(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158705
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】経路探索装置、経路探索方法、及び、経路探索プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20221006BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G09B29/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063783
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 英城
(72)【発明者】
【氏名】費 霄霄
(72)【発明者】
【氏名】千葉 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】御厨 裕
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
【Fターム(参考)】
2C032HB22
2C032HC08
2C032HC14
2C032HD16
2C032HD21
2F129AA02
2F129BB03
2F129CC03
2F129CC16
2F129CC25
2F129DD20
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF12
2F129HH02
2F129HH20
2F129HH21
(57)【要約】
【課題】車両等に乗り換えるための待機時間を考慮した正確な経路探索を行うことができる経路探索装置、経路探索方法、及び、経路探索プログラムを提供する。
【解決手段】経路探索装置11は、乗換地点を決定する乗換地点決定部64、乗換経路を決定する乗換経路決定部65、乗換地点到着時刻を推定する乗換地点到着時刻推定部(所要時間推定部66)、乗換地点における輸送車両の需要を推定する車両需要推定部67、乗換地点における輸送車両の供給を推定する車両供給推定部68、乗換地点における待機時間を推定する待機時間推定部69、待機時間を含めた目的地到着時刻を推定する時刻推定部70、及び、乗換経路とともに、待機時間を含めた目的地到着時刻を案内する案内データ73を作成する案内データ作成部63を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指定された出発地から指定された目的地に到着する経路を探索する経路探索装置であって、
前記目的地に応じて、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関から、任意の経路に沿った不定期な輸送をする輸送車両に乗り換える乗換地点を決定する乗換地点決定部と、
前記乗換地点を経由し、前記輸送車両に乗り換えて前記目的地に到着する乗換経路を決定する乗換経路決定部と、
前記乗換経路と、予め指定された前記出発地からの出発時刻または前記目的地への到着時刻と、に基づいて、前記乗換地点に到着する乗換地点到着時刻を推定する乗換地点到着時刻推定部と、
前記乗換地点到着時刻に基づいて、前記乗換地点における前記輸送車両の需要を推定する車両需要推定部と、
前記乗換地点到着時刻に基づいて、前記乗換地点における前記輸送車両の供給を推定する車両供給推定部と、
前記乗換地点における前記輸送車両の前記需要及び前記供給に基づいて、前記乗換地点における待機時間を推定する待機時間推定部と、
前記待機時間を含めた前記目的地への到着時刻である目的地到着時刻、または、前記待機時間を含めた前記出発地からの出発時刻である出発地出発時刻を推定する時刻推定部と、
前記出発地から前記目的地に到着する経路の探索結果として、前記乗換経路とともに、前記待機時間を含めた前記目的地到着時刻または前記待機時間を含めた前記出発地出発時刻を案内する案内データを作成する案内データ作成部と、
を備える経路探索装置。
【請求項2】
請求項1に記載の経路探索装置であって、
前記乗換地点決定部は、前記乗換地点を、前記交通機関から前記輸送車両に乗り換え可能な地点のうち、前記目的地から予め定める所定範囲内に含まれる1または複数の地点に決定する、
経路探索装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の経路探索装置であって、
前記乗換経路決定部は、前記乗換経路を、前記乗換地点に到着後、前記乗換地点から前記輸送車両によって最も短い時間で前記目的地に到着する経路に決定する、
経路探索装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
地点を表すノードと、前記ノードを結ぶ経路を表すリンクと、前記リンクに沿った移動に係るコストと、を用いて交通網を表した交通網データベースを備え、
前記乗換地点、前記乗換経路、及び、前記乗換地点到着時刻は、前記交通網データベースを参照することにより決定される、
経路探索装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
前記需要は、前記乗換地点到着時刻に前記乗換地点において必要とされる前記輸送車両の数量である、
経路探索装置。
【請求項6】
請求項5に記載の経路探索装置であって、
前記車両需要推定部は、前記需要を、前記乗換地点の混雑度に基づいて推定する、
経路探索装置。
【請求項7】
請求項6に記載の経路探索装置であって、
前記混雑度は、過去に、前記乗換地点において、前記乗換地点到着時刻を含む所定の時間帯に利用された前記輸送車両の数量である、
経路探索装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
前記車両供給推定部は、前記供給を、1または複数の前記輸送車両が前記乗換地点に帰還するまでの予測時間を表す帰還予測時間を算出することによって推定する、
経路探索装置。
【請求項9】
請求項8に記載の経路探索装置であって、
前記車両供給推定部は、前記供給を、前記輸送車両の現在位置と、前記輸送車両の稼働状態を表すステータス情報と、に基づいて推定する、
経路探索装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
前記待機時間推定部は、前記需要と前記供給に基づいて、前記輸送車両の過不足を推定し、
前記待機時間推定部は、前記待機時間を前記過不足に基づいて推定する、
経路探索装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
前記待機時間推定部は、前記乗換地点において前記輸送車両に乗り換えるために待機する順位である待機順位を推定し、
前記待機時間推定部は、1または複数の前記輸送車両が前記乗換地点に帰還する順位である帰還順位を推定し、
前記待機時間推定部は、前記待機順位に相当する前記帰還順位の前記輸送車両が前記乗換地点に帰還するまでの予測時間を用いて、前記待機時間を推定する、
経路探索装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
前記案内データ作成部は、前記探索結果として複数の前記乗換経路があるときに、前記待機時間を含めた前記目的地到着時刻または前記待機時間を含めた前記出発地出発時刻に基づいて、複数の前記乗換経路の表示順序を指定する前記案内データを作成し、
前記案内データ作成部は、前記探索結果を取得して前記探索結果を表示する経路探索端末に対して前記案内データを送信することにより、前記経路探索端末の表示画面に、前記待機時間を含めた前記目的地到着時刻が早い順で、または、前記待機時間を含めた前記出発地出発時刻が遅い順で複数の前記乗換経路を表示させる、
経路探索装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の経路探索装置であって、
前記乗換経路に対して承認操作が検出されたときに、前記輸送車両の配車を管理する配車管理装置に対して、前記乗換経路が案内する前記乗換地点及び前記乗換地点到着時刻に、前記輸送車両を配車させるための予約を登録する、
経路探索装置。
【請求項14】
指定された出発地から指定された目的地に到着する経路を探索するために、経路探索装置が実行する経路探索方法であって、
前記目的地に応じて、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関から、任意の経路に沿った不定期な輸送をする輸送車両に乗り換える乗換地点を決定し、
前記乗換地点を経由し、前記輸送車両に乗り換えて前記目的地に到着する乗換経路を決定し、
前記乗換経路と、予め指定された前記出発地からの出発時刻または前記目的地への到着時刻と、に基づいて、前記乗換地点に到着する乗換地点到着時刻を推定し、
前記乗換地点到着時刻に基づいて、前記乗換地点における前記輸送車両の需要を推定し、
前記乗換地点到着時刻に基づいて、前記乗換地点における前記輸送車両の供給を推定し、
前記乗換地点における前記輸送車両の前記需要及び前記供給に基づいて、前記乗換地点における待機時間を推定し、
前記待機時間を含めた前記目的地への到着時刻である目的地到着時刻、または、前記待機時間を含めた前記出発地からの出発時刻である出発地出発時刻を推定し、
前記出発地から前記目的地に到着する経路の探索結果として、前記乗換経路とともに、前記待機時間を含めた前記目的地到着時刻または前記待機時間を含めた前記出発地出発時刻を提供する、
経路探索方法。
【請求項15】
指定された出発地から指定された目的地に到着する経路を探索する経路探索を、経路探索装置に実行させる経路探索プログラムであって、
前記経路探索装置に、
前記目的地に応じて、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関から、任意の経路に沿った不定期な輸送をする輸送車両に乗り換える乗換地点を決定させ、
前記乗換地点を経由し、前記輸送車両に乗り換えて前記目的地に到着する乗換経路を決定させ、
前記乗換経路と、予め指定された前記出発地からの出発時刻または前記目的地への到着時刻と、に基づいて、前記乗換地点に到着する乗換地点到着時刻を推定させ、
前記乗換地点到着時刻に基づいて、前記乗換地点における前記輸送車両の需要を推定させ、
前記乗換地点到着時刻に基づいて、前記乗換地点における前記輸送車両の供給を推定させ、
前記乗換地点における前記輸送車両の前記需要及び前記供給に基づいて、前記乗換地点における待機時間を推定させ、
前記待機時間を含めた前記目的地への到着時刻である目的地到着時刻、または、前記待機時間を含めた前記出発地からの出発時刻である出発地出発時刻を推定させ、
前記出発地から前記目的地に到着する経路の探索結果として、前記乗換経路とともに、前記待機時間を含めた前記目的地到着時刻または前記待機時間を含めた前記出発地出発時刻を提供させる、
経路探索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地に到着するための経路を探索する経路探索装置、経路探索方法、及び、経路探索プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、タクシーまたはレンタカーに乗り換え可能な駅を示す属性情報を予め保有することで、タクシー等による移動を含む最適な経路を探索できるようにした経路探索方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指定された出発地から指定された目的地に到着する経路を探索する経路探索装置は、目的地に到着する時刻をできる限り正確に推定して、経路を案内することが望まれる。しかし、従来の経路探索方法及び経路探索装置は、列車から車両に乗り換える経路を経路探索結果として提案するときに、車両に乗り換える際に要する待機時間を何ら考慮していない。このため、従来の経路探索装置が案内する経路で移動すると、目的地への実際の到着が予定した時刻よりも遅くなってしまうことが多い。
【0005】
例えば、ある駅からタクシーに乗り換える経路が最短経路であるが、この最短経路の駅ではタクシーの供給が足りず、実際には長時間待たなければタクシーに乗り換えられないことがある。また、最短経路上にない近隣の他駅ではタクシーの供給が潤沢であり、ほぼ待たずにタクシーに乗り換えることができ、この駅で乗り換えれば、最短経路の駅でタクシーに乗り換えるよりも結果的に目的地に早く到着できるということもある。
【0006】
したがって、経路探索において、車両等に乗り換えるための待機時間を何ら考慮しないときには、案内する目的地への到着時刻が不正確であるという問題がある。
【0007】
本発明は、列車等から車両等に乗り換える経路を探索するときに、車両等に乗り換えるための待機時間を考慮した正確な経路探索を行うことができる経路探索装置、経路探索方法、及び、経路探索プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、指定された出発地から指定された目的地に到着する経路を探索する経路探索装置である。この経路探索装置は、乗換地点決定部、乗換経路決定部、乗換地点到着時刻推定部、車両需要推定部、車両供給推定部、待機時間推定部、時刻推定部、及び、案内データ作成部を備える。乗換地点決定部は、目的地に応じて、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関から、任意の経路に沿った不定期な輸送をする輸送車両に乗り換える乗換地点を決定する。乗換経路決定部は、乗換地点を経由し、輸送車両に乗り換えて目的地に到着する乗換経路を決定する。乗換地点到着時刻推定部は、予め指定された出発時刻に基づいて、乗換地点に到着する乗換地点到着時刻を推定する。車両需要推定部は、乗換地点到着時刻に基づいて、乗換地点における輸送車両の需要を推定する。車両供給推定部は、乗換地点到着時刻に基づいて、乗換地点における輸送車両の供給を推定する。待機時間推定部は、乗換地点における輸送車両の需要及び供給に基づいて、乗換地点における待機時間を推定する。時刻推定部は、待機時間を含めた目的地への到着時刻である目的地到着時刻、または、待機時間を含めた出発地からの出発時刻である出発地出発時刻を推定する。案内データ作成部は、出発地から目的地に到着する経路の探索結果として、乗換経路とともに、待機時間を含めた目的地到着時刻または待機時間を含めた出発地出発時刻を案内する案内データを作成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、列車等から車両等に乗り換える経路を探索するときに、車両等に乗り換えるための待機時間を考慮した正確な経路探索を行うことができる経路探索装置、経路探索方法、及び、経路探索プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、経路探索システムの構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、経路探索端末の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、経路探索装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、交通網データベースの概要を示す説明図である。
【
図7】
図7は、経路探索システムで行われる経路探索のシーケンスチャートである。
【
図8】
図8は、経路探索装置が実行する各種処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、経路探索処理の具体例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、駅付近にある輸送車両を示す説明図である。
【
図11】
図11は、輸送車両の供給の推定方法、及び、待機時間の推定方法を示す説明図である。
【
図12】
図12は、案内データとその表示態様の一例を示す説明図である。
【
図13】
図13は、比較例の案内データとその表示態様の一例を示す説明図である。
【
図14】
図14は、変形例の経路探索方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、配車システムにおける経路探索端末及び配車管理装置の構成を示すブロック図である。
【
図17】
図17は、配車システムにおける探索結果表示画面の例を示す説明図である。
【
図18】
図18は、配車システムのシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、経路探索システム100の構成を示す説明図である。経路探索システム100は、出発地及び目的地が指定されたときに、その出発地から目的地に到着するための1または複数の経路を探索するシステムである。経路探索システム100は、1または複数のユーザ12の操作によって発生する経路探索要求72(
図7参照)に応じて、経路を探索し、その結果の一部または全部を、経路の探索を要求したユーザ12に提供する。
【0013】
「経路」とは、特定の地点である出発地から別の特定の地点である目的地に到着するために、通行し、走行し、または、飛行等する道筋をいう。したがって、経路には、人が通行する道路や車両が走行する道路の他、列車が走行する線路や駅、船舶が航行する海路や港、及び、航空機が飛行する航路や空港等が含まれる場合がある。経路に関して経路探索システム100が行う「探索」とは、演算等により、及び/または、データベースの参照もしくは検索等によって、出発地から目的地に至る1または複数の経路を特定することをいう。以下では、経路探索システム100が行う経路の探索を経路探索という。
【0014】
特に、本実施形態の経路探索システム100は、特別の条件設定がない限り、1つの交通機関を使用する経路の他、経路の途中で別の交通機関に乗り換える経路をも探索の対象とする。例えば、列車からタクシーに乗り換えることが必要な経路は、経路探索システム100の探索対象に含まれる。
【0015】
本実施形態においては、説明の便宜のため、経路探索システム100は、目的地に応じて、または、出発地及び目的地に応じて、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関から、任意の経路に沿った不定期な輸送をする交通機関に乗り換える経路を探索する。
【0016】
特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関とは、ユーザ12が利用可能な交通機関のうち、原則として、ユーザ12の利用の有無等に関わらず、輸送路及び輸送スケジュールが予め定められている交通機関をいう。例えば、バス、列車、船舶、及び、航空機は、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関である。以下では、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関を、定期交通機関という。また、定期交通機関の乗降が可能となる駅、停留所、港、及び、空港等を、単に「駅」という。
【0017】
任意の経路に沿った不定期な輸送をする交通機関とは、輸送路及び輸送スケジュールが予め定められておらず、ユーザ12の求めに応じて適宜に運行される交通機関をいう。例えば、タクシー、自動運転によりユーザ12を輸送する車両(自動運転車両)、及び、ユーザ12が運転する乗用車やレンタカー等は、任意の経路に沿った不定期な輸送をする交通機関である。任意の経路に沿った不定期な輸送をし得る交通機関は概ね車両であるから、以下では、任意の経路に沿った不定期な輸送をする交通機関を、単に輸送車両という。但し、経路探索システム100は、特別の条件設定がない限り、輸送車両以外の交通機関への乗り換えを含む経路を経路探索の対象から排除しない。
【0018】
以下では、輸送車両に乗り換える地点を乗換地点という。また、乗換地点を経由し、主装車両に乗り換えて目的地に到着する経路を乗換経路という。
【0019】
図1に示すように、経路探索システム100は、経路探索端末10と、経路探索装置11と、を備える。
【0020】
経路探索端末10は、経路探索システム100のユーザインタフェースである。ユーザ12は、経路探索端末10を用いて、出発地及び目的地、並びに、出発地からの出発時刻または目的地への到着時刻等の経路探索に必要な条件(以下、探索条件という)を指定する情報を入力する。本実施形態においては、出発地、目的地、及び、出発地からの出発時刻が経路の探索条件として予め指定されるものとする。経路探索システム100は、これらの探索条件に応じて経路探索を実行する。また、経路探索端末10は、経路探索の結果を、表示または音声等によって、経路探索を要求したユーザ12に提供する。
【0021】
経路探索端末10は、例えば、スマートフォン13(モバイルフォンまたはセルフォン)やその他のタブレットコンピュータ、または、パーソナルコンピュータ14等である。すなわち、経路探索端末10は、経路探索システム100の専用機器でなくても良く、ユーザ12が所有するデバイスが、プログラムにより、必要に応じて経路探索端末10を構成できる。本実施形態においては、ユーザ12が所有するスマートフォン13またはパーソナルコンピュータ14が経路探索端末10である。
【0022】
経路探索装置11は、経路探索システム100において経路探索を実行するコンピュータである。すなわち、経路探索装置11は経路探索サーバである。経路探索装置11は、通信ネットワーク15を介して、有線または無線により、必要に応じて経路探索端末10と接続される。通信ネットワーク15は、インターネット回線や電話回線等、1または複数の通信回線からなるネットワークである。
【0023】
経路探索端末10及び経路探索装置11は、いずれも1または複数のコンピュータによって構成され、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インタフェース(I/Oインタフェース)等を備える。また、経路探索端末10及び経路探索装置11は、経路探索に係る各種の制御を必要に応じて実行するようにプログラムされている。
【0024】
[経路探索端末の構成]
図2は、経路探索端末10の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、経路探索端末10は、通信機21、入出力部22、制御部23、及び、記憶部24を備える。
【0025】
通信機21は、通信ネットワーク15と接続する通信モジュールである。経路探索端末10は、通信ネットワーク15を介し、通信機21によって経路探索装置11と接続し、経路探索に係る情報やデータ等を送受信する。
【0026】
入出力部22は、入力及び出力を行うデバイス群である。入出力部22は、例えば、位置センサ26、マイク27、入力機器28、ディスプレイ29、及び/または、スピーカ30等を含む。
【0027】
位置センサ26は、例えばGPS(Global Positioning System)センサであり、位置センサ26の出力は出発地の位置情報の入力に使用される場合がある。また、出発地及び目的地等の探索条件は、マイク27を用いた音声入力によって入力可能である。入力機器28は、キーボード、ポインティングデバイス、または、スタイラス等であり、ソフトウェアによって実現されるものを含む。出発地及び目的地等の探索条件は、入力機器28の操作によって入力される。入力機器28は、ディスプレイ29と一体化され、いわゆるタッチパネルを構成する場合がある。ディスプレイ29は、経路探索に関し、探索条件を入力するための探索条件入力画面や、経路探索の結果(以下、単に探索結果という)を表示する探索結果表示画面91(
図12参照)を表示する。スピーカ30は、探索結果を音声で案内する場合がある。本実施形態では、探索結果表示画面91によって、経路探索の結果をユーザ12に提供する。
【0028】
制御部23は、CPU等の演算デバイスであり、経路探索端末10の動作を統括的に制御する。制御部23は、例えば、入力制御部31、出力制御部32、及び、経路探索要求作成部33として機能する。
【0029】
入力制御部31は、入出力部22を構成する入力デバイスを用いた入力操作に基づいて、経路探索端末10を動作せる。入力制御部31は、例えば経路探索に関して、出発地及び目的地等の探索条件を取得する。すなわち、入力制御部31は、探索条件を取得する探索条件取得部として機能する。なお、入力制御部31が、入出力部22の動作を監視し、探索条件を適宜取得する処理を、以下では、探索条件取得処理という。
【0030】
出力制御部32は、入出力部22を構成する出力デバイスの動作を制御する。出力制御部32は、表示画面を生成し、これをディスプレイ29に表示させる。経路探索に関しては、出力制御部32は、例えば、探索条件入力画面や探索結果表示画面91を生成し、これらをディスプレイ29に適宜表示させる。以下では、出力制御部32が、探索結果表示画面91を表示する処理を、探索結果表示処理という。
【0031】
経路探索要求作成部33は、入力制御部31が取得した経路探索に係る探索条件に基づいて、経路探索要求72を作成する。経路探索要求72は、経路探索装置11に対して経路探索の実行を要求する信号であり、経路探索に係る探索条件を含む。経路探索装置11は、経路探索要求72を受信すると、その経路探索要求72に含まれる探索条件にしたがって経路探索を実行する。なお、以下では、経路探索要求作成部33が、経路探索要求72を作成し、作成した経路探索要求72を経路探索装置11に送信する処理を、経路探索要求作成処理という。
【0032】
記憶部24は、一時的または永続的にデータを記憶する1または複数のストレージデバイスまたはメモリであり、例えば、RAM、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、または、これらの組み合わせである。記憶部24は、経路探索の結果を編集した案内データ73(
図7及び
図12参照)を記憶する案内データ記憶部34として機能する。また、記憶部24は、経路探索その他諸機能に係る演算及び動作等を、経路探索端末10に実行させるための端末制御プログラム35を記憶する。制御部23は、端末制御プログラム35にしたがって動作することにより、前述のように、入力制御部31、出力制御部32、及び、経路探索要求作成部33として機能する。
【0033】
[経路探索装置の構成]
図3は、経路探索装置11の構成を示すブロック図である。
図3に示すように、経路探索装置11は、通信機41、交通網データベース42、混雑度データベース43、輸送車両データベース44、制御部45、及び、記憶部46を備える。
【0034】
通信機41は、通信ネットワーク15と接続する通信モジュールである。経路探索装置11は、通信ネットワーク15を介し、通信機41によって経路探索端末10と接続し、経路探索に係る情報やデータ等を送受信する。
【0035】
交通網データベース42は、ノードと、リンクと、コストと、によって表現した交通網のデータベースである。したがって、交通網データベース42は、ノードデータ51、リンクデータ52、及び、コストデータ53を含む。
【0036】
ノードは、交通の要所となる地点または範囲を表す。例えば、駅、交差点は、交通網データベース42におけるノードである。ノードは、交通における現実の要所等に対応するように予め定められる。ノードデータ51は、各ノードの位置情報の集合体である。また、ノードデータ51には、各ノードが交通機関の乗り換えが可能なノードか否かを表す情報、及び、乗り換えが可能なノードについてはさらに輸送車両への具体的な乗り換え場所(以下、配車場という)に係る情報等が付帯されている。このため、経路探索装置11は、ノードデータ51を参照することにより、乗り換え可能なノード及び配車場に係る情報を取得できる。なお、乗り換え可能なノードに付帯する各々の配車場が、それぞれ乗換経路における乗換地点となる。具体的な輸送車両がタクシーであるときには、配車場はタクシー乗り場である。タクシー乗り場は、タクシーポートあるいはタクシースタンドと呼ばれる場合がある。また、具体的な輸送車両が、自動運転車両等であるときには、配車場は、ユーザ12が指定する場所となる場合がある。
【0037】
リンクは、ノードを結ぶ経路表す。リンクは、現実の道路や交通機関の経路にしたがって予め定められる。このため、あるノードから隣接する別のノードに対して、複数のリンクが存在することもあれば、全くリンクがないこともある。また、リンクには、輸送車両のみが通行可能な道路であること、または、列車のみが通行可能な線路であること等を表す属性が定められる場合がある。リンクデータ52は、こうしたリンクの有無及び属性を表すデータの集合体である。
【0038】
コストは、リンクに沿った移動に係る時間(もしくは距離)及び/または金銭的な費用に係る負荷を表す。コストは、リンクごとに予め定められる。また、1つのリンクに沿って複数の移動形態で移動可能であるときには、コストは、徒歩、輸送車両、及び、列車等の各種移動形態に応じてそれぞれ定められる。コストデータ53は、各リンクについて定められたコストを表すデータの集合体である。本実施形態では、各リンクのコストは、少なくとも、ノード間の移動に要する時間を表す時間的なコストを表す。
【0039】
図4は、交通網データベース42の概要を示す説明図である。
図4において丸印で示す点はノードであり、各ノードを結ぶ線がリンクである。各リンクのうち、白線及び黒線を交互に配したラインで示すリンクは、線路を表し、列車のみが通行可能である。また、各リンクのうち、実線で示すラインは、輸送車両が通行可能な道路を表す。そして、リンクに付された数値が、そのリンクに沿った移動に係るコストである。
【0040】
例えば、ある駅を表すノードS1から、輸送車両に乗り換えて、目的地を表すノードN1に輸送車両で到着するための無駄のない経路は、ノードN2を経由する経路とノードN3を経由する経路の2つの経路がある。ノードN2を経由する経路に係るコストの合計は「16」である。一方、ノードN3を経由する経路に係るコストの合計は「11」である。したがって、交通網データベース42を参照すれば、ノードS1からノードN1に到着するときの時間的に最短の経路は、ノードN3を経由する経路であることが判別できる。このようなコストが最小になる経路の探索は、例えばダイクストラ法等の周知の演算方法(探索方法)によって行うことができる。
【0041】
上記のように、交通網データベース42は、予め収集しておくことができる情報によって構成される。このため、交通網データベース42は、定期交通機関から輸送車両に乗り換えるときに発生する可能性がある待機時間については、そのデータを保有しない。これは、待機時間は、予め収集しておくことができず、状況に応じて変化する不確定な要素だからである。したがって、交通網データベース42を参照すれば、前述のように、定期交通機関から輸送車両に乗り換える乗換経路を探索できる。しかし、その乗換経路で移動したときの目的地への到着時刻(以下、目的地到着時刻という)は、待機時間がゼロである理想状態での目的地到着時刻に過ぎない。このため、乗換経路について、コストデータ53にしたがって算出する目的地到着時刻は、実際に待機時間がゼロであった場合を除き、不正確である。
【0042】
同様に、探索条件として目的地到着時刻が設定され、コストデータ53にしたがって
出発地からの出発時刻(以下、出発地出発時刻という)を算出する場合、その出発地出発時刻は、輸送車両へ乗換に係る待機時間がゼロである理想状態での出発地出発時刻に過ぎない。このため、乗換経路について、コストデータ53にしたがって算出する出発地出発時刻は、実際に待機時間がゼロであった場合を除き、不正確である。
【0043】
なお、交通網データベース42は、地図や定期交通機関の運行スケジュール(いずれも図示しない)を保有し、または、適宜取得できる。本実施形態においては、これらの情報はノードデータ51及び/またはリンクデータ52に含まれているものとする。
【0044】
混雑度データベース43(
図3参照)は、所定のノードについて、混雑の程度を表す混雑度を格納したデータベースである。本実施形態においては、混雑度データベース43は、少なくとも定期交通機関から輸送車両への乗り換えが可能なノードについて、その混雑度の情報を予め記憶する。混雑度は、所定の時間範囲(以下、時間帯という)ごとに記憶されている。また、1つのノードに輸送車両の配車場が複数あるときには、混雑度は、各々の配車場についてそれぞれ予め記憶される。このように、ノード及び配車場に関連付けられ、時間帯ごとに記憶された混雑度の集合体が、混雑度データベース43が保有する混雑度データ54である。
【0045】
図5は、混雑度データ54の例を示す表である。
図5に示すように、例えばノードS1及びノードS2は、輸送車両への乗り換えが可能な駅である。ノードS1には輸送車両の配車場P1と配車場P2があり、ノードS2には1つの配車場P3がある。ノードS1の配車場P1,P2、及び、ノードS2の配車場P3は、定期交通機関から輸送車両への乗換地点である。そして、本実施形態においては、各乗換地点について、例えば1時間ごとの輸送車両の配車実績(利用実績)が、上記の「混雑度」を表すパラメータとして記憶される。配車実績とは、過去に、特定の乗換地点において、所定の時間帯に利用された輸送車両の数量である。配車実績は、輸送車両の管理等のために予め集計されており、本実施形態の混雑度データ54ではこれを混雑度の目安として流用する。
【0046】
輸送車両データベース44(
図3参照)は、管理下にある輸送車両の位置及びステータス情報等を記憶するデータベースである。本実施形態においては、輸送車両データベース44は、1または複数の輸送車両の識別符号である車両ID(Identification)、稼働状態等を表すステータス情報、各輸送車両の目的地、及び、各輸送車両の現在位置等を輸送車両の車両情報55として記憶する。また、車両情報55に含まれる各種データは、所定のサイクルで定期的に、または、リアルタイムに、最新のデータに更新される。
【0047】
図6は、車両情報55の例を示す表である。例えば、本実施形態においては、少なくとも車両IDが「001」から「005」の輸送車両が管理下にあり、車両情報55として、これらの各輸送車両について、ステータス情報、目的地、及び、現在位置が保持される。例えば、ステータス情報「M1」は、顧客を乗車させた状態で目的地へ向けて走行中であることを表す。また、ステータス情報「M2」は、顧客を目的地で降車させた後、所定の配車場または指定された配車場に帰還するために走行中であることを表す。また、ステータス情報「W」は、所定の配車場または指定された配車場において待機中であることを表す。輸送車両の目的地(Dx1,Dy1)~(Dx5,Dy5)は、顧客の輸送先である地点(顧客の目的地)、または、顧客の送迎等のために帰還すべき配車場の緯度及び経度等の位置座標である。輸送車両の目的地は、少なくとも、輸送車両が走行中である場合、または、走行が予定されている場合に設定される。輸送車両の現在位置(X1,Y1)~(X5,Y5)には、各輸送車両のGPSセンサ等のデータが格納される。
【0048】
制御部45(
図3参照)は、CPU等の演算デバイスであり、経路探索装置11の動作を統括的に制御する。制御部45は、経路探索のために、経路探索処理部61、時刻演算部62、及び、案内データ作成部63として機能する。
【0049】
経路探索処理部61は、指定された経路探索条件に基づいて、交通網データベース42を参照することにより、出発地から目的地に到着するための経路を探索する。特に、経路探索処理部61は、定期交通機関から輸送車両への乗り換えを含む経路を探索するために、乗換地点決定部64、乗換経路決定部65、及び、所要時間推定部66を備える。
【0050】
乗換地点決定部64は、乗換地点を、定期交通機関から輸送車両に乗り換え可能な地点のうち、目的地から、予め定める所定範囲内に含まれる1または複数の地点に決定する乗換地点決定処理を実行する。具体的には、乗換地点決定部64は、探索条件として指定された出発地及び目的地に基づいて、交通網データベース42を参照することにより、定期交通機関から輸送車両への乗換地点を決定する。より具体的には、乗換地点決定部64は、例えば、交通網データベース42のノードデータ51を用いて、目的地から予め設定により定める所定の時間または距離の範囲内にあり、かつ、輸送車両への乗り換えが可能な定期交通機関の駅を表すノードを選出する。このとき、乗換地点決定部64は、1または複数の駅を選出できる。また、乗換地点決定部64は、複数の駅を選出するときに、上記の条件を満たすのであれば、各々異なる路線上にある駅を選出する場合がある。乗換地点決定部64は、こうして選出した駅(ノード)に付帯する1または複数の配車場を乗換地点に決定する。なお、乗換地点決定部64は、目的地から所定の距離範囲内に輸送車両への乗り換え可能な駅がないときには、少なくとも1つの駅が選出されるまで、適宜、所定の距離範囲を拡大することにより、探索を継続できる。
【0051】
乗換経路決定部65は、交通網データベース42を用いて、出発地から各々の乗換地点に到着するための経路、及び、各々の乗換地点から目的地に到着するための経路を決定する乗換経路決定処理を実行する。以下では、出発地から乗換地点に到着するための経路を乗換前経路といい、乗換地点から目的地に到着するための経路を乗換後経路という。乗換前経路及び乗換後経路の全体が乗換経路である。したがって、乗換経路決定部65は、乗換前経路及び乗換後経路を決定することにより、乗換経路を決定する。本実施形態では、乗換前経路及び乗換後経路は、交通網データベース42で定められたコストが最小となる経路である。このため、乗換前経路、乗換後経路、及び、これらの全体である乗換経路は、特定の乗換地点を経由し、かつ、乗換地点における待機時間を無視する条件下において、最短時間で目的地に到着する経路である。すなわち、乗換経路決定部65は、乗換経路は、乗換地点に到着後、乗換地点から輸送車両によって最も短い時間で目的地に到着する経路となるように決定する。
【0052】
所要時間推定部66は、決定された乗換経路にしたがって移動するときに要する時間(以下、所要時間という)を推定する。
【0053】
所要時間推定部66は、探索条件として予め指定された出発時刻または目的地への到着時刻と、乗換経路決定部65で決定された乗換経路と、に基づいて、乗換地点に到着する時刻(以下、乗換地点到着時刻という)を推定する。したがって、所要時間推定部66は、乗換地点到着時刻を推定する乗換地点到着時刻推定部として機能する。
【0054】
また、所要時間推定部66は、輸送車両の乗車時間、すなわち乗換地点において輸送車両に乗り換えた後、目的地に到着するまでの時間も推定する。このため、所要時間推定部66は、輸送車両の乗車時間を推定する乗車時間推定部としても機能する。より具体的には、所要時間推定部66は、交通網データベース42のコストデータ53を参照することにより、輸送車両の乗車時間を推定する。
【0055】
例えば、探索条件として出発時刻が設定されているときには、所要時間推定部66は、交通網データベース42のコストデータ53を参照することにより、出発地から乗換地点に到着するまでに要する時間(定期交通機関の乗車時間)を算出する。そして、所要時間推定部66は、この乗換地点に到着するまでに要する時間を出発時刻に加算することにより、乗換地点到着時刻を推定する。
【0056】
一方、探索条件として目的地への到着時刻が設定されているときには、所要時間推定部66は、交通網データベース42のコストデータ53を参照することにより、乗換地点から目的地に到着するまでに要する時間(輸送車両の乗車時間)を算出する。そして、所要時間推定部66は、探索条件である目的地への到着時刻から、乗換地点から目的地に到着するまでに要する時間を減算することにより、乗換地点到着時刻を推定する。
【0057】
本実施形態においては、探索条件として出発時刻が設定されているので、所要時間推定部66は、乗換地点に到着するまでに要する時間を出発時刻に加算することにより、乗換地点到着時刻を推定する。
【0058】
上記の他、所要時間推定部66は、交通網データベース42のコストデータ53を参照することにより、理想的な目的地到着時刻、または、理想的な出発地出発時刻を算出する。理想的な目的地到着時刻とは、輸送車両に乗車するための待機時間を無視した目的地到着時刻である。理想的な目的地到着時刻は、探索条件として出発時刻が設定されているときに算出される。
【0059】
同様に、理想的な出発地出発時刻とは、輸送車両に乗車するための待機時間を無視した出発地出発時刻である。理想的な出発地出発時刻は、探索条件として目的地への到着時刻が設定されているときに算出される。
【0060】
本実施形態においては、探索条件として出発時刻が設定されるので、所要時間推定部66は、理想的な目的地到着時刻を算出する。
【0061】
なお、実際的には、ノードである定期交通機関の駅から乗換地点である配車場までに、例えば徒歩で移動する時間を要する。人の歩行速度は概ね一定であるため、配車場までの移動時間は予め計測し、または、推定できる。このため、交通網データベース42は、こうした移動経路についてもノード、リンク、及び、コストのデータを予め取得できる。したがって、本実施形態では、定期交通機関の駅から配車場への移動に要する時間を含めて、乗換地点到着時刻が決定されているものとする。
【0062】
以下では、経路探索処理部61が、上記のように乗換地点決定部64、乗換経路決定部65、及び、所要時間推定部66によって実行する処理を、経路探索処理という。
【0063】
時刻演算部62は、決定された乗換経路についてそれぞれ目的地到着時刻を演算する。時刻演算部62は、目的地到着時刻の演算のために、車両需要推定部67、車両供給推定部68、待機時間推定部69、時刻推定部70を備える。
【0064】
車両需要推定部67は、乗換地点到着時刻に基づいて、その乗換地点における輸送車両の需要を推定する車両需要推定処理を実行する。乗換経路が複数あるとき、及び/または、乗換地点が複数あるときには、車両需要推定部67は各々の乗換地点についてそれぞれ輸送車両の需要を推定する。乗換地点における輸送車両の需要とは、乗換地点到着時刻に、その乗換地点において必要とされる輸送車両の数量である。
【0065】
本実施形態においては、車両需要推定部67は、乗換地点の混雑度に基づいて、その乗換地点における輸送車両の需要を推定する。より具体的には、本実施形態においては混雑度データベース43があるので、車両需要推定部67はこれを参照する。そして、車両需要推定部67は、混雑度として、参照する乗換地点及びその乗換地点到着時刻を含む時間帯における配車実績を取得する。そして、車両需要推定部67は、取得した配車実績の値を、その乗換地点及びその乗換地点到着時刻における輸送車両の需要であると推定する。すなわち、本実施形態においては、過去の配車実績が輸送車両の需要として利用される。
【0066】
車両供給推定部68は、乗換地点到着時刻に基づいて、その乗換地点における輸送車両の供給を推定する車両供給推定処理を実行する。乗換経路が複数あるとき、及び/または、乗換地点が複数あるときには、車両供給推定部68は各々の乗換地点についてそれぞれ輸送車両の供給を推定する。輸送車両の供給とは、乗換地点到着時刻に、その乗換地点でユーザ12等の輸送を開始し得る輸送車両の数量である。
【0067】
本実施形態においては、車両供給推定部68は、管理下にある1または複数の輸送車両が乗換地点に帰還するまでに要すると予測される時間(以下、帰還予測時間という(
図11参照))を算出することによって、輸送車両の供給を推定する。また、帰還予測時間は、輸送車両の現在位置と、稼働状態を表すステータス情報と、に基づいて推定される。したがって、車両供給推定部68は、輸送車両の現在位置と、稼働状態を表すステータス情報と、に基づいて輸送車両の供給を推定する。
【0068】
より具体的には、本実施形態においては、輸送車両データベース44があるので、車両供給推定部68はこれを参照することにより、輸送車両の現在位置とステータス情報を取得し、これらを用いてその輸送車両の帰還予測時間を算出する。これにより、乗換地点及び乗換地点到着時刻における輸送車両の供給が推定される。
【0069】
待機時間推定部69は、乗換地点における輸送車両の需要及び供給に基づいて、その乗換地点における待機時間を推定する待機時間推定処理を実行する。具体的には、待機時間推定部69は、輸送車両の需要と供給に基づいて、乗換地点到着時刻の乗換地点における輸送車両の過不足を推定し、この推定した輸送車両の過不足に基づいて、乗換地点及び乗換地点到着時刻における待機時間を推定する。
【0070】
本実施形態では、乗換地点到着時刻の乗換地点における輸送車両の過不足を、次のように推定する。
【0071】
待機時間推定部69は、乗換地点において輸送車両に乗り換えるために、経路の探索を要求したユーザ12が待機する順位(以下、待機順位という)を推定する。具体的には、待機時間推定部69は、混雑度データベース43を参照し、混雑度の目安である過去の配車実績を取得する。そして、待機時間推定部69は、配車実績が、その乗換地点及び乗換地点到着時刻において、経路の探索を要求しているユーザ12の他に既に待機している人の人数であると推定する。したがって、待機時間推定部69は、経路の探索を要求したユーザ12の待機順位を、配車実績の値に、このユーザ12分の「1」を加算した値であると推定する。
【0072】
一方、待機時間推定部69は、車両供給推定部68が推定した輸送車両の帰還予測時間に基づいて、各々の輸送車両が乗換地点に帰還する順位(以下、帰還順位という)を推定する。例えば、乗換地点に待機中の輸送車両がないときには、乗換地点に最初に帰還する車両の帰還順位が1位であり、10番目に帰還する車両の帰還順位は2位である。また、乗換地点に既に待機中の輸送車両があるときには、既に待機中の輸送車両を含めて帰還順位が推定される。1台の輸送車両が既に乗換地点にいるときには、最初に帰還する輸送車両の帰還順位は2位である。
【0073】
上記の待機順位と帰還順位の相違は、その乗換地点及び乗換地点到着時刻における輸送車両の過不足を表す。このため、待機時間推定部69は、上記の待機順位と帰還順位を推定することにより、その乗換地点及び乗換地点到着時刻における輸送車両の過不足を推定する。
【0074】
そして、乗換地点到着時刻後、待機順位に相当する帰還順位の輸送車両が乗換地点に帰還するまでの時間は、経路の探索を要求したユーザ12が乗換地点到着後に、輸送車両に乗車するまでの待機時間となる。したがって、待機時間推定部69は、車両供給推定部68が推定した各輸送車両の帰還予測時間を参照(取得)することにより、経路の探索を要求したユーザ12の待機時間を推定する。
【0075】
時刻推定部70は、待機時間を含めた現実的な目的地到着時刻、または、待機時間を含めた現実的な出発地出発時刻を推定する時刻推定処理を実行する。時刻推定部70は、探索条件として出発時刻が設定されているときには、待機時間を含めた現実的な目的地到着時刻を推定する。また、時刻推定部70は、探索条件として目的地への到着時刻が設定されているときには、待機時間を含めた現実的な出発地出発時刻を推定する。
【0076】
具体的には、時刻推定部70は、所要時間推定部66で算出される理想的な目的地到着時刻に、待機時間推定部69が推定した待機時間を加算する。これにより、時刻推定部70は、乗換地点における待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻を推定する。また、時刻推定部70は、所要時間推定部66で算出される理想的な出発地出発時刻に、待機時間推定部69が推定した待機時間を換算する。これにより、時刻推定部70は、乗換地点における待機時間を考慮した現実的な出発地出発時刻を推定する。
【0077】
案内データ作成部63は、案内データ73を生成する案内データ作成処理を実行する。案内データ73は、経路探索処理部61における経路探索の結果である乗換経路等のデータと、時刻演算部62で演算された上記の現実的な目的地到着時刻または現実的な出発地出発時刻のデータと、を含む。案内データ73は、経路探索を要求した経路探索端末10に送信する最終的な探索結果である。案内データ73は、経路探索端末10において探索結果表示画面91の生成に使用し得るように、乗換経路に待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻を対応付ける等のデータの編集により生成される。
【0078】
また、案内データ73は、少なくとも経路の探索結果として複数の乗換経路があるときに、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻に基づいて、これら複数の乗換経路の表示順を指定するデータ(以下、表示順序指定データという)を含むことができる。
【0079】
本実施形態においては、案内データ73は、経路探索端末10の探索結果表示画面91において、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻が早い順で探索結果を表示させる表示順序指定データを含む。すなわち、経路探索装置11は、探索結果を受信して探索結果を表示する経路探索端末10に対して案内データ73を送信することにより、経路探索端末10の表示画面に、待機時間を含めた目的地到着時刻が早い順で複数の乗換経路を表示させる。
【0080】
なお、探索条件として出発地の出発時刻が設定されているときには、案内データ73は、経路探索端末10の探索結果表示画面91において、待機時間を考慮した現実的な出発地出発時刻が遅い順で探索結果を表示させる表示順序指定データを含む。すなわち、経路探索装置11は、探索結果を受信して探索結果を表示する経路探索端末10に対して案内データ73を送信することにより、経路探索端末10の表示画面に、待機時間を含めた出発地出発時刻が早い順で複数の乗換経路を表示させる。
【0081】
記憶部46は、一時的または永続的にデータを記憶する1または複数のストレージデバイス(もしくはメモリ)であり、例えば、RAM、ROM、HDD、SSD、または、これらの組み合わせである。記憶部46は、経路探索に係る演算及び動作等を、経路探索装置11に実行させるための経路探索プログラム71を記憶する。制御部45は、経路探索プログラム71にしたがって動作することにより、前述のように、経路探索処理部61、時刻演算部62、及び、案内データ作成部63として機能する。
【0082】
[経路探索システムの作用]
以下、上記のように構成される経路探索システム100の作用を説明する。但し、以下では、経路探索システム100の作用の一例として、探索条件として出発地からの出発時刻が設定され、乗換経路とともに、目的地への到着時刻を探索するものとする。
【0083】
図7は、経路探索システム100で行われる経路探索のシーケンスチャートである。
図7に示すように、ステップS101において、ユーザ12の操作に応じて、経路探索端末10で探索条件取得処理が実行される。これにより、経路探索システム100による経路探索が開始する。そして、ステップS102では、経路探索端末10において経路探索要求作成処理が実行される。すなわち、経路探索端末10は、経路探索要求作成部33において経路探索要求72を作成し、これを経路探索装置11に送信することにより、探索条件にしたがった経路探索の実行を要求する。
【0084】
経路探索装置11は、経路探索要求72を受信すると、ステップS103において経路探索処理を実行する。この経路探索処理によって、探索条件に応じた1または複数の乗換経路、乗換地点到着時刻、及び、各乗換経路にしたがって移動するときの理想的な目的地到着時刻がそれぞれ決定または算出される。
【0085】
次いで、ステップS104では、経路探索装置11が車両需要推定処理を実行する。これにより、各々の乗換地点、及び、その乗換地点到着時刻における輸送車両の需要が推定される。また、ステップS105では、車両供給推定処理が実行される。これにより、各々の乗換地点、及び、その乗換地点到着時刻における輸送車両の供給が推定される。
【0086】
このように、各乗換地点の乗換地点到着時刻における輸送車両の需要と供給が推定されると、ステップS106において、経路探索装置11が待機時間推定処理を実行する。この待機時間推定処理によって、各乗換地点での待機時間が推定される。すなわち、待機時間推定処理によって、経路の探索を要求したユーザ12が、各乗換地点に乗換地点到着時刻に到着した後、輸送車両に乗り換えるまでにどの程度時間待たされるのかが推定される。
【0087】
その後、ステップS107において、経路探索装置11が時刻推定処理を実行する。本実施形態の時刻推定処理では、ステップS106で推定された待機時間が考慮された現実的な目的地到着時刻が推定される。
【0088】
ステップS108では、経路探索装置11が案内データ作成処理を実行する。案内データ作成処理では、最終的な経路探索の結果として、乗換経路、待機時間が考慮された現実的な目的地到着時刻、及び、表示順序指定データ等を含む案内データ73が作成される。また、作成された案内データ73は、経路探索要求72を作成した経路探索端末10に送信される。
【0089】
経路探索端末10は、経路探索装置11から案内データ73を受信すると、ステップS109において探索結果表示処理を実行する。具体的には、経路探索端末10は、案内データ73にしたがって探索結果表示画面91を作成し、これをディスプレイ29に表示する。これにより、経路探索端末10を使用するユーザ12は、自身が設定した探索条件にしたがった探索結果を知得する。特に、探索結果表示画面91に表示される経路の探索結果は案内データ73にしたがって作成されているので、経路探索の結果に乗換経路が含まれるときには、その乗換経路について、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻がユーザ12に案内される。これにより、経路探索システム100による経路探索が完了する。
【0090】
図8は、経路探索装置11が実行する各種処理の詳細を示すフローチャートである。
図8に示すように、ステップS103の経路探索処理は、ステップS201からステップS203を含む。ステップS201は乗換地点を決定するステップであり、例えば、目的地から予め設定により定める所定の距離範囲82内にあり、かつ、輸送車両への乗り換えが可能な定期交通機関の駅にある配車場が乗換地点に決定される。ステップS202は具体的な乗換経路を決定するステップであり、上記の乗換地点を経由することを条件として、交通網データベース42で定められたコストが最小となるように乗換経路が決定される。ステップS203は所要時間を算出するステップであり、乗換経路について、乗換地点到着時刻、及び、待機時間を考慮しない理想的な目的地到着時刻が算出される。
【0091】
また、ステップS104の車両需要推定処理は、ステップS204を含む。ステップS204は、混雑度を推定するステップであり、本実施形態では、車両需要推定部67が混雑度データベース43から乗換地点及び乗換地点到着時刻に対応する配車実績を取得する。そして、この配車実績の値が、乗換地点及び乗換地点到着時刻における混雑度と推定される。
【0092】
ステップS105の車両供給推定処理は、ステップS205とステップS206を含む。ステップS205は、輸送車両の情報を取得するステップであり、例えば、輸送車両の現在位置と稼働状態を表すステータス情報が、輸送車両の情報として取得される。ステップS206は、輸送車両が乗換地点に帰還するまでの帰還予測時間を算出するステップである。そして、各輸送車両の帰還予測時間が、乗換地点及び乗換地点到着時刻における輸送車両の供給を表すものと推定される。
【0093】
ステップS106の待機時間推定処理は、ステップS207からステップS209を含む。ステップS207は、乗換地点における経路の探索を要求したユーザ12の待機順位を算出するステップである。本実施形態においては、待機順位は、乗換地点及び乗換地点到着時刻に対応する配車実績を用いて算出される。ステップS208は、輸送車両の帰還順位を推定するステップである。本実施形態においては、輸送車両の帰還予測時間によって帰還順位が推定される。ステップS207とステップS208は、全体として、乗換地点到着時刻の乗換地点における輸送車両の過不足を推定するステップである。ステップS209は、ユーザ12の待機順位と輸送車両の帰還順位を用いて、乗換地点での待機時間を推定するステップである。本実施形態では、ユーザ12の待機順位と等し帰還順位を有する輸送車両の帰還予測時間が、ユーザ12の待機時間であると推定される。
【0094】
ステップS107の時刻推定処理は、ステップS210を含む。本実施形態のステップS210は、待機時間を考慮しない理想的な目的地到着時刻に、待機時間を加算することにより、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻を算出するステップである。
【0095】
ステップS108の案内データ作成処理は、ステップS211を含む。ステップS211は、経路探索結果を編集するステップである。本実施形態では、乗換経路、乗換地点、乗換地点到着時刻、待機時間、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時間等を含む探索結果を、例えば、乗換経路ごとに対応付け、かつ、現実的な目的地到着時間が早い順にソートされる。こうしたデータ編集によって形成されたデータの集合体が、案内データ73として経路探索端末10に送信される。
【0096】
以下、経路探索システム100が実行する経路探索の具体例を説明する。
【0097】
図9は、経路探索処理の具体例を示す説明図である。
図9に示すように、ここでは、あるユーザ12が、駅から離れた場所にある施設81に到着するための経路を、経路探索システム100によって探索する。ユーザ12は、経路探索端末10として機能する自身のスマートフォンを用いて、例えば、ユーザ12の現在地を出発地とし、現在時刻から30分後を出発時刻に設定する。また、ユーザ12は、目的地として、施設81の名称、住所、または、緯度及び経度等の位置座標を設定する。これにより、経路探索端末10であるスマートフォンから、経路探索装置11に経路探索要求72が送信される。
【0098】
経路探索装置11は、交通網データベース42を参照して、目的地である施設81から所定の距離範囲82内にあり、かつ、タクシー乗り場である配車場がある駅を選出する。ここでは、例えば、駅Sa及び駅Sbがこれに該当する駅である。駅Saは距離的に施設81の最寄駅であり、駅Saには配車場Paがある。また、駅Sbには配車場Pbがある。したがって、駅Saの配車場Paと駅Sbの配車場Pbがそれぞれ乗換地点に決定される。その結果、第1乗換経路83及び第2乗換経路84の2つが、経路探索の目的である乗換経路となる。第1乗換経路83は、駅Saに到達可能な路線85を走行する列車86を使用して駅Saまで移動し、その後、配車場Paで輸送車両であるタクシーに乗り換えて、施設81に到着する経路である。第2乗換経路84は、列車86で駅Saを通過して駅Sbまで移動し、その後、配車場Pbでタクシーに乗り換えて施設81に到着する経路である。
【0099】
この例では、第1乗換経路83の乗換地点到着時刻、すなわち配車場Paへの到着時刻は16時55分である。また、配車場Paから施設81までの輸送車両乗車時間、すなわちタクシーの乗車時間は、20分である。このため、第1乗換経路83による理想的な目的地到着時刻は17時15分である。こうして、第1乗換経路83の乗換地点到着時刻等が定まると、混雑度データベース43によって、配車場Paの到着時刻である16時55分を含む時間帯の配車実績が分かる。ここでは、配車場Paにおける16時から17時までの配車実績は3台であるとする。このため、乗換地点到着時刻である16時55分頃の配車場Paにおけるタクシーの需要は3台であると推定される。
【0100】
一方、第2乗換経路84の乗換地点到着時刻、すなわち配車場Pbへの到着時刻は17時00分であり、輸送車両乗車時間は25分である。このため、第2乗換経路84による理想的な目的地到着時刻は17時25分である。こうして、第2乗換経路84の乗換地点到着時刻等が定まると、混雑度データベース43によって、配車場Pbの到着時刻である17時00分を含む時間帯の配車実績が分かる。ここでは、配車場Pbにおける17時から18時までの配車実績はゼロ台であるとする。このため、乗換地点到着時刻である17時00分ごろの配車場Pbにおけるタクシーの需要はゼロ台であると推定される。
【0101】
図10は、駅Sa付近にある輸送車両(タクシー)を示す説明図である。
図10に示すように、この例では、配車場Paにはタクシーが待機しておらず、駅Saから所定の距離または時間の範囲87内には、配車場Paに帰還可能なタクシーが10台あるとする。また、これら10台のタクシーのIDはID001からID010である。
【0102】
図11は、輸送車両の供給の推定方法、及び、待機時間の推定方法を示す説明図である。第1乗換経路83及びその乗換地点到着時刻が定まると、
図11の表88に示すように、配車場Paに帰還可能な10台のタクシーのそれぞれについて、帰還予測時間が推定される。そして、推定された帰還予測時間によって、各タクシーの配車場Paへの帰還順位が決定される。
【0103】
一方、
図11の表89に示すように、混雑度データ54の配車実績に基づいて、乗換地点到着時刻である16時55分頃に、配車場Paでユーザ12よりも先に待機していると予測される人(以下、待機者という)の人数が推定される。ここでは、配車実績が3台であるため、待機者A,待機者B,及び待機者Cの3人が、ユーザ12よりも先に配車場Paで待機していると推定される。このため、ユーザ12の待機順位は4位であると推定される。
【0104】
また、表88に示す通り、待機順位「4位」に対応する帰還順位「4位」のタクシーは、ID001のタクシーであり、その帰還予測時間は15分である。このため、ユーザ12が配車場Paに16時55分に到着すると、ユーザ12は、ID001のタクシーが帰還する15分後に、配車場Paでタクシーに乗り換えることができると推定される。したがって、経路探索装置11は、待機順位「4位」に対応する帰還順位「4位」を有するID001のタクシーの帰還予測時間を、配車場Paにおけるユーザ12の待機時間であると推定する。その結果、第1乗換経路83を採用する場合、理想的な目的地到着時刻は17時15分であるが、これに待機時間である15分を加算した17時30分が、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻となる。
【0105】
第2乗換経路84についても、上記と同様に待機時間及び現実的な目的地到着時刻が推定される。ここでは、第2乗換経路84の乗換地点である配車場Pbには、乗換地点到着時刻である17時00分にタクシーが既に待機しており、待機時間はゼロ分であるとする。このため、第2乗換経路84では、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻は理想的な目的地到着時刻と等しく、17時25分である。このため、第2乗換経路84は最寄駅ではない駅Sbを経由する経路であるが、待機時間が短いので、最寄駅である駅Saを経由する第1乗換経路83よりも5分早く、目的地である施設81に到着し得る。
【0106】
経路探索装置11は、第1乗換経路83とその現実的な目的地到着時刻(17時30分)、及び、第2乗換経路84とその現実的な目的地到着時刻(17時25分)を探索結果としてユーザ12に提供する。また、経路探索装置11は、現実的な目的地到着時間が早い第2乗換経路84が優先的に表示されるように、経路探索端末10における探索結果の表示順序を指定する。なお、表示等について「優先的」とは、例えばユーザ12の注意を惹きやすくし、他の表示物等に対して相対的にユーザ12が知覚しやすくすることをいう。
【0107】
図12は、案内データ73とその表示態様の一例を示す説明図である。
図12に示すように、経路探索端末10であるスマートフォンが、上記の例における案内データ73を受信すると、ディスプレイ29として機能するタッチパネル90に、探索結果表示画面91を表示する。この探索結果表示画面91では、案内データ73に含まれる表示順序指定データにしたがって、各乗換経路に係る情報の一部または全部が表示される。このため、例えば、「最速到着経路」の表示欄92には第2乗換経路84の情報が表示され、「その他の経路」の表示欄93には第1乗換経路83の情報が表示される。したがって、ユーザ12は、この探索結果表示画面91を見て、現実的な目的地到着時刻が早い第2乗換経路84を選択する可能性が高い。すなわち、経路探索装置11は、待機時間を考慮した正確な経路探索を行うことができ、かつ、その結果を適正にユーザ12に提供できる。
【0108】
なお、
図12においては、目的地到着時刻のみを表示しているが、例えば、GUI(Graphical User Interface)である詳細表示ボタン94の操作により、各乗換経路に係るその他の情報が表示させることができる。また、
図12における具体的な表示形態は、説明のための一例である。
【0109】
図13は、比較例の案内データ95とその表示態様の一例を示す説明図である。
図13の案内データ95に示す通り、ここで説明する比較例は、目的地到着時刻が、待機時間を考慮しない理想的な目的地到着時刻となっていること、及び、表示順序の指定がないことを除き、各データの演算方法や等は前述の具体例と同様である。
【0110】
この比較例の場合、探索結果表示画面91では、理想的な目的地到着時刻が早い順に表示される。すなわち、「最速到着経路」の表示欄92には、第1乗換経路83の情報、例えば理想的な目的地到着時刻が表示される。そして、「その他の経路」の表示欄93には第2乗換経路84の情報、例えば、理想的な目的地到着時刻が表示される。したがって、比較例では、移動費用等に大きな差異がある等の特別な事情がない限り、ユーザ12が、この探索結果表示画面91を見て、現実的な目的地到着時刻が早い第2乗換経路84を選択することは困難である。そして、優先的に表示された第1乗換経路83で実際に移動すると、実際の目的地到着時刻は表示よりも遅れるので、比較例の経路探索は正確であるとは言い難い。
【0111】
上記のように、本実施形態に係る経路探索を比較例の経路探索と比較すると、本実施形態に係る経路探索によれば、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻を含む正確な経路探索が実行されることが理解できる。
【0112】
なお、上記においては、経路探索装置11の作用の一例として、探索条件として出発地からの出発時刻が設定された場合の作用を説明したが、探索条件として目的地への到着時刻が設定された場合も作用は、上記とほぼ同様である。すなわち、探索条件として目的地への到着時刻が設定された場合、経路探索装置11は、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻の代わりに、待機時間を考慮した現実的な出発地出発時刻を推定する。そして、経路探索端末10は、探索結果表示画面91に、乗換経路とともに、その現実的な出発地出発時刻を表示する。そして、探索結果表示画面91における乗換経路の表示順序は、現実的な出発地出発時刻が遅い順となる。これ以外の具体的な処理は、上記の例と実質的に同様である。
【0113】
以上のように、本実施形態に係る経路探索装置11は、指定された出発地から指定された目的地に到着する経路を探索する経路探索装置である。そして、この経路探索装置11は、乗換地点決定部64、乗換経路決定部65、乗換地点到着時刻推定部として機能する所要時間推定部66、車両需要推定部67、車両供給推定部68、待機時間推定部69、時刻推定部70、及び、案内データ作成部63を備える。乗換地点決定部64は、目的地に応じて、特定の経路に沿って定期的な輸送をする交通機関(定期交通機関)から、任意の経路に沿った不定期な輸送をする輸送車両に乗り換える乗換地点を決定する。乗換経路決定部65は、乗換地点を経由し、輸送車両に乗り換えて目的地に到着する乗換経路を決定する。乗換地点到着時刻推定部として機能する所要時間推定部66は、乗換経路と、予め指定された出発地からの出発時刻または目的地への到着時刻に基づいて、乗換地点に到着する乗換地点到着時刻を推定する。車両需要推定部67は、乗換地点到着時刻に基づいて、乗換地点における輸送車両の需要を推定する。車両供給推定部68は、乗換地点到着時刻に基づいて、乗換地点における輸送車両の供給を推定する。待機時間推定部69は、乗換地点における輸送車両の需要及び供給に基づいて、乗換地点における待機時間を推定する。時刻推定部70は、待機時間を含めた目的地への到着時刻である目的地到着時刻、または、待機時間を含めた出発地からの出発時刻である出発地出発時刻を推定する。案内データ作成部63は、出発地から目的地に到着する経路の探索結果として、乗換経路とともに、待機時間を含めた目的地到着時刻または待機時間を含めた出発地出発時刻を案内する案内データを作成する。
【0114】
上記構成によって、本実施形態に係る経路探索装置11は、列車等の定期交通機関からタクシーや自動運転車両等の輸送車両に乗り換える乗換経路を探索するときに、輸送車両に乗り換えるための待機時間を考慮した正確な経路探索を行うことができる。その結果、本実施形態に係る経路探索装置11は、乗換経路を、輸送車両に乗り換えるための待機時間を含む現実的な目的地到着時刻によって正確に案内できる。
【0115】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、乗換地点決定部64は、乗換地点を、定期交通機関から輸送車両に乗り換え可能な地点のうち、目的地から予め定める所定範囲内に含まれる1または複数の地点に決定する。これにより、経路探索装置11は、現実的な範囲内で乗換地点を決定できる。例えば、輸送車両の実際的な輸送経路には任意性があり、かつ、その輸送経路の混雑等の実際的な事情がある。このため、目的地から無用に遠方の駅等を、経路探索における乗換地点とすると、上記事情等によって、目的地到着時刻の誤差が大きくなる場合がある。このため、上記のように、経路探索装置11は、現実的な範囲内で乗換地点を決定することにより、目的地到着時刻の推定を、より正確に行うことができる。その結果、経路探索装置11は、待機時間を考慮しつつ、かつ、目的地到着時刻の実際的な事情による誤差が生じ難い正確な経路探索を実行できる。
【0116】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、乗換経路決定部65は、乗換経路を、乗換地点に到着後、乗換地点から輸送車両によって最も短い時間で目的地に到着する経路に決定する。すなわち、乗換経路は、待機時間の有無及び程度を除き、無駄がない最適な経路である。したがって、上記のように決定した乗換経路を前提として、さらに待機時間を考慮すれば、最適な経路について、現実的な目的地到着時刻が特に正確に推定及び案内される。このため、経路探索装置11は、乗換経路を上記のように決定することにより、特に正確な経路探索を行うことができる。
【0117】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、地点を表すノード(ノードデータ51)と、ノードを結ぶ経路を表すリンク(リンクデータ52)と、リンクに沿った移動に係るコスト(コストデータ53)と、を用いて交通網を表した交通網データベース42を備える。そして、乗換地点、乗換経路、及び、乗換地点到着時刻は、このように交通網を予めモデル化した交通網データベース42を参照することにより決定される。したがって、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、経路探索に係る演算負荷を抑えつつ、迅速かつ正確に経路探索を実行できる。
【0118】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、輸送車両の需要は、乗換地点到着時刻にその乗換地点において必要とされる輸送車両の数量である。このように、輸送車両の需要を、乗換地点到着時刻にその乗換地点において必要とされる輸送車両の数量を、輸送車両の需要とみなすことで、現実的な目的地到着時刻が正確に推定される。このため、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、正確な経路探索を実行できる。
【0119】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、車両需要推定部67は、輸送車両の需要を、乗換地点の混雑度に基づいて推定する。乗換地点の混雑度は、輸送車両の需要と相関があるパラメータの一例であるから、上記のように乗換地点の混雑度に基づいて輸送車両の需要を推定することにより、輸送車両の需要が正確に推定される。このため、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、正確な経路探索を実行できる。
【0120】
特に、上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、混雑度は、過去に、乗換地点において、乗換地点到着時刻を含む所定の時間帯に利用された輸送車両の数量(配車実績)である。配車実績は、輸送車両の管理等のために収集されるデータであるから、混雑度として、特別のデータ等を収集及び蓄積等する必要がない。また、配車実績は、乗換地点及びその乗換地点における特定時間帯における混雑度(輸送車両の需要)を、ほぼそのまま表すものである。したがって、上記のように、上記のように配車実績を混雑度とみなして輸送車両の需要を推定することにより、経路探索装置11は、簡便かつ正確に輸送車両の需要が推定される。その結果、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、迅速かつ正確な経路探索を実行できる。
【0121】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、車両供給推定部68は、輸送車両の供給を、1または複数の輸送車両が乗換地点に帰還するまでの予測時間を表す帰還予測時間を算出することによって推定する。帰還予測時間は、特定の乗換地点に対する輸送車両の供給数量に相関があり、かつ、算出が容易なパラメータの一例である。このため、上記のように、輸送車両の帰還予測時間によって輸送車両の供給を推定することにより、簡便かつ正確に輸送車両の供給が推定される。その結果、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、迅速かつ正確な経路探索を実行できる。
【0122】
特に、上記第1実施形態に係る経路探索装置11では、車両供給推定部68は、輸送車両の供給を、輸送車両の現在位置と、輸送車両の稼働状態を表すステータス情報と、に基づいて推定する。すなわち、車両供給推定部68は、輸送車両の現在位置とステータス情報に基づいて、帰還予測時間を演算し、この帰還予測時間によって乗換地点への輸送車両の供給を推定する。そして、帰還予測時間は、輸送車両の現在位置と稼働状態によってほぼ正確に決定され得る。このため、経路探索装置11は、上記のように、輸送車両の現在位置と稼働状態を表すステータス情報を用いることで、簡便かつ正確に、輸送車両の供給を推定できる。その結果、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、迅速かつ正確な経路探索を実行できる。
【0123】
上記第1実施形態に係る経路探索装置11においては、待機時間推定部69は、輸送車両の需要と供給に基づいて、輸送車両の過不足を推定し、かつ、待機時間をこの過不足に基づいて推定する。乗換地点における輸送車両の過不足は、輸送車両の需要と供給のバランスによって決定され、かつ、経路探索を要求したユーザ12の待機時間に直接的に関連するパラメータである。このため、上記のように、輸送車両の需要と供給に基づいて、輸送車両の過不足を推定し、この過不足に基づいて待機時間を推定することにより、特に正確に待機時間を推定できる。その結果、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、正確な経路探索を実行できる。
【0124】
特に、上記第1実施形態においては、待機時間推定部69は、乗換地点においてユーザ12が輸送車両に乗り換えるために待機する順位である待機順位を推定し、かつ、1または複数の輸送車両が乗換地点に帰還する順位である帰還順位を推定する。そして、待機時間推定部69は、待機順位に相当する帰還順位の輸送車両が乗換地点に帰還するまでの予測時間(帰還予測時間)を用いて、待機時間を推定する。案内した乗換経路にしたがって移動したユーザ12は、待機順位に相当する帰還順位の輸送車両に乗り換える可能性が高い。このため、待機順位に相当する帰還順位の輸送車両の帰還予測時間は、そのユーザ12の乗換地点における待機時間になる可能性が高い。したがって、上記のように、待機順位及び待機順位を推定し、これらを用いて待機時間を推定すると、簡便かつ正確に待機時間が推定される。その結果、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、正確な経路探索を実行できる。
【0125】
上記第1実施形態においては、案内データ作成部63は、探索結果として複数の乗換経路があるときに、待機時間を含めた目的地到着時刻に基づいて、複数の乗換経路の表示順序を指定する案内データを作成する。そして、案内データ作成部63は、探索結果を取得して探索結果を表示する経路探索端末10に対してこの案内データを送信することにより、経路探索端末10の表示画面に、待機時間を含めた目的地到着時刻が早い順で、または、待機時間を含めた出発地出発時刻が遅い順で、複数の乗換経路を表示させる。このように、探索条件として出発時刻を設定するときには、乗換経路を、待機時間を含めた現実的な目的地到着時刻が早い順で表示させることにより、ユーザ12は、待機時間を含めた現実的かつ正確性が高い目的地到着時刻を素早く正しく知得して、最適な経路を採用できる。同様に、探索条件として到着時刻を設定するときには、乗換経路を、待機時間を含めた現実的な出発地出発時刻が遅い順で表示させることにより、ユーザ12は、待機時間を含めた現実的かつ正確性が高い出発地出発時刻を素早く正しく知得して、最適な経路を採用できる。したがって、上記第1実施形態に係る経路探索装置11は、正確な経路探索を実行し、かつ、その結果を正確に案内できる。
【0126】
[変形例]
上記第1実施形態においては、乗換地点決定部64が複数の乗換地点を決定し、これらの乗換地点についてそれぞれ待機時間が推定されるが、具体的な経路探索の方法はこの方法に限らない。例えば、例えば、最短の理想的な乗換経路について待機時間を推定し、その乗換経路で待機時間が発生するときに、代替の乗換経路を探索してもよい。
【0127】
図14は、変形例の経路探索の方法を示すフローチャートである。
図14に示すように、変形例の経路探索では、ステップS301において、第1実施形態と同様に、経路探索処理部61が経路探索処理を実行し、1または複数の乗換経路を探索する。そして、第1実施形態においては、前述のように、複数の乗換経路があるときにはこれらの乗換経路の全てについて待機時間を推定することにより、現実的な目的地到着時刻を推定する。これに対し、本変形例においては、ステップS301において、経路探索処理部61が、最短経路決定部として機能し、探索された複数の乗換経路の中から、理想的な目的地到着時刻が最も早い最短の乗換経路を決定する。そして、車両需要推定部67は、ステップS302において、決定された最短の乗換経路について車両需要推定処理を実行する。同様に、ステップS303では、車両供給推定部68が、最短の乗換経路について車両供給推定処理を実行し、ステップS304では、待機時間推定部69が、最短の乗換経路について待機時間推定処理を実行する。その後、ステップS305において、時刻推定部70が、最短の乗換経路について時刻推定処理を実行することにより、待機時間を考慮した現実的な目的地到着時刻を推定する。
【0128】
その後、ステップS306において、制御部45が、待機時間の有無を確認する待機時間確認部として機能し、待機時間推定部69の推定結果に基づいて、最短の乗換経路での移動に待機時間が発生するか否かを判定する。ステップS306において、最短の乗換経路に待機時間が発生しないと判定されたときには、経路探索は完了し、ステップS313において案内データ作成部63が案内データ作成処理を実行される。
【0129】
一方、ステップS306において、最短の乗換経路に待機時間が発生すると判定されたときには、ステップS037において制御部45が車両余剰乗換地点探索部として機能し、乗換地点到着時刻において輸送車両が余剰となる乗換地点を探索する。より具体的には、制御部45は、車両需要推定部67及び車両供給推定部68によって、最短の乗換経路以外の乗換経路について、車両需要推定処理及び車両供給推定処理を実行する。これにより、車両余剰乗換地点探索部としての制御部45は、乗換地点到着時刻において輸送車両が余剰となる乗換地点を探索する。
【0130】
ステップS307の車両余剰乗換地点探索処理によって、余剰な輸送車両がある乗換地点が発見されないときには、経路探索は完了し、ステップS313において案内データ作成部63が案内データ作成処理を実行される。最短の乗換経路の乗換地点と他の乗換経路における乗換地点の具体的な距離や各待機時間の長さ等にも依るが、最短の乗換経路の現実的な目的地到着時刻が他の乗換経路の現実的な目的地到着時刻よりも早くなる場合が多い。このため、ステップS307では、輸送車両の供給が過剰な乗換地点がない限り、最短の乗換経路の現実的な目的地到着時刻が最も早いとみなして、経路探索を完了しても弊害は少ない。
【0131】
ステップS307の車両余剰乗換地点探索処理によって、余剰な輸送車両がある乗換地点が発見されたときには、ステップS308において、その乗換地点を経由する乗換経路を、最短の乗換経路に代替可能な乗換経路(以下、代替乗換経路という)に決定する。そして、ステップS309では、待機時間推定部69が代替乗換経路について待機時間推定処理を実行し、ステップS310では、時刻推定部70が代替乗換経路について現実的な目的地到着時刻を推定する。なお、代替乗換経路における待機時間は実質的にゼロであり、代替乗換経路による現実的な目的地到着時刻は、実質的に、待機時間を考慮しない理想的な目的地到着時刻である。このため、ステップS309及びステップS310は省略される場合がある。
【0132】
その後、ステップS311においては、制御部45が目的地到着時刻比較部として機能し、最短の乗換経路による現実的な目的地到着時刻と、代替乗換経路による現実的な目的地到着時刻を比較する。そして、最短の乗換経路による現実的な目的地到着時刻よりも、代替乗換経路による現実的な目的地到着時刻が早いときには、ステップS312において代替乗換経路が探索結果に追加され、経路探索が終了する。その結果、ステップS313の案内データ作成処理で作成される案内データ73には、最短の乗換経路と代替乗換経路が含まれる。
【0133】
なお、最短の乗換経路による現実的な目的地到着時刻よりも、代替乗換経路による現実的な目的地到着時刻が遅いときには、代替乗換経路を探索結果に含めずに経路探索を終了し、ステップS313の案内データ作成処理が実行される。これは、現実的な目的地到着時刻が遅い乗換経路を、ユーザ12に敢えて案内する必要性が低いからである。また、代替乗換経路が複数あるときには、各々の代替乗換経路について、上記ステップS308からステップS312が実行される。
【0134】
上記のように、最短の乗換経路で待機時間が発生するときに、代替乗換経路を探索すれば、経路探索装置11による経路探索の演算量を低減できる。このため、上記変形例によれば、経路探索装置11は、迅速かつ正確に経路探索を実行できる。
【0135】
なお、上記変形例では、探索条件として出発地からの出発時刻が設定された場合の作用を説明したが、探索条件として目的地への到着時刻が設定された場合の作用も上記変形例と実質的に同様である。
【0136】
[第2実施形態]
上記第1実施形態及び変形例においては、経路探索システム100について詳述したが、経路探索システム100で実行する経路探索方法は、ユーザ12の求めに応じて輸送車両を配車する配車システムにおいても有用である。
【0137】
図15は、配車システム200の構成を示す説明図である。
図15に示すように、配車システム200は、経路探索システム100を構成する経路探索端末10及び経路探索装置11に加えて、配車管理装置201を備える。配車管理装置201は、輸送車両の配車を管理する1または複数のコンピュータである。すなわち、配車管理装置201は、いわゆる配車サーバである。特に、配車システム200においては、配車管理装置201は、通信ネットワーク15を介して経路探索システム100と接続して各種データ等を送信及び/または受信することにより、経路探索システム100と連携して輸送車両の配車を管理する。
【0138】
図16は、配車システム200における経路探索端末10及び配車管理装置201の構成を示すブロック図である。
図16に示すように、配車システム200を構成するときには、経路探索端末10は、第1実施形態の構成に加えて、制御部23に予約要求作成部202を備える。このため、端末制御プログラム35は、制御部23を予約要求作成部202として機能させるためのプログラムを含む。予約要求作成部202は、経路探索装置11によって案内された特定の乗換経路に対して、ユーザ12の承認操作があったときに、その乗換地点及び乗換地点到着時刻に、輸送車両の配車を予約するシステムコマンド(以下、予約要求232(
図18参照)という)を作成する。
【0139】
図17は、配車システム200における探索結果表示画面91の例を示す説明図である。
図17に示すように、配車システム200を構成するときには、出力制御部32は、「最速到着経路」の表示欄92及び「その他の経路」の表示欄93に、GUIである配車予約ボタン203を追加的に表示する。ユーザ12は、この配車予約ボタン203をタップすることにより、対応する乗換経路を承認し、その乗換経路を採用して移動する旨、配車システム200に通知できる。すなわち、入力制御部31が配車予約ボタン203のタップを検出したときに、予約要求作成部202は、その乗換経路における乗換地点及び乗換地点到着時刻に、輸送車両の予約をする予約要求232を作成する。予約要求232には、少なくとも乗換地点及び乗換地点到着時刻の情報が含まれる。また、予約要求232は、必要に応じて、予約要求232を発行した経路探索端末10及び/またはその所有者等であるユーザ12の情報を含む場合がある。
【0140】
配車管理装置201(
図16参照)は、通信機210、制御部211、及び、記憶部212を備える。
【0141】
通信機210は、通信ネットワーク15と接続する通信モジュールである。配車管理装置201は、通信ネットワーク15を介し、通信機210によって経路探索端末10及び/または経路探索装置11と接続し、輸送車両の配車を管理する。
【0142】
制御部211は、CPU等の演算デバイスであり、配車管理装置201の動作を統括的に制御する。制御部211は、輸送車両の管理、特に、配車の予約に係る制御、及び、予約にしたがった輸送車両の配車に係る制御のために、配車処理部221と予約処理部222を備える。
【0143】
配車処理部221は、配車管理装置201で管理される輸送車両の車両情報55を適宜収集し、ユーザ12その他の求めに応じて、輸送車両をその乗換地点に向かわせるための配車指示を与える。これにより、配車管理装置201は、リアルタイムに輸送車両の配車を管理する。また、配車処理部221は、輸送車両の配車に係る予約(以下、配車予約という)があるときには、その予約に係る輸送車両の配車を実現するように、1または複数の輸送車両を管理する。例えば、配車処理部221は、配車予約に係る輸送車両のステータス情報を調整し、特定の輸送車両が予約された乗換地点及び乗換地点到着時刻に到着するように、輸送車両を管理する。
【0144】
予約処理部222は、予約要求232を受信すると、その予約要求232にしたがって輸送車両を配車することが可能か否かを判定する。予約要求232にしたがって特定の乗換地点及び乗換地点到着時刻に輸送車両を配車できるときには、予約を受け付け、予約要求232の発行元または中継機に、その旨のレスポンスコード233(
図18参照)を送信する。一方、予約要求232にしたがって特定の乗換地点及び乗換地点到着時刻に輸送車両を配車できないときには、予約を拒否し、その旨のレスポンスコード233を、予約要求232の発行元または中継機に送信する。
【0145】
また、予約処理部222は、経路探索装置11から、案内データ73またはその一部の受信したときには、仮予約処理を実行する場合がある。仮予約処理は、案内データ73が示す乗換経路についてユーザ12の承認操作に基づく予約要求232があったときにその配車予約を受け入れられるように、予約要求232の受信前に仮に配車予約があったものとして、予め定める所定の時間、輸送車両を管理する処理である。
【0146】
図18は、配車システム200のシーケンスチャートである。
図18に示すように、配車システム200においても、ステップS101において、経路探索端末10が探索条件取得処理を実行することによって経路探索が開始する。その後、ステップS102において、経路探索端末10が経路探索要求作成処理を実行する。そして、経路探索装置11は、経路探索要求72を受信すると、第1実施形態と同様に経路探索処理を実行する。すなわち、経路探索装置11は、ステップS103の経路探索処理、ステップS104の車両需要推定処理、ステップS105の車両供給推定処理、ステップS106の待機時間推知処理、及び、ステップS107の時刻推定処理を実行する。
【0147】
なお、本実施形態においては、配車管理装置201が、リアルタイムに変動する輸送車両の車両情報55を保有している。このため、経路探索装置11は、経路探索要求72を受け取ったとき等、必要に応じて、制御部45を車両情報更新部として機能させ、車両情報55の更新要求231を配車管理装置201に送信する。そして、更新要求231に応じて配車管理装置201から送信される最新の車両情報55を適宜取得し、輸送車両データベース44が保持する車両情報55を更新する。本実施形態においては、予め定める一定期間内に車両情報55が更新されていないときに、少なくともステップS104の車両需要推定処理を実行する前に、車両情報55を更新する。
【0148】
上記のように、第1実施形態と同様の経路探索を実行した後、経路探索装置11は、ステップS108の案内データ作成処理を実行する。ここで作成される案内データ73は、第1実施形態と同様である。但し、経路探索装置11は、経路探索端末10に案内データ73を送信するとともに、配車管理装置201に対しても案内データ73を送信する。
【0149】
案内データ73を受信すると、経路探索端末10はステップS109の探索結果表示処理を実行する。本実施形態においては、この探索結果表示処理において、乗換経路とともに配車予約ボタン203が表示される。そして、ステップS401の承認操作検出処理において、特定の乗換経路に対する承認操作である配車予約ボタン203のタップ操作が検出されると、ステップS403の予約要求作成処理によって予約要求232が作成される。作成された予約要求232は、直接的にまたは間接的に、配車管理装置201に送信される。本実施形態においては、探索結果表示画面91に配車予約ボタン203を設けるので、経路探索装置11が予約要求232を受信し、これを配車管理装置201に転送する。すなわち、経路探索装置11は、経路探索端末10において乗換経路に対して承認操作が検出されたときに、輸送車両の配車を管理する配車管理装置201に対して、乗換経路が案内する乗換地点及び乗換地点到着時刻に輸送車両を配車させるための予約(予約要求232)を登録する。
【0150】
一方、配車管理装置201は、案内データ73を受信すると、ステップS403において仮予約処理を実行する。その後、予約要求232を受信すると、配車管理装置201は、ステップS404の予約処理を実行し、予約が成立したか否かを示すレスポンスコード233を直接的にまたは間接的に経路探索端末10に送信する。本実施形態では、経路探索装置11を介して間接的にレスポンスコード233が経路探索端末10に送信される。経路探索端末10は、レスポンスコード233に応じて、予約の成立または不成立をユーザ12に通知する。また、配車管理装置201は、予約要求232に応じて、輸送車両の配車予約が成立したときには、その後、予約要求232に係る乗換経路の乗換地点及び乗換地点到着時刻に、輸送車両を配車する。
【0151】
以上のように、第2実施形態に係る配車システム200においては、経路探索装置11は、経路探索端末10において乗換経路に対して承認操作が検出されたときに、輸送車両の配車を管理する配車管理装置201に対して、乗換経路が案内する乗換地点及び乗換地点到着時刻に、輸送車両を配車させるための予約を登録する。探索結果表示画面91において配車予約ボタン203をタップする等の簡便な承認操作によって、案内された乗換経路にしたがった移動を実現するための輸送車両の配車予約を行うことができ、別途の複雑かつ特別な配車予約操作等は要求されない。したがって、経路探索装置11は正確な経路探索を実行できるうえに、簡易なインタフェースとなって、ユーザ12の簡便かつ迅速な配車予約を支援できる。
【0152】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、上記実施形態及び変形例等で説明した構成は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0153】
例えば、上記各実施形態及び変形例等においては、経路探索装置11は、交通網データベース42、混雑度データベース43、及び、輸送車両データベース44を備えているが、これらの構成は省略できる。交通網データベース42を省略する場合、経路探索装置11は、通信ネットワーク15を介して、他の外部システム等からノードデータ51、リンクデータ52、及び、コストデータ53を、必要に応じて適宜取得できる。混雑度データベース43を省略する場合、経路探索装置11は、通信ネットワーク15を介して、他の外部システム等から混雑度データ54を、必要に応じて適宜取得できる。同様に、輸送車両データベース44を省略する場合、経路探索装置11は、通信ネットワーク15を介して、他の外部システム等から車両情報55を、必要に応じて適宜取得できる。特に、輸送車両の車両情報55は、第2実施形態の配車管理装置201が輸送車両の管理のために保持する情報と同一またはその一部である。このため、第2実施形態においては、経路探索装置11は輸送車両データベース44の構成を省略し、配車管理装置201から経路探索に必要な車両情報55を適宜取得できる。
【0154】
上記各実施形態及び変形例等においては、経路探索装置11は、配車実績を混雑度の目安とし、配車実績を用いて乗換地点における輸送車両の需要を推定しているが、乗換地点における輸送車両の需要は別の方法で推定できる。例えば、乗換地点について所定の時間帯ごとの待機人数の統計データがある場合には、配車実績の代わりに待機人数を混雑度の目安とし、待機人数を用いて輸送車両の需要を推定してもよい。また、駅や乗換地点について、所定の時間帯ごとに、乗降者数や利用者数の統計データがある場合には、これを配車実績の代わりに用いて輸送車両の需要を推定してもよい。さらに、混雑度に関する情報は、予め保有されている必要はない。例えば、待機人数、乗降者数、及び、利用者数は、監視カメラ等の画像を画像解析することによって、リアルタイムに計数してもよい。
【0155】
上記各実施形態及び変形例等においては、説明の便宜のため、経路探索端末10、経路探索装置11、及び、配車管理装置201の機能を分けて説明しているが、これらの各機能は一例である。このため、経路探索システム100内、または、配車システム200内において、あるデバイスが実行する上記各実施形態及び変形例等を実現するための機能の一部または全部を、他のデバイスで実行させることができる。例えば、乗換地点決定部64、乗換経路決定部65、所要時間推定部66、車両需要推定部67、車両供給推定部68、待機時間推定部69、及び時刻推定部70の各種機能の一部または全部を経路探索端末10で実行してもよい。この場合、経路探索端末10、または、経路探索端末10と経路探索装置11の全体が、上記各実施形態及び変形例等における経路探索装置11を構成する。
【符号の説明】
【0156】
10:経路探索端末,11:経路探索装置,61:経路探索処理部,62:時刻演算部,案内データ作成部,64:乗換地点決定部,65:乗換経路決定部,66:所要時間推定部,67:車両需要推定部,68:車両供給推定部,69:待機時間推定部,70:時刻推定部,71:経路探索プログラム,100:経路探索システム,200:配車システム,201:配車管理装置