(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158624
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】揮散容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/00 20060101AFI20221006BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B65D85/00 A
B65D83/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063654
(22)【出願日】2021-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.掲載年月日 令和 3年 1月18日 掲載アドレス https://www.makuake.com/project/clo2-lab3/(掲載終了の為、現在はアクセスできません) 2.掲載年月日 令和 3年 2月 2日 掲載アドレス https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000037918.html 3.掲載年月日 令和 3年 2月12日 掲載アドレス ・https://oxider.jp/ ・https://oxider.jp/oxider-portable/ 4.発行者名 株式会社CLO2 Lab 刊行物名 製品パンフレット 発行日 令和 3年 2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】517272725
【氏名又は名称】株式会社CLO2 Lab
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】安部 幸治
(72)【発明者】
【氏名】安部 都兼
(72)【発明者】
【氏名】濱本 洋一
【テーマコード(参考)】
3E068
【Fターム(参考)】
3E068AA40
3E068AB05
3E068CC03
3E068CE03
3E068DD31
3E068DE02
3E068EE13
3E068EE25
(57)【要約】
【課題】手軽に持ち運ぶことができ、かつ、使用時には容易かつ適切に容器本体の外部へガスを放出することができる揮散容器を実現する。
【解決手段】揮散容器1は、ガス放出性の薬剤を収容する容器本体30と、天面部11にガスを放出するための放出孔12が形成された蓋体10と、を備え、蓋体10は、容器本体30の上部開口を覆うと共に、容器本体30に対して上下にスライド自在に構成され、容器本体30の上端部31と天面部11とが嵌合することによって容器本体30を密封する第一封止部50と、本体側壁部外面33と蓋体側壁部内面とが嵌合することによって容器本体30と蓋体10との間の隙間Sを密封する第二封止部70と、を有し、容器本体30に対する蓋体10の上下スライドに伴い、第一封止部50が機能する状態と第二封止部70が機能する状態とが切り換わる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス放出性の薬剤を収容する容器本体と、天面部にガスを放出するための放出孔が形成された蓋体と、を備える揮散容器であって、
前記蓋体は、前記容器本体の上部開口を覆うと共に、前記容器本体に対して上下にスライド自在に構成され、
前記容器本体の上端部と前記天面部とが嵌合することによって前記容器本体を密封する第一封止部と、
前記容器本体の側壁部外面と前記蓋体の側壁部内面とが嵌合することによって前記容器本体と前記蓋体との間の隙間を密封する第二封止部と、を有し、
前記容器本体に対する前記蓋体の上下スライドに伴い、前記第一封止部が機能する状態と前記第二封止部が機能する状態とが切り換わる揮散容器。
【請求項2】
前記天面部は、下方に突出する環状リブを有し、
前記第一封止部は、前記環状リブの外面と前記容器本体の前記側壁部内面との嵌合部を含んで構成されている、請求項1に記載の揮散容器。
【請求項3】
前記環状リブは、上方に向かうに従って外方に向かうように傾斜する逆テーパー状に形成されている請求項2に記載の揮散容器。
【請求項4】
前記天面部は、前記環状リブよりも外側において下方に突出する環状突起を更に有し、
前記第一封止部は、前記環状突起と前記容器本体の上端面との嵌合部を更に含んで構成されている請求項2又は3に記載の揮散容器。
【請求項5】
前記蓋体は、前記側壁部内面から内向きに膨出した蓋体膨出部を有し、
前記容器本体は、前記側壁部外面から外向きに膨出した本体膨出部を有し、
前記第二封止部は、前記蓋体膨出部と前記本体膨出部との嵌合部を含んで構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の揮散容器。
【請求項6】
前記蓋体膨出部及び前記本体膨出部の少なくとも一方が、上下多段に形成された複数のリブを有する請求項5に記載の揮散容器。
【請求項7】
前記放出孔の内径に対する前記蓋体の前記天面部の厚みの比が1.5~3.0である請求項1から6のいずれか一項に記載の揮散容器。
【請求項8】
前記容器本体の前記側壁部外面と前記蓋体の前記側壁部内面とに亘って、前記蓋体の上下スライドを案内する案内部が設けられている請求項1から7のいずれか一項に記載の揮散容器。
【請求項9】
前記案内部は、前記容器本体の前記側壁部外面及び前記蓋体の前記側壁部内面のうちの一方に設けられ、周方向に離間した位置を上下方向に延びる一対の縦リブと、前記容器本体の前記側壁部外面及び前記蓋体の前記側壁部内面のうちの他方に設けられ、一対の前記縦リブの間に収まる係止突起と、を有する請求項8に記載の揮散容器。
【請求項10】
一対の前記縦リブの間に前記係止突起が収容された状態で、前記容器本体からの前記蓋体の離脱を防止する抜け止め部を備える請求項9に記載の揮散容器。
【請求項11】
前記放出孔は、前記天面部における周縁部に形成されている請求項1から10のいずれか一項に記載の揮散容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、室内の悪臭を取り除いたり、室内に漂う菌・ウイルス等を除去したりすることを目的として、芳香剤・消臭剤・空間除菌剤等が用いられている。これらの芳香剤・消臭剤・空間除菌剤等は、ガス放出性の薬剤である場合が多く、揮散容器に収容されて保管され当該揮散容器から薬剤が外部空間へ揮散することによって効用を発揮する。
【0003】
かかる揮散容器の従来例が、国際公開第2018/230307号(特許文献1)に記載されている。特許文献1の揮散容器では、ボトル1内の液性薬剤に顆粒剤を混合することで、空間除菌剤としての二酸化塩素ガスが発生する。この揮散容器は、ボトル1の他に、インナーキャップ11とアウターキャップ12とを備えている。アウターキャップ12をインナーキャップ11に被せた状態で、インナーキャップ11は、ボトル1のボトルネック2にねじ付けて装着される。インナーキャップ11とアウターキャップ12とのそれぞれには、二酸化塩素ガスの通り道となる揮散口22が複数形成されている。従って、ボトル1内で発生した二酸化塩素ガスは、ボトルネック2内を通過して、複数の揮散口2から外部空間へ揮散する。
【0004】
特許文献1の揮散容器は、室内においてデスク等に載置された状態で使用されることが主に想定されており、発生した二酸化塩素ガスが外部空間へ放出するのを抑制するための密栓機構を備えていない。従って、一度、揮散容器を使用状態(二酸化塩素ガスが外部空間に揮散される状態)にすると、二酸化塩素ガスが発生しなくなるまでその使用状態が継続する。このため、特許文献1の揮散容器は、携帯用の用途に適しておらず、例えば、持ち運んだ上で、外出先で手軽に使用するといった利用を図ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、手軽に持ち運ぶことができ、かつ、使用時には容易かつ適切に容器本体の外部へガスを放出することができる揮散容器の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みた、揮散容器の特徴構成は、ガス放出性の薬剤を収容する容器本体と、天面部にガスを放出するための放出孔が形成された蓋体と、を備える揮散容器であって、前記蓋体は、前記容器本体の上部開口を覆うと共に、前記容器本体に対して上下にスライド自在に構成され、前記容器本体の上端部と前記天面部とが嵌合することによって前記容器本体を密封する第一封止部と、前記容器本体の側壁部外面と前記蓋体の側壁部内面とが嵌合することによって前記容器本体と前記蓋体との間の隙間を密封する第二封止部と、を有し、前記容器本体に対する前記蓋体の上下スライドに伴い、前記第一封止部が機能する状態と前記第二封止部が機能する状態とが切り換わる点にある。
【0008】
この構成によれば、容器本体と蓋体とを上下スライドさせるだけで、第一封止部が機能する状態と第二封止部が機能する状態とを容易に切り換えることができる。
そして、第一封止部が機能する状態では、容器本体の上端部と天面部とが嵌合するため、容器本体内に薬剤及びガスを密封することができる。従って、容器本体から薬剤がこぼれたり、放出孔からガスが漏れ出たりするのを防止することができる。
また、第二封止部が機能する状態では、容器本体の側壁部外面と蓋体の側壁部内面とが嵌合するため、容器本体と蓋体との間の隙間を密封することができる。従って、容器本体内のガスが、容器本体と蓋体との間の隙間から外部へ漏れ出るのを防止することができる。更に、容器本体の上端部と蓋体の天面部との嵌合が解除されることで、容器本体内のガスが、容器本体の上端部と蓋体の天面部との間を通過することができるようになる。これにより、容器本体内のガスを、放出孔から容器本体の外部へ放出することができる。
このように、本構成によれば、容器本体に対して蓋体を上下スライドさせるだけで、不使用状態と使用状態とを容易に切り換えることができる。よって、手軽に持ち運ぶことができ、かつ、使用時には容易かつ適切に容器本体の外部へガスを放出することができる揮散容器を提供することができる。
【0009】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0010】
ここで、前記天面部は、下方に突出する環状リブを有し、前記第一封止部は、前記環状リブの外面と前記容器本体の前記側壁部内面との嵌合部を含んで構成されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、蓋体を容器本体に対し上から下にスライド移動させることによって、環状リブの外面と容器本体の側壁部内面とが嵌合する。このため、容器本体内のガスが、環状リブの外面と容器本体の側壁部内面との嵌合箇所で密封される。従って、容器本体内のガスが、放出孔から漏れ出るのを効果的に防止できる。
【0012】
ここで、前記環状リブは、上方に向かうに従って外方に向かうように傾斜する逆テーパー状に形成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、容器本体に対して蓋体を下方にスライド移動させるに従って、容器本体の側壁部内面に対して環状リブの外面がより強く押し付けられる。このため、環状リブの外面と容器本体の側壁部内面との密着性が増す。よって、容器本体内のガスが、放出孔から漏れ出るのをより効果的に防止できる。
【0014】
ここで、前記天面部は、前記環状リブよりも外側において下方に突出する環状突起を更に有し、前記第一封止部は、前記環状突起と前記容器本体の上端面との嵌合部を更に含んで構成されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、蓋体を容器本体に対し上から下にスライド移動させると、環状突起が容器本体の上端面に嵌合する。よって、環状リブの外面と容器本体の側壁部内面との嵌合部と協働した二重の密封により、容器本体内のガスが放出孔から漏れ出るのを更に効果的に防止することができる。
【0016】
ここで、前記蓋体は、前記側壁部内面から内向きに膨出した蓋体膨出部を有し、前記容器本体は、前記側壁部外面から外向きに膨出した本体膨出部を有し、前記第二封止部は、前記蓋体膨出部と前記本体膨出部との嵌合部を含んで構成されていると好適である。
【0017】
この構成によれば、容器本体内のガスが、蓋体膨出部と本体膨出部との嵌合箇所を越えて、蓋体と容器本体との間の隙間から漏れ出るのを防止できる。よって、使用時には、容器本体の外部に放出されるガスを、専ら放出孔を通って放出させることができる。よって、狙った空間にガスを供給しやすい。
【0018】
ここで、前記蓋体膨出部及び前記本体膨出部の少なくとも一方が、上下多段に形成された複数のリブを有すると好適である。
【0019】
この構成によれば、多重の密封により、蓋体膨出部と本体膨出部とが当接するときの密封性が増加する。従って、容器本体内のガスが、容器本体と蓋体との間の隙間から外部へ漏れ出るのをより効果的に防止することができる。
【0020】
ここで、前記放出孔の内径に対する前記蓋体の前記天面部の厚みの比が1.5~3.0であると好適である。
【0021】
容器本体内に収容されたガスの密度が空気の密度より大きい場合、放出孔から放出されたガスは、外部空間の下方に拡散され易くなる。そのため、放出されたガスが外部空間の上方においても適切に拡散されるように、放出孔においてガスに直線的な流れを付与する必要がある。この構成によれば、容器本体内のガスが放出孔を通過する際の通気抵抗を大きくすることができ、容器本体内を加圧させやすくなる。従って、放出孔から放出されるガスに直線的な流れを付与し易い。従って、揮散容器の上方の狙った空間に、容易にガスを供給することができる。
【0022】
ここで、前記容器本体の前記側壁部外面と前記蓋体の前記側壁部内面とに亘って、前記蓋体の上下スライドを案内する案内部が設けられていると好適である。
【0023】
この構成によれば、案内部によって蓋体の容器本体に対する上下スライドが案内される。そのため、蓋体を上下にスライド移動させる操作を簡単に行うことができる。
【0024】
ここで、前記案内部は、前記容器本体の前記側壁部外面及び前記蓋体の前記側壁部内面のうちの一方に設けられ、周方向に離間した位置を上下方向に延びる一対の縦リブと、前記容器本体の前記側壁部外面及び前記蓋体の前記側壁部内面のうちの他方に設けられ、一対の前記縦リブの間に収まる係止突起と、を有すると好適である。
【0025】
この構成によれば、容器本体及び蓋体のそれぞれの構造の簡易な改変により、蓋体の上下スライドを案内する案内部を適切に構成できる。
【0026】
ここで、一対の前記縦リブの間に前記係止突起が収容された状態で、前記容器本体からの前記蓋体の離脱を防止する抜け止め部を備えると好適である。
【0027】
この構成によれば、抜け止め部によって、蓋体を上方に引っ張っても、容器本体から蓋体が外れない。このため、例えば引っかかる等して外力が加わった場合にも、容器本体からの蓋体の意図しない離脱を防止することができる。
【0028】
ここで、前記放出孔は、前記天面部における周縁部に形成されていると好適である。
【0029】
この構成によれば、放出孔の位置を第一封止部よりも外側としやすい。よって、第一封止部が機能する状態で、容器本体の内部と放出孔とが連通しないようにすることができ、容器本体から薬剤がこぼれたり放出孔からガスが漏れ出たりするのを適切に防止することができる。
【0030】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図5】蓋体を容器本体に取り付けた状態の揮散容器の水平断面図
【
図6】蓋体が上下スライド自在となった状態の揮散容器の水平断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
1.揮散容器の概要
以下に、揮散容器1について図面に基づいて説明する。
図1及び
図8に示すように、この揮散容器1は、ガス放出性の薬剤を収容する容器本体30と、天面部11にガスを放出するための放出孔12が形成された蓋体10と、を備えている。揮散容器1は、蓋体10に着脱自在に取り付けられるクリップ部2を更に備えている。
【0033】
容器本体30は、固体や液体などの薬剤を収容する。また、容器本体30は、薬剤から発生したガスを収容することができる。本実施形態では、容器本体30内に、活性化剤としての酸性物質と液性薬剤としての亜塩素酸ナトリウム水溶液との混合物が収容されている。酸性物質により亜塩素酸ナトリウム水溶液が活性化されて、容器本体30内で二酸化塩素ガスが発生する。なお、容器本体30に収容されるものとしては、二酸化塩素ガスを発生するゲル状の薬剤であってもよいし、固形や液体の芳香剤や消臭剤などであってもよい。その他、使用の用途に合わせて収容する内容物を適宜選択することができる。
【0034】
蓋体10は、容器本体30に取り付けられている。蓋体10は、容器本体30に取り付けられた状態で、容器本体30内の薬剤やガスが外部に漏れないように、容器本体30を密封することができる。また、蓋体10は、容器本体30に取り付けられた状態で、容器本体30に収容されたガスを、放出孔12から外部に放出させることができる。すなわち、揮散容器1は、ガスを容器本体30内に閉じ込めた(密封した)状態と、ガスを容器本体30の外部へ放出する状態とに切り換えることができる。本例では、蓋体10が容器本体30に取り付けられた状態で、容器本体30内で発生した二酸化塩素ガスが外部に放出しないよう、容器本体30を密封することができる。また、蓋体10が容器本体30に取り付けられた状態で、放出孔12から二酸化塩素ガスを外部に放出することができる。
【0035】
なお、以下では、揮散容器1の内部側に向かう方向(外縁側から中央側に向かう方向)を「内方」又は「内向き」と言い、揮散容器1の外部側に向かう方向(中央側から外縁側に向かう方向)を「外方」又は「外向き」と言う。
【0036】
2.容器本体
図1及び
図7に示すように、容器本体30は、底面部39と、本体側壁部40と、本体膨出部43とを有する。これらは一体的に形成されている。底面部39と本体側壁部40とによって、上部が開口した収容空間が形成されている。この収容空間に、上述したようにガス放出性の薬剤が収容されている。本実施形態では、底面部39は平面視で円形状に形成されている。
【0037】
本体側壁部40は、底面部39の周縁から上方に延びている。本実施形態では、本体側壁部40は、底面部39の外縁から上方に延びている。本体側壁部40は、上方に向かうに従って外方に向かうように傾斜して形成されている。
【0038】
本体側壁部40は、上下方向における中央部分より上方に、本体側取付部48を有している。本体側壁部40と本体側取付部48とは一体的に形成されている。本体側取付部48は、容器本体30と蓋体10とを取り付ける際に、蓋体側取付部16と係合される。本体側取付部48は、外方に向かって突出して形成されている。本実施形態では、本体側取付部48は、本体側壁部40における上下方向の中央部分より上方であって、後述する本体膨出部43よりも下方に形成されている。
【0039】
本実施形態では、本体側取付部48は、本体フランジ部47と、本体環状突出部46と、本体係止部45とを有している。図示の例では、下方から本体フランジ部47、本体環状突出部46、本体係止部45の順に形成されている。
【0040】
本体フランジ部47は、本体側取付部48における下端部に形成されている。本体フランジ部47は、全周に亘って形成されている。また、本体フランジ部47の外方への突出高さは、本体環状突出部46及び本体係止部45の突出高さよりも高くなっている。本体フランジ部47の外面には、複数の本体突起47aが形成されている(
図4参照)。図示の例では、4つの本体突起47aが周方向に均等に分散して設けられている。具体的には、4つの本体突起47aは、互いに90度ずつのピッチで形成されている。本体突起47aは、蓋体10の位置合わせマーク20と共に後述する位置合わせ部92を構成し、蓋体10を容器本体30に取り付けるときの位置合わせ用目印としての機能を果たす。
【0041】
本体環状突出部46は、本体側取付部48の上下方向における中央部分から外方に向かって突出している。本体環状突出部46は、全周に亘って形成されている。本体環状突出部46は、本体フランジ部47や本体係止部45に比べて、穏やかに突出している。本実施形態では、本体環状突出部46は、周方向において本体係止部45と重複する部分が、それ以外の部分よりも外方に突出している。本体環状突出部46には、揮散容器1の不使用状態(ガスが容器本体30内に密封されて、放出孔12から放出されない状態)において、後述する蓋体係止部8が下方から当接する。
【0042】
本体係止部45は、本体側取付部48における上端部に形成されている。本体係止部45は、周方向に断続的に形成されており、複数の本体係止部45が周方向に均等に分散して設けられている。具体的には、4つの本体係止部45が、互いに90度ずつのピッチで形成されている。本体係止部45は、それぞれ帯状に形成されている。また、本実施形態では、本体係止部45の周方向の長さは、中心角45°相当の長さとされており、互いに隣接する2つの本体係止部45どうしの周方向の間隔と等しくなっている。本実施形態では、本体係止部45はその上端から下方に向けて穏やかに傾斜している。
【0043】
本実施形態では、
図4に示すように、本体突起47aと本体係止部45とは、周方向の異なる位置に配置されている。本体突起47aは、周方向に互いに隣接する2つの本体係止部45どうしの間の領域に配置されている。
【0044】
図4及び
図7に示すように、本体側壁部外面33には、後述する案内部80を構成する一対の縦リブ81が設けられている。一対の縦リブ81は上下方向に沿うように設けられている。一対の縦リブ81は、本体側壁部外面33から外方に向けて突出して設けられている。一対の縦リブ81は、本体側壁部外面33と一体的に形成されている。本実施形態では、一対の縦リブ81は、本体側取付部48の直上の位置に設けられている。本例では、一対の縦リブ81は周方向の異なる位置に複数設けられている。複数組の一対の縦リブ81が周方向に均等に分散して設けられている。図示の例では、2組の一対の縦リブ81が、互いに180°のピッチで形成されている。2組の一対の縦リブ81は、4つの本体係止部45のうちの対向する2つの本体係止部45と周方向の同じ位置に配置されている。なお、本体側壁部外面33は、「容器本体の側壁部外面」に相当する。
【0045】
一対の縦リブ81は、第一縦リブ81aと第二縦リブ81bとから構成されている。本実施形態では、第一縦リブ81aは第二縦リブ81bよりも大きく形成されている。より具体的には、第一縦リブ81aは、第二縦リブ81bよりも周方向に幅広に形成されているとともに、外方への突出量が大きく形成されている。第一縦リブ81aは、略直方体状に形成されている。第二縦リブ81bは、穏やかな山型に形成されている。
【0046】
本実施形態では、
図1に示すように、本体側壁部40の上方に、本体側壁部外面33が内方に窪んだ本体側壁窪み部41が形成されている。本体側壁窪み部41は、全周に亘って形成されている。図示の例では、上下方向において、本体側壁窪み部41は、一対の縦リブ81よりも上方に形成されている。
【0047】
ここで、容器本体30は、本体側壁部外面33から外向きに膨出した本体膨出部43を有している。本体膨出部43は、本体側壁部外面33における上部に形成されている。本体膨出部43は全周に亘って形成されている。本実施形態では、本体膨出部43は、本体側壁窪み部41の直上の位置に設けられている。本体膨出部43は、揮散容器1の使用状態(容器本体30内のガスが、放出孔12から放出される状態)において、後述する蓋体膨出部23と嵌合して、容器本体30と蓋体10との間に形成される隙間Sを密封する機能を果たす(
図2参照)。
【0048】
3.蓋体
蓋体10は、容器本体30の上部開口を覆うと共に、容器本体30に対して上下にスライド自在に構成されている。蓋体10を上下スライドさせることで、揮散容器1を使用状態と不使用状態とに切り換えることができる。
図1及び
図2に示すように、蓋体10は、天面部11と、蓋体側壁部14と、蓋体膨出部23と、を有している。これらは一体的に形成されている。天面部11と蓋体側壁部14とによって、下部が開口した空間が形成されている。また、蓋体10は、ストラップ部18をさらに有している。
【0049】
本実施形態では、ストラップ部18は天面部11の中心領域から上方に延出している。ストラップ部18には紐等を挿通する挿通孔19が設けられている。挿通孔19に紐等を挿通することによって、揮散容器1を首や鞄等からぶら下げることができる。
【0050】
天面部11は平面視で円形状に形成されている。天面部11の主要部分は水平な面に沿う平坦面である。天面部11には、ガスを放出するための放出孔12がこの平坦面に形成されている。放出孔12は、蓋体10を上下方向に貫通する孔部であり、容器本体30に収容されたガスが、この放出孔12を通って外部空間に放出される。本実施形態では、放出孔12は、天面部11における周縁部29に形成されている。本例では、1つの放出孔12が、後述する環状リブ21よりも外方に形成されている。
【0051】
放出孔12の内径に対する蓋体10の天面部11の厚みの比は1.5~3.0であると好適である。容器本体30内に収容されたガスの密度が空気の密度より大きい場合、放出孔12から放出されたガスは、下方側の外部空間に拡散され易くなる。このため、放出されたガスが揮散容器1の上方の空間に適切に拡散するように、放出孔12においてガスに直線的な流れを付与する必要がある。放出孔12の内径に対する蓋体10の天面部11の厚みの比を、1.5~3.0とすることで、容器本体30内のガスが放出孔12を通過する際の通気抵抗を大きくすることができ、容器本体30内を加圧させやすくなる。このため、放出孔12を通過するガスに直線的な流れを付与し易い。従って、揮散容器1の上方の狙った空間に、容易にガスを供給することができる。空間除菌剤としての二酸化塩素ガスを容器本体30内に収容して使用する場合、例えば、揮散容器1を首からぶら下げて使用している人の呼吸器の周辺に向けて、集中的に二酸化塩素ガスを放出することができる。
【0052】
放出孔12の内径に対する蓋体10の天面部11の厚みの比は、例えば、天面部11に形成可能な放出孔12の最小内径に応じて天面部11の厚みを変更することによって、上記数値範囲内となるように調整することができる。放出孔12の内径に対する蓋体10の天面部11の厚みの比は、1.8~2.4であることがより好ましく、1.95~2.15であることがさらに好ましい。本例では、放出孔12は、放出孔12の内径に対する蓋体10の天面部11の厚みの比が2.08であるように形成されている。
【0053】
天面部11は、下方に突出する環状リブ21を有している。環状リブ21は全周に亘って形成されている。環状リブ21は、天面部11と一体的に形成されている。環状リブ21は、放出孔12より内側に形成されている。環状リブ21の外径は、容器本体30の本体側壁部40の上端部の内径にほぼ等しくなっている。本実施形態では、環状リブ21は、下方に向かうに従って内方に向かう(言い換えれば、上方に向かうに従って外方に向かう)ように傾斜する逆テーパー状に形成されている。
【0054】
図1及び
図2に示すように、天面部11は、環状リブ21よりも外側において下方に突出する環状突起25を更に有している。環状突起25は全周に亘って形成されている。環状突起25は、天面部11と一体的に形成されている。本実施形態では、環状突起25は、環状リブ21よりも外側であって、放出孔12よりも内側に形成されている。
【0055】
本実施形態では、蓋体側壁部14は、天面部11の外縁から下方に延びている。蓋体側壁部14は、第一蓋体側壁リブ15と、第二蓋体側壁リブ7と、蓋体係止部8とを有している。これらは一体的に形成されている。
【0056】
本実施形態では、
図1及び
図8に示すように、第一蓋体側壁リブ15は、蓋体側壁部外面24から外向きに突出している。第一蓋体側壁リブ15は、全周に亘って形成されている。第一蓋体側壁リブ15は、上下に分かれて一対設けられている。本例では、一対の第一蓋体側壁リブ15どうしの上下方向の間隔は、クリップ保持部6の幅(上下方向の長さ)に応じて設定されている。
【0057】
第二蓋体側壁リブ7は、蓋体側壁部外面24から外向きに突出している。第二蓋体側壁リブ7は、一対の第一蓋体側壁リブ15の間において上下方向に沿って形成されている。第二蓋体側壁リブ7は、周方向に分かれて一対設けられている。本例では、一対の第二蓋体側壁リブ7どうしの周方向の間隔は、クリップ保持部6の周方向の長さに応じて設定されている。
【0058】
本実施形態では、
図8に示すように、蓋体側壁部14には、溝部9が形成されている。溝部9は、蓋体側壁部外面24から内方に窪んで形成されている。溝部9は、一対の第一蓋体側壁リブ15の間に、上下方向に沿って形成されている。本例では、2つの溝部9が、周方向において、一対の第二蓋体側壁リブ7のそれぞれに隣接して形成されている。
【0059】
本実施形態では、蓋体側壁部外面24の下端部に、位置合わせマーク20が形成されている。位置合わせマーク20は、容器本体30の本体突起47aと共に後述する位置合わせ部92を構成し、蓋体10を容器本体30に取り付けるときの位置合わせ用目印としての機能を果たす。本例では、位置合わせマーク20は、矢印の形状に形成されている。但し、そのような構成に限定されることなく、丸や三角形等の別の形状としても良い。また、位置合わせマーク20は、蓋体側壁部14に一体的に形成されていても良いし、矢印等が表示されたシールを貼り付けて代用しても良い。
【0060】
蓋体係止部8は、蓋体側壁部内面13の下端部から、内方に突出するように形成されている。蓋体係止部8は、周方向に断続的に形成されており、複数の蓋体係止部8が周方向に均等に分散して設けられている。具体的には、4つの蓋体係止部8が、互いに90度ずつのピッチで形成されている。本実施形態では、
図3に示すように、蓋体係止部8は、それぞれ帯状に形成されている。また、本実施形態では、蓋体係止部8の周方向の長さは、中心角45°相当の長さとされており、互いに隣接する2つの蓋体係止部8どうしの周方向の間隔と等しくなっている。図示の例では、蓋体係止部8は、後述する蓋体側取付部16における下端部に形成されている。なお、蓋体側壁部内面13は、「蓋体の側壁部内面」に相当する。
【0061】
図3に示すように、蓋体側壁部内面13には、後述する案内部80を構成する係止突起84が設けられている。係止突起84は、蓋体側壁部内面13から内方に突出するように設けられている。係止突起84は、上下に延びるリブ形状に形成されている。係止突起84は、蓋体側壁部内面13と一体的に形成されている。本実施形態では、蓋体側壁部内面13には、蓋体側取付部16が設けられている。蓋体側取付部16は、蓋体側壁部内面13の上下方向における中央部から下部にかけて設けられている。蓋体側取付部16は、下方に向かうに従って段階的に拡径する階段状に形成されている(
図2参照)。蓋体側取付部16は全周に亘って形成されている。本例では、階段状の蓋体側取付部16は、第一段部16aと第二段部16bとを有している。第一段部16aは第二段部16bよりも上方に形成されている。また、第二段部16bは第一段部16aよりも外側に配置されている。図示の例では、係止突起84は、第一段部16aに形成されている。このため、係止突起84は、蓋体係止部8よりも上方に配置されている。
【0062】
また、係止突起84は、周方向の複数箇所に形成されており、複数の係止突起84が周方向に均等に分散して設けられている。具体的には、4つの係止突起84が、互いに90度ずつのピッチで形成されている。更に、本実施形態では、係止突起84は、周方向において蓋体係止部8と同じ位置に設けられている(
図3参照)。係止突起84は、対応する蓋体係止部8の周方向の中央部に設けられている。
【0063】
図1に示すように、蓋体10は、蓋体側壁部内面13から内向きに膨出した蓋体膨出部23を有している。後に詳細に説明するが、蓋体膨出部23は、揮散容器1の使用状態において、本体膨出部43と嵌合する部分である。蓋体膨出部23は、蓋体側壁部内面13における上部に形成されている。蓋体膨出部23は全周に亘って形成されている。本実施形態では、蓋体膨出部23は、蓋体側取付部16よりも上部に形成されている。
【0064】
本実施形態では、蓋体膨出部23は、上下多段に形成された複数のリブ60を有する。複数のリブ60は、それぞれ全周に亘って形成されている。本例では、上下3段の3つのリブ60が形成されている(
図2参照)。このような上下に連なる3つのリブ60を有することで、蓋体膨出部23の内面は波打ち状に形成されている。
【0065】
4.クリップ部
図1及び
図8に示すように、クリップ部2は、クリップ3と、クリップ保持部6とを有している。これらは一体的に形成されている。本実施形態では、クリップ保持部6の外周面からクリップ3が下方に延出している。
【0066】
クリップ保持部6は、円弧状に湾曲した板状の部材である。クリップ保持部6は、上方からクリップ3を支持する。クリップ保持部6を蓋体10に取り付けることにより、クリップ3が揮散容器1に具備される。本実施形態では、クリップ保持部6の周方向の長さは、蓋体側壁部14に形成された一対の第二蓋体側壁リブ7どうしの周方向の間隔(広い方の間隔)に対応するように設定されている。クリップ保持部6の周方向の両端部には、内向きに突出した線状突起5がそれぞれ形成されている。
【0067】
クリップ3は、クリップ保持部6の周方向の中央部分から下方に延出している。本実施形態では、クリップ3は下方に向かうに従って内方に向かうように傾斜して形成されている。
【0068】
本実施形態では、クリップ部2は蓋体10に取り付けられる。クリップ保持部6の水平方向における開口部分を、一対の第一蓋体側壁リブ15の間に押し付ける。そうすると、クリップ保持部6が、蓋体側壁部14を包むように蓋体10に取り付けられる。クリップ保持部6の周方向両端部に形成された線状突起5は、それぞれ、溝部9と嵌合する。このため、線状突起5と溝部9との嵌合状態では、クリップ部2は蓋体10に固定され、線状突起5と溝部9との嵌合状態が解除されると、クリップ3を蓋体10から取り外すことができる。
【0069】
5.取付け操作
ここでは、容器本体30に蓋体10を取付ける操作について説明する。
【0070】
図8に示すように、蓋体10と容器本体30との位置を、容器本体30に設けられた本体突起47aと蓋体10に設けられた位置合わせマーク20とからなる位置合わせ部92によって位置合わせをした状態で、蓋体10を、容器本体30の上部開口を覆うように上方から被せる。具体的には、位置合わせマーク20と本体突起47aとの位相が合うように、蓋体10と容器本体30との位置を合わせる。この状態では、容器本体30の複数の本体係止部45と蓋体10の複数の蓋体係止部8とが周方向に互い違いに配置される。すなわち、周方向に隣り合う本体係止部45どうしの間に蓋体係止部8が配置されるとともに、周方向に隣り合う蓋体係止部8どうしの間に本体係止部45が配置され、これが順次繰り返される。
【0071】
そして、蓋体10を容器本体30の上方から被せて、下方にスライド移動させる。すると、周方向に互い違いに配置された複数の本体係止部45と複数の蓋体係止部8とが干渉することなく、蓋体10を容器本体30に取り付けることができる。蓋体10が容器本体30に取り付けられると、
図5に示すように、係止突起84が、蓋体側壁部内面13と本体側壁部外面33との間に形成された隙間Sに収まる。このとき、本体係止部45は、蓋体側取付部16の第二段部16bによって蓋体側壁部内面13が外方に窪んだ領域に収まる(
図2参照)。
【0072】
その後、蓋体10と容器本体30とを相対回転させる。本例では、容器本体30に対して蓋体10を時計回りに回転させる。すると、蓋体10の回転に伴い、係止突起84も、隙間Sを周方向に移動する。やがて、係止突起84は、第二縦リブ81bを乗り越えて第一縦リブ81aに当接する。なお、係止突起84は、第一縦リブ81aを乗り越えることはできない(
図6参照)。このため、蓋体10のそれ以上の相対回転(ここでは時計回りの回転)が規制される。そして、係止突起84は、周方向における第一縦リブ81aと第二縦リブ81bの間に収容されることになる。なお、本実施形態では、蓋体10に設けられた係止突起84と、容器本体30に設けられた一対の縦リブ81(第一縦リブ81a,第二縦リブ81b)とにより、後述の案内部80が構成されている。
【0073】
図6に示すように、係止突起84が第一縦リブ81aと第二縦リブ81bとの間に収容されている状態で、蓋体係止部8と本体係止部45とが同じ位相で配置される。すなわち、蓋体係止部8とそれに対応する本体係止部45との各組について、蓋体係止部8と本体係止部45とが周方向の同じ位置に配置され、これらが平面視で重複する状態となる。本実施形態では、蓋体係止部8と本体係止部45により、後述する抜け止め部90が構成される。
【0074】
なお、蓋体10を容器本体30から取り外す場合は、上記で示した手順と逆の手順を行えばよい。
【0075】
6.合体状態
ここでは、容器本体30に蓋体10を嵌合した状態、すなわち揮散容器1の合体状態について説明する。
【0076】
上記したように、蓋体10は、容器本体30に対して上下スライド自在に構成されている。蓋体10を、容器本体30に対して上方にスライド移動することで、揮散容器1は使用状態(
図2参照)となり、蓋体10を、容器本体30に対して下方にスライド移動することで、揮散容器1は不使用状態(
図1参照)に切り換わる。
【0077】
本実施形態では、揮散容器1には、本体側壁部外面33と蓋体側壁部内面13とに亘って、蓋体10の上下スライドを案内する案内部80が設けられている。案内部80は、蓋体10の相対回転を規制した状態で、当該蓋体10の上下スライドを案内する。
【0078】
本実施形態では、上記したとおり、容器本体30の側壁部外面(本体側壁部外面33)に一対の縦リブ81が設けられ、蓋体10の側壁部内面(蓋体側壁部内面13)に係止突起84が設けられている。本実施形態では、係止突起84が、一対の縦リブ81(第一縦リブ81a及び第二縦リブ81b)の間に収容された状態で、容器本体30に対して蓋体10が上下スライド自在となる。
【0079】
本実施形態では、揮散容器1には、一対の縦リブ81の間に係止突起84が収容された状態で、容器本体30からの蓋体10の離脱を防止する抜け止め部90が設けられている。本実施形態では、この抜け止め部90は、蓋体10に設けられた蓋体係止部8と容器本体30に設けられた本体係止部45とで構成されている。本例では、係止突起84が一対の縦リブ81の間に収容されている状態で、蓋体係止部8と本体係止部45とが同じ位相で配置される(
図6参照)。また、蓋体係止部8は、本体係止部45よりも下方に配置される。従って、蓋体10を上方へスライド移動させると、やがて蓋体係止部8は本体係止部45に下方から当接する(
図2参照)。このため蓋体係止部8は、本体係止部45を乗り越えて上方に移動することができず、容器本体30からの蓋体10の離脱が防止される。よって、使用者等の意図しない蓋体10の離脱を防止することができる。特に、チャイルドプルーフとして有効である。
【0080】
より具体的に説明すると、
図1に示すように、蓋体10を下方にスライド移動させた状態では、蓋体係止部8は、本体環状突出部46と当接する。この状態において、係止突起84は、一対の縦リブ81どうしの間に上下方向の全域で収容されている。
図2に示すように、蓋体10を上方にスライド移動させた状態では、蓋体係止部8は、本体環状突出部46を乗り越えて本体係止部45に下方から当接する。これにより、蓋体10は、更に上方にスライド移動することが規制される。なお、この状態では、係止突起84は、下方側の少なくとも一部が、一対の縦リブ81どうしの間に収容されたままである。
【0081】
揮散容器1は、容器本体30の上端部31と天面部11とが嵌合することによって容器本体30を密封する第一封止部50を備えている。第一封止部50は、揮散容器1の不使用状態において、容器本体30を密封する。揮散容器1を使用しない場合には、蓋体10を下方にスライド移動させると、第一封止部50が機能する状態となって容器本体30が密封される。本実施形態では、本体側壁部40の上端部31と天面部11とが、天面部11の周縁の領域において嵌合している。
【0082】
本実施形態では、
図1に示すように、第一封止部50は、環状リブ21の外面22と本体側壁部内面42とが嵌合してなる第一嵌合部51を含んで構成されている。蓋体10を下方にスライド移動させることにより、環状リブ21の外面22が本体側壁部内面42と全周に亘って嵌合して密着する。このとき、環状リブ21は、上方に向かうに従って外方に向かうように傾斜する逆テーパー状に形成されているので、下方への蓋体10のスライド移動に伴い、本体側壁部内面42に対して環状リブ21をより強く押し付けることができ、密着性を高めることができる。
【0083】
本実施形態では、第一封止部50は、環状突起25と容器本体30の上端面31aとが嵌合してなる第二嵌合部52を更に含んで構成されている。
図1に示すように、蓋体10を下方にスライド移動させた状態において、天面部11の環状突起25が上端面31aに押し付けられる。図示の例では、環状突起25は、上端面31aの内方側の領域において、上端面31aと嵌合する。
【0084】
このように、揮散容器1の不使用状態では、環状リブ21の外面22と本体側壁部内面42とが嵌合し(第一嵌合部51)、更に容器本体30の上端面31aと天面部11及び環状リブ21とが嵌合する(第二嵌合部52)。このような二重の密封により、容器本体30に収容されたガスが外部空間に漏れ出ることを効果的に防止している。
【0085】
図2に示すように、揮散容器1は、本体側壁部外面33と蓋体側壁部内面13とが嵌合することによって容器本体30と蓋体10との間の隙間Sを密封する第二封止部70を備えている。第二封止部70は、揮散容器1の使用状態において、隙間Sを密封することができる。蓋体10を上方にスライド移動させると、第二封止部70が機能する状態となって隙間Sが密封される。本実施形態では、第二封止部70は、蓋体膨出部23と本体膨出部43とが嵌合してなる第三嵌合部71を含んで構成されている。具体的には、蓋体10を上方にスライド移動させることにより、本体膨出部43と蓋体膨出部23とが嵌合する。より詳細には、本体膨出部43と、蓋体膨出部23の上下多段に形成された複数のリブ60とが嵌合する。このため、第二封止部70は、多重の密封により、隙間Sを効果的に密封することができる。
【0086】
図1及び
図2に示すように、揮散容器1は、容器本体30に対する蓋体10の上下スライドに伴い、第一封止部50が機能する状態と第二封止部70が機能する状態とが切り換わる。揮散容器1の不使用状態、すなわち蓋体10を下方にスライド移動させた状態において、第一封止部50が機能する状態となる。なお、このとき、第二封止部70は機能しない。また、揮散容器1の使用状態、すなわち蓋体10を上方にスライド移動させた状態において、第一封止部50が機能しない状態となり、第二封止部70が機能する状態となる。
【0087】
本実施形態では、揮散容器1の不使用状態において、上記のとおり、第一封止部50が機能する状態となる。すなわち、環状リブ21の外面22と本体側壁部内面42とが嵌合し、環状突起25と容器本体30の上端面31aとが嵌合する(
図1参照)。このように構成されているため、容器本体30は密封され、容器本体30に収容されたガスは、放出孔12や本体側壁部40と蓋体側壁部14との間の隙間Sから外部空間へ移動することができない。よって、不使用時には有効ガスの無駄な放出を回避して、その有効期限を延ばすことができる。
【0088】
本実施形態では、揮散容器1の使用状態において、上記のとおり、第二封止部70だけが機能する状態となる。すなわち、環状リブ21の外面22と本体側壁部内面42との嵌合が解除され、環状突起25と容器本体30の上端面31aとの嵌合が解除され、本体膨出部43と蓋体膨出部23とが嵌合する。本例では、蓋体10の上方へのスライド移動により、天面部11と容器本体30の上端面31aとが上下方向に離間し、容器本体30と蓋体10との間に、容器本体30の内部と放出孔12とを連通する間隙が形成される。このため、容器本体30に収容されたガスは、当該間隙を通過して放出孔12から外部空間へ移動することができる。このとき、本体膨出部43と蓋体膨出部23とが嵌合しているため、本体側壁部40と蓋体側壁部14との間の隙間S側にはガスが移動することがなく、専ら放出孔12からガスを放出させることができる。よって、放出孔12の先にある狙いの空間に高濃度の有効ガスを供給することができる。
【0089】
7.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、蓋体側壁部14と本体側壁部40とが平面視で円形状に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、蓋体側壁部14と本体側壁部40とが平面視で楕円形状や多角形状(例えば矩形状)等に形成されていても良い。この場合、当該非円形状によって容器本体30に対する蓋体10の上下スライドが案内される。また、揮散容器1の用途やデザイン等に応じて、蓋体側壁部14と本体側壁部40との平面視形状は適宜変更しても良い。
【0090】
(2)上記の実施形態では、蓋体10を下方にスライド移動させた状態で、環状リブ21の外面22と、本体側壁部内面42とが嵌合する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、天面部11が、環状リブ21を有さない構成としても良い。言い換えれば、第一封止部50が必ずしも第一嵌合部51及び第二嵌合部52の両方を具備する必要はなく、第一封止部50が第二嵌合部52だけで構成されても良い。
【0091】
(3)上記の実施形態では、環状リブ21が上方に向かうに従って外方に向かうように傾斜する逆テーパー状に形成されている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、環状リブ21が上下多段のリブを有するように形成されていても良い。或いは、環状リブ21が直胴に形成されていても良い。この場合、環状リブ21の外面22及び本体側壁部内面42の少なくともいずれか一方に、係合突起が形成されていても良い。
【0092】
(4)上記の実施形態では、天面部11が、環状リブ21よりも外側において下方に突出する単一の環状突起25を有する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、例えば、天面部11に、環状突起25が複数形成されていても良い。この場合、複数の環状突起25の全てが、容器本体30の上端面31aと嵌合するように構成されていると好適である。或いは、天面部11に環状突起25が設けられていなくても良く、言い換えれば、第一封止部50が第一嵌合部51だけで構成されても良い。
【0093】
(5)上記の実施形態では、蓋体10を上方にスライド移動させた状態で、蓋体膨出部23と本体膨出部43とが嵌合する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、例えば、蓋体側壁部内面13にこのような膨出部が形成されておらず、平坦な蓋体側壁部内面13に本体膨出部43が嵌合する構成としても良い。また、本体側壁部内面42にこのような膨出部が形成されておらず、平坦な本体側壁部内面42に蓋体膨出部23が嵌合する構成としても良い。
【0094】
(6)上記の実施形態では、蓋体膨出部23に、上下3段に形成された3つのリブ60が形成されている構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、上下多段に形成されるリブ60の段数は2段であっても良いし、4段以上であっても良い。また、例えば、蓋体膨出部23ではなく本体膨出部43に、上下多段に形成されたリブ60が形成されている構成としても良い。また、蓋体膨出部23及び本体膨出部43のいずれか一方に、単一のリブ60が形成されていても良い。さらに、蓋体膨出部23及び本体膨出部43の両方に、単一又は複数のリブ60が形成されていても良い。或いは、蓋体膨出部23及び本体膨出部43にそのようなリブ60が形成されておらず、蓋体膨出部23と本体膨出部43とが面接触する状態で嵌合しても良い。
【0095】
(7)上記の実施形態では、天面部11に単一の放出孔12が形成されている構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、例えば、天面部11に、複数の放出孔12が形成されていても良い。
【0096】
(8)上記の実施形態では、本体側壁部外面33と蓋体側壁部内面13とに亘って、蓋体10の上下スライドを案内する案内部80が設けられている構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、例えば案内部80を設けない構成としても良い。
【0097】
(9)上記の実施形態では、本体側壁部外面33に、一対の縦リブ81が設けられ、蓋体側壁部内面13に、一対の縦リブ81の間に収まる係止突起84が設けられている構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、例えば、蓋体側壁部内面13に、一対の縦リブ81が設けられ、本体側壁部外面33に、一対の縦リブ81の間に収まる係止突起84が設けられる構成としても良い。
【0098】
(10)上記の実施形態では、蓋体係止部8が本体係止部45に係止することで、容器本体30からの蓋体10の離脱を防止する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、抜け止め部90として、一対の縦リブ81に容器本体30からの蓋体10の離脱を防止するストッパ等を設けても良い。
【0099】
(11)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示されている構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示されている構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 :揮散容器
10 :蓋体
11 :天面部
12 :放出孔
13 :側壁部内面
21 :環状リブ
22 :外面
23 :蓋体膨出部
25 :環状突起
29 :周縁部
30 :容器本体
31 :上端部
31a :上端面
33 :側壁部外面(本体側壁部外面)
42 :側壁部内面(本体側壁部内面)
43 :本体膨出部
50 :第一封止部
60 :リブ
70 :第二封止部
71 :嵌合部
80 :案内部
81 :縦リブ
84 :係止突起
90 :抜け止め部
S :隙間