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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158604
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ブレーキディスク
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/12 20060101AFI20221006BHJP
   B61H 5/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16D65/12 R
F16D65/12 B
B61H5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063619
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】カッペリーニ ステファーノ
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058BA64
3J058CB28
3J058DD02
3J058FA21
(57)【要約】
【課題】一対のディスク体を車輪に対して締結する際に、ディスク体と車輪との位置合わせを容易にする。
【解決手段】ブレーキディスクは、鉄道車両の車輪を挟むとともに、ブレーキパッドと接触して車輪の回転を制動する接触面に貫通孔形成する貫通壁が設けられた一対のディスク体を備える。一対のディスク体は、ボルトおよびナットを含む締結部材によって、車輪を挟むように締結可能である。一対のディスク体のうちの一方に設けられた貫通壁は、一部に一対のディスク体を車輪に締結する際のボルトの回転に伴うナットの回転を規制する規制壁が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車輪を挟むとともに、ブレーキパッドと接触して車輪の回転を制動する接触面に貫通孔形成する貫通壁が設けられた一対のディスク体を備え、
前記一対のディスク体は、ボルトおよびナットを含む締結部材によって、前記車輪を挟むように締結可能であり、
前記一対のディスク体のうちの一方に設けられた前記貫通壁は、一部に前記一対のディスク体を前記車輪に締結する際の前記ボルトの回転に伴う前記ナットの回転を規制する規制壁が設けられている、
ブレーキディスク。
【請求項2】
前記規制壁が設けられている前記貫通壁は、第1貫通孔を形成し、
前記一対のディスク体のうちの他方に設けられた前記貫通壁であって、前記規制壁が設けられていない前記貫通壁は、一部に前記ボルトの頭部を回転可能に収容するボルト収容壁が設けられて、第2貫通孔を形成する、
請求項1に記載のブレーキディスク。
【請求項3】
前記ナットは、多角柱状の形状を有し、
前記規制壁は、多角柱状の前記ナットの側面のうちの少なくとも一面と面接触する、
請求項2に記載のブレーキディスク。
【請求項4】
前記貫通壁は、前記ボルトの軸部を収容する軸部収容壁をさらに有し、
前記規制壁は、前記ナットの側面と面接触するように前記ナットを収容するナット収容壁を形成し、前記ナット収容壁と前記軸部収容壁とは前記接触面側に前記ナット収容壁が位置するように連続して形成され、
前記第1貫通孔の前記接触面上の穴径は、前記第1貫通孔の前記ナット収容壁が形成されている部分における穴径よりも小さい、
請求項3に記載のブレーキディスク。
【請求項5】
前記規制壁は、前記第1貫通孔において、前記一対のディスク体のそれぞれが摩耗し得る最大量である最大摩耗量よりも前記接触面から離れた位置に設けられる、
請求項2乃至4のいずれか一項に記載のブレーキディスク。
【請求項6】
前記車輪の回転軸方向から見たときの、前記第1貫通孔の形状と前記第2貫通孔の形状とが異なっている、
請求項2乃至5のいずれか一項に記載のブレーキディスク。
【請求項7】
前記一対のディスク体の一方には、複数の前記第1貫通孔と複数の前記第2貫通孔とが形成されており、
前記一対のディスク体の他方には、複数の前記第1貫通孔と複数の前記第2貫通孔とが形成されている、
請求項2乃至6のいずれか一項に記載のブレーキディスク。
【請求項8】
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第1貫通孔の数と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第1貫通孔の数と、が同一であり、
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第2貫通孔の数と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第2貫通孔の数と、が同一である、
請求項7に記載のブレーキディスク。
【請求項9】
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第1貫通孔の当該ディスク体における配置と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第1貫通孔の当該ディスク体における配置と、が同一であり、
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第2貫通孔の当該ディスク体における配置と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第2貫通孔の当該ディスク体における配置と、が同一である、
請求項8に記載のブレーキディスク。
【請求項10】
前記一対のディスク体の一方に、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が、前記車輪の回転軸方向から見て回転対称な配置で設けられており、
前記一対のディスク体の他方に、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が、前記車輪の回転軸方向から見て回転対称な配置で設けられている、請求項7乃至9のいずれか一項に記載のブレーキディスク。
【請求項11】
前記一対のディスク体の一方に、前記貫通孔が、前記車輪の回転軸を中心とする円周上に、等間隔に且つ前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が交互に並ぶように、配置されており、
前記一対のディスク体の他方に、前記貫通孔が、前記車輪の回転軸を中心とする円周上に、等間隔に且つ前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が交互に並ぶように、配置されている、
請求項10に記載のブレーキディスク。
【請求項12】
前記一対のディスク体の一方には、前記貫通孔として複数の前記第1貫通孔のみが形成されており、
前記一対のディスク体の他方には、前記貫通孔として複数の前記第2貫通孔のみが形成されている、
請求項2乃至6のいずれか一項に記載のブレーキディスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置用のブレーキディスクとして、互いから離間して設けられる一対のディスク体を備えるベンチレーテッドブレーキディスクが知られている。放熱ピンを備えたベンチレーテッドブレーキディスクは、例えば国際公開第2016/058792号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/058792号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のディスク体を車輪に対して締結する際に、ディスク体と車輪との位置合わせを、より容易にすることが求められている。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ディスク体と車輪との位置合わせが容易なブレーキディスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるブレーキディスクは、
鉄道車両の車輪を挟むとともに、ブレーキパッドと接触して車輪の回転を制動する接触面に貫通孔形成する貫通壁が設けられた一対のディスク体を備え、
前記一対のディスク体は、ボルトおよびナットを含む締結部材によって、前記車輪を挟むように締結可能であり、
前記一対のディスク体のうちの一方に設けられた前記貫通壁は、一部に前記一対のディスク体を前記車輪に締結する際の前記ボルトの回転に伴う前記ナットの回転を規制する規制壁が設けられている。
【0007】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記規制壁が設けられている前記貫通壁は、第1貫通孔を形成し、
前記一対のディスク体のうちの他方に設けられた前記貫通壁であって、前記規制壁が設けられていない前記貫通壁は、一部に前記ボルトの頭部を回転可能に収容するボルト収容壁が設けられて、第2貫通孔を形成してもよい。
【0008】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記ナットは、多角柱状の形状を有し、
前記規制壁は、多角柱状の前記ナットの側面のうちの少なくとも一面と面接触してもよい。
【0009】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記貫通壁は、前記ボルトの軸部を収容する軸部収容壁をさらに有し、
前記規制壁は、前記ナットの側面と面接触するように前記ナットを収容するナット収容壁を形成し、前記ナット収容壁と前記軸部収容壁とは前記接触面側に前記ナット収容壁が位置するように連続して形成され、
前記第1貫通孔の前記接触面上の穴径は、前記第1貫通孔の前記ナット収容壁が形成されている部分における穴径よりも小さくてもよい。
【0010】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記規制壁は、前記第1貫通孔において、前記一対のディスク体のそれぞれが摩耗し得る最大量である最大摩耗量よりも前記接触面から離れた位置に設けられてもよい。
【0011】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記車輪の回転軸方向から見たときの、前記第1貫通孔の形状と前記第2貫通孔の形状とが異なっていてもよい。
【0012】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記一対のディスク体の一方には、複数の前記第1貫通孔と複数の前記第2貫通孔とが形成されており、
前記一対のディスク体の他方には、複数の前記第1貫通孔と複数の前記第2貫通孔とが形成されていてもよい。
【0013】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第1貫通孔の数と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第1貫通孔の数と、が同一であり、
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第2貫通孔の数と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第2貫通孔の数と、が同一であってもよい。
【0014】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第1貫通孔の当該ディスク体における配置と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第1貫通孔の当該ディスク体における配置と、が同一であり、
前記一対のディスク体の一方に形成されている前記第2貫通孔の当該ディスク体における配置と、前記一対のディスク体の他方に形成されている前記第2貫通孔の当該ディスク体における配置と、が同一であってもよい。
【0015】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記一対のディスク体の一方に、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が、前記車輪の回転軸方向から見て回転対称な配置で設けられており、
前記一対のディスク体の他方に、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が、前記車輪の回転軸方向から見て回転対称な配置で設けられていてもよい。
【0016】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記一対のディスク体の一方に、前記貫通孔が、前記車輪の回転軸を中心とする円周上に、等間隔に且つ前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が交互に並ぶように、配置されており、
前記一対のディスク体の他方に、前記貫通孔が、前記車輪の回転軸を中心とする円周上に、等間隔に且つ前記第1貫通孔および前記第2貫通孔が交互に並ぶように、配置されていてもよい。
【0017】
本発明によるブレーキディスクにおいて、
前記一対のディスク体の一方には、前記貫通孔として複数の前記第1貫通孔のみが形成されており、
前記一対のディスク体の他方には、前記貫通孔として複数の前記第2貫通孔のみが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一対のディスク体を車輪に対して締結する際に、ディスク体と車輪との位置合わせを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態における、一対のディスク体が車輪に対して締結された状態のブレーキディスクを示す正面図である。
図2図1に示すブレーキディスクの一部を切り出した様子を示す斜視図である。
図3】本実施形態における、第1ディスク体を示す斜視図である。
図4図1の線C-Cに沿った一対のディスク体及び車輪の断面の一部を拡大して示す断面図である。
図5図1のうちナットの周辺を拡大して示す正面図である。
図6図1のうちボルトの頭部の周辺を拡大して示す正面図である。
図7】一対のディスク体における第1貫通孔及び第2貫通孔の配置を示す図である。
図8】本実施形態における、第1ディスク体を示す斜視図である。
図9】本実施形態における、位置決め部を拡大して示す図である。
図10】本実施形態における、車輪を示す斜視図である。
図11】本実施形態における、被位置決め部を拡大して示す図である。
図12】本実施形態における、車輪の被位置決め部及び車輪貫通孔の配置を示す図である。
図13】本実施の形態における、一対のディスク体を車輪に対して締結する作業の様子を示す図である。
図14】本実施の形態における、一対のディスク体を車輪に対して締結する作業の様子を示す図である。
図15】変形例1における、第1貫通孔を示す断面図である。
図16】変形例2における、第1貫通孔を示す断面図である。
図17】変形例3における、位置決め部及び被位置決め部を示す断面図である。
図18】変形例4における、位置決め部及び被位置決め部を示す断面図である。
図19】変形例5における、位置決め部と貫通孔との位置関係を示す図である。
図20】変形例6における、第1貫通孔及び第2貫通孔の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態のブレーキディスク1を、後述する回転軸方向d2から見た様子を示す正面図である。図1に示す例においては、一対のディスク体10が車輪20に対して締結されることで、車輪20と一対のディスク体10とを備えるブレーキディスク付き車輪100が形成されている。また、図2は、図1のブレーキディスク1を符号Aが付された破線及び符号Bが付された破線の位置において切断して、ブレーキディスク1の一部を扇形に切り出した様子を示す斜視図である。
【0021】
なお、図面間での方向関係を明確化するため、いくつかの図面には、車輪20の回転方向d1、回転軸方向d2及び径方向d3を、図面間で共通する方向として矢印で示している。また、ブレーキディスク1及びブレーキディスク付き車輪100を構成する部品等を示す図では、ブレーキディスク付き車輪100が形成されている状態、すなわち一対のディスク体10が車輪20に対して締結されている状態での方向を示している。
【0022】
本実施形態に係るブレーキディスク1は、一対のディスク体10を備える。図1及び図2に示す例において、一対のディスク体10は、車輪20を挟んでいる。一対のディスク体10は、後述する締結部材30によって、車輪20を挟むように締結可能である。一対のディスク体10は、車輪20を挟んで互いに対して締結されることによって、車輪20に対しても締結される。図1及び図2に示す例において、一対のディスク体10は、締結部材30によって、車輪20を挟むように締結される。
【0023】
一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、車輪20及びブレーキディスク1は、図1において点で表され且つ図2において一点鎖線で表されている回転軸A1を中心として、回転方向d1に回転する。回転軸A1が延伸する方向を、回転軸方向d2とも称する。
【0024】
図1及び図2に示す例においては、締結部材30が、車輪20を挟むように一対のディスク体10を締結するボルト31を含む。特に、締結部材30は、頭部31a及び頭部31aから延び出す軸部31bを有するボルト31と、ボルト31の軸部31bに噛み合うナット32と、を含む。そして、一対のディスク体10は、ボルト31と、ボルト31の軸部31bにねじ止めされるナット32と、によって締結可能である。
【0025】
また、車輪20及び一対のディスク体10には、車輪20と一対のディスク体10とを貫通するボルト貫通孔40が設けられている。そして、ボルト31がボルト貫通孔40に通されることによって、一対のディスク体10が車輪20を挟んで互いに対して締結される。特に、ボルト31をボルト貫通孔40に通した上で、軸部31bにナット32を噛み合わせることで、一対のディスク体10を互いに対して締結することができる。図1及び図2に示す例において、ボルト貫通孔40は、回転軸方向d2に延伸している。
【0026】
一対のディスク体10について説明する。本実施形態において、一対のディスク体10は、互いに同一の形状を有している。以下、一対のディスク体10のうちの図2において手前側に図示されているものを、第1ディスク体11とも称する。また、一対のディスク体10のうちの図2において奥側に図示されているものを、第2ディスク体12とも称する。図3は、第1ディスク体11を、後述する接触面10b側から見た様子を示す斜視図である。なお、図3においては、第1ディスク体11のうち、図2において図示した部分に相当する部分を示している。
【0027】
一対のディスク体10は、それぞれ中心に孔が形成された略円盤状の形状を有している。また、一対のディスク体10は、それぞれ、主面として、車輪20に対して締結された状態において車輪20側に位置する内面10aと、内面10a側とは反対側に位置する接触面10bと、を有する。接触面10bは、不図示のブレーキパッドと接触して車輪20の回転を制動する。例えば、一対のブレーキパッドが、不図示のブレーキキャリパによって、一対のディスク体10のそれぞれの接触面10bに近づく向き及び離れる向きに移動するように制御される。この場合、ブレーキキャリパによって制御された一対のブレーキパッドの一方が、一対のディスク体10の一方の接触面10bに接触し、一対のブレーキパッドの他方が、一対のディスク体10の他方の接触面10bに接触する。これによって、一対のブレーキパッドは一対のディスク体10に摩擦力による制動力を与える。一対のディスク体10から車輪20に制動力が伝達されることによって、車輪20の回転が制動される。
【0028】
一対のディスク体10の接触面10bのそれぞれには、貫通孔42を形成する貫通壁41が設けられている。図3に示すように、接触面10bのそれぞれには、貫通孔42を形成する貫通壁41が複数設けられている。図2に示すように、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)に形成された複数の貫通孔42と、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)に形成された複数の貫通孔42とが、回転軸方向d2において重なる。また、一対のディスク体10に形成された貫通孔42は、車輪20に形成された後述する車輪貫通孔45とも、回転軸方向d2において重なる。そして、一対のディスク体10の一方の貫通孔42と、車輪20の車輪貫通孔45と、一対のディスク体10の他方の貫通孔42とが回転軸方向d2において重なることで、ボルト貫通孔40が形成される。
【0029】
回転軸方向d2において重なってボルト貫通孔40を形成する一対のディスク体10の貫通孔42のうち、一対のディスク体10がボルト31及びナット32を用いて締結される際にナット32が配置される側の貫通孔42を、第1貫通孔43と称する。また、ボルト31の頭部31aが配置される側の貫通孔42を、第2貫通孔44と称する。
【0030】
図4は、図1の線C-Cに沿った一対のディスク体10及び車輪20の断面の一部を拡大して示す断面図である。図4において、ボルト貫通孔40の内部に配置される締結部材30については、断面ではなく、断面に垂直な方向から平面視した様子を示している。図4に示すように、貫通壁41は、それぞれ、ボルト31の軸部31bを収容する軸部収容壁411を有する。貫通壁41のうち、ナット32が配置される側に位置して第1貫通孔43を形成する貫通壁41は、軸部収容壁411と、第1拡径壁431とを有する。第1拡径壁431が形成されている部分における第1貫通孔43の穴径w1は、軸部収容壁411が形成されている部分における第1貫通孔43の穴径w2よりも大きくなっている。第1拡径壁431の一部は、後述する規制壁432を形成する。規制壁432は、図4に示すように、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、ナット32を収容するナット収容壁433としても機能する。規制壁432(ナット収容壁433)は、自身の間に配置されたナット32の回転を規制する。図4に示す例において、第1貫通孔43は、軸部収容壁411の間にボルト31の軸部31bの一部を収容しているとともに、規制壁432(ナット収容壁433)の間にナット32を収容している。第1貫通孔43を形成している規制壁432(ナット収容壁433)と軸部収容壁411とは、規制壁432(ナット収容壁433)が軸部収容壁411よりも、第1貫通孔43が形成されているディスク体10の接触面10b側に位置するように、連続して形成される。なお、貫通孔42などの孔において、穴径とは、当該孔の延伸する方向に垂直な垂直方向における当該孔の幅を意味する。当該垂直方向における孔の幅が一定でない場合には、穴径とは、当該垂直な方向における当該孔の最小幅を意味する。
【0031】
また、第2貫通孔44は、軸部収容壁411と、第2拡径壁441とを有する。第2拡径壁441が形成されている部分における第2貫通孔44の穴径w3は、軸部収容壁411が形成されている部分における第2貫通孔44の穴径w4よりも大きくなっている。第2拡径壁441の一部は、後述するボルト収容壁442を形成する。図4に示す例において、第2貫通孔44は、軸部収容壁411の間にボルト31の軸部31bの一部を収容しているとともに、ボルト収容壁442の間にボルト31の頭部31aを収容している。第2貫通孔44を形成しているボルト収容壁442と軸部収容壁411とは、ボルト収容壁442が軸部収容壁411よりも、第2貫通孔44が形成されているディスク体10の接触面10b側に位置するように、連続して形成される。
【0032】
規制壁432について説明する。一対のディスク体10のうち一方に設けられた貫通壁41には、その一部に、ナット32の回転を規制する規制壁432が設けられる。規制壁432は、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際の、ボルト31の回転に伴うナット32の回転を規制する。一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際には、ボルト31は、軸部31bの中心を通り且つ軸部31bの延伸する方向に延伸する軸線A2を中心に回転させられる。そして、規制壁432は、ボルト31の軸線A2を中心とした回転に伴ってナット32が回転しないように、ナット32の回転を規制する。ボルト31の軸部31bは、回転軸方向d2に平行に延伸している。図4に示す例において、ボルト貫通孔40は、それぞれ、一対のディスク体10のうちの一方に形成された第1貫通孔43と、一対のディスク体10のうちの他方に形成された第2貫通孔44と、を含む。そして、第1貫通孔43を形成する貫通壁41のうち、第1拡径壁431の一部に、規制壁432が設けられている。
【0033】
規制壁432がナット32の回転を規制する態様の一例について説明する。本実施形態におけるブレーキディスク1において、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際には、以下の操作を行う。まず、ボルト貫通孔40のうち第1貫通孔43の規制壁432の間にナット32を配置する。次に、第2貫通孔44からボルト31の軸部31bを挿入し、ボルト31をナット32に対して回転させる。以上の操作によって、軸部31bにナット32が噛み合い、一対のディスク体10が車輪20に対して締結される。
【0034】
ここで、一例として、ナット32は、多角柱状の形状を有している。図5は、図1の正面図のうちナット32の周辺を拡大して示す正面図である。図5に示す例において、ナット32は、ボルト31の軸部31bと噛み合う孔部32aが設けられた多角柱状、特に六角柱状の形状を有している。
【0035】
そして、本実施形態における第1貫通孔43の規制壁432は、多角柱状のナット32の側面32bのうちの少なくとも一面と面接触するように設けられている。ナット32が側面32bにおいて規制壁432と面接触することによって、ボルト31をナット32に対して回転させて軸部31bにナット32を噛み合わせる際に、ボルト31の回転に伴ってナット32も回転してしまうことが防止される。
【0036】
このように、規制壁432によって、ボルト31の回転に伴うナット32の回転を防止することができる。特に、規制壁432が多角柱状のナット32の側面32bのうちの少なくとも一面と面接触する場合には、ナット32の回転を効果的に防止することができる。なお、図5に示す例においては、六角柱状のナット32が、二面の側面32bにおいて、規制壁432と面接触している。
【0037】
また、図5に示すように、第1貫通孔43のうちボルト31の軸部31bが延伸する方向において規制壁432が設けられている部分の最小幅w15は、ボルト31の軸部31bが延伸する方向におけるナット32の最大幅w16よりも、小さくなっている。これによっても、ナット32の回転が規制されている。
【0038】
また、規制壁432(ナット収容壁433)は、第1貫通孔43において、一対のディスク体10のそれぞれが摩耗し得る最大量である最大摩耗量よりも接触面10bから離れた位置に設けられる。ここで、最大摩耗量とは、回転軸方向d2におけるディスク体10の厚みのうち、接触面10bがブレーキパッドに接触することによって摩耗し得る厚みを指す。換言すれば、一対のディスク体10が車輪20に対して締結されている状態においてナット32を収容する部分である規制壁432(ナット収容壁433)と、第1貫通孔43が形成されているディスク体10の接触面10bとの距離w5は、最大摩耗量よりも大きい(図4参照)。これによって、ディスク体10が最大摩耗量まで摩耗した場合であっても、ナット32がブレーキパッドに接してしまうことを防止することができる。
【0039】
また、一対のディスク体10が車輪20に対して締結されている状態において、第1貫通孔43が形成されているディスク体10の接触面10bと、ボルト31の軸部31bとの距離w6は、最大摩耗量よりも大きい(図4参照)。
【0040】
最大摩耗量の定義の一例について説明するため、ディスク体10が、接触面10bを形成する第1の層と、当該第1の層に、接触面10bを形成する側とは反対側から重なる第2の層と、を有する積層体から構成される場合について考える。当該第1の層は、ブレーキディスク1の使用により摩耗することが許容される層である。また、当該第2の層は、ブレーキディスク1の使用により摩耗することが許容されない層である。この場合、最大摩耗量を、回転軸方向d2における当該第1の層の厚みと定義することができる。
【0041】
また、最大摩耗量は、接触面10bに接触するブレーキパッドの面が当該ブレーキパッドを備えるブレーキキャリパの設計上移動可能な最も車輪20側の位置と、接触面10bとの距離と定義することもできる。
【0042】
図5に示す例において、規制壁432は、回転軸方向d2から見て、互いに平行な一対の直線部分432aと、一対の直線部分432a同士を接続する一対の曲線部分432bとからなる輪郭を有している。一対の曲線部分432bは、それぞれ略円弧状の曲線となっている。このような形状の規制壁432は、例えば以下の方法によってディスク体10に容易に形成することができる。まず、ディスク体10に、第1貫通孔43のうち軸部収容壁411が形成されている部分の穴径に相当する大きさの穴径を有する孔を形成する。次に、ディスク体10の接触面10bにエンドミルを接触させて、規制壁432を含む第1拡径壁431を形成する。このとき、上述した、回転軸方向d2から見て一対の直線部分432aと一対の曲線部分432bとからなる輪郭を有する規制壁432は、エンドミルをディスク体10の接触面10bに接触させて一方向に動かすのみの操作によって形成できる。
【0043】
ボルト収容壁442について説明する。本実施形態においては、一対のディスク体10のうち一方に設けられた貫通壁41の一部に規制壁432が設けられている。そして、一対のディスク体10のうちの他方に設けられた貫通壁41であって、規制壁432が設けられていない貫通壁41には、その一部に、ボルト31の頭部31aを回転可能に収容するボルト収容壁442が設けられる。ボルト収容壁442が設けられた貫通壁41は、第2貫通孔44を形成する。図4に示す例において、ボルト貫通孔40は、それぞれ、一対のディスク体10のうちの一方に形成された第1貫通孔43と、一対のディスク体10のうちの他方に形成された第2貫通孔44と、を含む。そして、第2貫通孔44を形成する貫通壁41のうち、第2拡径壁441の一部に、ボルト収容壁442が設けられている。これによって、ボルト31をナット32に対して回転させて軸部31bにナットを噛み合わせることを可能としつつ、ボルト収容壁442の間にボルト31の頭部31aを収容することができる。
【0044】
図6は、図1の正面図のうちボルト31の頭部31aの周辺を拡大して示す正面図である。図6に示す例において、第2貫通孔44のうちボルト収容壁442が形成されている部分の穴径w7は、ボルト31が延伸する方向に直交する方向における頭部31aの寸法w8以上となっている。これによって、頭部31aがボルト収容壁442の間に収容されている状態でも、ボルト31をナット32に対して回転させることができる。図6に示す例において、頭部31aは、回転軸方向d2から見て、円形の輪郭を有している。そして、第2貫通孔44のうちボルト収容壁442が形成されている部分は、丸穴となっている。そして、第2貫通孔44のうちボルト収容壁442が形成されている部分の穴径w7が、頭部31aの直径w8以上となっている。
【0045】
また、一対のディスク体10が車輪20に対して締結されている状態において、第2貫通孔44が形成されているディスク体10の接触面10bと、ボルト31の頭部31aとの距離w9は、最大摩耗量よりも大きい(図4参照)。
【0046】
図5及び図6に示すように、車輪20の回転軸方向d2から見たときの、第1貫通孔43の形状と第2貫通孔44の形状とは、異なっている。一例として、第1拡径壁431の形状と第2拡径壁441の形状とが異なっていることにより、車輪20の回転軸方向d2から見たときの、第1貫通孔43の形状と第2貫通孔44の形状とは異なって見えるようになっている。本実施形態においては、上述したように、第1拡径壁431のうち規制壁432が、回転軸方向d2から見て、一対の直線部分432aと一対の曲線部分432bとからなる輪郭を有している。また、第2拡径壁441のうちボルト収容壁442が、回転軸方向d2から見て、円形の輪郭を有している。これによって、車輪20の回転軸方向d2から見ることで、第1貫通孔43と第2貫通孔44とが識別され得る。このため、後述する一対のディスク体10を車輪20に対して締結する作業において、作業者が、ナット32を収容すべき第1貫通孔43とボルト31を挿入すべき第2貫通孔44とを間違えることが抑制される。特に、後述するように、ブレーキディスク付き車輪100の重さや締結力のバランスの観点から、ナット32及びボルト31の配置として好ましい配置がある場合に、作業者のミスのためにナット32及びボルト31の配置が上記の好ましい配置ではなくなることを抑制できる。
【0047】
一対のディスク体10における、第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置について説明する。図7は、一対のディスク体10における第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置を示す図である。なお、図7においては、一対のディスク体10を、それぞれ接触面10b側から見た様子を示している。また、図7においては、第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置の図示と理解のしやすさの便宜上、第1貫通孔43、第2貫通孔44及び一対のディスク体10の形状を、図3等よりも簡略化して図示している。
【0048】
図7に示すように、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)には、複数の第1貫通孔43と複数の第2貫通孔44とが形成されている。また、一対のディスク体の他方(例えば第2ディスク体12)にも、複数の第1貫通孔43と複数の第2貫通孔44とが形成されている。これによって、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際に、第1ディスク体11側からボルト31が挿入されて締結される箇所と、第2ディスク体12側からボルト31が挿入されて締結される箇所と、の両方が形成される。これによって、締結によって形成されるブレーキディスク付き車輪100において、締結力のバランスをより均等にすることができる。
【0049】
また、図7に示すように、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)に形成されている第1貫通孔43の数と、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)に形成されている第1貫通孔43の数と、は同一である。また、図7に示すように、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)に形成されている第2貫通孔44の数と、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)に形成されている第2貫通孔44の数と、は同一である。これによって、以下の効果が得られる。ブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方と他方とに収容されるナット32の数を同一にすることができる。また、一対のディスク体10の一方と他方とに収容されるボルト31の頭部31aの数を同じにすることができる。このため、一対のディスク体10の一方が位置する側と、他方が位置する側とで、ブレーキディスク付き車輪100の重みを均等にすることができる。特に、第1貫通孔43に収容されるナット32と、第2貫通孔44に収容されるボルト31の頭部31aとの重みが異なる場合でも、ブレーキディスク付き車輪100の重みを均一にすることができる。これによって、ブレーキディスク付き車輪100が回転する際に、重みが不均一であるために回転軸A1がぶれることを、抑制することができる。
【0050】
本実施形態において、第1ディスク体11と第2ディスク体12とは、それぞれ6個の第1貫通孔43と6個の第2貫通孔44とを有している。このため、第1ディスク体11と第2ディスク体12とは、それぞれ12個の貫通孔42を有している。
【0051】
また、図7に示すように、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)に形成されている第1貫通孔43の当該ディスク体10における配置と、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)に形成されている第1貫通孔43の当該ディスク体10における配置と、は同一である。また、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)に形成されている第2貫通孔44の当該ディスク体10における配置と、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)に形成されている第2貫通孔44の当該ディスク体における配置と、は同一である、本実施形態においては、第1ディスク体11における第1貫通孔43の配置と、第2ディスク体12における第1貫通孔43の配置とが、同一となっている。また、第1ディスク体11における第2貫通孔44の配置と、第2ディスク体12における第2貫通孔44の配置とが、同一となっている。
【0052】
本実施形態においては、一対のディスク体10の一方と他方とにおいて、第1貫通孔43の数及び配置、並びに第2貫通孔44の数及び配置が、同一となっている。これによって、一対のディスク体10の一方と他方とは、同一の形状を有している。一対のディスク体10の一方と他方とが同一の形状を有することによって、一対のディスク体10の一方と他方とを別々に生産する必要がなくなる。このため、ブレーキディスク1の生産性が向上する。また、後述する、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する作業の際に、作業者が一対のディスク体10の一方と他方とを取り違える危惧がなくなる。
【0053】
なお、一対のディスク体10を車輪20に対して締結するためには、一対のディスク体10の一方に形成されている第1貫通孔43と、他方に形成されている第2貫通孔44とを回転軸方向d2に重ねてボルト貫通孔40を形成する必要がある。一対のディスク体10を使用しつつボルト貫通孔40の形成を可能とするためには、使用するディスク体10が、以下の条件を満たせばよい。まず使用するディスク体10において第1貫通孔43が形成されている位置に第2貫通孔44が形成され且つ第2貫通孔44が形成されている位置に第1貫通孔43が形成されている仮想のディスク体を考える。使用するディスク体10と仮想のディスク体とを、互いの内面を対向させて面対称に配置することが可能であれば、一対のディスク体10の一方と他方との形状を同一としつつボルト貫通孔40を形成することが可能である。
【0054】
また、図7に示すように、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)には、第1貫通孔43及び第2貫通孔44が、車輪20の回転軸方向d2から見て回転対称な配置で設けられている。そして、一対のディスク体の他方(例えば第2ディスク体12)にも、第1貫通孔43及び第2貫通孔44が、車輪20の回転軸方向d2から見て回転対称な配置で設けられている。これによって、以下の効果が得られる。ナット32と、ボルト31の頭部31aとの重みが異なることが考えられる。この場合に、ブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方の側に配置されているナット32とボルト31の頭部31aとを、回転軸方向d2から見て回転対称に配置することができる。また、一対のディスク体10の他方の側に配置されているナット32とボルト31の頭部31aとを、回転軸方向d2から見て回転対称に配置することができる。これによって、ブレーキディスク付き車輪100が回転する際に、回転方向d1におけるナット32及びボルト31の頭部31aの分布の偏りのために回転軸A1がぶれることを、抑制することができる。
【0055】
本実施形態においては、一対のディスク体10の一方及び他方のそれぞれに、第1貫通孔43及び第2貫通孔44が、車輪20の回転軸A1を中心として回転対称な配置で設けられている。
【0056】
また、図7に示すように、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)において、貫通孔42が、車輪20の回転軸A1を中心とする円周C1上に、等間隔に配置されている。また、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)において、貫通孔42が、車輪20の回転軸A1を中心とする円周C2上に、等間隔に配置されている。
【0057】
また、図7に示すように、一対のディスク体10のそれぞれにおいて、第1貫通孔43及び第2貫通孔44が、車輪20の回転軸A1を中心とする円周上に交互に形成される。図7に示す例では、一対のディスク体10の一方(例えば第1ディスク体11)において、貫通孔42は、円C1の円周上に、第1貫通孔43及び第2貫通孔44が交互に並ぶように配置されている。また、一対のディスク体10の他方(例えば第2ディスク体12)において、貫通孔42は、円C2の円周上に、第1貫通孔43及び第2貫通孔44が交互に並ぶように、配置されている。これによって、以下の効果が得られる。ナット32と、ボルト31の頭部31aとの重みが異なることが考えられる。この場合に、ブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方の側において、ナット32とボルト31の頭部31aとを円C1の円周上に交互に配置することができる。また、一対のディスク体10の他方の側において、ナット32とボルト31の頭部31aとを円C2の円周上に交互に配置することができる。これによって、ブレーキディスク付き車輪100が回転する際に、回転方向d1におけるナット32及びボルト31の頭部31aの分布の偏りのために回転軸A1がぶれることを、より効果的に抑制することができる。
【0058】
図7に示す例において、円C1,C2は、一対のディスク体10のうち、回転軸方向d2に垂直な径方向d3における一対のディスク体10の外縁10cと内縁10dとの中点を通っている。そして、第1貫通孔43及び第2貫通孔44は、中点を通る円C1,C2の円周上に形成されている。これによって、以下の効果が得られる。ディスク体10には、熱によって反りが生じる懸念がある。この場合、ディスク体10を径方向d3において外縁10c側に偏った位置において締結すると、締結位置から遠くなる内縁10d側において大きな反りが生じる可能性がある。同様に、ディスク体10を径方向d3において内縁10d側に偏った位置において締結すれば、外縁10c側において大きな反りが生じる可能性がある。第1貫通孔43及び第2貫通孔44を、中点を通る円C1,C2の円周上に形成することによって、ディスク体10が中点を通る円C1,C2の円周上において車輪20に締結されるようになる。このため、ディスク体10の反りを外縁10c側と内縁10d側とに分散して、反りの影響を低減することができる。
【0059】
なお、貫通孔42が「円周上に配置されている」及び貫通孔42が「円周上に形成されている」とは、円周上に貫通孔42の一部が位置していることを意味する。
【0060】
次に、ディスク体10の内面10a側の形態について説明する。図8は、第1ディスク体11を内面10a側から見た様子を示す斜視図である。なお、図8においては、第1ディスク体11のうち、図2において図示した部分に相当する部分を示している。図8に示すように、ブレーキディスク1は、一対のディスク体10のそれぞれの主面から突出するように設けられた複数の放熱部材13と、一対のディスク体10のそれぞれに形成された位置決め部14とを備える。
【0061】
放熱部材13は、一対のディスク体10のそれぞれの内面10aに設けられて、内面10aから突出している。一対のディスク体10を、車輪20を挟んで互いに対して締結する際に、複数の放熱部材13は、車輪20を挟む。
【0062】
複数の放熱部材13が設けられていることによって、ブレーキディスク1と大気との接触面積が増加する。そして、一対のディスク体10の接触面10bにブレーキパッドが接触した際の摩擦により発生した摩擦熱が、一対のディスク体10の内面10a及び接触面10bだけでなく、放熱部材13の表面からも大気に放出される。このため、一対のディスク体10を効率的に冷却することができる。
【0063】
図8に示す例において、放熱部材13は、ピン状の形状を有している。そして、ピン状の放熱部材13の各々は、回転軸方向d2に沿って延伸している。図8に示す例において、放熱部材13は、回転軸方向d2に垂直な面で切断した断面が、ほぼ円形の形状を有するように構成されている。ピン状の放熱部材13を回転軸方向d2に垂直な面で切断した断面の形状は円形に限られず、例えば、楕円形、多角形、及びこれ以外の形状とすることができる。また、図示はしないが、放熱部材13の形状はピン状に限られない。放熱部材13は、例えばフィン状、換言すれば、内面10aに垂直な略板状の形状を有していてもよい。
【0064】
位置決め部14について説明する。位置決め部14は、一対のディスク体10を車輪20に対して締結するため、車輪20に対して一対のディスク体10を接触させる際に、一対のディスク体10と車輪20とが適切な位置関係で接触するようにガイドする構成要素である。一対のディスク体10のそれぞれには、位置決め部14が形成される。位置決め部14は、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際に、後述する車輪20の被位置決め部21と噛み合う。位置決め部14は、被位置決め部21と噛み合って一対のディスク体10のそれぞれを車輪20に対して位置決めする。図8に示す例において、位置決め部14は、内面10aから突出した突起状の形状を有する。位置決め部14は、複数の放熱部材13よりも当該放熱部材13の高さ方向に突出している。図8に示す例においては、放熱部材13の高さ方向は回転軸方向d2と一致している。そして、位置決め部14は、内面10aから、回転軸方向d2に沿って、放熱部材13よりも大きく突出している。
【0065】
図8に示す例において、位置決め部14は、複数の放熱部材13の高さ方向において当該放熱部材13と同じ高さを有する基部15と、基部15の先端面15aに形成された位置決め凸部16と、を有する。位置決め凸部16は、基部15の先端面15aから放熱部材13の高さ方向に突出する凸部である。位置決め凸部16は、後述する被位置決め部21と噛み合う。位置決め凸部16は、基部15の先端面15aの一部に設けられており、このために基部15よりも細くなっている。位置決め部14が基部15を有することによって、被位置決め部21と噛み合う部分の形状及び寸法を噛み合いに適したものとしつつ、位置決め部14の強度を確保することができる。このため、位置決め部14を折れにくくすることができる。
【0066】
図8に示す例において、位置決め部14のうち基部15は、ピン状の放熱部材13よりも大きな太さを有している。また、位置決め部14のうち位置決め凸部16も、ピン状の放熱部材13よりも大きな太さを有している。位置決め部14は、車輪20の回転軸A1を中心とする円周上に等間隔で並ぶように形成されている。本実施形態において、一対のディスク体10のそれぞれは、3個の位置決め部14を有している。
【0067】
図9は、位置決め凸部16を有する位置決め部14を、回転軸方向d2から見た様子を示す図である。位置決め凸部16は、互いに対向する一対の平面16aと、一対の平面16a同士を接続する一対の曲面16bとからなる側面を有している。一対の曲面16bは、図9に示すような回転軸方向d2からの観察において、それぞれ略円弧状の輪郭を有する。
【0068】
次に、車輪20について説明する。図10は、本実施形態における車輪20を示す斜視図である。なお、図10においては、車輪20のうち、図2において図示した部分に相当する部分を示している。車輪20は、中心に孔が形成された略円盤状の形状を有している。図10に示すように、車輪20は、第1面20a及び第2面20bを有している。一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際には、図2に示すように、車輪20の第1面20aが第1ディスク体11の内面10aと対向し、車輪20の第2面20bが第2ディスク体12の内面10aと対向する。車輪20は、鉄道車両用の車輪である。図2に示す例において、第1面20aは、車輪20が鉄道車両に取り付けられた際に鉄道車両の外側に位置する面である。また、第2面20bは、車輪20が鉄道車両に取り付けられた際に鉄道車両の中心側に位置する面である。
【0069】
図4に示すように、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、第2ディスク体12の放熱部材13の先端13a及び基部15の先端面15aは、第2面20bに接する。また、第1ディスク体11の放熱部材13の先端13a及び基部15の先端面15aは、第1面20aに接する。
【0070】
車輪20には、第1面20aから第2面20bまで貫通する、車輪貫通孔45が形成されている。一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、車輪貫通孔45は、一対のディスク体10の一方に形成された第1貫通孔43及び一対のディスク体10の他方に形成された第2貫通孔44と、回転軸方向d2において重なる。これによって、車輪貫通孔45、第1貫通孔43及び第2貫通孔44から、ボルト貫通孔40が形成される。図4に示すように、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、車輪貫通孔45はボルト31の軸部31bの一部を収容する。
【0071】
また、車輪20には、上述の位置決め部14と噛み合う被位置決め部21が設けられる。被位置決め部21は、位置決め部14と噛み合って一対のディスク体10のそれぞれを車輪20に対して位置決めする。本実施形態においては、車輪20の第1面20aに、第1ディスク体11に形成された位置決め部14と噛み合う被位置決め部21が設けられている。また、車輪20の第2面20bに、第2ディスク体12に形成された位置決め部14と噛み合う被位置決め部21が設けられている。車輪20の第1面20a及び第2面20bのそれぞれにおいて、被位置決め部21は、車輪20の回転軸A1を中心とする円周上に等間隔で並ぶように設けられている。また、車輪20は、第1面20aに設けられた3個の被位置決め部21と、第2面20bに設けられた3個の被位置決め部21と、を有している。
【0072】
本実施形態においては、図10に示すように、被位置決め部21は、位置決め凸部16と噛み合う被位置決め凹部22を有する。図10に示す例において、被位置決め部21は、ディスク体10の一面から突出した位置決め部14と噛み合う被位置決め凹部22を有する。図10に示す例において、被位置決め部21は、回転軸方向d2に凹んだ被位置決め凹部22を有している。
【0073】
図11は、被位置決め凹部22を有する被位置決め部21を、回転軸方向d2から見た様子を示す図である。被位置決め凹部22は、互いに平行な一対の平面22aと、一対の平面22a同士を接続する一対の曲面22bとからなる側面を有している。一対の曲面22bは、図11に示すような回転軸方向d2からの観察において、それぞれ略円弧状の輪郭を有する。
【0074】
位置決め部14が被位置決め部21に噛み合った状態において、車輪20がディスク体10に対して回転方向d1に一定量相対回転すると、位置決め部14と被位置決め部21とが接触する。これによって、車輪20のディスク体10に対する一定量以上の相対回転が防止される。ここで、位置決め部14と被位置決め部21とは、車輪20がディスク体10に対して相対回転した際に、面接触してもよい。一例として、図9に示す位置決め部14と、図11に示す被位置決め部21とは、車輪20がディスク体10に対して相対回転した際に、平面16aと平面22aとにおいて面接触する。
【0075】
ここで、位置決め部14と被位置決め部21とが面接触する場合において、位置決め部14と被位置決め部21との接触面は、車輪20の回転方向d1に対して75度以上105度以下の角度を形成する平面を有する。
【0076】
なお、接触面が回転方向d1に対して形成する角度は、以下のように定められる。図11に示す被位置決め部21が、車輪20がディスク体10に対して相対回転した際に、領域21aにおいて位置決め部14との接触面を形成するものとする。この場合、まず、車輪20の回転軸A1を中心とする任意の円C3を引く。次に、円C3と接触面との交点P1における、円C3の接線L1を引く。この接線L1と接触面とがなす角度θ1が、接触面が回転方向d1に対して形成する角度と定められる。
【0077】
位置決め部14と被位置決め部21との接触面が、車輪20の回転方向d1に対して75度以上105度以下の角度を形成する平面を有することの効果について説明する。ブレーキパッドがディスク体10に制動力を与えると、制動力は、位置決め部14と被位置決め部21とが接触することによって、ディスク体10から車輪20へと伝達される。ここで、接触面が上記の条件を満たすことによって、車輪20の回転方向d1と逆方向にはたらく制動力を、制動力の方向に対して垂直に近い角度(75度以上105度以下の角度)をなす接触面によって受けることができる。これによって、位置決め部14と被位置決め部21との接触面を介して、ディスク体10に加えられる制動力を、効率良く車輪20に伝えることができる。
【0078】
位置決め部14及び被位置決め部21と、ボルト貫通孔40との位置関係について説明する。図4に示すように、位置決め部14及び被位置決め部21にはボルト貫通孔40が設けられている。位置決め部14には、ボルト貫通孔40のうち貫通孔42が形成されており、被位置決め部21には、車輪貫通孔45が形成されている。図4に示す例において、ボルト貫通孔40は、位置決め凸部16の先端面16cを通っている。
【0079】
図12は、回転軸方向d2から車輪20の第1面20a側を見た場合における、被位置決め部21及び車輪貫通孔45の配置を示す図である。図12に、車輪20の第1面20aに設けられている被位置決め部21の位置を実線で示すとともに、車輪20の第2面20bに設けられている被位置決め部21の位置を一点鎖線で示す。一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、車輪20の第1面20aに設けられている被位置決め部21には、第1ディスク体11に形成された位置決め部14と噛み合い、車輪20の第2面20bに設けられている被位置決め部21には、第2ディスク体12に形成された位置決め部14と噛み合う。
【0080】
また、図12に、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、第1ディスク体11の第1貫通孔43及び第2貫通孔44が車輪20に重なる位置を、破線で示す。図示はしないが、車輪20のうち第1ディスク体11の第1貫通孔43が重なる位置には、第2ディスク体12の第2貫通孔44が重なる。また、車輪20のうち第1ディスク体11の第2貫通孔44が重なる位置には、第2ディスク体12の第1貫通孔43が重なる。
【0081】
なお、図12においては、被位置決め部21、車輪貫通孔45、第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置の図示と理解のしやすさの便宜上、被位置決め部21、車輪貫通孔45、第1貫通孔43、第2貫通孔44及び車輪20の形状を、図3図10等よりも簡略化して図示している。
【0082】
本実施の形態においては、図12に示すように、車輪20の第1面20aに設けられている被位置決め部21と、車輪20の第2面20bに設けられている被位置決め部21とは、回転軸方向d2において重ならない。このため、一対のディスク体10が車輪20に対して締結されてブレーキディスク付き車輪100が形成されている状態では、車輪20の回転軸方向d2において、一対のディスク体10の一方に設けられた位置決め部14と、他方に設けられた位置決め部14との位置が異なるものとなる。換言すれば、ブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方に設けられた位置決め部14と、他方に設けられた位置決め部14とは、回転軸方向d2において重ならない。ブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方に設けられた位置決め部14が被位置決め部21に噛み合う位置と、一対のディスク体10の他方に設けられた位置決め部14が被位置決め部21に噛み合う位置とは、回転軸方向d2において重ならない。
【0083】
ブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方に設けられた位置決め部14と、他方に設けられた位置決め部14との位置が異なることの効果について説明する。ブレーキパッドがディスク体10に制動力を与えると、制動力は、位置決め部14が被位置決め部21に噛み合う部分を介して、ディスク体10から車輪20へと伝達される。ここで、一対のディスク体10の一方に設けられた位置決め部14と、他方に設けられた位置決め部14との位置が異なることによって、一対のディスク体10の一方から車輪20に制動力が伝わる位置と、一対のディスク体10の他方から車輪20に制動力が伝わる位置とが、車輪20の回転方向d1においてずらすことができる。このため、制動力に起因する車輪20への負荷を、車輪20の回転方向d1に分散することができる。
【0084】
また、複数のボルト貫通孔40のうちの一部は、一対のディスク体10の一方の位置決め部14が形成されている部分と、一対のディスク体10の他方の位置決め部14が形成されていない部分と、を貫通している第1ボルト貫通孔40aとなっている。また、複数のボルト貫通孔40のうちの他の一部は、一対のディスク体10のいずれにも位置決め部14が形成されていない部分を貫通している、第2ボルト貫通孔40bとなっている。なお図12には、車輪20に一対のディスク体10を締結してブレーキディスク付き車輪100を形成した場合に第1ボルト貫通孔40aが形成される位置に、便宜的に符号40aを付している。また、第2ボルト貫通孔40bが形成される位置に、便宜的に符号40bを付している。
【0085】
ここで、本実施の形態においては、図2図3及び図12から理解できるように、一対のディスク体10のいずれにおいても、位置決め部14には、第2貫通孔44が形成されている。すなわち、第1ボルト貫通孔40aは、いずれも、一対のディスク体10の一方のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44と、一対のディスク体10の他方のうち位置決め部14が形成されていない部分に形成されている第1貫通孔43と、を含むものとなっている。そして、第1貫通孔43は、いずれも、ディスク体10のうち、位置決め部14が形成されていない部分に形成されている。
【0086】
一対のディスク体10のいずれにおいても位置決め部14には第2貫通孔44が形成されていることの効果について説明する。本実施形態においては、ブレーキディスク1の生産性の向上などの観点から、一対のディスク体10の一方と他方とが同一の形状を有している。一方で、上述のように、ナット32が収容される第1貫通孔43と、ボルト31の頭部31aが収容される第2貫通孔44とは、形状が異なっている。このため、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際には、一対のディスク体10の一方に形成された第1貫通孔43と、一対のディスク体10の他方に形成された第2貫通孔44とを重ねた上で、ボルト31及びナット32を用いて締結を行う。仮に、一対のディスク体10の一方と他方とに形成された第2貫通孔44同士が重なった場合、当該第2貫通孔44を利用して締結を行うことはできない。このため、一対のディスク体10及び車輪20は、締結時に当該第2貫通孔44同士が重なることがないように、設計される。
【0087】
ここで、一対のディスク体10のいずれにおいても位置決め部14に第2貫通孔44を形成する場合、車輪20の被位置決め部21も、位置決め部14に形成されている第2貫通孔44同士が重ならないように配置する必要が生じる。具体的には、上述したように、車輪20の第1面20aに設けられている被位置決め部21と、車輪20の第2面20bに設けられている被位置決め部21とを、回転軸方向d2において重ならないように配置する必要が生じる。これによって、一対のディスク体10の位置決め部14を車輪20の被位置決め部21に噛み合わせて形成されたブレーキディスク付き車輪100において、一対のディスク体10の一方と他方とに設けられた位置決め部14の位置を異ならせることができる。このように、一対のディスク体10の一方と他方との形状を同一としつつ、ブレーキディスク付き車輪100における、一対のディスク体10の一方と他方とに設けられた位置決め部14の位置を異ならせることができる。
【0088】
また、一対のディスク体10のいずれにおいても位置決め部14には第2貫通孔44が形成され、且つ車輪20の第1面20aに設けられている被位置決め部21と、車輪20の第2面20bに設けられている被位置決め部21とが、回転軸方向d2において重ならないように配置されることによって、以下の効果が得られる。一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際に、一対のディスク体10の位置決め部14を車輪20の被位置決め部21に対して締結することによって、位置決め部14に形成された第2貫通孔44同士が重なることを防止することができる。
【0089】
図4及び図12から理解できるように、複数の第1ボルト貫通孔40aのうち一部は、第1ディスク体11のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44と、車輪20のうち第1面20aに被位置決め部21が設けられ且つ第2面20bには被位置決め部21が設けられていない部分に形成されている車輪貫通孔45と、第2ディスク体12のうち位置決め部14が形成されていない部分に形成されている第1貫通孔43と、からなる。複数の第1ボルト貫通孔40aのうち他の一部は、第1ディスク体11のうち位置決め部14が形成されていない部分に形成されている第1貫通孔43と、車輪20のうち第1面20aには被位置決め部21が設けられておらず且つ第2面20bには被位置決め部21が設けられている部分に形成されている車輪貫通孔45と、第2ディスク体12のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44と、からなる。複数の第2ボルト貫通孔40bは、第1ディスク体11のうち位置決め部14が形成されていない部分に形成されている第1貫通孔43と、車輪20のうち第1面20aにも第2面20bにも被位置決め部21が設けられていない部分に形成されている車輪貫通孔45と、第2ディスク体12のうち位置決め部14が形成されていない部分に形成されている第2貫通孔44と、からなっている。
【0090】
本実施形態においては、図12から理解できるように、ボルト貫通孔40として、第1ディスク体11のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44を含む第1ボルト貫通孔40aが3つと、第2ディスク体12のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44を含む第1ボルト貫通孔40aが3つと、第2ボルト貫通孔40bが6つと、が形成されている。
【0091】
ここで、図7に示す一点鎖線は、ディスク体10の内面10aに設けられている位置決め部14の位置を示している。図7に示す例においては、第2貫通孔44として、ディスク体10のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44と、ディスク体10のうち位置決め部14が形成されていない部分に形成されている第2貫通孔44とが、円周C1,C2上に交互に形成されている。そして、一対のディスク体10を車輪20に対して締結した場合には、図12に示すように、ボルト貫通孔40として、第1ボルト貫通孔40aと第2ボルト貫通孔40bとが、車輪20の回転軸A1を中心とする円周上に交互に並ぶ。
【0092】
なお、図8に示す例において、一対のディスク体10のそれぞれの内面10aには、貫通孔支持部17が形成されている。そして、ディスク体10のうち位置決め部14が形成されている部分に形成されている第2貫通孔44と、第1貫通孔43とは、それぞれ貫通孔支持部17に形成されている。貫通孔支持部17は、内面から突出した突起状の形状を有する。また、貫通孔支持部17は、複数の放熱部材13の高さ方向において当該放熱部材13と同じ高さを有する。一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、貫通孔支持部17の先端面17aは、車輪20に接する。貫通孔支持部17は、ピン状の放熱部材13よりも大きな太さを有する。
【0093】
第1貫通孔43及び第2貫通孔44が、ディスク体10のうち位置決め部14又は貫通孔支持部17が形成されている部分に設けられていることによって、ボルト貫通孔40を通されるボルト31の軸部31bを保護することができる。なお、本実施の形態に係る発明は、貫通孔支持部17と同様にボルト31の軸部31bを保護するものである基部15を、位置決め部14として利用することで、位置決め部14を設けつつブレーキディスク1の構造を単純化したものと見做すこともできる。
【0094】
本実施の形態における一対のディスク体10を車輪20に対して締結して、ブレーキディスク付き車輪100を製造する方法について説明する。図13は、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する作業の様子を示す図である。なお、図13においては、ブレーキディスク付き車輪100のうち、図2において図示した部分に相当する部分の締結作業の様子を示している。
【0095】
締結作業においては、まず、図13に示すように、一対のディスク体10を車輪20に対して重ねる。このとき、第1ディスク体11に形成されている位置決め部14と、車輪20の第1面20aに設けられている被位置決め部21とが、回転軸方向d2において重なるように、車輪20に対して第1ディスク体11を重ねる。また、第2ディスク体12に形成されている位置決め部14と、車輪20の第2面20bに被位置決め部21とが、回転軸方向d2において重なるように、車輪20に対して第2ディスク体12を重ねる。また、このとき、位置決め部14に貫通孔42が形成されているために、作業者は、貫通孔42を通して車輪20の被位置決め部21を視認しながら、車輪20に対して一対のディスク体10を重ねることができる。
【0096】
次に、図14に示すように、一対のディスク体10を、それぞれ車輪20に接近させて、位置決め部14を被位置決め部21に噛み合わせる。これによって、一対のディスク体10と車輪20との位置合わせがされる。位置合わせがされた状態において、一対のディスク体10と車輪20とは、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する上で適切な位置関係で接触する。適切な位置関係において、第1ディスク体11に形成されている第1貫通孔43と、車輪20に形成されている車輪貫通孔45と、第2ディスク体12に形成されている第2貫通孔44とが、ボルト31を通すことができるように、回転軸方向d2において重なる。また、第1ディスク体11に形成されている第2貫通孔44と、車輪20に形成されている車輪貫通孔45と、第2ディスク体12に形成されている第1貫通孔43とが、ボルト31を通すことができるように、回転軸方向d2において重なる。
【0097】
ここで、本実施形態においては、一対のディスク体10に形成されている位置決め部14と、車輪に設けられている被位置決め部21とを用いて、一対のディスク体10と車輪20との位置合わせを行うことができる。このため、例えば、ディスク体10及び車輪20に噛み合う、ディスク体10及び車輪20とは別体の位置合わせ用のピンを用意して、当該位置合わせ用のピンを用いて位置合わせを行う場合よりも、位置合わせを容易に行うことができる。特に、鉄道車両の車輪20、及び鉄道車両の車輪20に対して締結されるディスク体10は大型となることが想定されるところ、このような大型のディスク体10と大型の車輪20との位置合わせも、容易とすることができる。
【0098】
次に、第1貫通孔43の規制壁432の間にナット32を配置する。そして、第2貫通孔44が形成されている側からボルト貫通孔40にボルト31を挿入する。ボルト31の軸部31bの先端がナット32に接触したら、ボルト31をナット32に対して回転させる。以上の操作によって、ボルト31の軸部31bにナット32が噛み合う。これによって、図1及び図2に示すように、一対のディスク体10が車輪20に対して締結されて、ブレーキディスク付き車輪100が製造される。
【0099】
ここで、本実施の形態において、貫通孔42(第1貫通孔43)を形成する貫通壁41の一部には、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際のボルト31の回転に伴うナット32の回転を規制する、規制壁432が設けられている。このため、規制壁432の間にナット32を収容した上でボルト31をボルト貫通孔40に挿入することで、作業者がナット32を手で押さえるなどして固定する必要なしに、締結作業を行うことができる。特に、鉄道車両の車輪20、及び鉄道車両の車輪20に対して締結されるディスク体10は大型となることが想定されるところ、このような大型のディスク体10と大型の車輪20との締結作業も、容易とすることができる。例えば、大型のディスク体10と大型の車輪20との締結作業においても、一名の作業者がボルト31を挿入して回転させる際に、もう一名の作業者がナット32を押さえている必要がなくなる。このために、締結作業の効率を向上することができる。
【0100】
また、本実施形態において、位置決め部14及び被位置決め部21に、ボルト貫通孔40が設けられている。このため、ボルト貫通孔40を通したボルト31を用いて一対のディスク体10を車輪20に対して締結することで、位置決め部14が被位置決め部21にしっかりと噛み合う。このため、位置決め部14が被位置決め部21と噛み合う部分を介して、ディスク体10から車輪20へと効率的に制動力を伝達することができる。
【0101】
以上の通り、具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述した具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0102】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0103】
(変形例1)
上述の実施形態では、第1貫通孔43の形態として、図4及び図5に示す形態について説明した。しかしながら、第1貫通孔43の形態は、これに限られない。図15は、変形例1のナット収容壁433を有する第1貫通孔43が形成されているディスク体10を、第1貫通孔43の延伸する方向に平行な面において切断した断面の、第1貫通孔43の周辺を拡大して示す断面図である。図15において、第1貫通孔43の内部に配置される締結部材30については、断面に垂直な方向から平面視した様子を示している。
【0104】
図15に示す例において、第1貫通孔43のうち、ディスク体10の接触面10b上の穴径w10は、第1貫通孔43のナット収容壁433が形成されている部分における穴径w11よりも小さくなっている。ここで、ナット収容壁433が形成されている部分とは、一対のディスク体10が車輪20に対して締結された状態において、貫通壁41のうちナット32が接触している部分である。
【0105】
ナット32に力を加えて第1貫通孔43に押し込むことで、図15に示す第1貫通孔43のナット収容壁433の間にナット32を収容することができる。図15に示す例においては、第1貫通孔43のうち接触面10b側の開口における穴径w10が、第1貫通孔43のうちナット32に接触するナット収容壁433が形成されている部分における穴径w11よりも小さくなっている。このため、ナット収容壁433の間に収容されているナット32にボルト31の軸部31bを噛み合わせる際に、ナット32がボルト31に押されて第1貫通孔43から脱落することを抑制できる。
【0106】
(変形例2)
上述の実施形態及び変形例では、第1貫通孔43の形態として、図4図5及び図15に示す形態について説明した。しかしながら、第1貫通孔43の形態は、これに限られない。第1貫通孔43の形態としては、図示した例に限らず、ナット32の回転を規制することができる規制壁432を有する形態を広く採用することができる。図16は、変形例2の第1貫通孔43が形成されているディスク体10を、第1貫通孔43の延伸する方向に平行な面において切断した断面の、第1貫通孔43の周辺を拡大して示す断面図である。また、図16に、第1貫通孔43の内部に配置されるナット32の、断面に垂直な方向から平面視した様子をともに示している。
【0107】
図16に示す例において、第1貫通孔43のうち規制壁432が形成されている部分の穴径w12は、ナット32が噛み合うボルト31が延伸する方向に直交する方向におけるナット32の寸法w13よりも、小さくなっている。この場合、ナット32に力を加えて規制壁432の間に押し込むことによって、ナット32を規制壁432の間に収容することができる。そして、ナット32が規制壁432の間に挟まれるために、ナット32の回転が規制される。
【0108】
一例として、ナット32は、ボルト31の軸部31bと噛み合う孔部が設けられた円柱状の形状を有している。そして、第1貫通孔43のうち規制壁432が形成されている部分は、丸穴となっている。そして、第1貫通孔43のうち規制壁432が形成されている部分は、その穴径w12が、円柱状のナット32の直径w13よりも小さくなるように形成される。
【0109】
(変形例3)
上述の実施形態及び各変形例では、位置決め部14が、複数の放熱部材13よりも当該放熱部材13の高さ方向に突出しており、被位置決め部21が、突出した位置決め部14と噛み合う被位置決め凹部22を有する例を示した。しかしながら、位置決め部14及び被位置決め部21の形態は、これに限られない。位置決め部14及び被位置決め部21の形状は、例えば、位置決め部14及び被位置決め部21のうち一方が凸型形状を有し、他方が凹型形状を有し、凸型形状を有する一方と凹型形状を有する他方とが噛み合うことが可能であれば、特に限られない。
【0110】
図17は、変形例3における位置決め部14が形成されているディスク体10及び被位置決め部21が設けられている車輪20を、ボルト貫通孔40の延伸する方向に平行な面において切断した断面の、位置決め部14及び被位置決め部21の周辺を拡大して示す断面図である。
【0111】
図17に示す例において、位置決め部14は、放熱部材13の高さ方向において放熱部材13の先端13aの位置よりも当該放熱部材13の根部13b側に位置する。図17に示す例において、位置決め部14は、位置決め面14cを有する。位置決め面14cは、放熱部材13の高さ方向において放熱部材13の先端13aの位置よりも当該放熱部材の根部13b側に位置して、車輪20と対向する。特に、位置決め部14は、放熱部材13の高さ方向において放熱部材13と同じ高さを有する基部15と、基部15の先端面15aに形成された位置決め凹部18とを有する。この場合、位置決め凹部18の底面が、位置決め面14cとなっている。図17に示す例において、ボルト貫通孔40は、位置決め面14cを通っている。また、図17に示す例において、被位置決め部21は、位置決め面14cを有する位置決め部14と噛み合う被位置決め凸部23を有する。図17に示す例において、位置決め部14は、位置決め凹部18において凹型形状を有している。また、被位置決め部21は、被位置決め凸部23において凸型形状を有している。図17に示す例において、被位置決め凸部23は、位置決め凹部18と噛み合う。
【0112】
なお、一対のディスク体10と車輪20との位置合わせを行う際に、凸型形状を有する被位置決め部21が、誤って複数の放熱部材13の間に噛み合ってしまうことを防止する観点からは、被位置決め部21が凸型形状ではなく凹型形状を有することが好ましい。上記の観点からは、位置決め部14が、複数の放熱部材13よりも当該放熱部材13の高さ方向に突出し、被位置決め部21が被位置決め凹部22を有することが好ましい。
【0113】
(変形例4)
上述の実施形態及び各変形例では、位置決め部14及び被位置決め部21の形態として、図4図9図10及び図17に示す形態について説明した。しかしながら、位置決め部14及び被位置決め部21の形態は、これに限られない。図18は、変形例4における位置決め部14が形成されているディスク体10及び被位置決め部21が設けられている車輪20を、ボルト貫通孔40の延伸する方向に平行な面において切断した断面の、位置決め部14及び被位置決め部21の周辺を拡大して示す断面図である。
【0114】
変形例4においては、位置決め部14及び被位置決め部21の少なくとも一方が、ボルト31の挿入方向に沿って傾斜している傾斜面14b、21bを有する、図18に示す例において、ボルト31の挿入方向は、ボルト貫通孔40の延伸する方向と同一であり、このため回転軸方向d2と同一である。そして、位置決め部14は、回転軸方向d2に対して傾斜した傾斜面14bを有する。また、被位置決め部21は、回転軸方向d2に対して傾斜した傾斜面21bを有する。
【0115】
ここで、位置決め部14及び被位置決め部21のうち、凸型形状を有する一方は、当該凸型形状の先端部側に向かうにつれて当該凸型形状が幅狭となるように傾斜した傾斜面を有する。また、位置決め部14及び被位置決め部21のうち、凹型形状を有する他方は、当該凹型形状の底部側に向かうにつれて当該凹型形状が幅狭となるように傾斜した傾斜面を有する。図18に示す例において、位置決め部14は、基部15と位置決め凸部16とを有し、位置決め凸部16において凸型形状を有している。そして、位置決め凸部16の側面が、位置決め凸部16が先端面16c側に向かうにつれて幅狭となるように傾斜した傾斜面14bとなっている。また、図18に示す例において、被位置決め部21は、被位置決め凹部22を有しており、被位置決め凹部22において凹型形状を有している。そして、被位置決め凹部22の側面が、被位置決め凹部22が底部側に向かうにつれて幅狭となるように傾斜した傾斜面21bとなっている。
【0116】
位置決め部14及び被位置決め部21の少なくとも一方が傾斜面14b、21bを有することによって、傾斜面14b、21bに沿って位置決め部14を被位置決め部21に噛み合わせることができる。このため、位置決め部14を被位置決め部21に噛み合わせることが容易となる。特に、位置決め部14及び被位置決め部21のうち凸型形状を有する一方の先端を、凹型形状を有する他方に対して挿入することを容易とすることができる。
【0117】
(変形例5)
上述の実施形態及び各変形例では、一対のディスク体10のいずれにおいても、位置決め部14には、貫通孔42として第2貫通孔44が形成されている例について説明した。しかしながら、位置決め部14と貫通孔42との位置関係は、これに限られない。図19は、変形例5の一対のディスク体10における位置決め部14と貫通孔42との位置関係を示す図である。なお、図19においては、一対のディスク体10を、それぞれ接触面10b側から見た様子を示している。また、図19においては、第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置の図示と理解のしやすさの便宜上、第1貫通孔43、第2貫通孔44及び一対のディスク体10の形状を、図7と同様に簡略化して図示している。また、図19に示す一点鎖線は、ディスク体10の内面10aに設けられている位置決め部14の位置を示している。
【0118】
図19に示す例においては、一対のディスク体10のいずれにおいても、位置決め部14には第1貫通孔43が形成されている。この場合も、上述の実施形態において説明した、一対のディスク体10のいずれにおいても位置決め部14には第2貫通孔44が形成されている場合に得られる効果と同様の効果を得ることができる。
なお、上述の実施形態において説明した、位置決め部14に第2貫通孔44が形成されている場合における、第2貫通孔44の配置に関する説明は、矛盾しない限り、位置決め部14に第1貫通孔43が形成されている場合における、第1貫通孔43の配置に関する説明にも適用される。また、上述の実施形態において説明した、位置決め部14に第2貫通孔44が形成されている場合における、第1貫通孔43の配置に関する説明は、矛盾しない限り、位置決め部14に第1貫通孔43が形成されている場合における、第2貫通孔44の配置に関する説明にも適用される。
【0119】
(変形例6)
上述の実施形態及び各変形例では、一対のディスク体10の一方に、複数の第1貫通孔43と複数の第2貫通孔44とが形成され、一対のディスク体10の他方にも、複数の第1貫通孔43と複数の第2貫通孔44とが形成されている例について説明した。しかしながら、第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置は、これに限られない。
図20は、変形例6の一対のディスク体10における第1貫通孔及び第2貫通孔の配置を示す図である。なお、図20においては、一対のディスク体10を、それぞれ接触面10b側から見た様子を示している。また、図20においては、第1貫通孔43及び第2貫通孔44の配置の図示と理解のしやすさの便宜上、第1貫通孔43、第2貫通孔44及び一対のディスク体10の形状を、図7及び図19と同様に簡略化して図示している。また、図20に示す一点鎖線は、ディスク体10の内面10aに設けられている位置決め部14の位置を示している。
【0120】
図20に示す例において、一対のディスク体10の一方には、貫通孔42として複数の第1貫通孔43のみが形成されている。また、一対のディスク体10の他方には、貫通孔42として複数の第2貫通孔44のみが形成されている。すなわち、一対のディスク体10の一方には、第2貫通孔44が形成されておらず、一対のディスク体10の他方には、第1貫通孔43が形成されていない。この場合においても、一対のディスク体10の一方に形成されている第1貫通孔43と、他方に形成されている第2貫通孔44とを、回転軸方向d2において重ね、ボルト貫通孔40を形成することができる。
【0121】
図20に示す一対のディスク体10は、一対のディスク体10を車輪20に対して締結する際に、以下の手順で締結作業を行うことができる。まず、一対のディスク体10の一方の全ての貫通孔42(第1貫通孔43)にナット32を収容する。次に、一対のディスク体10の他方の全ての貫通孔42(第2貫通孔44)からボルト31を挿入して、ナット32をボルト31の軸部31bに噛み合わせる。このように、図20に示す一対のディスク体10は、例えば図7に示す一対のディスク体10と比較して、締結作業の手順が単純で且つわかりやすくなる。
【0122】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【0123】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 ブレーキディスク
10 ディスク体
10a 内面
10b 接触面
13 放熱部材
14 位置決め部
14b 傾斜面
14c 位置決め面
15 基部
16 位置決め凸部
17 貫通孔支持部
18 位置決め凹部
20 車輪
21 被位置決め部
21b 傾斜面
22 被位置決め凹部
23 被位置決め凸部
30 締結部材
31 ボルト
31a 頭部
31b 軸部
32 ナット
40 ボルト貫通孔
41 貫通壁
411 軸部収容壁
42 貫通孔
43 第1貫通孔
432 規制壁
433 ナット収容壁
44 第2貫通孔
442 ボルト収容壁
45 車輪貫通孔
100 ブレーキディスク付き車輪
図1
図2
図3
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図5
図6
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図18
図19
図20