(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158711
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】視野評価装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/024 20060101AFI20221006BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61B3/024
A61B3/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021063807
(22)【出願日】2021-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武井 宙之
(72)【発明者】
【氏名】藤田 薫
(72)【発明者】
【氏名】門馬 悠生
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 禎也
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA18
4C316AA21
4C316AB16
4C316FA01
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】被験者の視野を適切に評価する。
【解決手段】視野評価装置は、表示部と、表示部における被験者の視点の位置を検出する視点検出部と、表示部に基準指標を表示させ、基準指標に対して離れた位置に目標指標を表示させる表示制御部と、表示部のうち基準指標と目標指標との間に移動判定領域を設定する領域設定部と、基準指標と目標指標との位置関係に基づいて、被験者の視野を評価する評価部とを備え、評価部は、被験者の視点が移動判定領域を移動したか否かに基づいて被験者の視野を評価する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部における被験者の視点の位置を検出する視点検出部と、
前記表示部に基準指標を表示させ、前記基準指標に対して離れた位置に目標指標を表示させる表示制御部と、
前記表示部のうち前記基準指標と前記目標指標との間に移動判定領域を設定する領域設定部と、
前記基準指標と前記目標指標との位置関係に基づいて、前記被験者の視野を評価する評価部と
を備え、
前記評価部は、前記被験者の前記視点が前記移動判定領域を移動したか否かに基づいて前記被験者の視野を評価する
視野評価装置。
【請求項2】
前記領域設定部は、前記目標指標が表示される部分に到達判定領域を設定し、
前記評価部は、前記被験者の前記視点が前記移動判定領域を移動して所定時間以内に前記到達判定領域に到達した場合、前記目標指標の表示位置が前記基準指標を中心とした前記被験者の可視領域に含まれる旨の評価を行う
請求項1に記載の視野評価装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記被験者の前記視点が前記移動判定領域を移動することなく前記所定時間以内に前記到達判定領域に到達した場合、前記目標指標の表示位置が前記基準指標を中心とした前記被験者の可視領域に含まれない可能性がある旨の評価を行う
請求項2に記載の視野評価装置。
【請求項4】
前記領域設定部は、前記基準指標が表示される部分に注視判定領域を設定し、
前記表示制御部は、前記被験者の前記視点が前記注視判定領域に所定時間以上存在する場合に、前記目標指標を表示させる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の視野評価装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記表示部における端部に前記基準指標を表示し、前記基準指標に対して前記表示部における前記端部から離れた位置に前記目標指標を表示させる
請求項1から請求項4に記載の視野評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示部に指標を表示して被験者の視線を検出し、検出結果に基づいて被験者の視野を評価する視野評価装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような視野評価装置を用いて評価を行う場合、表示された指標に偶然到達した場合にも指標を注視したことに含まれるため、適切な評価を得ることが困難となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、被験者の視野を適切に評価することが可能な視野評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る視野評価装置は、表示部と、前記表示部における被験者の視点の位置を検出する視点検出部と、前記表示部に基準指標を表示させ、前記基準指標に対して離れた位置に目標指標を表示させる表示制御部と、前記表示部のうち前記基準指標と前記目標指標との間に移動判定領域を設定する領域設定部と、前記基準指標と前記目標指標との位置関係に基づいて、前記被験者の視野を評価する評価部とを備え、前記評価部は、前記被験者の前記視点が前記移動判定領域を移動したか否かに基づいて前記被験者の視野を評価する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被験者の視野を適切に評価することが可能な視野評価装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る視野評価装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、視野評価装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、表示部における表示内容の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、表示部における表示内容の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、表示部における表示内容の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、表示部における表示内容の他の例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る視野評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態における視野検出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る視野評価処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る視野評価装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る視野評価装置100の一例を示す図である。
図1に示す視野評価装置100は、被験者の視線を検出し、検出結果を用いることで、被験者の視野を評価する。視野評価装置100は、例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方法、又は被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する方法等、各種の方法により被験者の視線を検出することができる。
【0011】
図1に示すように、視野評価装置100は、表示装置10と、眼球撮影装置20と、制御装置30と、出力装置40と、入力装置50とを備える。
【0012】
表示装置10は、液晶ディスプレイ(liquid crystal display:LCD)又は有機ELディスプレイ(organic electroluminescence display:OLED)のようなフラットパネルディスプレイを含む。本実施形態において、表示装置10は、表示部11を有する。表示部11は、画像等の情報を表示する。表示装置10は、ヘッドマウント型ディスプレイ装置であってもよい。表示装置10がヘッドマウント型ディスプレイ装置である場合、ヘッドマウントモジュール内に眼球撮影装置20のような構成が配置されることになる。
【0013】
眼球撮影装置20は、被験者の左右の眼球EBを撮影して眼球画像を取得し、取得した眼球画像を制御装置30に送信する。眼球撮影装置20は、被験者の左右の眼球EBを撮影することで画像データを取得する。眼球撮影装置20は、被験者の視線を検出する方法に応じた各種カメラを有する。例えば被験者の瞳孔の位置と角膜反射像の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、眼球撮影装置20は、赤外線カメラを有し、例えば波長850[nm]の近赤外光を透過可能な光学系と、その近赤外光を受光可能な撮像素子とを有する。なお、この構成では、被験者の眼球EBに赤外線を照射する照射装置が設けられた構成であってもよい。また、例えば被験者の目頭の位置と虹彩の位置とに基づいて視線を検出する方式の場合、眼球撮影装置20は、可視光カメラを有する。眼球撮影装置20は、フレーム同期信号を出力する。フレーム同期信号の周期は、例えば20[msec]とすることができるが、これに限定されない。眼球撮影装置20は、例えば2つのカメラを有するステレオカメラの構成とすることができるが、これに限定されない。
【0014】
制御装置30は、視野評価装置100の動作を統括的に制御する。制御装置30は、CPU(central processing unit)等の演算処理装置と、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)のようなメモリ又はストレージ等の記憶装置とを含む。制御装置30は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施する。
【0015】
本実施形態に係る視野評価装置100は、表示装置10と制御装置30とが別々の装置である。なお、表示装置10と制御装置30とが一体でもよい。例えば視野評価装置100がタブレット型パーソナルコンピュータを含んでもよい。この場合、当該タブレット型パーソナルコンピュータに、表示装置、眼球撮影装置、コンピュータシステム、入力装置、出力装置等が搭載されてもよい。
【0016】
出力装置40は、フラットパネルディスプレイのような表示装置を含む。なお、出力装置40は、音声出力装置、印刷装置を含んでもよい。入力装置50は、操作されることにより入力データを生成する。入力装置50は、コンピュータシステム用のキーボード又はマウスを含む。なお、入力装置50が表示装置である出力装置40の表示部に設けられたタッチセンサを含んでもよい。
【0017】
図2は、視野評価装置100の一例を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、制御装置30は、表示制御部31と、視点検出部32と、領域設定部33と、判定部34と、演算部35と、評価部36と、入出力制御部37と、記憶部38とを有する。
【0018】
表示制御部31は、被験者に注視させるための指標を表示部11に表示させる。表示制御部31は、表示部11に基準指標を表示させる。基準指標は、被験者の視野を評価する際の視野中心となる位置を示す。表示制御部31は、例えば表示部11の中央部や、角部等の端部に基準指標を表示させることができる。表示制御部31は、表示部11において基準指標に対して離れた位置に目標指標を表示させる。表示制御部31は、被験者の視野評価を行うに際して適切な位置に指標を表示する。表示制御部31は、例えば過去に計測を行い記憶部38に記憶される評価情報に基づいて適切な位置を算出してもよい。表示制御部31は、基準指標を表示させた後、被験者が基準指標を所定時間以上注視していた場合、つまり、被験者の視点が基準指標に所定時間以上存在する場合に、目標指標を表示させることができる。表示制御部31は、評価用コンテンツを再生することで基準指標及び目標指標を表示部11に表示してもよい。
【0019】
視点検出部32は、被験者の視点の位置を検出する。本実施形態において、視点検出部32は、眼球撮影装置20によって取得される被験者の左右の眼球EBの画像に基づいて、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルを検出する。視点検出部32は、検出した被験者の視線ベクトルと表示装置10の表示部11との交点の位置を、被験者の視点の位置として検出する。つまり、本実施形態において、視点の位置は、三次元グローバル座標系で規定される被験者の視線ベクトルと、表示装置10の表示部11との交点の位置である。視点検出部32は、規定のサンプリング周期毎に被験者の視点の位置を検出する。このサンプリング周期は、例えば眼球撮影装置20から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)とすることができる。
【0020】
領域設定部33は、表示部11において、基準指標と目標指標との間に移動判定領域を設定する。移動判定領域は、基準指標を注視する被験者が目標指標を視認できた場合、視点を基準指標から目標指標に移動させる際の最短経路となる部分に設定される。また、領域設定部33は、目標指標が表示される部分に到達判定領域を設定する。また、領域設定部33は、基準指標が表示される部分に注視判定領域を設定する。以下、移動判定領域、到達判定領域及び注視判定領域は、「判定領域」としてまとめて記載する場合がある。本実施形態において、領域設定部33で設定される判定領域は、原則として表示部11には表示されない。なお、例えば表示制御部31の制御により、判定領域が表示部11に表示されるようにしてもよい。
【0021】
判定部34は、表示制御部31によって指標が表示される期間に、視点の位置に基づいて、指標に対応する判定領域に視点が存在するか否かをそれぞれ判定し、判定結果を出力する。判定部34は、規定の判定周期毎に視点が判定領域に存在するか否かを判定する。判定周期としては、例えば眼球撮影装置20から出力されるフレーム同期信号の周期(例えば20[msec]毎)とすることができる。つまり、判定部34の判定周期は、視点検出部32のサンプリング周期と同一である。判定部34は、視点検出部32で視点の位置がサンプリングされる毎に当該視点について判定を行い、判定結果を出力する。
【0022】
演算部35は、判定部34の判定結果に基づいて、上記の判定領域が設定される期間における視点の移動の経過について演算を行う。演算部35は、所定の時点からの経過時間を検出するタイマーと、判定部34により判定領域に視点が存在すると判定された判定回数をカウントするカウンタとを有する。タイマーについては、例えば表示部11に評価用コンテンツの再生時間を管理するタイマーT0と、表示部11に目標指標が表示されてからの経過時間を検出するタイマーT1とが設けられる。カウンタは、判定領域ごとに設定される。本実施形態では、注視判定領域における視点の判定回数をカウントするカウンタ(CNT0)と、移動判定領域における視点の判定回数をカウントするカウンタ(CNT1)と、到達判定領域における視点の判定回数をカウントするカウンタ(CNT2)とが設けられる。カウンタCNT0、CNT1、CNT2によるカウント値は、それぞれの判定領域に視点が存在した時間を示している。カウント値が大きいほど判定領域に視点が存在した時間が長く、カウント値が小さいほど判定領域に視点が存在した時間が短いことを示している。
【0023】
注視判定領域についてのカウンタCNT0の値が所定値以上である場合、被験者が基準指標を注視したと認定することができる。また、移動判定領域についてのカウンタCNT1の値が所定値以上である場合、被験者の視点が移動判定領域を移動したと認定することができる。また、到達判定領域についてのカウンタCNT2の値が所定値以上である場合に、被験者の視点が目標指標に到達したと認定することができる。
【0024】
評価部36は、被験者の視点データに基づいて、被験者の視野を評価する。本実施形態において、被験者の視野は、当該被験者の可視領域である。評価部36は、例えば被験者の視点が基準指標から移動判定領域を移動して目標指標に到達した場合、つまりカウンタCNT1、CNT2の値がそれぞれ所定値以上である場合には、目標指標の表示位置が基準指標を中心とした被験者の可視領域に含まれると評価する。
【0025】
また、評価部36は、例えば被験者の視点が目標指標に到達しない場合、つまりカウンタCNT2の値が所定値以上ではない場合には、目標指標の表示位置が可視領域に含まれないと評価する。
【0026】
また、評価部36は、被験者の視点が移動判定領域を移動することなく目標指標に到達した場合、つまりカウンタCNT1の値が所定値以上ではなくカウンタCNT2の値が所定値以上である場合には、目標指標の表示位置が可視領域に含まれない可能性があると評価する。なお、評価部36は、被験者の視点が移動判定領域を移動することなく目標指標に到達した場合、例えば再度同じ位置に目標指標を表示させた場合の視点データに基づいて評価を行うようにしてもよい。
【0027】
再度の評価において、評価部36は、被験者の視点が基準指標から移動判定領域を移動して目標指標に移動した場合には、目標指標の表示位置が基準指標を中心とした被験者の可視領域に含まれると評価する。また、評価部36は、被験者の視点が目標指標に移動しない場合には、目標指標の表示位置が可視領域に含まれないと評価する。また、評価部36は、被験者の視点が移動判定領域を移動することなく目標指標に到達した場合には、目標指標の表示位置が可視領域に含まれない可能性があると評価する。
【0028】
入出力制御部37は、眼球撮影装置20及び入力装置50の少なくとも一方からのデータ(眼球EBの画像データ、入力データ等)を取得する。また、入出力制御部37は、表示装置10及び出力装置40の少なくとも一方にデータを出力する。入出力制御部37は、評価結果を出力装置40から出力してもよい。
【0029】
記憶部38は、上記の判定結果及び評価結果を記憶する。また、記憶部38は、表示部11おける被験者の視点の位置を検出する処理と、表示部11に基準指標を表示させ、基準指標に対して離れた位置に目標指標を表示させる処理と、表示部11のうち基準指標と目標指標との間に移動判定領域を設定する処理と、被験者の視点が移動判定領域を移動したか否かに基づいて、被験者の視野を評価する処理とをコンピュータに実行させる視野評価プログラムを記憶する。
【0030】
次に、本実施形態に係る視野評価方法について説明する。本実施形態に係る視野評価方法では、上記の視野評価装置100を用いることにより、被験者の視野を評価する。
【0031】
図3及び
図4は、表示部11における表示内容の一例を示す図である。
図3に示すように、表示制御部31は、例えば表示部11の中央部に被験者の視点を向けるように基準指標Pを表示させる。基準指標Pは、被験者の視野を評価する際の視野中心となる。なお、
図3の破線部分は、基準指標Pを基準位置として表示される目標指標Qの表示位置の例である。
図3に示す段階では、目標指標Qは表示されない。領域設定部33は、基準指標Pが表示される部分に注視判定領域S0を設定する。注視判定領域S0は、例えば基準指標Pの輪郭に沿った形状等、基準指標Pの形状に対応する形状であってもよいし、円形、矩形等、基準指標Pの形状とは異なる形状であってもよい。注視判定領域S0が設定された後、視点検出部32は、被験者の視点の位置を検出する。判定部34は、検出された被験者の視点が注視判定領域S0に存在するか否かを判定する。演算部35は、被験者の視点が注視判定領域S0に所定時間以上存在する場合、つまりカウンタCNT0の値が所定の閾値以上となる場合、被験者が基準指標Pを注視したと判断する。
【0032】
演算部35により視点が注視判定領域S0に所定時間以上存在すると判断された場合、表示制御部31は、
図4に示すように、基準指標Pの位置に対して離れた位置に目標指標Qを表示させる。表示制御部31は、例えば
図3の破線で示された位置からランダムに1つの位置を選択して目標指標Qを表示させることができる。
【0033】
目標指標Qが表示された場合、領域設定部33は、基準指標Pと目標指標Qとの間に直線方向に延びる移動判定領域S1を設定する。移動判定領域S1は、例えば幅方向(直線方向に直交する方向)の寸法が均一な帯状に形成される。なお、移動判定領域S1の幅方向の寸法は、直線方向において均一な構成に限定されない。移動判定領域S1の幅方向の寸法は、例えば基準指標P及び目標指標Qの同方向の寸法に対応するように設定される。例えば、移動判定領域S1の幅方向の寸法は、被験者が過去の評価において視点を移動させた軌跡に基づいて設定することができる。また、領域設定部33は、目標指標Qが表示される部分に到達判定領域S2を設定する。到達判定領域S2は、例えば目標指標Qの輪郭に沿った形状等、基準指標Pの形状に対応する形状であってもよいし、円形、矩形等、目標指標Qの形状とは異なる形状であってもよい。
【0034】
移動判定領域S1及び到達判定領域S2が設定された後、視点検出部32は、被験者の視点の位置を検出する。判定部34は、検出された被験者の視点が移動判定領域S1及び到達判定領域S2に存在するかを判定する。演算部35は、判定結果に基づいて、被験者の視点が移動判定領域S1及び到達判定領域S2に存在する時間を算出する。演算部35は、被験者の視点が到達判定領域S2に所定時間以上存在する場合、つまりカウンタCNT2の値が所定の閾値以上となる場合、被験者の視点が目標指標Qに到達したと判断する。また、演算部35は、被験者の視点が目標指標Qに到達したと判断した場合、移動判定領域S1を移動したかを判断する。演算部35は、被験者の視点が移動判定領域S1に所定時間以上存在した場合、つまりカウンタCNT2の値が所定の閾値以上となる場合、被験者が移動判定領域S1を移動したと判断する。
【0035】
図4に示すように、基準指標Pを注視する被験者が目標指標Qを視認できた場合、最短経路に沿った軌跡R1で視点を基準指標Pから目標指標Qへ移動させようとする傾向にある。これに対して、基準指標Pを注視する被験者が目標指標Qを視認できない場合、視点を基準指標Pからほとんど移動させないか、目標指標Qを探し求めて視点を任意の方向に移動させようとする。被験者が視点を任意の方向に移動させた結果として目標指標Qを視認できた場合、軌跡R2で示すように、移動先から視点を目標指標Qに移動させようとする。軌跡R2で示すような視点の移動を行った被験者は、目標指標Qに視点を移動させることはできたが、基準指標Pを視野中心とした場合に目標指標Qが視認できていない可能性がある。被験者の視点が移動判定領域S1を移動したかを判断することにより、基準指標Pを視野中心とした場合に目標指標Qが視認できていない被験者を高精度に評価することができる。
【0036】
なお、移動判定領域S1を直線方向に複数の領域に区切り、区切った領域ごとに被験者の視点が存在した時間を判定する構成であってもよい。この構成では、被験者の視点が移動判定領域S1に沿って基準指標Pから目標指標Qに移動する様子をより高精度に検出することができる。移動判定領域S1を直線方向に複数の領域に区切る場合、区切った領域のうち、例えば基準指標Pに近い領域についての視点の存在時間を重視する、目標指標Qに近い領域についての視点の存在時間を重視する等、領域ごとに重みづけをして判断してもよい。また、移動判定領域S1は、基準指標Pから目標指標Qの間の一部の領域に設定される構成であってもよい。また、表示部11のうち移動判定領域S1を除いた領域に判定領域が設定され、被験者の視点が当該判定領域に存在する時間が所定時間未満の場合に、被験者の視点が移動判定領域S1を移動したと判断される構成であってもよい。
【0037】
評価部36は、例えば被験者が軌跡R1で視点を移動させた場合等、カウンタCNT1、CNT2の値がそれぞれ所定値以上である場合には、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれると評価する。また、評価部36は、評価部36は、カウンタCNT2の値が所定値以上ではない場合には、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれないと評価する。
【0038】
また、評価部36は、例えば被験者が軌跡R2で視点を移動させた場合等、カウンタCNT1の値が所定値以上ではなくカウンタCNT2の値が所定値以上である場合には、目標指標Qの表示位置が被験者の可視領域に含まれていない可能性があると評価する。また、評価部36は、カウンタCNT1の値が所定値以上ではなくカウンタCNT2の値が所定値以上である場合には、再度同じ位置に目標指標Qを表示させた場合の視点データに基づいて評価を行うようにする。
【0039】
目標指標Qを表示させて再度評価を行う場合において、カウンタCNT1、CNT2の値がそれぞれ所定値以上である場合、評価部36は、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれると評価することができる。また、カウンタCNT2の値が所定値以上ではない場合、評価部36は、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれないと評価することができる。また、カウンタCNT1の値が所定値以上ではなくカウンタCNT2の値が所定値以上である場合、評価部36は、目標指標Qの表示位置が被験者の可視領域に含まれていない可能性があると評価する。
【0040】
一の目標指標Qについて評価を行った後、表示制御部31は、基準指標Pの表示を再度行い、目標指標Qを他の位置に表示させる。そして、上記同様に、視点検出部32が被験者の視点を検出し、領域設定部33が判定領域を設定し、判定部34が判定領域に視点が存在するか否かを判定する。また、演算部35が被験者の視点データを算出し、評価部36が視点データに基づいて目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれるか否かを評価する。
【0041】
図5は、表示部11における表示内容の他の例を示す図である。
図5に示すように、表示制御部31は、基準指標Pを表示する際、表示部11の中央部に限定されず、例えば表示部11の角部11a等のように表示部11の端部に基準指標Pを表示させてもよい。
図5の破線部分は、基準指標Pを基準位置として表示される目標指標Qの表示位置の例である。
図5の破線部分に示す例において、目標指標Qは、表示部11の角部11aに表示される基準指標Pに対して、左右方向及び上下方向の中央部よりも離れた位置に表示される設定となっている。表示部11の端部に基準指標Pを配置する場合、表示部11の中央部及びその近傍に基準指標Pを表示させる場合に比べて、端部とは反対の方向に大きく距離を確保することができる。このため、被験者のより広い範囲の可視領域について評価を行うことができる。
【0042】
図6は、表示部11における表示内容の他の例を示す図である。
図6に示すように、表示制御部31は、基準指標Pを表示する際、表示部11の中央部又は端部に限定されず、例えば表示部11の任意の位置に表示させることができる。例えば何らかの理由により中央を見ることが難しいが画面上の一点を注視している場合に、注視している画面上の一点を基準視標P1とし、その基準視標P1に対して目標視標Q1を表示することで、画面中央をじっと注視することが難しい被験者でも視野計測を行うことができる。
【0043】
次に、本実施形態に係る視野評価方法の一例について、
図7から
図9を参照しながら説明する。
図7から
図9は、本実施形態に係る視野評価方法の一例を示すフローチャートである。表示制御部31は、評価用コンテンツの再生を開始させる(ステップS101)。表示装置10の表示部11には、
図3に示すように基準指標Pを含む評価用コンテンツが表示される。演算部35は、評価用コンテンツの再生時間を管理するタイマーT0をリセットする(ステップS102)。
【0044】
演算部35において上記のカウンタCNT0、CNT1、CNT2のカウント値をそれぞれ0にリセットし、領域設定部33において基準指標Pに注視判定領域S0を設定する(ステップS103)。視点検出部32は、規定のサンプリング周期(例えば20[msec])毎に、表示装置10の表示部11における被験者の視点の位置データを検出する(ステップS104)。
【0045】
演算部35は、瞬きなどにより視点を検出できない場合を考量して、視点の検出に失敗したか否かを判定する(ステップS105)。演算部35は、視点の検出に失敗したと判定する場合(ステップS105でYes)、カウンタCNT0の値を0にリセットし(ステップS106)、後述するステップS118に進む。演算部35は、視点の検出に失敗していないと判定する場合(ステップS105でNo)、ステップS107に進む。
【0046】
視点の検出に失敗していないと判定する場合(ステップS105でNo)、演算部35は、カウンタCNT0のカウント値が閾値以上か否かを判定する(ステップS107)。演算部35は、カウンタCNT0のカウント値が所定値以上であると判断する場合(ステップS107のYes)、カウンタCNT0のカウント値を0にリセットし(ステップS108)、タイマーT1をリセットし(ステップS109)、目標指標Qを表示部11に表示させ(ステップS110)、タイマーT1をスタートさせてから(ステップS111)、ステップS118に進む。
【0047】
カウンタCNT0のカウント値が閾値以上ではないと判断する場合(ステップS107のNo)、演算部35は、タイマーT1が0より大きくかつ所定値以内か否かを判定する(ステップS112)。演算部35は、タイマーT1が0より大きくかつ所定値以内であると判定した場合(ステップS112のYes)、後述する視野検出処理を行ってから(ステップS113)、ステップS118に進む。
【0048】
演算部35は、タイマーT1が0である又は所定値を超えると判定した場合(ステップS112のNo)、後述する視野検出処理が行われているか否かを判定する(ステップS114)。演算部35は、視野検出処理が行われていると判定した場合(ステップS114のYes)、視野評価処理を行ってから(ステップS115)、ステップS118に進む。
【0049】
演算部35は、視野検出処理が行われていないと判定した場合(ステップS114のNo)、被験者の視点が注視判定領域S0に存在するか否かを判定する(ステップS116)。演算部35は、被験者の視点が注視判定領域S0に存在すると判定した場合(ステップS116のYes)、カウンタCNT0のカウント値を+1として(ステップS117)、ステップS118に進む。
【0050】
演算部35は、被験者の視点が注視判定領域S0に存在しないと判定した場合(ステップS116のNo)、ステップS118に進む。
【0051】
ステップS118において、演算部35は、タイマーT0の検出結果に基づいて、評価用コンテンツの再生が完了する時刻に到達したか否かを判断する(ステップS118)。演算部35により評価用コンテンツの再生が完了する時刻に到達していないと判断された場合(ステップS118のNo)、上記のステップS104以降の処理を繰り返し行う。
【0052】
演算部35により評価用コンテンツの再生が完了する時刻に到達したと判断された場合(ステップS118のYes)、表示制御部31は、評価用コンテンツの再生を停止させる(ステップS119)。評価部36は、上記の処理結果から得られる視点データに基づいて、評価結果を出力する(ステップS120)。以上で処理が終了する。
【0053】
図8は、視野検出処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、視野検出処理において、演算部35は、移動判定領域S1及び到達判定領域S2を設定する(ステップS201)。演算部35は、被験者の視点が移動判定領域S1に存在するか否かを判定する(ステップS202)。演算部35は、被験者の視点が移動判定領域S1に存在すると判定した場合(ステップS202のYes)、カウンタCNT1のカウント値を+1として(ステップS203)、処理を終了する。
【0054】
演算部35は、被験者の視点が到達判定領域S2に存在するか否かを判定する(ステップS204)。演算部35は、被験者の視点が到達判定領域S2に存在すると判定した場合(ステップS204のYes)、カウンタCNT2のカウント値を+1として(ステップS205)、処理を終了する。演算部35は、被験者の視点が到達判定領域S2に存在しないと判定した場合(ステップS204のNo)、処理を終了する。
【0055】
図9は、視野評価処理の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、視野評価処理において、評価部36は、評価結果を算出したか否かを判定する(ステップS301)。評価部36は、評価結果を算出したと判定した場合(ステップS301のYes)、処理を終了する。
【0056】
評価部36は、評価結果を算出していないと判定した場合(ステップS301のNo)、カウンタCNT2のカウント値が所定値以上か否かを判定する(ステップS302)。評価部36は、カウンタCNT2のカウント値が所定値以上ではないと判定した場合(ステップS302のNo)、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれない(
図9では「評価×」と表記)と評価して(ステップS303)、処理を終了する。
【0057】
評価部36は、カウンタCNT2のカウント値が所定値以上であると判定した場合(ステップS302のYes)、カウンタCNT1のカウント値が所定値以上か否かを判定する(ステップS304)。評価部36は、カウンタCNT1のカウント値が所定値以上ではないと判定した場合(ステップS304のNo)、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれない可能性がある(
図9では「評価△」と表記)と評価して(ステップS305)、処理を終了する。なお、評価△と評価された場合、同一位置に目標指標Qを表示させて視野検出処理を再度行い、再度の視野検出処理に対する視野評価処理において評価△となった場合、
図7のステップS120における評価結果の出力時に、目標指標Qを注視できたが、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれない可能性が高い旨を注記する態様であってもよい。
【0058】
評価部36は、カウンタCNT1のカウント値が所定値以上であると判定した場合(ステップS304のYes)、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれる(
図9では「評価〇」と表記)と評価して(ステップS306)、処理を終了する。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る視野評価装置100は、表示部11と、表示部11における被験者の視点の位置を検出する視点検出部32と、表示部11に基準指標Pを表示させ、基準指標Pに対して離れた位置に目標指標Qを表示させる表示制御部31と、表示部11のうち基準指標Pと目標指標Qとの間に移動判定領域S1を設定する領域設定部33と、基準指標Pと目標指標Qとの位置関係に基づいて被験者の視野を評価する評価部36とを備え、評価部36は、被験者の視点が移動判定領域S1を移動したか否かに基づいて、被験者の視野を評価する。
【0060】
この構成によれば、被験者の視点が移動判定領域S1を移動したか否かに基づいて、被験者の視野を評価するため、偶然性の影響が低減され、被験者の視野を適切に評価することが可能となる。
【0061】
本実施形態に係る視野評価装置100において、領域設定部33は、目標指標Qが表示される部分に到達判定領域S2を設定し、評価部36は、被験者の視点が移動判定領域S1を移動して所定時間以内に到達判定領域S2に到達した場合、目標指標Qの表示位置が基準指標Pを中心とした被験者の可視領域に含まれる旨の評価を行う。この構成によれば、被験者の視点が所定時間以内に到達判定領域S2に到達したことに加えて、移動判定領域S1を移動した場合に目標指標Qの表示位置が被験者の可視領域に含まれると評価するため、偶然に到達判定領域S2に到達した場合を除いて評価を行うことができる。これにより、被験者の視野を高精度に評価することができる。
【0062】
本実施形態に係る視野評価装置100において、評価部36は、被験者の視点が移動判定領域S1を移動することなく所定時間以内に到達判定領域S2に到達した場合、目標指標Qの表示位置が被験者の可視領域に含まれない可能性がある旨の評価を行う。この構成によれば、被験者の視点が所定時間以内に到達判定領域S2に到達した場合であっても、移動判定領域S1を移動した場合には目標領域の表示位置が可視領域に含まれると評価する一方、移動判定領域S1を移動しなかった場合には偶然に到達判定領域S2に到達した可能性があり、目標指標Qの表示位置が可視領域に含まれない可能性があると評価することで評価に差をつけることができる。これにより、被験者の視野を高精度に評価することができる。
【0063】
本実施形態に係る視野評価装置100において、領域設定部33は、基準指標Pが表示される部分に注視判定領域S0を設定し、表示制御部31は、被験者の視点が注視判定領域S0に所定時間以上存在する場合に、目標指標Qを表示させる。この構成によれば、被験者が基準指標Pを注視したことを検出してから目標指標Qが表示されるため、被験者の視野を高精度に評価することができる。
【0064】
本実施形態に係る視野評価装置100において、表示制御部31は、表示部11における端部に基準指標Pを表示し、基準指標Pに対して表示部11における端部から離れた位置に目標指標Qを表示させる。この構成によれば、表示部11を用いる場合において、評価可能な視野の範囲を広げることができる。
【0065】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
CNT0,CNT1,CNT2…カウンタ、EB…眼球、P…基準指標、Q…目標指標、R1,R2…軌跡、S0…注視判定領域、S1…移動判定領域、S2…到達判定領域、T0,T1…タイマー、10…表示装置、11…表示部、11a…角部、20…眼球撮影装置、30…制御装置、31…表示制御部、32…視点検出部、33…領域設定部、34…判定部、35…演算部、36…評価部、37…入出力制御部、38…記憶部、40…出力装置、50…入力装置、100…視野評価装置