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特開2022-158797封止用樹脂組成物、硬化物および電子装置の製造方法
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  • 特開-封止用樹脂組成物、硬化物および電子装置の製造方法 図1
  • 特開-封止用樹脂組成物、硬化物および電子装置の製造方法 図2
  • 特開-封止用樹脂組成物、硬化物および電子装置の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158797
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、硬化物および電子装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20221006BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20221006BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221006BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221006BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20221006BHJP
   C08F 290/06 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C08L83/04
C08L83/10
C08L63/00 A
C08K3/013
H01L23/30 R
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108330
(22)【出願日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021060791
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山下 航平
【テーマコード(参考)】
4J002
4J127
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AA02W
4J002CD04W
4J002CP03X
4J002CP17X
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD090
4J002FD150
4J002FD310
4J002GQ01
4J002HA09
4J127AA07
4J127BB021
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC131
4J127BD301
4J127BD311
4J127BD321
4J127BF781
4J127BF78X
4J127BF78Z
4J127BG381
4J127BG38X
4J127BG38Z
4J127CB141
4J127FA41
4M109AA01
4M109CA21
4M109EA02
4M109EA10
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB08
4M109EB13
(57)【要約】
【課題】樹脂組成物の硬化物において、封止用樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率をはじめとする各種物性を維持しつつ、線膨張係数を特異的に低下させた封止用樹脂組成物および硬化物が提供される。
【解決手段】 本発明の封止用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および無機充填材を含み、さらに、下記一般式(1)で表されるラダー構造のシリコーン化合物を含む、封止用樹脂組成物。また、本発明の硬化物は、上記封止用樹脂組成物を硬化させた、硬化物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂および無機充填材を含み、
さらに、下記一般式(1)で表されるラダー構造のシリコーン化合物を含む、封止用樹脂組成物。
【化1】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子、1価もしくは2価の有機基を表し、Rが複数存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子、メチル基もしくはエチル基を表し、Rが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。nは2以上10000以下の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(1)中のRのうち少なくとも1つが下記一般式(2)で表される、封止用樹脂組成物。
―X―A (2)
(前記一般式(2)中、Xは2価の結合基を表す。Aはモノマーもしくは高分子残基を表す。ただし、Aは前記一般式(1)に該当する高分子とは異なるモノマーもしくは高分子残基である。)
【請求項3】
請求項2に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(2)中のAは、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエチレンオキサイドから選択されるモノマー、前述から選択される1種類もしくは2種類以上の高分子のコポリマーもしくは前述から選択される1種類もしくは2種類以上の高分子を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(2)中のXは、アルキレン基またはオキシアルキレン基である、封止用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記アルキレン基および前記オキシアルキレン基の炭素数が1~5である、封止用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項2から5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(2)におけるAが下記一般式(3)で表されるものを含む、封止用樹脂組成物。
【化2】
(前記一般式(3)中、RはC2p+1で表される化合物である。Rは水素原子、C2q+1で表される化合物もしくはC2qOHで表される化合物である。このとき、pおよびqはそれぞれ異なる数値でもよく、いずれも1以上10以下の整数である。RおよびRがそれぞれ複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。lおよびmはそれぞれ異なる数値でもよく、いずれも2以上10000以下の整数である。)
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(1)中のRのうち、少なくとも一部がメチル基またはエチル基である、封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記一般式(1)の化合物の添加量が全封止用樹脂組成物100質量部に対して5質量部以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
さらに前記一般式(1)の化合物と異なる液状シリコーンを含む、封止用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記液状シリコーンは、変性ポリアルキルシロキサン、変性ポリアリールシロキサン、変性ポリアルキルアリールシロキサンからなる群から選択される1種または2種以上の化合物である、封止用樹脂組成物。
【請求項11】
請求項9または10に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記液状シリコーンの添加量が全封止用樹脂組成物100質量部に対して5質量部以下である、封止用樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂から選択される1種類もしくは2種類以上を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の封止用樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族多官能エポキシ樹脂、脂肪族多官能エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択される、1種または2種以上の化合物を含む、封止用樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を硬化させた、硬化物。
【請求項15】
基材上に電子部品を配設する配設工程と、
請求項1から13のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を用いて、電子部品を封止する封止工程と、を含む、電子装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電子装置の製造方法であって、
前記配置工程において、複数の前記電子部品を、互いに離間するように前記基材上に配設し、
前記封止工程において、隣接する前記電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、全ての前記電子部品の表面を覆うように前記封止用樹脂組成物を用いて前記電子部品を封止し、
前記封止工程の後、前記間隙を埋設した前記封止用樹脂組成物、及び、前記基材を切断し、電子装置を個片化する個片化工程を含む、電子装置の製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の電子装置の製造方法であって、
前記配設工程において、前記基材上に複数の電子部品を配設することで、回路面を形成し、
前記封止工程において、前記回路面を覆うように前記封止用樹脂組成物を用いて封止し、
前記封止工程の後、前記基材の前記回路面を覆う前記封止用樹脂組成物、及び、前記基材を切断し、電子装置を個片化する個片化工程を含む、電子装置の製造方法。
【請求項18】
請求項15に記載の電子装置の製造方法であって、
前記基材は、剥離層を備えており、
前記配設工程において、複数の前記電子部品を、互いに離間するように前記基材の前記剥離層上に配設し、
前記封止工程において、隣接する前記電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、前記剥離層及び全ての前記電子部品の表面を覆うように前記封止用樹脂組成物を用いて前記電子部品を封止し、
前記封止工程の後、前記電子部品及び前記剥離層を覆う封止用樹脂組成物から、剥離層を剥離する剥離工程と、を含む、電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、硬化物および電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子等を封止する封止用樹脂組成物に関しては、様々な技術が検討されている。このような技術としては、たとえば特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、(A)エポキシ樹脂と、(B)フェノール樹脂硬化剤と、(C)無機質充填剤と、(D)低応力化剤とを必須成分として含有する封止用エポキシ樹脂組成物が記載されている。また、上記(D)低応力化剤として、シリコーンゴム粒子とシリコーンオイルとを併用することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-264037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品の製造に際しては、上述のとおり、電子素子や金属部材を封止用樹脂組成物によって封止するプロセスが行われる場合がある。このようなプロセスにおいては、電子素子等を封止して得られる成形体の反りを抑制することが、電子部品を安定的に製造する観点から重要となる。このため、電子素子等を封止して得られる成形体の反りを抑制することが可能な、封止用樹脂組成物を実現することが求められていた。
【0005】
一方、本発明者らが上記のような液状シリコーンを使用した樹脂組成物について検討を行ったところ、線膨張係数や硬化物の曲げ強度等の物性において改善の余地があることが明らかとなった。
【0006】
したがって、従来の封止用樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率をはじめとする各種物性を維持したまま、より線膨張係数を低下させることによって熱硬化時の熱収縮を抑え、経時変化の発生が少なくなるように設計された樹脂組成物の実現が望まれている。
【0007】
本発明は、このような背景を鑑み、従来の封止用樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率をはじめとする各種物性を維持しつつ、線膨張係数を特異的に低下させた封止用樹脂組成物を提供するものである。また、本発明は、このような樹脂組成物を硬化させた硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、検討の結果、以下に提供される発明を完成させ、上記課題を解決した。
【0009】
本発明によれば、
熱硬化性樹脂および無機充填材を含み、
さらに、下記一般式(1)で表されるラダー構造のシリコーン化合物を含む、封止用樹脂組成物が提供される。
【0010】
【化1】
【0011】
上記一般式(1)中、Rは水素原子、1価もしくは2価の有機基を表し、Rが複数存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子、メチル基もしくはエチル基を表し、Rが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。nは2以上10000以下の整数である。
【0012】
また、本発明によれば、
上記封止用樹脂組成物を硬化させた、硬化物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、
基材上に電子部品を配設する配設工程と、
上記封止用樹脂組成物を用いて、電子部品を封止する封止工程と、を含む、電子装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂組成物の硬化物において、封止用樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率をはじめとする各種物性を維持しつつ、線膨張係数を特異的に低下させた封止用樹脂組成物および硬化物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る電子装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る電子装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3】本実施形態に係る電子装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
<樹脂組成物>
まず、本実施形態の樹脂組成物について説明する。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂および無機充填材を含み、
さらに、下記一般式(1)で表されるラダー構造のシリコーン化合物を含む、封止用樹脂組成物である。
【0019】
【化2】
【0020】
上記一般式(1)中、Rは水素原子、1価もしくは2価の有機基を表し、Rが複数存在する場合は、それらは同一でも異なっていてもよい。Rは水素原子、メチル基もしくはエチル基を表し、Rが複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。nは2以上10000以下の整数である。
【0021】
ここで、上記一般式(1)中のnの下限値は、好ましくは2であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは50である。nの値が上記下限値以上であることにより、封止用樹脂組成物の線膨張係数をより好適に低下させることができる。
【0022】
また、上記一般式(1)中のnの上限値は、好ましくは10000であり、より好ましくは5000であり、さらに好ましくは1000である。nの値が上記上限値以下であることにより、封止用樹脂組成物の溶解性がより好適になる。
【0023】
従来では、封止用樹脂組成物中に低応力材として液状シリコーンを分散させることで内部応力を低減させることが行われている。しかし、液状シリコーンを用いた場合、曲げ強度および曲げ弾性率などの一部の物性が、液状シリコーンを添加しない場合と比較して大幅に低下が発生することが知られている。また、液状シリコーンは樹脂との相溶性が高くないため、成型物の表面に浮き出し、外観不良に繋がるという問題点もある。
【0024】
ここで、本実施形態の樹脂組成物では、上記一般式(1)の化合物を液状シリコーンの代替として用いることにより、線膨張係数を減少させつつも、液状シリコーンを添加しない場合と比較して曲げ強度および曲げ弾性率などの一部の物性を維持することができる。
【0025】
また、本発明者らが従来技術を検討したところ、液状シリコーンを2種類以上同時に添加した場合、線膨張係数や曲げ強度などの特性の制御が難しくなるという知見が得られた。
【0026】
一方、上記一般式(1)のシリコーン化合物に液状シリコーンを混合して使用することが可能である。上記メカニズムは定かではないが、上記一般式(1)が固形であることが関連していると考えられる。その結果、従来よりも線膨張係数や曲げ強度などの樹脂組成物の各種物性の制御を容易にすることができる。
【0027】
本発明の一実施形態においては、上記一般式(1)中のRのうち少なくとも1つが下記一般式(2)で表されることが好ましい。
―X―A (2)
(上記一般式(2)中、Xは2価の結合基を表す。Aはモノマーもしくは高分子残基を表す。ただし、Aは上記一般式(1)に該当する高分子とは異なるモノマーもしくは高分子残基である。)
上記構成を含むことによって、上記熱硬化性樹脂によって形成される架橋構造中へ侵入した上記一般式(1)同士の架橋構造の形成を図ることができ、樹脂組成物を硬化物とした際の曲げ強度を向上させることができる。
【0028】
このとき、本発明の一実施形態においては、上記一般式(2)中のAは、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエチレンオキサイドから選択されるモノマー、前述から選択される1種類もしくは2種類以上の高分子のコポリマーもしくは前述から選択される1種類もしくは2種類以上の高分子を含むことが好ましい。上記構成を含むことによって、上記熱硬化性樹脂によって形成される架橋構造中へ侵入した上記一般式(1)同士の剛直性を増大させ、樹脂組成物を硬化物とした際の曲げ強度をさらに向上させることができる。
なお、この際のコポリマーの種類は特に限定されず、ランダムコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーのいずれの形態も採用することができる。
【0029】
本発明の一実施形態においては、上記一般式(2)中のXは、アルキレン基またはオキシアルキレン基であることが好ましい。上記構成を含むことによって、上記一般式(2)の耐熱安定性および耐薬品安定性が向上し、上記一般式(1)を樹脂組成物に含むことによる効果を安定させることができる。
【0030】
このとき、本発明の一実施形態においては、上記アルキレン基および上記オキシアルキレン基の炭素数が1~5であることが好ましい。上記構成を含むことによって、上記一般式(1)同士が架橋した際の剛直性を増大させ、樹脂組成物を硬化物とした際の曲げ強度をさらに向上させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態においては、上記一般式(2)におけるAが以下一般式(3)で表されるものを含む化合物であることが好ましい。上記一般式(2)におけるAが以下一般式(3)で表されるものを含むことにより、一般式(1)同士が架橋した際の架橋密度を増大させ、樹脂組成物を硬化物とした際の曲げ強度をさらに向上させることができる。
【0032】
【化3】
【0033】
上記一般式(3)中、RはC2p+1で表される化合物である。Rは水素原子、C2q+1で表される化合物もしくはC2qOHで表される化合物である。このとき、pおよびqはそれぞれ異なる数値でもよく、いずれも1以上10以下の整数である。RおよびRがそれぞれ複数ある場合、それらは同一でも異なっていてもよい。lおよびmはそれぞれ異なる数値でもよく、いずれも2以上10000以下の整数である。
【0034】
ここで、上記一般式(3)中のlおよびmの下限値は、好ましくは2であり、より好ましくは25であり、さらに好ましくは50である。lおよびmの値が上記下限値以上であることにより、封止用樹脂組成物の線膨張係数をより好適に低下させることができる。
また、上記一般式(3)中のlおよびmの上限値は、好ましくは10000であり、より好ましくは5000であり、さらに好ましくは1000である。lおよびmの値が上記上限値以下であることにより、封止用樹脂組成物の流動性がより好適になる。
【0035】
本発明の一実施形態においては、上記一般式(1)中のRのうち、少なくとも一部がメチル基またはエチル基であることが好ましい。上記構成を含むことによって、上記熱硬化性樹脂によって形成される架橋構造中への侵入を容易にし、線膨張係数の低下をより好適にすることができる。
【0036】
本発明の一実施形態においては、上記一般式(1)の化合物の添加量が、全封止用樹脂組成物100質量部に対して好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下である。上記一般式(1)の化合物の添加量が上記上限値以下であることにより、樹脂組成物の各種物性を好適に保ったまま、線膨張係数を低下させることができる。
【0037】
以下、樹脂組成物に含まれる各成分についてさらに詳細に説明する。
【0038】
(液状シリコーン)
本発明の一実施形態においては、さらに上記一般式(1)の化合物と異なる液状シリコーンを含むことが好ましい。上記一般式(1)の化合物は、前述のように液状シリコーンと混合して使用することが可能である。上記一般式(1)の化合物と液状シリコーンとを混合して使用することにより、従来よりも線膨張係数や曲げ強度などの樹脂組成物の各種物性の制御を容易にすることができる。
【0039】
本実施形態における液状シリコーンとしては、従来公知の液状シリコーンを使用することができるが、特に変性ポリアルキルシロキサン、変性ポリアリールシロキサン、変性ポリアルキルアリールシロキサンからなる群から選択される1種または2種以上の化合物であることが好ましい。
【0040】
本実施形態において、樹脂組成物中の液状シリコーンの含有量は、全封止用樹脂組成物100質量部に対して好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは2質量部以下である。
液状シリコーンの含有量が上記上限値以下であることにより、樹脂組成物の各種物性を好適に保ったまま、線膨張係数を低下させることができる。
【0041】
(熱硬化性樹脂)
本発明の一実施形態においては、熱硬化性樹脂として従来公知の熱硬化性樹脂が使用できる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール誘導体またはこれらの誘導体等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1分子内に反応性官能基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。その中でも、上記一般式(1)に示すシリコーン化合物の溶解性の観点から、特にエポキシ樹脂、マレイミド樹脂、アクリル樹脂から選択される1種類もしくは2種類以上を含むことが好ましい。
【0042】
本実施形態に用いることができるエポキシ樹脂としては、一般的に樹脂組成物に使用される公知のエポキシ樹脂が挙げられる。公知のエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの;例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;フェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル型エポキシ樹脂やビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等アラルキル型樹脂のエポキシ化物;例えばフルオレン骨格を有する多官能エポキシ樹脂などの芳香族多官能エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;テルペン変性エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;脂肪族多官能エポキシ樹脂;多官能脂環式エポキシ樹脂;及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられる。この中でも、樹脂組成物の曲げ強度の向上を図る観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族多官能エポキシ樹脂、脂肪族多官能エポキシ樹脂、多官能脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択される、1種または2種以上の化合物を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
本実施形態に用いることができるマレイミド樹脂としては、一般的に樹脂組成物に使用される公知のマレイミド樹脂が挙げられる。公知のマレイミド樹脂としては、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、p-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、N,N'-エチレンジマレイミド、N,N'-ヘキサメチレンジマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3-ジメチル-5,5-ジエチル-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド等の分子内に2つのマレイミド基を有する化合物、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子内に3つ以上のマレイミド基を有する化合物等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用することもできる。
【0044】
本実施形態に用いることができるアクリル樹脂とは、分子内にラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(メタ)アクリロイル基が反応することで3次元的網目構造を形成し硬化し得る化合物のことである。(メタ)アクリロイル基は、分子内に1つ以上有する必要があるが、3次元的網目構造を形成する点で2つ以上含まれていることが好ましい。ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,3-シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1,2-シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,3-シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジエタノールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレートなどの水酸基を有する(メタ)アクリレートやこれら水酸基を有する(メタ)アクリレートとジカルボン酸またはその誘導体を反応して得られるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで使用可能なジカルボン酸としては、例えばしゅう酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸およびこれらの誘導体が挙げられる。
【0045】
本実施形態において、樹脂組成物中の全熱硬化性樹脂の含有量は、従来の樹脂組成物の硬化性をはじめとする各種物性を保つ観点から、樹脂組成物全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上である。
また、樹脂組成物を用いて得られる硬化物について、高温信頼性や曲げ強度を向上させる観点から、樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。
【0046】
本実施形態において、樹脂組成物は、高温信頼性の観点から、イオン性不純物であるNaイオンやClイオン、Sイオンを極力含まないことが好ましい。
【0047】
(無機充填材)
無機充填材は、封止用樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下を低減する機能を有するものであり、当該分野で一般的に用いられる無機充填材を使用することができる。
【0048】
無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、球状シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素および窒化アルミ等が挙げられ、これらの無機充填材は、単独でも混合して使用してもよい。
【0049】
無機充填材の平均粒径D50は、例えば0.01μm以上、150μm以下とすることができる。
【0050】
封止用樹脂組成物中における無機充填材の量の下限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。下限値が上記範囲内であると、得られる封止用樹脂組成物の硬化に伴う吸湿量の増加や、強度の低下を、より効果的に低減することができる。
【0051】
また、封止用樹脂組成物中の無機充填材の量の上限値は、封止用樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、さらに好ましくは92質量%以下である。上限値が上記範囲内であると、得られる封止用樹脂組成物は良好な流動性を有するとともに、良好な成形性を備える。
【0052】
(その他の成分)
本発明の封止用樹脂組成物は、上記各成分に加え、以下に示す成分を含み得る。
【0053】
(硬化剤)
本実施形態に用いることができる硬化剤としては、一般的に封止用樹脂組成物に使用される公知の硬化剤が挙げられる。公知の硬化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂やビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂等の多官能フェノール樹脂、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂が挙げられる。この中でも多官能型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型フェノール樹脂のうち1種または2種を含むことが好ましく、トリフェニルメタン型フェノール樹脂またはビフェニレン骨格含有多官能フェノール樹脂を含むことがさらに好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
本実施形態において、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、成形時において、優れた流動性を実現し、充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる硬化物について、高温信頼性や曲げ強度を向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して好ましくは25質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0055】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、熱硬化性樹脂の反応基と硬化剤の反応基との反応を促進する機能を有するものであり、従来公知の硬化促進剤が用いられる。
【0056】
硬化促進剤の具体例としては、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、さらには前記アミジン、アミンの4級塩等の窒素原子含有化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、硬化性の観点からはリン原子含有化合物が好ましく、また耐半田性と流動性の観点では、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物が特に好ましく、連続成形における金型の汚染が軽度である点では、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物は特に好ましい。
【0057】
封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0058】
(カップリング剤)
カップリング剤は、封止用樹脂組成物中に無機充填材が含まれる場合に、熱硬化性樹脂と無機充填材との密着性を向上させる機能を有するものであり、例えば、シランカップリング剤等が用いられる。
【0059】
シランカップリング剤としては、各種のものを用いることができるが、アミノシランを用いるのが好ましい。これにより、封止用樹脂組成物の流動性を向上させることができる。
【0060】
アミノシランとしては、特に限定されないが、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-6-(アミノヘキシル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(3-(トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ベンゼンジメタナミン等が挙げられる。
【0061】
シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の下限値としては、全樹脂組成物中0.01質量%以上が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の下限値が上記範囲内であれば、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、硬化物における良好な耐半田クラック性を得ることができる。また、シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の上限値としては、全樹脂組成物中1質量%以下が好ましく、より好ましくは0.8質量%以下、特に好ましくは0.6質量%以下である。シランカップリング剤等のカップリング剤の配合割合の上限値が上記範囲内であれば、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面強度が低下することがなく、硬化物における良好な耐半田クラック性を得ることができる。
【0062】
また、上述したその他の成分以外に、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等の着色剤;イオン捕捉剤;カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類もしくは金属水酸化物や複合金属水酸化物等の無機難燃剤を適宜配合してもよい。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、上記のシリコーン化合物、液状シリコーン熱硬化性樹脂および無機充填剤、ならびに必要に応じて上記のその他の成分を、当該分野で通常用いられる方法により混合することにより得ることができる。
【0064】
次に、封止用樹脂組成物の形状について説明する。
本実施形態において、封止用樹脂組成物の形状は、封止用樹脂組成物の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状、粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0065】
また、封止用樹脂組成物の製造方法については、たとえば、上述した各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、粉砕後、成形して粒子状またはシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。たとえば、タブレット状に打錠成形して粒子状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また、たとえば真空押し出し機によってシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0066】
(用途)
本発明の一実施形態において、上記の封止用樹脂組成物を硬化させた、硬化物とすることができる。なお、硬化物としては公知の硬化物の使用用途のいずれにも適用できるが、例えば半導体、基板、コイル、磁石などを封止するために用いることが好ましい。
【0067】
本実施形態にかかる電子装置の種類としては、具体的には、WLP(Wafer Level Package)、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどが挙げられる。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、封止用樹脂組成物の曲げ強度、曲げ弾性率をはじめとする各種物性を維持しつつ、線膨張係数を特異的に低下できることから、上記具体例のうち、大面積の基材を用いるWLPまたはMAPに好適に用いることができ、WLPにより好適に用いることができる。
【0068】
(電子装置の製造方法)
本実施形態に係る電子装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係る電子装置の製造方法は、例えば、基材上に電子部品を配設する配設工程と、上述した封止用樹脂組成物を用いて、電子部品を封止する封止工程と、を含む。
【0069】
(配設工程)
配設工程では、基材上に電子部品を配設する。
配設工程で配設される電子部品の数は限定されず、例えば、基材上に1個の電子部品を配設してもよく、基材上に複数の電子部品を配設してもよい。
配設工程では、例えば、ウエハなどの基材上に電子回路などの電子部品を形成してもよく、有機基材などの基材上に半導体素子などの電子部品を配置してもよい。
本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、充填性に優れるため、例えば、複数のチップをスタックさせて配置する場合に好適に用いることができる。
【0070】
(封止工程)
封止工程では、上述した封止用樹脂組成物を用いて、電子部品を封止する。これにより、上述した封止部材を封止用樹脂組成物の硬化物で形成することができる。
封止する方法としては、具体的には、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形などが挙げられる。これらの方法により、封止用樹脂組成物を、成形し、硬化させることにより封止部材を形成することができる。本実施形態の封止用樹脂組成物は、大面積の基材を封止する場合に好適に用いることができる。
【0071】
以下に、具体的な電子装置及びその製造方法について、説明する。
図1はWafer Level Package(:WLP)の電子装置の製造方法の一例である。
図2は、Mold Array Package(:MAP)の電子装置の製造方法の一例である。
図3は、Fan-Out型Packageの電子装置の製造方法の一例である。
【0072】
Wafer Level Package(:WLP)の電子装置の製造方法としては、例えば、上述した配設工程において、基材上に複数の電子部品を配設することで、回路面を形成し、さらに、上述した封止工程において、回路面を覆うように封止用樹脂組成物を用いて封止し、さらに、封止工程の後、基材の回路面を覆う前止用樹脂組成物、及び、基材を切断し、電子装置を個片化する個片化工程を含む。
なお、配設工程として、例えば、回路面の上にバンプを形成してもよい。また、封止工程として、封止材層を削って、封止材層からバンプを露出させてもよい。さらに、封止工程の後、配線工程として、バンプに半田ボールを接続してもよい。
【0073】
Wafer Level Packageの電子装置の製造方法について、図1(a)-(f)に記載の各工程と共に詳細を説明する。
まず、配設工程として、例えば、図1(a)に示すように、ウエハなどの基材10上に、図示しない複数の電子部品を配設する。これにより、回路面22を形成する。次いで、例えば、図1(b)に示すように、回路面22の上に、後述する半田ボールと、電子部品とを電気的に接続するために、メタルポストなどのバンプ22を形成する。
次いで、封止工程として、例えば、図1(c)に示すように、上述した回路面22を覆うように封止用樹脂組成物を用いて封止し、封止材層30を形成する。次いで、例えば、図1(d)に示すように、封止材層30を削ることで、封止材層30からバンプ22を露出させる。なお、封止材層30を形成する際に、図1(d)に示すように、バンプ22が露出するように封止材層30を形成する場合、封止材層30は削らなくてもよい。
次いで、配線工程として、例えば、図1(e)に示すように、バンプ22に半田ボール96を接続する。
次いで、個片化工程として、例えば、図1(f)に示すように、封止材層30及び基材10をダイシングブレード、レーザーなどで切断し、電子装置50を得る。なお、個片化する電子装置50に接続されるバンプ22及びハンダボール96の数は限定されず、電子装置50の種類に応じて設定することができる。
【0074】
Mold Array Packageの電子装置の製造方法としては、例えば、上述した配置工程において、複数の電子部品を、互いに離間するように基材上に配設し、さらに、上述した封止工程において、隣接する電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、全ての電子部品の表面を覆うように封止用樹脂組成物を用いて電子部品を封止し、封止工程の後、間隙を埋設した前記封止用樹脂組成物、及び、基材を切断し、電子装置を個片化する個片化工程を含む。
【0075】
Mold Array Package(:MAP)の電子装置の製造方法について、図2(a)-(d)に記載の各工程と共に詳細を説明する。
まず、配設工程として、例えば、図2(a)に示すように、ウエハなどの基材10を準備する。次いで、例えば、図2(b)に示すように、基材10の上に複数の電子部品20を、互いに離間するように基材上に配設する。なお、配設する方法としては、電子部品20の種類に応じた公知の方法を用いることができ、例えば、接着剤を用いて配設してもよい。
次いで、封止工程として、例えば、図2(c)に示すように、隣接する電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、全ての電子部品の表面を覆うように封止用樹脂組成物を用いて電子部品を封止し、封止材層30を形成する。
次いで、個片化工程として、例えば、図2(d)に示すように、電子部品20の間隙に存在する封止材層30及び基材10をダイシングブレード、レーザーなどで切断し、電子装置50を得る。なお、個片化する電子装置50に接続される電子部品20の数は限定されず、電子装置50の種類に応じて設定することができる。
【0076】
Fan-Out型Packageの電子装置の製造方法としては、まず、犠牲材70として、剥離層71を備えた基材10を準備する。そして、上述した配設工程において、複数の電子部品を、互いに離間するように基材の剥離層上に配設し、上述した封止工程において、隣接する電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、剥離層及び全ての電子部品の表面を覆うように封止用樹脂組成物を用いて電子部品を封止し、封止工程の後、電子部品及び剥離層を覆う封止用樹脂組成物から、剥離層を剥離する剥離工程と、を含む。
なお、剥離工程の後、再配線絶縁樹脂層、ビアホール、ビア、再配線回路、半田ボール、ソルダーレジスト層などを形成する配線工程を行ってもよい。さらに、配線工程の後、封止材層を切断し電子装置を個片化する個片化工程を行ってもよい。
【0077】
剥離層としては、具体的には、上述した熱発泡性粘着剤などを用いることができる。すなわち、Fan-Out型Packageの電子装置の製造方法では、例えば、基材として熱発泡性接着剤からなる剥離層を備えたものを用いる。ここで、基材としては剥離層のみで形成されていてもよいし、剥離層と、上述した金属基材、無機基材、有機基材などとが積層されたものを用いてもよい。
【0078】
Fan-Out型Packageの電子装置の製造方法について、図3(a)-(g)に記載の各工程と共に詳細を説明する。
まず、配設工程として、例えば、図3(a)に示すように、犠牲材70の上に、複数の電子部品20を、互いに離間するように犠牲材70の剥離層71上に配設する。なお、剥離層71としては、例えば、接着力の低い接着剤を用いてもよく、発泡剤を含む樹脂を用いてもよい。これにより、後述する剥離工程にて、剥離層71と、電子部品20及び封止材層30とを剥離することができる。
次いで、封止工程として、例えば、図3(b)に示すように、隣接する電子部品の間に存在する間隙を埋設し、さらに、剥離層71及び全ての電子部品20の表面を覆うように封止用樹脂組成物を用いて電子部品を封止し、封止材層30を形成する。
次いで、剥離工程として、例えば、図3(c)に示すように、剥離層71を剥離する。剥離の方法は、具体的には、加熱処理、電子線照射、紫外線照射などにより、熱発泡性粘着剤からなる剥離層を発泡させることで行うことができる。
次いで、配線工程として、例えば、図3(d)に示すように、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサイド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂などからなる再配線用絶縁樹脂層80を形成する。再配線用絶縁樹脂層80はフォトリソグラフィー法等を用いてパターンを形成し、硬化処理を行うことで形成される。なお、再配線用絶縁樹脂層80には、ビアホール82を形成してもよい。
さらに、配線工程として、例えば、図3(e)に示すように、再配線用絶縁樹脂層80の全面に給電層をスパッタ等の方法で形成した後、給電層の上にレジスト層を形成し、所定のパターンに露光、現像後、電解銅メッキにてビア92、再配線回路94を形成する。次いで、レジスト層を剥離し、給電層をエッチングする。さらに、例えば、図3(f)に示すように、配線工程として、再配線回路94にハンダボール96を搭載する。次いで、再配線回路94及びハンダボール96の一部を覆うようにソルダーレジスト層98を形成する。
次いで、個片化工程として、例えば、図3(g)に示すように、封止材層及を切断し電子装置50を個片化する個片化工程を行ってもよい。ここで、電子装置50に含まれる電子部品20の数は限定されず、電子装置50の種類に応じて設定することができる。
【0079】
以上、本発明の樹脂組成物および硬化物について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0080】
例えば、本発明の樹脂組成物には、同様の機能を発揮し得る、任意の成分が添加されていてもよい。
【実施例0081】
<実施例、比較例>
(封止用樹脂組成物の調製)
各実施例および各比較例のそれぞれについて、以下のように封止用樹脂組成物を調製した。
まず、表1に示す各成分をミキサーにより混合した。次いで、得られた混合物を、ロール混練した後、冷却、粉砕して粉粒体である封止用樹脂組成物を得た。
表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中に示す各成分の配合割合は、樹脂組成物全体に対する配合割合(質量%)を示している。
(原料)
(シリコーン化合物)
シリコーン化合物1:一般式(1)で表されるラダー型の構造を有する固形シリコーン、LS-2000乾燥品、トクシキ株式会社製(重量平均分子量:推定1500~4000、LS-2000の溶媒を除去し、不揮発分を100wt%にしたもの。)
【0082】
【化4】
【0083】
シリコーン化合物2:一般式(3)で表される構造を含む、一般式(1)で表されるラダー型の構造を有する固形シリコーン、SQ 100乾燥品、トクシキ株式会社製(重量平均分子量:推定5000~10000、SQ 100の溶媒を除去し、不揮発分を100wt%にしたもの。)
【0084】
【化5】
【0085】
(液状シリコーン)
液状シリコーン1:変性ポリアルキルシロキサン、FZ-3730、東レ・ダウコーニング株式会社製
液状シリコーン2:変性ポリアルキルシロキサン、KF-96-3000CS、信越化学工業株式会社製
【0086】
(無機充填材)
無機充填材1:溶融シリカ(TS12-079-5、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、平均径20μm)
無機充填材2:溶融シリカ(SC-2500-SQ、アドマテックス株式会社製、平均径0.5μm)
無機充填材3:溶融シリカ(SC-5500-SQ、アドマテックス株式会社製、平均径1.5μm)
【0087】
(着色剤)
着色剤1:カーボンブラック(ESR-2001、東海カーボン株式会社製)
【0088】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(CF-4083、東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0089】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:多官能エポキシ樹脂(YX-4000K、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量:185g/eq)
エポキシ樹脂2:多官能エポキシ樹脂(YL6677、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量:163g/eq)
エポキシ樹脂3:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000、日本化薬株式会社製、エポキシ当量:270g/eq)
【0090】
(硬化剤)
硬化剤1:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(HE910-20、エア・ウォーター株式会社製)
硬化剤2:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(MEH-7851SS、明和化成株式会社製)
【0091】
(硬化促進剤)
硬化促進剤1:2,3-ジヒドロキシナフタレン(2.3-DON-H、エア・ウォーター株式会社製)
硬化促進剤2:トリフェニルホスフィン(PP-360、ケイ・アイ化成株式会社製)
【0092】
(離型剤)
離型剤1:カルナバワックス(RIKOMONTO TP NC-133、クラリアント株式会社製)
【0093】
(イオン捕捉剤)
イオン捕捉剤1:イオン捕捉剤(DHT-4H、協和化学株式会社製)
【0094】
(物性評価)
各例で得られた樹脂組成物の各物性を、以下の方法で評価した。
【0095】
(スパイラルフロー(SF))
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、「KTS-15」)を用いて、ANSI/ASTM D 3123-72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間120秒の条件で、各実施例および各比較例の樹脂組成物を注入し、流動長を測定し、これをスパイラルフローとした。測定結果を表1に示す。
なお、スパイラルフローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
【0096】
(貯蔵弾性率、ガラス転移温度(Tg))
各実施例および各比較例の樹脂組成物の貯蔵弾性率E'は、以下の方法で測定した。すなわち、各実施例および各比較例の樹脂組成物について、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で、80mm×10mm×4mmの試験片を成形し、175℃4時間で後硬化し、動的粘弾性測定器(エーアンドディ株式会社製、「DDV-25GP」)を用いて35℃での貯蔵弾性率を測定した。また、昇温速度:5℃/分、周波数:10Hz、荷重:800gの条件でtanδを測定し、tanδのピーク頂点の温度をガラス転移温度として読み取った。測定結果を表1に示す。
【0097】
(線膨張係数)
各実施例および各比較例について、得られた樹脂組成物の線膨張係数を測定した。測定は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製「KTS-30」)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒間で注入成形し、15mm×4mm×4mmの成形品を得た。次いで、得られた成形品を175℃、4時間で後硬化して試験片を作製した。そして、得られた試験片に対して、熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~400℃、昇温速度5℃/分の条件下で、25-70℃における平均線膨張係数α(ppm/℃)、270-290℃における平均線膨張係数α(ppm/℃)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0098】
(曲げ弾性率、曲げ強さ)
各実施例および各比較例について、得られた樹脂組成物の曲げ弾性率、曲げ強さを測定した。測定は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-30)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入成形し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形物を得た。得られた成形物を、後硬化として175℃で4時間加熱処理したものを試験片とし、曲げ弾性率および曲げ強さをJIS K 6911に準じて25℃および260℃の雰囲気温度下で測定した。測定結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例ではシリコーン化合物を加えることによって曲げ弾性率や曲げ強度を始めとする物性を保ったまま、線膨張係数を下げることができ、高温安定性の高い封止用樹脂組成物の提供が可能であった。
【符号の説明】
【0101】
10 基材
20 電子部品
22 回路面
22 バンプ
30 樹脂層
50 電子装置
70 犠牲材
71 剥離層
80 再配線用絶縁樹脂層
82 ビアホール
92 ビア
94 再配線回路
96 半田ボール
96 ハンダボール
98 ソルダーレジスト層
図1
図2
図3