(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158653
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】包装フィルム、包装袋及び食品包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20221006BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221006BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
C08J5/18 CES
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063696
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】永井 暁
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB22
3E086BB51
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4F071AA15
4F071AA20
4F071AA78
4F071AF13Y
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4F100AK01B
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4F100GB15
4F100GB23
4F100JL12A
4F100JN01
(57)【要約】
【課題】包装袋を形成し、その包装袋内に、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品を収容して食品包装体を形成する場合に、その食品包装体の外観の低下を抑制させることができる包装フィルム、包装袋及び食品包装体を提供すること。
【解決手段】脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品の包装に用いられる包装フィルムであって、第1樹脂層を有するシーラント層を備え、第1樹脂層が、食品に対向させるための食品対向面を有し、第1樹脂層が、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含む、包装フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品の包装に用いられる包装フィルムであって、
第1樹脂層を有するシーラント層を備え、
前記第1樹脂層が、前記食品に対向させるための食品対向面を有し、
前記第1樹脂層が、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含む、包装フィルム。
【請求項2】
前記シーラント層が、前記第1樹脂層の前記食品対向面と反対側に第2樹脂層をさらに有する、請求項1に記載の包装フィルム。
【請求項3】
前記シーラント層上に設けられる基材層をさらに有し、前記基材層が、前記シーラント層に対し、前記第1樹脂層の前記食品対向面と反対側に配置されている、請求項1又は2に記載の包装フィルム。
【請求項4】
ループ長を85mmとしたループスティフネス測定において、5~55mNの剛性値を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装フィルム。
【請求項5】
40%以下のヘイズを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装フィルム。
【請求項6】
脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品の包装に用いられる包装袋であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装フィルムを用いて形成され、
前記包装フィルムの前記第1樹脂層が、前記食品対向面を前記包装袋の内側に向けて配置されている、包装袋。
【請求項7】
請求項6に記載の包装袋の内部に前記食品を収容してなる食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装フィルム、包装袋及び食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バターなどの食品を包装するための包装フィルムが知られている。例えば下記特許文献1には、包装フィルムとして、線状低密度ポリエチレン100重量部と低密度ポリエチレン5~40重量部との混合物からなるポリエチレン系フィルムを基材層に積層してなる積層包装材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の包装フィルムは、以下に示す課題を有していた。
【0005】
すなわち、上記特許文献1に記載の包装フィルムが透明である場合には、この包装フィルムを用いて包装袋を形成し、その包装袋の内部に食品を収容して食品包装体を形成すると、包装袋の外部から食品を視認できる。このとき、食品が、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成された表層部を有すると、その脂質含有製品が食品包装体の内面に付着しやすく、その付着した脂質含有製品によって食品包装体の外観が低下する場合がある。このような食品包装体の外観の低下は、購買者の購入意欲の低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋を形成し、その包装袋内に、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品を収容して食品包装体を形成する場合にその食品包装体の外観の低下を抑制させることができる包装フィルム、包装袋及び食品包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品の包装に用いられる包装フィルムであって、第1樹脂層を有するシーラント層を備え、前記第1樹脂層が、前記食品に対向させるための食品対向面を有し、前記第1樹脂層が、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含む、包装フィルムである。
【0008】
本発明の包装フィルムによれば、シーラント層の第1樹脂層が(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含むことで、第1樹脂層の食品対向面に対して、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品の脂質含有製品を付着しにくくすることができる。このため、この包装フィルムを用いて包装袋を形成し、この包装袋内に、上記食品を収容して食品包装体を形成する場合に、その外観の低下を抑制させることができる。
【0009】
上記包装フィルムにおいて、前記シーラント層が、前記第1樹脂層の前記食品対向面と反対側に第2樹脂層をさらに有することが好ましい。
【0010】
この場合、第1樹脂層の食品対向面に対して、食品の脂質含有製品をより付着しにくくすることができ、上記食品包装体においてその外観の低下をより抑制させることができる傾向がある。また、シーラント層が第2樹脂層をさらに有することで、包装フィルムが更なる機能性(耐熱性、耐衝撃性等)を有することが可能となる。また、第1樹脂層の薄膜化が可能となり、包装フィルムのコストダウンも可能である。
【0011】
上記包装フィルムが、前記シーラント層上に設けられる基材層をさらに有し、前記基材層が、前記シーラント層に対し、前記第1樹脂層の前記食品対向面と反対側に配置されていることが好ましい。
【0012】
この場合、シーラント層が基材層によって補強され、包装フィルムの機械強度が向上する。また、包装フィルムが基材層を有することで、バリア性、遮光性等の機能を有することが可能となる。
【0013】
上記包装フィルムは、ループ長を85mmとしたループスティフネス測定において、5~55mNの剛性値を有することが好ましい。
【0014】
この場合、上記食品包装体の第1樹脂層の食品対向面により食品に加えられる圧力が適度になり、食品の表層部を構成する脂質含有製品が第1樹脂層の食品対向面により付着しにくくなる。このため、上記食品包装体においてその外観の低下をより抑制させることができる。
【0015】
上記包装フィルムは、40%以下のヘイズを有することが好ましい。
【0016】
この場合、包装フィルムの透明性がより向上し、上記食品包装体の内部にある食品の視認性がより向上する。
【0017】
また、本発明は、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品の包装に用いられる包装袋であって、上述した包装フィルムを用いて形成され、前記包装フィルムの前記第1樹脂層が、前記食品対向面を前記包装袋の内側に向けて配置されている、包装袋である。
【0018】
この包装袋によれば、食品の表層部に含まれる脂質含有製品が包装フィルムの第1樹脂層の食品対向面に付着しにくくなるため、包装袋内に上記食品を収容して食品包装体を形成する場合に、その食品包装体の外観の低下を抑制させることができる。
【0019】
さらに、本発明は、上述した包装袋の内部に前記食品を収容してなる食品包装体である。
【0020】
この食品包装体によれば、食品の表層部に含まれる脂質含有製品が包装フィルムの第1樹脂層の食品対向面に付着しにくくなるため、食品包装体の外観の低下が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、包装袋を形成し、その包装袋内に、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品を収容して食品包装体を形成する場合にその食品包装体の外観の低下を抑制させることができる包装フィルム、包装袋及び食品包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の食品包装体の一実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1の食品包装体の包装袋を構成する包装フィルムの断面図である。
【
図3】
図1の食品包装体を構成する食品の断面図である。
【
図4】本発明の食品包装体の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の食品包装体の実施形態について
図1~
図3を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の食品包装体の一実施形態を示す正面図、
図2は、
図1の食品包装体の包装袋を構成する包装フィルムの断面図、
図3は、
図1の食品包装体を構成する食品の断面図である。
【0024】
図1に示すように、食品包装体100は、包装袋10と、包装袋10の内部に収容される食品20とを備えている。
図2に示すように、包装袋10は、シーラント層12と、シーラント層12上に設けられる基材層11とを有し、食品20の包装に用いられる包装フィルム110を用いて形成されたものであり、シーラント層12は、食品20側に配置されており、食品20に対向させるための食品対向面Sを有する第1樹脂層12Aと、第1樹脂層12Aの食品対向面Sと反対側に配置される第2樹脂層12Bとを有する。基材層11は、シーラント層12に対し第1樹脂層12Aの食品対向面Sと反対側に配置されている。そして、第1樹脂層12Aは、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含む。
【0025】
一方、
図3に示すように、食品20は、本体部20Aと、本体部20Aの表面上に設けられる表層部20Bとを含み、表層部20Bが、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される。
【0026】
この食品包装体100によれば、シーラント層12の第1樹脂層12Aが(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含むことで、第1樹脂層12Aの食品対向面Sに対して、食品20の脂質含有製品を付着しにくくすることができる。このため、食品包装体100によれば、その外観の低下を抑制できる。
【0027】
以下、包装フィルム110、食品20及び食品包装体100について詳細に説明する。
【0028】
≪包装フィルム≫
包装フィルム110は、上述したように、基材層11とシーラント層12とを含む。
【0029】
<基材層>
包装フィルム110が基材層11を含むことで、シーラント層12が基材層11によって補強され、包装フィルム110の機械強度が向上する。また、包装フィルム110が基材層11を有することで、バリア性、遮光性等の機能を有することが可能となる。基材層11は、シーラント層12を補強し得るものであれば特に制限はなく、例えば基材層11の具体例としては、樹脂フィルムが挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、セロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。基材層11は、耐熱性及び耐衝撃性、酸素・水蒸気バリア性等を向上させるために、必要に応じて、材質の異なる複数の基材を積層したものであってもよい。
【0030】
基材層11の厚さは特に限定されず、用途に応じて適宜調整することができる。基材層11の厚さは通常、1~500μmであるが、包装フィルム110の透明性を向上させる観点からは、好ましくは10~100μmである。
【0031】
<シーラント層>
シーラント層12は、食品対向面Sを有する第1樹脂層12Aと、第1樹脂層12Aの食品対向面Sと反対側に配置される第2樹脂層12Bとを有する。
【0032】
(第1樹脂層)
第1樹脂層12Aは、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンを含む。
【0033】
〔(A)ポリオレフィン樹脂〕
ポリオレフィン樹脂は特に制限されず、ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、あるいはランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。αオレフィン成分としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。上記以外でも、ポリオレフィン樹脂は、ポリノルボルネンなどの環状ポリオレフィンであってもよい。また、上記ポリオレフィン樹脂は、シール性及び強度物性(引張強度、衝撃強度など)の観点から、線状ポリオレフィンが好ましく、線状ポリオレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。
【0034】
ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、並びに、上述したようなα-オレフィンとプロピレンとの共重合体(プロピレン系共重合体)が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレン樹脂はランダムポリプロピレンを含むことが好ましい。ランダムポリプロピレンを含むことにより、熱による包装フィルム110が破れることを防止し易くなることに加えて、低温・短時間でのヒートシールがし易くなる傾向がある。
【0035】
ポリオレフィン樹脂は所定の酸で変性された変性ポリオレフィンであってもよい。変性ポリオレフィンは、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリオレフィンをグラフト変性することで得られる。また、ポリオレフィン樹脂として、水酸基変性ポリオレフィンやアクリル変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンを使用することもできる。
【0036】
上述したポリオレフィン樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
〔(B)シリル化ポリオレフィン〕
シリル化ポリオレフィンは、オレフィンに由来する第1構造単位と、下記式(1)で表される第2構造単位とを含む。
【化1】
(上記式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基又はケイ素含有基を表し、第2構造単位が複数存在する場合には、複数の第2構造体におけるR
1及びR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。YはO、S、NR(Rは水素原子又は炭化水素基を表す)を表す)
【0038】
第1構造単位はオレフィンに由来する構造単位である。オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレンなどのアルキレンが挙げられる。
【0039】
第2構造単位における炭化水素基は特に制限されないが、炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基などのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。
【0040】
第2構造単位における酸素含有基は特に制限されないが、酸素含有基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、2-フェニルエトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基、トリルオキシ基、ビフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基などのアリールオキシ基などが挙げられる。
【0041】
第2構造単位におけるケイ素含有基は特に制限されないが、ケイ素含有基の具体例としては、アルキルシリル基、アルケニルシリル基、アリールシリル基、アルキルシロキシ基、アルケニルシロキシ基、アリールシロキシ基、アルコキシシリル基、アリールオキシシリル基、アルコキシシロキシ基、アリールオキシシロキシ基、ポリシロキシルなどが挙げられる。
【0042】
シリル化ポリオレフィンは、ブロック共重合体であってもグラフト共重合体であってもよいが、ブロック共重合体であることが好ましい。この場合、ブロック共重合体は、グラフト共重合体に比べて、第2構造単位が第1樹脂層12Aの食品対向面S側にブリードアウトしやすい傾向があり、脂質含有製品の付着防止性を向上させ、食品包装体100の外観の低下をより抑制することができる。
【0043】
シリル化ポリオレフィンとしては、例えば、PE-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品、PE-Siブロック共重合体として三井化学ファイン株式会社製のイクスフォーラ、PP-Siグラフト共重合体として東レ・ダウコーニング株式会社製の製品等が挙げられる。
【0044】
シリル化ポリオレフィンとしては、第1樹脂層12Aの脂質含有製品の付着防止性をより向上させる観点から、グラフト共重合体よりもブロック共重合体の方が好ましい。これは、ブロック共重合体の方が、第1樹脂層12Aの食品対向面Sに偏在化又はブリードアウトし易い傾向にあるためである。
【0045】
上述したシリル化ポリオレフィンは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
第1樹脂層12Aにおける(B)シリル化ポリオレフィンの含有量は、(A)ポリオレフィン樹脂及び(B)シリル化ポリオレフィンの総量を基準として、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、2~30質量%であることが更に好ましい。(B)シリル化ポリオレフィンの含有量が上記下限値以上であると、脂質含有製品が第1樹脂層12Aにより付着しにくくなる傾向がある。一方、(B)シリル化ポリオレフィンの含有量が上記上限値以下であると、相対的に(A)ポリオレフィン樹脂の含有量が増えるため、良好なヒートシール性が得られ易い傾向がある。
【0047】
第1樹脂層12Aは、食品包装体100の外観を損なわない範囲で、必要に応じてその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等が挙げられる。
【0048】
第1樹脂層12Aの厚さは、0.1~100μmであることが好ましく、1~70μmであることがより好ましく、3~50μmであることが更に好ましく、5~30μmであることが特に好ましい。第1樹脂層12Aの厚さが上記下限値以上であることにより良好な脂質含有製品付着性及びヒートシール性が得易くなる傾向がある。一方、厚さが上記上限値以下であることにより、包装フィルム110全体の厚さを薄くすることができる。
【0049】
(第2樹脂層)
第2樹脂層12Bは、ヒートシール性を有する材料で構成されていればよい。シーラント層12が第2樹脂層12Bを有することで、第1樹脂層12Aの食品対向面Sに食品20の脂質含有製品が付着しにくくなる傾向がある。また、シーラント層12が第2樹脂層12Bをさらに有することで、包装フィルム110が更なる機能性(耐熱性、耐衝撃性等)を有することが可能となる。また、第1樹脂層12Aの薄膜化が可能となり、包装フィルム110のコストダウンも可能である。
【0050】
このようなヒートシール性を有する材料は通常、熱可塑性樹脂である。第2樹脂層12Bに用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのエステル化物又はイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物、ポリ酢酸ビニル又はそのケン化物、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、フラン樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
第2樹脂層12Bに用いられる上記熱可塑性樹脂は、ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性が向上し易いことから、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、第1樹脂層12Aに用いられる(A)ポリオレフィン樹脂と同様のものを用いることができる。
【0052】
第2樹脂層12Bが第1樹脂層12Aと接している場合、第1樹脂層12A中の(A)ポリオレフィン樹脂の融点T1(℃)と、第2樹脂層12B中の上記熱可塑性樹脂の融点T2(℃)とは、T1<T2の関係を満たすことが好ましい。上記関係を満たすことにより、結晶化度の観点から、第1樹脂層12A中の(B)シリル化ポリオレフィンが第2樹脂層12Bに移行することを抑制でき、第1樹脂層12Aの食品対向面Sへの(B)シリル化ポリオレフィンの偏在化又はブリードアウトの効率を向上させることができるため、脂質含有製品の第1樹脂層12Aへの付着をより抑制できる傾向がある。同じ観点から、融点T2は、融点T1よりも1℃以上高いことが好ましく、3℃以上高いことがより好ましい。
【0053】
第2樹脂層12Bの厚さは、食品20に応じて適宜設定できる。第2樹脂層12Bの厚さは、例えば、0.1~300μmであることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、5~150μmであることが更に好ましく、10~100μmであることが特に好ましい。
【0054】
シーラント層12は通常、基材層11の表面の全部を覆うように設けられるが、基材層11の表面の一部のみを覆うように設けられてもよい。また、シーラント層12は、第1樹脂層12A及び第2樹脂層12B以外の他の樹脂層を更に1層以上含んでいてもよい。他の樹脂層の組成は、第2樹脂層12Bの組成と同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
シーラント層12の厚さは特に制限されるものではないが、食品包装体100の外観の低下を抑制する観点からは、40~80μmであることが好ましく、50~70μmであることがより好ましい。
【0056】
(剛性値)
包装フィルム110において、ループ長を85mmとしたループスティフネス測定における剛性値は特に制限されるものではないが、5~55mNであることが好ましい。
【0057】
この場合、食品包装体100の内面により食品20に加えられる圧力が適度になり、食品20の表層部20Bを構成する脂質含有製品が第1樹脂層12Aの食品対向面Sにより付着しにくくなる。このため、食品包装体100の外観の低下がより抑制される。具体的には、剛性値が5mN未満である場合に比べて、包装フィルム110のコシが強くなる。その結果、フィルムヨレにより包装フィルム110が食品20に密着することが抑制され、食品20が包装フィルム110の食品対向面Sに付着しにくくなるため、食品包装体100の外観の低下が抑制される。また、剛性値が55mNを超える場合に比べて、包装フィルム110が食品20の形状に追従しやすくなる。このため、包装フィルム110が食品20に押し当てられにくくなり、包装フィルム110に食品20が付着しにくくなるため、食品包装体100の外観の低下が抑制される。包装フィルム110においては、剛性値は、8~40mNであることがより好ましく、10~20mNであることが特に好ましい。
【0058】
(ヘイズ)
包装フィルム110のヘイズは特に制限されるものではないが、40%以下であることが好ましい。この場合、食品包装体100の外部から食品20の視認性がより向上する。包装フィルム110のヘイズは、食品20の視認性の観点からは、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。ヘイズとは、シーラント層12もしくは基材層11の表面凹凸に起因する外部ヘイズと、結晶化度や結晶サイズ等に依存する内部ヘイズに分けられるが、本発明におけるヘイズは外部ヘイズと内部ヘイズとを含むものである。また、ヘイズは、シーラント層12又は基材層11のそれぞれのヘイズではなく、包装フィルム110全体のヘイズである。
【0059】
包装フィルム110の厚さは特に制限されるものではないが、食品包装体100の外観の低下を抑制する観点からは、40~120μmであることが好ましく、50~80μmであることがより好ましい。
【0060】
包装フィルム110は、例えば以下のような、接着剤によるラミネート方法、及び、熱処理によるラミネート方法などによって製造できる。
【0061】
(接着剤によるラミネート方法)
接着剤によるラミネート方法としては、ドライラミネート、ウェットラミネート、ノンソルベントラミネートなどの各種公知のラミネート方法を用いることができる。これらのラミネート方法に用いられる接着剤としては以下のものが挙げられる。
【0062】
接着剤は、シーラント層12と基材層11とを接着するものである。接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。上述した各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
接着剤には更に、接着促進を目的として、上述したポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合してもよい。
【0064】
また、接着剤に求められる性能に応じて、上述したポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
【0065】
接着剤の厚さは、特に限定されるものではないが、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
【0066】
(熱処理によるラミネート方法)
熱処理によるラミネート方法としては、大きく以下の方法が挙げられる。
(1)あらかじめ製膜したシーラント層12を接着性樹脂と共に基材層11上に押出ラミネートする方法。
(2)シーラント層12を構成する樹脂層と接着性樹脂とを基材層11上に押出ラミネートする方法。
(3)上記(1)もしくは(2)の方法で得られたラミネート基材を、更に熱ロールで加熱・加圧することにより接着させる方法。
(4)上記(1)もしくは(2)の方法で得られたラミネート基材を、更に高温雰囲気下で保管する、あるいは高温雰囲気下の乾燥・焼付け炉を通過させる方法。
【0067】
熱処理によるラミネート方法で用いられる接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。また、上記の方法では押出ラミネートにより基材層11とシーラント層12とを積層しているが、押出ラミネートを行わずに、酸変性ポリオレフィン系コーティング剤(溶解型、分散型)をあらかじめ基材層11上に塗工形成した後、シーラント層12を熱処理により積層させることも可能である。
【0068】
また、基材層11には、接着性プライマー(アンカーコート)を設けることも可能であり、その材料として、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアリルアミン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素-酢酸ビニル系などを用いることが可能であり、必要に応じて、接着剤として使用可能な上記の各種硬化剤や添加剤を配合してもよい。
【0069】
≪食品≫
食品20は、本体部20Aと本体部20Aの表面上に設けられる表層部20Bとを含み、表層部20Bが、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成されている。食品20においては、その表層部20Bのみが脂質含有製品で構成されていてもよいが、表層部20Bを含む食品20の全体が脂質含有製品で構成されていてもよい。なお、表層部20Bは、必ずしも
図3に示すように本体部20Aの表面全体に設けられる必要はなく、表面の一部にのみ設けられていてもよい。
【0070】
脂質とは、食品中の有機溶媒に溶ける有機化合物の総称であり、中性脂肪のほかに、
リン脂質、ステロイド、ろう、脂溶性ビタミン等も含んでいる。食品中の脂質量分析の方法としては、酸分解法が用いられる。
【0071】
脂質含有製品は、脂質を40質量%以上含有する製品であればよく、このような脂質含有製品の具体例としては、グレース及びチョコレートなどが挙げられる。脂質含有製品の融点は通常、25~60℃である。脂質含有製品は、バター、マーガリン、生クリーム、クリームチーズ、ラード、牛脂などの脂質含有材料を含有していてもよく、脂質はこのような脂質含有材料中に含有されていてもよい。
【0072】
本体部20Aは、食品であれば特に制限されるものではなく、本体部20Aの具体例としては、脂質含有製品、クッキー、ドーナツ、ワッフル、パン、シュークリーム及びマシュマロなどが挙げられる。脂質含有製品は、上記脂質含有製品と同一であっても異なるものであってもよい。
【0073】
なお、
図1では、複数個の食品20を収容する食品包装体100が示されているが、
図4に示す食品包装体200のように、食品20は1個のみ収容されていてもよい。
【0074】
≪食品包装体≫
食品包装体100は、上記包装フィルム110を用いて、以下の方法によって形成できる。
(1)1つの包装フィルム110を、第1樹脂層12Aを内側にして折り重ね、一部を残して残部をヒートシールしてパウチを得た後、そのパウチのうちヒートシールしていない一部における開口部から食品20を入れ、最後にその開口部をヒートシールして食品20を密閉する方法。
(2)2つの包装フィルム110を、第1樹脂層12Aを対向させて重ね合わせ、一部を残して残部をヒートシールしてパウチを得た後、そのパウチのうちヒートシールしていない一部における開口部から食品20を入れ、最後にその開口部をヒートシールして食品20を密閉する方法。
(3)3つの包装フィルム110を、2つを側面部、1つを底部とし、第1樹脂層12Aを内側に向けた状態で、一部を残して残部をヒートシールして自立式パウチを得た後、そのパウチのうちヒートシールしていない一部における開口部から食品20を入れ、最後にその開口部をヒートシールして食品20を密閉する方法。
【0075】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、包装フィルム110がシーラント層12と基材層11とを有しているが、必ずしも基材層11を有していなくてもよい。
【0076】
また上記実施形態では、シーラント層12が第1樹脂層12Aと第2樹脂層12Bとを有しているが、必ずしも第2樹脂層12Bを有していなくてもよい。
【実施例0077】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
<第1樹脂層形成用樹脂組成物の調製>
表1及び表2に示す種類のポリオレフィン樹脂(A)と、表1及び表2に示すシリル化ポリオレフィン(B)とを混合し、第1樹脂層形成用樹脂組成物を調製した。ポリオレフィン樹脂(A)及びシリル化ポリオレフィン(B)の各含有率は、ポリオレフィン樹脂(A)及びシリル化ポリオレフィン(B)の総量を基準として、シリル化ポリオレフィン(B)が5質量%、ポリオレフィン樹脂(A)が95質量%となるように調整した。
【0079】
(実施例1~3)
上記のようにして得られた第1樹脂層形成用樹脂組成物を、押出機を用いて表1及び表2に示す厚さを有するように押出し製膜して第1樹脂層形成用樹脂フィルムを得た。そして、この第1樹脂層形成用樹脂フィルムと、表1及び表2に示す種類からなり表1及び表2に示す厚さを有する基材層形成用フィルムとをポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、50℃で4日間エージングし、ヘイズが表1及び表2に示す値となるようにして包装フィルム用積層体を得た。そして、この包装フィルム用積層体から160mm×120mmの寸法を有する包装フィルムを切り出した。続いて、この包装フィルムを、第1樹脂層が内側となるように2つに折り畳み、縦方向端部の1辺と横方向端部の1辺(折り返した辺とは反対側の辺)とを、ヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部を形成し、縦方向端部の一辺が開口している包装袋としてのパウチを作製した。次に、パウチの開口部から、四角形状のクッキー(80mm×55mm、最大厚さ8mm)をグレース(脂質:56質量%含有)でコーティングした食品を1個充填した。その後、開口部をヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部を形成し、パウチを密閉した。こうして食品包装体を得た。
【0080】
(実施例4~14)
上記のようにして得られた第1樹脂層形成用樹脂組成物を、押出機を用いて表1及び表2に示す厚さを有するように押出し製膜して第1樹脂層形成用樹脂フィルムを得た。そして、この第1樹脂層形成用樹脂フィルムと、表1及び表2に示す種類からなり表1及び表2に示す厚さを有する第2樹脂層形成用樹脂フィルムと、表1及び表2に示す種類からなり表1及び表2に示す厚さを有する基材層形成用フィルムとをポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、50℃で4日間エージングし、ヘイズが表1及び表2に示す値となるようにして包装フィルム用積層体を得た。そして、この包装フィルム用積層体から160mm×120mmの寸法を有する包装フィルムを切り出した。続いて、この包装フィルムを、第1樹脂層が内側となるように2つに折り畳み、縦方向端部の1辺と横方向端部の1辺(折り返した辺とは反対側の辺)とを、ヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部を形成し、縦方向端部の一辺が開口している包装袋としてのパウチを作製した。次に、パウチの開口部から、四角形状のクッキー(80mm×55mm、最大厚さ8mm)をグレース(脂質を56質量%含有)でコーティングした食品を1個充填した。その後、開口部をヒートシーラーで190℃、0.03MPa、2secの条件で10mm幅にわたって熱封緘してシール部を形成し、パウチを密閉した。こうして食品包装体を得た。
【0081】
(比較例1)
第1樹脂層形成用樹脂組成物を調製する際に、ポリオレフィン樹脂(A)にシリル化ポリオレフィン(B)を添加しなかったこと以外は実施例2と同様にして食品包装体を作製した。
【0082】
(実施例15)
第1樹脂層において、ポリオレフィン樹脂(A)及びシリル化ポリオレフィン(B)の総量を基準としたシリル化ポリオレフィン(B)の含有量を2質量%としたこと以外は実施例7と同様にして食品包装体を作製した。
【0083】
(実施例16)
第1樹脂層において、ポリオレフィン樹脂(A)及びシリル化ポリオレフィン(B)の総量を基準としたシリル化ポリオレフィン(B)の含有量を10質量%としたこと以外は実施例7と同様にして食品包装体を作製した。
【0084】
(実施例17)
第1樹脂層において、ポリオレフィン樹脂(A)及びシリル化ポリオレフィン(B)の総量を基準としたシリル化ポリオレフィン(B)の含有量を15質量%としたこと以外は実施例7と同様にして食品包装体を作製した。
【0085】
(実施例18)
包装フィルム用積層体から90mm×60mmの寸法を有する包装フィルムを切り出してパウチを作製し、食品として脂質含有製品(脂質:42質量%)からなる生チョコレート(20mm×20mm、最大厚さ10mm)を用いたこと以外は実施例7と同様にして食品包装体を作製した。
【0086】
(比較例2)
包装フィルム用積層体から90mm×60mmの寸法を有する包装フィルムを切り出してパウチを作製し、食品として脂質含有製品(脂質:42質量%含有)からなる生チョコレート(20mm×20mm、最大厚さ10mm)を用いたこと以外は比較例1と同様にして食品包装体を作製した。
【0087】
(実施例19)
包装フィルム用積層体から220mm×130mmの寸法を有する包装フィルムを切り出してパウチを作製し、食品として、脂質含有製品(脂質:51質量%含有)でコーティングされたリング状のドーナツ(外径:70cm、内径:25cm、最大厚さ:25cm)を用いたこと以外は実施例7と同様にして食品包装体を作製した。
【0088】
(比較例3)
食品として、脂質含有製品(脂質:51質量%含有)でコーティングされたリング状のドーナツ(外径:70cm、内径:25cm、最大厚さ:25cm)を用いたこと以外は比較例1と同様にして食品包装体を作製した。
【0089】
(実施例20)
包装フィルム用積層体から120mm×80mmの寸法を有する包装フィルムを切り出してパウチを作製し、食品として脂質含有製品(脂質:65質量%)からなる円盤状のレーズンバター(直径:40mm、最大厚さ6mm)を用いたこと以外は実施例7と同様にして食品包装体を作製した。
【0090】
(比較例4)
包装フィルム用積層体から120mm×80mmの寸法を有する包装フィルムを切り出してパウチを作製し、食品として脂質含有製品(脂質:65質量%)からなる円盤状のレーズンバター(直径:40mm、最大厚さ6mm)を用いたこと以外は比較例1と同様にして食品包装体を作製した。
【0091】
表1及び表2中、各成分の詳細は以下のとおりである。表1及び表2中の「-」は、該当する成分を使用しなかったことを意味する。
【0092】
〔(A)ポリオレフィン樹脂〕
PE1:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、商品名「エボリューSP2020」、株式会社プライムポリマー製、融点:116℃
PE2:直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、商品名「ノバテックLL UF442」、日本ポリプロ株式会社製、融点:123℃
PP1:プロピレン-エチレンランダム共重合体(商品名「F744NP」、株式会社プライムポリマー製)とプロピレン-エチレンブロック共重合体(商品名「ノバテックBC5FA」、日本ポリプロ株式会社製)とを1:1(質量比)で混合してなる混合物
PP2:プロピレン-エチレンブロック共重合体(商品名「ノバテックBC3HF」、日本ポリプロ株式会社製)
【0093】
〔(B)シリル化ポリオレフィン〕
PE-Siのグラフト共重合体:商品名「BY27-213」、東レ・ダウコーニング株式会社製
PE-Si-PEのトリブロック共重合体:商品名「イクスフォーラ」、三井化学ファイン株式会社製
PP-Siのグラフト共重合体:商品名「BY27-201」、東レ・ダウコーニング株式会社製
【0094】
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「GL BARRIER」、凸版印刷株式会社製)
PET/Ny:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とナイロン(Ny)フィルム(商品名「ボニールQC」、興人フィルム&ケミカルズ株式会社製)とを接着剤で貼り合わせてなる積層体)
【0095】
[包装フィルムの特性]
(剛性値の測定)
実施例1~20及び比較例1~4の食品包装体を作製する過程で得られた包装フィルム用積層体から200mm×15mm(幅)の寸法を有するサンプルを切り出した。そして、これらのサンプルについて、ループスティフネス(製品名「ループスティフネステスタ DA-S」、株式会社東洋精機製作所製)を用い、ループ長が85mmとなるように変形させた状態で剛性値を測定した。結果を表1及び表2に示す。
【0096】
(ヘイズ値の測定)
実施例1~20及び比較例1~4の食品包装体を作製する過程で得られた包装フィルム用積層体から50mm×50mmの寸法を有するサンプルを切り出した。そして、これらのサンプルについて、ヘイズメータ(製品名「ヘイズメーター NDH-2000」、日本電色工業株式会社製)を用い、ヘイズ値を測定した。結果を表1及び表2に示す。なお、ヘイズの測定は、基材層側から光を入射させて行った。
【0097】
[食品包装体の評価]
(1)外観の評価
実施例1~20及び比較例1~4の食品包装体を常温(25℃)で3日間静置し、食品包装体の外観を目視にて観察した。そして、以下の基準に従って外観を評価した。結果を表1及び表2に示す。なお、食品包装体の外観の程度については、食品包装体の内部にあるグレースの付着状態に基づいて判定した。
(基準)
◎:外観が極めて良好である
○:外観が良好である
△:外観はやや良好である
×:外観が良好でない
【0098】
(2)脂質含有製品の付着量
実施例1~20及び比較例1~4の食品包装体の外観を観察した後、食品包装体の一部を切り取って内部の食品を取り出し、パウチの内面に付着したグレースの付着量を測定した。結果を表1及び表2に示す。なお、グレースの付着量は、食品を入れる前のパウチの質量と、食品を取り出した後の食品包装体(切り取った部分を含む)の質量との差である。
【0099】
(3)食品の視認性の評価
実施例1~20及び比較例1~4の食品包装体を観察して、食品の視認性を調べた。そして、下記基準に基づいて食品の視認性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
(基準)
◎:視認性が極めて良好である
〇:視認性が良好である
△:視認性がやや良好である
【0100】
【0101】
【0102】
表1及び表2に示す結果より、実施例1~20では、比較例1~4に比べて、食品包装体の外観が良好であることが分かった。
【0103】
従って、本発明の包装フィルムによれば、包装袋を形成し、その包装袋内に、脂質を40質量%以上含有する脂質含有製品で構成される表層部を有する食品を収容して食品包装体を形成する場合にその食品包装体の外観の低下を抑制させることができることが確認された。
10…包装袋、11…基材層、12…シーラント層、12A…第1樹脂層、12B…第2樹脂層、20…食品、20A…本体部、20B…表層部、100…食品包装体、S…食品対向面。