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特開2022-158623トイレシステム及びサブトイレユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158623
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】トイレシステム及びサブトイレユニット
(51)【国際特許分類】
   E03D 5/016 20060101AFI20221006BHJP
   C02F 11/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E03D5/016
C02F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063653
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】519330076
【氏名又は名称】倉山 翔太
(71)【出願人】
【識別番号】521141604
【氏名又は名称】倉山 佳太
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】倉山 翔太
(72)【発明者】
【氏名】倉山 佳太
【テーマコード(参考)】
2D039
4D059
【Fターム(参考)】
2D039AC09
2D039DA00
4D059AA01
4D059BA01
4D059BA11
4D059BE01
4D059BK13
4D059CA21
4D059CB24
4D059EA20
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】必要最小限の処理能力で日常の処理を行いつつ、処理能力を超える使用状態が発生した場合には貯留槽を拡張することで対応することができるトイレシステムを提供する。
【解決手段】便器21から送出される汚物を含む被処理水を受け入れて、当該被処理水を生物処理して洗浄水として再生する浄化処理槽23と、再生された洗浄水を貯留する洗浄水槽24とを有するメイントイレユニット2と、便器21及び浄化処理槽23の間に分岐して接続され、便器21から送出される被処理水を貯留する汚泥槽31を有するサブトイレユニット3とを備える。また、サブトイレユニット3が、洗浄水槽24に配管で接続され、所定の規定量を超える洗浄水が再生された場合に当該規定量を超える洗浄水を吸い出して貯留する余剰水槽32を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器から送出される汚物を含む被処理水を受け入れて、当該被処理水を生物処理して洗浄水として再生する浄化処理槽と、再生された洗浄水を貯留する洗浄水槽とを有するメイントイレユニットと、
前記便器及び前記浄化処理槽の間に分岐して接続され、前記便器から送出される被処理水を貯留する汚泥槽を有するサブトイレユニットとを備えることを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のトイレシステムにおいて、
再生された前記洗浄水の水質を測定する水質センサと、
前記水質センサの結果に基づいて、前記メイントイレユニットと前記サブトイレユニットとの間で浄化処理前の前記被処理水を流通させるかどうかを制御する制御手段とを備えるトイレシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のトイレシステムにおいて、
前記サブトイレユニットが、前記洗浄水槽に配管で接続され、所定の規定量を超える前記洗浄水が再生された場合に当該規定量を超える洗浄水を吸い出して貯留する余剰水槽を有するトイレシステム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のトイレシステムにおいて、
前記洗浄水槽で所定の規定量を超えた分の洗浄水が散布されるプランターを備えるトイレシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のトイレシステムにおいて、
前記プランターが前記メイントイレユニット及び/又は前記サブトイレユニットの筐体の下方に当該筐体を支持した状態で配置されるトイレシステム。
【請求項6】
請求項3に記載のトイレシステムにおいて、
前記汚泥槽と前記余剰水槽とがそれぞれの上方で流通可能に接続されているトイレシステム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のトイレシステムにおいて、
前記メイントイレユニットが、
雨水を貯留する貯留槽と、
所定のタイミングで前記雨水を前記被処理水に混合するように制御する制御手段とを備えるトイレシステム。
【請求項8】
便器から送出される汚物を含む被処理水を受け入れて、当該被処理水を生物処理して洗浄水として再生する浄化処理槽と、再生された洗浄水を貯留する洗浄水槽とを有するメイントイレユニットに接続可能なサブトイレユニットであって、
前記便器及び前記浄化処理槽の間に分岐して接続し、前記便器から送出される被処理水を貯留する汚泥槽と、
再生された前記洗浄水の水質に基づいて、前記メイントイレユニットとの間で浄化処理前の前記被処理水を流通させるかどうかを制御する制御手段とを備えるサブトイレユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物処理により洗浄水を再生するトイレシステムに関し、特に許容量を超える状況でも継続して使用可能なトイレシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
汚物を含む被処理水を生物処理し、洗浄水として循環するトイレシステムに関する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に示す技術は、汚物を含む被処理水を微生物処理し、洗浄水として循環するバイオトイレシステムにおいて、トイレから排出される汚物を含む被処理水が投入される原水槽と、エアレーションによる好気性処理を行いながら、原水槽から排出される被処理水を貯留し、貯留された被処理水をポンプで排出する第1調整槽と、第1調整槽から排出される被処理水を微生物処理する浄化槽と、浄化槽から排出される被処理水を嫌気性処理を行いながら貯留し、貯留された被処理水をポンプで排出する第2調整槽と、第2調整槽から排出される被処理水中の有機物を分解する反応槽と、反応槽から排出される被処理水を便器の洗浄水として貯留する洗浄槽とを備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/131745号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すトイレシステムは、調整槽を設けることで、使用が集中した場合であってもシステムを停止することなく安定供給できるものであるが、日常において使用する場合には使用が集中して処理性能の許容を超える可能性が低く、ほとんどの場合に過剰性能の状態となってしまい、小型化や低コスト化が困難になってしまうという課題を有する。
【0005】
本発明は、必要最小限の処理能力で日常の処理を行いつつ、処理能力を超える使用状態が発生した場合には貯留槽を拡張することで対応することができるトイレシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るトイレシステムは、便器から送出される汚物を含む被処理水を受け入れて、当該被処理水を生物処理して洗浄水として再生する浄化処理槽と、再生された洗浄水を貯留する洗浄水槽とを有するメイントイレユニットと、前記便器及び前記浄化処理槽の間に分岐して接続され、前記便器から送出される被処理水を貯留する汚泥槽を有するサブトイレユニットとを備えるものである。
【0007】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、便器から送出される汚物を含む被処理水を受け入れて、当該被処理水を生物処理して洗浄水として再生する浄化処理槽と、再生された洗浄水を貯留する洗浄水槽とを有するメイントイレユニットと、前記便器及び前記浄化処理槽の間に分岐して接続され、前記便器から送出される被処理水を貯留する汚泥槽を有するサブトイレユニットとを備えるため、例えばイベントや災害などで処理能力を超えるような使用状態が発生した場合であっても、サブトイレユニットに汚物を含む被処理水を退避することができ、トイレの使用を継続することが可能になるという効果を奏する。
【0008】
本発明に係るトイレシステムは、再生された前記洗浄水の水質を測定する水質センサと、前記水質センサの結果に基づいて、前記メイントイレユニットと前記サブトイレユニットとの間で浄化処理前の前記被処理水を流通させるかどうかを制御する制御手段とを備えるものである。
【0009】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、再生された前記洗浄水の水質を測定する水質センサと、前記水質センサの結果に基づいて、前記メイントイレユニットと前記サブトイレユニットとの間で浄化処理前の前記被処理水を流通させるかどうかを制御する制御手段とを備えるため、洗浄水の水質、すなわち十分な浄化処理が行われているかどうかによって被処理水をそのまま浄化処理するかサブユニットに送出するかを切り替えることが可能となり、処理状態に関わらずトイレの使用を継続することが可能になるという効果を奏する。
【0010】
本発明に係るトイレシステムは、前記サブトイレユニットが、前記洗浄水槽に配管で接続され、所定の規定量を超える前記洗浄水が再生された場合に当該規定量を超える洗浄水を吸い出して貯留する余剰水槽を有するものである。
【0011】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、サブトイレユニットが、前記洗浄水槽に配管で接続され、所定の規定量を超える前記洗浄水が再生された場合に当該規定量を超える洗浄水を吸い出して貯留する余剰水槽を有するため、トイレの使用により増大する水分を退避することができ、トイレの使用を継続することが可能になるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係るトイレシステムは、前記洗浄水槽で所定の規定量を超えた分の洗浄水が散布されるプランターを備えるものである。
【0013】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、洗浄水槽で所定の規定量を超えた分の洗浄水が散布されるプランターを備えるため、プランターの植物に有機物が含まれた洗浄水を散布し、肥料として提供することが可能となり、資源を有効活用することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係るトイレシステムは、前記プランターが前記メイントイレユニット及び/又は前記サブトイレユニットの筐体の下方に当該筐体を支持した状態で配置されるものである。
【0015】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、プランターが前記メイントイレユニット及び/又は前記サブトイレユニットの筐体の下方に当該筐体を支持した状態で配置されるため、プランターが重しになってメイントイレユニット及び/又はサブトイレユニットを安定して立設することができるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係るトイレシステムは、前記汚泥槽と前記余剰水槽とがそれぞれの上方で流通可能に接続されているものである。
【0017】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、汚泥槽と余剰水槽とがそれぞれの上方で流通可能に接続されているため、汚泥槽内の被処理水を余剰水槽に移動することが可能になると共に余剰水槽内の再生水を汚泥槽に移動することが可能になり、サブトイレユニットを一つの大きな槽として活用することで、例えば災害時などの緊急事態で処理状態を正確に把握することが困難な状況であっても最低限トイレの使用は維持することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係るトイレシステムは、前記メイントイレユニットが、雨水を貯留する貯留槽と、所定のタイミングで前記雨水を前記被処理水に混合するように制御する制御手段とを備えるものである。
【0019】
このように、本発明に係るトイレシステムにおいては、雨水を貯留する貯留槽と、所定のタイミングで前記雨水を前記被処理水に混合するように制御する制御手段とを備えるため、し尿などの分解の過程で生じる不純物の濃度を薄めることで、被処理水を浄化する微生物が殺菌されてしまうことを防止し、微生物の生存環境を安定化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係るトイレシステムのシステム構成図である。
図2】第1の実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す図である。
図3】第2の実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す図である。
図4】第2の実施形態に係るトイレシステムにおけるサブトイレユニットの外観を示す正面図である。
図5】第2の実施形態に係るトイレシステムにおけるサブトイレユニットの外観を示す左右の側面図である。
図6】第3の実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す図である。
図7】第4の実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す第1の図である。
図8】第4の実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す第2の図である。
図9】従来の循環式トイレシステムにおける生物処理による水質を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るトイレシステムについて、図1及び図2を用いて説明する。本実施形態に係るトイレシステムは、メインの生物処理を行うユニット側で許容以上の負荷が掛かった場合に、許容を超えた分の汚泥等を退避するための外部ユニットを接続可能としたものである。
【0022】
図1は、本実施形態に係るトイレシステムのシステム構成図、図2は、本実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す図である。本実施形態に係るトイレシステム1は、日常的に例えば公園や公共施設などでトイレとして使用される循環式の移動トイレユニットであるメイントイレユニット2と、このメイントイレユニット2に接続配管4で接続されるサブトイレユニット3と、それぞれのユニット間で被処理水や汚泥等を吸い上げて送出するための複数のポンプ(第2ポンプ26,第3ポンプ27)とを備える。
【0023】
メイントイレユニット2は、便器21と、便器21から送出される使用者の排泄物等を含む被処理水(以下、単に被処理水という)を受け入れる受入槽22と、受入槽22の被処理水を生物処理して洗浄水を再生する浄化処理槽23と、再生した洗浄水を貯留して便器21の洗浄タンク21aに送出する洗浄水槽24と、補助タンク29とを備える。便器21から送出された使用者の排泄物等を含む被処理水は第1ポンプ25により受入槽22に吸い上げられて投入される。受入槽22に投入された被処理水は、浄化処理槽23で微生物による好気処理、嫌気処理等がなされ、また必要に応じて残った有機物の濾過や殺菌等を経て再生水として生成される。生成された再生水は洗浄水槽24に貯留され、洗浄タンク21aに送出されて排泄物を流すための洗浄水として再利用される。トイレシステム1の使用(し尿等による水分の増加)により洗浄水槽24の水位が所定の高さを超えた場合には、浄化処理槽23の下部のスペースに設置されている補助タンク29に再生水が貯留され、その後メンテナンスにより外部に排出される。
【0024】
メイントイレユニット2は、このように自己完結型の循環式トイレシステムとなっているため、このユニット単独で機能を果たすことが可能となっている。例えば少人数の利用が想定される公園や体育館などの公共施設、山や海や川などの人の往来が少ない自然の中、工事現場などの仮設利用においては、ほとんど問題なく機能することが可能である。しかしながら、例えばコンサートなどのイベント会場やスポーツなどの競技場のように人が多く集まる場所での利用や、災害が発生した場合に避難所などで緊急に利用する場合には、メイントイレユニット2を大型化して処理能力を向上させないと再生水の生成が追い付かず、トイレの使用を停止せざるを得なくなる。つまり、特許文献1に示す技術は、このような事態を想定して予め調整槽を備える構成となっているが、上述したように大型化してしまうという問題がある。
【0025】
本実施形態においては、普段はメイントイレユニット2のみでの運用を行いつつ、イベントなどで許容以上の人数が利用する場合には、サブトイレユニット3を配管で接続するだけで簡単にシステムを拡張し、許容オーバー分の被処理水を退避してトイレが使用できなくなる事態を防止する。
【0026】
サブトイレユニット3は、汚泥槽31と余剰水槽32とを備えている。汚泥槽31はメイントイレユニット2の受入槽22と配管41で接続され、余剰水槽32はメイントイレユニット2の洗浄水槽24と配管42で接続される。すなわち、メイントイレユニット2の処理能力の許容量を超えた場合は、受入槽22で受け入れる排泄物等を含む被処理水を汚泥槽31に退避することで許容量を拡張し、過剰処理により増量した再生水(被処理水を浄化処理することで再生された水であり、以下、単に再生水という)を余剰水槽32に退避することで許容量を拡張する。
【0027】
なお、被処理水の汚泥槽31への退避は、被処理水が受入槽22に投入されることなく汚泥槽31にのみそのまま投入されるような配管41の接続構造としてもよいし、後述するように処理の状態に応じて受入槽22に投入する被処理水と汚泥槽31に退避する被処理水の量を調整するようにしてもよい。
【0028】
また、被処理水の汚泥槽31への搬送は、一旦受入槽22に溜まった被処理水をポンプアップで汚泥槽31に搬送するようにしてもよいし、便器21から排出されて汚物等を破砕しながら第1ポンプ25でポンプアップされた被処理水をそのまま自然流下で汚泥槽31に搬送するようにしてもよい。再生水の余剰水槽32への搬送は、一旦洗浄水槽24に溜まった再生水をポンプアップで余剰水槽32に搬送するようにしてもよいし、浄化処理槽23で生成された再生水をそのまま、又は洗浄水槽23から溢れる再生水を自然流下で余剰水槽32に搬送するようにしてもよい。
【0029】
以下、メイントイレユニット2の処理状態に応じたサブトイレユニット3への被処理水及び再生水の搬送について説明する。トイレシステム1を運用するにあたっては、許容される量の最大限の被処理水を浄化処理しつつ、許容量を超えた分の被処理水についてはサブトイレユニット3に退避される状態が望ましく、また浄化処理に余裕ができた段階でサブトイレユニット3に退避された被処理水がメイントイレユニット2に返送されて浄化処理されることが望ましい。
【0030】
このような状態でトイレシステム1を運用するために、本実施形態においては、洗浄水槽24に水質センサ24aを配設すると共に、洗浄水槽24の水位を測定する水位計24bを配設する。また、受入槽22の被処理水を汚泥槽31に搬送したり、汚泥槽31の被処理水を受入槽22に返送する第2ポンプ26と、洗浄水槽24の再生水を余剰水槽32に搬送する第3ポンプ27と、第2ポンプ26及び第3ポンプ27の動作を制御する制御部28とを備える。
【0031】
水質センサ24aは洗浄水槽24に貯留される再生水の水質を検出するセンサであり、許容範囲内の量の被処理水を浄化処理している場合は、所定の基準値を満たす水質が検出されるが、許容範囲を超えた量の被処理水を浄化する処理が続いた場合は浄化が十分に行われない可能性があり、所定の基準値を満たさない水質が検出される。
【0032】
また、水位計24bは、洗浄水槽24の水位が所定の基準値を超えた場合に水位を検知する。再生水は、利用者が排泄したし尿などから生成されるため、メイントイレユニット2全体ではトイレの使用に応じて水分量が増加する。増加した水分は再生水として洗浄水槽24に貯留されることとなるため、許容範囲を超えてトイレが利用され続けると洗浄水槽24の水位が基準値を超えて高くなる可能性がある。水位計24bは、そのような水位を検出する。
【0033】
制御部28は、水質センサ24aが所定の基準値を超えて悪化した水質が検出された場合に、浄化処理槽23への負荷が過剰になっていると判断し、第2ポンプ26を駆動して受入槽22に溜まった被処理水を汚泥槽31に搬送するように制御する。また、制御部28は、水質センサ24aの値が基準値内に戻り、再生水の水質が向上した場合には、浄化処理槽23への過剰な負荷がなくなり許容範囲内に戻ったと判断し、第2ポンプ26を駆動して汚泥槽31に退避した被処理水を受入槽22に戻すように制御する。このようにして、処理対象となる被処理水の量と再生水の水質から、メイントイレユニット2の処理能力を最大限に活かした高効率な浄化処理を行うことが可能となる。
【0034】
また、制御部28は、水位計24bが所定の高さを超える水位を検出した場合に、第3ポンプ27を駆動して洗浄水槽24の再生水を余剰水槽32に搬送するように制御する。このような制御を行うことで、メイントイレユニット2全体で増加する水分を調整し、洗浄水槽24が溢れてしまうような状態を避けることが可能となる。
【0035】
なお、余剰水槽32に搬送された再生水は、メイントイレユニット2の水分量に応じて洗浄水槽24に返送されるようにしてもよいし、浄化処理槽23の処理を経由していることからそのまま外部に排出されるようにしてもよい。
【0036】
このように、本実施形態に係るトイレシステム1においては、便器21から送出される汚物を含む被処理水を受け入れて、当該被処理水を生物処理して洗浄水として再生する浄化処理槽22と、再生された洗浄水を貯留する洗浄水槽24とを有するメイントイレユニット2と、便器21及び浄化処理槽23の間に分岐して接続され、便器21から送出される被処理水を貯留する汚泥槽31を有するサブトイレユニット3とを備えるため、例えばイベントや災害などで浄化処理槽23の処理能力を超えるような使用状態が発生した場合であっても、サブトイレユニット3に汚物を含む被処理水を退避することができ、トイレの使用を継続することが可能になる。
【0037】
また、再生された再生水の水質を測定する水質センサ24aと、水質センサ24aの結果に基づいて、メイントイレユニット2とサブトイレユニット3との間で浄化処理前の被処理水を流通させるかどうかを制御する制御部28とを備えるため、洗浄水の水質、すなわち十分な浄化処理が行われているかどうかによって被処理水をそのまま浄化処理するかサブトイレユニット3に送出するかを切り替えることが可能となり、処理状態に関わらずトイレの使用を継続することが可能になる。
【0038】
さらに、サブトイレユニット3が、洗浄水槽24に配管で接続され、所定の規定量を超える再生水が再生された場合に当該規定量を超える再生水を吸い出して貯留する余剰水槽32を有するため、トイレの使用により増大する水分を退避することができ、トイレの使用を継続することが可能になる。
【0039】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るトイレシステムについて、図3ないし図5を用いて説明する。本実施形態に係るトイレシステム1は、前記第1の実施形態に係るトイレシステム1のサブトイレユニット3の筐体の下方に植物を育成するプランターが配置されているものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0040】
第1の実施形態においては、余剰水槽32に貯留された再生水は、洗浄水槽24に返送されるか又はそのまま外部に排出される構成としたが、本実施形態においては植物育成のための水分として利用する。図3は、本実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す図、図4は、本実施形態に係るトイレシステムにおけるサブトイレユニット3の外観を示す正面図、図5は、本実施形態に係るトイレシステムにおけるサブトイレユニット3の外観を示す左右の側面図である。図5(A)は右側面図、図5(B)を左側面図を示している。
【0041】
図3において、余剰水槽32に貯留された再生水、補助タンク29に貯留された再生水、及び基準値となる量を超えた洗浄水槽24の再生水は、例えばフィルタ47を通して第4ポンプ48により吸い上げられて散水部43に供給される。
【0042】
サブトイレユニット3やメイントイレユニット2の筐体の下方には複数のプランター40が配設されており、余剰水槽32や洗浄水槽24や補助タンク29に貯留された再生水が散水部43から散水可能な構造となっている。特にサブトイレユニット3は、設置時に槽内が空の状態で運搬されて設置されるため、荷重が軽く比較的倒れやすい構造となっている。そこで、図4及び図5に示すように、サブトイレユニット3を設置する際に複数のプランター40を重石として筐体の下方に設置することで、サブトイレユニット3を安定して立設することができる。
【0043】
なお、プランター40は図4及び図5に示すように、サブトイレユニット3の安定化のために当該サブトイレユニット3を挟んで対向して配設されることが望ましい。また、プランター40はメイントイレユニット2の筐体の下方に設置されて、当該メイントイレユニット2を支持するようにしてもよいし、サブトイレユニット3及びメイントイレユニット2の双方の筐体の下方に設置されるようにしてもよい。
【0044】
図4及び図5において、貯留された再生水は第4ポンプ48により散水部43に供給され、当該散水部43に所定間隔で穿設された複数の孔からプランター40に散水可能となっている。再生水にはフィルタ47で除去しきれなかった有機物、すなわち植物にとっての肥料となる成分が程よく含まれているため、プランター40の植物育生を促進することが可能となる。つまり、増加した生水を外部に排出する場合に、単に廃棄するのではなくプランター40に植栽された植物に与えることで、水資源を無駄にせず効率的に利用することが可能になる。
【0045】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係るトイレシステムについて、図6を用いて説明する。本実施形態に係るトイレシステム1は、前記各実施形態におけるトイレシステムのサブトイレユニット3の汚泥槽31と余剰水槽32とを接続することで、一つの大きな槽として利用するものである。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0046】
本実施形態に係るトイレシステムは、建設現場などで一般的に使用される仮設トイレを利用することで、便器21及び第1ポンプ25が収納される第1仮設ボックス44と、受入槽22、浄化処理槽23及び洗浄水槽24が収納される第2仮設ボックス45とでメイントイレユニット2を形成することが可能である。このような仮設ボックスを利用することで、仮設トイレとして様々な場所に比較的容易に移動することが可能なサイズになっており、普段は公園などに常設しつつ、イベントなどがある場合にはそのイベント会場に移動させることで、緊急仮設トイレとして活用することができる。
【0047】
また、前記各実施形態において説明したように、メイントイレユニット2にサブトイレユニット3を接続することで、許容範囲を超えるようなトイレの使用に対してもトイレシステム1を停止することなく運用を維持できるものであるが、災害などが発生した場合には、前記許容範囲をはるかに超える想定外のトイレの使用がなされる可能性がある。そのような緊急の非常事態においては、サブトイレユニット3における汚泥槽31と余剰水槽32とを一体的な大きなタンクとして取り扱うことで、災害初期(特に災害発生から数日間)の緊急事態を乗り切ることが可能となる。
【0048】
図6は、本実施形態に係るトイレシステムにおける各ユニットの構成を示す図である。図6において前記第1の実施形態における図2と異なるのは、メイントイレユニット2が第1仮設ボックス44及び第2仮設ボックス45で構成されており、サブトイレユニット3における汚泥槽31と余剰水槽32とが上部で連結されており、メイントイレユニット2から搬送される非処理水や再生水が連結部46を介して流動可能になっていることである。
【0049】
上述したように、メイントイレユニット2を仮設トイレなどで一般的に利用される第1仮設ボックス44及び第2仮設ボックス45で構成することで、災害時などの非常に緊迫した状況での移動について、速やかに且つ簡単に行うことを可能にする。また、汚泥槽31と余剰水槽32とが連結することで、メイントイレユニット2から搬送される被処理水の量が汚泥槽31の許容量すらも超えてしまうような事態が発生した場合であっても、余剰水槽32を汚泥槽31の代わりとして代用することが可能となり、トイレの利用が極めて集中したような場合であっても、トイレシステム1の運用を停止することなく維持することが可能となる。つまり、災害時における避難所でのライフラインの一つであるトイレの確保を確実なものにすることが可能になる。
【0050】
このように、本実施形態に係るトイレシステムにおいては、汚泥槽31と余剰水槽32とがそれぞれの上方で流通可能に接続されているため、汚泥槽31内の被処理水を余剰水槽32に移動することが可能になると共に余剰水槽32内の再生水を汚泥槽31に移動することが可能になり、サブトイレユニット3を一つの大きな槽として活用することで、災害時などの緊急事態で処理状態を正確に把握することが困難な状況であっても最低限トイレの使用は維持することができる。
【0051】
なお、図6においては第2仮設ボックス45の下部に補助タンク29を備える構成としているが、第1仮設ボックス44の下部にも補助タンクを備えるようにしてもよい。そうすることで、より多くの再生水を貯留することが可能となる。
【0052】
(本発明の第4の実施形態)
本実施形態に係るトイレシステムについて、図7及び図8を用いて説明する。本実施形態に係るトイレシステムは、メイントイレユニット2における微生物の生存環境を安定させるために、定期的又は非定期に被処理水に雨水を混合することで、し尿などにふくまれて高濃度となる塩化物イオン等の不純物を薄めて微生物が活動しやすい環境を維持するものである。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0053】
図7は、サブトイレユニット3を有しない場合のトイレシステム1の構成を示す図であり、図8は、サブトイレユニット3を有する場合のトイレシステム1の構成を示す図である。図7及び図8において、メイントイレユニット2の上部空間に雨水を貯留するための貯留部51を備えている。また、図9は従来のトイレシステム1を実際に運用した際の生物処理による水質データを示す図である。
【0054】
メイントイレユニット2において、し尿などを含む被処理水の浄化処理が進むに連れて、例えば尿素(アンモニア、二酸化炭素)、塩化ナトリウム、硫酸イオン、リン酸イオン、カリウムイオン等の様々な物質に分解されて被処理水の中に溶け込む。このとき、不純物(特に図9の実験結果が示すような塩化物イオン)が多量に生成されてしまうことで生物処理を行う菌などの微生物の生存に影響を与えてしまう可能性がある。つまり、従来の生物処理を用いた循環式トイレシステムでは、長期間に亘って使用した場合にトイレの浄化機能を維持するために、処理槽内の水の入れ替えが必要であった。
【0055】
図9の実験結果からもわかるように、上記の問題を踏まえて、被処理水は所定のタイミング(例えば、常時、定期的、非定期(降雨があったタイミング等)等)で希釈されるのが望ましく、本実施形態に係るトイレシステム1においては、被処理水を所定のタイミングで雨水により希釈する機能を有している。
【0056】
貯留部51には、雨が降った際に収集した雨水が貯留されており、上述した所定のタイミングで被処理水に混合される。混合される所定のタイミングについては、予め管理者により設定されたタイミングで制御部28が雨水を混合するようにしてもよい。例えば、貯留部51の下方に開口部とそれを塞ぐ開口弁が備えられており、制御部28が所定のタイミングで開口弁を開くことで被処理水と雨水が混合されるようにしてもよい。
【0057】
また、被処理水の水質を常時チェックし、所定値以上の濃度で不純物が検出された場合に開口弁を開くように制御してもよい。このとき、検出された不純物の濃度、例えば被処理水に含まれる塩化物イオンの濃度に応じて開口弁を開く時間を制御するようにしてもよい。
【0058】
このように、所定のタイミングで被処理水の濃度を雨水で薄めることで、被処理水中での微生物の生存環境を保持し、安定した浄化処理を実現することができる。
【0059】
雨水を混合することにより被処理水が増加することで、生成される洗浄水の量も増加する。こうして増加した洗浄水は、上記各実施形態において説明したように、補助タンク29に退避したり(図7及び図8には図示しない)、プランター40に散水したり、図8のように余剰水槽32がある場合は余剰水槽32に退避することで浄化処理に適した必要な水量を調整することができる。さらに、補助タンク29や余剰水槽32に退避した洗浄水は、最終的にプランター40に散水されることで、水資源を最後まで無駄なく活用することが可能となる。
【0060】
特に、被処理水は、不純物や浄化処理により分解した物質が原因でアルカリ性が次第に強くなる傾向にある。一方で雨水は酸性であることが多いため、酸性の雨水を混合することで被処理水を中性~弱アルカリ性に保つことができ、微生物の活動を活発化することができると共に、プランター40に植生される植物にとっても適正な水を散水することが可能となる。
【0061】
なお、上記各実施形態における図2、3及び6おいては、制御部28、第2ポンプ26及び第3ポンプ27を各ユニットの外側に記載しているが、いずれもメイントイレユニット2又はサブトイレユニット3のどちらに設置されてもよく、特に制御部28はメイントイレユニット2、第2ポンプ26及び第3ポンプ27はサブトイレユニット3に設置されるのが望ましい。
【符号の説明】
【0062】
1 トイレシステム
2 メイントイレユニット
3 サブトイレユニット
3a 筐体
21 便器
21a 洗浄タンク
22 受入槽
23 浄化処理槽
24 洗浄水槽
24a 水質センサ
24b 水位センサ
25 第1ポンプ
26 第2ポンプ
27 第3ポンプ
28 制御部
29 補助タンク
31 汚泥槽
32 余剰水槽
40 プランター
41,42 配管
43 散水部
44 第1仮設ボックス
45 第2仮設ボックス
46 連結部
47 フィルタ
48 第4ポンプ
51 貯留部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9