(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158894
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】保護フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221006BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221006BHJP
C09J 7/29 20180101ALI20221006BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/32 E
C09J7/29
G02B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002655
(22)【出願日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021062379
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大矢 裕
(72)【発明者】
【氏名】松井 智紀
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
2H149AA23
2H149CA02
2H149FA04X
2H149FA13X
2H149FD35
2H149FD44
2H149FD48
4F100AJ04D
4F100AK01A
4F100AK01B
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4F100AK45D
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4J004AA07
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4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC03
4J004FA04
(57)【要約】
【課題】樹脂基板に対して貼付し、その後、少なくとも一部を剥離させた後に、再び樹脂基板に対して貼付する再密着性に優れた保護フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明の保護フィルム10は、樹脂基板21を熱曲げ加工を施す際に、樹脂基板21に貼付して用いられ、基材層と、該基材層と前記樹脂基板との間に位置して、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、前記粘着層は、JIS B 0601に準拠して測定される、樹脂基板21側の表面における表面粗さRaが0.20μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであって、
基材層と、
該基材層と前記樹脂基板との間に位置して、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、
前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、
前記粘着層は、JIS B 0601に準拠して測定される、前記樹脂基板側の表面における表面粗さRaが0.20μm以下であることを特徴とする保護フィルム。
【請求項2】
当該保護フィルムは、25℃における弾性率が300MPa以下600MPa以下である請求項1に記載の保護フィルム。
【請求項3】
前記第1の層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が150℃以上のものであり、前記第2の層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が120℃以上のものであり、前記粘着層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が110℃以下のものである請求項1または2に記載の保護フィルム。
【請求項4】
前記第1の層が含有する前記熱可塑性樹脂と、前記第2の層が含有する前記熱可塑性樹脂とは、ともにポリオレフィン系樹脂を含有する請求項3に記載の保護フィルム。
【請求項5】
前記粘着層は、粘着性を有するポリオレフィン系樹脂を主材料として含有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項6】
ポリカーボネート基板上に幅25mm×長さ200mmの当該保護フィルムを貼付し、次いで、25℃の環境下で、当該保護フィルムの一端を持ち、90°の方向にて長さ100の位置まで引き剥がした後に、当該保護フィルムの前記一端を離すことで、当該保護フィルムを前記ポリカーボネート基板上に、再び貼付させたとき、再貼付から1分後において、前記ポリカーボネート基板と当該保護フィルムとが接合していない領域の平面視における総面積が1250mm2未満である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項7】
前記樹脂基板の両面に貼付される請求項1ないし6のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項8】
前記樹脂基板は、両面、一方の面または他方の面に、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層およびセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成される被覆層を備える請求項1ないし7のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【請求項9】
前記樹脂基板は、プレス成形または真空成形により、前記熱曲げ加工が施される請求項1ないし8のいずれか1項に記載の保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂またはセルロース樹脂で構成される被覆層で偏光子の両面を被覆した構成をなす樹脂基板を備えるサングラス用レンズは、例えば、平面視で平板状をなす前記樹脂基板の両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、前記樹脂基板を打ち抜き、その後、この樹脂基板を加熱下で熱曲げ加工を施す。そして、熱曲げがなされた樹脂基板から、保護フィルムを剥離させた後に、この樹脂基板の凹面にポリカーボネート層を射出成形することで製造される。
【0003】
この保護フィルムとして、例えば、ポリオレフィン系樹脂を主材料とする基材を、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等を主材料とする粘着層を介して、前記樹脂基板に対して貼付する構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
保護フィルムは、上記の通り、樹脂基板の打ち抜き時に先立って、樹脂基板の両面に貼付され、この貼付は、通常、人の手や、工作機械が備えるアーム等を用いて実施される。かかる保護フィルムの貼付において、保護フィルムにシワが生じたり、保護フィルムと樹脂基板との間に気泡が残存すること等に起因して、樹脂基板から、保護フィルムの少なくとも一部を一度剥離させた後に、再度、剥離された保護フィルムを、樹脂基板に貼付する保護フィルムの再貼付(再密着)を樹脂基板に対して施すことがある。
【0005】
しかしながら、上記のような構成をなす保護フィルムでは、樹脂基板から保護フィルムを剥離させた後に、樹脂基板に対して再び貼付する保護フィルムの再密着性を十分に得ることができず、そのため、かかる再密着性に優れた保護フィルムの開発が求められているのが実情であった。
【0006】
なお、このような問題は、上述したサングラス用レンズばかりでなく、ゴーグルが備えるレンズ、ヘルメットが備えるバイザー等の樹脂基板についても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、樹脂基板に対して貼付し、その後、少なくとも一部を剥離させた後に、再び樹脂基板に対して貼付する再密着性に優れた保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(9)に記載の本発明により達成される。
(1) 樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであって、
基材層と、
該基材層と前記樹脂基板との間に位置して、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、
前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、
前記粘着層は、JIS B 0601に準拠して測定される、前記樹脂基板側の表面における表面粗さRaが0.20μm以下であることを特徴とする保護フィルム。
【0010】
(2) 当該保護フィルムは、25℃における弾性率が300MPa以下600MPa以下である上記(1)に記載の保護フィルム。
【0011】
(3) 前記第1の層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が150℃以上のものであり、前記第2の層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が120℃以上のものであり、前記粘着層は、熱可塑性樹脂を主材料として含有する融点が110℃以下のものである上記(1)または(2)に記載の保護フィルム。
【0012】
(4) 前記第1の層が含有する前記熱可塑性樹脂と、前記第2の層が含有する前記熱可塑性樹脂とは、ともにポリオレフィン系樹脂を含有する上記(3)に記載の保護フィルム。
【0013】
(5) 前記粘着層は、粘着性を有するポリオレフィン系樹脂を主材料として含有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の保護フィルム。
【0014】
(6) ポリカーボネート基板上に幅25mm×長さ200mmの当該保護フィルムを貼付し、次いで、25℃の環境下で、当該保護フィルムの一端を持ち、90°の方向にて長さ100の位置まで引き剥がした後に、当該保護フィルムの前記一端を離すことで、当該保護フィルムを前記ポリカーボネート基板上に、再び貼付させたとき、再貼付から1分後において、前記ポリカーボネート基板と当該保護フィルムとが接合していない領域の平面視における総面積が1250mm2未満である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の保護フィルム。
【0015】
(7) 前記樹脂基板の両面に貼付される上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の保護フィルム。
【0016】
(8) 前記樹脂基板は、両面、一方の面または他方の面に、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層およびセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成される被覆層を備える上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の保護フィルム。
【0017】
(9) 前記樹脂基板は、プレス成形または真空成形により、前記熱曲げ加工が施される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の保護フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、保護フィルムが備える粘着層において、JIS B 0601に準拠して測定される、樹脂基板側の表面における表面粗さRaが0.20μm以下に設定される。このように、粘着層の樹脂基板側の表面における表面粗さRaを前記上限値以下に設定することで、保護フィルムを、樹脂基板に対して貼付し、その後、少なくとも一部を剥離させた後に、再び樹脂基板に対して貼付する再密着性に優れたものとし得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】保護フィルムを用いたサングラス用レンズの製造方法を説明するための模式図である。
【
図2】樹脂基板に貼付された保護フィルムの少なくとも一部を剥離させた後に、再び樹脂基板に対して貼付する方法を説明するための模式図である。
【
図3】本発明の保護フィルムの好適実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の保護フィルムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中における主材料とは、各層において、50重量%以上含まれている構成材料のことを指し、例えば、「第1の層16は、その主材料として熱可塑性樹脂を含有している。」とは、第1の層16の総重量を100重量%とした場合、第1の層16に含まれる熱可塑性樹脂が50重量%以上を、第1の層16において占めていることを指す。
【0021】
本発明の保護フィルムは、樹脂基板を、加熱下で熱曲げ加工を施す際に、前記樹脂基板に貼付して用いられる保護フィルムであり、基材層と、該基材層と前記樹脂基板との間に位置して、前記樹脂基板に粘着する粘着層とを有し、前記基材層は、前記粘着層の反対側に位置する第1の層と、前記粘着層側に位置する第2の層とを有する積層体で構成されており、前記粘着層は、JIS B 0601に準拠して測定される、前記樹脂基板側の表面における表面粗さRaが0.20μm以下であることを特徴とする。
【0022】
保護フィルムを、かかる構成をなすものとすること、すなわち、保護フィルムが備える粘着層の樹脂基板側の表面における表面粗さRaを前記上限値以下に設定することで、保護フィルムを、樹脂基板に対して貼付し、その後、少なくとも一部を剥離させた後に、再び樹脂基板に対して貼付する再密着性に優れたものとし得る。
【0023】
以下、本発明の保護フィルムを、説明するのに先立って、本発明の保護フィルムを用いて製造される、サングラス用レンズの製造方法について説明する。
【0024】
<サングラス用レンズの製造方法>
図1は、保護フィルムを用いたサングラス用レンズの製造方法を説明するための模式図、
図2は、樹脂基板に貼付された保護フィルムの少なくとも一部を剥離させた後に、再び樹脂基板に対して貼付する方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、
図1、
図2の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0025】
以下、サングラス用レンズの製造方法の各工程を詳述する。
[1]まず、平板状をなす樹脂基板21を用意し、この樹脂基板21の両面に、保護フィルム10(マスキングテープ)を貼付することで、樹脂基板21の両面に保護フィルム10が貼付された積層体100を得る(
図1(a)参照)。
【0026】
なお、本実施形態では、樹脂基板21として、偏光していない自然光から、所定の一方向に偏光面をもつ直線偏光を取出す光学素子として機能する偏光子23を、その両面を被覆層24で被覆したものが用意される。なお、この樹脂基板21において、被覆層24は、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層、および、トリアセチルセルロースのようなセルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成され、さらに、被覆層24は、偏光子23の両面(双方の面)に形成される場合の他、上面(一方の面)および下面(他方の面)のうちのいずれかに形成されるものであってもよい。
【0027】
[2]次に、
図1(b)に示すように、用意した積層体100を、すなわち、樹脂基板21の両面に保護フィルム10を貼付した状態で樹脂基板21を、その厚さ方向に打ち抜くことで、積層体100を平面視で円形状をなすものとする。
【0028】
[3]次に、
図1(c)に示すように、円形状とされた積層体100に対して、加熱下で熱曲げ加工を施す。
【0029】
この熱曲げ加工は、通常、金型を用いたプレス成形または真空成形(レマ成形)により実施される。
【0030】
この際の積層体100(樹脂基板21)の加熱温度(成形温度)は、前述の通り、本実施形態では、樹脂基板21が被覆層24を備え、被覆層24が、ポリカーボネート樹脂層、ポリアミド樹脂層、および、セルロース樹脂層のうちの少なくとも1層を有する単層体または積層体で構成されているため、被覆層24の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上160℃以下程度、より好ましくは140℃以上150℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、樹脂基板21の変質・劣化を防止しつつ、樹脂基板21を軟化または溶融状態として、樹脂基板21を確実に熱曲げすることができる。
【0031】
[4]次に、
図1(d)に示すように、熱曲げがなされた樹脂基板21すなわち積層体100から、保護フィルム10を剥離させた後、この樹脂基板21の凹面にポリカーボネート樹脂で構成されるポリカーボネート層30を射出成形する。なお、樹脂基板21の凹面には、ポリカーボネート層30に代えて、ポリアミド樹脂で構成されるポリアミド層を形成してもよい。
【0032】
これにより、熱曲げがなされた樹脂基板21を備えるサングラス用レンズ200が製造される。
【0033】
ここで、上記のような、サングラス用レンズの製造方法では、前記工程[2]における樹脂基板21の厚さ方向に対する打ち抜きに先立って、前記工程[1]において、樹脂基板21の両面に保護フィルム10が貼付され、これにより、樹脂基板21の両面に保護フィルム10が貼付された積層体100が得られる。
【0034】
この積層体100における、保護フィルム10の貼付は、通常、人の手や、工作機械が備えるアーム等を用いて実施されるが、この際に、保護フィルム10にシワが生じたり、保護フィルム10と樹脂基板21との間に気泡が残存したりすることがある。
【0035】
この場合、
図2(a)に示すような、樹脂基板21の両面に保護フィルム10が貼付された積層体100における保護フィルム10の一端を把持し、その後、
図2(b)に示すように、この一端から保護フィルム10の途中まで引き剥がすことで、保護フィルム10の一部を一度剥離させる。そして、保護フィルム10の一端の把持を解消して、再度、剥離された保護フィルム10を、樹脂基板21に対して貼付することで、樹脂基板21に対して保護フィルム10が、
図2(c)に示すように、再貼付(再密着)される。しかしながら、このような保護フィルム10の樹脂基板21に対する再貼付を施すと、樹脂基板21対する保護フィルム10の密着性が、一度目の樹脂基板21対する保護フィルム10の貼付時と比較して、十分には得られないと言う問題があった。
【0036】
かかる問題点について、本発明者が検討を行った結果、一度剥離された保護フィルム10の樹脂基板21に対する再密着性は、保護フィルム10が備える粘着層11の基材層15と反対側、すなわち、粘着層11の樹脂基板21側の表面における表面性状と密接に関連することが判ってきた。
【0037】
そして、本発明者は、保護フィルム10の再密着性と、粘着層11の樹脂基板21側の表面における表面性状との関係について、さらなる検討を行った結果、粘着層11の樹脂基板21側の表面における表面粗さRaを0.20μm以下に設定することで、一度剥離された保護フィルム10が、樹脂基板21に対して優れた再密着性を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0038】
したがって、樹脂基板21側の表面における表面粗さRaが0.20μm以下に設定された、本発明の保護フィルムを保護フィルム10として用いて、保護フィルム10の再貼付を実施することで、保護フィルム10ひいては樹脂基板21の無駄が生じるのを的確に抑制または防止することができる。そのため、サングラス用レンズ200を歩留まりよく製造することができる。以下、この保護フィルム10(本発明の保護フィルム)について詳述する。
【0039】
<保護フィルム10>
図3は、本発明の保護フィルムの好適実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、
図3の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0040】
保護フィルム10は、基材層15と、この基材層15と樹脂基板21との間に位置し、樹脂基板21に粘着(接合)する粘着層11とを有し、
図3に示すように、基材層15は、粘着層11の反対側、すなわち、成形型側に位置する第1の層16と、粘着層11側、すなわち、樹脂基板21側に位置する第2の層17とを有している。
【0041】
以下、これら各層について詳述する。
<<粘着層11>>
粘着層11は、基材層15と樹脂基板21との間に位置(介在)し、樹脂基板21に粘着することで、基材層15を樹脂基板21に接合するためのものである。
【0042】
この粘着層11は、樹脂基板21から保護フィルム10を剥離させることなく前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げを実施することができるとともに、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離を実施し得るものが好ましく用いられる。
【0043】
さらに、本発明では、前記工程[2]に先立って、必要に応じて実施される、樹脂基板21に対して再び保護フィルム10を貼付する保護フィルム10の再貼付において、優れた再密着性を発揮し得るものが用いられる。
【0044】
かかる観点から粘着層11は、粘着性を有する熱可塑性樹脂を主材料として含有することが好ましく、また、この熱可塑性樹脂として融点が110℃以下のものを含有することがより好ましい。粘着層11として、かかる構成をなすものを用いることで、粘着層11の樹脂基板21側の表面における表面粗さRaを0.20μm以下に設定することにより得られる効果、すなわち、一度剥離された保護フィルム10が、樹脂基板21に対して優れた再密着性をもって再び貼付し得るという効果を、顕著に発揮させることができる。また、熱可塑性樹脂として融点が110℃以下のものを粘着層11が含有することで、粘着層11の融点を、容易に110℃以下に設定することができる。これにより、粘着層11を、常温のような低温度領域において、優れた柔軟性を備えるものとし得ることから、前記表面粗さRaを0.20μm以下に設定することにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。すなわち、一度剥離された保護フィルム10を、樹脂基板21に対してより優れた再密着性をもって再貼付させることができる。なお、かかる効果をさらに顕著に発揮させると言う観点からは、粘着層11の融点は、110℃以下であることが好ましいが、100℃以下であることがより好ましく、70℃以上95℃以下であることがさらに好ましい。
【0045】
また、粘着層11は、熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン系樹脂が単独で粘着層11に含まれる構成のもの、または、ポリオレフィン系樹脂とエラストマーとの組み合わせで粘着層11に含まれる構成のものであることが好ましい。粘着層11を、熱可塑性樹脂として、このようなものを含む構成のものとすることで、前記効果をより確実に発揮させることができる。
【0046】
また、粘着性を有するポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、ポリエチレンの単独重合体、EPR相(ゴム相)を備えるプロピレン-エチレンブロック共重合体、エチレン-酢酸ビニルブロック共重合体、エチレン-エチルアクリレートブロック共重合体、エチレン-メチルメタクリレートブロック共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも、ポリエチレンの単独重合体(ホモポリマー)であることが好ましい。ポリエチレンの単独重合体は、比較的安価に入手することができ、さらに、融点が110℃以下のものも容易に入手することができる。また、ポリエチレンの単独重合体であれば粘着層11に透明性を付与することができる。そのため、基材層15も同様に透明性を有している場合には、保護フィルム10が透明性を備えるものとなる。したがって、前記工程[1]における保護フィルム10の樹脂基板21への貼付の際、および、前記工程[2]に先立った保護フィルム10の樹脂基板21への再貼付の際に、ホコリ等のゴミが保護フィルム10と樹脂基板21との間に介在しているか否かを視認し得ることから、前記工程[2]以降にゴミが介在している積層体100が移行するのを確実に防止することができるため、結果として、得られるサングラス用レンズ200の歩留まりの向上が図られる。
【0047】
このポリエチレンの単独重合体としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
また、エラストマーとしては、特に限定されないが、例えば、α-ポリオレフィン系樹脂/ポリエチレン共重合体エラストマー、α-ポリオレフィン系樹脂/ポリプロピレン共重合体エラストマー、スチレンブロックエラストマー等が挙げられ、中でも、スチレンブロックエラストマーであることが好ましく、特に、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体エラストマーであることが好ましい。このように、ポリオレフィン系樹脂の他に、さらにエラストマーが含まれることにより、前記工程[4]における樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離の際に、樹脂基板21に粘着層11が残存すること、すなわち、樹脂基板21における糊残りの発生を的確に抑制または防止することができるため、樹脂基板21からの保護フィルム10の剥離をより円滑に行うことができる。そして、エラストマーを、モノマー成分としてスチレンを含むものとすることで、前記工程[4]において、樹脂基板21に糊残りが発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0049】
なお、α-ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ブテン、1-ペンテンおよび1-ヘプテン等が挙げられる。
【0050】
また、エラストマーとして、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体エラストマーを用いる場合、エラストマーにおけるスチレンの含有量は、25重量%以下であることが好ましく、10重量%以上18重量%以下であることがより好ましい。これにより、スチレン含有量が高くなることに起因して、粘着層11の硬度の上昇を招くのを的確に抑制または防止することができる。そのため、粘着層11の樹脂基板21(被覆層24)に対する密着力を確実に維持しつつ、樹脂基板21に糊残りが発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0051】
さらに、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体としては、例えば、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)等が挙げられるが、中でも、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)であることが好ましい。スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体として、SEBSを選択することにより、エラストマーにおけるスチレンの含有量を、容易に25重量%以下に設定することができ、前述した効果を確実に得ることができる。
【0052】
また、粘着層11にエラストマーが含まれる場合、粘着層11における、エラストマーの含有量は、特に限定されないが、好ましくは1重量%以上30重量%以下、より好ましくは5重量%以上15重量%以下に設定される。これにより、粘着層11に、エラストマーを含有させることにより得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0053】
また、前述の通り、熱可塑性樹脂は、融点が110℃以下のものを含有することがより好ましいが、粘着層11に熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂とエラストマーとの双方を含む場合、ポリオレフィン系樹脂の融点が110℃以下であることが好ましく、さらに、この時、ポリオレフィン系樹脂の融点は、70℃以上110℃未満であることがより好ましい。これにより、粘着層11の樹脂基板21側の表面における表面粗さRaを0.20μm以下に設定することにより得られる効果、すなわち、一度剥離された保護フィルム10が、樹脂基板21に対して優れた再密着性をもって再び貼付し得るという効果を、特に、顕著に発揮させることができる。
【0054】
なお、本明細書において、粘着層11を含む保護フィルム10を構成する各層の融点とは、それぞれ、各層に含まれる各構成材料のうち、融点を有する構成材料の融点(DSC測定によるピーク温度)に、各構成材料が含まれる比率を乗じたものの和により求められた値を融点とする。
【0055】
かかる構成をなす粘着層11において、前述の通り、JIS B 0601に準拠して測定される、樹脂基板21側の表面における表面粗さRaは、0.20μm以下に設定されるが、0.16μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.12μm以下であることがより好ましい。これにより、
図2(b)に示すように、剥離された保護フィルム10を、樹脂基板21に対して、再び貼付する再貼付(
図3(c)参照)において、一度剥離された保護フィルム10に、樹脂基板21に対する優れた再密着性を発揮させることができる。
【0056】
また、粘着層11は、その平均厚さが5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上20μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した粘着層11としての機能を確実に発揮させることができる。
【0057】
<<基材層15>>
基材層15は、粘着層11を介して樹脂基板21(被覆層24)に接合し、前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げの際に、樹脂基板21を保護(マスキング)し、前記工程[3]における熱曲げの後に、熱曲げに用いた金型から樹脂基板21(保護フィルム10)を剥離(離脱)させるための保護層(機能層)として機能するものである。
【0058】
また、前記工程[4]において、熱曲げがなされた樹脂基板21から、保護フィルム10を剥離させる際に、基材層15と粘着層11との間で剥離が生じることなく、粘着層11に対して、優れた密着性を発揮するためのものである。
【0059】
基材層15は、これらの機能を基材層15に発揮させるために、本発明では、
図3に示すように、粘着層11の反対側、すなわち、成形型側に位置する第1の層16と、粘着層11側、すなわち、樹脂基板21側に位置する第2の層17とを有する積層体で構成される。
【0060】
以下、これら第1の層16および第2の層17について説明する。
<<第1の層16>>
第1の層16は、粘着層11の反対側に位置して、前記工程[2]および前記工程[3]における樹脂基板21の打ち抜きおよび熱曲げの際に、樹脂基板21を保護(マスキング)するための最外層として機能するものである。
【0061】
この第1の層16は、前記工程[3]における熱曲げの後に、成形型からの優れた離脱性を維持させること、すなわち、成形型(金型)に第1の層16を密着させないことを目的に、第1の層16の融点は、150℃以上であることが好ましく、155℃以上170℃以下程度であることがより好ましい。ここで、前述の通り、前記工程[3]における熱曲げの際の被覆層24(樹脂基板21)の加熱温度は、好ましくは、110℃以上160℃以下程度に設定される。そのため、第1の層16の融点を前記の通り設定することにより、前記工程[3]における熱曲げの際に、第1の層16が溶融または軟化状態となるのを確実に防止することができるため、前記工程[3]における熱曲げの後に、成形型から確実に積層体100を離脱させることができる。
【0062】
このような第1の層16は、その主材料として、融点が好ましくは150℃以上である熱可塑性樹脂、より好ましくは155℃以上170℃以下程度である熱可塑性樹脂を含有している。これにより、第1の層16の融点を比較的容易に150℃以上に設定することができる。そのため、前記工程[3]における熱曲げの後に、成形型からの積層体100の優れた離脱性を維持することができる。
【0063】
また、後述する第2の層17も150℃以上の熱可塑性樹脂を含む構成とした際には、第1の層16と第2の層17とをより優れた密着性を有するものとし得る。そのため、前記工程[4]において、熱曲げがなされた樹脂基板21から、保護フィルム10を剥離させる際に、第1の層16と第2の層17との間おいて剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0064】
さらに、第1の層16は、150℃以上の熱可塑性樹脂として、150℃以上のポリオレフィン系樹脂が単独で第1の層16に含まれる構成のものであるのが好ましい。150℃以上のポリオレフィン系樹脂は、150℃以上の熱可塑性樹脂として、比較的容易かつ安価に入手することができる。
【0065】
また、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、ポリエチレンの単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体等のうち融点が150℃以上のものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも、融点が150℃以上のポリプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)であることが好ましい。これにより、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂を容易かつ安価に入手することができる。また、第1の層16に透明性を付与することができる。そのため、第2の層17および粘着層11も同様に透明性を有している場合には、保護フィルム10が透明性を備えるものとなる。したがって、前記工程[1]における保護フィルム10の樹脂基板21への貼付の際、および、前記工程[2]に先立った保護フィルム10の樹脂基板21への再貼付の際に、ホコリ等のゴミが保護フィルム10と樹脂基板21との間に介在しているか否かを視認し得ることから、前記工程[2]以降にゴミが介在している積層体100が移行するのを確実に防止することができるため、結果として、得られるサングラス用レンズ200の歩留まりの向上が図られる。
【0066】
なお、前記共重合体は、ブロック共重合体およびランダム共重合体のうちの何れであってもよい。
【0067】
また、第1の層16は、その平均厚さが2μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した第1の層16としての機能を確実に発揮させることができる。
【0068】
<<第2の層17>>
第2の層17は、粘着層11側、すなわち、樹脂基板21側に位置することで、粘着層11と第1の層16との間に位置して、これら同士を接合する中間層として機能するものである。
【0069】
この第2の層17は、前記機能を発揮するために、接着性(粘着性)を有する熱可塑性樹脂を主材料として含有しており、これにより、粘着層11と第1の層16とを、第2の層17を介して、優れた密着性をもって接合することができる。そのため、前記工程[4]において、保護フィルム10を樹脂基板21から剥離させる際に、粘着層11と第2の層17との間、および、第1の層16と第2の層17との間で剥離が生じるのが的確に抑制または防止される。したがって、前記工程[2]における、樹脂基板21の打ち抜き時に、打ち抜くことで形成された樹脂基板21の切断面で、粘着層11が樹脂基板21側に伸びるヒゲが生じたとしても、このヒゲが樹脂基板21の切断面に残存するのを的確に抑制または防止した状態で、保護フィルム10(粘着層11)を樹脂基板21から剥離させることができる。
【0070】
接着性を有する熱可塑性樹脂(接着性樹脂)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、接着性を有するポリオレフィン系樹脂およびエラストマーであることが好ましい。また、粘着層11にエラストマーが含まれる場合には、特に、ポリオレフィン系樹脂とエラストマーとの組み合わせであることが好ましい。これにより、粘着層11と第2の層17との間の密着性の向上を図り、粘着層11と第2の層17との間において剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0071】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-エチルアクリル酸共重合体(EEA)、エチレン-メタクリレート-グリシジルアクリレート三元共重合体の他、各種ポリオレフィン系樹脂に、アクリル酸、メタクリル酸等の一塩基性不飽和脂肪酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の二塩基性不飽和脂肪酸またはこれらの無水物をグラフトさせたグラフト化物、各種ポリオレフィン系樹脂に、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基のような官能基が導入された官能基導入物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、前記グラフト化物としては、例えば、マレイン酸グラフト化EVA、マレイン酸グラフト化エチレン-α-ポリオレフィン系樹脂共重合体等が挙げられる。
【0072】
さらに、エラストマーとしては、粘着層11に含まれるエラストマーとして説明したのと同様のものを用いることができ、中でも、スチレンブロックエラストマーであることが好ましく、特に、スチレン-オレフィン-スチレンブロック共重合体エラストマーであることが好ましい。このように、エラストマーを、モノマー成分としてスチレンを含むものとすることで、第2の層17の粘着層11に対する密着性の向上が図られるため、前記工程[4]において、樹脂基板21に糊残りが発生するのをより的確に抑制または防止することができる。
【0073】
また、第2の層17は、その構成材料として、接着性を有する熱可塑性樹脂の他に、非接着性を有する熱可塑性樹脂(非接着性樹脂)を含有していてもよい。非接着性を有する熱可塑性樹脂は、第1の層16に含まれる融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂に対して優れた親和性を示すことから、第1の層16と第2の層17との密着性の向上を図ることができる。そのため、前記工程[4]において、樹脂基板21から保護フィルム10を剥離させる際に、第1の層16と第2の層17と間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0074】
非接着性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂であることがより好ましい。これにより、前記効果をより顕著に発揮させることができる。
【0075】
また、ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)、ポリエチレンの単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、中でも、ポリプロピレンの単独重合体(ホモポリマー)であることが好ましい。これにより、ポリオレフィン系樹脂を容易かつ安価に入手することができる。また、第2の層17に透明性を付与することができる。そのため、第1の層16および粘着層11も同様に透明性を有している場合には、保護フィルム10が透明性を備えるものとなる。したがって、前記工程[1]における保護フィルム10の樹脂基板21への貼付の際、および、前記工程[2]に先立った保護フィルム10の樹脂基板21への再貼付の際に、ホコリ等のゴミが保護フィルム10と樹脂基板21との間に介在しているか否かを視認し得ることから、前記工程[2]以降にゴミが介在している積層体100が移行するのを確実に防止することができるため、結果として、得られるサングラス用レンズ200の歩留まりの向上が図られる。
【0076】
さらに、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂の融点は、155℃以上170℃以下であることが好ましい。
【0077】
なお、前記共重合体は、ブロック共重合体およびランダム共重合体のうちの何れであってもよい。ただし、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂は、一般的に、単独で、接着性を有しないため非接着性を有する熱可塑性樹脂として用いられるが、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(融点:151℃)は、接着性を有するため、接着性を有する熱可塑性樹脂として用いられる。
【0078】
以上のことから、第2の層17が非接着性を有する熱可塑性樹脂を含む場合、接着性を有する熱可塑性樹脂と非接着性を有する熱可塑性樹脂とは、エラストマーと、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂とが好ましい組み合わせである。かかる組み合わせとすることで、粘着層11と第2の層17との間、および、第1の層16と第2の層17との間で剥離が生じるのを的確に抑制または防止することができる。
【0079】
以上のような構成をなす第2の層17は、その融点が120℃以上であることが好ましい。ここで、前述の通り、前記工程[3]における熱曲げの際の被覆層24(樹脂基板21)の加熱温度は、好ましくは、110℃以上160℃以下程度に設定される。そのため、第2の層17の融点を120℃以上150℃未満に設定した際には、前記工程[3]における熱曲げのときに、第2の層17を比較的容易に溶融または軟化状態とすることができる。したがって、前記工程[3]において、この第2の層17に溶融または軟化状態の中間層としての機能を発揮させて、樹脂基板21の面方向に対して、第1の層16を位置ずれさせ得ることから、積層体100の縁部に第1の層16による掴みシロが形成されることとなる。そのため、前記工程[4]における保護フィルム10の剥離を、掴みシロを掴むことで実施し得ることから、この剥離を容易に行うことができる。また、前記工程[3]において、この第2の層17に溶融または軟化状態の中間層としての機能を発揮させて、金型による成形時の第2の層17によるクッション性を向上させることができる。その結果、金型が有している凹凸もしくは金型と保護フィルム10との間に不本意に混入してしまったコンタミの凹凸を効果的に吸収することができるため、熱曲げがなされた樹脂基板21を優れた外観を有するものとして得ることができる。
【0080】
また、第2の層17の融点を150℃以上に設定した際には、前記工程[3]における熱曲げのときに、第2の層17が溶融または軟化状態となるのを抑制または防止することができる。そのため、第1の層16と第2の層17との間の密着力が低下するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、前記工程[4]において、熱曲げがなされた樹脂基板21から、保護フィルム10を剥離させる際に、第1の層16と第2の層17との間での剥離の発生が確実に防止される。
【0081】
また、第2の層17は、その平均厚さが10μm以上60μm以下であることが好ましく、10μm以上40μm以下であることがより好ましい。これにより、前述した第2の層17としての機能を確実に発揮させることができる。
【0082】
以上のような構成をなす、粘着層11と基材層15とを備える保護フィルム10は、25℃における弾性率が300MPa以上600MPa以下であることが好ましく、300MPa以上500MPa以下であることがより好ましく、300MPa以上450MPa以下であることがさらに好ましく、300MPa以上400MPa以下であることが特に好ましい。これにより、粘着層11を、常温のような低温度領域において、優れた柔軟性を備えるものであると言うことができるため、粘着層11の樹脂基板21側の表面における表面粗さRaを0.2μm以下に設定することにより得られる効果、すなわち、一度剥離された保護フィルム10が、樹脂基板21に対して優れた再密着性をもって再び貼付し得るという効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0083】
この保護フィルム10の再密着性は、具体的には、ポリカーボネート基板上に幅25mm×長さ200mmの保護フィルム10を貼付し、次いで、25℃の環境下で、保護フィルム10の一端を持ち、90°の方向にて長さ100mmの位置まで引き剥がした後に、この保護フィルム10の前記一端を離すことで、保護フィルム10を前記ポリカーボネート基板上に、再び貼付させたとき、再貼付から1分後において、前記ポリカーボネート基板と当該保護フィルムとが接合していない領域の平面視における総面積が、1,250mm2未満であるのが好ましく、750mm2未満であるのがより好ましく、125mm2未満であることがさらに好ましいい。前記総面積が前記上限値以下に設定されることにより、この保護フィルム10を、優れた再密着性を有しているものであると言え、一度剥離された保護フィルム10を、樹脂基板21に対して確実に再び貼付し得る。そのため、保護フィルム10ひいては樹脂基板21の無駄が生じるのを的確に抑制または防止することができる。したがって、サングラス用レンズ200を歩留まりよく製造することができる。
【0084】
また、このとき、前記ポリカーボネート基板と当該保護フィルムとが接合していない領域が生じている個数が、20個以下であるのが好ましく、10個以下であるのがより好ましく、3個以下であることがさらに好ましい。前記個数が前記上限値以下に設定されることにより、この保護フィルム10を、より優れた再密着性を有しているものであると言うことができる。
【0085】
なお、上述した保護フィルム10が備える粘着層11、基材層15(第1の層16および第2の層17)の各層には、それぞれ、上述した構成材料の他に、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤等の各種添加剤が含まれていてもよい。前記添加物の含有量は、10重量%以下とすることもでき、8重量%以下とすることもでき、また0.001重量%以上とすることもでき、0.1重量%以上とすることもできる。
【0086】
特に、第1の層16には、アンチブロッキング剤を含有することが好ましい。これにより、成形型からの優れた離脱性を維持させることができるという第1の層16の機能を、より確実に発揮させることができる。
【0087】
また、アンチブロッキング剤としては、例えば、無機粒子および有機粒子等を用いることができ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、ゼオライト、スメクタイト、雲母、バーミキュライトおよびタルク等の粒子が挙げられ、有機粒子としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂およびフッ素系樹脂等の粒子が挙げられる。
【0088】
第1の層16にアンチブロッキング剤が含まれる場合、第1の層16における、アンチブロッキング剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.5重量%以上10重量%以下、より好ましくは1重量%以上9重量%以下に設定される。これにより、第1の層16の前記機能をより顕著に発揮させることができる。
【0089】
また、これら各層の間には、上記添加剤等を含む中間層が形成されていてもよい。
さらに、上述した保護フィルム10は、いかなる方法により製造されたものであってもよいが、例えば、共押し出し法を用いることで製造し得る。
【0090】
具体的には、3つの押し出し機を用意し、これらに、それぞれ、粘着層11、第1の層16および第2の層17の構成材料を収納した後、これらを溶融または軟化状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された、溶融または軟化状態の積層体を、複数の冷却ロール等で構成されるシート成形部に供給し、その後、このシート供給部において積層体を冷却することにより保護フィルム10が製造される。
【0091】
なお、粘着層の第2の層と反対側の表面粗さRaは、例えば、シート成形部が備える冷却ロールとして表面粗さが異なるもの(例えば、金属鏡面ロール)を用いること、さらには、シート成形部をエアチャンバーもしくはエアナイフを備えるものとし、粘着層の表面にエアーを吹き付ける構成とすること等により、所望の大きさに調整される。
【0092】
以上、本発明の保護フィルムについて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、保護フィルムを構成する各層は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0093】
また、前記実施形態では、
図2において、樹脂基板に対する保護フィルムの再貼付を、保護フィルムの一部を樹脂基板から剥離させた後に実施する場合について説明したが、これに限定されず、保護フィルムの再貼付は、保護フィルムの全部を樹脂基板から剥離させた後に実施することもできる。
【0094】
さらに、前記実施形態では、本発明の保護フィルムを、サングラス用レンズが有する樹脂基板を熱曲げ加工する際に、樹脂基板に貼付して用いる場合について説明したが、本発明の保護フィルムは、このようなサングラス用レンズが有する樹脂基板の熱曲げに適用できる他、例えば、ゴーグルが備えるレンズ、ヘルメットが備えるバイザー等の樹脂基板を熱曲げする際にも用いることができる。
【実施例0095】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0096】
1.原材料の準備
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムの作製に使用した原料は以下の通りである。
【0097】
<<非接着性を有する熱可塑性樹脂>>
<融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂>
融点が167℃のホモポリプロピレン(h-PP、日本ポリプロ社製、「ノバテックEA9FTD」、MFR=0.4g/10min)
【0098】
<融点が120℃以上150℃未満のポリオレフィン系樹脂>
融点が121℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、「ユメリット2525F」、MFR=2.5g/10min)
【0099】
<融点が120℃未満のポリオレフィン系樹脂>
融点が114℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、宇部丸善ポリエチレン社製、「ユメリット1520F」、MFR=2.0g/10min)
【0100】
<融点が110℃未満のポリオレフィン系樹脂>
融点が93℃の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE、東ソー社製、「ニボロンーZ HF212R」、MFR=2.0g/10min)
【0101】
<<接着性を有する熱可塑性樹脂>>
<エラストマー>
スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS、旭化成社製、「タフテックH1221」)
スチレン-ブタジエンランダム共重合体水添物(HSBR、JSR社製、「ダイナロン1320P」)
【0102】
<ポリオレフィン系樹脂>
融点が90℃のエチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA、日本ポリエチレン社製、「レクスパールEB330H」)
融点が165℃のブロックポリプロピレン(b-PP、住友化学社製、「ノーブレンKS23F8」、MFR=2.1g/10min)
【0103】
<融点が120℃以上150℃未満のポリオレフィン系樹脂>
融点が131℃のランダムポリプロピレン共重合体(r-PP、住友化学社製、「ノーブレンS131」、MFR=1.3g/10min)
【0104】
<<アンチブロッキング剤>>
アンチブロッキング剤(キノプラス FPP-AB05A、住化カラー社製)
【0105】
2.保護フィルムの製造
(実施例1)
[1]まず、粘着層(最内層)を形成するにあたり、ポリオレフィン系樹脂として融点が121℃のLLDPEと、エラストマーとしてSEBSとを、SEBSの含有量が10重量%となるように混練することで粘着層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0106】
[2]次に、基材層が備える第2の層(中間層)を形成するにあたり、接着性を有する熱可塑性樹脂としてSEBSと、非接着性を有する熱可塑性樹脂として融点が167℃のh-PPとを、SEBSの含有量が20重量%となるように混練することで第2の層形成材料(樹脂組成物)を調製した。
【0107】
[3]次に、調製した粘着層形成材料と、調製した第2の層形成材料と、第1の層(最外層)を形成するための融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂として、融点が167℃のh-PPとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0108】
[4]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、粘着層に対して金属鏡面ロールを押し当てることで、粘着層の表面に鏡面をつけて粘着層を成形し、その後、この積層体を冷却することで、第1の層、第2の層および粘着層の平均厚さが、それぞれ10μm、30μmおよび10μmとなっている実施例1の保護フィルムを得た。
【0109】
なお、粘着層の第2の層と反対側の表面粗さRaを、JIS B 0601に準拠して、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、「VK9700」)を用いて測定したところ、0.05μmであった。
【0110】
さらに、保護フィルムのJIS K 7127に従い、フィルムから採取した試験片(1号ダンベル)を23℃・60%RHの雰囲気下、島津製作所製オートグラフ(引張速度:500mm/分)にて測定したところ、475MPaであった。
【0111】
(実施例2~実施例3)
前記工程[4]における、粘着層の成形を、エアチャンバーもしくはエアナイフを用いてエアーを粘着層の表面に吹き付けることにより実施したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~実施例3の保護フィルムを得た。
【0112】
(比較例1)
前記工程[4]における、粘着層の成形を、粘着層に対して、鏡面の形成が省略された金属ロールを押し当てることにより実施したこと以外は、前記実施例1と同様にして、比較例1の保護フィルムを得た。
【0113】
(比較例2、比較例3)
前記工程[1]において用いた、ポリオレフィン系樹脂の種類を、表1に示すように変更したこと以外は、前記比較例1と同様にして、比較例2、比較例3の保護フィルムを得た。
【0114】
(実施例4)
前記工程[1]において用いた、ポリオレフィン系樹脂の種類、エラストマーの種類を、それぞれ、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例4の保護フィルムを得た。
【0115】
(実施例5~実施例6)
前記工程[4]における、粘着層の成形を、エアチャンバーもしくはエアナイフを用いてエアーを粘着層の表面に吹き付けることにより実施したこと以外は、前記実施例4と同様にして、実施例5~実施例6の保護フィルムを得た。
【0116】
(実施例7)
前記工程[1]において用いた、ポリオレフィン系樹脂の種類を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例7の保護フィルムを得た。
【0117】
(実施例8~実施例9)
前記工程[4]における、粘着層の成形を、エアチャンバーもしくはエアナイフを用いてエアーを粘着層の表面に吹き付けることにより実施したこと以外は、前記実施例7と同様にして、実施例8~実施例9の保護フィルムを得た。
【0118】
(実施例10)
前記工程[1]において用いた、ポリオレフィン系樹脂の種類を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例10の保護フィルムを得た。
【0119】
(実施例11~実施例12)
前記工程[4]における、粘着層の成形を、エアチャンバーもしくはエアナイフを用いてエアーを粘着層の表面に吹き付けることにより実施したこと以外は、前記実施例10と同様にして、実施例11~実施例12の保護フィルムを得た。
【0120】
(実施例13)
[1]まず、粘着層(最内層)を形成するにあたり、粘着層形成材料としてポリオレフィン系樹脂として融点が93℃のLLDPEを準備した。
【0121】
[2]次に、基材層が備える第2の層(中間層)を形成するにあたり、接着性を有する熱可塑性樹脂として、融点が158℃のb-PPを準備した。
【0122】
[3]次に、粘着層形成材料と、第2の層形成材料と、第1の層(最外層)を形成するための融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂として、融点が167℃のh-PPとを、それぞれ、3つの押し出し機に収納した。
【0123】
[4]次に、3つの押し出し機から、これらを溶融状態としたものを押し出すことで、共押し出しTダイから、これらが層状に積層された溶融状態の積層体を得た後、粘着層に対して金属鏡面ロールを押し当てることで、粘着層の表面に鏡面をつけて粘着層を成形し、その後、この積層体を冷却することで、第1の層、第2の層および粘着層の平均厚さが、それぞれ10μm、30μmおよび10μmとなっている実施例13の保護フィルムを得た。なお、粘着層の第2の層と反対側の表面粗さRaを測定したところ、0.06μmであった。
【0124】
(実施例14)
前記工程[4]における、粘着層の成形を、エアナイフを用いてエアーを粘着層の表面に吹き付けること以外は、前記実施例13と同様にして、実施例14の保護フィルムを得た。なお、粘着層の第2の層と反対側の表面粗さRaを測定したところ、0.16μmであった。
【0125】
(実施例15)
前記工程[3]における、第1の層(最外層)形成材料として、融点が150℃以上のポリオレフィン系樹脂に加え、アンチブロッキング剤(キノプラス FPP-AB05A)を表1の通りに調製したこと以外は、前記実施例13と同様にして、実施例15の保護フィルムを得た。
【0126】
3.評価
各実施例および各比較例の保護フィルムを、以下の方法で評価した。
<1>貼付基板に対する保護フィルムの再密着性
まず、各実施例および各比較例の幅25mm×長さ 200 mmの大きさとした保護フィルムを、それぞれ、ポリカーボネートで構成される、縦30cm×横30cm×厚さ2.0mmの基板(住友ベークライト社製、「ECK100UU」)同士で、鏡面を保護フィルム側として、挾持した状態とし、荷重1kg/cm2の条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを粘着層側に位置するポリカーボネート基板に貼付した。
【0127】
なお、ポリカーボネート基板を構成するポリカーボネートは、ビスフェノールAとホスゲンとの界面重縮合反応により得られた芳香族系ポリカーボネート系樹脂であり、押出成型にてシーティングされた後に型転写にて鏡面が付与される。
【0128】
次いで、保護フィルムを、ポリカーボネート基板同士の間に挾持した状態で、25℃・30分の条件で保持した後に、25℃の環境下で、保護フィルムの一端を持ち、90°の方向にて長さ100mmの位置までポリカーボネート基板から引き剥がした後に、保護フィルムの前記一端を離すことで、保護フィルムを前記ポリカーボネート基板上に、再び貼付させた。
【0129】
そして、この再貼付から1分後において、ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の平面視における総面積(mm2)を測定し、また、ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の個数を数え、得られた前記総面積および前記個数について、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0130】
(総面積の評価)
ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の総面積が
◎◎:125mm2未満である
◎ :125mm2以上750mm2未満である
〇 :750mm2以上1,250mm2未満である
× :1,250mm2以上である
【0131】
(個数の評価)
ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の個数が
◎◎:3個以下である
◎ :3個超10個以下である
〇 :10個超20個以下である
× :20個超である
【0132】
<2>樹脂基板に対するヒゲ付着の有無の評価
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製)の両面に、荷重0.5kg/cm2の条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを貼付することで積層体を得た。
【0133】
次いで、温度23℃、時間12hrの条件で保管した後に、この積層体、すなわち、両面に保護フィルムが貼付された樹脂基板を、その厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすものとした。
【0134】
次いで、積層体から、2枚の保護フィルムを剥離させた後、樹脂基板21の打ち抜き面(切断面)における、ヒゲ(粘着層)の残存の有無について目視にて観察し、ヒゲの残存が認められない場合を◎、ヒゲの残存が若干であるが認められる場合を〇、ヒゲの残存が明らかに認められる場合を×として評価した。
【0135】
<3>樹脂基板の表面に対するオレンジピールの形成の有無の評価
まず、各実施例および各比較例の保護フィルムについて、それぞれ、偏光子を2枚のポリカーボネート基板(ポリカーボネート層)で挾持した構成をなす樹脂基板(住友ベークライト社製)の両面に、荷重0.5kg/cm2の条件でロールを用いて圧着することで、保護フィルムを貼付することで積層体を得た。
【0136】
次いで、温度23℃、時間12hrの条件で保管した後に、この積層体、すなわち、両面に保護フィルムが貼付された樹脂基板を、その厚さ方向に打ち抜くことで、積層体を平面視で円形状をなすものとした。
【0137】
次いで、円形状とされた積層体に対して、金型を備えるレマ成形機(レマ社製、「CR-32型」)を用いて、加熱下で熱曲げ加工を施した。
【0138】
次いで、積層体から、2枚の保護フィルムを剥離させた後、樹脂基板21の貼付面(剥離面)における、オレンジピール(凹凸)の形成の有無について目視にて観察し、オレンジピールの形成が認められない場合を〇、オレンジピールの形成が認められる場合を×として評価した。
【0139】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の保護フィルムにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0140】
【0141】
表1に示したように、各実施例における保護フィルムでは、粘着層の表面における表面粗さRaが0.20μm以下に設定されていることにより、前記ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の平面視における総面積が1250mm2未満であり、かつ、前記ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の個数が20個以下であることを満足しており、保護フィルムに、樹脂基板に対する再密着性を発揮させ得ることが判った。
【0142】
これに対して、各比較例における保護フィルムでは、粘着層の表面における表面粗さRaが0.20μm以下に設定されておらず、これに起因して、前記ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の平面視における総面積が1250mm2未満であり、かつ、前記ポリカーボネート基板と保護フィルムとが接合していない領域の個数が20個以下であることを満足することができなかった。すなわち、保護フィルムに、樹脂基板に対する再密着性を発揮させることができなかった。