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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158646
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】筒内残留燃料量算出システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20221006BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F02D45/00 369
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063685
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】522193547
【氏名又は名称】株式会社エー・アンド・デイ
(72)【発明者】
【氏名】才野 鏡太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】安野 啓介
【テーマコード(参考)】
2G064
3G384
【Fターム(参考)】
2G064AA15
2G064AB13
2G064BD02
2G064DD02
3G384DA04
3G384FA01Z
3G384FA14Z
3G384FA29Z
3G384FA38Z
3G384FA45Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】エンジンのサイクル毎の筒内残留燃料量を算出する筒内残留燃料量算出システムを提供する。
【解決手段】エンジン試験装置Bに設置されたエンジンEのシリンダ1内の残留燃料量算出システムWであって、エンジンEに流入されるサイクル毎の吸気量を計測する高応答流量計20と、エンジンEに投入するサイクル毎の投入燃料量を計測する燃料流量計26と、エンジンEのサイクル毎の排ガスのTHC体積濃度を計測する高応答THC濃度計24と、シリンダ1の筒内圧力を計測する第1圧力計21と、排気圧力を計測する第2圧力計22と、排気温度を計測する温度計23と、クランク角度を計測するロータリエンコーダ25と、エンジンの筒内残留燃料量を算出する演算装置100とを有してり、演算装置100が、サイクル毎に、シリンダ1の筒内の残留燃料量を算出するようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン試験装置に設置されたエンジンのシリンダの筒内残留燃料量算出システムであって、
前記エンジンの吸気管に接続され該エンジンに流入されるサイクル毎の吸気量を計測する高応答流量計と、
前記エンジンに投入するサイクル毎の噴射燃料量を計測する燃料流量計と、
前記エンジンの排気管に接続され該排気管に排出されるサイクル毎の排ガスのTHC体積濃度を計測する高応答THC濃度計と、
前記エンジンのシリンダの筒内圧力を計測する第1圧力計と、
前記エンジンの排気管内に設置され該排気ガスの排気圧力を計測する第2圧力計と、
前記排気管内に設置され該排気ガスの排気温度を計測する温度計と、
前記エンジンのクランク角度を計測するロータリエンコーダと、
前記エンジンの筒内残留燃料量を算出する演算装置とを有し、
前記演算装置は、前記エンジン試験装置が前記エンジンを動作させている最中に、前記高応答流量計、前記燃料流量計、前記高応答THC濃度計、前記第1、2圧力計、前記温度計及び前記ロータリエンコーダのそれぞれが計測した各計測値を取得し、該取得した各計測値を用いて、前記サイクル毎に、前記シリンダの筒内残留燃料量を算出するようになっていることを特徴とするエンジンの筒内残留燃料量算出システム。
【請求項2】
前記演算装置は、前記サイクル毎の前記筒内残留燃料量として、前記シリンダ内に蒸発した状態で残留しているガス・残留燃料量と、該シリンダ内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発して筒内に出てくる蒸発燃料量と、該シリンダ内に液状態で付着して残留している付着・残留燃料量とを算出するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の筒内残留燃料量算出システム。
【請求項3】
前記演算装置は、
予め記憶している前記エンジンの寸法情報と、前記ロータリエンコーダが計測したクランク角度とを用いてシリンダ容積を算出し、該算出したシリンダ容積と、予め記憶している投入燃料の低位発熱量と、前記第1圧力計が計測した筒内圧力とを用いてサイクル当たりの燃焼・燃料量を算出し、
前記高応答流量計が計測した吸気量と、前記高応答THC体積濃度計が計測したTHC体積濃度とを用いて排気ガスに含まれている排出未燃・燃料量を算出し、
前記筒内圧力及び前記クランク角度から排気閉時点の筒内圧力を算出し、前記エンジン寸法情報及び前記クランク角度から排気閉時点のシリンダ容積を算出し、前記排気閉時の筒内圧力及び前記排気閉時のシリンダ容積と、前記温度計が計測した排気温度と、前記第2圧力計が計測した排気圧力とを用いて、前記ガス・残留燃料量を算出し、
前記計測値から回帰的に求めた付着燃料の筒内蓄積分の値に、予め行った実験で求めた蒸発率を乗算することで前記蒸発燃料量を算出し、
前記燃料流量計が計測したサイクル毎の噴射燃料量と、前記算出したガス・残留燃料量と、前記算出した蒸発燃料量とを加算して、該サイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量を算出し、
前記算出したトータル燃料量から前記算出した前記燃焼・燃料量を減算した値を、サイクル当たりの未燃・燃料量として算出し、
前記未燃・燃料量から前記排出未燃・燃料量及び前記ガス・残留燃料量を減算した値を前記付着・残留燃料量として算出することを特徴とする請求項2に記載の筒内残留燃料量算出システム。
【請求項4】
前記演算装置は、前記算出したサイクル当たりの燃焼・燃料量を、前記算出したサイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量で除算することにより、燃焼効率を算出することを特徴とする請求項3に記載の筒内残留燃料量算出システム。
【請求項5】
前記演算装置は、前記算出したサイクル当たりの排出未燃・燃料量を、前記算出したサイクル当たりの未燃・燃料量で除算することにより、サイクル当たりの排出率を算出することを特徴とする請求項3に記載の筒内残留燃料量算出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒内残留燃料量算出システムに関し、例えば、自動車のエンジンのシリンダの筒内残留燃料量を算出する筒内残留燃料量算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの筒内の残留燃料量を計測する筒内燃料量計測システムが開示されている。特許文献1に記載の筒内残留燃料量計測システムでは、以下の手順で筒内残留燃料量を算出している。この筒内残留燃料量計測システムでは、先ず、所定状態になるまでエンジンを運転させた後、燃料噴射を停止させてモーターリング状態にする。次に、筒内残留燃料計測システムは、モーターリング状態において、排気工程を繰り返し、各排気工程に同期して筒内ガスをサンプリング抽出し、抽出したガスからHC濃度を求め、HC濃度と排ガス流量から当該排気工程の燃料量を算出するようになっている。また、筒内残留燃料計測システムは、各排気工程において、HC濃度が大気と同じレベルであるか否かを判定し、HC濃度が大気と同じレベルになると、排気工程を止めて、これまでの各排気工程で算出した燃料量を合計し、合計した値を、筒内残留燃料量としている。
【0003】
なお、特許文献1に記載の発明では、白煙の量が排出される未燃焼燃料の量と高い相関関係を有している点に着目し、白煙の量を示す指標として、エンジンの筒内残留燃料量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-184441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車のエンジンは、加速のときに、燃料噴射量を増量しても、エンジンのシリンダの筒内の燃料の付着蒸発の遅れのため、エンジンの出力が直ちに増加せず、所望する加速が実現できないという課題を有している。この課題は、燃費の悪化や排ガス性状の悪化にもつながっている。
本願発明者は、上記課題について研究を重ねているなかで、エンジンのサイクル毎(サイクル当たり)の筒内残留燃料量を把握できれば、サイクル毎にエンジンの筒内の残留燃料量を考慮した上で、最適な燃料噴射量を予測制御することができることを着想した。
しかし、現状において、エンジンのサイクル毎の筒内残留燃料量を把握できるような装置やシステムは知られていない。なお、上述した特許文献1に記載の発明は、エンジンを停止させた状態において、エンジン内の残留燃料量を算出しているものであり、エンジンのサイクル毎の筒内残留燃料量を算出するものではない。そもそも、特許文献1に記載の発明は、白煙の量を示す指標を算出するものであり、サイクル毎にエンジンの筒内の残留燃料量を把握するという発想の技術では無い。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、エンジンのサイクル毎の筒内残留燃料量を算出する筒内残留燃料量算出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、エンジン試験装置に設置されたエンジンのシリンダの筒内残留燃料量算出システムであって、前記エンジンの吸気管に接続され該エンジンに流入されるサイクル毎の吸気量を計測する高応答流量計と、前記エンジンに投入するサイクル毎の噴射燃料量を計測する燃料流量計と、前記エンジンの排気管に接続され該排気管に排出されるサイクル毎の排ガスのTHC体積濃度を計測する高応答THC濃度計と、前記エンジンのシリンダの筒内圧力を計測する第1圧力計と、前記エンジンの排気管内に設置され該排気ガスの排気圧力を計測する第2圧力計と、前記排気管内に設置され該排気ガスの排気温度を計測する温度計と、前記エンジンのクランク角度を計測するロータリエンコーダと、前記エンジンの筒内残留燃料量を算出する演算装置とを有し、前記演算装置は、前記エンジン試験装置が前記エンジンを動作させている最中に、前記高応答流量計、前記燃料流量計、前記高応答THC濃度計、前記第1、2圧力計、前記温度計及び前記ロータリエンコーダのそれぞれが計測した各計測値を取得し、該取得した各計測値を用いて、前記サイクル毎に、前記シリンダの筒内残留燃料量を算出するようになっていることを特徴とする。
【0008】
このように、本発明では、エンジン試験装置に設置されたエンジンから排出される排ガスのサイクル毎のTHC体積濃度を計測する高応答THC体積濃度計を設けている。また、本発明では、上記エンジンに流入されるサイクル毎の吸気量を計測する高応答流量計と、サイクル毎の噴射燃料量を計測する燃料流量計を設けている。この構成により、本発明では、エンジンのサイクル毎の「吸気量(吸入空気量)、噴射燃料量、THC体積濃度(排出THC体積濃度)」を計測することができる。また、本発明では、演算装置が、計測して得られたサイクル毎の「吸気量(吸入空気量)、噴射燃料量、THC体積濃度(排出THC体積濃度)」と、「各センサ(第1圧力計、第2圧力計、温度計、ロータリエンコーダ)で計測した計測値」とを用いて、サイクル毎の筒内残留燃料量を算出するように構成されている。
したがって、本発明を用いることにより、例えば、サイクル毎にエンジンの筒内残留燃料量を考慮した上で、最適な燃料噴射量の予測制御をすることができる。また、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、燃費や排ガスの改善が期待できる。また、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、例えば、エンジンベンチで行うエンジンの性能試験において、エンジンの種々の解析に活用することもできる。
【0009】
また、前記サイクル毎の前記筒内残留燃料量として、前記シリンダ内に蒸発した状態で残留しているガス・残留燃料量と、該シリンダ内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発して筒内に出てくる蒸発燃料量と、該シリンダ内に液状態で付着して残留している付着・残留燃料量とを算出するようになっていることが望ましい。
【0010】
このように、本発明によれば、エンジンのサイクル毎に、シリンダ内に蒸発した状態で残留している「ガス・残留燃料量」と、シリンダの筒内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発して筒内に出てくる「蒸発燃料量」と、シリンダ内に液状態で付着して残留している「付着・残留燃料量」とを算出することができる。
すなわち、本発明では、次のサイクルの燃焼に影響する、サイクル当たりの「「ガス・残留燃料量」、「蒸発燃料量」及び「付着・残留燃料量」」の三者を把握できることで、これらの値を考慮した上で、次のサイクルの最適な燃料噴射量の予測制御が可能になる。そして、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、燃費や排ガスの改善が期待できる。
【0011】
また、前記演算装置は、予め記憶している前記エンジンの寸法情報と、前記ロータリエンコーダが計測したクランク角度とを用いてシリンダ容積を算出し、該算出したシリンダ容積と、予め記憶している投入燃料の低位発熱量と、前記第1圧力計が計測した筒内圧力とを用いてサイクル当たりの燃焼・燃料量を算出し、前記高応答流量計が計測した吸気量と、前記高応答THC体積濃度計が計測したTHC体積濃度とを用いて排気ガスに含まれている排出未燃・燃料量を算出し、前記筒内圧力及び前記クランク角度から排気閉時点の筒内圧力を算出し、前記エンジン寸法情報及び前記クランク角度から排気閉時点のシリンダ容積を算出し、前記排気閉時の筒内圧力及び前記排気閉時のシリンダ容積と、前記温度計が計測した排気温度と、前記第2圧力計が計測した排気圧力とを用いて、前記ガス・残留燃料量を算出し、前記計測値から回帰的に求めた付着燃料の筒内蓄積分の値に、予め行った実験で求めた蒸発率を乗算することで前記蒸発燃料量を算出し、前記燃料流量計が計測したサイクル毎の噴射燃料量と、前記算出したガス・残留燃料量と、前記算出した蒸発燃料量とを加算して、該サイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量を算出し、前記算出したトータル燃料量から前記算出した前記燃焼・燃料量を減算した値を、サイクル当たりの未燃・燃料量として算出し、前記未燃・燃料量から前記排出未燃・燃料量及び前記ガス・残留燃料量を減算した値を前記付着・残留燃料量として算出することが望ましい。
【0012】
また、前記演算装置は、前記算出したサイクル当たりの燃焼・燃料量を、前記算出したサイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量で除算することにより、燃焼効率を算出することが望ましい。
【0013】
また、前記演算装置は、前記算出したサイクル当たりの排出未燃・燃料量を、前記算出したサイクル当たりの未燃・燃料量で除算することにより、サイクル当たりの排出率を算出することが望ましい。
【0014】
このように、本発明によれば、サイクル当たりの燃焼効率を算出することができる。また、本発明によれば、サイクル当たりの排出率を算出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エンジンのサイクル毎の筒内残留燃料量を算出する筒内残留燃料量算出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の筒内残留燃料量算出システムの構成を示した模式図である。
図2】本発明の実施形態の筒内残留燃料量算出システムが行う筒内残留燃料量を算出するための手順を示したフローチャートである。
図3】本発明の実施形態の筒内残留燃料量算出システムが計測した計測値と、当該システムが算出した算出値との関係を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の筒内残留燃料量算出システムについて図面に基づいて説明する。
先ず、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムの構成について、図1を参照しながら説明する。ここで、図1は、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムの構成を示した模式図である。
【0018】
図示するように、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWは、エンジン試験装置(エンジンベンチ)Bに設置されたエンジンEの吸気管3に接続されエンジンEに流入されるサイクル毎の吸気量を計測する高応答流量計20と、エンジンEのシリンダ1の筒内圧力を計測する圧力計(第1圧力計)21と、エンジンEが排気する排気ガスの排気圧力を計測する圧力計(第2圧力計)22と、エンジンEが排出する排気ガスの排気温度を計測する温度計23と、エンジンEの排気管5に接続され排気管5に排出されるサイクル毎の排ガスのTHC体積濃度を計測する高応答THC濃度計24と、エンジンのクランク角度を計測するロータリエンコーダ25と、エンジンEに投入するサイクル毎の噴射燃料量(噴射量)を計測する燃料流量計26と、エンジンEの筒内残留燃料量を算出する演算装置100とを有している。
【0019】
なお、図中の符号7は、スロットルバルブであり、符号11は、エンジンEの燃料噴射装置(インジェクタ)9に燃料を供給する燃料供給装置である。また、上記の燃料流量計26は、燃料供給装置11と、燃料噴射装置9とを接続している燃料供給配管に設けられている。
【0020】
また、エンジンベンチBは、試験対象であるエンジンEに負荷を与えるダイナモメータ50と、ダイナモメータ50の回転軸とエンジンEの回転軸とを連結するシャフト52と、ダイナモメータ50の動作を制御するダイナモ制御装置51と、エンジンEの動作を制御するエンジン制御装置60とを備えている。
なお、エンジンベンチBは、周知技術のものを用いているため、詳細な説明を省略する。また、試験対象となるエンジンEは、周知の構成のものであるため、図中においては、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWに直接的に関係する部分だけを示している。
【0021】
高応答流量計20は、エンジンシリンダ1に空気を送り込む吸気管3の一端部に接続されており、エンジンEに流入される、サイクル毎の流体(空気)の吸気量(過渡吸気流量)を計測する。また、高応答流量計20は、演算装置100に電気的に接続されており、吸気量を計測すると、演算装置100に、計測した吸気量を送信する。
なお、上記の高応答流量計20とは、自動車のエンジンEに汎用的に搭載されている「熱線式のエアフロセンサ」よりも空気流量の変動に対する応答性が高い(早い)空気流量計のことをいう。例えば、高応答流量計20には、ラミナ流量計(層流型流量計)或いは超音波流量計を用いることができる。本実施形態では、高応答流量計20がラミナ流量計である場合を示している。
【0022】
圧力計(第1圧力計)21は、シリンダ1の筒内に設置されており、シリンダ1の筒内圧力を計測する。また、演算装置100に電気的に接続されており、筒内圧力を計測すると、演算装置100に、計測した筒内圧力を送信する。
【0023】
圧力計(第2圧力計)22は、排気管5に設置されており、排気管5に排出される排ガスの排気圧力を計測する。また、圧力計22は、演算装置100に電気的に接続されており、排気圧力を計測すると、演算装置100に、計測した排気圧力を送信する。
温度計23は、排気管5に設置されており、排気管5に排出される排ガスの排気温度を計測する。また、温度計23は、演算装置100に電気的に接続されており、排気温度を計測すると、演算装置100に、計測した排気温度を送信する。
【0024】
高応答THC濃度計24は、排気管5に接続された接続配管13を介して、排気管5に接続されており、排気管5に排出されるサイクル毎の排ガスのTHC(total hydrocarbon)体積濃度(過渡THC体積濃度)を計測する。また、高応答THC濃度計24は、演算装置100に電気的に接続されており、THC体積濃度を計測すると、演算装置100に、計測したTHC体積濃度を送信する。
なお、高応答THC濃度計24は、例えば、株式会社Best測器社製のBHF-100Fを用いることができる。
【0025】
演算装置100は、各計測装置(高応答流量計20、圧力計(第1圧力計)21、圧力計(第2圧力計)22、温度計23、高応答THC濃度計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)からそれぞれ送信されてくる計測値(吸気量、筒内圧力、排気圧力、排気温度、THC体積濃度、クランク角度、噴射燃料量)を受信(取得)する。また、演算装置100は、取得した各計測値を用いて、シリンダ1の筒内のサイクル当たりの筒内残留燃料量(ガス・残留燃料量(MRes)、蒸発燃料量(MEV)、付着・残留燃料量(MLiq))を算出する。
【0026】
なお、本実施形態では、演算装置100が、各計測装置(高応答流量計20、圧力計(第1圧力計)21、圧力計(第2圧力計)22、温度計23、高応答THC濃度計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)との間において、無線或いは有線の通信により計測値を取得する場合を示しているが、これは一例に過ぎない。
ユーザが演算装置100に入力操作をすることで、演算装置100に対して、各計測装置(高応答流量計20、圧力計(第1圧力計)21、圧力計(第2圧力計)22、温度計23、高応答THC濃度計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)が計測した計測値が入力されるようになっていても良い。
【0027】
次に、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWを構成する演算装置100の機能構成について説明する。
【0028】
図1に示すように、演算装置100は、制御部110と、データ取得部120と、残留燃料量算出部130とを有している。
【0029】
なお、演算装置100のハードウェア構成について特に限定しないが、演算装置100は、例えば、CPU、補助記憶装置(記憶部)、主記憶装置(記憶部)、ネットワークインターフェース及び入出力インターフェースを備えるコンピュータ(1台或いは複数台のコンピュータ)により構成することができる。この場合、入出力インターフェースには、「高応答流量計20、圧力計(第1圧力計)21、圧力計(第2圧力計)22、温度計23、高応答THC濃度計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26」が接続されている。また、補助記憶装置には、「制御部110、データ取得部120及び残留燃料量算出部130」の機能を実現するためのプログラムが記憶されている。
【0030】
そして、「制御部110、データ取得部120及び残留燃料量算出部130」の機能は、前記CPUが前記プログラムを前記主記憶装置にロードして実行することにより実現される。
また、演算装置100の記憶部(補助記憶装置或いは主記憶装置)には、筒内残留燃料量算出処理を行う前段階において、予め、筒内残留燃料量算出処理に用いるための、既知データ(エンジンEの寸法情報、比熱比、エンジンEに投入される燃料の低位発熱量、排気ガスの分子量(排気分子量)、燃料中の平均C原子数等のデータ)が登録(記憶)されている。
なお、「エンジンEの寸法情報」は、エンジンベンチBに設置されるエンジンEの仕様により特定される値であり、「比熱比、低位発熱量、排気ガスの分子量(排気分子量)、燃料中の平均C原子数」は、エンジンEに供給する燃料により特定される値である。
【0031】
また、上記の制御部110は、演算装置100の全体の動作を制御するもので、ユーザからの各種設定を受け付けたり、既知データ(エンジンEの寸法情報、比熱比、エンジンEに投入される燃料の低位発熱量、排気ガスの分子量(排気分子量)、燃料中の平均原子数等の情報等のデータ)の入力を受け付けたりする。また、制御部110は、ユーザからの筒内残留燃料量算出システムWに対する操作要求を受け付ける。
【0032】
データ取得部120は、所定の計測タイミングで、各計測装置(高応答流量計20、圧力計(第1圧力計)21、圧力計(第2圧力計)22、温度計23、高応答THC濃度計24、ロータリエンコーダ25、燃料流量計26)がそれぞれ計測した計測値(吸気量、筒内圧力、排気圧力、排気温度、THC体積濃度、クランク角度、噴射燃料量)を取得する。
【0033】
残留燃料量算出部130は、データ取得部110が取得した各計測値(吸気量、筒内圧力、排気圧力、排気温度、THC体積濃度、クランク角度、噴射燃料量)と、記憶部が記憶している既知データと、後述する各演算式とを用いて、シリンダ1の筒内のサイクル当たりの筒内残留燃料量(ガス・残留燃料量(MRes)、蒸発燃料量(MEV)、付着・残留燃料量(MLiq))を算出する。また、残留燃料量算出部130は、算出して得られた値を用いて、エンジンEのサイクル当たりの「燃焼効率(η)、未燃率(1-η)、排出率(G)、付着率(1―G)」を算出するようになっている。
【0034】
次に、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWが行う筒内残留燃料量の算出処理の手順について説明する。
ここで、図2は、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムが行う筒内残留燃料量を算出するための手順を示したフローチャートである。
【0035】
なお、筒内残留燃料算出システムWが行う筒内残留燃料量の算出処理に先立って、演算装置1の記憶部(補助記憶装置或いは主記憶装置)に、既知データ(エンジンEの寸法情報、比熱比(γ)、エンジンEに投入される燃料の低位発熱量(QLHV)、燃料の平均モル当たり質量(WFuel)、燃料中の平均C原子数(Nc)、排気ガスモル当たり質量(WExh)等のデータ)を記憶させる処理を行っているものとする。
【0036】
図示するように、筒内残留燃料量算出システムWは、最初に、データ計測処理(S1)を行う。
【0037】
このデータ計測処理(S1)では、先ず、エンジンベンチBを駆動させ、エンジンベンチBに設置されたエンジンEを動作させる。
また、筒内残留燃料量算出システムWは、エンジンEを動作させている最中に、高応答流量計20にサイクル毎(サイクル当たり)の吸気量(MAir)を計測させ、且つ圧力計21に筒内圧力(P)を計測させ、且つ圧力計22に排気圧力(PExh)を計測させ、且つ温度計23に排気温度(TEXh)を計測させる。また、筒内残留燃料量算出システムWは、エンジンEを動作させている最中に、高応答THC濃度計24にサイクル毎のTHC体積濃度(CTHC)を計測させ、且つロータリエンコーダ25によりクランク角度を計測させ、且つ燃料流量計26によりサイクル毎の噴射燃料量(MInj)を計測させる。
【0038】
また、データ計測処理(S1)では、演算装置100のデータ取得部120が、エンジンEが動作している最中に、「高応答流量計20が計測したサイクル毎の吸気量(MAir)、圧力計21が計測した筒内圧力(P)、圧力計22が計測した排気圧力(PExh)、温度計23が計測した排気温度(TEXh)、高応答THC濃度計24が計測したサイクル毎のTHC体積濃度(CTHC)、ロータリエンコーダ25が計測したクランク角度、燃料流量計26が計測したサイクル毎の噴射燃料量(MInj)」を取得する。
なお、データ取得部112は、計測時間毎に、取得した計測値(サイクル毎の吸気量(MAir)、筒内圧力(P)、排気圧力(PExh)、排気温度(TEXh)、サイクル毎のTHC体積濃度(CTHC)、クランク角度、サイクル毎の噴射燃料量(MInj))を対応付けて記憶する(例えば、図示しない記憶部(演算装置100の補助記憶装置及び主記憶装置)に記憶させる)。
【0039】
次に、筒内残留燃料量算出システムWは、S1で取得した計測値を用いて、サイクル当たりの燃焼・燃料量(MBurnt)を算出する(S2)。
本ステップ(S2)では、先ず、演算装置100の残留燃料量算出部130が、データ取得部120から各計測装置により計測された計測値(サイクル当たりの吸気量(MAir)、筒内圧力(P)、排気圧力(PExh)、排気温度(TEXh)、サイクル当たりのTHC体積濃度(CTHC)、クランク角度、サイクル当たりの噴射燃料量(MInj))を取得する。
また、S2では、残留燃料量算出部130は、記憶部(演算装置100の補助記憶装置及び主記憶装置)に記憶されてる既知データ(エンジンEの寸法情報、比熱比(γ)、エンジンEに投入される燃料の低位発熱量(QLHV)、燃料の平均モル当たり質量(WFuel)、燃料中の平均C原子数(Nc)、排気ガスモル当たり質量(WExh)等のデータ)を読み出す。
【0040】
そして、S2では、残留燃料量算出部130が、データ計測部120から取得した「筒内圧力(P)、クランク角度」と、読み出した「エンジンEの寸法情報、比熱比(γ)、低位発熱量(QLHV)」と、下記の(式1)とを用いて、「サイクル当たりの燃焼・燃料量(MBurnt)」を算出し、S3の処理に進む。

【数1】
【0041】
具体的には、S2では、残留燃料量算出部130が、読み出した「エンジンEの寸法情報」と、取得した「クランク角度」とを用いて「シリンダ容積(V)」を算出する。また、残留燃料量算出部130は、取得した「筒内圧力(P)」と、上記の算出した「シリンダ容積(V)」とを用いて「ポリトロープ指数(k)」を算出する。
そして、残留燃料量算出部130は、上記の「筒内圧力(P)」と、上記の「シリンダ容積(V)」と、上記の「ポリトロープ指数(k)」と、上記の「比熱比(γ)」と、上記の「低位発熱量(QLHV)」と、上記(式1)とを用いて、「サイクル当たりの燃焼・燃料量(MBurnt)」を算出する。
なお、本実施形態では、「比熱比(γ)」が約1.4になっている。
【0042】
次に、残留燃料量算出部130は、「サイクル当たりの排出未燃・燃料量(MExh)」を算出する(S3)。
具体的には、残留燃料量算出部130は、S2で取得した「サイクル当たりの吸気量(MAir)」と、S2で読み出した「排気ガスモル当たり質量(WExh)」と、S2で取得した「サイクル当たりのTHC体積濃度(CTHC)」と、S2で読み出した「燃料の平均モル当たり質量(WFuel)」と、S2で読み出した「燃料中の平均C原子数(Nc)」と、下記(式2)とを用いて、「サイクル当たりの排出未燃・燃料量(MExh)」を算出する。
【数2】
【0043】
次に、残留燃料量算出部130は、シリンダ1内に蒸発した状態で残留しているガス・残留燃料量(MRes)を算出する(S4)。
具体的には、残留燃料量算出部130は、S2で取得した筒内圧(P)と、S2で取得した「クランク角度」の値とを用いて、「排気閉時点の筒内圧力(PEVC)」を算出(取得)する。
また、残留燃料量算出部130は、読み出した「エンジンEの寸法情報」と、取得した「クランク角度」の値とを用いて「排気閉時点のシリンダ容積(VEVC)」を算出(取得)する。
そして、残留燃料量算出部130は、上記の「排気閉時点の筒内圧力(PEVC)」と、上記の「排気閉時点のシリンダ容積(VEVC)」と、S2で取得した「排気圧力(PEXh)、排気温度(TEXh)、THC体積濃度(CTHC)」と、S2で読み出した「比熱比(γ)、燃料の平均モル当たり質量(WFuel)、燃料中の平均C原子数(Nc)」と、下記(式3)とを用いて、シリンダ1内に蒸発した状態で残留しているガス・残留燃料量(MRes)を算出する。なお、(式3)のRは気体定数である。

【数3】
【0044】
次に、残留燃料量算出部130は、蒸発燃料量(MEV)を算出する(S5)。
この蒸発燃料量(MEV)とは、筒内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発してシリンダ1の筒内に出てくるガス状燃料量のことをいう。
具体的には、残留燃料量算出部130は、下記(式4)に示すように、付着燃料の筒内蓄積分(MSLiq)に付着燃料の蒸発率Eを乗算することで蒸発燃料量(MEV)を算出する。
なお、付着燃料の筒内蓄積分(MSLiq)の値は、蒸発率Eを実験的に同定することで求めることができる(蒸発率Eの同定は、燃焼の始動時や停止時の、THC濃度の過渡的な推移の計測結果を参照して行う)。具体的には、パラメータである「蒸発率E」増減させると、付着量と蒸発量の計算結果が変化する。これらと、燃焼始動時及び停止時の各種過渡計測値が辻褄があうようにパラメータである「蒸発率E」を調整することで、蒸発燃料量(MEV)及び付着燃料の筒内蓄積分(MSLiq)が定まる(付着燃料の筒内蓄積分(MSLiq)の値は、計測値から回帰的に算出される値である)。

【数4】
【0045】
また、S5では、残留燃料量算出部130は、下記(式5)を用いて、そのサイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量(MFuel)を算出する。
具体的には、残留燃料量算出部130は、S2で取得した「燃料流量計26が計測したサイクル毎の噴射燃料量(MInj)」と、「S4で算出したガス・残留燃料量(MRes)」と、「上記の式(4)で算出した蒸発燃料量(MEV)」とを加算してトータル燃料量(MFuel)を算出する。
【数5】
【0046】
次に、残留燃料量算出部130は、下記(式6)を用いて「サイクル当たりの未燃・燃料量(Munburnt)」を算出する(S6)。
具体的には、残留燃料量算出部130が、S5で算出した「そのサイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量(MFuel)」から、S2で算出した「サイクル当たりの燃焼・燃料量(MBurnt)」を減算することにより、「サイクル当たりの未燃・燃料量(Munburnt)」を算出する。
【数6】
【0047】
次に、残留燃料量算出部130は、下記(式7)を用いて、シリンダ1内に液状態で付着して残留している「サイクル当たりの付着・残留燃料量(MLiq)」を算出する(S7)。
本ステップ(S7)では、残留燃料量算出部130は、S6で算出した「サイクル当たりの未燃・燃料量(Munburnt)」から、S3で算出した「サイクル当たりの排出未燃・燃料量燃料量(MExh)」と、S4で算出した「サイクル当たりのガス・残留燃料量(MRes)」とを減算して、「サイクル当たりの付着・残留燃料量(MLiq)」を算出する。
【数7】
【0048】
このように、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWは、エンジンベンチBに設置されたエンジンEの吸気管3に接続された高応答流量計20が設けられ、エンジンEの排気管5に接続された高応答THC濃度計24が設けられ、エンジンEに投入する投入燃料量を計測する燃料流量計26が設けられている。この構成により、本実施形態では、エンジンEのサイクル当たりの「吸気量(MAir)、噴射燃料量(MInj)、THC体積濃度(CTHC))」を計測することができる。
【0049】
そして、本願発明は、エンジンEのサイクル当たりの「吸気量(MAir)、噴射燃料量(MInj)、THC体積濃度(CTHC))」が把握できれば、「各センサ(圧力計21、圧力計22、温度計23、ロータリエンコーダ25))に計測させた計測値(筒内圧力(P)、排気圧力(PExh)、排気温度(TExh)、クランク角度)」と、エンジンEの寸法や投入燃料の種類により定まる既知データ(エンジンEの寸法情報、比熱比(γ)、エンジンEに投入される燃料の低位発熱量(QLHV)、燃料の平均モル当たり質量(WFuel)、燃料中の平均C原子数(Nc)、排気ガスモル当たり質量(WExh)等のデータ)とを用いた演算処理をすることで、サイクル毎の筒内残留燃料量を算出することができることを着想した。そこで、本願発明者は、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWに、上記の「S2~S7」の処理を行う残留燃料量算出部130を有する演算装置100を設けている。
【0050】
本実施形態は、上記の構成により、エンジンEのサイクル毎に、シリンダ1内に蒸発した状態で残留しているガス・残留燃料量(MRes)」と、「シリンダ1の筒内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発してシリンダ1の筒内に出てくるガス状燃料の量を示す蒸発燃料量(MEV)」と、シリンダ1内に液状態で付着して残留している付着・残留燃料量(MLiq)」とが算出できる。すなわち、本実施形態では、「エンジンEのシリンダ1の筒内に液状で残留している付着・残留燃料量(MLiq)」と、「シリンダ1の筒内に蒸発した状態で残留しているガス・残留燃料量(MRes)」と、「筒内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発して筒内に出てくる蒸発燃料量(MEV)」とを把握できるため、次のサイクルの燃焼に影響する、これらの値を考慮した上で、次のサイクルの最適な燃料噴射量の予測制御が可能になる。そして、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、燃費や排ガスの改善が期待できる。特に冷間始動運転では、「付着・残留燃料量(MLiq)」が大きく、排ガス性状の悪化が著しいため、本実施形態を用いた最適な燃料噴射量の予測制御が有効である。また、最適な燃料噴射量の予測制御ができれば、例えば、エンジンベンチBで行うエンジンの性能試験において、エンジンEの種々の解析に活用することができる。
【0051】
また、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWは、図2に示すフローチャートにより得られた算出値を用いて、エンジンEの「燃焼効率(η)、未燃率(1-η)、排出率(G)、付着率(1―G)」を算出できるように構成されている。
【0052】
以下、図3を参照しながら、エンジンEの「燃焼効率(η)、未燃率(1-η)、排出率(G)、付着率(1―G)」を算出する処理について説明する。
ここで、図3は、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムが計測した計測値と、当該システムが算出した算出値との関係を示した模式図である。
【0053】
具体的には、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWを構成する演算装置100の残留燃料算出部130は、図2のS2で算出した「サイクル当たりの燃焼・燃料量(MBurnt)」を、図2のS5で算出した「対応するサイクルの燃焼に投入されるトータル燃料量(MFuel)」で除算することにより、燃焼効率(η)を算出する。
具体的には、残留燃料算出部130は、下記の(式8)を用いて、サイクル当たりの燃焼効率(η)を算出する。
【数8】
なお、残留燃料算出部130は、「1-η」によりサイクル当たりの未燃率も算出するようになっている。
【0054】
また、本実施形態の筒内残留燃料量算出システムWを構成する演算装置100の残留燃料算出部130は、図2のS3で算出した「サイクル当たりの排出未燃・燃料量(MExh)」を、S6で算出した「対応するサイクルの未燃・燃料量(MBurnt)」で除算することにより、サイクル当たりの排出率(G)を算出する。
具体的には、残留燃料算出部130は、下記の(式8)を用いて、サイクル当たりの排出率(G)を算出する。
【数9】
なお、残留燃料算出部130は、「1-G」によりサイクル当たりの付着率も算出するようになっている。
【0055】
このように、本実施形態では、筒内の液状の付着燃料から1サイクルの間に蒸発してシリンダ1の筒内に出てくるガス状燃料量である「蒸発燃料量(MEV)」を反映させたトータル燃料量(MFuel)を用いて「燃焼効率(η)」を算出しており、サイクル当たりの「燃焼効率(η)」を高精度の算出できる。
また、本実施形態では、「蒸発燃料量(MEV)」を反映させた「トータル燃料量(MFuel)」を用いて求めた「未燃・燃料量(Munburnt)」を利用して「排出率(G)」を算出しており、サイクル当たりの「排出率(G)」を高精度の算出できる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0057】
W…筒内残留燃料量算出システム
13…接続配管
20…高応答流量計
21…圧力計(第1圧力計)
22…圧力計(第2圧力計)
23…温度計
24…高応答THC濃度計
25…ロータリエンコーダ
26…燃料流量計
100…演算装置
110…制御部
120…データ取得部
130…残留燃料量算出部

E…エンジン
1…シリンダ
3…吸気管
5…排気管
7…スロットルバルブ
9…燃料噴射装置(インジェクタ)
11…燃料供給装置

B…エンジン試験装置(エンジンベンチ)
50…ダイナモメータ
51…ダイナモ制御装置
52…シャフト
60…エンジン制御装置

図1
図2
図3