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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158672
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】シェルアンドチューブ型熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/013 20060101AFI20221006BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20221006BHJP
   F28F 9/24 20060101ALI20221006BHJP
   F28D 7/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F28F9/013 B
F28D7/16 Z
F28F9/24
F28D7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063728
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】391031993
【氏名又は名称】神威産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 英二
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065EA03
3L065EA12
3L103AA17
3L103AA37
3L103DD08
3L103DD44
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体の流れを制御するバッフルの形状を工夫して、角部分で流れの淀みを生じることなく、且つ適度な乱流効果を発揮して優れた熱交換効率を得ることができるシェルアンドチューブ型熱交換器を提供する。
【解決手段】バッフル300は、その中心軸線に対して同軸方向かつ線対称に配置した、一方向に旋回する螺旋板330と、逆方向に旋回する逆螺旋板340とを一体に結合した形状であって、前記バッフル300によって区画されたケース管100内においてチューブ200外を流れる流体は、互いに逆向きの螺旋状に流れる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のケース管と、複数本のチューブと、複数個の挿通孔を設けたバッフルと、を備え、前記バッフルが前記各挿通孔に前記チューブを挿通しながら配設されて前記ケース管内を長手方向に区画しており、前記チューブ内を流れる流体と前記ケース管内で前記チューブ外を流れる流体との間で熱交換を行うシェルアンドチューブ型熱交換器において、
前記バッフルは、その中心軸線に対して同軸方向かつ線対称に配置した、一方向に旋回する螺旋板と、逆方向に旋回する逆螺旋板とを一体に結合した形状であって、
前記バッフルによって区画された前記ケース管内において前記チューブ外を流れる流体は、互いに逆向きの螺旋状に流れることを特徴とするシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項2】
前記バッフルは、等間隔に離間して前記中心軸線と同軸に形成された2本のシャフトを有し、一方の前記シャフトの周囲に前記螺旋板が、他方の前記シャフトの周囲に前記逆螺旋板が形成されていることを特徴とする請求項1記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項3】
前記ケース管は前記チューブ外を流れる流体が通過する流体入口および流体出口が形成されており、
前記バッフルは、長さ方向における一方の端部に前記流体入口の軸線に対して傾斜する入口側整流板が、他方の端部に前記流体出口の軸線に対して傾斜する出口側整流板が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【請求項4】
前記バッフルが継ぎ目のない1つの部品で形成されていることを特徴とする請求項1,2または3記載のシェルアンドチューブ型熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル(以下「ケース管」という)内に複数本のチューブを内装してチューブ内を流れる流体とケース管内でチューブ外を流れる流体との間で熱交換を行う、シェルアンドチューブ型熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形のケース管内に複数本のチューブを内装しながらケース管及びチューブの長手方向に対し直角方向に円板状のバッフル板を所定間隔で配設し、チューブ内を流れる流体とケース管内でチューブ外を流れる流体との間で熱交換を行う方式の熱交換器は、例えば特開2011-117656号公報(特許文献1)に記載されているように周知であり、一般にシェルアンドチューブ型熱交換器と呼ばれている。
【0003】
この種のシェルアンドチューブ型熱交換器においては、チューブ内を流れる流体と、ケース管内でチューブ外を流れる流体との熱交換を迅速かつ十分に行えることが求められ、その熱交換効率を高めるべく、バッフル板を設置してチューブ外を流れる流体の流れを調整することがよく行われている。
【0004】
前記特許文献1記載のシェルアンドチューブ型熱交換器では、円板の外周側の一部を切欠いたバッフル板を、その切り欠きが交互に反対側になる向きでケース管の内周面に外周面を密着して連設してあり、ケース管内でチューブ外の流体が各切欠を通りながら蛇行して流れるようになっており、チューブ内の流体の方向に対してチューブ外の流体が直角に流れる状態(直交流)となり、高い熱交換効率が得られる構造を有している。
【0005】
また、例えば特開2000-227299号公報(特許文献2)のように、ケース管内に配置したバッフル板が、外側に切り欠きを形成したもの(分流邪魔板)と、中心側に切り欠きを形成したもの(合流邪魔板)の2種を交互に並べたものとして、チューブ外の流体が内向きと外向きに交互に直角に流れる状態(直交流)となり、高い熱交換効率が得られる構造を有しているシェルアンドチューブ型熱交換器も知られている。
【0006】
しかしながら、前記各シェルアンドチューブ型熱交換器において、チューブ外を流れる流体は、ケース管内で切り欠きを通過する際にその部分に配置したチューブとほぼ同軸の方向に流れるためにチューブ内を流れる流体との熱交換が十分になされない恐れがあることに加え、その切り欠きから次の切り欠きに向かう際にチューブに対してやや斜めに流れながら、流れの向きを変える角部分に流れの淀みを生じることから、圧力の損失や熱交換効率の低下を生じることが懸念される。
【0007】
これに対し、例えば特開昭59-12294号公報(特許文献3)または特開昭59-173695号公報(特許文献4)に記載されたように、ケース管内に配置したバッフル板が螺旋状のものであるシェルアンドチューブ型熱交換器が知られている。
【0008】
このような螺旋状のバッフル板を用いたシェルアンドチューブ型熱交換器において、チューブ外を流れる流体は、流体入口と流体出口の間を時計回りか半時計周りのどちらかの方向に流れる過程でチューブ内の流体との間で熱交換が行われるため、チューブ外を流れる流体の流れの向きが変わらずに流れの淀みが生じないという利点を有するが、反面、チューブ外を流れる流体がスムーズに流れすぎて乱流を生じさせず、十分な熱交換効率を得られないという恐れがあった。
【0009】
そこで、角部分で流れの淀みを生じることなく、且つ適度な乱流効果を発揮して優れた熱交換効率を得ることのできるバッフル板を備えたシェルアンドチューブ型熱交換器が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2011-117656号公報
【特許文献2】特開2000-227299号公報
【特許文献3】特開昭59-12294号公報
【特許文献4】特開昭59-173695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ケース管内に内装した複数本のチューブ内を流れる流体と、ケース管内でチューブ外を流れる流体との間で熱交換を行うシェルアンドチューブ型熱交換器において、前記ケース管内に配置されて前記チューブ外を流れる流体の流れを制御するバッフルを、角部分で流れの淀みを生じることなく、且つ適度な乱流効果を発揮して優れた熱交換効率を得られるものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明であるシェルアンドチューブ型熱交換器は、円筒状のケース管と、複数本のチューブと、複数個の挿通孔を設けたバッフルと、を備え、前記バッフルが前記各挿通孔に前記チューブを挿通しながら配設されて前記ケース管内を長手方向に区画しており、前記チューブ内を流れる流体と前記ケース管内で前記チューブ外を流れる流体との間で熱交換を行うシェルアンドチューブ型熱交換器において、
前記バッフルは、その中心軸線に対して同軸方向かつ線対称に配置した、一方向に旋回する螺旋板と、逆方向に旋回する逆螺旋板とを一体に結合した形状であって、
前記バッフルによって区画された前記ケース管内において前記チューブ外を流れる流体は、互いに逆向きの螺旋状に流れることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ケース管内を区画して流体の流れを制御するバッフルを螺旋板と逆螺旋板を一体に結合した形状で構成し、前記ケース管内でチューブ外を流れる流体が互いに逆向きの螺旋状に流れる特殊な螺旋構造としたことで、従来発明のようにバッフル板の角部分が存在しないため流れの淀みを生じることなく、且つ分岐と合流を繰り返すことで適度な乱流効果を発揮して優れた熱交換効率を得られるシェルアンドチューブ型熱交換器を提供することができる。
【0014】
また、前記バッフルは、その中心軸線から等間隔に離間して前記中心軸線と同軸に形成された2本のシャフトを有し、一方の前記シャフトの周囲に前記螺旋板が、他方の前記シャフトの周囲に前記逆螺旋板が形成されている場合、強度および加工性の向上を図ることができるため特に望ましい。
【0015】
更に、前記ケース管は前記チューブ外を流れる流体が通過する流体入口および流体出口が形成されており、
前記バッフルは、長さ方向における一方の端部に前記流体入口の軸線に対して傾斜する入口側整流板が、他方の端部に前記流体出口の軸線に対して傾斜する出口側整流板が形成されている場合、前記入口側整流板および前記出口側整流板によってチューブ外を流れる流体の流れの方向が制御され、より流れの淀みを生じることなくスムーズに通過させることができる。
【0016】
また、前記バッフルが継ぎ目のない1つの部品で形成されている場合、つまり、例えば3Dプリンタによって製造することで継ぎ目のない1つの部品で前記バッフルを成形することが可能であるが、このような製造手段によって1つの部品で製造することによって、射出成型や切削加工が困難な凹凸の多い複雑な形状かつ多数の孔を有する本発明のバッフルのような部品であっても比較的容易に製造することが可能となるため、生産性の向上や省コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
バッフルの形状の工夫によりケース管内でチューブ外を流れる流体が互いに逆向きの螺旋状に流れる特殊な螺旋構造とした本発明によれば、前記ケース管内で前記チューブ外を流れる流体は流れの淀みを生じることなく、且つ分岐と合流を繰り返すことで適度な乱流効果を発揮して優れた熱交換効率を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい実施の形態であるシェルアンドチューブ型熱交換器の分解した状態を示す斜視図。
図2図1に示した実施の形態における組み立て状態を示す斜視図。
図3図2の縦断面図。
図4図2の横断面図。
図5図1に示した実施の形態におけるバッフルを示す斜視図。
図6図1に示した実施の形態におけるバッフルの挿通孔を形成していない状態を示す、(a)斜視図、(b)反対方向から見た斜視図。
図7図1に示した実施の形態におけるバッフルの挿通孔を形成していない状態を示す、(a)平面図、(b)左側面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)背面図、(f)底面図。
図8図1に示した実施の形態におけるバッフルの挿通孔を形成していない状態を示す(a)拡大正面図、(b)中心軸線から左右に分断した際の逆螺旋板側を示す概略図。
図9図8(b)に示したバッフルの切断面を示す概略図。
図10図8(b)に示したバッフルを平面視するとともに補助線を加えた説明図。
図11図3におけるA-A線断面図。
図12図3におけるB-B線断面図。
図13図3におけるC-C線断面図。
図14図3におけるD-D線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、説明に際し、長手方向とは円筒状のケース管10及びチューブ20の中心線に平行な方向を指すものとする。
【0020】
図1は本発明の好ましい実施の形態であるシェルアンドチューブ型熱交換器1の分解した状態を示す斜視図であり、図2はその組み立て状態を示す斜視図、図3図2の縦断面図、図4図2の横断面図である。
【0021】
これらの図に示したように、シェルアンドチューブ型熱交換器1は、円筒状のケース管100と、複数本のチューブ200と、複数個の挿通孔301を設けたバッフル300と、を備えており、前記バッフル100が、挿通孔301にチューブ200を各々挿通しながら、ケース管100内に収装されることでケース管100内を長手方向に区画しており、チューブ200内を流れる第1流体とケース管100内でチューブ200外を流れる第2流体との間で熱交換を行うものである。
【0022】
前記ケース管100は、両端を開口するとともに各開口縁111,113において外側に向けて全周に突出したフランジ112,114を形成した胴体110と、前記胴体110の下面に取り付けられた一対の脚部120,120と、前記胴体110の一方(手前側)の開口縁111にガスケット130を介して締結部品140により取り付けられる手前側蓋体150と、前記胴体110の他方(奥側)の開口縁112にガスケット130を介して締結部品140により取り付けられる奥側蓋体160と、を有している。
【0023】
また、前記手前側蓋体150には上側に突出形成された第1流体入口151と、下側に突出形成された第1流体出口152とが設けられ、前記胴体110の上面には長手方向の一方(手前側)に近接して突出形成された第2流体入口115と、長手方向の他方(奥側)に近接して突出形成された第2流体出口116とが設けられている。
【0024】
なお、前記図1乃至図4には描写を省略したが、第1流体および第2流体を前記ケース管内からそれぞれ排出するためのドレン弁を前記ケース管に形成するものとしてもよい。
【0025】
チューブ200は、前記バッフル300の挿通孔301に各々挿通された状態で、一方(手前側)の端部に取り付けられた手前側固定板210と、他方(奥側)の端部に取り付けられた奥側固定板220とに固定されることによって一体の熱交換ユニット10として組み立てられた状態で前記ケース管100に収装される。
【0026】
バッフル300は、全体として円筒状を呈し、前記胴体110の内径と略同一の外径であって、その中心軸線C1から等間隔に離間して前記中心軸線C1と同軸に形成された2本のシャフト310,320と、一方の前記シャフト310の周囲に形成された螺旋板330と、他方の前記シャフト320の周囲に形成された逆螺旋板340と、長さ方向における一方の端部に前記第2流体入口115の軸線に対して傾斜して形成された入口側整流板331,341と、他方の端部に前記第2流体出口116の軸線に対して傾斜して形成された出口側整流板332,342と、を有し、前記中心軸線C1に対して同軸方向かつ線対称に配置した螺旋板330と逆螺旋板340が一体に結合した形状であり、前記螺旋板330および逆螺旋板340には、前記チューブ200を長手方向に挿通するための複数の挿通孔301が中心軸線C1と同軸に形成されている(図5参照)。
【0027】
前記バッフル300は、全体が継ぎ目のない1つの部品で形成されており、本実施の形態では3Dプリンタによって成形されている。
【0028】
3Dプリンタのような、複雑な形状であっても加工を可能とする製造手段によって1つの部品で製造することによって、射出成型や切削加工が困難な凹凸の多い複雑な形状かつ多数の孔を有する本発明のバッフル300のような部品であっても比較的容易に製造することが可能となるため、生産性の向上や省コスト化を実現することができる。
【0029】
3Dプリンタの造形方式については特に限定されるものではなく、例えば液槽光重合法(光造形式)、材料噴射法(インクジェット式)、粉末床溶融結合法(粉末焼結式)、材料押出法(熱溶解方式)その他の造形方式から適宜選択して使用可能である。
【0030】
なお、前記シャフト310,320、前記螺旋板330、および前記逆螺旋板340をそれぞれ別個に製造して一体に結合するものとしてもよく、また、一方の前記シャフト310と前記螺旋板330、他方の前記シャフト320と前記逆螺旋板340を一組としてそれぞれ別個に製造してから一体に結合するものとしてもよい。
【0031】
前記シャフト310,320を設け、前記シャフト310,320が前記手前側固定板210と前記奥側固定板220との間に挟まれるように介設されることによって、位置決めの効果および補強の効果を発揮することが可能となっているが、前記シャフト310,320を有さずに螺旋板および逆螺旋板のみからバッフルを形成するものとしてもよい(図示せず)。
【0032】
前記バッフル300を構成する素材は特に問わないが、例えば合成樹脂や金属など、3Dプリンタの方式に適した種々の素材を選択して使用可能である。また、3Dプリンタを用いない製造方法による場合も、当該製造方法に適した種々の素材を選択して使用可能である。
【0033】
図6は前記バッフル300の挿通孔301を形成していない状態を示す斜視図、図7は前記バッフル300の挿通孔301を形成していない状態を示す6面図、図8は前記バッフル300の挿通孔301を形成していない状態の拡大正面図および中心軸線から左右に分断した状態を示す図、図9は左右に分断した際の前記バッフル300(逆螺旋板340側)の切断面を示す図、図10は左右に分断した前記バッフル300(逆螺旋板340側)を平面視するとともに補助線を加えた説明図である。
【0034】
これら図面に示すように、前記バッフル300は中心軸線C1を境に対称な形状をしており、前記螺旋板330は前記バッフル300の中心軸線C1から所定距離を離間して同軸に設けられた一方のシャフト310を軸としてその周囲において軸線方向に進みながら一方向(反時計回り)に旋回しつつ立設するように形成され、前記逆螺旋板340は前記バッフル300の中心軸線C1から所定距離を離間して同軸に設けられた他方のシャフト320を軸として軸線方向に進みながらその周囲に逆方向(時計回り)に旋回しつつ立設するように形成されており、平面視した際には前記螺旋板330および前記逆螺旋板340は互いに逆向きの半円形状をしている。
【0035】
より詳細に説明すると、前記バッフル300を左右に分断した際の逆螺旋板340側を示した平面図である前記図10に示したように、前記逆螺旋板340は、前記バッフル300の中心軸C1と前記シャフト320の中心軸C2を結んだ線分L1と、前記線分L1と前記中心軸C1の交点から直角に伸ばした直線L2とを取ったとき、前記直線L2で長手方向に切り欠いたような形状をしている。
【0036】
なお、符号303は前記第2流体入口115側(ケース管100上面側)に位置する前記直線L2と前記バッフル300の外周302の交点、符号304はその反対側(ケース管100下面側)に位置する前記直線L2と前記バッフル300の外周302の交点である。
【0037】
このとき、前記図10に示すように、前記シャフト320が前記バッフルの中心軸線C1から所定距離D1だけ離間しており、前記逆螺旋板340は、前記シャフト320を軸として軸線方向に進みながらその周囲に前記逆方向に旋回しつつ立設するように形成されていることから、黒矢印で示したように図示する奥行方向に下る傾斜が設けられており、前記第2流体をこの傾斜に沿って螺旋状に流すことが可能である。
【0038】
なお、前記逆螺旋板340と対称形状である前記螺旋板330も、上述した前記逆螺旋板340と同様の構造を有する。
【0039】
前記螺旋板330と前記逆螺旋板340は同一のピッチを有しており、結合部分(図9においてハッチングを付した切断面に相当する部分)がちょうど合わさるように形成されている。
【0040】
本実施の形態における前記逆螺旋板は、前記シャフト320の周囲を4周強する程度の長さを有するが、長さはこれに限られるものではなく、例えばケース管の長さに応じて、より長いものとしても、より短いものとしても実施可能である。
【0041】
図3および図4に示すように、前記熱交換ユニット10を収装したケース管100内は、前記バッフル300によって長手方向に区画され、ケース管100内でチューブ200外を流れる前記第2流体が通過する流体通路が形成される。
【0042】
図3および図4において白抜き矢印で示した流れが、チューブ200内を流れる第1流体の流れであり、黒矢印で示した流れが、ケース管100内でチューブ200外を流れる第2流体の流れである。
【0043】
チューブ200内を流れる第1流体の流れについては、従来周知のシェルアンドチューブ型熱交換器と同様であって、手前側蓋体150の内側には前記第1流体入口151と前記第1流体出口152の間に隔壁153が形成されているため、前記第1流体入口151から導入された第1流体は、前記隔壁153によって前記第1流体出口152への通過を禁じられるため、開口している上半分のチューブ200内を反対側(奥側)へと進み、前記奥側蓋体160の内部空間に達した後反転して、開口している下半分のチューブ200内を元の方向(手前側)へと進み、最終的に前記第1流体出口152から排出されるものであって、その過程で第2流体との熱交換が行われる。
【0044】
そして、ケース管100内でチューブ200外を流れる第2流体の流れについて、本実施の形態であるシェルアンドチューブ型熱交換器1の縦断面図である図3を見る限りにおいては、第2流体は単なる螺旋状に流れているように見えるが、切断面を変えて横断面図とした図4を見ると分かるように、ケース管100内における外周側と中心側を交互に通過する互いに逆向きの二つの螺旋を描いた特殊な流れが形成されている。
【0045】
図11は前記図3におけるA-A線断面図、図12は前記図3におけるB-B線断面図、図13は前記図3におけるC-C線断面図、図14は前記図3におけるD-D線断面図であり、これらの図において黒矢印で示した流れが、ケース管100内でチューブ200外を流れる第2流体の流れを示す。以下、これらの図に基づいてケース管100内でチューブ200外を流れる第2流体の流れをより詳細に説明する。
【0046】
まず、前記第2流体入口115から導入された第2流体は、前記バッフル300の一方の端部に形成された前記入口側整流板331,341によって図示する左右方向に分岐し、前記螺旋板330および前記逆螺旋板340の傾斜に沿って、前記ケース管100内における外周側(前記胴体110と前記シャフト310,320との間)を通過していく(図11参照)。
【0047】
この図に示すように、前記入口側整流板350はほぼ直角をなすように2つの板状片を結合した逆V字型をしており、第2流体入口115の軸線上に逆V字の角が合致するように配置されているため、スムーズに図示する左右方向に第2流体の流れを分岐させることができる。
【0048】
次に、外周側を通過した第2流体は、前記螺旋板330および前記逆螺旋板340の傾斜に沿って合流し、前記ケース管100内における中心側(前記胴体110の中心軸,前記シャフト310,320同士の間)を通過していく(図12参照)。
【0049】
続いて、中心側を通過した第2流体は、前記螺旋板330および前記逆螺旋板340の傾斜に沿って図示する左右方向に分岐し、前記ケース管100内における外周側(前記胴体110と前記シャフト310,320との間)を通過していく(図13参照)。
【0050】
最後に、外周側を通過した第2流体は、前記螺旋板330および前記逆螺旋板340の傾斜に沿って合流し、前記ケース管100内における中心側(前記胴体110の中心,前記シャフト310,320同士の間)を通過した後、上方に位置する前記第2流体出口116から排出される。このとき、前記バッフル300の他方の端部に形成された前記出口側整流板360,360によって前記第2流体116の逆流が防がれている(図14参照)。
【0051】
なお、前記出口側整流板360,360は2つの板状片を離間して配置し、前記第2流体出口116方向に向けて広がる逆ハの字型をしているため、第2流体出口116付近の第2流体の流れを制御してスムーズに前記第2流体出口116から第2流体を排出することができる。
【0052】
このように、ケース管100内を区画して流体の流れを制御するバッフル300を螺旋板330と逆螺旋板340を一体に結合した形状で構成し、前記ケース管100内でチューブ200外を流れる流体が互いに逆向きの螺旋状に流れる特殊な螺旋構造としたことで、従来発明のようにバッフル板の角部分が存在しないため流れの淀みを生じることなく、且つ分岐と合流を繰り返すことで適度な乱流効果を発揮して優れた熱交換効率を得ることができる。
【符号の説明】
【0053】
1 シェルアンドチューブ型熱交換器、10 熱交換ユニット、100 ケース管、110 胴体、111 開口縁、112 フランジ、113 開口縁、114 フランジ、115 第2流体入口、116 第2流体出口、120 脚部、130 ガスケット、140 締結部品、150 手前側蓋体、151 第1流体入口、152 第1流体出口、153 隔壁、160 奥側蓋体、200 チューブ、210 手前側固定板、220 奥側固定板、300 バッフル、301 挿通孔、302 外周、303,304 交点、310,320 シャフト、330 螺旋板、340 逆螺旋板、350 入口側整流板、360 出口側整流板
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