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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158679
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】乗用型苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
A01C11/02 333Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063741
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】草本 英之
(72)【発明者】
【氏名】野村 勝
(72)【発明者】
【氏名】川田 誠
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
(72)【発明者】
【氏名】石井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩見 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】栗田 航
(72)【発明者】
【氏名】山本 直也
(72)【発明者】
【氏名】西風 聖也
【テーマコード(参考)】
2B063
【Fターム(参考)】
2B063AA04
2B063AA20
2B063AB01
2B063AB03
2B063AB08
2B063BA01
2B063BA02
2B063BA07
2B063CB20
(57)【要約】
【課題】走行車体の後方に苗植付装置を装着した乗用型苗移植機がある。耕盤が軟弱な湿田では、駆動が耕盤に沈み込んで空回りをして前進不能になり苗移植作業が行なえなくなるような事態が発生することがあった。そこで、湿田でも良好に苗移植作業が行なえる乗用型苗移植機を提供する。
【解決手段】駆動輪6を装備した走行車体1に苗植付装置3を装着した乗用型苗移植機において、圃場面Dに接地して駆動輪6を上動させる脱出アシスト機構27を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪(6)を装備した走行車体(1)に苗植付装置(3)を装着した乗用型苗移植機において、圃場面(D)に接地して駆動輪(6)を上動させる脱出アシスト機構(27)を設けたことを特徴とする乗用型苗移植機。
【請求項2】
圃場面検出センサ(25,70)の走行車体(1)が沈み込んでいることの検出にて脱出アシスト機構(27)を作動させることを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機。
【請求項3】
圃場面検出センサ(25)を走行車体(1)前部に基部を枢支し斜め後方下方に向けて設けたセンサアーム(25a)と該センサアーム(25a)先端に回転自在に設けたセンサローラ(25b)とセンサアーム(25a)の上下作動を検出するセンサ(25c)にて構成したことを特徴とする請求項2に記載の乗用型苗移植機。
【請求項4】
走行車体(1)の前後傾斜を検出する傾斜センサ(71)の走行車体(1)後部が低く所定値以上に後傾したことの検出にて脱出アシスト機構(27)を作動させることを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機。
【請求項5】
走行車体(1)後部に昇降用リンク装置(2)で苗植付装置(3)を装着し、昇降用リンク装置(2)基部に設けた昇降用リンク装置(2)の回動位置を検出するセンサ(72)の苗植付装置(3)が所定量以上に上昇したことの検出にて脱出アシスト機構(27)を作動させることを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機。
【請求項6】
脱出アシスト機構(27)を走行車体(1)に基部を枢支した脱出アーム(27b)と該脱出アーム(27b)の先端に設けた押圧部材(27c)とピストン上端部が走行車体(1)に連結されシリンダ下端部が脱出アーム(27b)に連結された上下作動用シリンダ(27d)にて構成したことを特徴とする請求項1~請求項5の何れか1項に記載の乗用型苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体に苗植付装置を装着した乗用型苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の後方に苗植付装置を装着した乗用型苗移植機がある。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-036919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
耕盤が軟弱な湿田では、駆動が耕盤に沈み込んで空回りをして前進不能になり苗移植作業が行なえなくなるような事態が発生することがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、湿田でも良好に苗移植作業が行なえる乗用型苗移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、駆動輪6を装備した走行車体1に苗植付装置3を装着した乗用型苗移植機において、圃場面Dに接地して駆動輪6を上動させる脱出アシスト機構27を設けた乗用型苗移植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、駆動輪6の近くの圃場面Dに接地して駆動輪6を上動させる脱出アシスト機構27を設けたので、走行車体1が沈み込んだ場合に、脱出アシスト機構27が駆動輪6の近くの圃場面Dに接地して駆動輪6を上動させて沈み込んだ状態から脱出アシストし、駆動輪6の推進力で走行車体1は進行して沈み込んだ状態から脱出することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、圃場面検出センサ25,70の走行車体1が沈み込んでいることの検出にて脱出アシスト機構27を作動させる請求項1に記載の乗用型苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、圃場面検出センサ25を走行車体1前部に基部を枢支し斜め後方下方に向けて設けたセンサアーム25aと該センサアーム25a先端に回転自在に設けたセンサローラ25bとセンサアーム25aの上下作動を検出するセンサ25cにて構成した請求項2に記載の乗用型苗移植機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、走行車体1の前後傾斜を検出する傾斜センサ71の走行車体1後部が低く所定値以上に後傾したことの検出にて脱出アシスト機構27を作動させる請求項1に記載の乗用型苗移植機である。
【0011】
請求項5記載の発明は、走行車体1後部に昇降用リンク装置2で苗植付装置3を装着し、昇降用リンク装置2基部に設けた昇降用リンク装置2の回動位置を検出するセンサ72の苗植付装置3が所定量以上に上昇したことの検出にて脱出アシスト機構27を作動させる請求項1に記載の乗用型苗移植機である。
【0012】
請求項6記載の発明は、脱出アシスト機構27を走行車体1に基部を枢支した脱出アーム27bと該脱出アーム27bの先端に設けた押圧部材27cとピストン上端部が走行車体1に連結されシリンダ下端部が脱出アーム27bに連結された上下作動用シリンダ27dにて構成した請求項1~請求項5の何れか1項に記載の乗用型苗移植機である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明における実施の形態の乗用型田植機の側面図である。
図2】本発明における実施の形態の乗用型田植機の要部の底面図である。
図3】本発明における実施の形態の乗用型田植機の要部の平面図である。
図4】本発明における実施の形態の乗用型田植機のステップフロア12前部の斜視図である。
図5】本発明における実施の形態の乗用型田植機の前部カバー28の構成説明図である。
図6】本発明における実施の形態の乗用型田植機の前輪支持ケース14の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の乗用型苗移植機の一実施形態である6条植え乗用型田植機について図面に基づき説明する。
【0015】
<全体構成>
乗用型田植機は、走行車体1後部に昇降用リンク装置2で苗植付装置3を装着すると共に、施肥装置4を設けている。走行車体1は、駆動輪である左右各一対の駆動前輪5,5及び駆動後輪6,6を有する四輪駆動車両である。
なお、本明細書では、乗用型田植機の前進方向に向かって左右をそれぞれ左側と右側といい、前進方向を前側、後進方向を後側という。
【0016】
<走行車体1>
走行車体1は、左右フレーム7,7にミッションケース8とエンジン9が配設されており、該ミッションケース8の後部側面に油圧ポンプがミッションケース8と一体に組み付けられ、ミッションケース8の前部上方にステアリングポスト10が突設されている。
【0017】
そして、ステアリングポスト10の上端部にステアリングハンドル11が設けられている。車体の上部には操縦用のフロアとなるステップフロア12が左右フレーム7,7に取り付けられ、車体中央上部に操縦席13が設置されている。ステアリングハンドル11の右側には変速レバーが設けられ、操縦席13の右側には畦クラッチレバーが設けられている。
【0018】
左右駆動前輪5,5は、ミッションケース8の側方に向きを変更可能に設けた前輪支持ケース14,14に軸支されている。
【0019】
ミッションケース8後壁のフランジ面とリヤケース15前壁を左右フレーム16,16にて連結し、左右駆動後輪6,6がリヤケース15から左右に突設された左右後輪軸17,17に設けられている。
【0020】
エンジン9の回転動力は、ベルト伝動装置にて油圧式無段変速装置(HST)の入力軸に伝えられ、HSTの出力軸からミッションケース8内に伝えられる。
【0021】
ミッションケース8内のギア変速装置で変速された駆動力は、前輪デフを経由して左右前輪軸18,18に伝動されて、左右駆動前輪5,5を駆動回転する。
【0022】
そして、走行車体1後部に設けたPTO伝動ケースにミッションケース8から駆動軸を介して駆動力が伝達され、該PTO伝動ケースから施肥駆動機構を介して施肥装置4の各肥料繰出部19に駆動力が伝達されると共に、植付伝動軸を介して苗植付装置3に駆動力が伝達される。
【0023】
ステップフロア12後部に上方に高く構成した車体カバー20を設け、該車体カバー20の上部に操縦席13を設置し、車体カバー20内にエンジン9の左右に並列して配置した左右燃料タンク21,21を設ける。左右燃料タンク21,21は、機体左右方向に並列して配置しているので、機体の左右バランスが良い。
【0024】
そして、左右燃料タンク21,21の底部に連通管を設けて、左右燃料タンク21,21を1つの燃料タンクとし、片方の燃料タンク21の上部に供給管21aの基部を連通し、該供給管21aをステップフロア12の下方を機体前端部まで這わせて設けている。エンジン9前方のステップフロア12上面に燃料供給開口22aを設け、該燃料供給開口22aに燃料供給開閉蓋22bを後部枢支軸にて開閉自在に設ける。燃料供給開口22a及び燃料供給開閉蓋22bには、対向する部位にマグネット22cを設けて、閉じた状態で保持できる構成としている。燃料供給開口22aに供給管21aの先端部を臨ませて、先端部を燃料キャップで開閉自在とし、機体前方から容易に燃料を供給できる。
【0025】
走行車体1前部の中央部には、圃場面検出センサである泥面検出センサ25が設けられている。
【0026】
泥面検出センサ25は、左右フレーム7,7前端部に固定したエンジン9を搭載するエンジンベース23の底面に基部が溶接で固定されたセンサ支持部材24に基部を枢支したセンサアーム25aを斜め後方下方に向けて設け、該センサアーム25aを下方に向けて付勢して、センサアーム25a先端にセンサローラ25bを回転自在に設ける。センサアーム25a基部には、センサアーム25aの回動角度を検出するセンサである深さ検出ポテンショメータ25cを設ける。
【0027】
圃場内で左右駆動前輪5,5及び駆動後輪6,6は耕盤Kに接地して駆動回転して機体が進行し、センサローラ25bは機体の前進にともなって回転しながら泥面Dに接当している。
【0028】
従って、耕盤Kが軟弱で左右駆動前輪5,5及び駆動後輪6,6が耕盤Kに沈み込んでいるような場合、センサローラ25bは泥面Dに押し上げられセンサアーム25aの回動角度を検出する深さ検出ポテンショメータ25cが設定値未満の角度を検出する。そして、該深さ検出ポテンショメータ25cの検出により、機体に設けた制御装置26に機体が沈み込んでいる情報を出力する。
【0029】
走行車体1後部の中央部には、脱出アシスト機構27が設けられている。
【0030】
脱出アシスト機構27は、ミッションケース8後壁とリヤケース15前壁を連結する左右フレーム16,16の前部に両者を貫通して設けた回動支持軸27aと、該回動支持軸27aに基部が枢支された脱出アーム27bと、該脱出アーム27b先端に固定された側面視が前方程上方に傾斜した底面を有する三角形状で平面視が四角形状の合成樹脂をブロー成型した押圧部材27cと、左右フレーム7,7の後部に設けた両者を連結する横フレーム7aにピストン上端が連結されシリンダ下端が脱出アーム27bに連結された上下作動用電動シリンダ27dにて構成される。
【0031】
走行車体1のフレームである左右フレーム16,16に脱出アーム27b基部を枢支しているので、簡易構成で剛性(強度)を確保できる。
【0032】
走行車体1上部の左右フレーム7,7にピストン上端を連結しシリンダ下端を脱出アーム27bに連結した構成としているので、上下作動用電動シリンダ27dのシリンダ下端が下方位置となっており、進行中に水田圃場の泥水や泥土が飛散してもピストンに付着し難くて、上下作動用電動シリンダ27dの耐久性が良い。
【0033】
脱出アシスト機構27は、その上下作動用電動シリンダ27dが縮小した待機位置で、脱出アーム27bが左右フレーム16,16間に嵌まり込んで収納され、押圧部材27cがリヤケース15下端よりも上方に位置する。
【0034】
従って、脱出アシスト機構27は、待機位置で脱出アーム27bが左右フレーム16,16間に嵌まり込んで収納され、押圧部材27cがリヤケース15下端よりも上方に位置するので、脱出アシスト機構27を装着していない場合と同等の走行車体1の最低地上高を維持しており、水田圃場での走行性能が良い。
【0035】
そして、軟弱な耕盤Kの圃場で走行車体1が進行していて、左右駆動前輪5,5及び駆動後輪6,6が耕盤Kに沈み込んだ場合、センサローラ25bが泥面Dに押し上げられセンサアーム25aの回動角度を検出する深さ検出ポテンショメータ25cが設定値未満の角度を検出して、制御装置26に機体が沈み込んでいる情報を出力する。
【0036】
制御装置26は、該機体が沈み込んでいる情報に基づいて、上下作動用電動シリンダ27dを伸長し、脱出アーム27bを回動支持軸27a回りに下方に角度α回動させる。
【0037】
すると、接地面積の大きい押圧部材27cが泥面Dに接当して、左右駆動後輪6,6が設けられている走行車体1後部を持ち上げるように作用して沈み込んだ状態から脱出アシストし、左右駆動前輪5,5及び駆動後輪6,6の推進力で走行車体1は進行して沈み込んだ状態から脱出することができる。
【0038】
押圧部材27cは、合成樹脂をブロー成型した平面視で左右方向に長い四角形状の構成なので、軽くて接地面積が広くて、接地押圧時に泥面Dに潜り込みにくくて大きな車体押し上げ力を得ることができる。更に、側面視で前方程上方に傾斜した底面を有する三角形状としているので、下降して泥面Dに接当する際に接触抵抗を減少させることができる。
【0039】
以上要するに、走行車体1前部に設けた泥面検出センサ25が走行車体1の沈み込みを検出すると、制御装置26は該泥面検出センサ25による走行車体1が沈み込んでいる出力情報に基づいて、脱出アシスト機構27を作動させて左右駆動後輪6,6が設けられている走行車体1後部を持ち上げて沈み込んだ状態から脱出アシストし、左右駆動前輪5,5及び駆動後輪6,6の推進力で走行車体1は進行して沈み込んだ状態から脱出することができる。
【0040】
走行車体1前部のエンジンベース23には、走行車体1前部のエンジン9や補器類(マフラー及びフライホイール等)を保護する前部カバー28が設けられている。
【0041】
前部カバー28は、上方が開放された箱状でエンジンベース23の底面に下方から覆うように固着されている。前部カバー28の形状は、側面視で底面前部が上方に傾斜した船形状で、正面視で左側辺が右側辺よりも急勾配の三角形状をしている。
【0042】
乗用型田植機が前進で畦や道路から圃場に入る際に、走行車体1は前方が低い前傾姿勢となるので、走行車体1前部が圃場面に浸かる。そこで、走行車体1前部下面に前部カバー28を設けたので、該前部カバー28によりエンジン9や補器類が泥水や泥土に浸かるのを防止できる。
【0043】
また、前部カバー28は、側面視で底面前部が上方に傾斜した船形状で、正面視で左側辺が右側辺よりも急勾配の三角形状をしているので、泥水や泥土から受ける抵抗が小さ。
【0044】
左右駆動前輪5,5を設けた左右前輪支持ケース14,14は、ミッションケース8左右両側に各々スペーサ29,29を介して取り付けられており、該スペーサ29,29にて各々キャスタ角βが付けられて装備されている。
【0045】
従って、走行車体1は、前バランスでホイルベースを長く構成でき、水田圃場での走行性能が良い乗用型田植機を得ることができる。
【0046】
また、ステアリングハンドル11を切ると、旋回内側の駆動前輪5が下がるようになり、旋回内側の駆動前輪5を圃場にくい込ませて駆動力を上げることができ旋回性能が向上する。
【0047】
なお、スペーサ29,29を変更することにより、キャスタ角βは自由に設定できる。
【0048】
そして、前輪支持ケース14は、ミッションケース8にスペーサ29を介して固定された上部固定ケース14aと該上部固定ケース14aに対してステアリングハンドル11の操向操作にて連携機構30を介して操向回動される下部操向回動ケース14bで構成される。
【0049】
上部固定ケース14aの下部には、下部操向回動ケース14bの上端部が内嵌合した状態で嵌まっており、下部操向回動ケース14bは上部固定ケース14aに対して自由に上下動できる構成となっている。
【0050】
ミッションケース8から側方に向けて設けられた前輪駆動軸31の先端に形成されたスプライン溝に上駆動ベベルギヤ32aが嵌合されて設けられている。そして、該上駆動ベベルギヤ32aに噛合する上従動ベベルギヤ32bが上部固定ケース14aに設けたベアリング33caにて回転自在に設けられており、この上従動ベベルギヤ32bの内部に設けた孔にスプライン溝を形成し、該スプライン溝に嵌合するスプライン溝を形成した縦前輪伝動軸34が上従動ベベルギヤ32bを貫通した状態で設けられている。
【0051】
縦前輪伝動軸34の下端に形成されたスプライン溝に下駆動ベベルギヤ32cが嵌合されて設けられている。そして、該下駆動ベベルギヤ32cに噛合する下従動ベベルギヤ32dと一体回転する前輪軸18が下部操向回動ケース14bに設けたベアリング33cbにて回転自在に設けられており、この前輪軸18に駆動前輪5が設けられている。
【0052】
従って、ミッションケース8から前輪駆動軸31・上駆動ベベルギヤ32a・上従動ベベルギヤ32b・縦前輪伝動軸34・下駆動ベベルギヤ32c・下従動ベベルギヤ32d・前輪軸18を介して、駆動前輪5は駆動回転する。
【0053】
上部固定ケース14aと下部操向回動ケース14bとの間には弾性部材としてバネ常数の大きい圧縮バネ35aとバネ常数の小さい圧縮バネ35bとが設けられている。圧縮バネ35a・35bの配置構成を更に詳述すると、上部固定ケース14aに設けたベアリング33cに支持された上部バネ受け36aと下部操向回動ケース14bに設けたベアリング33dに支持された下部バネ受け36bとの間に圧縮バネ35a・35bは設けられており、バネ常数の大きい圧縮バネ35aの内側にバネ常数の小さい圧縮バネ35bが配置された構成となっている。尚、上部バネ受け36a内部にはスプライン溝が形成されており、該スプライン溝に縦前輪伝動軸34のスプライン溝が係合した構成となっている。
【0054】
従って、例えば、駆動前輪5の接地面に凸部があって、駆動前輪5が該凸部に乗り上げた場合には、駆動前輪5が上方に押し上げられようとするが、この駆動前輪5を上方に押し上げる力にて前記圧縮バネ35a・35bが縮み、駆動前輪5及び下部操向回動ケース14b及び縦前輪伝動軸34が上方に移動して、上部固定ケース14aが上下動することが防止され、駆動前輪5の接地面に凸部があっても機体の水平姿勢が維持される。逆に、駆動前輪5の接地面に凹部があって、駆動前輪5が該凹部に落ち込んだ場合には、駆動前輪5が下方に下がろうとするが、この駆動前輪5が下方に下がるのを前記圧縮バネ35a・35bの伸びにより、駆動前輪5及び下部操向回動ケース14b及び縦前輪伝動軸34が下方に移動して、上部固定ケース14aが上下動することが防止され、駆動前輪5の接地面に凹部があっても機体の水平姿勢が維持される。
【0055】
一方、上部固定ケース14a上部内部に受リブ37を一体的に設け、該受リブ37に設けたネジ孔に接当板38の上面に基部が溶接固定された調節ボルト39をねじ込んで、受リブ37上面側で固定ナット40にて固定している。そして、接当板38は、縦前輪伝動軸34上端に接当して、下部操向回動ケース14bの上動位置を規制し、駆動前輪5の上下動量を規制する。
【0056】
従って、調節ボルト39を受リブ37に設けたネジ孔にねじ込む量を調節して接当板38の上下位置を調節することにより、下部操向回動ケース14bの上動位置を調節でき、駆動前輪5の上下動量を調節することができる。よって、圃場条件に応じて、駆動前輪5の上下動量を調節して圃場適応性を向上させることができる。
【0057】
上部固定ケース14a上部に設けた穴は、合成樹脂製の蓋41で密封されている。
【0058】
なお、上記実施形態では、接当板38の上下位置を調節することにより、駆動前輪5の上下動量を調節する例をしましたが、上部固定ケース14aの下部に嵌まり込んだ下部操向回動ケース14bの上端部を外筒と内筒の二重筒構造とし、該外筒上端部に下部バネ受け36bを設け、外筒内周に設けたネジ孔に内筒外周に設けたネジ部を螺合してネジの回動にて両者が伸縮する構成として、圧縮バネ35a・35bのセット長さを変更するように構成することにより、サスペンション荷重を変更して圃場適応性を向上させても良い。
【0059】
<苗植付装置3>
苗植付装置3は、走行車体1に昇降用リンク装置2で昇降自在に装着されている。
【0060】
走行車体1に基部が回動自在に設けられた一般的なリフトシリンダーのピストン上端部を昇降用リンク装置2に連結し、走行車体1に設けた油圧ポンプにて昇降バルブを介してリフトシリンダーに圧油を供給・排出して、リフトシリンダーのピストンを伸進・縮退させて昇降用リンク装置2に連結した苗植付装置3が上下動されるように構成されている。
【0061】
苗植付装置3は、昇降用リンク装置2の後部にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース50と、該植付伝動ケース50に設けられた支持部材に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台51と、植付伝動ケース50の後端部に装着され、苗載台51の下端より1株ずつ苗を圃場に植え付ける苗植付具52と、植付伝動ケース50の下部にその後部が枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体であるセンター(センサ)フロート53とサイドフロート54等にて構成されている。センターフロート53とサイドフロート54は、苗植付具52にて苗が植付けられる圃場の前方を整地すべく設けられている。
【0062】
植付伝動軸は、両端にユニバーサルジョイントを有し、ミッションケース8からの動力を苗植付装置3の植付伝動ケース50に伝達すべく設けている。
【0063】
そして、センターフロート53の前部に設けられた迎い角センサは、苗植付装置3の対地高さを検出するものであり、該迎い角センサの検出値に基づいて、制御装置により昇降バルブを制御してリフトシリンダーにて苗植付装置3の上下位置を制御するように構成されている。
【0064】
即ち、センターフロート53の前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられたことを迎い角センサにより検出した時には油圧ポンプにてミッションケース8内から汲み出された圧油をリフトシリンダーに送り込んでピストンを突出させて昇降用リンク装置2を上動させて苗植付装置3を所定位置まで上昇させ、また、センターフロート53の前部が適正範囲以下に下がったことを迎い角センサにより検出した時にはリフトシリンダー内の圧油をミッションケース8内に戻して昇降用リンク装置2を下動させて苗植付装置3を所定位置まで下降させる。
【0065】
そして、センターフロート53の前部が適正範囲にあるとき(迎い角センサの検出値が適正範囲にあり、苗植付装置3が適正な対地高さである時)には、リフトシリンダー内の圧油の出入りを止めて苗植付装置3を一定位置に保持させている。
【0066】
このように、センターフロート53を苗植付装置3の自動高さ制御のための接地センサとして用いている。
【0067】
<施肥装置4>
施肥装置4は、肥料タンク60内の肥料を各肥料繰出部19によって一定量ずつ下方に繰り出し、その繰り出された肥料を送風機により各施肥ホース61を通して各施肥ガイド62まで移送し、該各施肥ガイド62の前側に設けた作溝体によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込んで圃場中に粒状肥料を施肥する。
【0068】
<他の実施形態>
【0069】
(1)上記実施形態では、脱出アシスト機構27を作動させる為の走行車体1が沈み込んでいることを検出する手段として、泥面Dに接地して回転するセンサローラ25bを有する泥面検出センサ25を用いた例を示したが、走行車体1が沈み込んでいることを検出する手段として下記の形態でも良い。
【0070】
1)走行車体1前部に圃場面検出センサとしての超音波センサ70を設けて、該超音波センサ70にて泥面Dを検出して、走行車体1の沈み込みを検出して脱出アシスト機構27を作動させる。
【0071】
2)走行車体1後部に前後傾斜を検出する傾斜センサ71を設けて、走行車体1が後部が低く所定値以上に後傾したことを検出すると、走行車体1が沈み込んでいると判断して(左右駆動後輪6,6は大径であって小径の左右駆動前輪5,5よりも駆動力が大きいので、左右駆動後輪6,6が先に耕盤Kに沈み込んでいく)、脱出アシスト機構27を作動させる。
【0072】
3)前述のように田植作業中、センター(センサ)フロート53とサイドフロート54が泥面Dに接地して進行するようにリフトシリンダーが作動して昇降用リンク装置2にて苗植付装置3が自動上下動制御される。従って、耕盤Kに左右駆動後輪6,6が沈み込んでいくと、自動上下動制御が作動して苗植付装置3が自動上動制御されて昇降用リンク装置2は上方に回動する。そこで、昇降用リンク装置2の基部にセンサとしてのポテンショメータ72を設けて、昇降用リンク装置2の回動位置を検出するようにし、耕盤Kに左右駆動後輪6,6が沈み込んで自動上下動制御が作動して苗植付装置3が自動上動制御されて昇降用リンク装置2が所定量以上に上方に回動すると、脱出アシスト機構27を作動させる。
【0073】
4)走行車体1にGPSを設けると共に、左右駆動後輪6,6の回転を検出するセンサを設けて、左右駆動後輪6,6が回転しているにもかかわらず走行車体1が進行していないことをGPSが検出すると、脱出アシスト機構27を作動させる。
【0074】
5)ステアリングポスト10上端部の操作パネルに脱出アシスト機構27を作動させる手動操作スイッチを設け、走行車体1が沈み込んでいると操縦者が判断した時に、該手動操作スイッチを操作して脱出アシスト機構27を作動させる。
【0075】
(2)脱出アシスト機構27が作動する時、同時に左右駆動前輪5,5や左右駆動後輪6,6のデフロックを作動させると、更に、走行車体1の沈み込んだ状態からの脱出が容易となる。
【符号の説明】
【0076】
1 走行車体
2 昇降用リンク装置
3 苗植付装置
6 駆動輪(駆動後輪)
25 圃場面検出センサ(泥面検出センサ)
25a センサアーム
25b センサローラ
25c センサ(深さ検出ポテンショメータ)
27 脱出アシスト機構
27b 脱出アーム
27c 押圧部材
27d 上下作動用シリンダ(上下作動用電動シリンダ)
70 圃場面検出センサ(超音波センサ)
71 傾斜センサ
72 センサ(ポテンショメータ)
D 圃場面(泥面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6