(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158878
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】円すいころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20221006BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20221006BHJP
B60B 35/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/36
B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205493
(22)【出願日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2021062355
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彩水
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【テーマコード(参考)】
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J217JA02
3J217JA12
3J217JA14
3J217JA15
3J217JA16
3J217JA24
3J217JA36
3J217JA39
3J217JB05
3J217JB06
3J217JB15
3J217JB64
3J217JB84
3J701AA16
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3J701AA54
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3J701BA54
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3J701FA24
3J701FA25
3J701FA26
3J701FA33
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】円すいころのスキューの発生を検出し、通知することが可能となる円すいころ軸受を提供する。
【解決手段】円すいころ軸受10は、内周面に外輪軌道面11aを有する外輪11と、外周面に内輪軌道面12aを有する内輪12と、外輪軌道面11aと内輪軌道面12aとの間に転動可能に設けられる円すいころ13と、円すいころのスキューにより、円すいころ13が動的に占有する空間の軸方向距離が延びたことを検出するセンサ20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動可能に設けられる円すいころと、
前記円すいころのスキューにより、当該円すいころが動的に占有する空間の軸方向距離が延びたことを検出するセンサと、
を備える円すいころ軸受。
【請求項2】
前記センサが、前記外輪軌道面又は前記内輪軌道面の延長線上から径方向に突出する部材と、前記円すいころの尾部との接触を検知する、
請求項1に記載の円すいころ軸受。
【請求項3】
前記センサは、前記外輪軌道面又は前記内輪軌道面の延長線上から径方向に突出する部材が、前記円すいころの尾部との接触により、移動したことを検知する、
請求項1または2に記載の円すいころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円すいころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受は、車両の車軸、その他の機械類の回転軸を回転自在に支持する装置であり、種々の種類の軸受が存在する。特に、転動体として円すいころを用いる円すいころ軸受は、球状の玉を用いる玉軸受に比べて、軸受部分の断面高さが低い割に、高負荷容量を有しているため、例えば、重量が嵩み、軸重の高い、車両の軸受として使用されている。
【0003】
特許文献1は、円すいころを用いた車輪用軸受装置を開示している。本装置において、ハブ輪の小径段部の端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部により一対の内輪がハブ輪に対して軸方向に固定されている。一対の内輪の小端面が、軸心に直交する平面に対して10°以下に設定された傾斜角だけ傾斜して形成され、それぞれの小端面が突き合わされ、面接触の状態でセットされている。これにより、一対の内輪の小端面が所定の傾斜角を介して係合し、一対の内輪が同時にクリープを起さない限り、小径段部と内輪との嵌合面にクリープが発生することを防ぐ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
円すいころ軸受においては、予圧が低い場合において、不可避な加工誤差に起因して、スキューと呼ばれる円すいころの進行方向に対する傾き挙動が発生することがある。このスキューは、円すいころが長いほど、また、予圧が低いほど、発生する可能性が高まる。また、スキューは、円すいころの負荷位置が、円すいころの軸方向の中心から外れるほど、発生する可能性が高まる。さらにスキューは、軸受の大鍔面の摩耗や面荒れが進むほど、発生する可能性が高まる。
【0006】
スキューが増大すると、円すいころの小径側の尾部が小鍔に接触し、軸受のトルクが上昇し、焼き付きや、内輪の小鍔の破損を引き起こすおそれがある。特に車輪用の円すいころ軸受は、例えば次の(1)~(4)の要因により、元来より、スキューが発生する可能性が高い。よって、軸受の使用により、大鍔面の摩耗や面荒れが進み、さらにスキューが発生する可能性が高まる。
【0007】
(1)負荷容量を稼ぐ必要がある為、径に比べて長さが1.5倍以上ある比較的長いころが使用される。(2)路面反力に基づく、モーメント荷重を負荷しているので、通常は円すいころの大径側に負荷が偏っている。(3)低トルク要求や、焼き付き防止のため、あまり大きな予圧は掛けられない。(4)円すいころの頭部の曲面と大鍔の滑り摩擦により、円すいころが傾き易い。
【0008】
ただし、一旦スキューが発生しても、荷重や回転速度を落とすことによってスキューを軽減することが可能である。スキューを軽減することにより、軸受の焼き付きや、内輪の小鍔の破損を抑制することができる。よって、スキューの発生を検知した後、減速等行い、荷重や回転速度を軽減すれば、軸受をしはらく使用を続けることは可能である。
【0009】
本発明は、円すいころのスキューを検出し得る円すいころ軸受を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)内周面に外輪軌道面を有する外輪と、
外周面に内輪軌道面を有する内輪と、
前記外輪軌道面と前記内輪軌道面との間に転動可能に設けられる円すいころと、
前記円すいころのスキューにより、当該円すいころが動的に占有する空間の軸方向距離が延びたことを検出するセンサと、
を備える円すいころ軸受。
(2)前記センサが、前記外輪軌道面又は前記内輪軌道面の延長線上から径方向に突出する部材と、前記円すいころの尾部との接触を検知する、(1)に記載の円すいころ軸受。
(3)前記センサは、前記外輪軌道面又は前記内輪軌道面の延長線上から径方向に突出する部材が、前記円すいころの尾部との接触により、移動したことを検知する、(1)または2に記載の円すいころ軸受。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、円すいころのスキューの発生を検出し、通知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る円すいころ軸受の断面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第2実施形態に係る円すいころ軸受を適用した車輪用軸受装置の断面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第3実施形態に係る円すいころ軸受を適用した車輪用軸受装置の断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第4実施形態に係る円すいころ軸受を適用した車輪用軸受装置の断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の第5実施形態に係る円すいころ軸受を適用した車輪用軸受装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る円すいころ軸受の組立方法の各実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に係る円すいころ軸受10は、内周面に外輪軌道面11aを有する外輪11と、外周面に内輪軌道面12aを有する内輪12と、外輪軌道面11aと内輪軌道面12aとの間に転動可能に設けられる複数の円すいころ13と、複数の円すいころ13を円周方向に所定の間隔で保持する金属製または樹脂製の保持器14と、を備える。
【0015】
内輪12は、内輪12の小径側端部に設けられる小鍔部15と、内輪12の大径側端部に設けられる大鍔部16と、を有する。なお、小鍔部15における小鍔面15aは、小鍔部15が円すいころ13の小径側の端部である尾部13aと近接する面である。また、大鍔部16における大鍔面16aは、大鍔部16が円すいころ13の大径側の端部である頭部13bと接触する面である。
【0016】
保持器14は、例えば鉄板のプレス加工や樹脂の射出成形などで形成されており、小径側円環部14aと、小径側円環部14aと同軸配置される大径側円環部14bと、小径側円環部14aと大径側円環部14bとを連結すべく、周方向に所定の間隔(例えば、略等間隔)で配置される複数の柱部14cと、を備え、周方向に互いに隣り合う各柱部14c間に、円すいころ13を転動可能に保持するポケット部14dが形成されている。
【0017】
例えば、このような円すいころ軸受10を二つ、外輪回転で使用することで、車両の車輪を支持する構造に適用されるが、円すいころ軸受10の適用対象となる具体例は特に限定されない。
【0018】
さらに円すいころ軸受10は、円すいころ13のスキューにより、円すいころ13が動的に占有する空間の軸方向距離が延びたことを検出するセンサ20を備えている。円すいころ軸受10の運転時に円すいころ13は自転するが、円すいころ13が本来の自転軸から傾いてしまう現象がスキューである。スキューの発生により、円すいころ13が動いている間に占有する空間、すなわち、動的に占有する空間は変化するが、当該空間の軸方向における距離が延びてしまう現象が発生し得る。センサ20は、このような現象を捉えるデバイスである。
【0019】
本実施形態においては、センサ20は、内輪12における、内輪12の小鍔部15と軸方向において重畳する位置に設けられている。特に本実施形態においては、内輪軌道面12aと、径方向において反対側の内径面12bの一部が除去されて凹部12cが形成されている。センサ20は、この凹部12cに配置されている。
【0020】
センサ20は、円すいころ13の尾部13aと小鍔部15との接触を検知することが可能である。すなわち、スキューの発生により、円すいころ13が動的に占有する空間の軸方向距離が延びると、尾部13aが小鍔部15に接触する。センサ20はこの接触を検知する。特に本実施形態において、センサ20は、小鍔部15と軸方向において重畳する位置であり、径方向に隣接した位置に設けられているため、センサ20が小鍔部15に隣接して配置されることになり、尾部13aと小鍔部15の接触を高精度に検出することができる。
【0021】
センサ20としては、例えば尾部13aとの接触時における小鍔部15の温度変化を検出する温度センサ、尾部13aとの接触時における小鍔部15のひずみを検知するひずみセンサ、小鍔部15の振動を検知する振動センサ、小鍔部15の変形を検知するアコースティックエミションセンサなどのいずれが適用されてもよい。また、センサ20は、その種類に応じて、例えば、円環状に形成されてもよいし、円周方向に等間隔に複数配置されてもよい。
【0022】
なお、内輪12の小鍔部15の外径は、保持器14に組付けられた円すいころ13の尾部13a側の内接円径の最大値より大きくなるように設計されている。このような設計により、円すいころ13および保持器14の組立体が、内輪12から分離することを防いでいる。通常の使用状態では、円すいころ13の尾部13aと小鍔部15の軌道面側の側面は接触することはない。
【0023】
本実施形態の円すいころ軸受10は、円すいころ13のスキューを検出し、焼き付きや、内輪12の小鍔部15の破損、など重篤な事態が発生する前に、車両のドライバーなど軸受の利用者に対し、スキューの発生を通知することができる。この通知により、利用者に対し、円すいころ軸受10の減速、停止などを促すことができる。これにより、円すいころ軸受10の延命を図ることができる。この結果、円すいころ軸受10を利用した車両などの装置が、適切な計画の下でメンテナンスすることが可能となり、装置が突然使用不能になることを防ぎ、装置の稼働率向上を図ることができる。
【0024】
(第2実施形態)
図2に示すように、第2実施形態は、本発明の円すいころ軸受10が複列で背面組合せされて車輪用軸受装置100に適用されたものである。
本実施形態では、ハブが、ハブ輪31と、このハブ輪31に圧入された一対の内輪12A,12Bと、を有する。ハブ輪31は、図面上の軸方向左側であるアウトボード側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ33を一体的に有している。さらにハブ輪31には、外周に肩部31aを介して軸方向に延びる円筒状の小径段部31bが形成されている。また、車輪取付フランジ33には、車輪を固定するハブボルト33aが植設されている。
なお、軸方向に関して「アウトボード側」とは、車両用軸受装置100を自動車に組み付けた状態で車体の外側となる、
図2~
図5の左側をいう。反対に、車両用軸受装置100を自動車に組み付けた状態で車体の中央側となる、
図2~
図5の右側を、軸方向に関して「インボード側」という。
【0025】
複列の円すいころ軸受10は、内周面に一対の外輪軌道面11a1,11a2を有する外輪11と、外周面に内輪軌道面12a1,12a2を有する一対の内輪12A,12Bと、外輪軌道面11a1,11a2と内輪軌道面12a1,12a2との間に複列で転動可能に設けられる複数の円すいころ13A,13Bと、複数の円すいころ13A,13Bを円周方向に所定の間隔で保持する樹脂製または金属製の保持器14A,14Bと、を備える。
【0026】
また、外輪11は、外周面にナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ11bを一体に有している。
内輪12Aは、内輪12Aの小径側端部に設けられる小鍔部15Aと、内輪12Aの大径側端部に設けられる大鍔部16Aと、を有する。同様に、内輪12Bは、内輪12Bの小径側端部に設けられる小鍔部15Bと、内輪12Bの大径側端部に設けられる大鍔部16Bと、を有する。
【0027】
円すいころ軸受10は、ハブ輪31の肩部31aに、アウトボード側の内輪12Bの大端面が衝合するように、小径段部31bに所定の締め代を介して圧入されている。そして、小径段部31bの端部を径方向外方に塑性変形させて形成した加締部38によって所定の予圧が付与された状態で固定されている。
【0028】
さらに円すいころ軸受10は、円すいころ13A,13Bのスキューにより、円すいころ13A,13Bが動的に占有する空間の軸方向距離が延びたことを検出するセンサ20を備えている。本実施形態においては、センサ20は、内輪12Aにおける、小鍔部15Aに対して、内輪軌道面12a1と軸方向において反対側の位置に設けられている。特に本実施形態においては、小鍔部15Aに対し、内輪軌道面12a1と、軸方向において反対側において、内輪12Aの一部を軸方向に延在した、小鍔部15Aより小径の円筒部12dが形成されている。一対のセンサ20は、この円筒部12dの外周面に、センサ20からの信号を送信する送信電極を有する送信部23を挟んで配置されている。
【0029】
さらに本実施形態において、送信部23と、アウトボード側の円すいころ軸受10用のセンサ20との間に弾性部材であるバネ22が配置されており、一対の内輪12A,12Bがハブ輪31に組付けられた状態で、センサ20が、内輪12Bの小鍔部15Bに対して、バネ22の付勢力により、軸方向に押し付けられている。これにより、センサ20は小鍔部15Bに密着し、尾部13a2と小鍔部15Bの接触を高精度に検出することができる。弾性部材の具体例は、バネには限定されない。
【0030】
したがって、一対のセンサ20は、円すいころ13Aの尾部13a1と小鍔部15A、または、円すいころ13Bの尾部13a2と小鍔部15Bとの接触を検知することが可能である。すなわち、スキューの発生により、円すいころ13Aまたは13Bの動的に占有する空間の軸方向距離が延びると、尾部13a1または13a2が小鍔部15Aまたは15Bに接触する。センサ20はこの接触を検知する。特に本実施形態において、一対のセンサ20は、小鍔部15A、15Bと軸方向において隣接した位置に設けられているため、尾部13a1と小鍔部15A、または尾部13a2と小鍔部15Bの接触を高精度に検出することができる。
したがって、本実施形態では、小鍔部15A,15Bが、本発明の内輪軌道面12a1、12a2の延長線上から径方向に突出する部材であり、センサ20,20は、円すいころ13A、13Bの尾部13a1,13a2との接触を検知する。
【0031】
さらに、本実施形態において、センサ20と径方向に対向する位置に、センサ20からの信号を受信する受信電極を有する受信部24が外輪11の内周面に設けられている。特に受信部24は、外輪11に設けられた貫通孔25に配線された電線26を介して外部の装置に接続されている。これにより、受信部24は、センサ20からの信号、すなわち、スキューの検出信号を円滑に受信し、電線26を介して外部の装置に円滑に送信することができ、スキューの検知を円滑に通知することができる。
【0032】
(第3実施形態)
図3に示すように、第3実施形態も、本発明の円すいころ軸受10が複列で背面組合せされて車輪用軸受装置100に適用されたものである。なお、円すいころ軸受10のセンサ周辺部分以外は、
図2の車輪用軸受装置100と同等の構成を有する。
【0033】
本実施形態においては、小鍔部15A,15Bは、例えば、内輪12A,12Bの内輪軌道面12a1、12a2を有する本体部分と別体に設けられ、該本体部分に対し、比較的軽い圧力での締り嵌めで圧入されている。これにより、小鍔部15A,15Bは、円すいころ13A,13Bにスキューが発生して、円すいころ13A,13Bの尾部13a1,13a2と接触すると軸方向に移動可能な状態で設けられている。
【0034】
また、外輪11において、軸方向における中間位置、例えば一対の外輪軌道面11a1,11a2との間には、近接センサ20Aが設けられている。近接センサ20Aは、小鍔部15Aと尾部13a1、または、小鍔部15Bと尾部13a2との接触時に、小鍔部15A,15Bの軸方向への移動を検知することができる。
【0035】
この構造の場合、小鍔部15A,15Bの軸方向の移動量が少ない(全周で移動量が多いところと少ないところがある状態)うちは、近接センサ20Aは間欠的に反応し、移動量が多くなると、近接センサ20Aは連続的に反応するので、車輪用軸受装置100のダメージのレベルも併せて把握することができる。
また、小鍔部の15A,15Bの軸方向の移動により、スキューが焼き付きに進行することを一時的に防止できる。
【0036】
(第4実施形態)
図4に示すように、第4実施形態も、本発明の円すいころ軸受10が複列で背面組合せされて車輪用軸受装置100に適用されたものであり、円すいころ軸受10のセンサ周辺部分以外は、
図2、
図3の車輪用軸受装置100と同等の構成を有する。
【0037】
本実施形態においては、一対の突起17A,17Bが外輪11に設けられ、さらに一対のセンサ20,20が、外輪11において、突起17A,17Bに対して、外輪軌道面11a1,11a2と軸方向において反対側の位置に設けられている。これにより、突起17A,17Bは、円すいころ13A,13Bにスキューが発生すると、円すいころ13A,13Bの尾部13a1,13a2と接触する。センサ20,20はこの接触を検知する。
したがって、本実施形態では、突起17A,17Bが、本発明の外輪軌道面11a1、11a2の延長線上から径方向に突出する部材であり、センサ20,20は、円すいころ13A、13Bの尾部13a1,13a2との接触を検知する。
【0038】
突起17A,17Bは、正常の使用状態において、尾部13a1,13a2と小鍔部15A,15Bとの間の距離より、尾部13a1,13a2と突起17A,17Bとの間の距離が小さくなる様な位置に設けられている。よって、スキューが発生した場合、円すいころ13A,13Bの尾部13a1,13a2は、小鍔部15A,15Bと接触するよりも、先に突起17A,17Bと接触する。これにより、センサ20,20はスキューを速やかに検知することができる。
【0039】
センサ20は、外輪11に設けられた貫通孔25に配線された電線26を介して外部の装置に接続されている。これにより、センサ20は、信号、すなわち、スキューの検出信号を円滑に受信し、電線26を介して外部の装置に円滑に送信することができ、スキューの検知を円滑に通知することができる。この場合、
図2の送信部23及び受信部24が不要であり、構成を簡易にし、コストを下げることも可能である。
【0040】
(第5実施形態)
図5に示すように、第3実施形態も、本発明の円すいころ軸受10が複列で背面組合せされて車輪用軸受装置100に適用されたものであり、円すいころ軸受10のセンサ周辺部分以外は、
図2~
図4の車輪用軸受装置100と同等の構成を有する。
【0041】
本実施形態においては、突起17A,17Bは、例えば、外輪11の外輪軌道面11a1,11a2を有する本体部分と別体に設けられ、該本体部分に対し、比較的軽い圧力での締り嵌めで圧入されている。これにより、突起17A,17Bは、円すいころ13A,13Bにスキューが発生して、円すいころ13A,13Bの尾部13a1,13a2と接触すると軸方向に移動可能な状態で設けられている。
【0042】
また、外輪11において、軸方向における中間位置、例えば内輪軌道面12a1と内輪軌道面12a2との間には、近接センサ20Aが設けられている。近接センサ20Aは、突起17A,17Bと、尾部13a1,13a2との接触時に、突起17A,17Bの軸方向への移動を検知することができる。
【0043】
この構造の場合、突起17A,17Bの軸方向の移動量が少ない(全周で移動量が多いところと少ないところがある状態)うちは、近接センサ20Aは間欠的に反応し、移動量が多くなると、近接センサ20Aは連続的に反応するので、車輪用軸受装置100のダメージのレベルも併せて把握することができる。また、簡易な構成により、センサ20は、信号、すなわち、スキューの検出信号を円滑に受信し、電線26を介して外部の装置に円滑に送信することができ、スキューの検知を円滑に通知することができる。この場合、
図2の送信部23及び受信部24は不要であり、構成を簡易にし、コストを下げることも可能である。
【0044】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0045】
なお、
図2~
図5の実施形態では、ハブは、ハブ輪31と、一対の内輪12A,12Bとによって構成されているが、本発明は、ハブ輪がアウトボード側の内輪と一体的に構成され、ハブが、当該ハブ輪と、インボード側の内輪とによって構成されてもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、センサが円すいころの尾部との接触を検知する、外輪軌道面又は内輪軌道面の延長線上から径方向に突出する部材として、内輪と一体又は別体に設けられた小鍔部、または、外輪と一体又は別体に設けられた突起について記載されている。しかしながら、本発明において、外輪軌道面又は内輪軌道面の延長線上から径方向に突出する部材は、これに限らず、センサが円すいころの尾部との接触を検知するように構成されればよい。
【符号の説明】
【0047】
10 円すいころ軸受
11 外輪
11a,11a1,11a2 外輪軌道面
12,12A,12B 内輪
12a,12a1,12a2 内輪軌道面
13,13A,13B 円すいころ
13a,13a1,13a2 尾部
13b 頭部
14 保持器
15,15A,15B 小鍔部
16,16A,16B 大鍔部
17A,17B 突起
20 センサ
20A 近接センサ
22 バネ(弾性部材)
23 送信部
24 受信部
25 貫通孔
26 電線