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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158862
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
F16H61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190900
(22)【出願日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021059703
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 広則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西尾 聡
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA02
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA66
3J552QA06A
3J552QA13A
3J552QA42A
3J552QB03
3J552QB05
(57)【要約】
【課題】1つの調圧バルブから2つの油圧係合要素に選択的に油圧を供給して油圧制御装置の低コスト化および効率向上を図る。
【解決手段】油圧制御装置の第1切替バルブは、第1信号圧が供給されていないとき、および第1および第2信号圧が供給されているときに、第2信号圧出力バルブからの油の流出を許容し、第2切替バルブは、第2信号圧が供給されていないときに、兼用調圧バルブから第2油圧係合要素側への油圧の供給を許容すると共、第2信号圧が供給されているときに、兼用調圧バルブから第1油圧係合要素側への油圧の供給を許容し、第3切替バルブは、第2信号圧が供給されていないときに、第2油圧係合要素への兼用調圧バルブからの油圧または元圧の供給を許容し、第2信号圧が供給されているときに、第2油圧係合要素への兼用調圧バルブからの油圧または元圧の供給を規制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1油圧係合要素、少なくとも後進段の形成時に係合されると共に前記第1油圧係合要素とは同時に係合されない第2油圧係合要素、および残余の油圧係合要素のうちの少なくとも何れか2つを選択的に係合させて複数の前進段および前記後進段を形成する変速機の油圧制御装置において、
元圧を調整して前記第1油圧係合要素および前記第2油圧係合要素への油圧を生成する兼用調圧バルブと、前記元圧を調整して対応する前記残余の油圧係合要素への油圧を生成する少なくとも1つの専用調圧バルブとを含む複数の調圧バルブと、
第1信号圧を出力する第1信号圧出力バルブと、
第2信号圧を出力する第2信号圧出力バルブと、
前記第1信号圧出力バルブからの前記第1信号圧および前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けて作動する第1切替バルブであって、前記第1信号圧の供給を受けていないとき、および前記第1および第2信号圧の双方の供給を受けているときに、少なくとも前記第2信号圧出力バルブから供給された油の流出を許容する第1切替バルブと、
前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けていないときに、前記兼用調圧バルブから前記第2油圧係合要素側への前記油圧の供給を許容すると共に前記兼用調圧バルブから前記第1油圧係合要素側への前記油圧の供給を規制し、前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けているときに、前記兼用調圧バルブから前記第1油圧係合要素側への前記油圧の供給を許容すると共に前記兼用調圧バルブから前記第2油圧係合要素側への前記油圧の供給を規制する第2切替バルブと、
前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けていないときに、前記第2切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧の供給を許容し、前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けているときに、前記第2切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧の供給を規制する第3切替バルブと、
を備える油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置において、
前記第1切替バルブは、前記第1信号圧の供給を受けていないとき、および前記第1および第2信号圧の双方の供給を受けているときに、少なくとも前記兼用調圧バルブへの前記元圧の供給および前記第2信号圧出力バルブから供給された油の流出を許容し、前記第1信号圧の供給を受けているときに、前記第2油圧係合要素側への前記元圧の供給を許容すると共に前記第2信号圧出力バルブから供給された油の流出を規制し、
前記第2切替バルブは、前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けていないときに、前記兼用調圧バルブから前記第2油圧係合要素への前記油圧の供給を許容し、前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けているときに、前記第1切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記元圧の供給を許容し、
前記第3切替バルブは、前記第1切替バルブを介して前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けていないときに、前記第2切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧または前記元圧の供給を許容し、前記第1切替バルブを介して前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けているときに、前記第2切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧または前記元圧の供給を規制する油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の油圧制御装置において、
前記第1油圧係合要素は、前記変速機の発進段を含む複数の前進低速段よりも高速側の複数の前進高速段の形成時に係合され、
前記第2油圧係合要素は、前記後進段の形成時および前記発進段の形成時に係合される油圧制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の油圧制御装置において、
前記第1切替バルブは、第1スプールと、前記第1スプールを付勢する第1スプリングと、前記元圧が供給される元圧入力ポートと、前記兼用調圧バルブの入力ポートに連通する第1元圧出力ポートと、第2元圧出力ポートと、前記第1信号圧出力バルブからの前記第1信号圧が供給される第1信号圧入力ポートと、前記第2信号圧が供給される流入ポートと、流出ポートと、前記流出ポートに連通する保持圧入力ポートとを有し、前記第1信号圧入力ポートに前記第1信号圧が供給されていないとき、および前記第1信号圧入力ポートに前記第1信号圧が供給されると共に前記流入ポートおよび前記流出ポートを介して前記保持圧入力ポートに前記第2信号圧が供給されているときに、前記第1スプールが前記第1スプリングの付勢力により前記元圧入力ポートと前記第1元圧出力ポートとを連通させると共に前記流入ポートと前記流出ポートとを連通させる第1状態を形成し、前記第1信号圧入力ポートに前記第1信号圧が供給されているときに、前記第1スプールが前記第1スプリングの付勢力に抗して前記元圧入力ポートと前記第2元圧出力ポートとを連通させると共に前記流入ポートと前記流出ポートとの連通を遮断する第2状態を形成し、
前記第2切替バルブは、第2スプールと、前記第2スプールを付勢する第2スプリングと、前記兼用調圧バルブからの前記油圧が供給される第1入力ポートと、前記第1切替バルブの前記第2元圧出力ポートに連通する第2入力ポートと、前記第1油圧係合要素の油室に連通する第1出力ポートと、第2出力ポートと、前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧が供給される第2信号圧入力ポートとを有し、前記第2信号圧入力ポートに前記第2信号圧が供給されていないときに、前記第2スプールが前記第2スプリングの付勢力により前記第1入力ポートと前記第2出力ポートとを連通させると共に前記第2入力ポートと前記第2出力ポートとの連通を遮断する第1供給状態を形成し、前記第2信号圧入力ポートに前記第2信号圧が供給されているときに、前記第2スプールが前記第2スプリングの付勢力に抗して前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとを連通させると共に前記第2入力ポートと前記第2出力ポートとを連通させる第2供給状態を形成し、
前記第3切替バルブは、第3スプールと、前記第3スプールを付勢する第3スプリングと、前記第2切替バルブの前記第2出力ポートに連通する第3入力ポートと、前記第2油圧係合要素の油室に連通する第3出力ポートと、前記第1切替バルブの前記流出ポートに連通する第3信号圧入力ポートとを有し、前記第3信号圧入力ポートに前記第1切替バルブの前記流出ポートから前記第2信号圧が供給されていないときに、前記第3スプールが前記第3スプリングの付勢力により前記第3入力ポートと前記第3出力ポートとを連通させる供給状態を形成し、前記第3信号圧入力ポートに前記第1切替バルブの前記流出ポートから前記第2信号圧が供給されているときに、前記第3スプールが前記第3スプリングの付勢力に抗して前記第3入力ポートと前記第3出力ポートとの連通を遮断する遮断状態を形成する油圧制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の油圧制御装置において、
前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブを介して前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けていないときに、前記複数の前進段の形成時に前記第2油圧係合要素と同時に係合されない前記油圧係合要素への油圧を生成する少なくとも1つの前記専用調圧バルブから供給された油の流出を許容し、前記第1切替バルブを介して前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧の供給を受けているときに、前記第2信号圧出力バルブから別途供給された油の流出を許容し、
前記第3切替バルブは、前記第2切替バルブを介して前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油の供給を受けていないときに、前記第2切替バルブから前記第1油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧の供給を規制すると共に前記第2切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧の供給を許容する第1供給状態を形成し、前記第2切替バルブを介して前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油の供給を受けて、前記第2切替バルブから前記第1油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧の供給を許容すると共に前記第2切替バルブから前記第2油圧係合要素への前記兼用調圧バルブからの前記油圧の供給を規制する第2供給状態を形成し、かつ前記第2切替バルブにより前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油の流出が規制されても前記第2供給状態を保持可能である油圧制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧制御装置において、
前記第1油圧係合要素は、前記変速機の発進段を含む複数の前進低速段よりも高速側の複数の前進高速段の形成時に係合され、
前記第2油圧係合要素は、前記後進段の形成時および前記発進段の形成時に係合され、
少なくとも1つの前記専用調圧バルブは、前記複数の前進低速段の少なくとも何れか1つの形成時および前記複数の前進高速段の少なくとも何れか1つの形成時に対応する前記油圧係合要素への油圧を生成する油圧制御装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の油圧制御装置において、
第3信号圧を出力する第3信号圧出力バルブを更に備え、
前記第1切替バルブは、第1スプールと、前記第1スプールを付勢する第1スプリングと、前記第1信号圧出力バルブからの前記第1信号圧が供給される第1信号圧入力ポートと、前記第2信号圧が供給される流入ポートと、流出ポートと、前記流出ポートに連通する保持圧入力ポートとを有し、前記第1信号圧入力ポートに前記第1信号圧が供給されていないとき、および前記第1信号圧入力ポートに前記第1信号圧が供給されると共に前記流入ポートおよび前記流出ポートを介して前記保持圧入力ポートに前記第2信号圧が供給されているときに、前記第1スプールが前記第1スプリングの付勢力により前記流入ポートと前記流出ポートとを連通させる第1状態を形成し、前記第1信号圧入力ポートに前記第1信号圧が供給されているときに、前記第1スプールが前記第1スプリングの付勢力に抗して前記流入ポートと前記流出ポートとの連通を遮断する第2状態を形成し、
前記第2切替バルブは、第2スプールと、前記第2スプールを付勢する第2スプリングと、前記兼用調圧バルブからの前記油圧が供給される入力ポートと、前記第1切替バルブの前記流出ポートに連通する第1流入ポートと、少なくとも1つの前記専用調圧バルブからの前記油が供給される第2流入ポートと、第1出力ポートと、第2出力ポートと、信号圧流出ポートと、前記第2信号圧出力バルブからの前記第2信号圧が供給される第2信号圧入力ポートとを有し、前記第2信号圧入力ポートに前記第2信号圧が供給されていないときに、前記第2スプールが前記第2スプリングの付勢力により前記入力ポートと前記第2出力ポートとを連通させると共に前記第2流入ポートと前記信号圧流出ポートとを連通させる第1連通状態を形成し、前記第2信号圧入力ポートに前記第2信号圧が供給されているときに、前記第2スプールが前記第2スプリングの付勢力に抗して前記入力ポートと前記第1出力ポートとを連通させると共に前記第1流入ポートと前記信号圧流出ポートとを連通させる第2連通状態を形成し、
前記第3切替バルブは、第3スプールと、前記第3スプールを付勢する第3スプリングと、前記第2切替バルブの前記第1出力ポートに連通する第1入力ポートと、前記第2切替バルブの前記第2出力ポートに連通する第2入力ポートと、前記第1油圧係合要素の油室に連通する第1供給ポートと、前記第2油圧係合要素の油室に連通する第2供給ポートと、前記第2切替バルブの前記信号圧流出ポートに連通する第3信号圧入力ポートと、前記スプリングが配置されるスプリング室に連通すると共に前記第3信号圧が供給される切替ポートとを有し、前記第3信号圧入力ポートに前記第2切替バルブの前記信号圧流出ポートから前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油が供給されていないとき、および前記第3信号圧入力ポートに前記第2切替バルブの前記信号圧流出ポートから前記専用調圧バルブからの前記油が供給され、かつ前記切替ポートに前記第3信号圧が供給されているときに、前記第3スプールが前記第2入力ポートと前記第2供給ポートとを連通させる前記第1供給状態を形成し、前記第3信号圧入力ポートに前記第2切替バルブの前記信号圧流出ポートから前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油が供給されているときに、前記第3スプールが前記第1入力ポートと前記第1出力ポートとを連通させる前記第2供給状態を形成する油圧制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の油圧制御装置において、
前記第3切替バルブは、前記元圧または前記元圧に基づく油圧である保持圧が供給される保持圧流入ポートと、保持圧流出ポートと、前記保持圧流出ポートに連通すると共に前記第3スプールに形成された保持圧受圧面に臨む保持圧導入ポートとを有し、前記第3信号圧入力ポートに前記第2切替バルブの前記信号圧流出ポートから前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油が供給されていないときに、前記第3スプールが前記第3スプリングの付勢力により前記保持圧流入ポートと前記保持圧流出ポートとの連通を遮断し、前記第3信号圧入力ポートに前記第2切替バルブの前記信号圧流出ポートから前記第2信号圧出力バルブからの前記油または前記専用調圧バルブからの前記油が供給されているときに、前記第3スプールが前記第3スプリングの付勢力に抗して前記保持圧流入ポートと前記保持圧流出ポートとを連通させる油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の油圧係合要素のうちの少なくとも何れか2つを選択的に係合させて複数の前進段および後進段を形成する変速機の油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前進1速段および後進段の形成時に係合される第1の油圧係合要素(B2)と、前進1速段の形成時に係合されると共に後進段の形成時に解放される第2油圧係合要素(C1)と、前進1速段の形成時に解放されると共に前進3速段および後進段の形成時に係合される第3油圧係合要素(C3)とを含む5つの油圧係合要素を備えた自動変速機が知られている(例えば、特許文献1参照)。この自動変速機は、5つの油圧係合要素のうちの何れか2つを係合させることで前進1速段-前進6速段および後進段を形成し、第1油圧係合要素(B2)および第2油圧係合要素(C1)の係合により前進1速段が形成される。また、5つの油圧係合要素に油圧を供給する油圧制御装置は、第1信号油圧を出力可能な第1ソレノイドバルブと、第2信号油圧を出力可能な第2ソレノイドバルブと、第1切替バルブと、第2切替バルブと、それぞれ元圧(ライン圧)を調整して対応する油圧係合要素への係合圧を生成する5つのリニアソレノイドバルブとを含む。第1切替バルブは、第1信号油圧の給排により、元圧を前進レンジ圧として出力する状態と、元圧を非前進レンジ圧として出力する状態とを選択的に形成する。また、第2切替バルブは、第2信号油圧の給排により、第1入力ポートに供給された前進レンジ圧を第1出力ポートから出力する第1状態と、第2入力ポートに供給された非前進レンジ圧を第1出力ポートから出力する第2状態とを選択的に形成する。更に、5つのリニアソレノイドバルブは、元圧を調整して第1油圧係合要素への第1係合圧を生成する第1リニアソレノイドバルブと、前進レンジ圧を調整して第2油圧係合要素への第2係合圧を生成する第2リニアソレノイドバルブと、第2切替バルブの第1出力ポートから出力された油圧を調整して第3油圧係合要素への第3係合圧を生成する第3リニアソレノイドバルブとを含む。
【0003】
かかる油圧制御装置では、第1切替バルブ、第1リニアソレノイドバルブおよび第2リニアソレノイドバルブのうちの2つにフェールが発生して第2係合要素および第1係合要素の少なくとも一方が係合するように動作しても、残余の1つのバルブを制御することにより意図しない変速段の形成を回避することができる。また、第2切替バルブは、前進レンジ圧または非前進レンジ圧を第3油圧係合要素に供給する状態と、前進レンジ圧または非前進レンジ圧の第3油圧係合要素への供給を遮断する状態とを選択的に形成する。更に、第2切替バルブは、変速段が後進段から前進1速段に切り替えられるときに、第2係合要素が解放状態から少なくとも係合状態になるまでの間、第2ソレノイドバルブからの第2信号油圧によって第2状態に維持される。これにより、第3リニアソレノイドバルブのオープンフェールが発生しても、第2切替バルブによって前進レンジ圧の第3リニアソレノイドバルブへの供給を遮断することができるので、第3油圧係合要素と第1油圧係合要素とが係合を維持することに起因するショックの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-065963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の油圧制御装置では、自動変速機の複数の油圧係合要素ごとにリニアソレノイドバルブが設けられているが、リニアソレノイドバルブは、高価であって油の漏れ量も多く、油圧制御装置の低コスト化および効率の向上を図るためには、当該油圧制御装置におけるリニアソレノイドバルブの数を減らすことが好ましい。
【0006】
そこで、本開示は、1つの調圧バルブから2つの油圧係合要素に選択的に油圧を供給して油圧制御装置の低コスト化および効率向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の油圧制御装置は、第1油圧係合要素(C2)、少なくとも後進段の形成時に係合されると共に前記第1油圧係合要素(C2)とは同時に係合されない第2油圧係合要素(B2)、および残余の油圧係合要素(C1,C3,C4,B1)のうちの少なくとも何れか2つを選択的に係合させて複数の前進段および前記後進段を形成する変速機(25)の油圧制御装置(60,60B)において、元圧(PL)を調整して前記第1油圧係合要素(C2)および前記第2油圧係合要素(B2)への油圧(Psl2)を生成する兼用調圧バルブ(SL2)と、前記元圧(PL)を調整して対応する前記残余の油圧係合要素(C1,C3,C4,B1)への油圧を生成する少なくとも1つの専用調圧バルブ(SL1,SL3,SL4,SL5)とを含む複数の調圧バルブと、第1信号圧(Psc1)を出力する第1信号圧出力バルブ(SC1)と、第2信号圧(Psc2)を出力する第2信号圧出力バルブ(SC2)と、前記第1信号圧出力バルブ(SC1)からの前記第1信号圧(Psc1)および前記第2信号圧出力バルブ(SC2)からの前記第2信号圧(Psc2)の供給を受けて作動する第1切替バルブ(100,100B)であって、前記第1信号圧(Psc1)の供給を受けていないとき、および前記第1および第2信号圧(Psc1,Psc2)の双方の供給を受けているときに、少なくとも前記第2信号圧出力バルブ(SC2)から供給された油の流出を許容する第1切替バルブ(100,100B)と、前記第2信号圧出力バルブ(SC2)からの前記第2信号圧(Psc2)の供給を受けていないときに、前記兼用調圧バルブ(SL2)から前記第2油圧係合要素(B2)側への前記油圧(Psl2)の供給を許容すると共に前記兼用調圧バルブ(SL2)から前記第1油圧係合要素側(C2)への前記油圧(Psl2)の供給を規制し、前記第2信号圧出力バルブ(SC2)からの前記第2信号圧(Psc2)の供給を受けているときに、前記兼用調圧バルブ(SL2)から前記第1油圧係合要素(C2)側への前記油圧(Psl2)の供給を許容すると共に前記兼用調圧バルブ(SL2)から前記第2油圧係合要素(B2)側への前記油圧(Psl2)の供給を規制する第2切替バルブ(200,200B)と、前記第2信号圧出力バルブ(SC2)からの前記第2信号圧(Psc2)の供給を受けていないときに、前記第2切替バルブ(200)から前記第2油圧係合要素(B2)への前記兼用調圧バルブ(SL2)からの前記油圧(Psl2)の供給を許容し、前記第2信号圧出力バルブ(SC2)からの前記第2信号圧(Psc2)の供給を受けているときに、前記第2切替バルブ(200,200B)から前記第2油圧係合要素(B2)への前記兼用調圧バルブ(SL2)からの前記油圧(Psl2)の供給を規制する第3切替バルブ(300,300B)とを含むものである。
【0008】
本開示の油圧制御装置では、第1油圧係合要素と、少なくとも変速機の後進段の形成時に係合されると共に第1油圧係合要素とは同時に係合されない第2油圧係合要素とに対して、兼用調圧バルブにより生成(調整)された油圧を供給することができる。これにより、油圧制御装置における調圧バルブの数を減らすことが可能となるので、調圧バルブの削減による低コスト化および漏れ油の減少による効率向上を図ることができる。この結果、本開示の油圧制御装置では、1つの調圧バルブから2つの油圧係合要素に選択的に油圧を供給して低コスト化および効率向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の油圧制御装置を含む動力伝達装置を搭載した車両の概略構成図である。
図2図1の車両に搭載された動力伝達装置を示す概略構成図である。
図3図2の動力伝達装置に含まれる変速機の各変速段と油圧係合要素の作動状態との関係を示す作動表である。
図4】本開示の油圧制御装置の要部を示す系統図である。
図5】本開示の油圧制御装置に含まれるソレノイドバルブへの通電状態を示す作動表である。
図6】本開示の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図7】本開示の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図8】本開示の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図9】本開示の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図10】本開示の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図11】本開示の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図12】本開示の他の油圧制御装置の要部を示す系統図である。
図13】本開示の他の油圧制御装置に含まれるソレノイドバルブへの通電状態を示す作動表である。
図14】本開示の他の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図15】本開示の他の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図16】本開示の他の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図17】本開示の他の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図18】本開示の他の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
図19】本開示の他の油圧制御装置の動作を説明するための系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示の油圧制御装置60を含む動力伝達装置20を搭載した車両10の概略構成図である。同図に示す車両10は、エンジン12と、当該エンジン12からの動力を左右の駆動輪(前輪)DWに伝達する動力伝達装置20とを有する前輪駆動車両である。また、車両10は、図1に示すように、エンジン12を制御するエンジン電子制御ユニット(以下、「EGECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)16と、動力伝達装置20を制御する変速電子制御ユニット(以下、「TMECU」という)21とを含む。
【0012】
EGECU14は、図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであり、エンジン12のクランクシャフトの回転位置を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサ、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92、車速センサ99といった各種センサ等からの信号、ブレーキECU16やTMECU21からの信号等を入力する。EGECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式のスロットルバルブや燃料噴射弁および点火プラグ等を制御する。ブレーキECU16も図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであり、ブレーキペダル93の踏み込み量に応じたマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ94や車速センサ99といった各種センサ等からの信号、EGECU14等からの信号等を入力する。ブレーキECU16は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。
【0013】
TMECU21も図示しないCPU等を含むマイクロコンピュータであり、シフトレバー95の操作位置であるシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ96、アクセルペダルポジションセンサ92、車速センサ99、自動変速機25の入力回転数(タービンランナ23bまたは自動変速機25の入力軸26の回転数)を検出する入力回転数センサといった各種センサ等からの信号、EGECU14やブレーキECU16からの信号等を入力する。TMECU21は、これらの信号に基づいて動力伝達装置20を制御する。また、本実施形態において、シフトレバー95のシフトポジションとしては、駐車時に選択されるパーキングポジション(P)、後進走行用のリバースポジション(R)、自動変速機25による動力の伝達を断つためのニュートラルポジション(N)、通常の前進走行用のドライブポジション(D)に加えて、運転者に任意の変速段の選択を許容するスポーツポジション(S)が用意されている。
【0014】
動力伝達装置20は、図2に示すように、トランスミッションケース22や、当該トランスミッションケース22内に収容された発進装置(流体伝動装置)23、エンジン12からの動力により駆動される機械式オイルポンプ24、自動変速機25、ギヤ機構(ギヤ列)40、デファレンシャルギヤ(差動機構)50、油圧制御装置60等を含む。
【0015】
トランスミッションケース22は、ハウジング22aや、当該ハウジング22aに締結(固定)されるトランスアクスルケース22bに加えて、ハウジング22aとトランスアクスルケース22bとの間に位置するように当該トランスアクスルケース22bに締結(固定)されるフロントサポート22c、およびトランスアクスルケース22bに締結(固定)されるセンターサポート22dを含む。本実施形態において、ハウジング22a、トランスアクスルケース22b、およびセンターサポート22dは、例えばアルミニウム合金により形成され、フロントサポート22cは、鋼材(鉄合金)またはアルミニウム合金により形成される。
【0016】
発進装置23は、図示しないドライブプレート等を介してエンジン12のクランクシャフトに連結されるフロントカバーや、当該フロントカバーに密に固定されるポンプシェルを有する入力側のポンプインペラ23p、自動変速機25の入力軸26に連結される出力側のタービンランナ23t、ポンプインペラ23pおよびタービンランナ23tの内側に配置されてタービンランナ23tからポンプインペラ23pへの作動油の流れを整流するステータ23s、図示しないステータシャフトより支持されると共にステータ23sの回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ23o等を含む。ポンプインペラ23p、タービンランナ23tおよびステータ23sは、トルク増幅作用を有するトルクコンバータを構成する。
【0017】
更に、発進装置23は、フロントカバーと自動変速機25の入力軸26とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するロックアップクラッチ23cと、フロントカバーと自動変速機25の入力軸26との間で振動を減衰するダンパ装置23dとを含む。本実施形態において、ロックアップクラッチ23cは、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)を有する多板摩擦式油圧クラッチとして構成される。ただし、ロックアップクラッチ23cは、単板摩擦式油圧クラッチであってもよい。また、発進装置23は、ステータ23sを有さない流体継手を含むものであってもよい。
【0018】
機械式オイルポンプ24は、巻掛け伝動機構240を介して発進装置23のポンプインペラ23pに連結される外歯ギヤ(インナーロータ)241、当該外歯ギヤ241に噛合する内歯ギヤ(アウターロータ)242、外歯ギヤ241および内歯ギヤ242を収容する図示しないギヤ室を画成するポンプボディおよびポンプカバー(何れも図示省略)等を有するギヤポンプであり、自動変速機25の入力軸26とは別軸上に配置される。機械式オイルポンプ24は、巻掛け伝動機構240を介してエンジン12からの動力により駆動され、トランスアクスルケース22bの底部に設けられた作動油貯留部(図示省略)に貯留されている作動油(ATF)を吸引して油圧制御装置60へと圧送する。巻掛け伝動機構240は、発進装置23のポンプインペラ23pと一体に回転するドライブスプロケットや、機械式オイルポンプ24の外歯ギヤ241と一体に回転するドリブンスプロケット、ドライブスプロケットおよびドリブンスプロケットに巻掛けられるチェーン等を含む。
【0019】
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、図2に示すように、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための油圧係合要素としての4つのクラッチC1,C2,C3およびC4、2つのブレーキB1およびB2とを含む。
【0020】
第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ(固定要素)31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する2つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転自在(回転自在)かつ公転自在に複数保持するプラネタリキャリヤ34とを有する。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、フロントサポート22cを介してトランスミッションケース22に対して回転不能に連結(固定)されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、入力軸26に一体回転可能に接続されている。また、第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして用いられ、入力要素であるプラネタリキャリヤ34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
【0021】
第2遊星歯車機構35は、外歯歯車である第1サンギヤ36aおよび第2サンギヤ36bと、第1および第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ37と、第1サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、第2サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリヤ39とを有する。第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、自動変速機25の出力部材として機能し、入力軸26からリングギヤ37に伝達された動力は、ギヤ機構40、デファレンシャルギヤ50およびドライブシャフト51を介して左右の駆動輪に伝達される。
【0022】
クラッチC1は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC2は、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39とを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC3は、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。クラッチC4は、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを互いに接続すると共に両者の接続を解除するものである。本実施形態では、クラッチC1,C2,C3およびC4として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、油圧制御装置60からの係合油圧(作動油)が供給される係合油室、当該係合油室内で発生する遠心油圧をキャンセルするために油圧制御装置60からの作動油が供給される遠心油圧キャンセル室等を含む多板摩擦式油圧クラッチが採用される。
【0023】
ブレーキB1は、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に回転不能に固定(接続)すると共に第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除するものである。ブレーキB2は、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39をトランスミッションケース22に回転不能に固定すると共にプラネタリキャリヤ39のトランスミッションケース22に対する固定を解除するものである。本実施形態では、ブレーキB1およびB2として、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される係合油室等を含む多板摩擦式油圧ブレーキが採用される。
【0024】
これらのクラッチC1-C4、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置60による作動油の給排を受けて動作する。図3に、自動変速機25の各変速段とクラッチC1-C4、ブレーキB1およびB2の作動状態との関係を表した作動表を示す。自動変速機25は、クラッチC1-C4、ブレーキB1およびB2を図3の作動表に示す状態とすることで前進第1速-第8速の変速段と後進第1速および第2速の変速段とを提供する。すなわち、自動変速機25の各変速段は、クラッチC1-C4、ブレーキB1およびB2のうちの何れか2つの係合により形成される。なお、クラッチC1-C4、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチといった噛み合い係合要素とされてもよい。
【0025】
ギヤ機構40は、カウンタドライブギヤ41と、カウンタシャフト42と、カウンタドリブンギヤ43と、ドライブピニオンギヤ44と、デフリングギヤ45とを含む。カウンタドライブギヤ41は、自動変速機25の第2遊星歯車機構35のリングギヤ37に連結され、カウンタシャフト42は、自動変速機25の入力軸26と平行に延在する。カウンタドリブンギヤ43は、カウンタシャフト42に固定されると共にカウンタドライブギヤ41に噛合する。ドライブピニオンギヤ44は、カウンタシャフト42に形成(あるいは固定)され、デフリングギヤ45は、ドライブピニオンギヤ44に噛合すると共にデファレンシャルギヤ50に連結される。
【0026】
図4は、油圧制御装置60の要部を示す系統図である。油圧制御装置60は、トランスアクスルケース22bの作動油貯留部からストレーナを介して作動油を吸引して吐出可能な上述の機械式オイルポンプ24に接続される。油圧制御装置60は、TMECU21により制御され、発進装置23や自動変速機25により要求される油圧を生成すると共に、各種軸受等の潤滑対象やクラッチC1-C4の遠心油圧キャンセル室等といった低圧油供給部(被潤滑部)に作動油を供給する。図示するように、油圧制御装置60は、複数の油路等が形成されたバルブボディ600と、何れも図示しないプライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブおよびモジュレータバルブと、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4,SL5と、第1信号圧出力バルブSC1と、第2信号圧出力バルブSC2と、第3信号圧出力バルブSC3と、第1切替バルブ100と、第2切替バルブ200と、第3切替バルブ300とを含む。本実施形態において、油圧制御装置60は、シフトレバー95に連動するマニュアルバルブを有しておらず、TMECU21と共にシフトバイワイヤ装置を構成する。すなわち、TMECU21は、自動変速機25が運転者によりセットされたシフトレバー95のシフトポジションに応じた状態となるように油圧制御装置60を制御する。
【0027】
バルブボディ600は、例えばトランスミッションケース22を構成するトランスアクスルケース22bの側部に取り付けられる。油圧制御装置60の図示しないプライマリレギュレータバルブは、機械式オイルポンプ24からバルブボディ600の油路L1に供給される作動油の圧力すなわちライン圧PLを図示しないリニアソレノイドバルブから供給される信号圧に応じて調整する。当該信号圧を出力するリニアソレノイドバルブは、機械式オイルポンプ24側(例えばモジュレータバルブ)からの作動油の圧力を調整して車両10のアクセル開度あるいはスロットルバルブの開度に応じた圧力を出力するようにTMECU21により制御されるものである。また、セカンダリレギュレータバルブは、プライマリレギュレータバルブからドレンされる作動油の圧力を当該リニアソレノイドバルブからの信号圧に応じて調整し、ライン圧PLよりも低いセカンダリ圧(循環圧)を生成する。更に、モジュレータバルブは、油路L1からのライン圧PLを減圧(調整)して略一定のモジュレータ圧を生成する。
【0028】
リニアソレノイドバルブSL1-SL5は、共通の構成を有しており、TMECU21により通電制御される電磁部と、バルブボディ600により保持されるスリーブ内に軸方向に移動可能に配置されるスプールと、当該スプールを電磁部側に付勢するスプリングと、油路L2または油路L3を介してバルブボディ600の油路L1に連通する入力ポートと、出力ポートと、当該出力ポートに連通するフィードバックポートと、ドレンポートとを含む。本実施形態において、リニアソレノイドバルブSL1-SL5は、電磁部に電流が供給されるときに開弁する常閉弁であり、当該電磁部に印加される電流に応じて入力ポートに供給される元圧としてのライン圧PLを調整して出力ポートから出力する。すなわち、リニアソレノイドバルブSL1-SL5では、電磁部(コイル)への給電により発生する推力と、スプリングの付勢力と、出力ポートからフィードバックポートに供給された油圧によりスプールに作用する電磁部側への推力とをバランスさせることで、入力ポートに供給された作動油の圧力(ライン圧PL)が所望の圧力に調整される。
【0029】
また、本実施形態において、リニアソレノイドバルブSL1は、ライン圧PLを調整してクラッチC1への油圧を生成し、リニアソレノイドバルブSL2は、ライン圧PLを調整してクラッチC2およびブレーキB2への油圧Psl2を生成する。更に、リニアソレノイドバルブSL3は、ライン圧PLを調整してクラッチC3への油圧を生成し、リニアソレノイドバルブSL4は、ライン圧PLを調整してクラッチC4への油圧を生成し、リニアソレノイドバルブSL5は、ライン圧PLを調整してブレーキB1への油圧を生成する。すなわち、リニアソレノイドバルブSL1,SL3-SL5は、それぞれ対応する1つの油圧係合要素への油圧を生成する専用調圧バルブであり、リニアソレノイドバルブSL2は、クラッチC2およびブレーキB2の2つに対応した兼用調圧バルブである。また、本実施形態において、前進第1速-第8速(前進段)の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C2,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4およびSL5の入力ポートは、第1切替バルブ100および油路L3を介して油路L1に連通し、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートは、油路L2を介して油路L1に連通する。
【0030】
第1信号圧出力バルブSC1は、TMECU21により通電制御される例えば常閉型オンオフソレノイドバルブであり、第1信号圧出力バルブSC1の入力ポートは、バルブボディ600に形成された油路L1あるいはモジュレータバルブの出力ポートに連通する。第1信号圧出力バルブSC1は、電磁部に電流が供給されたときに入力ポートに供給された元圧としてのライン圧PLまたはモジュレータ圧を第1信号圧Psc1として出力ポートから流出させる。
【0031】
第2信号圧出力バルブSC2も、TMECU21により通電制御される例えば常閉型オンオフソレノイドバルブであり、第2信号圧出力バルブSC2の入力ポートは、バルブボディ600に形成された油路L1あるいはモジュレータバルブの出力ポートに連通する。第2信号圧出力バルブSC2は、電磁部に電流が供給されたときに入力ポートに供給された第1信号圧出力バルブSC1と共通の元圧(ライン圧PLまたはモジュレータ圧)を第2信号圧Psc2として出力ポートから流出させる。
【0032】
第3信号圧出力バルブSC3も、TMECU21により通電制御される例えば常閉型オンオフソレノイドバルブであり、第3信号圧出力バルブSC3の入力ポートは、バルブボディ600に形成された油路L1あるいはモジュレータバルブの出力ポートに連通する。第3信号圧出力バルブSC3は、電磁部に電流が供給されたときに入力ポートに供給された第1および第2信号圧出力バルブSC1,SC2と共通の元圧(ライン圧PLまたはモジュレータ圧)を第3信号圧Psc3として出力ポートから流出させる。
【0033】
第1切替バルブ100は、複数のランドを有すると共にバルブボディ600内に軸方向に移動自在に配置される第1スプールS1と、当該第1スプールS1を図4における上方に付勢する第1スプリングSP1とを含むスプールバルブである。更に、第1切替バルブ100は、元圧入力ポート101と、第1元圧出力ポート103と、第2元圧出力ポート104と、第1信号圧入力ポート105と、保持圧入力ポート106と、第1流入ポート107と、第1流出ポート108と、第2流入ポート109と、第2流出ポート110とを含む。
【0034】
第1切替バルブ100の元圧入力ポート101は、バルブボディ600の油路L1に連通する。第1元圧出力ポート103は、バルブボディ600に形成された油路L3に連通し、第2元圧出力ポート104は、バルブボディ600に形成された油路L4に連通する。また、第1信号圧入力ポート105は、第1スプリングSP1が配置されるスプリング室の反対側に配置され、バルブボディ600に形成された油路L5を介して第1信号圧出力バルブSC1の出力ポートに連通する。更に、保持圧入力ポート106は、第1スプリングSP1が配置されるスプリング室に連通すると共にバルブボディ600に形成された油路L6に連通する。また、第1流入ポート107は、バルブボディ600に形成された油路L7を介して第2信号圧出力バルブSC2の出力ポートに連通し、第1流出ポート108は、バルブボディ600に形成された油路L8に連通する。油路L8からは、保持圧入力ポート106に連通する上記油路L6が分岐されている。これにより、保持圧入力ポート106は、油路L6および油路L8の一部を介して第1流出ポート108に連通する。更に、第2流入ポート109は、バルブボディ600に形成された油路L9を介して第3信号圧出力バルブSC3の出力ポートに連通し、第2流出ポート110は、バルブボディ600に形成された油路L10に連通する。
【0035】
本実施形態において、第1切替バルブ100の取付状態は、第1信号圧入力ポート105および保持圧入力ポート106に第1または第2信号圧出力バルブSC1,SC2からの第1または第2信号圧Psc1,Psc2が供給されずに第1スプールS1が第1スプリングSP1によって図4における上方に付勢される第1状態(図4における左側半分の状態)である。第1切替バルブ100の第1状態(取付状態)において、第1スプールS1は、元圧入力ポート101と第1元圧出力ポート103とを連通させると共に、元圧入力ポート101と第2元圧出力ポート104との連通を遮断する。更に、当該第1状態において、第1スプールS1は、第1流入ポート107と第1流出ポート108とを連通させると共に、第2流入ポート109と第2流出ポート110との連通を遮断する。
【0036】
また、第1切替バルブ100が第1状態を形成しているときに、第2信号圧出力バルブSC2の電磁部に電流が供給されると、第2信号圧出力バルブSC2からの作動油(第2信号圧Psc2)は、油路L7を介して第1流入ポート107に流入すると共に第1流出ポート108を介して油路L8に流出する。更に、第2信号圧出力バルブSC2からの作動油の一部は、油路L8および油路L6を介して保持圧入力ポート106に流入する。これにより、第1スプールS1の第1スプリングSP1側の受圧面に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が作用し、第1切替バルブ100は、第1状態を形成する。更に、本実施形態において、第1スプールS1の第1信号圧入力ポート105側の受圧面と、保持圧入力ポート106(第1スプリングSP1)側の受圧面とは同一面積である。従って、第1切替バルブ100が第1状態を形成し、かつ第2信号圧出力バルブSC2が第2信号圧Psc2を出力しているときに、第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1が第1信号圧入力ポート105に供給されても、第1切替バルブ100は、継続して第1状態を形成する。
【0037】
一方、保持圧入力ポート106に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されずに第1信号圧入力ポート105に第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1が供給されるときに、第1スプールS1は、第1信号圧Psc1により第1スプールS1に作用する推力によって第1スプリングSP1の付勢力に抗して図4における下方に移動し、第1切替バルブ100は、第2状態(図4における右側半分の状態)を形成する。第1切替バルブ100の第2状態において、第1スプールS1は、元圧入力ポート101と第1元圧出力ポート103との連通を遮断すると共に、元圧入力ポート101と第2元圧出力ポート104とを連通させる。更に、当該第2状態において、第1スプールS1は、第1流入ポート107と第1流出ポート108との連通を遮断すると共に、第2流入ポート109と第2流出ポート110とを連通させる。
【0038】
第2切替バルブ200は、複数のランドを有すると共にバルブボディ600内に軸方向に移動自在に配置される第2スプールS2と、当該第2スプールS2を図4における上方に付勢する第2スプリングSP2とを含むスプールバルブである。更に、第2切替バルブ200は、第1入力ポート201と、第2入力ポート202と、第1出力ポート203と、第2出力ポート204と、第2信号圧入力ポート205と、流入ポート209と、流出ポート210とを含む。
【0039】
第2切替バルブ200の第1入力ポート201は、バルブボディ600に形成された油路L11を介してリニアソレノイドバルブSL2の出力ポートに連通し、第2入力ポート202は、バルブボディ600の油路L4を介して第1切替バルブ100の第2元圧出力ポート104に連通する。また、第1出力ポート203は、バルブボディ600に形成された油路L13等を介してクラッチC2の係合油室に連通し、第2出力ポート204は、バルブボディ600に形成された油路L14に連通する。更に、第2信号圧入力ポート205は、第2スプリングSP2が配置されるスプリング室の反対側に配置され、バルブボディ600に形成された油路L15を介して第2信号圧出力バルブSC2の出力ポートに連通する。また、流入ポート209は、バルブボディ600の上記油路L10を介して第1切替バルブ100の第2流出ポート110に連通し、流出ポート210は、バルブボディ600に形成された油路L16を介してシフトバイワイヤ式のパーキングロック機構70の油圧入口に連通する。
【0040】
本実施形態において、第2切替バルブ200の取付状態は、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されずに第2スプールS2が第2スプリングSP2によって図4における上方に付勢される第1供給状態(図4における左側半分の状態)である。第2切替バルブ200の第1供給状態(取付状態)において、第2スプールS2は、第1入力ポート201と第2出力ポート204とを連通させると共に、第1入力ポート201と第1出力ポート203との連通および第2入力ポート202と第2出力ポート204との連通を遮断する。更に、当該第1供給状態において、第2スプールS2は、流入ポート209と流出ポート210とを連通させる。
【0041】
一方、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されるときに、第2スプールS2は、第2信号圧Psc2により第2スプールS2に作用する推力によって第2スプリングSP2の付勢力に抗して図4における下方に移動し、第2切替バルブ200は、第2供給状態(図4における右側半分の状態)を形成する。第2切替バルブ200の第2供給状態において、第2スプールS2は、第1入力ポート201と第1出力ポート203とを連通させると共に、第2入力ポート202と第2出力ポート204とを連通させる。更に、当該第2供給状態において、第2スプールS2は、流入ポート209と流出ポート210との連通を遮断する。
【0042】
第3切替バルブ300は、複数のランドを有すると共にバルブボディ600内に軸方向に移動自在に配置される第3スプールS3と、当該第3スプールS3を図4における上方に付勢する第3スプリングSP3とを含むスプールバルブである。更に、第3切替バルブ300は、第3入力ポート301と、第3出力ポート303と、第3信号圧入力ポート305と、保持圧入力ポート306とを含む。
【0043】
第3切替バルブ300の第3入力ポート301は、バルブボディ600に形成された油路L14を介して第2切替バルブ200の第2出力ポート204に連通する。また、第3出力ポート303は、バルブボディ600に形成された油路L17等を介してブレーキB2の係合油室に連通する。更に、第3信号圧入力ポート305は、第3スプリングSP3が配置されるスプリング室の反対側に配置され、バルブボディ600の上記油路L8を介して第1切替バルブ100の第1流出ポート108に連通する。また、保持圧入力ポート306は、バルブボディ600に形成された油路L18を介して第3信号圧出力バルブSC3の出力ポートに連通する。
【0044】
本実施形態において、第3切替バルブ300の取付状態は、第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100の第1流入ポート107および第1流出ポート108を介して第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されずに第3スプールS3が第3スプリングSP3によって図4における上方に付勢される供給状態(図4における左側半分の状態)である。第3切替バルブ300の供給状態(取付状態)において、第3スプールS3は、第3入力ポート301と第3出力ポート303とを連通させる。
【0045】
一方、第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100の第1流入ポート107および第1流出ポート108を介して第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されるときに、第3スプールS3は、第2信号圧Psc2により第3スプールS3に作用する推力によって第3スプリングSP3の付勢力に抗して図4における下方に移動し、第3切替バルブ300は、遮断状態(図4における右側半分の状態)を形成する。第3切替バルブ300の遮断状態において、第3スプールS3は、第3入力ポート301と第3出力ポート303との連通を遮断する。
【0046】
続いて、図5から図11を参照しながら、油圧制御装置60の動作について説明する。
【0047】
シフトレバー95がパーキングポジションにセットされた状態で車両10のイグニッションスイッチ(スタートスイッチ)がオンされると、TMECU21は、図5に示すように、第1および第3信号圧Psc1,Psc3が出力されるように第1および第3信号圧出力バルブSC1,SC3の電磁部に電流を供給する。これにより、図6に示すように、第1切替バルブ100が上記第2状態を形成し、元圧入力ポート101と第2元圧出力ポート104とが連通すると共に、第2流入ポート109と第2流出ポート110とが連通する。また、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されないことから、第2切替バルブ200は上記第1供給状態を形成し、第1入力ポート201と第2出力ポート204とが連通すると共に、流入ポート209と流出ポート210とが連通する。更に、第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100を介して第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されないことから、第3切替バルブ300は上記供給状態を形成し、第3入力ポート301と第3出力ポート303とが連通する。
【0048】
従って、シフトレバー95がパーキングポジションにセットされているときには、図6に示すように、第3信号圧出力バルブSC3からの第3信号圧Psc3を第1切替バルブ100(第2流入ポート109および第2流出ポート110)および第2切替バルブ200(流入ポート209および流出ポート210)を介してパーキングロック機構70に供給し、パーキングロック状態を形成することができる。また、シフトレバー95がパーキングポジションにセットされているときに、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)は、バルブボディ600の油路L1から第1切替バルブ100(元圧入力ポート101および第2元圧出力ポート104)を介して油路L4に流入する。ただし、この際、第2切替バルブ200が第1供給状態を形成することから、ライン圧PLが第3切替バルブ300(第3入力ポート301および第3出力ポート303)を介してブレーキB2の係合油室に供給されることはない。また、TMECU21は、シフトレバー95がニュートラルポジションにセットされたときに、第1信号圧Psc1が出力されるように第1信号圧出力バルブSC1の電磁部に電流を供給すると共に、第2および第3信号圧出力バルブSC2,SC3への通電を解除する。
【0049】
一方、運転者によりシフトレバー95がリバースポジションにセットされると、TMECU21は、図5に示すように、第1、第2および第3信号圧Psc1,Psc2,Psc3のすべてが出力されるように第1、第2および第3信号圧出力バルブSC1,SC2,SC3の電磁部に電流を供給する。この際、TMECU21は、第1信号圧出力バルブSC1から第1切替バルブ100の第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給された後、第2および第3信号圧出力バルブSC2,SC3から第2または第3信号圧Psc2,Psc3が出力されるように第1、第2および第3信号圧出力バルブSC1,SC2,SC3の電磁部に電流を供給する。
【0050】
これにより、図7に示すように、第1切替バルブ100が上記第2状態を形成し、元圧入力ポート101と第2元圧出力ポート104とが連通すると共に、第2流入ポート109と第2流出ポート110とが連通する。また、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されることで、第2切替バルブ200は上記第2供給状態を形成し、第2入力ポート202と第2出力ポート204とが連通する。更に、第2状態を形成する第1切替バルブ100により第1流入ポート107と第1流出ポート108との連通が遮断されることから、第3信号圧入力ポート305には第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されず、第3切替バルブ300は、第3入力ポート301と第3出力ポート303とを連通させる上記供給状態を形成する。
【0051】
従って、シフトレバー95がリバースポジションにセットされたときには、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が、バルブボディ600の油路L1から第1切替バルブ100の元圧入力ポート101および第2元圧出力ポート104、油路L4、第2切替バルブ200の第2入力ポート202および第2出力ポート204、油路L14、第3切替バルブ300の第3入力ポート301および第3出力ポート303、油路L17等を介してブレーキB2の係合油室に供給される。また、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が油路L1およびL2を介してリニアソレノイドバルブSL3の入力ポートに供給され、当該リニアソレノイドバルブSL3により調圧された作動油がクラッチC3の係合油室に供給される。これにより、クラッチC3およびブレーキB2を係合させて後進第1速を形成することができる。更に、シフトレバー95がリバースポジションにセットされたときには、第3信号圧出力バルブSC3からの第3信号圧Psc3が第1切替バルブ100の第2流入ポート109および第2流出ポート110を介して油路L10に供給される。ただし、この際、第2切替バルブ200が第2供給状態を形成することから、第3信号圧Psc3が第2切替バルブ200を介してパーキングロック機構70に供給されることなく、第3信号圧Psc3は、第3切替バルブ300の保持圧入力ポート306にのみ保持圧として供給される。
【0052】
また、運転者によりシフトレバー95がドライブポジションあるいはスポーツポジション(前進走行ポジション)にセットされると、TMECU21は、図5に示すように、第1、第2および第3信号圧Psc1,Psc2,Psc3のすべての出力を停止させるべく、第1、第2および第3信号圧出力バルブSC1,SC2,SC3の電磁部への通電を解除する。これにより、図8に示すように、第1切替バルブ100が上記第1状態を形成し、元圧入力ポート101と第1元圧出力ポート103とが連通すると共に、第1流入ポート107と第1流出ポート108とが連通する。また、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されないことで、第2切替バルブ200は上記第1供給状態を形成し、第1入力ポート201と第2出力ポート204とが連通すると共に、流入ポート209と流出ポート210とが連通する。更に、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されないことで、第3切替バルブ300は上記供給状態を形成し、第3入力ポート301と第3出力ポート303とが連通する。
【0053】
従って、シフトレバー95がドライブポジション等の前進走行ポジションにセットされたときには、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が、バルブボディ600の油路L1から第1切替バルブ100の元圧入力ポート101および第1元圧出力ポート103、油路L3等を介して前進段の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C2,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4およびSL5の入力ポートに供給される。そして、リニアソレノイドバルブSL1により調圧された作動油は、クラッチC1の係合油室に供給される。また、リニアソレノイドバルブSL2により調圧された作動油(油圧Psl2)は、油路L11、第2切替バルブ200の第1入力ポート201および第2出力ポート204、油路L14、第3切替バルブ300の第3入力ポート301および第3出力ポート303、油路L17等を介してブレーキB2の係合油室に供給される。これにより、クラッチC1およびブレーキB2を係合させて前進第1速を形成することができる。
【0054】
更に、前進第1速が形成されている間に変速段を前進第2速等にアップシフトするためのアップシフト条件が成立すると、TMECU21は、図5に示すように、第1および第3信号圧出力バルブSC1,SC3の電磁部への通電を解除したまま、第2信号圧出力バルブSC2の電磁部に電流を供給する。これにより、図9に示すように、第1切替バルブ100が上記第1状態を形成し、元圧入力ポート101と第1元圧出力ポート103とが連通すると共に、第1流入ポート107と第1流出ポート108とが連通する。また、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されることで、第2切替バルブ200は上記第2供給状態を形成し、第1入力ポート201と第1出力ポート203とが連通すると共に、第2入力ポート202と第2出力ポート204とが連通する。更に、第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100の第1流入ポート107および第1流出ポート108並びに油路L8を介して第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給され、第3切替バルブ300は第3入力ポート301と第3出力ポート303との連通を遮断する上記遮断状態を形成する。
【0055】
これにより、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が、バルブボディ600の油路L1から第1切替バルブ100の元圧入力ポート101および第1元圧出力ポート103、油路L3等を介して前進段の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C2,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4およびSL5の入力ポートに供給される。また、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートは、油路L2を介して油路L1に連通している。従って、車両10の車速やアクセル開度に応じて、リニアソレノイドバルブSL1-SL5のうちの2つからの油圧によりクラッチC1-C4およびブレーキB1のうちの何れか2つを係合させて前進第2速-前進第8速のうちの所望の変速段を形成することができる。
【0056】
ここで、第2切替バルブ200において第2スプールS2の固着といった異常が発生した場合、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されているにも拘わらず、図10に示すように、当該第2切替バルブ200がリニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2(第2油圧係合要素)側への油圧Psl2の供給を許容する第1供給状態を形成してしまうことがあり得る。また、自動変速機25の前進第5速-前進第8速は、クラッチC2(第1係合要素)と、クラッチC1,C3,C4およびブレーキB1の何れか1つとを係合させることにより形成されるが、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに本来第2供給状態を形成すべき第2切替バルブ200が第1供給状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されてしまうと、前進第5速-前進第8速以外の変速段が形成されてしまう。
【0057】
すなわち、前進第5速が形成されるときに、第2切替バルブ200が第1供給状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されると、図3からわかるように、前進第1速が形成されて車両10が急減速してしまうおそれがある。また、前進第6速が形成されるときに、第2切替バルブ200が第1供給状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されると、図3からわかるように、後進第2速が形成されてしまう。更に、前進第7速が形成されるときに、第2切替バルブ200が第1供給状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されると、図3からわかるように、後進第1速が形成されてしまう。
【0058】
これらを踏まえて、油圧制御装置60では、前進第2速-前進第8速の何れかが形成されるときに、第3切替バルブ300の第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100の第1流入ポート107および第1流出ポート108並びに油路L8を介して第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給される。これにより、図10に示すように、第3切替バルブ300が第3入力ポート301と第3出力ポート303との連通を遮断する上記遮断状態を形成する。この結果、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに第2切替バルブ200が万が一第1供給状態を形成したとしても、リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されないようにして自動変速機25をニュートラル状態にすることが可能となる。
【0059】
一方、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに、何らかの異常の発生により第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されなくなった場合、図11に示すように、第2切替バルブ200が第2スプリングSP2の付勢力により第1入力ポート201と第2出力ポート204とを連通させる第1供給状態を形成し、第3切替バルブ300が第3スプリングSP3の付勢力により第3入力ポート301と第3出力ポート303とを連通させる供給状態を形成する。このため、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されなくなった場合、リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2が第2および第3切替バルブ200,300を介してブレーキB2に供給されて前進第5速-前進第8速以外の変速段が形成されてしまうおそれがある。これを踏まえて、TMECU21は、前進第5速-前進第8速が形成されるときに、第1切替バルブ100の保持圧入力ポート106に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されている状態で、第1切替バルブ100の第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されるように第1信号圧出力バルブSC1の電磁部に電流を供給する。
【0060】
すなわち、前進第5速-前進第8速が形成される間、第1スプールS1の第1スプリングSP1側とは反対側の受圧面に第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1が作用するが、第1スプールS1の第1スプリングSP1側の受圧面に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が作用することで、第1切替バルブ100は、前進第2速-前進第4速の形成時と同様に第2状態を形成する。これに対して、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに、何らかの異常の発生により第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されなくなった場合、第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1により第1スプールS1に作用する推力が第1スプリングSP1の付勢力に打ち勝つことで、第1切替バルブ100は、図11に示すように、第2状態を形成する。
【0061】
これにより、元圧入力ポート101と第2元圧出力ポート104との連通により第2切替バルブ200(ブレーキB2)側へのライン圧PLの供給が許容されると共に、元圧入力ポート101と第1元圧出力ポート103との連通の遮断により、前進段の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C2,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4およびSL5の入力ポートに対するライン圧PLの供給が断たれる。また、第2信号圧Psc2の供給を受けなくなった第2切替バルブ200がリニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2側への油圧Psl2の供給を許容すると共に第1切替バルブ100からブレーキB2側へのライン圧PLの供給を規制する。従って、第2信号圧Psc2の供給を受けなくなった第3切替バルブ300が第2切替バルブ200からブレーキB2へのリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2の供給を許容していたとしても、リニアソレノイドバルブSL2に対するライン圧PL(元圧)の供給が断たれて当該リニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2に油圧が供給されなくなるので、自動変速機25をニュートラル状態にすることができる。
【0062】
ここまで説明したように、本開示の油圧制御装置60では、クラッチC2(第1油圧係合要素)と、少なくとも自動変速機25の後進第1速および後進第2速の形成時に係合されると共にクラッチC2とは同時に係合されないブレーキB2(第2油圧係合要素)とに対して、リニアソレノイドバルブSL2(兼用調圧バルブ)により生成(調整)された油圧Psl2を供給することができる。これにより、油圧制御装置60におけるリニアソレノイドバルブ(調圧バルブ)の数を減らすことが可能となるので、リニアソレノイドバルブの削減による低コスト化および漏れ油の減少による効率向上を図ることができる。
【0063】
また、第1切替バルブ100は、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるときに、第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1および第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2の双方の供給を受ける。これにより、第1切替バルブ100は、前進第1速-第8速(前進段)の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C2,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4およびSL5に元圧としてのライン圧PLの供給を許容すると共に、第2信号圧出力バルブSC2から供給された作動油(第2信号圧Psc2)の流出を許容する。この際、第3切替バルブ300は、第1切替バルブ100を介して第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2の供給を受け、第2切替バルブ200からブレーキB2へのリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2の供給を規制する。これにより、第1切替バルブ100がリニアソレノイドバルブSL2に元圧としてのライン圧PLの供給を許容しているときに、第2切替バルブ200が第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2の供給を受けているにも拘わらず固着等の異常によりリニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2側への油圧Psl2の供給を許容していたとしても、当該リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されないようにして自動変速機25をニュートラル状態にすることが可能となる。
【0064】
更に、第1切替バルブ100は、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるときに何らかの異常の発生により第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されなくなると、第1信号圧Psc1のみの供給を受けることでブレーキB2(第2切替バルブ200)側へのライン圧PLの供給を許容すると共に、前進段の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C2,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL4およびSL5に対するライン圧PLの供給を規制する。従って、第2信号圧Psc2の供給を受けなくなった第3切替バルブ300が第2切替バルブ200からブレーキB2へのリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2の供給を許容していたとしても、リニアソレノイドバルブSL2に対するライン圧PLの供給が断たれて当該リニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2に油圧が供給されなくなるので、自動変速機25をニュートラル状態にすることができる。
【0065】
この結果、油圧制御装置60では、1つのリニアソレノイドバルブSL2からクラッチC2およびブレーキB2に選択的に油圧Psl2を供給して低コスト化および効率向上を図りつつ、フェールセーフを確保することが可能となる。ただし、油圧制御装置60は、3つ以上の油圧係合要素を選択的に係合させて複数の変速段を提供する変速機に適用されてもよい。
【0066】
また、自動変速機25において、クラッチC2は、発進段を含む複数の前進低速段すなわち前進第1速-前進第4速よりも高速側の前進第5速-前進第8速の形成時に係合され、ブレーキB2は、後進第1速および後進第2速の形成時および発進段である前進第1速の形成時に係合される。かかる自動変速機25に上記油圧制御装置60を適用することで、1つのリニアソレノイドバルブSL2からクラッチC2および当該クラッチC2とは同時に係合されないブレーキB2に選択的に油圧Psl2を供給すると共に、自動変速機25の高速段すなわち前進第5速-前進第8速の形成時におけるフェールセーフを良好に確保することが可能となる。
【0067】
更に、第1切替バルブ100では、第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されていないとき、および第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されると共に第1流入ポート107および第1流出ポート108を介して保持圧入力ポート106に第2信号圧Psc2が供給されているときに、第1スプールS1が第1スプリングSP1の付勢力により元圧入力ポート101と第1元圧出力ポート103とを連通させると共に第1流入ポート107と第1流出ポート108とを連通させる第1状態を形成する。また、第1切替バルブ100では、第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されているときに、第1スプールS1が第1スプリングSP1の付勢力に抗して元圧入力ポート101と第2元圧出力ポート104とを連通させると共に第1流入ポート107と第1流出ポート108との連通を遮断する第2状態を形成する。更に、第2切替バルブ200では、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧Psc2が供給されていないときに、第2スプールS2が第2スプリングSP2の付勢力により第1入力ポート201と第2出力ポート204とを連通させると共に第2入力ポート202と第2出力ポート204との連通を遮断する第1供給状態を形成する。また、第2切替バルブ200では、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧Psc2が供給されているときに、第2スプールS2が第2スプリングSP2の付勢力に抗して第1入力ポート201と第1出力ポート203とを連通させると共に第2入力ポート202と第2出力ポート204とを連通させる第2供給状態を形成する。更に、第3切替バルブ300では、第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100の第1流出ポート108から第2信号圧Psc2が供給されていないときに、第3スプールS3が第3スプリングSP3の付勢力により第3入力ポート301と第3出力ポート303とを連通させる供給状態を形成する。また、第3切替バルブ300では、第3信号圧入力ポート305に第1切替バルブ100の第1流出ポート108から第2信号圧Psc2が供給されているときに、第3スプールS3が第3スプリングSP3の付勢力に抗して第3入力ポート301と第3出力ポート303との連通を遮断する遮断状態を形成する。これにより、第2切替バルブ200の異常や第2信号圧出力バルブSC2の異常が発生した際に、自動変速機25をニュートラル状態にしてフェールセーフを良好に確保することが可能となる。
【0068】
図12は、上述の動力伝達装置20に適用可能な本開示の他の油圧制御装置60Bの要部を示す系統図である。なお、油圧制御装置60Bの構成要素のうち、上述の油圧制御装置60と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。油圧制御装置60Bも、トランスアクスルケース22bの作動油貯留部からストレーナを介して作動油を吸引して吐出可能な上述の機械式オイルポンプ24に接続される。油圧制御装置60BもTMECU21により制御され、発進装置23や自動変速機25により要求される油圧を生成すると共に、各種軸受等の潤滑対象やクラッチC1-C4の遠心油圧キャンセル室等といった低圧油供給部(被潤滑部)に作動油を供給する。図示するように、油圧制御装置60Bは、複数の油路等が形成されたバルブボディ600Bと、何れも図示しないプライマリレギュレータバルブ、セカンダリレギュレータバルブおよびモジュレータバルブと、リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4,SL5と、第1信号圧出力バルブSC1と、第2信号圧出力バルブSC2と、第3信号圧出力バルブSC3と、第1切替バルブ100Bと、第2切替バルブ200Bと、第3切替バルブ300Bとを含む。また、油圧制御装置60Bも、シフトレバー95に連動するマニュアルバルブを有しておらず、TMECU21と共にシフトバイワイヤ装置を構成する。すなわち、TMECU21は、自動変速機25が運転者によりセットされたシフトレバー95のシフトポジションに応じた状態となるように油圧制御装置60Bを制御する。
【0069】
バルブボディ600Bは、例えばトランスミッションケース22を構成するトランスアクスルケース22bの側部に取り付けられる。油圧制御装置60Bの図示しないプライマリレギュレータバルブは、機械式オイルポンプ24からバルブボディ600Bの油路L21に供給される作動油の圧力すなわちライン圧PLを図示しないリニアソレノイドバルブから供給される信号圧に応じて調整する。また、セカンダリレギュレータバルブは、プライマリレギュレータバルブからドレンされる作動油の圧力を当該リニアソレノイドバルブからの信号圧に応じて調整し、ライン圧PLよりも低いセカンダリ圧(循環圧)を生成する。更に、モジュレータバルブは、油路L1からのライン圧PLを減圧(調整)して略一定のモジュレータ圧Pmodを生成する。
【0070】
油圧制御装置60Bにおいて、リニアソレノイドバルブSL1,SL3-SL5は、それぞれ対応するクラッチC1,C3,C4またはブレーキB1への油圧を生成する専用調圧バルブであり、リニアソレノイドバルブSL2は、クラッチC2およびブレーキB2の2つに対応した兼用調圧バルブである。また、油圧制御装置60Bにおいて、前進第1速-第8速(前進段)の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C4またはブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL4およびSL5の入力ポートは、第1切替バルブ100および油路L22を介して油路L21に連通する。更に、リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートは、油路L23を介して油路L21に連通し、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートは、油路L24を介して油路L21に連通する。
【0071】
第1信号圧出力バルブSC1は、TMECU21により通電制御される例えば常閉型オンオフソレノイドバルブであり、電磁部に電流が供給されたときに入力ポートに供給された元圧としてのライン圧PLまたはモジュレータ圧を第1信号圧Psc1として出力ポートから流出させる。第2信号圧出力バルブSC2も、TMECU21により通電制御される例えば常閉型オンオフソレノイドバルブであり、電磁部に電流が供給されたときに入力ポートに供給された第1信号圧出力バルブSC1と共通の元圧(ライン圧PLまたはモジュレータ圧)を第2信号圧Psc2として出力ポートから流出させる。第3信号圧出力バルブSC3も、TMECU21により通電制御される例えば常閉型オンオフソレノイドバルブであり、電磁部に電流が供給されたときに入力ポートに供給された第1および第2信号圧出力バルブSC1,SC2と共通の元圧(ライン圧PLまたはモジュレータ圧)を第3信号圧Psc3として出力ポートから流出させる。
【0072】
第1切替バルブ100Bは、複数のランドを有すると共にバルブボディ600B内に軸方向に移動自在に配置される第1スプールS1と、当該第1スプールS1を図12における上方に付勢する第1スプリングSP1とを含むスプールバルブである。更に、第1切替バルブ100Bは、元圧入力ポート101と、元圧出力ポート102と、第1信号圧入力ポート105と、保持圧入力ポート106と、流入ポート111と、流出ポート112と、パーキングポート117とを含む。
【0073】
第1切替バルブ100Bの元圧入力ポート101は、バルブボディ600Bの油路L21に連通し、元圧出力ポート102は、バルブボディ600Bに形成された油路L22に連通する。また、第1信号圧入力ポート105は、第1スプリングSP1が配置されるスプリング室の反対側に配置され、バルブボディ600Bに形成された油路L25を介して第1信号圧出力バルブSC1の出力ポートに連通する。更に、保持圧入力ポート106は、第1スプリングSP1が配置されるスプリング室に連通すると共にバルブボディ600Bに形成された油路L26に連通する。また、流入ポート111は、バルブボディ600Bに形成された油路L27を介して第2信号圧出力バルブSC2の出力ポートに連通し、流出ポート112は、バルブボディ600Bに形成された油路L28に連通する。油路L28からは、保持圧入力ポート106に連通する上記油路L26が分岐されている。これにより、保持圧入力ポート106は、油路L26および油路L28の一部を介して流出ポート112に連通する。更に、パーキングポート117は、バルブボディ600Bに形成された油路を介してシフトバイワイヤ式のパーキングロック機構70の油圧入口に連通する。
【0074】
油圧制御装置60Bにおいて、第1切替バルブ100Bの取付状態は、第1信号圧入力ポート105および保持圧入力ポート106に第1または第2信号圧出力バルブSC1,SC2からの第1または第2信号圧Psc1,Psc2が供給されずに第1スプールS1が第1スプリングSP1によって図12における上方に付勢される第1状態(図12における左側半分の状態)である。第1切替バルブ100Bの第1状態(取付状態)において、第1スプールS1は、元圧入力ポート101と元圧出力ポート102とを連通させると共に、流入ポート111と流出ポート112とを連通させる。
【0075】
また、第1切替バルブ100Bが第1状態を形成しているときに、第2信号圧出力バルブSC2の電磁部に電流が供給されると、第2信号圧出力バルブSC2からの作動油(第2信号圧Psc2)は、油路L27を介して流入ポート111に流入すると共に流出ポート112を介して油路L28に流出する。更に、第2信号圧出力バルブSC2からの作動油の一部は、油路L28および油路L26を介して保持圧入力ポート106に流入する。これにより、第1スプールS1の第1スプリングSP1側の受圧面に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が作用し、第1切替バルブ100Bは、第1状態を形成する。更に、油圧制御装置60Bにおいても、第1スプールS1の第1信号圧入力ポート105側の受圧面と、保持圧入力ポート106(第1スプリングSP1)側の受圧面とは同一面積である。従って、第1切替バルブ100Bが第1状態を形成し、かつ第2信号圧出力バルブSC2が第2信号圧Psc2を出力しているときに、第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1が第1信号圧入力ポート105に供給されても、第1切替バルブ100Bは、継続して第1状態を形成する。
【0076】
一方、保持圧入力ポート106に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されずに第1信号圧入力ポート105に第1信号圧出力バルブSC1からの第1信号圧Psc1が供給されるときに、第1スプールS1は、第1信号圧Psc1により第1スプールS1に作用する推力によって第1スプリングSP1の付勢力に抗して図12における下方に移動し、第1切替バルブ100Bは、第2状態(図12における右側半分の状態)を形成する。第1切替バルブ100Bの第2状態において、第1スプールS1は、元圧入力ポート101と元圧出力ポート102との連通を遮断すると共に、流入ポート111と流出ポート112との連通を遮断する。更に、第2状態において、第1スプールS1は、流入ポート111とパーキングポート117とを連通させる。
【0077】
第2切替バルブ200Bは、複数のランドを有すると共にバルブボディ600B内に軸方向に移動自在に配置される第2スプールS2と、当該第2スプールS2を図12における上方に付勢する第2スプリングSP2とを含むスプールバルブである。更に、第2切替バルブ200Bは、入力ポート201′と、第1出力ポート203と、第2出力ポート204と、第2信号圧入力ポート205と、第1流入ポート211と、第2流入ポート212と、信号圧流出ポート215とを含む。
【0078】
第2切替バルブ200Bの入力ポート201′は、バルブボディ600Bに形成された油路L31を介してリニアソレノイドバルブSL2の出力ポートに連通する。また、第1出力ポート203は、バルブボディ600Bに形成された油路L33に連通し、第2出力ポート204は、バルブボディ600Bに形成された油路L34に連通する。更に、第2信号圧入力ポート205は、第2スプリングSP2が配置されるスプリング室の反対側に配置され、バルブボディ600Bに形成された油路L30およびL28を介して第1切替バルブ100Bの流出ポート112に連通する。また、第1流入ポート211は、バルブボディ600Bに形成された油路L28を介して第1切替バルブ100Bの流出ポート112に連通する。更に、第2流入ポート212は、バルブボディ600Bに形成された油路L32等を介して専用調圧バルブとしてのリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の出力ポートに連通する。また、信号圧流出ポート215は、バルブボディ600Bに形成された油路L35に連通する。
【0079】
油圧制御装置60Bにおいて、第2切替バルブ200Bの取付状態は、第2信号圧入力ポート205に第1切替バルブ100Bの流入ポート111、流出ポート112、油路L28およびL30を介して第2信号圧出力バルブSC2からの作動油(第2信号圧Psc2)が供給されずに第2スプールS2が第2スプリングSP2によって図12における上方に付勢される第1連通状態(図12における左側半分の状態)である。第2切替バルブ200Bの第1連通状態(取付状態)において、第2スプールS2は、入力ポート201′と第2出力ポート204とを連通させると共に、第2流入ポート212と信号圧流出ポート215とを連通させる。更に、第1連通状態において、第2スプールS2は、入力ポート201′と第1出力ポート203との連通および第1流入ポート211と信号圧流出ポート215との連通を遮断する。
【0080】
一方、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧出力バルブSC2からの作動油すなわち第2信号圧Psc2が供給されるときに、第2スプールS2は、第2信号圧Psc2により第2スプールS2に作用する推力によって第2スプリングSP2の付勢力に抗して図12における下方に移動し、第2切替バルブ200Bは、第2連通状態(図12における右側半分の状態)を形成する。第2切替バルブ200Bの第2連通状態において、第2スプールS2は、入力ポート201′と第1出力ポート203とを連通させると共に、第1流入ポート211と信号圧流出ポート215とを連通させる。更に、第2連通状態において、第2スプールS2は、入力ポート201′と第2出力ポート204との連通および第2流入ポート212と信号圧流出ポート215との連通を遮断する。
【0081】
第3切替バルブ300Bは、複数のランドを有すると共にバルブボディ600B内に軸方向に移動自在に配置される第3スプールS3と、当該第3スプールS3を図12における上方に付勢する第3スプリングSP3とを含むスプールバルブである。更に、第3切替バルブ300Bは、第1入力ポート311と、第2入力ポート312と、第1供給ポート313と、第2供給ポート314と、第3信号圧入力ポート315と、切替ポート316と、保持圧流入ポート317と、保持圧流出ポート318と、保持圧導入ポート319とを含む。
【0082】
第3切替バルブ300Bの第1入力ポート311は、バルブボディ600Bに形成された油路L33を介して第2切替バルブ200Bの第1出力ポート203に連通し、第2入力ポート312は、バルブボディ600Bに形成された油路L34を介して第2切替バルブ200Bの第2出力ポート204に連通する。また、第1供給ポート313は、バルブボディ600Bに形成された油路等を介してクラッチC2の係合油室に連通し、第2供給ポート314は、バルブボディ600Bに形成された油路等を介してブレーキB2の係合油室に連通する。更に、第3信号圧入力ポート315は、第3スプリングSP3が配置されるスプリング室の反対側に配置され、バルブボディ600Bの上記油路L35を介して第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215に連通する。また、切替ポート316は、第1スプリングSP1が配置されるスプリング室に連通すると共にバルブボディ600に形成された油路を介して第3信号圧出力バルブSC3の出力ポートに連通する。更に、保持圧流入ポート317には、上述のモジュレータバルブにより生成される略一定のモジュレータ圧Pmodが供給される。また、保持圧流出ポート318は、バルブボディ600Bに形成された油路L36に連通する。保持圧導入ポート319は、第3スプールS3に形成された保持圧受圧面S3pに臨むと共に、油路L36を介して保持圧流出ポート318に連通する。なお、保持圧流入ポート317には、モジュレータ圧Pmodの代わりに、ライン圧PLが供給されてもよい。
【0083】
油圧制御装置60Bにおいて、第3切替バルブ300Bの取付状態は、第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bおよび油路L35を介して第2信号圧出力バルブSC2からの作動油(第2信号圧Psc2)またはリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れか1つからの作動油(油圧)が供給されずに第3スプールS3が第3スプリングSP3によって図12における上方に付勢される第1供給状態(図12における左側半分の状態)である。第3切替バルブ300Bの第1供給状態(取付状態)において、第3スプールS3は、第1入力ポート311と第1供給ポート313との連通を遮断すると共に、第2入力ポート312と第2供給ポート314とを連通させる。
【0084】
一方、第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bおよび油路L35を介して第2信号圧出力バルブSC2からの作動油(第2信号圧Psc2)またはリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れか1つからの作動油(油圧)が供給されるときに、第3スプールS3は、第2信号圧Psc2により第3スプールS3に作用する推力によって第3スプリングSP3の付勢力に抗して図12における下方に移動し、第3切替バルブ300Bは、第2供給状態(図12における右側半分の状態)を形成する。第3切替バルブ300Bの第2供給状態において、第3スプールS3は、第1入力ポート311と第1供給ポート313とを連通させると共に、第2入力ポート312と第2供給ポート314との連通を遮断する。
【0085】
また、油圧制御装置60Bにおいて、第3切替バルブ300Bが第2供給状態を形成すると、モジュレータバルブから保持圧流入ポート317に供給された作動油すなわちモジュレータ圧Pmodが保持圧流出ポート318を介して保持圧導入ポート319に供給されて第3スプールS3の保持圧受圧面S3pに作用する。更に、保持圧受圧面S3pの受圧面積は、モジュレータ圧Pmodが当該保持圧受圧面S3pに作用することにより発生する推力が第2供給状態で第3スプリングSP3が発生する付勢力と釣り合うように定められている。これにより、第3信号圧入力ポート315への作動油(油圧)の供給によって第3切替バルブ300Bが第2供給状態を一旦形成すると、第3信号圧入力ポート315への作動油(油圧)の供給が断たれても、第3切替バルブ300Bは、第2供給状態を継続して形成(保持)することになる。これに対して、切替ポート316(スプリング室)に第3信号圧出力バルブSC3からの第3信号圧が供給されると、第3切替バルブ300Bは、第3信号圧入力ポート315への作動油(油圧)の供給の有無に拘わらず、第1供給状態を形成する。
【0086】
続いて、図13から図19を参照しながら、油圧制御装置60Bの動作について説明する。
【0087】
シフトレバー95がパーキングポジションにセットされた状態で車両10のイグニッションスイッチ(スタートスイッチ)がオンされると、TMECU21は、図13に示すように、第1および第2信号圧Psc1,Psc2が出力されるように第1および第2信号圧出力バルブSC1,SC2の電磁部に電流を供給する。これにより、図14に示すように、第1切替バルブ100Bが上記第2状態を形成し、元圧入力ポート101と元圧出力ポート102との連通および流入ポート111と流出ポート112との連通が遮断されると共に、流入ポート111とパーキングポート117とが連通する。従って、シフトレバー95がパーキングポジションにセットされているときには、図14に示すように、第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2を第1切替バルブ100(流入ポート111およびパーキングポート117)を介してパーキングロック機構70に供給し、パーキングロック状態を形成することができる。
【0088】
また、第1切替バルブ100Bの流入ポート111と流出ポート112との連通が遮断されることで、第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2は第2切替バルブ200Bの第2信号圧入力ポート205(および第1流入ポート211)に供給されず、第2切替バルブ200Bは上記第1連通状態を形成する。これにより、入力ポート201′と第2出力ポート204とが連通すると共に、第2流入ポート212と信号圧流出ポート215とが連通する。更に、第2切替バルブ200Bの第1流入ポート211と信号圧流出ポート215との連通が遮断されることで、第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2は第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315に供給されず、保持圧流入ポート317にモジュレータ圧Pmodが供給されても、第3切替バルブ300Bは上記第1供給状態を形成する。これにより、第2入力ポート312と第2供給ポート314とが連通すると共に、第1入力ポート311と第1供給ポート313との連通が遮断される。また、TMECU21は、シフトレバー95がニュートラルポジションにセットされたときに、図13に示すように、第1信号圧Psc1が出力されるように第1信号圧出力バルブSC1の電磁部に電流を供給すると共に、第2および第3信号圧出力バルブSC2,SC3への通電を解除する。これにより、第2信号圧出力バルブSC2からパーキングロック機構70への第2信号圧Psc2の供給を停止させて、パーキングロック状態を解除することができる。
【0089】
一方、運転者によりシフトレバー95がリバースポジションにセットされると、TMECU21は、図13に示すように、第1および第3信号圧Psc1,Psc3が出力されるように第1および第3信号圧出力バルブSC1,SC3の電磁部に電流を供給する。更に、TMECU21は、予め定められた手順に従ってリニアソレノイドバルブSL2およびSL3を制御する。これにより、図15に示すように、第1切替バルブ100Bが上記第2状態を形成し、第2切替バルブ200Bは上記第1連通状態を形成する。また、切替ポート316(スプリング室)に第3信号圧出力バルブSC3からの第3信号圧が供給されることで、第3切替バルブ300Bは、第3信号圧入力ポート315への作動油(油圧)の供給の有無に拘わらず、上記第1供給状態を形成する。そして、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が油路L21およびL24を介してリニアソレノイドバルブSL3の入力ポートに供給され、当該リニアソレノイドバルブSL3により調圧された作動油がクラッチC3の係合油室に供給される。また、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が油路L23を介してリニアソレノイドバルブSL2の入力ポートに供給され、当該リニアソレノイドバルブSL2により調圧された作動油(油圧Psl2)が第2切替バルブ200Bの入力ポート201′および第2出力ポート204)と第3切替バルブ300Bの第2入力ポート312および第2供給ポート314を介してブレーキB2の係合油室に供給される。
【0090】
この結果、クラッチC3およびブレーキB2を係合させて後進第1速を形成することができる。なお、TMECU21は、シフトレバー95がリバースポジションにセットされたときに、第3信号圧出力バルブSC3から第3切替バルブ300Bの切替ポート316に第3信号圧Psc3が供給された後、リニアソレノイドバルブSL2およびSL3の制御を開始する。これにより、第2切替バルブ200Bの第2流入ポート212および信号圧流出ポート215を介してリニアソレノイドバルブSL3からの作動油(油圧)が第3信号圧入力ポート315に供給されても、第3切替バルブ300Bを第1供給状態に保持しておくことができる。
【0091】
また、運転者によりシフトレバー95がドライブポジションあるいはスポーツポジション(前進走行ポジション)にセットされると、TMECU21は、図13に示すように、第1、第2および第3信号圧Psc1,Psc2,Psc3のすべての出力を停止させるべく、第1、第2および第3信号圧出力バルブSC1,SC2,SC3の電磁部への通電を解除する。これにより、図16に示すように、第1切替バルブ100Bが上記第1状態を形成し、元圧入力ポート101と元圧出力ポート102とが連通すると共に、流入ポート111と流出ポート112とが連通する。また、第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されないことで、第1切替バルブ100Bの流入ポート111と流出ポート112とが連通していても、第2切替バルブ200Bは上記第1供給状態を形成し、入力ポート201′と第2出力ポート204とが連通すると共に、第2流入ポート212と信号圧流出ポート215とが連通する。更に、第2切替バルブ200Bの第2流入ポート212と信号圧流出ポート215とが連通していても、リニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかから油圧が出力されなければ、第3切替バルブ300Bは、第1供給状態を形成し、第2入力ポート312と第2供給ポート314とが連通する。
【0092】
そして、シフトレバー95がドライブポジション等の前進走行ポジションにセットされたときには、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が、バルブボディ600Bの油路L21から第1切替バルブ100Bの元圧入力ポート101および元圧出力ポート102、油路L22等を介して前進段の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL4およびSL5の入力ポートに供給される。また、リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートは、油路L23を介して油路L1に連通している。従って、TMECU21によりリニアソレノイドバルブSL1およびSL2が制御されることで、リニアソレノイドバルブSL1により調圧された作動油がクラッチC1の係合油室に供給され、リニアソレノイドバルブSL2により調圧された作動油(油圧Psl2)が、油路L31、第2切替バルブ200Bの入力ポート201′および第2出力ポート204、油路L34、第3切替バルブ300Bの第2入力ポート312および第2供給ポート314を介してブレーキB2の係合油室に供給される。これにより、クラッチC1およびブレーキB2を係合させて前進第1速を形成することができる。
【0093】
更に、前進第1速が形成されている間に変速段を前進第2速等にアップシフトするためのアップシフト条件が成立すると、TMECU21は、図13に示すように、第1および第3信号圧出力バルブSC1,SC3の電磁部への通電を解除したまま、第2信号圧出力バルブSC2の電磁部に電流を供給する。これにより、図17に示すように、第1切替バルブ100Bが上記第1状態を形成し、元圧入力ポート101と元圧出力ポート102とが連通すると共に、流入ポート111と流出ポート112とが連通する。また、第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が第1切替バルブ100Bの流入ポート111および流出ポート112と油路L28とを介して第2信号圧入力ポート205に供給されることで、第2切替バルブ200Bは上記第2連通状態を形成する。これにより、入力ポート201′と第1出力ポート203とが連通すると共に、第1流入ポート211と信号圧流出ポート215とが連通する。更に、第2切替バルブ200Bが第2連通状態を形成すると、第1流入ポート211と信号圧流出ポート215とが連通することで、第2信号圧入力ポート205とは別に油路L28を介して第2信号圧出力バルブSC2から第1流入ポート211に供給された作動油(第2信号圧Psc2)の流出が許容される。そして、第1流入ポート211に供給された第2信号圧出力バルブSC2からの作動油は、第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215および油路L35を介して第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315に供給される。これにより、第3切替バルブ300Bは、上記第2供給状態を形成し、第1入力ポート311と第1供給ポート313とが連通する。
【0094】
また、プライマリレギュレータバルブ側からの作動油(ライン圧PL)が、バルブボディ600Bの油路L21から第1切替バルブ100Bの元圧入力ポート101および元圧出力ポート102、油路L22等を介して前進段の形成時にのみ係合されるクラッチC1,C4およびブレーキB1に対応したリニアソレノイドバルブSL1,SL4およびSL5の入力ポートに供給される。更に、リニアソレノイドバルブSL2の入力ポートは、油路L23を介して油路L1に連通し、リニアソレノイドバルブSL3の入力ポートは、油路L24を介して油路L1に連通している。従って、車両10の車速やアクセル開度に応じて、リニアソレノイドバルブSL1-SL5のうちの2つからの油圧によりクラッチC1-C4およびブレーキB1のうちの何れか2つを係合させて前進第2速-前進第8速のうちの所望の変速段を形成することができる。
【0095】
ここで、油圧制御装置60Bの第2切替バルブ200Bにおいて第2スプールS2の固着といった異常が発生した場合、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧出力バルブSC2からの第2信号圧Psc2が供給されているにも拘わらず、図18に示すように、当該第2切替バルブ200BがリニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2(第2油圧係合要素)側への油圧Psl2の供給を許容する第1連通状態を形成してしまうことがあり得る。また、自動変速機25の前進第5速-前進第8速は、クラッチC2(第1係合要素)と、クラッチC1,C3,C4およびブレーキB1の何れか1つとを係合させることにより形成されるが、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに本来第2連通状態を形成すべき第2切替バルブ200Bが第1連通状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されてしまうと、前進第5速-前進第8速以外の変速段が形成されてしまう。
【0096】
すなわち、前進第5速が形成されるときに、第2切替バルブ200Bが第1連通状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されると、図3からわかるように、前進第1速が形成されて車両10が急減速してしまうおそれがある。また、前進第6速が形成されるときに、第2切替バルブ200Bが第1連通状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されると、図3からわかるように、後進第2速が形成されてしまう。更に、前進第7速が形成されるときに、第2切替バルブ200Bが第1連通状態を形成してリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されると、図3からわかるように、後進第1速が形成されてしまう。
【0097】
これらを踏まえて、油圧制御装置60Bの第2切替バルブ200Bは、第1連通状態を形成した際に、第2流入ポート212と信号圧流出ポート215とを連通させて専用調圧バルブとしてのリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)を第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315に供給するように構成されている。また、油圧制御装置60Bの第3切替バルブ300Bは、第3信号圧入力ポート315への作動油(油圧)の供給によって第2供給状態を一旦形成すると、当該第3信号圧入力ポート315への作動油(油圧)の供給が断たれても第2供給状態を継続して形成(保持)する。これにより、万が一第2切替バルブ200Bが第1供給状態を形成したまま固着したとしても、前進第2速、第3速、第4速、第6速、第7速および第8速の何れかの形成に応じて第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315にリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)を供給し、当該第3切替バルブ300Bを第2入力ポート312と第2供給ポート314との連通を遮断する第2供給状態に保持しておくことができる。この結果、第2切替バルブ200Bが第1供給状態を形成したまま固着したとしても、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときにリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されないようにして自動変速機25をニュートラル状態にすることが可能となる。従って、油圧制御装置60Bによれば、前進第5速から前進第1速へのダウンシフトによる車両10の急減速等を良好に抑制することができる。
【0098】
一方、前進第5速-前進第8速の何れかが形成されるべきときに、何らかの異常の発生により第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されなくなった場合、図19に示すように、第2切替バルブ200Bが第2スプリングSP2の付勢力により入力ポート201′と第2出力ポート204とを連通させる第1連通状態を形成する。この場合も、前進第2速、第3速、第4速、第6速、第7速および第8速の何れかの形成に応じて第3切替バルブ300Bを第2入力ポート312と第2供給ポート314との連通を遮断する第2供給状態に保持しておくことができるので、リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2がブレーキB2に供給されないようにして自動変速機25をニュートラル状態にすることが可能となる。従って、この場合も、前進第5速から前進第1速へのダウンシフトによる車両10の急減速等を良好に抑制することができる。
【0099】
ここまで説明したように、本開示の油圧制御装置60Bでは、クラッチC2(第1油圧係合要素)と、少なくとも自動変速機25の後進第1速および後進第2速の形成時に係合されると共にクラッチC2とは同時に係合されないブレーキB2(第2油圧係合要素)とに対して、リニアソレノイドバルブSL2(兼用調圧バルブ)により生成(調整)された油圧Psl2を供給することができる。これにより、油圧制御装置60Bにおけるリニアソレノイドバルブ(調圧バルブ)の数を減らすことが可能となるので、リニアソレノイドバルブの削減による低コスト化および漏れ油の減少による効率向上を図ることができる。
【0100】
また、油圧制御装置60Bでは、前進第5速-前進第8速の形成時に第2切替バルブ200Bが兼用調圧バルブとしてのリニアソレノイドバルブSL2からブレーキB2側への油圧Psl2の供給を許容する状態(第1連通状態)で固着すると、当該第2切替バルブ200Bを介して専用調圧バルブとしてのリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315に供給される。更に、何らかの異常の発生により第2信号圧出力バルブSC2から第2信号圧Psc2が出力されなくなると、第2信号圧Psc2の供給を受けなくなって第1連通状態を形成した第2切替バルブ200Bを介してリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315に供給される。
【0101】
これにより、第2切替バルブ200Bあるいは第2信号圧出力バルブSC2に異常が発生しても、前進第2速、第3速、第4速、第6速、第7速および第8速の何れかの形成に応じて第3切替バルブ300Bの第3信号圧入力ポート315にリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)を供給し、当該第3切替バルブ300Bを第2入力ポート312と第2供給ポート314との連通を遮断する第2供給状態に保持しておくことができる。従って、第2切替バルブ200Bあるいは第2信号圧出力バルブSC2の異常により、第2切替バルブ200BがクラッチC2へのリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2の供給を規制すると共にブレーキB2への油圧Psl2の供給を許容する第1供給状態を形成していたとしても、第3切替バルブ300Bにより第2切替バルブ200BからブレーキB2へのリニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2の供給を規制して、自動変速機25をニュートラル状態にすることが可能となる。
【0102】
この結果、油圧制御装置60Bでは、1つのリニアソレノイドバルブSL2からクラッチC2およびブレーキB2に選択的に油圧Psl2を供給して低コスト化および効率向上を図りつつ、フェールセーフを確保することが可能となる。ただし、油圧制御装置60Bも、3つ以上の油圧係合要素を選択的に係合させて複数の変速段を提供する変速機に適用されてもよい。
【0103】
また、自動変速機25において、クラッチC2は、発進段を含む複数の前進低速段すなわち前進第1速-前進第4速よりも高速側の前進第5速-前進第8速の形成時に係合され、ブレーキB2は、後進第1速および後進第2速の形成時および発進段である前進第1速の形成時に係合される。更に、自動変速機25では、複数の前進低速段のうちの前進第2速、第3速および第4速、並びに複数の前進高速段のうちの第6速、第7速および第8速の形成時に、専用調圧バルブとしてのリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れか1つが対応するクラッチC3,C4またはブレーキB1への油圧を生成する。かかる自動変速機25に上記油圧制御装置60Bを適用することで、1つのリニアソレノイドバルブSL2からクラッチC2および当該クラッチC2とは同時に係合されないブレーキB2に選択的に油圧Psl2を供給すると共に、自動変速機25の高速段すなわち前進第5速-前進第8速の形成時におけるフェールセーフを良好に確保することが可能となる。
【0104】
更に、第1切替バルブ100Bでは、第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されていないとき、および第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されると共に流入ポート111および流出ポート112を介して保持圧入力ポート106に第2信号圧Psc2が供給されているときに、第1スプールS1が第1スプリングSP1の付勢力により流入ポート111と流出ポート112とを連通させる第1状態を形成する。また、第1信号圧入力ポート105に第1信号圧Psc1が供給されているときに、第1スプールS1が第1スプリングSP1の付勢力に抗して流入ポート111と流出ポート112との連通を遮断する第2状態を形成する。更に、第2切替バルブ200Bでは、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧Psc2が供給されていないときに、第2スプールS2が第2スプリングSP2の付勢力により入力ポート201′と第2出力ポート204とを連通させると共に第2流入ポート212と信号圧流出ポート215とを連通させる第1連通状態を形成する。また、第2信号圧入力ポート205に第2信号圧Psc2が供給されているときに、第2スプールS2が第2スプリングSP2の付勢力に抗して入力ポート201′と第1出力ポート20とを連通させると共に第1流入ポート211と信号圧流出ポート215とを連通させる第2連通状態を形成する。更に、第3切替バルブ300Bでは、第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215から第2信号圧出力バルブSC2または専用調圧バルブとしてのリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が供給されていないとき、および第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215からリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が供給され、かつ切替ポート316に第3信号圧出力バルブSC3からの第3信号圧Psc3が供給されているときに、第3スプールS3が第2入力ポート312と第2供給ポート314とを連通させる第1供給状態を形成する。また、第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215から第2信号圧出力バルブSC2またはリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が供給されているときには、第3スプールS3が第1入力ポート311と第1供給ポート313とを連通させる第2供給状態を形成する。加えて、第3切替バルブ300Bでは、第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215から第2信号圧出力バルブSC2またはリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が供給されていないときに、第3スプールS3が第3スプリングSP3の付勢力により保持圧流入ポート317と保持圧流出ポート318との連通を遮断する。更に、第3信号圧入力ポート315に第2切替バルブ200Bの信号圧流出ポート215から第2信号圧出力バルブSC2またはリニアソレノイドバルブSL3,SL4およびSL5の何れかからの作動油(油圧)が供給されているときには、第3スプールS3が第3スプリングSP3の付勢力に抗して保持圧流入ポート317と保持圧流出ポート318とを連通させ、保持圧導入ポート319を介して元圧としてのライン圧PLに基づく保持圧としてのモジュレータ圧Pmodを第3スプールS3の保持圧受圧面S3pに作用させる。これにより、第2切替バルブ200Bの異常や第2信号圧出力バルブSC2の異常が発生した際に、自動変速機25をニュートラル状態にしてフェールセーフを良好に確保することが可能となる。
【0105】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示の発明は、油圧制御装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 車両、12 エンジン、20 動力伝達装置、21 変速電子制御装置(TMECU)、24 機械式オイルポンプ、25 自動変速機、60,60B 油圧制御装置、600,600B バルブボディ、100,100B 第1切替バルブ、101 元圧入力ポート、102 元圧出力ポート、103 第1元圧出力ポート、104 第2元圧出力ポート、105 第1信号圧入力ポート、106 保持圧入力ポート、107 第1流入ポート、108 第1流出ポート、109 第2流入ポート、110 第2流出ポート、111 流入ポート、112 流出ポート、117 パーキングポート、200,200B 第2切替バルブ、201 第1入力ポート、201′ 入力ポート、202 第2入力ポート、203 第1出力ポート、204 第2出力ポート、205 第2信号圧入力ポート、209 流入ポート、210 流出ポート、211 第1流入ポート、212 第2流入ポート、215 信号圧流出ポート、300,300B 第3切替バルブ、301 第3入力ポート、303 第3出力ポート、305,315 第3信号圧入力ポート、306 保持圧入力ポート、311 第1入力ポート、312 第2入力ポート、313 第1供給ポート、314 第2供給ポート、316 切替ポート、317 保持圧流入ポート、318 保持圧流出ポート、319 保持圧導入ポート、B1,B2 ブレーキ、C1,C2,C3,C4 クラッチ、S1 第1スプール、S2 第2スプール、S3 第3スプール、SC1 第1信号圧出力バルブ、SC2 第2信号圧出力バルブ、SC3 第3信号圧出力バルブ、SL1,SL2,SL3,SL4,SL5 リニアソレノイドバルブ、SP1 第1スプリング、SP2 第2スプリング、SP3 第3スプリング。
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