(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158912
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】フェーシングディスク、クラッチディスク、及びクラッチディスク組立体
(51)【国際特許分類】
F16D 13/62 20060101AFI20221006BHJP
F16D 13/64 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F16D13/62 A
F16D13/64 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009940
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021062686
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】中山 和俊
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056AA58
3J056BA01
3J056BC01
3J056BE06
3J056BE12
3J056CA04
3J056CA18
(57)【要約】
【課題】フェーシングディスクの強度低下を抑制する。
【解決手段】フェーシングディスク3aは、クッショニングプレートに取り付けられるように構成されている。このフェーシングディスク3aは、環状の本体部4と、突出部5と、凹部6とを有している。突出部5は、クッショニングプレートに向かって厚さ方向に突出している。突出部5は、本体部4の内周縁に沿って延びる環状の内周突出部51を有する。凹部6は、突出部5に囲まれている。凹部6は、径方向外側に向かって開口する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッショニングプレートに取り付けられるフェーシングディスクであって、
環状の本体部と、
前記クッショニングプレートに向かって厚さ方向に突出する突出部と、
前記突出部に囲まれ、径方向外側に向かって開口する凹部と、
を備え、
前記突出部は、前記本体部の内周縁に沿って延びる環状の内周突出部を有する、
フェーシングディスク。
【請求項2】
前記本体部は、複数の貫通孔を有しており、
前記突出部は、前記貫通孔を囲むように配置される包囲突出部を有する、
請求項1に記載のフェーシングディスク。
【請求項3】
前記突出部は、内周突出部と包囲突出部とを連結する連結突出部を有する、
請求項2に記載のフェーシングディスク。
【請求項4】
前記連結突出部は、径方向内側に向かって幅が徐々に大きくなる、
請求項3に記載のフェーシングディスク。
【請求項5】
前記複数の貫通孔は、リベット用の第1貫通孔と、治具用の第2貫通とを有しており、
前記包囲突出部は、前記第1貫通孔を囲むように配置された環状の第1包囲突出部と、前記第2貫通孔を囲むように配置された第2包囲突出部と、を有し、
前記第2包囲突出部は、前記本体部の外周縁まで延びている、
請求項2から4のいずれかに記載のフェーシングディスク。
【請求項6】
前記第2包囲突出部は、径方向外側に向かって幅が徐々に大きくなる、
請求項5に記載のフェーシングディスク。
【請求項7】
前記複数の貫通孔は、リベットのカシメ加工用の第3貫通孔をさらに有しており、
前記包囲突出部は、前記第3貫通孔を囲むように配置された環状の第3包囲突出部をさらに有する、
請求項5又は6に記載のフェーシングディスク。
【請求項8】
前記突出部は、前記凹部の底面上に形成される孤立突出部を有する、
請求項1から7のいずれかに記載のフェーシングディスク。
【請求項9】
前記孤立突出部は、周方向において隣り合う一対の包囲突出部の間に配置される、
請求項2に従属する請求項8に記載のフェーシングディスク。
【請求項10】
前記突出部は、径方向外側を向く前記凹部の開口部を狭めるように周方向に延びる一対の狭窄突出部を有する、
請求項1から9のいずれかに記載のフェーシングディスク。
【請求項11】
複数の固定部、及び前記各固定部を連結する連結傾斜部、を有するクッショニングプレートと、
前記クッショニングプレートに取り付けられる、請求項1から10のいずれかに記載のフェーシングディスクと、
を備え、
前記突出部は、前記固定部と前記連結傾斜部との境界部と軸方向視において重複するように配置される、
クラッチディスク。
【請求項12】
トルク変動を減衰するように構成されるダンパ部と、
前記ダンパ部の外周端部に取り付けられるクッショニングプレートと、
前記クッショニングプレートに取り付けられる請求項1から10のいずれかに記載のフェーシングディスクと、
を備えるクラッチディスク組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーシングディスク、クラッチディスク、及びクラッチディスク組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クラッチディスク組立体は、摩擦係合するためのフェーシングディスクを有している。フェーシングディスクは、クッショニングプレートに取り付けられている。特許文献1には、ギアを変速する際のショックを低減したり燃費を向上したりするために、フェーシングディスクに凹部を形成して軽量化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように凹部を形成するなどによってフェーシングディスクを薄くすると、フェーシングディスクの強度が低下するという問題が生じ得る。そこで、本発明の課題は、強度低下を抑制することができるフェーシングディスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に係るフェーシングディスクは、クッショニングプレートに取り付けられるように構成されている。このフェーシングディスクは、環状の本体部と、突出部と、凹部とを有している。突出部は、クッショニングプレートに向かって厚さ方向に突出している。突出部は、本体部の内周縁に沿って延びる環状の内周突出部を有する。凹部は、突出部に囲まれている。凹部は、径方向外側に向かって開口する。
【0006】
この構成によれば、フェーシングディスクは、凹部を有しており軽量化されているため、変速時のショックを低減したり、燃費を向上したりすることができる。そして、フェーシングディスクは、内周縁に沿って延びる内周突出部を有しているため、フェーシングディスクの強度低下を抑制することができる。このため、例えば遠心力に起因するフェーシングディスクの変形を抑制することができる。また、凹部が径方向外側に向かって開口しているため、摩擦熱に対する空冷効果を向上させることができる。
【0007】
好ましくは、本体部は、複数の貫通孔を有している。突出部は、貫通孔を囲むように配置される包囲突出部を有する。
【0008】
好ましくは、突出部は、連結突出部を有する。連結突出部は、内周突出部と包囲突出部とを連結する。この構成によれば、連結突出部によって、トルク伝達時に必要なフェーシングディスクの強度を確保するための剛性を向上させることができる。
【0009】
好ましくは、連結突出部は、径方向内側に向かって幅が徐々に大きくなる。
【0010】
好ましくは、複数の貫通孔は、リベット用の第1貫通孔と、治具用の複数の第2貫通孔とを有している。包囲突出部は、環状の第1包囲突出部と、第2包囲突出部とを有する。第1包囲突出部は、第1貫通孔を囲むように配置されている。第2包囲突出部は、第2貫通孔を囲むように配置されている。第2包囲突出部は、本体部の外周縁まで延びている。
【0011】
好ましくは、第2包囲突出部は、径方向外側に向かって幅が徐々に大きくなる。
【0012】
好ましくは、複数の貫通孔は、リベットのカシメ加工用の第3貫通孔をさらに有している。包囲突出部は、第3貫通孔を囲むように配置された環状の第3包囲突出部をさらに有する。
【0013】
好ましくは、突出部は、前記凹部の底面上に形成される孤立突出部を有する。
【0014】
好ましくは、孤立突出部は、周方向において隣り合う一対の包囲突出部の間に配置される。
【0015】
好ましくは、突出部は、径方向外側を向く前記凹部の開口部を狭めるように周方向に延びる一対の狭窄突出部を有する。
【0016】
本発明の第2側面に係るクラッチディスクは、クッショニングプレートと、上記いずれかに記載のフェーシングディスクとを備えている。クッショニングプレートは、複数の固定部、及び各固定部を連結する連結傾斜部を有する。フェーシングディスクは、クッショニングプレートに取り付けられる。突出部は、固定部と連結傾斜部との境界部と軸方向視において重複するように配置される。
【0017】
本発明の第3側面に係るクラッチディスク組立体は、ダンパ部と、クッショニングプレートと、上記いずれかのフェーシングディスクとを備える。ダンパ部は、トルク変動を減衰するように構成される・クッショニングプレートは、ダンパ部の外周端部に取り付けられる。フェーシングディスクは、クッショニングプレートに取り付けられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、強度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係るクラッチディスク組立体の断面図。
【
図2】第1実施形態に係る第2フェーシングディスクを取り外した状態のクラッチディスクの正面図。
【
図3】第1実施形態に係るクラッチディスクの断面概略図。
【
図4】第1実施形態に係る第1フェーシングディスクの正面図。
【
図5】第1実施形態に係る第1フェーシングディスクの背面図。
【
図6】第2実施形態に係る第1フェーシングディスクの正面図。
【
図7】第2実施形態に係るクッショニングプレートに取り付けられた第1フェーシングディスクの正面図。
【
図8】変形例に係る第1フェーシングディスクの背面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、第1及び第2実施形態に係るフェーシングディスク及びクラッチディスク組立体について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において、軸方向とは、クラッチディスク組立体の回転軸Oが延びる方向である。また、周方向とは、回転軸Oを中心とした円の周方向であり、径方向とは、回転軸Oを中心とした円の径方向である。
【0021】
第1実施形態
[クラッチディスク組立体]
図1に示すように、クラッチディスク組立体100は、ダンパ部11と、クラッチディスク10とを備えている。クラッチディスク10は、ダンパ部11の外周部に設けられている。
【0022】
[ダンパ部]
ダンパ部11は、トルク変動を減衰するように構成されている。ダンパ部11は、主に、クラッチプレート11aと、リティニングプレート11bと、ハブフランジ11cと、複数のトーションスプリング11dとを有している。
【0023】
クラッチプレート11aとリティニングプレート11bとは、軸方向に間隔を開けて配置されている。クラッチプレート11aとリティニングプレート11bとは、ストップピン11eによって連結されている。このため、クラッチプレート11aとリティニングプレート11bとは互いに相対回転不能である。
【0024】
クラッチプレート11a及びリティニングプレート11bは、ハブフランジ11cに対して、ストップピン11eによって規制された角度範囲内で相対回転可能である。
【0025】
トーションスプリング11dは、クラッチプレート11aとリティニングプレート11bとの間に配置されている。トーションスプリング11dは、クラッチプレート11a及びリティニングプレート11bと、ハブフランジ11cと、を回転方向に弾性的に連結する。
【0026】
[クラッチディスク]
クラッチディスク10は、ダンパ部11の外周端部に取り付けられている。クラッチディスク10は、環状のクッショニングプレート2と、第1及び第2フェーシングディスク3a、3bと、を有している。クッショニングプレート2は、ダンパ部11の外周端部に取り付けられる。詳細には、クッショニングプレート2は、クラッチプレート11aの外周端部に取り付けられている。
【0027】
図2は、第2フェーシングディスク3bを取り外した状態のクラッチディスク10の正面図である。
図2に示すように、クッショニングプレート2は、環状の取付部21と、複数のクッショニング部22とを有している。取付部21は、クラッチプレート11aに取り付けられるように構成されている。
【0028】
クッショニング部22は、径方向において取付部21の外側に配置されている。各クッショニング部22は、周方向に間隔をあけて配置されている。
【0029】
クッショニング部22は、第1固定部221、第2固定部222、連結傾斜部223、第1端部傾斜部224、及び第2端部傾斜部225を有している。
【0030】
図3に示すように、第1固定部221及び第2固定部222は、第1フェーシングディスク3a及び第2フェーシングディスク3bと実質的に平行に延びている。また、連結傾斜部223、第1端部傾斜部224、及び第2端部傾斜部225は、第1フェーシングディスク3a及び第2フェーシングディスク3bに対して傾斜して延びている。なお、
図3は、クラッチディスク10をリベット101a、101bが並ぶ円周方向に沿った線で切断した断面図である。
【0031】
連結傾斜部223は、第1固定部221と第2固定部222とを連結している。第1端部傾斜部224は、第1固定部221から周方向に延びている。第2端部傾斜部225は、第2固定部222から周方向に延びている。
【0032】
第1固定部221、第2固定部222、連結傾斜部223、第1端部傾斜部224、及び第2端部傾斜部225は、1枚のプレートをプレス加工により形成したものであり、一つの部材によって形成されている。また、第1固定部221と第1端部傾斜部224との境界部、第1固定部221と連結傾斜部223との境界部、第2固定部222と連結傾斜部223との境界部、及び第2固定部222と第2端部傾斜部225との境界部は、それぞれ曲面で形成されている。
【0033】
クッショニング部22は、リベット用の第4及び第5貫通孔226,227を有している。第4貫通孔226は、第1固定部221に形成され、第5貫通孔227は第2固定部222に形成されている。
【0034】
第4貫通孔226を貫通するリベット101aによって、第1フェーシングディスク3aがクッショニングプレート2に固定される。すなわち、第1固定部221に第1フェーシングディスク3aが固定される。
【0035】
また、第5貫通孔227を貫通するリベット101bによって、第2フェーシングディスク3bがクッショニングプレート2に固定される。すなわち、第2固定部222に第2フェーシングディスク3bが固定される。
【0036】
連結傾斜部223は、第1固定部221と第2固定部222との円周方向間に形成されている。連結傾斜部223は、軸方向の位置が異なる第1固定部221と第2固定部222とを連結しているので、軸方向に傾斜している。
【0037】
[フェーシングディスク]
第1フェーシングディスク3a及び第2フェーシングディスク3bは、クッショニングプレート2に取り付けられている。第1フェーシングディスク3aと第2フェーシングディスク3bとは、実質的に同じ形状であるため、以下では第1フェーシングディスク3aの詳細を説明し、第2フェーシングディスク3bの説明を省略する。
【0038】
図4に示すように、第1フェーシングディスク3aは、環状の本体部4と、突出部5と、複数の凹部6とを有している。なお、
図4は、第1フェーシングディスク3aをクッショニングプレート2側から見た正面図である。
【0039】
図4及び
図5に示すように、本体部4は、円環状である。
図3に示すように、本体部4は、取付面41と、摩擦面42とを有している。取付面41は、クッショニングプレート2側を向く面である。本実施形態では、取付面41は、クッショニングプレート2と対向している。なお、
図4は本体部4の取付面41を示しており、
図5は摩擦面42を示している。
【0040】
図4及び
図5に示すように、本体部4は、複数の貫通孔43を有している。各貫通孔43は、周方向に配列している。複数の貫通孔43は、複数の第1貫通孔43aと、複数の第2貫通孔43bと、複数の第3貫通孔43cとを有している。第1貫通孔43aは、リベット用の貫通孔である。第2貫通孔43bは、治具用の貫通孔である。すなわち、クラッチディスク10を組み立てる際に使用する治具のピンが、第2貫通孔43b内を貫通する。
【0041】
第1貫通孔43aは、第1フェーシングディスク3aとクッショニングプレート2とを締結するリベット101aが通るための貫通孔である。
図3に示すように、第1貫通孔43aは、段付き貫通孔である。すなわち、第1貫通孔43aは、異なる径を有する2つの貫通孔から構成されている。
【0042】
第3貫通孔43cは、第2フェーシングディスク3bとクッショニングプレート2とを締結するリベット101bのカシメ加工をするための貫通孔である。すなわち、この第3貫通孔43cは、リベット101bをカシメ加工する際の工具を入れるための貫通孔である。
【0043】
図4に示すように、突出部5は、取付面41に形成されている。突出部5は、第1フェーシングディスク3aの厚さ方向に突出している。また、突出部5は、クッショニングプレート2に向かって突出している。突出部5は、環状の内周突出部51、複数の包囲突出部52、及び複数の連結突出部53を有している。なお、内周突出部51、複数の包囲突出部52、及び複数の連結突出部53は、全て繋がっている。突出部5は、凹部6に対して相対的に突出している部分である。すなわち、突出部5は、凹部6を形成することによって形成される。
【0044】
内周突出部51は、本体部4の内周縁に沿って延びている。内周突出部51は、環状である。内周突出部51の幅w1は、特に限定されるものではないが、例えば、第1フェーシングディスク3aの幅w0の10~50%程度である。なお、内周突出部51の幅w1、及び第1フェーシングディスク3aの幅w0とは、径方向における寸法を意味する。
【0045】
包囲突出部52は、本体部4に形成された貫通孔43を囲むように配置されている。詳細には、複数の包囲突出部52は、第1貫通孔43aを囲む第1包囲突出部52aと、第2貫通孔43bを囲む第2包囲突出部52bと、第3貫通孔43cを囲む第3包囲突出部52cとを有する。
【0046】
第1包囲突出部52a及び第3包囲突出部52cは、環状である。第1包囲突出部52aは、第3包囲突出部52cよりも幅が大きい。
【0047】
第2包囲突出部52bは、本体部4の外周縁まで延びている。また、この第2包囲突出部52bの幅w2は、径方向外側に向かって徐々に大きくなっている。すなわち、周方向における第2包囲突出部52bの寸法は、径方向外側に向かって徐々に大きくなっている。この第2包囲突出部52b上に、第1固定部221と第1端部傾斜部224との境界部が接触している。
【0048】
連結突出部53は、内周突出部51と包囲突出部52とを連結している。連結突出部53は、径方向に延びている。連結突出部53は、第1連結突出部53aと、第2連結突出部53bと、第3連結突出部53cとを有している。
【0049】
第1連結突出部53aは、内周突出部51と第1包囲突出部52aとを連結している。第1連結突出部53aの幅w3は、径方向内側に向かって徐々に大きくなっている。すなわち、第1連結突出部53aは、周方向における寸法が径方向内側に向かって徐々に大きくなっている。この第1連結突出部53a上に第1固定部221と連結傾斜部223との境界部が当接している。
【0050】
第2連結突出部53bは、内周突出部51と第2包囲突出部52bとを連結している。第2連結突出部53bの幅は、実質的に一定である。
【0051】
第3連結突出部53cは、内周突出部51と第3包囲突出部52cとを連結している。第3連結突出部53cの幅は、実質的に一定である。
【0052】
複数の凹部6は、取付面41上に形成されている。各凹部6は、周方向に配列している。一対の隣り合う凹部6の間には、第2包囲突出部52及び第2連結突出部53bが配置している。
【0053】
凹部6は、第1フェーシングディスク3aの厚さ方向に凹んでいる。凹部6は、突出部5に囲まれて構成されている。凹部6は、径方向外側に向かって開口している。すなわち、凹部6は、周方向の両側、及び径方向内側において突出部5に囲まれており、径方向外側において突出部5に囲まれていない。
【0054】
凹部6は、径方向内側において、連結突出部53によって周方向に区切られている。一方、凹部6は、径方向外側において、連結突出部53によって区切られていない。
【0055】
図5に示すように、第1フェーシングディスク3aは、摩擦面42上において、複数の溝7を有している。溝7は、径方向に延びている。溝7は、径方向内側及び外側に開口している。
【0056】
第2実施形態
次に、第2実施形態に係るフェーシングディスク、クラッチディスク、及びクラッチディスク組立体について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、第1実施形態に係るフェーシングディスク、クラッチディスク、及びクラッチディスク組立体と異なる部分について主に説明し、第1実施形態に係るフェーシングディスク、クラッチディスク、及びクラッチディスク組立体と基本的に同じ構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、第1フェーシングディスク3aは、環状の本体部4と、突出部5と、複数の凹部6とを有している。なお、
図6は、第1フェーシングディスク3aをクッショニングプレート2側から見た正面図である。第2フェーシングディスク3bは、第1フェーシングディスク3aと同様の構成であるため、第2フェーシングディスク3bの説明を省略する。
【0058】
本体部4は、複数の貫通孔43を有している。複数の貫通孔43は、複数の第1貫通孔43aと、複数の第2貫通孔43bと、複数の第3貫通孔43cとを有している。なお、第1実施形態と同様に、第1貫通孔43aはリベット用の貫通孔であり、第2貫通孔43bは治具用の貫通孔であり、第3貫通孔43cはカシメ加工する際の工具を入れるための貫通孔である。
【0059】
突出部5は、環状の内周突出部51、複数の包囲突出部52、及び複数の連結突出部53を有している。なお、第1実施形態では、全ての包囲突出部52が内周突出部51と繋がっていたが、第2実施形態では、一部の包囲突出部52が内周突出部51と繋がっていない。
【0060】
複数の包囲突出部52は、第1貫通孔43aを囲む第1包囲突出部52aと、第2貫通孔43bを囲む第2包囲突出部52bと、第3貫通孔43cを囲む第3包囲突出部52cとを有する。
【0061】
第1実施形態では、第2包囲突出部52bのみが本体部4の外周縁まで延びていたが、第2実施形態では、第1及び第3包囲突出部52a、52cも、本体部4の外周縁まで延びている。
【0062】
連結突出部53は、第1連結突出部53aと、第3連結突出部53cとを有している。なお、第2実施形態では、連結突出部53は、第2連結突出部53bを有していない。すなわち、第1及び第3包囲突出部52a、52cは、第1又は第3連結突出部53a、53cを介して、内周突出部51と連結している。一方で、第2包囲突出部52bは、内周突出部51と連結していない。
【0063】
第1及び第3連結突出部53a、53cには、補助凹部61が形成されている。この補助凹部61は、周囲が囲まれており、軸方向のみに開口しており、径方向及び周方向には開口していない。
【0064】
第2実施形態の突出部5は、孤立突出部54と、一対の狭窄突出部55a、55bをさらに有している。なお、第1実施形態の突出部5は、孤立突出部54と、一対の狭窄突出部55a、55bとを有していない。
【0065】
孤立突出部54は、凹部6の底面上に形成されている。孤立突出部54は、凹部6内に配置されており、他の突出部から孤立している。すなわち、孤立突出部54は、他の突出部と連結されておらず、間隔をあけて配置されている。なお、凹部6の底面とは、凹部6を画定する面の内、軸方向を向く面を意味する。
【0066】
孤立突出部54は、周方向において隣り合う一対の包囲突出部52の間に配置されている。詳細には、孤立突出部54は、第1包囲突出部52aと第3包囲突出部52cとの間に配置されている。周方向において、第1包囲突出部52a、孤立突出部54、第3包囲突出部52cの順で配列している。
【0067】
一対の狭窄突出部55a、55bは、外周端部に配置されている。一対の狭窄突出部55a、55bのうち、一方の狭窄突出部55aは、第1包囲突出部52aから第3包囲突出部52cに向かって延びている。また、他方の狭窄突出部55bは、第3包囲突出部52cから第1包囲突出部52aに向かって延びている。すなわち、一対の狭窄突出部55a、55bは、凹部6の開口部を狭めるように周方向に延びている。詳細には、一対の狭窄突出部55a、55bは、互いに近づくように周方向に延びている。なお、一対の狭窄突出部55a、55bは、互いに接触していない。
【0068】
図7は、クッショニングプレート2に取り付けられた状態の第1フェーシングディスク3aの拡大正面図である。なお、
図7において、クッショニングプレート2は二点鎖線で示している。
【0069】
図7に示すように、クッショニングプレート2のクッショニング部22は、複数の境界部228を有している。境界部228は、固定部221,222と、連結傾斜部223,224,225との境界である。境界部228は、径方向に延びている。この境界部228を折り曲げることで、固定部221,222と、連結傾斜部223,224,225とを形成している。なお、第1実施形態においても、クッショニング部22は、複数の境界部228を有している。
【0070】
突出部5は、クッショニングプレート2の境界部228と軸方向視において重複するように配置されている。また、孤立突出部54は、隣り合う境界部228の間に配置されている。第2実施形態において、境界部228は、凹部6とは重複していない。境界部228は、全て突出部5と接触している。このため、第1及び第2フェーシングディスク3a、3bに掛かる面圧をより均一にすることができる。
【0071】
[変形例]
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記の変形例は同時に適用可能である。
【0072】
変形例1
上記実施形態では、第1フェーシングディスク3a及び第2フェーシングディスク3bはそれぞれ1層構成となっているが、2層構成などであってもよい。
【0073】
変形例2
上記各実施形態では、第1連結突出部53aのみが、径方向内側に向かって徐々に幅が大きくなっていたが、これに限定されない。例えば、第2連結突出部53bの幅が、径方向内側に向かって徐々に幅が大きくなっていてもよい。また、第3連結突出部53cの幅が、径方向内側に向かって徐々に幅が大きくなっていてもよい。
【0074】
変形例3
上記各実施形態では、第1フェーシングディスク3aは溝7を有していたが、第1フェーシングディスク3aの構成はこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、第1フェーシングディスク3aは、摩擦面42上において、溝を有していなくてもよい。この構成によれば、取付面41上の凹部6をより深く形成することができる。
【符号の説明】
【0075】
2 :クッショニングプレート
3a :第1フェーシングディスク
3b :第2フェーシングディスク
4 :本体部
43a :第1貫通孔
43b :第2貫通孔
43c :第3貫通孔
5 :突出部
51 :内周突出部
52 :包囲突出部
52a :第1包囲突出部
52b :第2包囲突出部
52c :第3包囲突出部
53 :連結突出部
54 :孤立突出部
55 :狭窄突出部
6 :凹部
10 :クラッチディスク
11 :ダンパ部
100 :クラッチディスク組立体