そして、この拡張した袋部40が、そのシート表皮1xを内側から押圧する構成になっている。
【0022】
詳述すると、図5に示すように、本実施形態の各空気袋10において、袋部40は、環状に延在する環状接合部α1を有した一対の拡張部41,41を備えている。そして、本実施形態の各空気袋10は、その袋部40として、並行する一対の線状接合部α2,α2を有して上記各拡張部41,41に接続された流路部42を備えている。
【0023】
具体的には、本実施形態の各空気袋10は、それぞれ、その袋部40を構成する各拡張部41,41及び流路部42の形状に合わせて型抜きされた二枚のシート材30,30を厚み方向に重ねた構造を有している。そして、本実施形態の各空気袋10においては、各シート材30,30の周縁部を互いに溶着することで、袋部40の全周に亘って延在する接合部αの一部として、各拡張部41,41の環状接合部α1及び流路部42の各線状接合部α2,α2が形成されている。
【0024】
本実施形態の各空気袋10において、各シート材30,30の素材には、可撓性を有した樹脂材料が用いられている。また、これら各シート材30,30は、例えば、高周波溶着等を用いて接合される。尚、図5中においては、ハッチングにより、その接合部αの形成位置が図示されている。そして、同図中、接合部αよりも内側の破線で示す部分が、これら各空気袋10における袋部40の有効拡張範囲となっている。
【0025】
また、本実施形態の各空気袋10においては、その環状接合部α1に囲まれた各拡張部41,41の内部空間X1,X1に対し、その流路部42を構成する一対の線状接合部α2,α2に挟まれた流路X2が開口する。そして、本実施形態の各空気袋10は、これにより、その袋部40内に充填された空気が、各拡張部41,41の内部空間X1,X1、及び、その流路部42が形成する流路X2内を流通する構成となっている。
【0026】
さらに詳述すると、本実施形態の各空気袋10において、各拡張部41,41は、それぞれ、その各シート材30,30を重ね合わせた方向から見て略五角形状をなしている。また、本実施形態の流路部42は、略直線状の外形を有している。更に、この流路部42は、その略五角形状をなす各拡張部41,41の頂部Paに対して、それぞれ、その長手方向端部が接続されている。そして、本実施形態の各空気袋10において、これらの各拡張部41,41及び流路部42は、この直線状に延びる流路部42の軸線Nを対称軸とした略線対称形状を有している。
【0027】
更に、本実施形態の各空気袋10においては、各拡張部41,41のうちの一方の拡張部41aに対し、その袋部40に対する空気の給排気流路Loを構成するエアチューブ25が接続されている。具体的には、本実施形態の各空気袋10において、このエアチューブ25は、その流路部42が接続された頂部Paとは異なる頂部Pbにおいて、その一方の拡張部41aに接続されている。即ち、本実施形態の各空気袋10においては、エアチューブ25を介して一方の拡張部41aに供給された空気が、その流路部42を介して他方の拡張部41bに流入する。更に、この他方の拡張部41bに充填された空気もまた、その流路部42を介して一方の拡張部41aに流出する。そして、本実施形態の各空気袋10は、これにより、エアチューブ25を介した給排気によって、その一対の拡張部41,41が拡縮する構成となっている。
【0028】
また、図1に示すように、本実施形態のシート装置20において、これらの各空気袋10は、その一対の拡張部41,41が、シート幅方向に離間する状態で、シート表皮1xの内側に配置される。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、その左右に離間した各空気袋10の拡張部41,41が、バランスよく、シート1に着座する乗員の体を押圧する構成になっている。
【0029】
更に、本実施形態のシート装置20においては、シートクッション2用の空気袋12の方が、シートバック3用の空気袋13よりも、その左右の拡張部41,41を接続する流路部42の長さが長くなっている。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、シート1に着座した乗員の両足について、それぞれ、好適に、その臀部及び大腿部を押圧することのできる構成となっている。
【0030】
尚、図5中には、シート装置20の空気袋10として、その左右の拡張部41,41間を接続する流路部42の長さが長いシートクッション2用の空気袋12を図示する。そして、シートバック3用の空気袋13については、その流路部42の長さが短い点を除き、このシートクッション2用の空気袋12と略同一の構成を有することから、その図示を省略するものとする。
【0031】
さらに詳述すると、図6に示すように、本実施形態の各空気袋10は、各拡張部41,41と流路部42との接続部50において、その一対の線状接合部α2,α2が平行に延在するように構成されている。具体的には、本実施形態の流路部42は、長手方向における任意の位置において、その流路X2を形成する一対の線状接合部α2,α2間の離間距離D0が一定となっている。つまり、本実施形態の各空気袋10は、流路部42の全長に亘って、その一対の線状接合部α2,α2が平行に延びている。そして、本実施形態の各空気袋10は、これにより、その流路部42を構成する各線状接合部α2,α2の長手方向端部と、その各拡張部41,41を構成する環状接合部α1とが交差する部分の形状が、所謂「ピン角」状となっている。
【0032】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図7及び図8に示す参考例の空気袋10Bは、本実施形態の各空気袋10と同様、その袋部40として、環状に延在する環状接合部α1を有した一対の拡張部41B,41Bと、並行する一対の線状接合部α2,α2を有した流路部42Bと、を備えている。そして、この参考例の空気袋10Bもまた、その直線状に延びる流路部42Bの長手方向両端に、それぞれ、その拡張部41B,41Bが接続された構成を有している。
【0033】
また、参考例の空気袋10Bは、流路部42Bを構成する各線状接合部α2,α2の長手方向端部に、円弧状の湾曲部Rを有している。具体的には、この参考例の空気袋10Bは、各拡張部41B,41Bと流路部42Bとの接続部50において、その各線状接合部α2,α2の長手方向端部が、流路X2の奥側から出口側(図7中、右側から左側)に向かって拡開して延在する構成になっている。そして、参考例の空気袋10Bは、これにより、所謂「R形状」を描く態様で、その流路部42Bの各線状接合部α2,α2が、それぞれ、その各拡張部41B,41Bの環状接合部α1に連続する構成になっている。
【0034】
図9及び図10に示すように、参考例の空気袋10Bは、空気の充填時、各拡張部41B,41Bとともに、その各拡張部41B,41Bと流路部42Bとの接続部50が大きく拡張する。その結果、参考例の空気袋10Bにおいては、その各拡張部41B,41Bの拡張形状が崩れることになる。詳しくは、各拡張部41B,41Bと流路部42Bとの境界が曖昧になる。その結果、参考例の空気袋10Bは、全体的になだらかな拡張形状となる。そして、この傾向は、流路部42Bの長さに依らず、そのシートクッション2用の空気袋12B及びシートバック3用の空気袋13Bに共通となっている。
【0035】
これに対し、図11及び図12に示すように、本実施形態の空気袋10は、空気の充填時、その各拡張部41,41と流路部42との接続部50が拡張し難い。その結果、本実施形態の空気袋10は、その各拡張部41,41と流路部42との境界が維持された状態で袋部40が拡張する。そして、この傾向は、流路部42の長さに依らず、そのシートクッション2用の空気袋12及びシートバック3用の空気袋13に共通となっている。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)空気袋10は、二枚のシート材30,30を貼り合わせてなる袋部40を有する。また、この袋部40は、環状に延在する環状接合部α1を有した拡張部41と、並行する一対の線状接合部α2,α2を有して拡張部41に接続された流路部42と、を備える。更に、空気袋10においては、袋部40内に充填された空気が、その環状接合部α1に囲まれた拡張部41の内部空間X1、及び、その流路部42を構成する一対の線状接合部α2,α2に挟まれた流路X2内を流通する。そして、空気袋10は、その拡張部41と流路部42との接続部50において、その一対の線状接合部α2,α2が平行に延在するように構成される。
【0037】
上記構成によれば、空気の充填時、その拡張部41と流路部42との境界が維持された状態で袋部40を拡張させることができる。そして、これにより、好適な拡張形状を確保することができる。更に、拡張形状の崩れが小さいことから、空気の充填時、特定の箇所に応力が集中し難い。そして、これにより、高い信頼性と耐久性を確保することができる。
【0038】
(2)拡張部41は、各シート材30,30を重ね合わせた方向から見て略五角形状をなす。そして、流路部42は、その略五角形状をなす各拡張部41,41の頂部Paに接続される。
【0039】
上記構成によれば、拡張部41に接続された流路部42が、その拡張部41の拡張を阻害し難い。そして、これにより、好適な拡張形状を確保することができる。
(3)拡張部41及び流路部42は、直線状に延びる流路部42の軸線Nを対称軸とした略線対称形状を有する。これにより、バランスよく、その拡張部41を拡張させることができる。
【0040】
(4)空気袋10は、流路部42を介して接続された一対の拡張部41,41を有する。これにより、互いに離間して配置された一対の拡張部41,41が、それぞれ、その流路部42との境界が維持された状態で拡張する好適な拡張形状を確保することができる。
【0041】
(5)シート装置20は、上記(1)~(4)の構成を有してシート表皮1xの内側に配置された空気袋10を備える。これにより、シート表皮1xの内側に設けられた空気袋10の好適な拡張形状に基づいて、そのシート1に着座する乗員に対して適切な押圧力を付与することができる。
【0042】
(6)シート装置20は、空気袋10を拡縮させることにより、そのシート表皮1xを内側から押圧するリフレッシュ機能を備える。
上記構成によれば、その空気袋10の好適な拡張形状に基づいて、シート1に着座する乗員に対して適切なリフレッシュ作用を付与することができる。即ち、流路部42との境界が維持された状態で拡張する拡張部41が、ピンポイントで、そのシート1に着座する乗員を押圧する。その結果、所謂指圧感を好適に再現することができる。そして、これにより、高いリフレッシュ効果を得ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態では、空気袋10は、その拡張部41と流路部42との接続部50において、その一対の線状接合部α2,α2が平行に延在するように構成されることとした。
しかし、これに限らず、図13に示す空気袋10Cのように、拡張部41の内部空間X1に対する流路X2の開口位置から、その流路X2の奥側に向かって(図7中、左側から右側)、一対の線状接合部α2,α2が拡開して延在する構成としてもよい。
【0045】
即ち、この空気袋10Cにおいて、拡張部41の内部空間X1に対する流路X2の開口位置に設定された一対の線状接合部α2,α2間の離間距離D1は、流路X2の奥側に設定された一対の線状接合部α2,α2間の離間距離D0よりも小さい(D1<D0)。このような構成を有する流路部42Cを採用しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0046】
・上記実施形態では、拡張部41は、各シート材30,30を重ね合わせた方向から見た拡張部41の形状、つまりは周縁部形状が略五角形状であることとした。しかし、これに限らず、拡張部41の周縁部形状は、五角以外の多角形状であってもよい。即ち、三角形状でも四角形状であってもよく、六角以上の多角形状であってもよい。そして、その拡張部41が円形状の周縁部形状を有する構成であってもよい。
【0047】
・上記実施形態では、流路部42は、多角形状をなす拡張部41の頂部Paに接続されることとしたが、その接続部は必ずしも多角形状の頂部Paでなくともよい。
・上記実施形態では、空気袋10は、その袋部40として、環状に延在する環状接合部α1を有した一対の拡張部41,41と、並行する一対の線状接合部α2,α2を有して上記各拡張部41,41に接続された流路部42と、を備えることとした。しかし、これに限らず、3つ以上の拡張部41を有するとともに、その隣り合う一対の拡張部41,41が、それぞれ、流路部42を介して互いに接続された構成に適用してもよい。そして、例えば、流路部42の一端に給排気流路Loを構成するエアチューブ25が接続される等、拡張部41が一つのみの構成に適用してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、拡張部41及び流路部42は、直線状に延びる流路部42の軸線Nを対称軸とした略線対称形状を有することとしたが、必ずしも、このような線対称形状でなくともよい。そして、その流路部42の形状についてもまた、必ずしも直線状に延在するものでなくともよい。
【0049】
・空気袋10を構成する各シート材30,30の材質や形状、及び、その貼り合わせ方法については任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、リフレッシュ用途に用いる空気袋10に具体化したが、シート表皮1xの内側で拡縮することにより、シート1のサポート形状を変更するシートサポート用の空気袋に適用してもよい。そして、車両のシート1以外の用途に用いられる空気袋に適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…空気袋
30…シート材
40…袋部
41…拡張部
42…流路部
50…接続部
α1…環状接合部
α2…線状接合部
X1…内部空間
X2…流路
図1
図2
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図4
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図13