(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158652
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】画像抽出方法、画像抽出装置、画像抽出プログラム、記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06T 7/187 20170101AFI20221006BHJP
【FI】
G06T7/187
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063694
(22)【出願日】2021-04-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・刊行物名「2020年度卒業研究概要集、第124頁、第125頁」 発行日 令和3年2月10日 発行所 関西大学 総合情報学部
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】林 貴宏
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096DA01
5L096GA30
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】より正確に画像の一部領域を抽出する。
【解決手段】画像抽出方法は、確率分布推定工程(S8、S10)と、隣接画素解析工程(S12~S18)とを含む。確率分布推定工程において、第1基準画素の色空間上の色情報に基づいて、画像上の画素が、色空間上の座標において、第1領域に含まれる確率である第1確率分布を推定する。隣接画素解析工程において、第1画素と隣接する第1隣接画素の色情報と、第1確率分布とに基づき、第1画素を再設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像から特定の領域を抽出する画像抽出方法であって、
前記画像に含まれる第1領域の一部の画素である第1基準画素の指定を受け付ける受付工程と、
前記第1基準画素を、第1画素として設定する基準画素設定工程と、
前記第1基準画素の色空間上の色情報に基づいて、前記画像上の画素が、前記色空間上の座標において、前記第1領域に含まれる確率である第1確率分布を推定する確率分布推定工程と、
前記第1画素と隣接する第1隣接画素の色情報と、前記第1確率分布とに基づき、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素か否かを判定し、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素であると判定した場合、前記第1隣接画素を前記第1画素に追加し、前記第1隣接画素と前記第1画素とを、新たな第1画素として再設定する隣接画素解析工程と、
再設定された前記第1画素を第1抽出画像として抽出する抽出工程とを含む画像抽出方法。
【請求項2】
前記画像は、前記第1領域と異なる第2領域を有し、
前記受付工程において、さらに、前記第2領域の一部の画素である第2基準画素の指定を受け付け、
前記基準画素設定工程において、さらに、前記第2基準画素を、第2画素として設定し、
前記確率分布推定工程において、さらに、前記第2基準画素の色空間上の色情報に基づいて、前記画像上の画素が、前記色空間上の座標において、前記第2領域に含まれる確率である第2確率分布を推定し、
前記隣接画素解析工程において、さらに、前記第2画素と隣接する第2隣接画素の色情報と、前記第2確率分布とに基づき、前記第2隣接画素が前記第2領域に含まれる画素か否かを判定し、前記第2隣接画素が前記第2領域に含まれる画素であると判定した場合、前記第2隣接画素を前記第2画素に追加し、前記第2隣接画素と前記第2画素とを、新たな第2画素として再設定し、
前記抽出工程において、さらに、再設定された前記第2画素を第2抽出領域として抽出する請求項1に記載の画像抽出方法。
【請求項3】
前記画像における全ての画素が、前記第1画素と前記第2画素との何れかに設定されるまで、前記隣接画素解析工程を繰り返し実行する請求項2に記載の画像抽出方法。
【請求項4】
前記隣接画素解析工程において、前記第1隣接画素と前記第2隣接画素とが同一の画素である場合、前記第1確率分布と前記第2確率分布とに基づいて、前記第1画素と前記第2画素との何れに追加すべきかを判定する請求項2または3に記載の画像抽出方法。
【請求項5】
前記画像は、前記第1領域と前記第2領域との双方に異なる第3領域を有し、
前記受付工程において、さらに、前記第3領域の一部の画素である第3基準画素の指定を受け付け、
前記基準画素設定工程において、さらに、前記第3基準画素を、第3画素として設定し、
前記確率分布推定工程において、さらに、前記第3基準画素の色空間上の色情報に基づいて、前記画像上の画素が、前記色空間上の座標において、前記第3領域に含まれる確率である第3確率分布を推定し、
前記隣接画素解析工程において、さらに、前記第3画素と隣接する第3隣接画素の色情報と、前記第3確率分布とに基づき、前記第3隣接画素が前記第3領域に含まれる画素か否かを判定し、前記第3隣接画素が前記第3領域に含まれる画素であると判定した場合、前記第3隣接画素を前記第3画素に追加し、前記第3隣接画素と前記第3画素とを、新たな第3画素として再設定し、
前記抽出工程において、さらに、再設定された前記第3画素を第3抽出領域として抽出する請求項2から4の何れか1項に記載の画像抽出方法。
【請求項6】
再設定された前記第1画素の前記色空間上の色情報に基づいて、前記第1確率分布を修正する確率分布修正工程をさらに含む請求項1から5の何れか1項に記載の画像抽出方法。
【請求項7】
再設定された前記第2画素の前記色空間上の色情報に基づいて、前記第2確率分布を修正する確率分布修正工程をさらに含む請求項2から5の何れか1項に記載の画像抽出方法。
【請求項8】
再設定された前記第3画素の前記色空間上の色情報に基づいて、前記第3確率分布を修正する確率分布修正工程をさらに含む請求項5に記載の画像抽出方法。
【請求項9】
直近の前記確率分布推定工程または前記確率分布修正工程の実施時から、規定数以上、前記隣接画素解析工程が実施された場合に、前記確率分布修正工程を実行する請求項6から8の何れか1項に記載の画像抽出方法。
【請求項10】
前記第1確率分布が、混合ガウスモデルによって決定される請求項1から6の何れか1項に記載の画像抽出方法。
【請求項11】
前記第2確率分布が、混合ガウスモデルによって決定される請求項2から5の何れか1項に記載の画像抽出方法。
【請求項12】
前記第3確率分布が、混合ガウスモデルによって決定される請求項5に記載の画像抽出方法。
【請求項13】
画像に含まれる第1領域の一部の画素である第1基準画素の指定を受け付け、前記第1基準画素を、第1画素として設定する基準画素設定部と、
前記第1基準画素の色空間上の色情報に基づいて、前記画像上の画素が、前記色空間上の座標において、前記第1領域に含まれる確率である第1確率分布を推定する確率分布推定部と、
前記第1画素と隣接する第1隣接画素の色情報と、前記第1確率分布とに基づき、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素か否かを判定し、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素であると判定した場合、前記第1隣接画素を前記第1画素に追加し、前記第1隣接画素と前記第1画素とを、新たな第1画素として再設定する隣接画素解析部と、
再設定された前記第1画素を第1抽出領域として抽出する抽出画像生成部とを備えた画像抽出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像抽出装置としてコンピュータを機能させるための画像抽出プログラムであって、前記基準画素設定部と、前記確率分布推定部と、前記隣接画素解析部と、前記抽出画像生成部として前記コンピュータを機能させるための画像抽出プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載の画像抽出プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は画像に含まれる一部の領域を抽出した画像を生成する画像抽出方法、画像抽出方法を実現するための画像抽出装置、画像抽出プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像中から任意の領域を切り抜く技術が、写真や動画の加工などに利用されている。例えば、特許文献1には、グラフカット法を用いて、所望の領域を抽出する方法が開示されている。また、特許文献2は、領域拡張法を用いて、ある基準となる画素と隣接する画素を、順次各領域が含む画素に追加する方法を開示している。特に、特許文献2は、RGB色空間の各軸(R軸、G軸、B軸)をs個のグリッドに分割し、前景色クラスタと背景色クラスタとを用いて所望の領域を抽出する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-121901号公報
【特許文献2】特開2010-79477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、グラフカット法を用いており、アルゴリズムの制約により複数の物体の領域の抽出または動的色モデル推定が困難である。また、グラフカット法は、抽出する領域の境界を、多数の組み合わせの中から決定する必要があり、処理に時間がかかる。
【0005】
特許文献2は、領域拡張法を用いているが、類似色が前景色クラスタと背景色クラスタの両方に使われている状態、いわゆる色の競合が生じる場合がある。このため、色の競合が生じた類似色を含む画素については、前景が含む画素なのか背景が含む画素なのかの判断を誤る場合がある。特に、一画面内において複数の物体の領域を抽出する場合、色クラスタは領域ごとに生成される。このため、多くの色の競合が発生し、精度の高い切り抜きができない場合がある。
【0006】
ここで、複数の物体の領域を抽出する場合とは、画像を前景、背景の2値で分けるのではなく、領域1,領域2,…,領域Nの多値で分け、それぞれの領域を抽出する場合である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る画像抽出方法は、画像から特定の領域を抽出する画像抽出方法であって、前記画像に含まれる第1領域の一部の画素である第1基準画素の指定を受け付ける受付工程と、前記第1基準画素を、第1画素として設定する基準画素設定工程と、前記第1基準画素の色空間上の色情報に基づいて、前記画像上の画素が、前記色空間上の座標において、前記第1領域に含まれる確率である第1確率分布を推定する確率分布推定工程と、前記第1画素と隣接する第1隣接画素の色情報と、前記第1確率分布とに基づき、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素か否かを判定し、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素であると判定した場合、前記第1隣接画素を前記第1画素に追加し、前記第1隣接画素と前記第1画素とを、新たな第1画素として再設定する隣接画素解析工程と、再設定された前記第1画素を第1抽出画像として抽出する抽出工程とを含む。
【0008】
また、本開示の他の一態様に係る画像抽出装置は、画像に含まれる第1領域の一部の画素である第1基準画素の指定を受け付け、前記第1基準画素を、第1画素として設定する基準画素設定部と、前記第1基準画素の色空間上の色情報に基づいて、前記画像上の画素が、前記色空間上の座標において、前記第1領域に含まれる確率である第1確率分布を推定する確率分布推定部と、前記第1画素と隣接する第1隣接画素の色情報と、前記第1確率分布とに基づき、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素か否かを判定し、前記第1隣接画素が前記第1領域に含まれる画素であると判定した場合、前記第1隣接画素を前記第1画素に追加し、前記第1隣接画素と前記第1画素とを、新たな第1画素として再設定する隣接画素解析部と、再設定された前記第1画素を第1抽出領域として抽出する抽出画像生成部とを備える。
【0009】
本開示の各態様に係る画像抽出装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記画像抽出装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより、前記画像抽出装置をコンピュータにて実現させる画像抽出プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によれば、画像抽出の精度をより改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態1に係る画像抽出方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】本開示の実施形態1に係る画像抽出装置のブロック図である。
【
図3】本開示の実施形態1に係る基準画素の指定の方法を示すための工程概略図である。
【
図4】本開示の実施形態1に係る各基準画素の、RGB色空間上の色座標の例を示す概略図である。
【
図5】本開示の実施形態1に係るRGB色空間上の各確率分布の例を示す概略図である。
【
図6】本開示の実施形態1に係る隣接画素を解析する方法を示すための工程概略図である。
【
図7】本開示の実施形態1に係る隣接画素を解析する方法を示すための他の工程概略図である。
【
図8】本開示の実施形態1に係るRGB色空間上の各確率分布の修正の様子を示す概略図である。
【
図9】本開示の実施例に係る画像、当該画像の抽出過程、および当該画像の抽出結果を示す図である。
【
図10】比較形態に係るRGB色空間上の各色バケツの例を示す概略図である。
【
図11】本開示の実施例に係る画像の抽出結果と、比較例に係る画像の抽出結果とを比較して示す図である。
【
図12】本開示の実施形態2に係る基準画素の指定の方法を示すための工程概略図である。
【
図13】本開示の実施形態3に係る基準画素の指定の方法を示すための工程概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態1〕
<画像抽出装置の概要>
本実施形態に係る画像抽出方法は、画像から特定の領域を抽出し、特定の領域を含む画像を生成する方法である。特に、本実施形態に係る画像抽出方法は、第1領域と第2領域とを有する画像から、第1領域を含む第1抽出領域と、第2領域を含む第2抽出領域とを抽出し、第1抽出領域を含む第1抽出画像と第2抽出領域を含む第2抽出画像とを生成する方法である。当該画像抽出方法について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る画像抽出方法を示すフローチャートである。
図2は、当該画像抽出方法を実行するための画像抽出装置2および表示デバイス4を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態に係る画像抽出装置2は、制御部6を備える。画像抽出装置2は、さらに、メモリ8と、通信部10と、操作部12と、入出力インターフェース14と、システムバス16とを備えていてもよい。制御部6は、基準画素設定部20と、確率分布推定部22と、隣接画素解析部24と、抽出画像生成部26とを備える。制御部6は、さらに、表示制御部18と、確率分布修正部28とを備えていてもよい。
【0014】
本実施形態に係る画像抽出装置2は、後に詳述する方法により、表示デバイス4に画像を表示させ、ユーザからの操作を受けて、当該画像から一部領域を抽出した抽出画像を生成する。
【0015】
表示デバイス4は、画像の表示を行うデバイスであり、例えば、ディスプレイ、スマートフォン、または、タブレット端末等を含む。なお、
図2において、画像抽出装置2と表示デバイス4とは別体として図示しているが、これに限られず、画像抽出装置2は、表示デバイス4を表示部として備えていてもよい。
【0016】
制御部6は、画像抽出装置2に入力された情報に基づいて、画像から一部領域を抽出した抽出画像を生成する。制御部6の各部の詳細な動作は、本実施形態に係る画像抽出方法についての説明と併せ、後により詳細に説明する。なお、制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等を備えていてもよく、これらのそれぞれが制御部6の各部として動作してもよい。
【0017】
メモリ8は、画像抽出装置2が備える各部の動作に必要なデータ、または、当該各部から入力されたデータを少なくとも一時的に記憶する。メモリ8が記憶するデータは、画像抽出装置2の備える各部から適宜読み出される。
【0018】
通信部10は、メモリ8から読み出したデータの少なくとも一部を、画像抽出装置2の外部機器へ送信し、当該外部機器から送信されたデータを受信し、メモリ8に記録するための通信装置である。例えば、本実施形態において、通信部10は、表示デバイス4とデータの相互通信が可能である。
【0019】
操作部12は、例えば、画像抽出装置2の使用者によって操作される。例えば、操作部12は、画像抽出装置2による画像抽出のためのデータを外部から入力するために使用される、キーボード等を含んでいてもよい。例えば、操作部12は、画像抽出の際の設定等を行うためのデータを入力するために使用されてもよい。
【0020】
入出力インターフェース14は、メモリ8、通信部10、および操作部12と、制御部6の各部との間のインターフェース処理を実行する。制御部6の各部と入出力インターフェース14は、システムバス16を介して接続されている。
【0021】
<基準画素の指定>
本実施形態に係る画像抽出方法においては、はじめに、抽出対象である画像に対し、ユーザから、画像抽出の基準となる基準画素の指定を受け付ける。当該基準画素の指定の受け付けについて、
図3を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る画像抽出方法においては、例えば、はじめに、
図3に示す画像30が表示デバイス4に表示されているとする(ステップS2)。画像抽出装置2は、例えば、制御部6の表示制御部18を制御することにより、表示デバイス4に画像30を表示させてもよい。
【0023】
例えば、
図3の(a)に示す画像30は、第1領域である前景領域31として、規定の物体が描写された第1物体領域32を有する。また、画像30は、第1領域と異なる第2領域として、規定の背景が描写された背景領域36を有する。本実施形態においては、画像30から、第1領域である第1物体領域32を含む第1抽出画像と、第2領域である背景領域36を含む第2抽出画像とを生成する方法を例に挙げて説明する。
【0024】
ステップS2に次いで、受付工程として、例えばユーザから、第1領域の一部の画素である第1基準画素と、第2領域の一部の画素である第2基準画素との指定を受け付ける(ステップS4)。ステップS4は、例えば、基準画素設定部20が、ユーザからの、
図3の(b)に示す第1基準領域38と第2基準領域40との指定を受け付けることにより実行される。第1基準領域38は、第1領域である第1物体領域32に、第2基準領域40は、第2領域である背景領域36に、それぞれ指定される。
【0025】
なお、本実施形態において、画像30は、
図3の(c)に示すように、第1領域である前景領域31として、第1物体領域32に加えて、他の規定の物体が描写された第2物体領域34をさらに有していてもよい。この場合、ステップS4において、第1基準領域38は、
図3の(d)に示すように、第1領域である第1物体領域32と第2物体領域34とのそれぞれに指定されてもよい。このように、本実施形態において、ある領域が他の領域により複数の領域に分断される場合、各基準領域は、複数の領域のそれぞれに指定される。
【0026】
第1基準領域38と第2基準領域40との指定は、例えば、ユーザが、マウスまたはタッチペン等により、表示デバイス4に表示させた画像30に直接第1基準領域38と第2基準領域40とを書き込むことにより実行される。なお、本実施形態において、第1基準領域38と第2基準領域40とは、何れも線形状に指定されているが、これに限られず、矩形状、円形状等、規定の図形中の領域として指定されてもよい。
【0027】
以上により、ステップS4において、第1基準領域38が有する画素が第1基準画素に設定される。また、ステップS4において、第2基準領域40が有する画素が第2基準画素に設定される。第1基準画素および第2基準画素の設定は、基準画素設定部20が、指定された第1基準領域38と第2基準領域40とを解析し、各基準領域が含む画素が、画像30のどの画素であるかを特定することにより実行する。
【0028】
次いで、本実施形態においては、第1基準画素を第1画素として、第2基準画素を第2画素として、それぞれ設定する(ステップS6)。ステップS6は、例えば、基準画素設定部20が、第1基準画素と第2基準画素との設定に引き続いて実行する。
【0029】
<色座標および確率分布>
次いで、確率分布推定部22が、第1基準画素、および第2基準画素のそれぞれの色情報を解析し、各基準画素の色空間上の座標を特定する(ステップS8)。第1基準画素、および第2基準画素のそれぞれの色座標の例を、
図4を参照して説明する。
図4は、RGB色空間における、第1基準画素、および第2基準画素のそれぞれの色座標を示す図である。
図4に示すRGB色空間は、各第1基準画素の色情報から得られた第1色座標42と、各第2基準画素の色情報から得られた第2色座標44とがそれぞれプロットされている。
【0030】
次いで、確率分布推定部22が、第1基準画素、および第2基準画素のそれぞれの色座標から、色空間上の第1確率分布と第2確率分布とを推定する(ステップS10)。ここで、第1確率分布および第2確率分布とは、それぞれ、色空間上の各座標に対応する色を有する画像30上の画素が、第1領域および第2領域のそれぞれが含む画素が有する色に含まれる確率を表現する分布である。
【0031】
換言すれば、第1確率分布とは、第1基準画素の色空間上の色情報に基づいて推定された、画像30上の画素が、色空間上の座標において、第1領域に含まれる確率である。また、第2確率分布とは、第2基準画素の色空間上の色情報に基づいて推定された、画像30上の画素が、色空間上の座標において、第2領域に含まれる確率である。
【0032】
第1確率分布および第2確率分布について、その推定方法と併せ、
図5を参照して説明する。
図5は、RGB色空間における、第1確率分布46、および第2確率分布48をそれぞれ示す図である。なお、
図5においては、図示の都合上、第1確率分布46、および第2確率分布48が、RGB色空間のある平面における分布のように表現されているが、実際には、RGB色空間上の立体的な分布として表現される。
【0033】
一般に、例えば、前景領域31と背景領域36とを両方有する画像において、前景領域31に位置する画素のうち、ある画素が有する色は、当該画素の周囲に位置する画素が有する色と類似する蓋然性が高い。一方、前景領域31に位置する画素と、背景領域36に位置する画素とは、それぞれの画素が有する色が、互いに類似する色を有する蓋然性が低い。
【0034】
ここで、一般に、RGB色空間上の2点の色座標の距離によって、当該色座標に対応する色がどの程度類似しているかを表すことができる。具体的には、RGB色空間上の2点の色座標の距離が近い程、当該色座標に対応する色は、互いに類似する色となる。
【0035】
したがって、例えば、RGB色空間上における、ある特定の色座標の周囲に、第1色座標42が多くプロットされた場合、第1領域が含む画素が有する色の色座標が、上記特定の色座標の周囲に位置する蓋然性が高いといえる。ゆえに、第1確率分布46は、第1色座標42が多くプロットされた座標の周囲において高く、また、第1色座標42のプロット数が低い座標の周囲において低くなるように決定される。同一の理由から、第2確率分布48は、第2色座標44が多くプロットされた座標の周囲において高く、また、第2色座標44のプロット数が低い座標の周囲において低くなるように決定される。
【0036】
具体的に、第1確率分布46は、例えば、
図5に示すように、第1確率分布46のうち少なくとも一つの確率が高い座標に向かって、その周囲側から、第1低確率領域46A、第1中確率領域46B、および第1高確率領域46Cをこの順に有する。また、第2確率分布48は、例えば、第2確率分布48のうち少なくとも一つの確率が高い座標に向かって、その周囲側から、第2低確率領域48A、第2中確率領域48B、および第2高確率領域48Cをこの順に有する。
【0037】
このような第1確率分布46および第2確率分布48は、例えば、RGB色空間上における混合ガウスモデル(GMM:Gaussian Mixture Model)によって決定される。例えば、第1確率分布46および第2確率分布48は、RGB色空間上の複数の空間ガウス分布を重ね合せた分布を有する。ただし、本実施形態においては、これに限られず、第1確率分布46および第2確率分布48は、第1領域における画素および第2領域における画素の色座標の確率を表現する分布であれば、特に問われない。
【0038】
なお、以降、本明細書において、単に「確率分布」と記載する場合には、色空間上の各座標に対応する色を有する画像上の画素が、ある領域が含む画素が有する色に含まれる確率の分布を表すものとする。
【0039】
<画素の追加>
次いで、各領域の画素として設定済の画素と隣接する画素のうちの一つを、何れかの領域の画素に追加する、隣接画素解析工程を実行する。隣接画素解析工程について、
図6および
図7をさらに参照して説明する。
図6および
図7は、画像30の画素のうち、設定済の第1画素と第2画素との周囲における画素を拡大して示す工程概略図である。
【0040】
図6および
図7の各図に示すように、画像30は、略矩形の複数の画素50を行方向および列方向に沿って配置した構造を有する。ここで、画素50は、第1領域が有する画素であると設定された第1画素52と、第2領域が有する画素であると設定された第2画素54とをそれぞれ含む。
【0041】
隣接画素解析工程においては、はじめに、第1画素52と、行方向または列方向において隣接する画素である、第1隣接画素56を特定する。また、第2画素54と、行方向または列方向において隣接する画素である、第2隣接画素58を特定する(ステップS12)。第1画素52および第2画素54の位置によっては、第1画素52と第2画素54との双方と隣接する競合画素60が生じる場合がある。競合画素60は、第1隣接画素56および第2隣接画素58の何れにも含まれる隣接画素として扱う。次いで、第1隣接画素56および第2隣接画素58のそれぞれの色情報を解析し、RGB色空間上の座標を算出する(ステップS14)。
【0042】
次いで、第1画素52に含まれる確率が最も高い画素を、第1隣接画素56から決定する。また、第2画素54に含まれる確率が最も高い画素を、第2隣接画素58から決定する(ステップS16)。本実施形態においては、下記の式(1)に定義されるコストCN(s,t)を、隣接画素ごとに算出し、比較することにより、ステップS16を実現する例を説明する。
【0043】
【0044】
式(1)において、各領域の画素の何れか一つを画素s、当該画素sと隣接する画素の何れか一つを画素tとする。なお、Nは、画素sを含む領域Nを表す。
【0045】
D(s,t)は、画素sの色と画素tの色との、RGB色空間上のユークリッド距離であり、画素sの色と画素tの色との類似性を表す。D(s,t)が小さい程、画素sの色と画素tの色とはより類似し、ひいては、画素tがより領域Nに含まれる確率が高い。C(s)は、画素sが各領域に設定された際における、当該画素sのコストCN(s,t)の値である。画素sが基準画素であった場合、C(s)は0とする。
【0046】
W1(s,t)は、D(s,t)に対する重み付けであり、下記の式(2)により定義される。
【0047】
【0048】
式(2)において、lM(t)は、領域Mが含む画素の色に、画素tの色が含まれる確率を表す。lM(t)は、例えば、画素tの色のRGB色空間上の座標と、領域Mにおける確率分布とを比較することにより算出される。画素tの色が、領域Mの色に含まれる確率が高い場合、換言すれば、lM(t)の値が高い場合、画素tは領域Mに含まれる確率が高い。なお、式(2)の|W0|は、lM(t)を全ての画素tに対し探索して求められる、lM(t)の最小値の絶対値であり、W1(s,t)が負の値とならないように規格化するための項である。式(1)と式(2)とから、画素sの色と画素tの色との類似性が高い程、また、画素tの色が領域Nの色に含まれる確率が高い程、コストCN(s,t)は低くなる。
【0049】
W2(s,t)は、C(s)に対する重み付けであり、下記の式(3)により定義される。
【0050】
【0051】
式(3)から、画素tの色が領域Nの色に含まれる確率が、画素tの色が領域Nを除く領域の色に含まれる確率よりも高い場合に、W2(s,t)の値は0となり、それ以外の場合に、W2(s,t)の値は1となる。換言すれば、W2(s,t)は、画素tの色が領域Nの色に含まれる確率が高い場合に、画素sがある領域の画素に設定された際のコストCN(s,t)を考慮しないために設けられた項である。
【0052】
以上より、各画素tは、算出されたコストCN(s,t)が低い程、画素sを含む領域Nに含まれる確率が高いといえる。したがって、ステップS16においては、例えば、第1隣接画素56と第2隣接画素58とのそれぞれにおいて、コストCN(s,t)を算出し、最も低い画素をそれぞれ特定する。これにより、第1隣接画素56、および、第2隣接画素58のうち、コストCN(s,t)が最も低い画素である第1画素候補62を特定する。ここで、例えば、コストCN(s,t)が最も低い画素が複数存在する場合には、複数の画素候補が特定されてもよく、例えば、第1画素候補62と異なる第2画素候補64がさらに特定されてもよい。
【0053】
なお、例えば、ある第1隣接画素56と隣接する第1画素52が複数ある場合には、ステップS16において、第1画素52のそれぞれを画素sとして、コストCN(s,t)を複数算出してもよい。この場合、算出された複数のコストCN(s,t)の平均値を、第1隣接画素56のコストCN(s,t)とみなしてもよい。
【0054】
次いで、隣接画素を、その隣接画素が含まれる蓋然性が最も高い領域が含む画素に追加し、当該画素を再設定する(ステップS18)。具体的には、第1画素候補62を、第1画素候補62が隣接し、かつ、第1画素候補62が含まれる蓋然性が最も高い領域の画素に追加する。例えば、
図7に示すように、第1画素候補62が第1画素52のみに隣接する場合、第1画素候補62を第1画素52に追加する。また、第1画素候補62が第1画素52と第2画素54との双方に隣接する競合画素60である場合、よりコストC
N(s,t)が低くなる領域の画素に追加する。これに伴い、追加された第1画素52と隣接する第1隣接画素56が追加される。
【0055】
換言すれば、本実施形態における隣接画素解析工程においては、第1隣接画素56の色情報と、第1確率分布46とに基づき、第1隣接画素56が第1領域に含まれる画素か否かを判定する。さらに、本実施形態における隣接画素解析工程においては、第1隣接画素56が第1領域に含まれる画素であると判定した場合、第1隣接画素56を第1画素52に追加し、第1隣接画素56と第1画素52とを、新たな第1画素52として再設定する。
【0056】
また、本実施形態における隣接画素解析工程においては、第2隣接画素58の色情報と、第2確率分布48とに基づき、第2隣接画素58が第2領域に含まれる画素か否かを判定する。さらに、本実施形態における隣接画素解析工程においては、第2隣接画素58が第2領域に含まれる画素であると判定した場合、第2隣接画素58を第2画素54に追加し、第2隣接画素58と第2画素54とを、新たな第2画素54として再設定する。
【0057】
なお、ステップS16において、第2画素候補64が特定されている場合、ステップS18においては、第2画素候補64についても、当該第2画素候補64が隣接し、かつ、第2画素候補64が含まれる蓋然性が最も高い領域の画素に追加してもよい。例えば、
図7に示すように、第2画素候補64が第2画素54のみに隣接する場合、第2画素候補64を第2画素54に追加する。
【0058】
以上により、隣接画素解析工程が実行され、各隣接画素のうちの一つが、各領域が含む画素に追加され、各領域が含む画素が再設定される。なお、隣接画素解析工程のステップS12からステップS18は、隣接画素解析部24が、各画素50を解析することにより実行する。
【0059】
なお、各領域の画素に追加する隣接画素の決定は、上述の通り、隣接画素が各領域の何れに含まれるかを示す確率に基づいて実行される。このため、上記隣接画素解析工程により、競合画素60を何れの画素に追加すべきかについても、自動的に判定を行うことができる。換言すれば、隣接画素解析工程においては、第1隣接画素56と第2隣接画素58とが同一の画素である場合、第1確率分布46と第2確率分布48とに基づいて、第1画素52と第2画素54との何れに追加すべきかを判定する。このため、本実施形態においては、競合画素60が、不適切な領域が含む画素に設定される蓋然性が、より効果的に低下する。
【0060】
<画素追加の終了の判定および確率分布の修正>
次いで、画素50のうち、各領域の何れかに設定していない画素が存在するか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20において、各領域の何れかに設定していない画素が存在する場合には、続いて、各領域における確率分布の決定時から、属する領域を設定した画素が一定以上増加したか否かを判定する(ステップS22)。
【0061】
初めてステップS22を実行する場合、ステップS22は、ステップS10の実行時から、各領域が含む画素が増加した個数を計数する。当該個数が一定数以上となるまで、ステップS22は、ステップS10の実行時における、各領域が含む画素の個数を基準として、各領域が含む画素の個数の増加数を計数する。
【0062】
ステップS22において、各領域が含む画素の個数の増加数が一定以上ではない場合には、再度ステップS12が実行される。このため、ステップS12からステップS22までが繰り返される度に、各領域が含む画素の個数は増加する。ステップS22において、各領域が含む画素の個数の増加数が一定以上となった場合には、各領域における色空間上の確率分布を修正する、確率分布修正工程が実行される(ステップS24)。
【0063】
ステップS24においては、各領域における確率分布が、現時点において各領域が含む各画素の色情報に基づいて修正される。換言すれば、ステップS24においては、再設定された第1画素52のRGB色空間上の色情報に基づいて、第1確率分布46を修正する。また、ステップS24においては、再設定された第2画素54のRGB色空間上の色情報に基づいて、第2確率分布48を修正するステップS24における各確率分布の修正は、ステップS10における各確率分布の推定と同一の方法によって実行される。
【0064】
一度ステップS24が実行された場合、次回以降のステップS22においては、前回のステップS24の実行時における、各領域が含む画素の個数を基準として、各領域が含む画素の個数の増加数を計数し、ステップS24の実行の要否を判定する。換言すれば、ステップS24は、直近のステップS10またはステップS24の実施時から、規定数以上のステップS18を実施した場合に実行される。
【0065】
ステップS24における、各領域における確率分布の修正について、
図8を参照してより詳細に説明する。
図8の(a)に示すS24-Aは、ステップS24が初めて実行されるまでにおける、第1確率分布46および第2確率分布48を示すRGB色空間である。
図8の(b)に示すS24-Bは、ステップS24の確率分布の修正を1回実行した後における、第1確率分布46および第2確率分布48を示すRGB色空間である。
図8の(c)に示すS24-Cは、ステップS24の確率分布の修正を2回実行した後における、第1確率分布46および第2確率分布48を示すRGB色空間である。
図8の(d)に示すS24-Dは、画像30の全ての画素から、第1確率分布46および第2確率分布48を推定した場合における、第1確率分布46および第2確率分布48を示すRGB色空間である。
【0066】
ステップS10においては、第1領域の一部である第1基準画素と、第2領域の一部である第2基準画素とのそれぞれの色情報から、第1確率分布46および第2確率分布48の推定を行う。このため、ステップS10において推定された第1確率分布46および第2確率分布48は、画像30の全ての画素から推定された、理想的な第1確率分布46および第2確率分布48とは、差異がある蓋然性が高い。
【0067】
ステップS24における確率分布の推定は、ステップS10における確率分布の推定と比較して、基準とする画素の個数が増加している。このため、ステップS24において修正された確率分布は、画像30の全ての画素から推定された、理想的な確率分布により近似する蓋然性が高い。さらに、ステップS24の実行回数が多い程、換言すれば、確率分布がより多く修正される程、確率分布は、理想的な確率分布に近似する蓋然性が高くなる。
【0068】
したがって、設定済の画素の個数が一定以上増加する度に、ステップS24を実行し、確率分布を修正することにより、より理想的な確率分布に近い確率分布に基づいて、各隣接画素の解析が実行されることとなる。ゆえに、ステップS24の確率分布修正工程を実行することにより、隣接画素が適切な領域の画素に追加される蓋然性がより向上する。なお、ステップS24は、確率分布修正部28によって実行されるが、これに限られず、確率分布推定部22が実行してもよい。
【0069】
本実施形態においては、ステップS24が、前回の確率分布の推定または修正から、規定数以上の画素の設定が実行されてから実施される。確率分布を推定に使用する色座標の個数の差が少ない場合、確率分布の修正を行ったとしても、確率分布の変動は小さい。このため、確率分布の修正は、基準とする画素がある程度増加した場合に実行する方が効果的である。したがって、本実施形態においては、設定された画素が増加する度にステップS24を実行するよりも、より効果的に確率分布を修正しつつ、画像抽出の速度を向上させることができる。
【0070】
<画像抽出>
ステップS12からステップS24が繰り返され、画像30における全ての画素50が、何れかの領域の画素に設定された場合、ステップS20に次いで、抽出工程に移行する(ステップS26)。
【0071】
ステップS26においては、各領域が含む画素を含む画像を、抽出画像としてそれぞれ抽出する。具体的には、ステップS26において、第1画素52を第1抽出画像として、第2画素54を第2抽出画像として、それぞれ抽出する。抽出工程は、抽出画像生成部26が、第1画素52と第2画素54とを特定し、これらを含む画像をそれぞれ抽出することにより実行する。
【0072】
以上により、理想的には、前景領域31が有する画素を含む第1抽出画像と、背景領域36が含む画素を含む第2抽出画像とが生成される。ゆえに、本実施形態においては、画像30から、前景領域31を抽出した画像と、背景領域36を抽出した画像とが得られる。
【0073】
本実施形態に係る画像抽出方法においては、各画素が、何れの領域の画素に含まれるのかについて、各領域における確率分布に基づいて決定する。このため、本実施形態に係る画像抽出方法は、各画素が、適切でない領域の画素に設定される蓋然性を低下させて、画像から各領域が含む画素を抽出する精度を向上させる。当該画像抽出方法は、本実施形態に係る画像抽出装置2を使用して実現できる。
【0074】
また、本実施形態においては、画像30が有する全ての画素50が、第1画素52と第2画素54との何れか一方に設定される。このため、一方の領域が含む画素の設定を行って、抽出画像の生成を行うよりも、より確実に、各画素がどの領域の画素に含まれるのかを設定することができる。したがって、本実施形態においては、第1抽出画像と第2抽出画像との生成の精度がより改善する。
【0075】
<実施例および比較例の評価>
本実施形態に係る画像抽出方法が奏する効果について、本実施形態に沿って実施した実施例と、比較形態に係る画像抽出方法に沿って実施した比較例とを比較することにより評価する。実施例における、特定画像から抽出画像を生成する過程を、
図9を参照して説明する。
【0076】
実施例においては、
図9の(a)に示す画像66から、本実施形態に係る画像抽出方法に基づき、抽出画像を生成した。画像66は、物体領域68と、背景領域70とを含む画像である。実施例においては、ステップS4において、
図9の(a)に示すように、第1基準領域38と、第2基準領域40とを指定した。
【0077】
以降、本実施形態に係る画像抽出方法に基づき、画像66から、前景領域31として物体領域68を含む第1抽出画像と、背景領域70を含む第2抽出画像との生成を試みた。実施例において、ステップS24は、画像66の全画素のうち、40%、および80%の画素が、何れかの領域に追加された際にそれぞれ実行した。
【0078】
図9の(b-1)に示す第1抽出画像72Aは、一回目のステップS24の直前、換言すれば、画像66の全画素のうち、40%の画素が第1画素52あるいは第2画素54に設定された時点における、第1画素52を含む抽出画像である。
図9の(c-1)に示す第2抽出画像74Aは、一回目のステップS24の直前における、第2画素54を含む抽出画像である。
図9の(b-2)に示す第1抽出画像72Bは、二回目のステップS24の直前、換言すれば、画像66の全画素のうち、80%の画素が第1画素52あるいは第2画素54に設定された時点における、第1画素52を含む抽出画像である。
図9の(c-2)に示す第2抽出画像74Bは、二回目のステップS24の直前における、第2画素54を含む抽出画像である。
図9の(b-3)に示す第1抽出画像72は、ステップS26において生成された、第1画素52を含む抽出画像である。
図9の(c-3)に示す第2抽出画像74は、ステップS26において生成された、第2画素54を含む抽出画像である。
【0079】
図9に示す第1抽出画像72A、第2抽出画像74A、第1抽出画像72Bおよび第2抽出画像74Bには、本実施例において、次第に第1画素52および第2画素54が順次追加される様子が示されている。また、本実施例において、前景領域31に対応する位置の第1画素76を含む第1抽出画像72と、背景領域70に対応する位置の第2画素78を含む第2抽出画像74とが得られている。
【0080】
次に、比較形態に係る画像抽出方法について説明する。比較形態に係る画像抽出方法は、本実施形態に係る画像抽出方法と比較して、ステップS10に代えて、各領域における色空間上の色バケツを生成する工程を含む点において相違する。当該工程について、
図10を参照して説明する。
【0081】
図10に示すS10-Cは、比較形態において生成されたRGB色空間上の色バケツの例を示す概略図である。比較形態においては、各基準画素の色空間上の色座標の特定についで、当該色座標の情報から、各領域における色バケツを生成する。比較形態においては、RGB色空間におけるR軸、G軸、B軸を、複数のグリッドに分割し、RGB色空間を複数の区画に分割して、当該区画の一部に色バケツが生成される。各領域における色バケツは、各基準画素の色座標が多く位置する区画に生成される。
【0082】
比較形態においては、例えば、
図10に示すように、RGB色空間上の一部の区画のうち、第1色座標42を多く含む区画に、第1領域における色バケツである第1色バケツ46Dを生成する。また、比較形態においては、例えば、
図10に示すように、RGB色空間上の一部の区画のうち、第2色座標44を多く含む区画に、第2領域における色バケツである第2色バケツ48Dを生成する。ここで、第1色座標42と第2色座標44との双方を有する区画には、第1色バケツ46Dと第2色バケツ48Dとの双方に属する、競合色バケツCBが生成される場合がある。
【0083】
また、比較形態においても、隣接画素ごとにコストCN(s,t)を算出し、当該コストCN(s,t)が最も低い画素を、各領域が含む画素の何れかに追加する。ただし、コストCN(s,t)のW1(s,t)とW2(s,t)とは、それぞれ、以下の式(4)と式(5)とに変更される。
【0084】
【0085】
【0086】
式(4)、および式(5)におけるq(t)は、画素tの量子数を低下させた色を表し、画素tの色座標に相当する。KMは、RGB色空間上の区画のうち、領域Mにおける色バケツが生成された区画を表す。このため、式(4)から、比較形態に係るW1(s,t)は、画素tの色座標が、領域Nの色バケツのみに含まれる場合には1となり、領域Nを除く領域の色バケツのみに含まれる場合には4となり、それ以外の場合には2となる。また、式(5)から、比較形態に係るW2(s,t)は、画素tの色座標が、領域Nの色バケツに含まれる場合には0となり、それ以外の場合には1となる。
【0087】
さらに、比較形態においては、ステップS22、ステップS24は実行されず、ステップS20において、何れかの領域が含む画素に設定されていない画素が存在する場合には、再度ステップS12が実行される。
【0088】
上述した点を除き、比較形態に係る画像抽出方法は、本実施形態に係る画像抽出方法と同一の手法により実行される。
【0089】
比較例においては、
図9に示す第1基準領域38および第2基準領域40と同一の基準領域の指定により、画像66から、比較形態に係る画像抽出方法によって、各抽出画像の生成を行った。比較例において生成された抽出画像と、実施例において生成された抽出画像とを、
図11を参照して比較する。
【0090】
図11の(a)は、比較例において生成された第1抽出画像72Cを示す図である。
図11の(b)は、実施例において生成された第1抽出画像72を示す図である。なお、
図11の(a)および(b)においては、画像抽出の精度をより明確に比較するために、第1抽出画像72Cと第1抽出画像72とのそれぞれに、背景領域70に相当する、第2画素78Cと第2画素78とを、濃度を低下させてそれぞれ重ねている。
【0091】
比較例において生成された第1抽出画像72Cは、物体領域68に相当する、第1画素76Cを有する。しかしながら、第1抽出画像72Cには、物体領域68に位置する画素の一部が、第1画素76Cとして設定されていない、不十分な領域Eが存在している。不十分な領域Eは、不十分な領域Eの周辺における画素の色が、競合色バケツCBに含まれていたために、物体領域68に位置する画素の一部が、誤って第2画素78Cとして設定されたために生じたものと推察される。
【0092】
一方、実施例において生成された第1抽出画像72には、不十分な領域Eが存在せず、第1画素76の設定に概ね成功している。このように、比較形態に係る画像抽出方法と比較して、本実施形態に係る画像抽出方法は、より精度よく抽出画像を生成できる。
【0093】
〔実施形態2〕
<第3抽出画像の生成>
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0094】
本実施形態においても、画像30から抽出画像を生成する方法を例に説明を行う。ただし、本実施形態においては、前実施形態と比較して、第1抽出画像および第2抽出画像に加えて、さらに、第3抽出画像を生成する点において相違する。
【0095】
本実施形態に係る画像抽出方法においては、例えば、はじめに、前実施形態におけるステップS2と同一の手法により、
図12に示す画像30が表示デバイス4に表示されている。なお、
図12の(a)に示す画像30は、
図3の(c)に示す画像30と同一である。ただし、本実施形態において、第1領域は第1物体領域32のみを有し、第2物体領域34は第3領域に含まれるものとする。さらに、本実施形態においては、画像30から、第1領域である第1物体領域32を含む第1抽出画像と、第2領域である背景領域36を含む第2抽出画像と、第3領域である第2物体領域34を含む第3抽出画像と生成する方法を例に挙げて説明する。換言すれば、本実施形態に係る画像抽出方法は、さらに、第3領域を有する画像から、第3領域を含む第3抽出領域を抽出し、第3抽出領域を含む第3抽出画像を生成する方法である。
【0096】
本実施形態においては、前実施形態におけるステップS4において、第1基準画素および第2基準画素の指定に加えて、第3基準画素の指定を受け付ける。第3基準画素の指定は、
図12の(b)に示すように、第3領域である第2物体領域34に、第3基準領域80が指定され、第3基準領域80が含む画素が第3基準画素に指定されることにより実施される。第3基準画素の指定は、第1基準画素および第2基準画素の指定と同一の手法により実行する。
【0097】
以降、本実施形態においては、前実施形態に係る各工程の一部を変更した工程を順次実行する。本実施形態に係るステップS6においては、さらに、第3基準画素を第3画素に設定する。本実施形態に係るステップS8、S10においては、さらに、色空間上の各座標に対応する色を有する画像30上の画素が、第3領域が含む画素が有する色に含まれる確率を表現する第3確率分布を推定する。本実施形態に係るステップS12からS18においては、さらに、第3画素と隣接する第3隣接画素についても、コストCN(s,t)を算出し、各画素の設定を行う。本実施形態に係るステップS24においては、さらに、第3確率分布の修正を行う。本実施形態に係るステップS26においては、さらに、第3画素を含む第3抽出画像を生成する。本実施形態に係るステップS6からS26のそれぞれは、上述した点を除き、前実施形態に係るステップS6からS26のそれぞれと同一の手法により実行する。本実施形態に係る画像抽出方法は、前実施形態に係る画像抽出装置2と同一の装置によって実行する。
【0098】
本実施形態においては、第1抽出画像および第2抽出画像に加えて、第3画素を含む第3抽出画像を生成できる。このため、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、例えば、背景領域中に、複数の物体領域を有する画像から、互いに異なる物体領域を有する複数の抽出画像と、背景領域を有する抽出画像とを得ることができる。
【0099】
また、本実施形態においても、各画素が、何れの領域の画素に含まれるのかについて、各領域における確率分布に基づいて決定する。このため、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、抽出する領域の種類が増えた場合においても、各画素が、適切でない領域の画素に設定される蓋然性が低下し、画像から各領域が含む画素を抽出する精度が向上する。
【0100】
なお、本実施形態においては、さらに、画像30が、さらに、例えば、第4領域、第5領域等を含む、第1領域から第3領域の何れとも異なる領域を有していてもよい。この場合、本実施形態においては、第1基準画素、第2基準画素、および、第3基準画素に限らず、第4基準画素、および第5基準画素等を含む、4種以上の基準画素を使用して、画像の抽出を行ってもよい。この場合においても、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、当該領域の画素を含む抽出画像をさらに生成することができる。
【0101】
なお、本実施形態においては、第1領域と第3領域とが、画像30の第1物体領域32と第2物体領域34とをそれぞれ含む。このため、本実施形態に係る画像抽出方法においては、画像から複数の物体領域を個別に抽出した複数の抽出画像を生成することができる。しかしながら、これに限られず、本実施形態において、第3領域は、背景領域36の一部を含んでいてもよい。この場合、本実施形態に係る画像抽出方法においては、画像から背景領域の一部をそれぞれ抽出した、複数の抽出画像を生成することができる。
【0102】
〔実施形態3〕
<第1抽出画像のみの生成>
本開示の他の実施形態について、以下に説明する。本実施形態においても、画像30から抽出画像を生成する方法を例に説明を行う。ただし、本実施形態においては、前述した各実施形態と比較して、第1抽出画像のみを生成する点において相違する。
【0103】
本実施形態に係る画像抽出方法においては、例えば、はじめに、前述した各実施形態におけるステップS2と同一の手法により、
図13の(a)に示す画像30が表示デバイス4に表示されている。なお、
図13の(a)に示す画像30は、
図3の(a)に示す画像30と同一である。ただし、本実施形態においては、画像30から、第1領域である前景領域31として、第1物体領域32を含む第1抽出画像のみを生成する方法を例に挙げて説明する。
【0104】
本実施形態においては、前実施形態におけるステップS4において、第1基準画素の指定のみを受け付ける。このため、
図13の(b)に示すように、本実施形態において、画像30に対しては、第1基準領域38のみが指定される。
【0105】
以降、本実施形態においては、前実施形態に係る各工程の一部を変更した工程を順次実行する。本実施形態に係るステップS6においては、第1基準画素の第1画素52への設定のみを行う。本実施形態に係るステップS8、S10においては、第1確率分布46の推定のみを行う。本実施形態に係るステップS12からS18においては、第1隣接画素56のみを特定し、当該第1隣接画素56についてコストCN(s,t)を算出し、第1画素52の再設定のみを行う。本実施形態に係るステップS24においては、第1確率分布46の修正のみを行う。本実施形態に係るステップS26においては、第1画素52を含む第1抽出画像のみを生成する。
【0106】
ここで、本実施形態に係る画像抽出方法においては、第1領域を含む第1抽出画像のみを生成するため、画像30の全ての画素50を、第1画素52に追加せず、一部の画素50のみを第1画素52に追加する。このため、本実施形態に係るステップS20は、例えば、以下の工程に変更することが考えられる。
【0107】
例えば、本実施形態に係るステップS20においては、各第1隣接画素56のコストCN(s,t)が、ある規定値以上であるか否かを判断する。この場合、ステップS20において、全ての第1隣接画素56のコストCN(s,t)が規定値以上である場合には、ステップS26の実行に移行する。画像30の第1領域と第2領域との色の差異が明瞭であり、全ての第1隣接画素56のコストCN(s,t)が規定値以上であれば、全ての第1画素52を特定できたと判断できる場合に、ステップS20は有用である。
【0108】
あるいは、例えば、本実施形態に係るステップS20においては、第1画素52の総数が、ある規定値以上であるか否かを判断する。この場合、ステップS20において、第1画素52の総数が規定値以上である場合には、ステップS26の実行に移行する。画像30の総面積に対する第1領域の面積の割合が、少なくともおおよそ判明している場合に、ステップS20は有用である。
【0109】
上記ステップS20により、本実施形態に係る画像抽出方法においては、画像30の画素50のうち一部のみを第1画素52に追加することができる。これにより、画素50のうち、コストCN(s,t)を算出すべき画素50の個数が低減するため、本実施形態に係る画像抽出方法は、第1抽出画像の生成にかかる時間を短縮できる。
【0110】
本実施形態に係るステップS6からS26のそれぞれは、上述した点を除き、前実施形態に係るステップS6からS26のそれぞれと同一の手法により実行する。本実施形態に係る画像抽出方法は、前実施形態に係る画像抽出装置2と同一の装置によって実行する。
【0111】
本実施形態においては、第1基準画素の指定のみにて、少なくとも第1画素52を含む第1抽出画像を生成できる。このため、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、ユーザが第2基準画素を指定する必要がなく、より簡便に第1抽出画像を生成できる。
【0112】
また、本実施形態においても、各画素が、第1画素52に含まれるか否かについて、第1領域における第1確率分布46に基づいて決定する。このため、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、第1画素52に追加すべき画素50が第1画素52に追加されない蓋然性が低下する。加えて、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、第1画素52に追加すべきではない画素50が第1画素52に追加される蓋然性が低下する。したがって、本実施形態に係る画像抽出方法によれば、画像30から、より簡便かつより精度よく、第1画素52を含む第1抽出画像を生成することができる。
【0113】
なお、本実施形態においては、第1領域が、第1物体領域32を含む。このため、本実施形態に係る画像抽出方法においては、画像から物体領域のみを抽出した抽出画像を生成することができる。しかしながら、本開示は、これに限られず、本実施形態において、第1領域は、第1物体領域32を含まず、背景領域36の少なくとも一部を含んでいてもよい。この場合、本実施形態に係る画像抽出方法においては、画像から背景領域の少なくとも一部のみを抽出した抽出画像を生成することができる。また、第1領域は、第1物体領域32と第2物体領域34とを含んでいてもよい。
【0114】
<ソフトウェアによる実現例>
前述した各実施形態に係る画像抽出装置(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるための画像抽出プログラムによって実現することができる。この場合、当該装置の機能は、例えば、制御部6が含む各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0115】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0116】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0117】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0118】
また、上記各実施形態において説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0119】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0120】
2 画像抽出装置
6 制御部
20 基準画素設定部
22 確率分布推定部
24 隣接画素解析部
26 抽出画像生成部
28 確率分布修正部