(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022015881
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20220114BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20220114BHJP
H02K 3/52 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K3/46 B
H02K3/52 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020119028
(22)【出願日】2020-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 陽
【テーマコード(参考)】
5H604
5H605
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB02
5H604PB03
5H604QA08
5H604QB04
5H604QB14
5H604QB17
5H605AA08
5H605BB05
5H605CC08
5H605EB10
5H605EB16
5H605EC05
5H605FF06
5H605GG04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】コネクタに対して外部接続配線の端子を挿抜しても基板保持爪の変形や損傷を防ぐことができる電動機を提供する。
【解決手段】インシュレータ6には、回路基板8の外周縁部に設けられた複数の基板凹部8a1,8a2に各々係止する複数の基板保持爪6a、6a1、6a2が突設されており、当該複数の基板保持爪は、回路基板8の外周縁部においてコネクタ搭載側の基板保持爪6a1どうしの間隔が反コネクタ搭載側の基板保持爪6a2の間隔より狭く設けられ、かつコネクタ9の搭載位置と対向する反コネクタ搭載位置にラジアル荷重を受ける荷重受けピン6bが突設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のバックヨークに径方向に極歯が所定間隔で複数突設された固定子コアに軸方向両側に装着されたインシュレータにコネクタが搭載された回路基板が保持される電動機であって、
前記インシュレータには、前記回路基板の外周縁部に設けられた複数の基板凹部に各々係止する複数の基板保持爪が突設されており、当該複数の基板保持爪は、前記回路基板の外周縁部においてコネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔が反コネクタ搭載側の基板保持爪の間隔より狭く設けられ、かつコネクタ搭載位置と対向する反コネクタ搭載位置にラジアル荷重を受ける荷重受け部材が突設されていることを特徴とする電動機。
【請求項2】
前記回路基板の外周縁部には前記基板保持爪が係止する基板凹部及び前記荷重受け部材が嵌まり込む基板切欠き部が設けられている請求項1記載の電動機。
【請求項3】
前記回路基板には、固定子極歯を覆うインシュレータに巻かれたコイルの巻き始め位置若しくはコイルの巻き終わり位置とコイル線を案内する複数の案内溝が前記基板保持爪と干渉しない位置に設けられている請求項1又は請求項2記載の電動機。
【請求項4】
複数の基板保持爪は、前記回路基板の外周縁部に設けられたコネクタ挿入方向に対して線対称位置に設けられ、反コネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔よりコネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔が狭くなるように設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えば、回路基板を固定子コアに装着されたインシュレータに保持する電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図3Aに示すインナーロータ型のモータ51において、モータケース52内に固定子53が組み付けられ、回転子54はモータケース52に組み付けられた転がり軸受55によって回転子軸54aが回転可能に支持されている。固定子53は、環状のバックヨークに径方向に極歯が所定間隔で複数突設された固定子コア53aの極歯に軸方向両側から装着されたインシュレータ56にコイル57が巻かれている。また、コイル57に給電するための配線パターンが形成された回路基板59が反出力側のインシュレータ56に保持されている。回路基板59にはコネクタ58が搭載されており、コネクタ58は図示しない外部接続配線の端子と接続されて給電される。
【0003】
図3Bに示すように、回路基板59の外周縁部には基板凹部59aがコネクタ挿入方向(矢印方向)に対して線対称位置(中心角θ)に設けられ、インシュレータ56の対応する位置に突設された基板保持爪56aが基板凹部59aに各々係止することで回路基板59が保持されるようになっている。
図3Aに示すように、回路基板59に搭載されたコネクタ58は、モータケース52の外周面より外部に露出するように配置され、図示しない外部接続配線と配線接続できるようになっている。
【0004】
コネクタが設けられた回路基板がインシュレータに固定され構成として特許文献1に示すモータが開示されている。モータは、コネクタを介して、駆動電流を得る。回路基板の外周面には外周から径方向内側に凹む切り欠きが設けられている。インシュレータに突設された先端が鉤状に形成された係止部が、基板外周面に設けられた切り欠きに各々挿入され、更に切り欠きの一部を拡大してコイル配線の引き出し用に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図2Bに示すように、回路基板59をコネクタ58に対するコネクタ挿入方向(矢印方向)に対して線対称位置に設けられた基板保持爪56aで保持する場合、コネクタ58に外部接続配線の端子を接続する場合、回路基板59にはコネクタ搭載側より対向する反コネクタ搭載側に向かってラジアル方向に荷重が作用する。このとき、回路基板59を等角配置で保持している基板保持爪56aにラジアル方向に荷重が作用して基板保持爪56aが曲がったり、折れたりするおそれがあった。
また、基板保持爪56aがコネクタ挿入方向に線対称位置に設けられていると、インシュレータ56に回路基板59を組み付ける際に180度誤った向きに搭載するおそれもあった。
さらには、例えば3相6スロットのモータであってデルタ結線されている場合、
図2Bに示すようにコイル57の巻き始め位置とコイル57の巻き終わり位置で回路基板59の外周縁部に等角配置で設けられるコイル線を案内するV字状の案内溝60の位置が基板保持爪56aの係止する基板凹部59aと重なってしまい、回路基板59上でコイル配線を引き回す必要が生じて線処理作業に時間がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に述べるいくつかの実施形態は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、コネクタに対して外部接続配線の端子を挿抜しても基板保持爪の変形や損傷を防ぐことができ、回路基板の組み付け姿勢の誤りもなくなり、更には基板保持爪の係止位置とコイル線の案内溝との干渉がなくなり線処理をし易くした電動機を提供することにある。
【0008】
以下に述べるいくつかの実施形態に関する開示は、少なくとも次の構成を備える。環状のバックヨークに径方向に極歯が所定間隔で複数突設された固定子コアに軸方向両側に装着されたインシュレータにコネクタが搭載された回路基板が保持される電動機であって、前記インシュレータには、前記回路基板の外周縁部に設けられた複数の基板凹部に各々係止する複数の基板保持爪が突設されており、当該複数の基板保持爪は、前記回路基板の外周縁部においてコネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔が反コネクタ搭載側の基板保持爪の間隔より狭く設けられ、かつコネクタ搭載位置と対向する反コネクタ搭載位置にラジアル荷重を受ける荷重受け部材が突設されていることを特徴とする。
【0009】
上述した電動機を用いれば、コネクタに対して外部接続配線の端子を挿入する際にラジアル方向に作用する荷重を反コネクタ搭載位置に設けられた荷重受け部材が受け、コネクタから外部接続配線の端子を引き抜く場合には、コネクタ搭載側に設けられた間隔が狭い基板保持爪がラジアル荷重を受けるので、基板保持爪の変形や損傷を防ぐことができる。
また、コネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔が反コネクタ搭載側の基板保持爪の間隔より狭く設けられているので、回路基板の向きを180度間違った向きに組み付けるおそれもなくなる。
更には、コネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔がコネクタ反搭載側より狭くすることで、基板保持爪の位置とコイルの巻き始め位置とコイルの巻き終わり位置でコイル線の案内溝との干渉がなくなり線処理がし易くなる。
【0010】
前記回路基板の外周縁部には前記基板保持爪が係止する基板凹部及び前記荷重受け部材が嵌まり込む基板切欠き部が設けられていることが好ましい。
これにより、回路基板を複数の基板保持爪を基板凹部に係止させかつ荷重受け部材を基板切欠き部に嵌め合わせることで、回路基板をインシュレータに位置合わせして組み付けることができる。
【0011】
前記回路基板には、固定子極歯を覆うインシュレータに巻かれたコイルの巻き始め位置若しくはコイルの巻き終わり位置でコイル線を案内する複数の案内溝が前記基板保持爪と干渉しない位置に設けられていてもよい。
このように、複数のコイル線の案内溝が基板保持爪と干渉しない位置に設けられているため、回路基板の外周縁部に基板保持爪が係止する基板凹部とコイル線の案内溝を互いに干渉することなく設けることができる。
【0012】
複数の基板保持爪は、前記回路基板の外周縁部にコネクタ挿入方向に対して線対称位置に設けられており、反コネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔よりコネクタ搭載側の基板保持爪どうしの間隔が狭くなるように設けられていてもよい。
これにより、コネクタに対して外部接続配線の端子を挿抜しても基板保持爪の変形や損傷を防ぐことができ、回路基板の組み付け姿勢の誤りもなくなる。
【発明の効果】
【0013】
コネクタに対して外部接続配線の端子を挿抜しても基板保持爪の変形や損傷を防ぐことができ、回路基板の組み付け姿勢の誤りもなくなり、更にはインシュレータの基板保持爪の位置と回路基板のコイル線の案内溝位置との干渉もなくなり線処理をし易くした電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図2Aは回路基板と基板保持爪の配置を示す平面図、
図2Bは従来の回路基板と基板保持爪の配置を示す平面図である。
【
図3】
図3Aは従来のモータの軸方向断面図、
図3Bは
図3Aの回路基板を保持したインシュレータの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る電動機の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。先ず、電動機の一例としてインナーロータ型のモータの概略構成について
図1Aを参照して説明する。
図1Aにおいてモータ1は、以下の構成を備えている。モータケース2はケース本体2aとリアカバー2bとで構成されている。モータケース2は、金属材料、例えば亜鉛めっき鋼板等で形成されている。モータケース2内には、固定子3及び回転子4が設けられている。
【0016】
固定子3は、固定子コア5がリアカバー2bを取り外した状態のケース本体2a内に圧入されて組み付けられている。固定子コア5は、環状のバックヨークに径方向中心に向かって極歯が所定間隔(周方向に60度毎)で複数(例えば三相スロットの場合6か所)突設されている。固定子コア5は複数の電磁鋼板が転積された積層コアが用いられる。固定子コア5は、軸方向両側より装着されたインシュレータ6により極歯が覆われており、該インシュレータ6を介して極歯の周囲にコイル7が巻かれている。インシュレータ6には例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂等が用いられる。また、コイル7に給電するための配線パターンが形成された回路基板8が反出力側のインシュレータ6に保持されている。回路基板8にはコネクタ9が搭載されており、コネクタ9は図示しない外部接続配線の端子と接続されて給電される。
【0017】
また、
図1Aにおいて、回転子4は、回転子軸4aを中心に回転子磁極4bが一体に組み付けられている。回転子軸4aは、モータケース2を構成するケース本体2a及びリアカバー2b各々に組み付けられた転がり軸受10によって回転可能に支持されている。回転子磁極4bは固定子コア5の極歯の磁束作用面と対向するように組み付けられる。尚、リアカバー2bに設けられた転がり軸受10は予圧ばね11により軸方向出力側に向かって予圧が付与されていてもよい。
【0018】
反出力側のインシュレータ6には、複数の基板保持爪6aが突設されている。基板保持爪6aは、コネクタ搭載側と反コネクタ搭載側とで間隔を異なるように設けられ、
図2Aに示すように例えば4か所に設けられている。また、回路基板8の外周縁部には複数の基板凹部8a(8a1,8a2)が設けられている。基板保持爪6aの先端には鉤状の爪が形成されており、該鉤状の爪がスナップフィットにより基板凹部8aに係止するようになっている。回路基板8は基板凹部8aに基板保持爪6aを各々係止させてインシュレータ6に組み付けられる。基板凹部8aもコネクタ搭載側と反コネクタ搭載側とで間隔を異なるように設けられ、
図2Aに示すように回路基板8の外周縁部に例えば4か所に設けられている。
【0019】
図1Bに示すように、回路基板8の外周縁部において、複数の基板保持爪6aは、コネクタ挿入方向(矢印方向)に対して線対称位置に設けられ、コネクタ搭載側の基板保持爪6a1どうしの間隔が反コネクタ搭載側の基板保持爪6a2どうしの間隔より狭く設けられている。具体的には、反コネクタ搭載側の基板保持爪6a2どうしの間隔が中心角θ2であるのに対して、コネクタ搭載側の基板保持爪6a1どうしの間隔が中心角θ1の場合θ2より小さい角度(θ2>θ1)でコネクタ9に近接した位置に設けられている。また、回路基板8のコネクタ9の搭載位置と対向する反コネクタ搭載位置に、ラジアル荷重を受ける荷重受けピン6b(荷重受け部材)が設けられている。荷重受けピン6bは、回路基板8の外周縁部に設けられた基板切欠き部8bと嵌め合うようになっている(
図2A参照)。また、回路基板8の外周縁部には、コイル7の巻き始め位置と巻き終わり位置でコイル線を案内するV字状の案内溝8cが3か所に等角配置で設けられている。これは、3相デルタ結線する場合のコイル線の保持位置に相当する。
【0020】
上述したモータ1を用いれば、
図2Aに示すように、コネクタ9に対して外部接続配線の端子を矢印P1方向に挿入する際にラジアル方向に作用する荷重を反コネクタ搭載位置に設けられた荷重受けピン6b及びその両側に設けられた基板保持爪6a2で分担して受け、コネクタ9から外部接続配線の端子を矢印P2方向に引き抜く場合には、コネクタ9搭載側に設けられた間隔が狭い基板保持爪6a1がラジアル荷重を受けるので、基板保持爪6a(6a1,6a2)の変形や損傷を防ぐことができる。
また、コネクタ搭載側の基板保持爪6a1どうしの間隔が反コネクタ搭載側の基板保持爪6a2の間隔より狭く設けられているので、回路基板8の向きを180度回転させて誤った向きに組み付けるおそれもなくなる。
更には、コネクタ搭載側の基板保持爪6a1どうしの間隔がコネクタ反搭載側の基板保持爪6a2どうしの間隔より狭くすることで、基板保持爪6aの係止位置とコイル7の巻き始め位置と巻き終わり位置でコイル線を案内する案内溝8cとの干渉がなくなり基板保持爪6a(6a1,6a2)が係止する基板凹部8a(8a1,8a2)と案内溝8cとの干渉もなくなり線処理がし易くなる。
【0021】
上述した実施形態では、電動機の一例としてインナーロータ型のモータを例示したが、インシュレータに回路基板を保持する構成であれば、アウターロータ型のモータであってもよい。また、回路基板8を保持する基板保持爪6aや基板凹部8aの数は4か所に形成したがこれより多くてもよい。
また、コイル結線は三相デルタ結線について説明したが、三相スター結線であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 モータ 2 モータケース 2a ケース本体 2b リアカバー 3 固定子 4 回転子 4a 回転子軸 4b 回転子磁極 5 固定子コア 6 インシュレータ 6a,6a1,6a2 基板保持爪 6b荷重受けピン 7 コイル 8 回路基板 8a,8a1,8a2 基板凹部 8b 基板切欠き部 8c 案内溝 9 コネクタ 10 転がり軸受 11 予圧ばね