(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158812
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】還元水生成方法、及び携帯用還元水生成器
(51)【国際特許分類】
C02F 1/48 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
C02F1/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021135462
(22)【出願日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2021059127
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521135809
【氏名又は名称】茶凡屋株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】北野 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】勝山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】勝山 明子
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA03
4D061DA07
4D061DA10
4D061DB20
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB14
4D061EB16
4D061EB19
4D061EB30
4D061EB39
4D061ED20
4D061GC14
(57)【要約】
【課題】電気分解をしないので電池の寿命を延長することができ、電気分解をしないで還元水にする還元水生成方法、及びその方法を実施する携帯用還元水生成器を提供することを課題とする。
【解決手段】液体の中に2本の電極を浸漬し、前記電極に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧をかけて、前記液体を還元力の強い液体にすることを特徴とする還元水生成方法、及びその方法を実施する携帯用還元水生成器により課題解決できた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の中に2本の電極を浸漬し、前記電極に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧をかけて、前記液体を還元力の強い液体にすることを特徴とする還元水生成方法。
【請求項2】
前記液体が、誘電体物質を含んだ導電性の低い液体であることを特徴とする請求項1に記載の還元水生成方法。
【請求項3】
前記液体が重曹を含有させた液体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の還元水生成方法。
【請求項4】
前記液体がカテキンを含む飲料水であることを特徴とする請求項1又は2に記載の還元水生成方法。
【請求項5】
2つの電極と、前記電極を吊設可能な蓋体と、前記電極と接続した電源と、前記電源と前記電極に電気的に接続した制御部とを備え、
前記制御部が、前記2つの電極間に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧を所定の時間かける制御をすることを特徴とする携帯用還元水生成器。
【請求項6】
前記液体を収容し、前記蓋体に覆われる容器が、粗い土質を含む信楽焼に用いる陶土で成形され還元焼成された信楽焼の素焼き容器であることを特徴とする請求項5に記載の携帯用還元水生成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水、飲料水、又は風呂の水への添加液などの液体を還元水に変える還元水生成方法、及びその還元水生成方法を実施可能な、持ち運びができ、化粧水、飲料水、又は風呂の水を還元して還元水を生成する携帯用還元水生成器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、装置本体部と電極部とを別体に形成し、この装置本体部と電極部とを電気的に接続し、装置本体部には電源部とスイッチ部とタイマー部とを設け、電極部には三本の電極棒を相互に近接した状態で延伸させ、この電極棒は電極部に対し取り外し自在になる構成とした携帯用整水器が開示されている。
【0003】
特許文献2には、1台で6種類の水(還元水素水・アルカリイオン水・酸性イオン水・強酸性水・強アルカリ水・中性除菌水)を生成する携帯用還元生成器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-1166号公報
【特許文献2】特開2004-290937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明は、三本の電極棒を相互に近接させて、水を収容した水容器に前記三本の電極棒を挿入させて、前記水容器内の水の還元をする技術であり、DC12V、300mAを電極間に交互に流して水の中に気泡を発生させ、プラス極とマイナス極の両方の電極の成分を水の中に溶け出させた還元水を生成させる器具である。電気分解するので容器に注入した飲料水のみの還元水ではなく、電極の金属によってはその金属が水に溶けた還元水ができる場合があるという問題があった。また、還元水を生成するのに電気分解をするので電池の寿命が短く頻繁に取り替えなくてならないという問題があった。
【0006】
特許文献2の発明は、2つの電極と電極間に設けた隔壁とを挿入した電極棒を還元部として、例えばペットボトルの口から内部に挿入して、ペットボトル内の飲料水を還元する技術である。還元水素水の生成をするには、DC9V~18V、0.1A~1Aの直流電流を電極間に流し、プラス極とマイナス極を交互に切り替えて水を電気分解させて、さらに促進液としてミネラル水溶液とクエン酸並びにビタミンCを0.1cc~1cc添加しなければエラー表示し生成がストップする技術である。ビタミンC等の促進液を添加しなければ還元水が得られないという問題や、電気分解するのでペットボトルに注入した飲料水のみの還元水ではなく、電極の金属によってはその金属が水に溶けた還元水ができるという問題があった。また、還元水を生成するのに電気分解をするので電池の寿命が短く頻繁に取り替えなくてならないという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、電気分解をしないので電池の寿命を延長することができ、電気分解をしないで還元水にする還元水生成方法、及びその方法を実施する携帯用還元水生成器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において、電気分解を生じさせる電圧以上の電圧をかけて電解反応が起こって電流が流れているときの電極を陽極、陰極といい、電気分解を生じさせる電圧未満の電圧をかけて電解反応が起こっておらず電流が流れていないときの電極を正極、負極という。
【0009】
請求項1に記載の還元水生成方法は、液体の中に2本の電極を浸漬し、前記電極に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧をかけて、前記液体を還元力の強い液体にすることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の還元水生成方法は、請求項1において、前記液体が、誘電体物質を含んだ導電性の低い液体であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の還元水生成方法は、請求項1又は2において、前記液体が重曹を含有させた液体であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の還元水生成方法は、請求項1又は2において、前記液体がカテキンを含む飲料水であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の携帯用還元水生成器は、2つの電極と、前記電極を吊設可能な蓋体と、前記電極と接続した電源と、前記電源と前記電極に電気的に接続した制御部とを備え、前記制御部が、前記2つの電極間に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧を所定の時間かける制御をすることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の携帯用還元水生成器は、請求項5において、前記液体を収容し、前記蓋体に覆われる容器が、粗い土質を含む信楽焼に用いる陶土で成形され還元焼成された信楽焼の素焼き容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の還元水生成方法の発明は、電気分解を生じさせる大きさの電圧でなく、電気分解を生じさせる大きさの電圧未満の電圧をかけることにより、液体中のイオンの移動は0.01秒~0.03秒の一瞬で終わり電流は流れず電極で電子の授受は進まないが、かけた電圧による電位差が正極と負極間で直線的にかかり、液体を直流電場にすることができる。これにより、プラスを帯びた部分とマイナスを帯びた部分がある分子の向きが無電界ではバラバラであるのが、液体中に電場ができると分子の向きが同一方向に整列するという配向分極が生じる。バラバラ状態を整列状態に変えることにより酸化還元電位(ORP値)を低下させてマイナスの値にさせることができ液体を還元水にすることができるという効果を奏する。
【0016】
また、電気分解による還元水生成を行うと陽極や陰極の電極の金属が液体中に溶け出すことがありpHが変化した還元水を生成するのに対して、本発明の還元水生成方法は、電極の金属は溶け出さずかつpHがほとんど変化がない状態の還元水を生成できるという効果を奏する。液体が飲料水の場合にはpHが変化しないので味が変わらないという効果も奏する。
【0017】
また、電流が流れないので、電源である電池がほとんど使用されないことから、電池の寿命が大幅に延びるという効果を奏する。
【0018】
請求項2に記載の還元水生成方法の発明は、誘電体物質を含んだ導電性の低い液体は直流電圧に対しては電気を通しにくいことから、前記誘電体物質を電界内におくと誘電分極が生じ表面に正負の電荷が現れるので、電気分解を生じさせないレベルの電圧をかけて誘電分極である配向分極を生じやすくするという効果を奏する。
【0019】
請求項3に記載の還元水生成方法の発明は、従来は高速旋回液流式、加圧溶解式、界面活性剤添加微細孔方式、超音波キャビテーション方式などの製造原理に基づく装置を使用してウルトラファインバルブを造り出しているが、飲料などの液体に重曹を加えて還元水生成方法を実施すると、従来の高速旋回液流式、加圧溶解式、界面活性剤添加微細孔方式又は超音波キャビテーション方式を使用しなくとも、大きさが1μm未満すなわち100nm未満のウルトラファインバルブを造り出すことができるという効果を奏する。
【0020】
ウルトラファインバルブとしての効用を有することができ、生体活性効果、生の食品などの酸化の抑制、洗浄効果、殺菌・消毒効果、脱臭効果などの効果を付加させることができる。
【0021】
請求項4に記載の還元水生成方法の発明は、酸化還元電位(ORP値)を低下させて還元しやすいお茶に変えるため、お茶を飲むと味が変わり、刺激が薄らぎ、まろやかになるという効果を奏する。
【0022】
請求項5に記載の携帯用還元水生成器の発明は、請求項1又は2に記載の還元水生成方法の実施するに直接使用する器具であり、小型化すると持ち運びができ、どこでもいつでもpHがほとんど変化がない状態の還元水をつくることができるという効果を奏する。
【0023】
請求項6に記載の携帯用還元水生成器の発明は、請求項5において、同じ常温のお茶を入れて種々の容器を比較すると、信楽焼の素焼き容器の場合が、他のPP容器、備前容器、コーヒーカップなどの陶磁器、又は、ガラスコップに比較して、最も酸化還元電位(ORP値)を低下させて還元させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の還元水生成方法のステップのフロー説明図である。
【
図2】電気分解を生じさせないレベルの電圧をかけたときの配列分極の説明図である
【
図3】本発明の携帯用還元水生成器の構成の概要説明図である。
【
図4】本発明の還元水生成方法又は携帯用還元水生成器の使用時の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
電気分解は、自発的には進行しない酸化還元反応を外から加えた電気エネルギーの助けで進ませる方法であるので、電気分解するには先行技術文献に記載されているように9V以上かけ気泡が発生するのが目視で確認できる電圧をかける。言い換えると、電気分解を発生させないレベルの電圧をかけたときは、電気分解は行われないので、気泡は発生せずかつ電流は流れない。
【0026】
また、電気分解では陽極側電極では酸化反応、陰極側電極では還元反応が起き、例えば白金、炭素又は金以外の材質の電極を使用したときには電極の金属が析出する。このため、例えば水の電気分解するときには薄い水酸化ナトリウム水溶液を用いて行うことがあるが、陰極付近は水酸化物イオンが析出してpHが大きくなり陽極付近は水酸化物イオン濃度が減少してpHが小さくなるというように、pHも変化する。
【0027】
また、酸化還元電位(以下、ORP値と記載する)は、酸化状態ではプラスの値、還元状態ではマイナスの値で液体中の酸化還元状態を示す。よって、ORP値を調査すれば液体が酸化状態か還元状態かを把握できる。
【0028】
本発明の還元水生成方法1は、
図1に示すように、液体9の中に2本の電極3、4を浸漬する浸漬ステップ11と、前記電極3、4に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧をかける還元化ステップ12と、前記液体9を還元力の強い液体にして電極3、4を容器8から取り出す取り出しステップ13を備える。その後は、飲料水の場合は飲み、化粧水の場合は肌に塗布し、風呂の水の添加水の場合は風呂の水に注ぐ。
【0029】
また、前記液体9は、誘電体物質を含んだ導電性の低い液体である。誘電体物質を含んだ導電性の低い液体9は直流電圧に対しては電気を通しにくいことから、前記誘電体物質を電界内におくと誘電分極が生じ表面に正負の電荷が現れるので、電気分解を生じさせないレベルの電圧をかけて誘電分極である配向分極を生じやすくすることができる。前記液体9としては、例えば、リンゴ等の果汁、重曹、トマト、キューリ等の野菜汁、コーヒー、ジュース、お茶、ハーブ、ワインやお酒等の飲料水、化粧水、又は風呂の水への添加液などの液体などがある。
【0030】
前記電極3、4は、白金、チタンに白金コーティング、炭素等の溶けにくい材質が好ましい。また、前記電源は、電気分解を生じさせない電圧の電池がよく。例えば1.5V電池や3V電池が好ましい。
【0031】
前記還元化ステップ12は、本発明のもっとも重要なステップであり、前記電極3、4に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧をかけるステップである。電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧とは、電気分解が生じない電圧を意味している。また、電気分解が生じる最小の電圧は液体9の種類によって異なるため、還元水にしようとする液体9ごとに電気分解をしない電圧の範囲を確認して、電気分解をしない電圧をかける。そのため、本発明でかける電圧は、電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧とした。
【0032】
前記還元水生成方法1の実施例1を説明する。500cc収容の容器8に液体9として電気伝導度が4×10-3s/cmのオレンジジュースを収容し、2本の電極3、4の電極間距離を3cmになるようにオレンジジュース液体9内に浸漬して、直流電圧3Vを5分間かけた。この効果としてのORP値、pH、電気伝導度を3日間測定した結果を表1に示す。なお、電圧をかけた5分間に、オレンジジュース内に気泡は全く見えず電気分解は生じていないことを確認している。電気分解が生じていないので電流は流れていない。前記還元水生成方法1の実施例は携帯用還元水生成器2を使用して実施した。
【0033】
【0034】
表1から、ORP値が開始前200mVで酸化性水であったオレンジジュースが5分間実施直後は-256mVと還元水に変化し、1日経過後に-52mV、2日経過後に175mV、3日経過後に151mVと開始前のORP値に復帰しているが、還元水の状態を少なくとも1日経過後まで還元状態を維持することができた。オレンジジュースのデータであるので飲料水としては1日あれば十分である。
【0035】
pHについては、開始直前は3.93pH、5分後は3.90pH、1日経過後は3.93pH、2日経過後は3.84pH、3日経過後は4.02pHとほぼ一定であり変化しないことを示している。これにより、液体が飲料水の場合は味が変わらないという効果がある。
【0036】
電気伝導度については、開始直前は4.14ms/cm、5分後は3.87ms/cm、1日経過後は3.79ms/cm、2日経過後は3.85ms/cm、3日経過後は3.65ms/cmと少し電流が流れにくくなったことを示している。もっとも電気分解が生じない電圧しかかけないので電流が流れることはない。
【0037】
よって、前記還元水生成方法1を使用して、例えば飲料水に電極3、4を挿入して、気泡の発生が見られず電気分解が生じない電圧をかけると、pHが変化しない還元水を生成できるという効果がある。また、液体が飲料水の場合にはpHが変化しないので味が変わらないという効果も奏する。また、電気分解をしないので電池の寿命を延長することができる。
【0038】
すなわち、電気分解を生じさせる大きさの電圧でなく、電気分解を生じさせる大きさの電圧未満の電圧である3Vを5分間かけることにより、液体中のイオンの移動は0.01秒~0.03秒の一瞬で終わるので電気分解は生じないことから電流は流れず電極3、4で電子の授受は進まないが、かけた電圧による電位差が正極と負極間で直線的にかかり、液体9を直流電場にすることができる。これにより、
図2(a)に示すように、プラスを帯びた部分とマイナスを帯びた部分がある分子21の向きが無電界ではバラバラであるのが、
図2(b)に示すように、液体9中に電場ができると分子22の向きが同一方向に整列するという配向分極が生じる。バラバラ状態を整列状態に変えることにより酸化還元電位を低下させマイナスの値にさせることができ液体9を還元水にすることができるという効果を奏する。以上は電気分解せずに還元水を生成できた実施例を説明したが、以下に電気分解せずに還元水を生成させることができることの理論を説明する。
【0039】
電気分解は外から加えた電気エネルギーの助けで酸化還元反応を進める方法に対して、本発明は外から電気エネルギーを加えないで自発的に酸化還元反応を進める方法である。その自発的な過程を判断するのに熱力学第二法則があり、定温定圧下における自発的な変化はギブスエネルギーの変化で掴める。その式を式(1)に示す。
【0040】
ΔG=ΔH-T・ΔS・・・・・式(1)
ΔG:自由エネルギーの変化(ギブスエネルギーの変化)
ΔH:エンタルピーの変化
ΔS:エントロピーの変化
T:絶対温度
【0041】
式(1)において、系への熱の出入りがない場合は、ΔH=0であるので、式(2)となる。
ΔG=-T・ΔS・・・・・式(2)
【0042】
また、電気的エネルギーは電荷数(n)とファラデー定数(F)との積であり、電荷当たりのエネルギーは酸化還元電位ΔEに相当することから、化学平衡状態では式(3)が成り立つ。
ΔE=-ΔG/n×F・・・・・式(3)
【0043】
また、エントロピーに関しては、ボルツマンの原理で式(4)に表すことができる。
ΔS=k×log(バラバラの状態の空間状態数/整理状態の空間状態数)・・・式(4)
ここで、k:ボルツマン定数
バラバラの状態の空間状態数:電場をかける前の向きはばらばらの分子が存する空間の状態数
整理状態の空間状態数:電場をかけた後に配向分極した分子が存する空間の状態数
【0044】
前記式(2)~式(4)により、式(5)を導くことができる。
ΔE=(T×k×log(バラバラの状態の空間状態数/整理状態の空間状態数))/(n×F)
・・・式(5)
【0045】
式(5)において、バラバラの状態の空間状態数に対して整理状態の空間状態数が増加するほど酸化還元電位ΔEは低下し、さらに進むと酸化還元電位の値はマイナスになる。よって、
図2(a)に示すように、分子の向きがバラバラ状態から向きが、
図2(b)に示すように、一定方向に揃った配向分極になると、液体のORP値(酸化還元電位)が下がり、液体の還元状態をつくることが示された。
【0046】
また、還元状態になった液体を電場から取り出すと、時間とともに還元性が失われて元の状態の電位に戻るが、分子鎖の長い有機性成分を含む液体は復元までにかかる速度が遅い。そのため、表1に示すように少なくとも1日経過後まで還元状態を維持することができた。
【0047】
次に、還元水生成方法1に使用する前記液体9が、重曹を含有させた液体9であることを構成要件とする。
【0048】
実施例2として、前記水に重曹を添加させて還元水生成方法を実施した実施例の場合のウルトラファインバルブの発生数と、前記水に重曹を添加させた状態の比較例のウルトラファインバルブの発生数を比較しその結果を表2に示す。実施例2は、1,000cc収容の容器8に液体9として電気伝導度が約0.3×10-3s/cmの水を収容し重曹を1g添加し、2本の電極3、4の電極間距離を3cmになるように水9内に浸漬して、直流電圧4Vを100分間かけた。比較例は、1,000cc収容の容器8に液体9として電気伝導度が0.3×10-3s/cmの水を収容し重曹を1g添加した。ウルトラファインバルブの発生数の測定は、3日後に株式会社生体分子計測研究所で実施した。実施例の測定液1、測定液2、測定液3は同じ検体よりサンプリングしたものであり、比較例の測定液a、測定液b、測定液cは同じ検体よりサンプリングしたものである。
【0049】
【0050】
表2から、還元水生成方法を実施した実施例2には、100nm以下のウルトラファインバルブの発生数が、132~236個、平均177個、還元水生成方法を実施しない比較例の場合の96~142個、平均122個に対して、約1.5倍のウルトラファインバルブを発生させることができた。
【0051】
次に、還元水生成方法1に使用する前記液体9が、カテキンを含む飲料水であることを構成要件とする。
【0052】
液体9を、カテキンを含む飲料水とした実施例3について説明する。前記カテキンを含む飲料水としては常温の宇治茶を使用した。舌の表面にある味蕾が感じる味としては、甘味、塩味、旨味、酸味、苦味の5基本味があり、甘味、塩味、旨味は、幼少期から好きな味であるのに対して、酸味と苦味は学習効果で好きになる味といわれている。これは小さい子供が、酸味の強い酢の物や、苦い野菜を本能的に嫌がることにも現れている。
【0053】
さらに、味蕾を通さずに感じる味としては、いずれも痛みに近い感覚といえる、粘膜のたんぱく質と結合したんぱく質を変性させるタンニンの収れん作用により感じる渋味、及び、高温を感じる受容体を刺激して感じる辛味がある。特定の性質を持つ化合物の総称であるタンニンの中にはカテキンがあり、該カテキンはお茶の渋み成分で、化学式はC15H14O6で表される物質である。一般的にカテキンが含まれている宇治茶を飲むと、最初に渋みを感じ、あとから甘さやコクを感じることができる奥深い味わいを堪能できる。
【0054】
実施例3は、ガラス製の容器9に、液体9としてカテキンを含む飲料水である常温の宇治茶を130ccほど収容し、電極3、4は電極間距離を2cm離隔させた白金棒とし、3Vで0.001Aで電源を60分間ONにした。
【0055】
その結果、宇治茶の味を、渋味を抑制させたまろやかな味に変えることができた。この還元水生成方法1での味覚変化メカニズムは推測であるが、宇治茶に含まれる渋味成分のカテキンC15H14O6が誘電分極することで、収容された液体9である宇治茶全体が還元化され、それにより舌の味覚の膜電位変化(酸化刺激)を緩和したためと考えられる。
【0056】
このことから、本発明の還元水生成方法1は、カテキンを含む飲料の渋みを抑制させる効果があることが示唆された。
【0057】
次に、携帯用還元水生成器2について説明する。前記携帯用還元水生成器2は、還元水生成方法1を実施するための器具であり、
図3に示すように、2つの電極3、4と、前記電極3、4を吊設可能な蓋体5と、前記電極3、4と接続した電源(図示なし)と、前記電源と前記電極3、4を配線7で電気的に接続した制御部6とを備え、前記制御部6が、前記2つの電極3、4間に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧を所定の時間かける制御をする。前記電源としては、予め確認した電気分解が生じない電圧の範囲に該当する電圧の電池を使用する。前記携帯用還元水生成器2は、前記還元水生成方法1の実施に直接使用する器具である。前記還元水生成方法1の実施例は前記携帯用還元水生成器2を使用して実施した。
【0058】
前記、携帯用還元水生成器2は、容器8を備えていない形態であるが、備えた形態でもよい。容器8を備えていない形態の場合はジュース等を収容した容器に蓋体5を嵌設して使用し、容器8を備えた形態の場合は前記容器8内にジュース等を注ぎ込んで使用する。また、容器8の大きさは、例えば、180cc、300cc、500cc、800cc、1000cc等があるが、携帯用として好ましいのは500cc以下である。
【0059】
次に、前記携帯用還元水生成器2の使用方法について説明する。まず、容器8に、化粧水、飲料水、又は風呂の水への添加液等の液体9を注ぎ込む。そして電極3、4を前記液体に浸漬させて蓋体5を前記容器8に嵌設する。
【0060】
そして、前記電源により予め設けられた、電極3、4に電気分解を生じさせるために必要な電圧未満の電圧を、液体中の分子が配向分極できるように予め設定した時間を制御部6で設定しONする。なお、前記電源は、予め確認した電気分解が生じない電圧の電池、例えば3Vの電池を使用する。
【0061】
予め設定した時間になると制御部6は電圧をかけるのを止める。これで液体は還元体となり、前記還元体の維持期間は液体の種類により異なるが1~3日後まで維持できる。
【0062】
次に、携帯用還元水生成器2の容器8を、前記液体9を収容し、前記蓋体5に覆われる容器8が、粗い土質を含む信楽焼に用いる陶土で成形され還元焼成された信楽焼の素焼き容器とする。
【0063】
実施例4は、液体9を常温の宇治茶として、各容器8に常温の宇治茶を130cc注ぎ、電極は電極3、4間距離を2cmとした白金棒とし、3Vで0.001Aの電源を印加して経過時間に伴うORP値、pHの変化を追跡した。その結果得られた前記液体9の酸化還元状態を表3に示す。
【0064】
【0065】
表3から、容器8が信楽焼の素焼き容器の場合が、他のPP(ポリプロピレン)容器、備前容器、コーヒーカップなどの磁器、又は、ガラスコップに比較して、最も酸化還元電位(ORP値)を低下させて還元させることができることが示されている。また、表3から、pHはほとんど変化していないことが示されている。
【0066】
表3の結果が得られた要因を説明する。信楽焼を素焼き状態になるように高温で還元焼成をすると、粘土内の酸素が奪われて隙間が形成される。この隙間が形成されたことにより、容器8内に収容したお茶が前記隙間に浸透し外気と触れるやすくなり前記お茶の温度が低下する。温度が低下すると、式(5)に示すように酸化還元電位ΔEが低下するので、前記お茶のORP値(酸化還元電位)が下がり、お茶を還元状態にすることができた。
【符号の説明】
【0067】
1 還元水生成方法
2 携帯用還元水生成器
3 電極
4 電極
5 蓋体
6 制御部
7 配線
8 容器
9 液体
11 浸漬ステップ
12 還元化ステップ
13 取り出しステップ
21 分子
22 分子