(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158915
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】柱状ハニカム構造フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20221006BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20221006BHJP
【FI】
B01D39/20 D
B01D46/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010347
(22)【出願日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2021061931
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】植田 修司
(72)【発明者】
【氏名】仙藤 皓一
(72)【発明者】
【氏名】石井 豊
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕一
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠也
(72)【発明者】
【氏名】板津 研
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BD01
4D019CA01
4D058JA38
4D058JA39
4D058JB06
4D058SA08
(57)【要約】
【課題】排ガスの流速が大きい場合にPM捕集性能の向上に寄与することのできる柱状ハニカム構造フィルタを提供する。
【解決手段】入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造フィルタであって、それぞれの第1セルの表面には、気孔率が前記隔壁より高い多孔質膜が形成されており、柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みよりも、中心部の多孔質膜の平均厚みが大きい柱状ハニカム構造フィルタ。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造フィルタであって、
それぞれの第1セルの表面には、気孔率が前記隔壁より高い多孔質膜が形成されており、
柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向を座標軸の延びる方向とし、入口側底面の座標値を0、出口側底面の座標値をXとすると、以下の関係が成立する柱状ハニカム構造フィルタ。
(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)>1.0
式中、
座標値0.2Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB1とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA1とし、
座標値0.5Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB2とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA2とし、
座標値0.8Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB3とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA3とする。
【請求項2】
以下の関係が成立する請求項1に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)≧1.2
【請求項3】
柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面の中心部に位置する第1セルについて、以下の(1)及び(2)の関係が成立する請求項1又は2に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
(1)座標値0.2Xにおける多孔質膜の平均厚みA1に対する、座標値0.5Xにおける多孔質膜の平均厚みA2の比(A2/A1)が、1.05~5.0である。
(2)座標値0.2Xにおける多孔質膜の平均厚みA1に対する、座標値0.8Xにおける多孔質膜の平均厚みA3の比(A3/A1)が、1.05~5.0である。
【請求項4】
以下の関係が成立する請求項1~3の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
A1>B1、A2>B2、且つ、A3>B3
【請求項5】
多孔質膜の主成分が炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトである請求項1~4の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
【請求項6】
多孔質膜の気孔率が70~85%である請求項1~5の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
【請求項7】
多孔質膜全体の平均厚みが4~50μmである請求項1~6の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状ハニカム構造フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン及びガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中にはスス等の粒子状物質(以下、PM:Particulate Matterと記す。)が含まれる。ススは人体に対し有害であり排出が規制されている。現在、排ガス規制に対応するために、通気性のある小細孔隔壁に排ガスを通過させ、スス等のPMを濾過するDPF及びGPFに代表されるフィルタが幅広く用いられている。
【0003】
PMを捕集するためのフィルタとしては、入口側底面から出口側底面まで高さ方向に延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第一セルと、第一セルに隔壁を挟んで隣接配置されており、入口側底面から出口側底面まで高さ方向に延び、入口側底面に目封止部を有し出口側底面が開口する複数の第二セルとを備えたウォールフロー式の柱状ハニカム構造フィルタが知られている。
【0004】
近年、排ガス規制強化に伴い、より厳しいPMの排出基準(PN規制:Particle Matterの個数規制)が導入されており、フィルタにはPMの高捕集性能(PN高捕集効率)が要求されている。そこで、セルの表面にPMを捕集するための層を別途形成することが提案されている(特許文献1~7)。これらの特許文献によれば、捕集層を形成することにより、圧力損失を低減させつつPMの捕集を行うことができるとされている。多孔質膜の形成方法としては、隔壁を構成する粒子の平均粒子径より小さい粒子を固気二相流によってフィルタの入口側底面に供給して第1セルの表面に付着させた後、熱処理を行う方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/110010号
【特許文献2】国際公開第2011/125768号
【特許文献3】国際公開第2011/125769号
【特許文献4】特許第5863951号公報
【特許文献5】特開2011-147931号公報
【特許文献6】特許第5863950号公報
【特許文献7】特許第5597148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
柱状ハニカム構造フィルタのPM捕集性能を向上させる上で、セルの表面に捕集層を形成することは有効であると考えられるが、捕集層は未だ改善の余地が残されている。例えば自動車の加速時など、排ガスの流速が大きい場合のPM捕集性能を改善できれば有利であろう。そこで、本発明は一実施形態において、排ガスの流速が大きい場合にPM捕集性能の向上に寄与することのできる柱状ハニカム構造フィルタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、排ガスの流速が大きくなるにつれて、柱状ハニカム構造フィルタの隔壁を透過する際の排ガスの流速が、外周部よりも中心部の方が大きくなりやすいことを見出した。そして、捕集層(本発明における「多孔質膜」に相当する。)の厚みを外周部から中心部に向かって大きくすることが、排ガスの流速が大きい場合にPM捕集性能を高める上で有利であることを見出した。本発明は当該知見に基づいて完成したものであり、以下に例示される。
【0008】
[1]
入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造フィルタであって、
それぞれの第1セルの表面には、気孔率が前記隔壁より高い多孔質膜が形成されており、
柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向を座標軸の延びる方向とし、入口側底面の座標値を0、出口側底面の座標値をXとすると、以下の関係が成立する柱状ハニカム構造フィルタ。
(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)>1.0
式中、
座標値0.2Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB1とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA1とし、
座標値0.5Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB2とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA2とし、
座標値0.8Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB3とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA3とする。
[2]
以下の関係が成立する[1]に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)≧1.2
[3]
柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面の中心部に位置する第1セルについて、以下の(1)及び(2)の関係が成立する[1]又は[2]に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
(1)座標値0.2Xにおける多孔質膜の平均厚みA1に対する、座標値0.5Xにおける多孔質膜の平均厚みA2の比(A2/A1)が、1.05~5.0である。
(2)座標値0.2Xにおける多孔質膜の平均厚みA1に対する、座標値0.8Xにおける多孔質膜の平均厚みA3の比(A3/A1)が、1.05~5.0である。
[4]
以下の関係が成立する[1]~[3]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
A1>B1、A2>B2、且つ、A3>B3
[5]
多孔質膜の主成分が炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトである[1]~[4]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
[6]
多孔質膜の気孔率が70~85%である[1]~[5]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
[7]
多孔質膜全体の平均厚みが4~50μmである[1]~[6]の何れか一項に記載の柱状ハニカム構造フィルタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタは、排ガスの流速が大きい場合にPM捕集性能の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】柱状ハニカム構造フィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】柱状ハニカム構造フィルタの一例をセルの延びる方向に平行な断面で観察したときの模式的な断面図である。
【
図3】柱状ハニカム構造フィルタをセルの延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図である。
【
図4】入口側底面からのセルの延びる方向の距離と、柱状ハニカム構造フィルタに流入した排ガスが隔壁を透過する際の流速との関係を流体解析により求めた結果を示すグラフである。
【
図5】第1セルの構造例を示す模式的な断面図である。
【
図6】柱状ハニカム構造フィルタの外周部及び中心部の範囲を説明するための模式図である。
【
図7】多孔質膜の平均厚みを求めるために切り出した柱状ハニカム構造フィルタ断面の模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る粒子付着装置の構成を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る粒子付着装置に適用可能なエアロゾルジェネレータの別の構成例を説明するための模式図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る粒子付着装置に適用可能なエアロゾルジェネレータの更に別の構成例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0012】
<1.柱状ハニカム構造フィルタ>
本発明の一実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタについて説明する。柱状ハニカム構造フィルタは、燃焼装置、典型的には車両に搭載されるエンジンからの排ガスラインに装着されるススを捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)及びGPF(Gasoline Particulate Filter)として使用可能である。本発明に係る柱状ハニカム構造フィルタは、例えば、排気管内に設置することができる。
【0013】
図1及び
図2には、柱状ハニカム構造フィルタ(100)の模式的な斜視図及び断面図がそれぞれ例示されている。この柱状ハニカム構造フィルタ(100)は、外周側壁(102)と、外周側壁(102)の内周側に配置され、入口側底面(104)から出口側底面(106)まで平行に延び、入口側底面(104)が開口して出口側底面(106)に目封止部(109)を有する複数の第1セル(108)と、外周側壁(102)の内周側に配置され、入口側底面(104)から出口側底面(106)まで平行に延び、入口側底面(104)に目封止部(109)を有し、出口側底面(106)が開口する複数の第2セル(110)とを備える。この柱状ハニカム構造フィルタ(100)においては、第1セル(108)及び第2セル(110)が多孔質隔壁(112)を挟んで交互に隣接配置されていることにより、入口側底面(104)及び出口側底面(106)はそれぞれハニカム状を呈している。
【0014】
柱状ハニカム構造フィルタ(100)の上流側の入口側底面(104)にスス等の粒子状物質(PM)を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル(108)に導入されて第1セル(108)内を下流に向かって進む。第1セル(108)は下流側の出口側底面(106)に目封止部(109)を有するため、排ガスは第1セル(108)と第2セル(110)を区画する多孔質隔壁(112)を透過して第2セル(110)に流入する。粒子状物質は隔壁(112)を通過できないため、第1セル(108)内に捕集され、堆積する。粒子状物質が除去された後、第2セル(110)に流入した清浄な排ガスは第2セル(110)内を下流に向かって進み、下流側の出口側底面(106)から流出する。
【0015】
図3には、柱状ハニカム構造フィルタ(100)をセル(108、110)の延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図が示されている。柱状ハニカム構造フィルタ(100)のそれぞれの第1セル(108)の表面(第1セル(108)を区画形成する隔壁(112)の表面に同じ。)には、多孔質膜(114)が形成されている。
【0016】
柱状ハニカム構造フィルタに流入する排ガスの流速が大きくなるにつれて、柱状ハニカム構造フィルタを通過する排ガスは、外周側壁付近よりも中心軸付近の流速が大きくなりやすい。そのため、多孔質膜の厚みについても、外周側壁付近よりも中心軸付近を厚くすることが、PM捕集効率を高める上で有利である。従って、柱状ハニカム構造フィルタの一実施形態においては、柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向を座標軸の延びる方向とし、入口側底面の座標値を0、出口側底面の座標値をXとすると、以下の関係が成立する。
(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)>1.0
式中、
座標値0.2Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB1とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA1とし、
座標値0.5Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB2とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA2とし、
座標値0.8Xにおける柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面において、外周部の多孔質膜の平均厚みをB3とし、中心部の多孔質膜の平均厚みをA3とする。
【0017】
好ましい実施形態においては、(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)≧1.2が成立する。より好ましい実施形態においては、(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)≧1.7が成立する。より好ましい実施形態においては、(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)≧1.8が成立する。より好ましい実施形態においては、(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)≧2.0が成立する。(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)の上限は特に設定されないが、過剰に大きくなるとガス流路の急峻な閉塞による圧力損失が考えられるため、10≧(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)であることが好ましく、8≧(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)であることがより好ましい。典型的には、4≧(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)とすることができ、より典型的には、3≧(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)とすることができ、更により典型的には、2.5≧(A1+A2+A3)/(B1+B2+B3)とすることができる。
【0018】
(A1+A2+A3)/3は、例えば5~30μmとすることができ、10~20μmとすることが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態においては、A1>B1、A2>B2、且つ、A3>B3が成立する。より好ましい実施形態においては、A1/B1≧1.1、A2/B2≧1.1、且つ、A3/B3≧1.1が成立する。更により好ましい実施形態においては、A1/B1≧1.4、A2/B2≧1.4、且つ、A3/B3≧1.4が成立する。A1/B1、A2/B2、及び、A3/B3に上限は特に設定されないが、過剰に大きくなるとガス流路の急峻な閉塞による圧力損失が考えられるため、4.0≧A1/B1、4.0≧A2/B2、且つ、4.0≧A3/B3であることが好ましく、3.0≧A1/B1、3.0≧A2/B2、且つ、3.0≧A3/B3であることがより好ましい。
【0020】
排ガスの流速が大きくなるにつれて、柱状ハニカム構造フィルタの隔壁を透過する際の排ガスの流速は、出口側底面に向かって大きくなりやすい。例えば、柱状ハニカム構造フィルタに流入する排ガスの流速(排ガス流量/入口側底面の面積)が2.5m/s以上、典型的には12.4m/s以上の場合、柱状ハニカム構造フィルタの隔壁を透過する際の排ガスの流速が、出口側底面において顕著に大きくなる。
図4に、入口側底面からのセルの延びる方向の距離と、柱状ハニカム構造フィルタに流入した排ガスが一つのセルの隔壁を透過する際の流速との関係を以下の条件で流体解析した結果を示す。
図4から分かるように、出口側底面に近づくにつれて隔壁を透過する排ガスの流速が顕著に上昇していることが分かる。
<流体解析条件>
ソフトウェア:ANSYS社製FluentVer19.1
ソルバータイプ:圧力ベースソルバー
乱流モデル:低レイノルズ数型 SST k-ω
外周面:対称面条件(摩擦は生じない)
固体壁面:No-slip壁条件(摩擦が生じる)
Outlet:gauge圧0[Pa]に規定(大気開放状態)
柱状ハニカム構造フィルタに流入する流体流速:12.4m/sec、2.5m/sec
柱状ハニカム構造フィルタに流入する流体密度:1.19kg/m
3
柱状ハニカム構造フィルタに流入する流体粘度:1.85×10
-5kg/m/s
柱状ハニカム構造フィルタの寸法:120mm
柱状ハニカム構造フィルタのセル密度:200cpsi
柱状ハニカム構造フィルタの隔壁厚み:216μm
多孔質膜:なし
【0021】
排ガスの流速が大きい箇所には単位時間当たりに通過する排ガス量が増える。このため、多孔質膜の厚みを大きくして多孔質膜との接触機会を多くするほうが、PMの捕集性能を高めることができる。そこで、排ガスの流速が大きくなる出口側底面に近づくにつれて、多孔質膜の厚みを大きくすることで、必要以上に圧力損失を上昇させることなく、PM捕集性能を高めることができる。このため、柱状ハニカム構造フィルタ(100)の好ましい一実施形態においては、それぞれの第1セル(108)の表面(第1セルを区画形成する隔壁の表面に同じ。)に形成されている多孔質膜(114)は、入口側底面(104)から出口側底面(106)に向かって厚みが大きくなる。
図5には、そのような柱状ハニカム構造フィルタ(100)の第1セル(108)の構造例を示す模式的な断面図が示されている。
【0022】
より具体的には、柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向を座標軸の延びる方向とし、入口側底面の座標値を0、出口側底面の座標値をXとすると、柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向に直交する断面の中心部に位置する第1セルについて、以下の(1)及び(2)の関係が成立する。
(1)座標値0.2Xにおける多孔質膜の平均厚みA1に対する、座標値0.5Xにおける多孔質膜の平均厚みA2の比(A2/A1)が、1.05~5.0である。
(2)座標値0.2Xにおける多孔質膜の平均厚みA1に対する、座標値0.8Xにおける多孔質膜の平均厚みA3の比(A3/A1)が、1.05~5.0である。
【0023】
A2/A1の下限は好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.4以上である。A2/A1の上限は好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下である。
【0024】
A3/A1の下限は好ましくは1.6以上であり、より好ましくは1.8以上である。A3/A1の上限は好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.0以下である。
【0025】
第1セルの延びる方向のそれぞれの座標値(0.2X、0.5X、0.8X)における多孔質膜の平均厚みを測定する際の柱状ハニカム構造フィルタの中心部及び外周部は以下のように決定される。
図6を参照すると、柱状ハニカム構造フィルタ(100)を第1セルの延びる方向に直交する断面から観察したときに、当該断面の重心Oから外周側壁(102)の外表面に向かって線分Lを引き、当該線分Lの延びる方向を座標軸の延びる方向とし、重心Oの座標値を0、外周側壁の外表面の座標値をRとする。この場合、当該線分Lにおいて、座標値0~0.2Rの範囲が中心部であり、座標値0.7R~0.9Rの範囲が外周部である。このような線分Lを当該断面において多数引き、各線分Lにおける中心部と外周部を集合すると、当該断面における中心部(120)及び外周部(130)の範囲が得られる。
【0026】
A1、A2、A3、B1、B2、B3はそれぞれ以下の方法により測定される。柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜の平均厚みを求めたい箇所(中心部又は外周部)から第1セルの延びる方向に平行であり、且つ、外周側壁の外表面から重心Oに向かう線分に平行な断面を切り出す。3D形状測定機(例:キーエンス社製VR-3200)により、倍率25倍、観察視野12.5mm(横)×9.5mm(縦)の条件で当該断面を観察する。この際、観察視野の横方向が第1セルの延びる方向と平行になるように観察する。そして、第1セルの延びる方向における特定の座標値における平均厚みを求めるときは、その座標値が観察視野の横方向の中央に位置するように観察する。例えば、0.2Xにおける平均厚みを求めるときは、0.2Xが観察視野の横方向の中央に位置するように観察する。
【0027】
図7には、切り出した断面の模式図が示されている。断面観察により、多孔質膜が形成されている第1セル(108)と多孔質膜が形成されていない第2セル(110)を特定する。次いで、当該断面上で最も中央に近い位置で隣接し合う三つの第1セル(108)を特定する。また、当該断面上で最も中央に近い位置で隣接し合う三つの第1セル(108)に挟まれた、二つの第2セル(110)の中央領域(110a)(基準面)をそれぞれ特定し、両領域のプロファイルから基準面が最も水平になる様、画像処理ソフト(例:キーエンス社製3D形状測定機VR-3200に付属のソフトウェア)で水平出しを行う。水平出しの後、二つの第2セル(110)の中央領域(110a)について、範囲指定を行いその領域の平均高さH2を測定する。また、水平出しの後、三つの第1セル(108)の中央領域(108a)について、範囲指定を行いその領域の平均高さH1を測定する。一視野における平均高さH1と平均高さH2の差を、当該視野における多孔質膜の厚みとする。なお、中央領域(108a、110a)は、それぞれのセルを区画する一対の隔壁(112)の間の距離を三等分したときの中央部分の領域を指す。
【0028】
各座標値における中心部及び外周部の多孔質膜の厚みの測定はそれぞれ5視野について行い、5視野における平均値を測定値(A1、A2、A3、B1、B2、B3)とする。
【0029】
本明細書においては、A1、A2、A3、B1、B2及びB3の平均値を柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜全体の平均厚みとする。多孔質膜全体の平均厚みは、例えば4~50μmとすることができる。多孔質膜全体の平均厚みが4μm以上、好ましくは10μm以上であることで、捕集効率向上という利点が得られる。また、多孔質膜全体の平均厚みが50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、更により好ましくは20μm以下であることで、圧力損失の上昇を抑制できるという利点が得られる。
【0030】
一実施形態において、多孔質膜(114)の気孔率は隔壁(112)の気孔率より高い。多孔質膜(114)の気孔率が隔壁(112)の気孔率より高いことで、圧力損失の上昇を抑制できるという利点が得られる。この場合、多孔質膜(114)の気孔率と隔壁(112)の気孔率(%)の差は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
【0031】
多孔質膜の気孔率の下限は、圧力損失の上昇抑制という観点からは、70%以上であることが好ましい。また、多孔質膜の気孔率の上限は、捕集効率の低下抑制という観点から、85%以下であることが好ましい。
【0032】
多孔質膜の気孔率は、以下のようにして測定される。A1、A2、A3、B1、B2、B3の各箇所の多孔質膜の平均膜厚を求めた各断面について、多孔質膜が形成されている第1セル(108)の中央領域(108a)の任意の2視野を電界放射型走査電子顕微鏡 Field Emission Scanning Electron Microscope(略称:FE-SEM)(例:ZEISS社製 型式:ULTRA55)を使用して、インレンズの反射電子像を撮像する。次いで、画像解析ソフト(例:HALCON)によって、画像をモード法により2値化して膜材部と空隙部に分け、膜材部と空隙部の比率を算出し、A1、A2、A3、B1、B2、B3の各箇所における多孔質膜の気孔率とする。そして、これらの全体の平均値を柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜の気孔率とする。
【0033】
隔壁の気孔率の下限は、排ガスの圧力損失を低く抑えるという観点からは、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更により好ましい。また、隔壁の気孔率の上限は、柱状ハニカム構造フィルタの強度を確保するという観点から、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更により好ましい。隔壁の気孔率は、JIS-R1655:2003に準拠して水銀圧入式ポロシメーターで測定したときの値を指す。
【0034】
多孔質膜はセラミックスで構成することができる。多孔質膜は例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、タルク、マイカ、ムライト、セルベン、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1種又は2種以上のセラミックスを含有することができる。多孔質膜の主成分は炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトとすることが好ましい。中でも、表面酸化膜(Si2O)の存在により互いに強固に結合して剥離し難い多孔質膜が得られることから、多孔質膜の主成分は炭化珪素であることが好ましい。多孔質膜の主成分とは、多孔質膜の50質量%以上を占める成分を指す。多孔質膜はSiCが50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが更により好ましい。多孔質膜を構成するセラミックスの形状には特に制限はないが、例えば粒状が挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタの隔壁及び外周側壁を構成する材料としては、限定的ではないが、多孔質セラミックスを挙げることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(SiC)、珪素-炭化珪素複合材(例:Si結合SiC)、コージェライト-炭化珪素複合体、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、窒化珪素等が挙げられる。そして、これらのセラミックスは、1種を単独で含有するものでもよいし、2種以上を同時に含有するものであってもよい。
【0036】
柱状ハニカム構造フィルタは、スス等のPMの燃焼を補助するPM燃焼触媒、酸化触媒(DOC)、窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒及びNSR触媒、並びに、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に除去可能な三元触媒を担持する場合がある。しかしながら、本実施形態に係る柱状ハニカム構造フィルタは触媒を担持しないことが好ましい。多孔質膜の薄い部分(例:外周部、入口付近)に触媒コートをすると、柱状ハニカム構造フィルタの外周側壁から触媒が染み出す可能性があるからである。
【0037】
柱状ハニカム構造フィルタの底面形状に制限はないが、例えば円形、楕円形、レーストラック形及び長円形等のラウンド形状の他、三角形及び四角形等の多角形とすることができる。
図1の柱状ハニカム構造フィルタ(100)は、底面形状が円形状であり、全体として円柱状である。
【0038】
柱状ハニカム構造フィルタの高さ(入口側底面から出口側底面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。柱状ハニカム構造フィルタの高さと各底面の最大径(柱状ハニカム構造フィルタの各底面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、柱状ハニカム構造フィルタの高さが各底面の最大径よりも長くてもよいし、柱状ハニカム構造フィルタの高さが各底面の最大径よりも短くてもよい。
【0039】
セルの延びる方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、柱状ハニカム構造フィルタに流体を流したときの圧力損失を小さくすることができる。
【0040】
柱状ハニカム構造フィルタにおける隔壁の平均厚みの上限は、圧力損失を抑制するという観点から、0.305mm以下であることが好ましく、0.254mm以下であることがより好ましく、0.241mm以下であることが更により好ましい。但し、柱状ハニカム構造フィルタの強度を確保するという観点からは、隔壁の平均厚みの下限は、0.152mm以上であることが好ましく、0.178mm以上であることがより好ましく、0.203mm以上であることが更により好ましい。本明細書において、隔壁の厚みは、セルの延びる方向に直交する断面において、隣接するセルの重心同士を線分で結んだときに当該線分が隔壁を横切る長さを指す。隔壁の平均厚みは、すべての隔壁の厚みの平均値を指す。
【0041】
セル密度(セルの延びる方向に垂直な単位断面積当たりのセルの数)は、特に制限はないが、例えば6~2000セル/平方インチ(0.9~311セル/cm2)、更に好ましくは50~1000セル/平方インチ(7.8~155セル/cm2)、特に好ましくは100~400セル/平方インチ(15.5~62.0セル/cm2)とすることができる。
【0042】
柱状ハニカム構造フィルタは、一体成形品として提供することも可能である。また、柱状ハニカム構造フィルタは、それぞれが外周側壁を有する複数の柱状ハニカム構造フィルタのセグメントを、側面同士で接合して一体化し、セグメント接合体として提供することも可能である。柱状ハニカム構造フィルタをセグメント接合体として提供することにより、耐熱衝撃性を高めることができる。
【0043】
<2.柱状ハニカム構造フィルタの製造方法>
柱状ハニカム構造フィルタの製造方法について以下に例示的に説明する。まず、セラミックス原料、分散媒、造孔材及びバインダーを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することにより所望の柱状ハニカム成形体に成形する。原料組成物中には分散剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。
【0044】
柱状ハニカム成形体を乾燥した後、柱状ハニカム成形体の両底面の所定位置に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥し、目封止部を有する柱状ハニカム成形体を得る。この後、柱状ハニカム成形体に対して脱脂及び焼成を実施することで柱状ハニカム構造体を得る。その後、柱状ハニカム構造体の第1セルの表面に多孔質膜を形成することで柱状ハニカム構造フィルタが得られる。
【0045】
セラミックス原料としては、焼成後に上述したセラミックスを形成することのできる原料を使用することができる。セラミックス原料は例えば粉末の形態で提供することができる。セラミックス原料としては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア等のセラミックスを得るための原料が挙げられる。具体的には、限定的ではないが、シリカ、タルク、アルミナ、カオリン、蛇紋石、パイロフェライト、ブルーサイト、ベーマイト、ムライト、マグネサイト、水酸化アルミニウム等が挙げられる。セラミックス原料は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0046】
DPF及びGPF等のフィルタ用途の場合、セラミックスとしてコージェライトを好適に使用することができる。この場合、セラミックス原料としてはコージェライト化原料を使用することができる。コージェライト化原料とは、焼成によりコージェライトとなる原料である。コージェライト化原料は、アルミナ(Al2O3)(アルミナに変換される水酸化アルミニウムの分を含む):30~45質量%、マグネシア(MgO):11~17質量%及びシリカ(SiO2):42~57質量%の化学組成からなることが望ましい。
【0047】
分散媒としては、水、又は水とアルコール等の有機溶媒との混合溶媒等を挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0048】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば、特に限定されず、例えば、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、多孔質シリカ、炭素(例:グラファイト)、セラミックスバルーン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、フェノール等を挙げることができる。造孔材は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。造孔材の含有量は、焼成体の気孔率を高めるという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であるのがより好ましく、3質量部以上であるのが更により好ましい。造孔材の含有量は、焼成体の強度を確保するという観点からは、セラミックス原料100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であるのがより好ましく、4質量部以下であるのが更により好ましい。
【0049】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等の有機バインダーを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを併用することが好適である。また、バインダーの含有量は、ハニカム成形体の強度を高めるという観点から、セラミックス原料100質量部に対して4質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であるのがより好ましく、6質量部以上であるのが更により好ましい。バインダーの含有量は、焼成工程での異常発熱によるキレ発生を抑制する観点から、セラミックス原料100質量部に対して9質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であるのがより好ましく、7質量部以下であるのが更により好ましい。バインダーは、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。
【0050】
分散剤には、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。分散剤は、1種類を単独で使用するものであっても、2種類以上を組み合わせて使用するものであってもよい。分散剤の含有量は、セラミックス原料100質量部に対して0~2質量部であることが好ましい。
【0051】
柱状ハニカム成形体の底面を目封止する方法は、特に限定されるものではなく、周知の手法を採用することができる。目封止部の材料については、特に制限はないが、強度や耐熱性の観点からセラミックスであることが好ましい。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、及びチタニアからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するセラミックス材料であることが好ましい。焼成時の膨張率を同じにでき、耐久性の向上につながるため、目封止部はハニカム成形体の本体部分と同じ材料組成とすることが更により好ましい。
【0052】
ハニカム成形体を乾燥した後、脱脂及び焼成を実施することで柱状ハニカム構造体を製造することができる。乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程の条件はハニカム成形体の材料組成に応じて公知の条件を採用すればよく、特段に説明を要しないが以下に具体的な条件の例を挙げる。
【0053】
乾燥工程においては、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥方法を用いることができる。なかでも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0054】
目封止部を形成する場合は、乾燥したハニカム成形体の両底面に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥することが好ましい。目封止部は、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとが、複数の第1セルと複数の第2セルが多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されるように、所定位置に形成する。
【0055】
次に脱脂工程について説明する。バインダーの燃焼温度は200℃程度、造孔材の燃焼温度は300~1000℃程度である。従って、脱脂工程はハニカム成形体を200~1000℃程度の範囲に加熱して実施すればよい。加熱時間は特に限定されないが、通常は10~100時間程度である。脱脂工程を経た後のハニカム成形体は仮焼体と称される。
【0056】
焼成工程は、ハニカム成形体の材料組成にもよるが、例えば仮焼体を1350~1600℃に加熱して、3~10時間保持することで行うことができる。このようにして、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面が開口して出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面が開口する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されている柱状ハニカム構造体が作製される。
【0057】
次いで、焼成工程を経た柱状ハニカム構造体の第1セルの表面に多孔質膜を形成する。まず、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射しながら、出口側底面に吸引力を与えて、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施する。この際、エアロゾルの噴射ノズルと入口側底面の距離を短くしたり、エアロゾルの噴射速度を高めたり、出口側底面に与える吸引力を大きくしたりすることで、柱状ハニカム構造体の中心部に付着するセラミックス粒子の割合を増加させることが可能である。例示的には、エアロゾルの噴射ノズルと入口側底面の距離は500mm~2000mmとすることができ、エアロゾルの噴射速度は2~80m/sとすることができる。
【0058】
エアロゾル中のセラミックス粒子は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)が0.5~5.0μmであることが好ましく、1.0~3.0μmであることがより好ましい。極めて微細なセラミックス粒子を噴射することで、得られる多孔質膜の気孔率を高めることが可能になる。
【0059】
また、エアロゾル中のセラミックス粒子は凝集が少ないことが望ましい。エアロゾル中のセラミックス粒子の凝集を抑制することで、多孔質膜の平均細孔径の微細化を促進することができる。
【0060】
セラミックス粒子としては、多孔質膜を構成する先述したセラミックスの粒子が使用される。例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、タルク、マイカ、ムライト、セルベン、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1種又は2種以上を含有するセラミックス粒子を使用することができる。セラミックス粒子の主成分は炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトとすることが好ましい。セラミックス粒子の主成分とは、セラミックス粒子の50質量%以上を占める成分を指す。セラミックス粒子はSiCが50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが更により好ましい。
【0061】
第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施する際、柱状ハニカム構造フィルタの入口側底面から出口側底面に向かって多孔質膜の厚みを大きくするには、出口側底面の吸引力を大きくし、柱状ハニカム構造体内を流れるエアロゾルの流速を大きくすることが好ましい。具体的には、柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速(=エアロゾル流量/入口側底面の面積)の下限を2m/s以上とすることが好ましく、4m/s以上とすることがより好ましい。また、多孔質膜の高気孔率を維持するために、柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速の上限を80m/s以下とすることが好ましく、60m/s以下とすることが好ましい。
【0062】
図8には、柱状ハニカム構造体(580)の第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施するのに好適な粒子付着装置(500)の装置構成が模式的に示されている。粒子付着装置(500)は、エアロゾルジェネレータ(510)、レーザー回折式粒度分布測定装置(520)、ガス導入管(530)、ホルダー(540)、差圧計(550)、排気管(560)及びブロア(570)を備える。
【0063】
エアロゾルジェネレータ(510)は、
セラミックス粒子(512)を収容するシリンダー(513)と、
シリンダー(513)内に収容されているセラミックス粒子(512)をシリンダー出口(513e)から送り出すためのピストン又はスクリュー(514)と、
シリンダー出口(513e)に連通する解砕室(515)であって、シリンダー出口(513e)から送り出されたセラミックス粒子(512)を解砕するための回転体(516)を備えた解砕室(515)と、
媒体ガスを流すためのガス流路(517)であって、途中で解砕室出口(515e)と連通しており、媒体ガスとセラミックス粒子(512)を含有するエアロゾルを先端に取り付けられたノズル(511)から噴射可能なガス流路(517)と、
を備える。
【0064】
エアロゾルジェネレータ(510)はノズル(511)からエアロゾルの噴射を行うことができる。シリンダー(513)内には、所定の粒度分布に調整されたセラミックス粒子(512)が収納されている。シリンダー(513)内に収納されたセラミックス粒子(512)は、ピストン又はスクリュー(514)によってシリンダー出口(513e)から押し出される。ピストン又はスクリュー(514)は、セラミックス粒子(512)の押出速度を調整可能に構成することができる。シリンダー出口(513e)から排出されたセラミックス粒子(512)は、解砕室(515)に入る。解砕室(515)に導入されたセラミックス粒子(512)は、回転体(516)によって解砕されながら解砕室(515)内を移動し、解砕室出口(515e)から排出される。回転体(516)としては、例えば、回転ブラシを採用することができる。回転体(516)はモータで駆動することができ、その回転速度を制御可能に構成することができる。
【0065】
解砕室出口(515e)から排出されたセラミックス粒子(512)は、ガス流路(517)を流れる媒体ガスと混合されてエアロゾルとなり、ノズル(511)から噴射される。ノズル(511)は、ホルダー(540)に保持された柱状ハニカム構造体(580)の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向にエアロゾルが噴射される位置及び向きに設置することが好ましい。
【0066】
媒体ガスは圧力調整した圧縮空気等の圧縮ガスを使用することでノズル(511)からのエアロゾルの噴射流量を制御可能である。媒体ガスとしては、セラミックス粒子の凝集を抑制するためにドライエアー(例えば、露点が10℃以下)を使用することが好ましい。なお、本明細書において、「露点」はJIS Z8806:2001に準拠した高分子式の静電容量式露点計により測定される値を指す。
微細なセラミックス粒子は凝集しやすいという性質がある。しかしながら、本実施形態に係るエアロゾルジェネレータ(510)を使用することで、解砕されたセラミックス粒子が噴射されるので、凝集が抑制された狙い通りの粒度分布をもつセラミックス粒子を、第1セルの表面に付着させることが可能となる。
【0067】
エアロゾルジェネレータ(510)から噴射されたエアロゾルは、ブロア(570)からの吸引力によりガス導入管(530)を通過した後、ホルダー(540)に保持された柱状ハニカム構造体(580)の入口側底面から柱状ハニカム構造体(580)の第1セル内に吸い込まれる。第1セル内に吸い込まれたエアロゾル中のセラミックス粒子は第1セルの表面に付着する。
【0068】
ガス導入管(530)の壁面には複数の通気孔(531)が設けられており、空気等の周囲ガスを吸い込むことが可能である。これにより、ブロア(570)からの吸引力に応じてガス導入管(530)に流入するガス流量を調整することができる。通気孔(531)には凝集した粉やハニカムの破片及び塵を巻き込む可能性があるため、フィルタを設置してもよい。
【0069】
本実施形態においては、ガス導入管(530)内にはレーザー回折式粒度分布測定装置(520)が設置されており、エアロゾルジェネレータ(510)から噴射されるエアロゾル中のセラミックス粒子の粒度分布をリアルタイムで計測可能である。これにより、所望の粒度分布をもつセラミックス粒子が柱状ハニカム構造体(580)に供給されているか否かを監視することができる。
【0070】
柱状ハニカム構造体(580)の出口側底面の下流側にはブロア(570)に接続された排気管(560)が設けられている。このため、セラミックス粒子が除去されたエアロゾルは、柱状ハニカム構造体(580)の出口側底面から排出されると、排気管(560)を通過した後、ブロア(570)を通って排気される。
【0071】
第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を継続すると、セラミックス粒子の付着量の増加に伴い、柱状ハニカム構造体の入口側底面及び出口側底面の間の圧力損失が上昇する。そこで、セラミックス粒子の付着量と圧力損失の関係を予め求めておくことで、圧力損失に基づいて第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程の終点を決定することができる。そこで、粒子付着装置(500)は、柱状ハニカム構造体(580)の入口側底面及び出口側底面の間の圧力損失を測定するために差圧計(550)を設置することができ、当該差圧計の値に基づいて当該工程の終点を決定してもよい。
【0072】
第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施すると、柱状ハニカム構造体(580)の入口側底面にはセラミックス粒子が付着しているので、スクレーバ等の治具で入口側底面を均しながらセラミックス粒子をバキューム等で吸引除去することが好ましい。
【0073】
その後、第1セルの表面にセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体を最高温度1000℃以上で1時間以上キープする条件、典型的には、最高温度1100℃~1400℃で1時間~6時間キープする条件で加熱処理することで柱状ハニカム構造フィルタが完成する。加熱処理は、例えば電気炉又はガス炉内に柱状ハニカム構造体を載置することで実施することができる。加熱処理により、セラミックス粒子同士が結合すると共に、セラミックス粒子が第1セル内の隔壁に焼き付き、第1セルの表面に多孔質膜が形成される。加熱処理を空気等の酸素含有条件下で実施すると、表面酸化膜がセラミックス粒子表面に生成されセラミックス粒子同士の結合が促進される。これにより、剥離し難い多孔質膜が得られる。
【0074】
柱状ハニカム構造体の第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施可能な粒子付着装置に採用可能なエアロゾルジェネレータの構成は、上述した実施形態に限られるものではなく、他の実施形態を採用可能である。例示的に、エアロゾルジェネレータの別の構成例を
図9~
図10に模式的に示す。
【0075】
図9に示すエアロゾルジェネレータ(410)は、
加圧された媒体ガスを流すための媒体ガス流路(417)と、
媒体ガス流路(417)の途中に設けられて媒体ガス流路(417)の外周側から媒体ガス流路(417)内に向かってセラミックス粒子(412)を吸引可能な供給口(417i)と、
媒体ガス流路(417)の先端に取り付けられてエアロゾルを噴射可能なノズル(411)と、
セラミックス粒子(412)を吸引搬送するための流路(413)であって、前記供給口(417i)に連通する出口(413e)を備えた流路(413)と、
セラミックス粒子(412)を収容すると共に、吸引搬送するための流路(413)にセラミックス粒子(412)を供給するための収容部(419)と、
を有する。
【0076】
収容部(419)には、例えば漏斗を使用することができる。所定の粒度分布に調整されたセラミックス粒子が収容部(419)内に収容されている。収容部(419)に収容されているセラミックス粒子(412)は、媒体ガス流路(417)からの吸引力を受けて、収容部(419)の底部に設けられた出口(419e)から流路(413)を通って出口(413e)まで搬送された後、供給口(417i)から媒体ガス流路(417)内に導入される。この際、収容部の入口(419i)から吸引される周囲ガス(典型的には空気)も、セラミックス粒子(412)と共に流路(413)を通って媒体ガス流路(417)内に導入される。本実施形態においては、出口(413e)と供給口(417i)は共通している。また、本実施形態においては、媒体ガス流路(417)を流れる媒体ガスの流れ方向に対して略垂直な方向からセラミックス粒子(412)が媒体ガス流路(417)内に導入される。
【0077】
媒体ガス流路(417)内に供給されたセラミックス粒子(412)は、媒体ガス流路(417)を流れる媒体ガスと衝突し、解砕されながら混合されてエアロゾルとなり、ノズル(411)から噴射される。ノズル(411)は、柱状ハニカム構造体の入口側底面に対して垂直な方向にエアロゾルが噴射される位置及び向きに設置することが好ましい。より好ましくは、ノズル(411)は、入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向にエアロゾルが噴射される位置及び向きに設置される。
【0078】
収容部(419)へのセラミックス粒子(412)の供給は、限定的ではないが、例えば、スクリューフィーダー及びベルトコンベヤー等の粉体定量供給機(4111)を用いて実施するのが好ましい。粉体定量供給機(4111)から排出されるセラミックス粒子(412)は、重力によって収容部(419)内に落下させることができる。
【0079】
好ましい実施形態において、媒体ガス流路(417)は、流路が絞られたベンチュリ部(417v)を途中に有し、供給口(417i)がベンチュリ部(417v)のうち最も流路が絞られた箇所よりも下流側に設けられている。媒体ガス流路(417)がベンチュリ部(417v)を有すると、ベンチュリ部(417v)を通過する媒体ガスの速度が上昇するので、ベンチュリ部(417v)の下流において供給されるセラミックス粒子(412)に対して、より高速の媒体ガスを衝突させることができるので、解砕力が向上する。媒体ガスによる解砕力を高めるため、供給口(417i)は、ベンチュリ部(417v)のうち最も流路が絞られた箇所の下流側であって当該箇所に隣接して設けることがより好ましい。当該構成は、例えば、媒体ガス流路(417)及び吸引搬送するための流路(413)の接続を、ベンチュリエジェクター(4110)を用いて行うことで実現できる。
【0080】
ベンチュリエジェクター(4110)を用いると、例えば媒体ガスを媒体ガス流路(417)に流したときに、吸引搬送するための流路(413)に対して大きな吸引力を付与することができ、吸引搬送するための流路(413)がセラミックス粒子(412)によって詰まるのを防止することができる。ベンチュリエジェクター(4110)は、吸引搬送するための流路(413)がセラミックス粒子(412)によって詰まったときのセラミックス粒子(412)の除去手段としても有効である。
【0081】
媒体ガスとしては、圧力調整した圧縮空気等の圧縮ガスを使用することでノズル(411)からのエアロゾルの噴射流量を制御可能である。媒体ガスとしては、セラミックス粒子の凝集を抑制するためにドライエアー(例えば、露点が10℃以下)を使用することが好ましい。
【0082】
微細なセラミックス粒子は凝集しやすいという性質がある。しかしながら、本実施形態に係るエアロゾルジェネレータ(410)を使用することで、凝集が抑制された狙い通りの粒度分布をもつセラミックス粒子を噴射することが可能となる。
【0083】
図10に示すエアロゾルジェネレータ(810)は、
セラミックス粒子(812)を搬送するためのベルトフィーダ(814)と、
ベルトフィーダ(814)によって搬送されたセラミックス粒子(812)を受け入れると共に、受け入れたセラミックス粒子(812)を解砕するための回転体(816)を備えた解砕室(815)と、
第一媒体ガスを流すための第一ガス流路(817)であって、途中で解砕室出口(815e)と連通している第一ガス流路(817)と、
第二媒体ガスを流すための第二ガス流路(813)であって、途中で第一ガス流路(817)の出口(817e)に連通しており、第一媒体ガス、第二媒体ガス、及びセラミックス粒子(812)を含有するエアロゾルを先端に取り付けられたノズル(811)から噴射可能な第二ガス流路(813)と、
を備える。
【0084】
エアロゾルジェネレータ(810)は、セラミックス粒子(812)を収容するための容器(819)を有している。容器(819)内のセラミックス粒子(812)は、撹拌機(818)によって撹拌することが好ましい。容器(819)の底部にはセラミックス粒子(812)の排出口(819e)が設けられている。排出口(819e)から排出されたセラミックス粒子(812)はベルトフィーダ(814)によって、解砕室(815)の入口(815in)へと搬送される。
【0085】
解砕室(815)に導入されたセラミックス粒子(812)は、回転体(816)によって解砕されながら解砕室(815)内を移動し、解砕室出口(815e)から排出される。回転体(816)としては、例えば、回転ブラシを採用することができる。回転体(816)はモータで駆動することができ、その回転速度を制御可能に構成することができる。
【0086】
微細なセラミックス粒子は凝集しやすいという性質がある。しかしながら、本実施形態に係るエアロゾルジェネレータ(810)を使用することで、解砕されたセラミックス粒子が噴射されるので、凝集が抑制された狙い通りの粒度分布をもつセラミックス粒子を、第1セルの表面に付着させることが可能となる。
【0087】
解砕室出口(815e)から排出されたセラミックス粒子(812)は、第一ガス流路(817)を流れる第一媒体ガスと混合されて、第一ガス流路(817)の出口(817e)へと向かう。第二ガス流路(813)は、途中で第一ガス流路(817)の出口(817e)に連通しており、ここで、第二媒体ガスは、第一媒体ガス及びセラミックス粒子(812)と合流する。そして、第一媒体ガス、第二媒体ガス、及びセラミックス粒子(812)を含有するエアロゾルが第二ガス流路(813)を下流側へと流れる。その後、エアロゾルは、第二ガス流路(813)の先端に取り付けられたノズル(811)から噴射される。第一媒体ガスとしては、空気等の周囲ガスを使用してもよいが、セラミックス粒子の凝集を抑制するためにドライエアー(例えば、露点が10℃以下)を使用することが好ましい。また、第一媒体ガスは、第二ガス流路からの吸引力のみで搬送してもよいが、コンプレッサー等を用いて圧送してもよい。第二媒体ガスとしては圧力調整した圧縮空気等の圧縮ガスを使用することでノズル(811)からのエアロゾルの噴射流量を制御可能である。第二媒体ガスについても第一媒体ガスと同様にドライエアーを使用することが好ましい。
【0088】
第一ガス流路(817)及び第二ガス流路(813)の接続はエジェクター(822)、とりわけベンチュリエジェクターを用いて行うことができる。エジェクター(822)、とりわけベンチュリエジェクターを用いると、解砕室(815)によりセラミックス粒子(812)が解砕される効果に加えて、解砕室(815)を通過することで解砕されたセラミックス粒子(812)が第二媒体ガスと衝突することで第二媒体ガスによりセラミックス粒子(812)が解砕される効果も得られることから、高い凝集抑制効果が得られる。エジェクター(822)を用いると、例えば第二媒体ガスを駆動流体として第二ガス流路(813)に流したときに、第一ガス流路(817)に対して大きな吸引力を付与することができ、第一ガス流路(817)がセラミックス粒子(812)によって詰まるのを防止することができる。また、エジェクター(822)は、第一ガス流路(817)がセラミックス粒子(812)によって詰まったときのセラミックス粒子の除去手段としても有効である。
【実施例0089】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0090】
<実施例1>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
コージェライト化原料100質量部に、造孔材を3質量部、分散媒を55質量部、有機バインダーを6質量部、分散剤を1質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては吸水性ポリマーを使用し、有機バインダーとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としては脂肪酸石鹸を使用した。
【0091】
この坏土を押出成形機に投入し、所定形状の口金を介して押出成形することにより円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を誘電乾燥及び熱風乾燥した後、所定の寸法となるように両底面を切断してハニカム乾燥体を得た。
【0092】
得られたハニカム乾燥体について、第1セル及び第2セルが交互に隣接配置するようにコージェライトを材料として目封止した後に、大気雰囲気下で約200℃で加熱脱脂し、更に大気雰囲気下で1420℃で5時間焼成し、柱状ハニカム構造体を得た。
【0093】
柱状ハニカム構造体の仕様は以下である。
全体形状:直径132mm×高さ120mmの円柱状
セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状:正方形
セル密度(単位断面積当たりのセルの数):200cpsi
隔壁厚み:8mil(200μm)(口金の仕様に基づく公称値)
【0094】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、
図8に示す構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・エアロゾルジェネレータ:PALAS社製RBG2000
・回転体:回転ブラシ
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速:3m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1000mm
・エアロゾルの噴射速度:20m/s
【0095】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は3.0μmであった。
【0096】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理することで、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0097】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを先述した方法で測定した。測定に使用した3D形状測定機はキーエンス社製VR-3200とした。多孔質膜の平均厚みを測定した箇所及び平均厚みは表1-1にまとめた。なお、柱状ハニカム構造フィルタの第1セルの延びる方向を座標軸の延びる方向とし、入口側底面の座標値を0、出口側底面の座標値をXとして座標値を定めた。
【0098】
【0099】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を先述した方法により測定した。多孔質膜の気孔率測定に使用した装置はFE-SEM(型式:ULTRA55(ZEISS社製))と、画像解析ソフトHALCON(リンクス株式会社、バージョン11.0.5)とした。隔壁の気孔率測定には水銀圧入式ポロシメーターを用いた。結果を表1-2に示す。
【0100】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を測定した。
[圧力損失]
1.2L直噴ガソリンエンジンから排出される排ガスを700℃、600m3/hの流量で流入させて、柱状ハニカム構造フィルタの入口側と出口側の圧力を測定した。そして、入口側と出口側の圧力差を算出することにより、ハニカムフィルタの圧力損失(kPa)を求めた。結果を表1-2に示す。
[捕集効率(%)]
柱状ハニカム構造フィルタを、1.2L直噴ガソリンエンジン車両のエンジン排気マニホルドの出口側に接続して、柱状ハニカム構造フィルタの流出口から排出されるガスに含まれる煤の個数を、PN測定方法によって測定した。走行モードに関しては、走行開始直後に60km/hrに10秒以内に加速し、その後20秒ごとに20km/hr速度を落とす特別厳しい走行モードを実施した。モード走行後に排出された煤の個数の累計を、判定対象となる排ガス浄化装置の煤の個数とし、その煤の個数から捕集効率(%)を算出した。このとき、柱状ハニカム構造フィルタに流入する排ガスの流速は約4m/sであった。結果を表1-2に示す。
【0101】
なお、柱状ハニカム構造フィルタの形状を、長径231mm×短径106mm×高さ120mmのオーバル形状に変えた以外は、実施例1と同様の手順で多孔質膜を形成し、圧力損失及び捕集効率を求めたところ、上記と同様の結果が得られた。
【0102】
【0103】
<実施例2>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0104】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、ベンチュリエジェクター ISO 5011 分散ノズル(PALAS社製)を用いた
図9に示す構造をもつエアロゾルジェネレータを使用した他は、実施例1と同じ構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速:3m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1000mm
・エアロゾルの噴射速度:20m/s
【0105】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は2.8μmであった。
【0106】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0107】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表2-1に示す。
【0108】
【0109】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表2-2に示す。
【0110】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表2-2に示す。
【0111】
【0112】
<実施例3>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0113】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、実施例1と同じ構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・エアロゾルジェネレータ:PALAS社製RBG2000
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速:8m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1000mm
・エアロゾルの噴射速度:40m/s
【0114】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は3.1μmであった。
【0115】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0116】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表3-1に示す。
【0117】
【0118】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表3-2に示す。
【0119】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表3-2に示す。
【0120】
【0121】
<実施例4>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0122】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、
図9に示す構造をもつエアロゾルジェネレータを使用した他は、実施例1と同じ構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・エアロゾルジェネレータ:PISCO社製VRL50-080608
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速:8m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1000mm
・エアロゾルの噴射速度:40m/s
【0123】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は3.2μmであった。
【0124】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0125】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表4-1に示す。
【0126】
【0127】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表4-2に示す。
【0128】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表4-2に示す。
【0129】
【0130】
<実施例5>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0131】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、
図10に示す構造をもつエアロゾルジェネレータを使用した他は、実施例1と同じ構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・エアロゾルジェネレータ:PALAS社製BEG1000
・回転体:回転ブラシ
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・第一媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・第二媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体内に流入するエアロゾルの平均流速:6m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1500mm
・エアロゾルの噴射速度:50m/s
【0132】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は2.7μmであった。
【0133】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0134】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表5-1に示す。
【0135】
【0136】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表5-2に示す。
【0137】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表5-2に示す。
【0138】
【0139】
<実施例6>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0140】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、
図10に示す構造をもつエアロゾルジェネレータを使用した他は、実施例1と同じ構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・エアロゾルジェネレータ:PALAS社製BEG1000
・回転体:回転ブラシ
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・第一媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・第二媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体内に流入するエアロゾルの平均流速:4m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1500mm
・エアロゾルの噴射速度:40m/s
【0141】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は2.6μmであった。
【0142】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0143】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表6-1に示す。
【0144】
【0145】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表6-2に示す。
【0146】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表6-2に示す。
【0147】
【0148】
<比較例1>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0149】
上記で作製した柱状ハニカム構造体をホルダーでセルの延びる方向が鉛直方向になるよう保持し、SiC粒子を含有するスラリーを入口側底面に向かって上方から流した。この際、スラリーは入口側底面全体に偏りなく流入させた。スラリーに含まれるSiC粒子は、メジアン径(D50)が2.4μmであった。スラリー中のSiC粒子は第1セルの表面に付着する一方、出口側底面からは、柱状ハニカム構造体を透過した水分が排出された。出口側底面は排水管に接続されており、排出された水分を容器に回収した。スラリーを柱状ハニカム構造体に流す際、回収容器内の空気をブロアで吸引することで、吸引力を柱状ハニカム構造体の出口側底面に与え、隔壁表面への膜材の密着性を促進した。
【0150】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0151】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表7-1に示す。
【0152】
【0153】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表7-2に示す。
【0154】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表7-2に示す。
【0155】
【0156】
<実施例7>
(1)柱状ハニカム構造フィルタの製造
実施例1と同様の製造条件で柱状ハニカム構造体を得た。
【0157】
上記で作製した柱状ハニカム構造体に対して、
図9に示す構造をもつエアロゾルジェネレータを使用した他は、実施例1と同じ構成の粒子付着装置を使って、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させた。粒子付着装置の稼働条件は以下である。
・エアロゾルジェネレータ:PISCO社製VRL50-080608
・容器に収容するセラミックス粒子:SiC粒子
メジアン径(D50):2.4μm
D10:1.1μm
D90:4.5μm
(レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布に基づく)
・噴射したセラミックス粒子重量:6.0g
・媒体ガス:圧縮ドライエアー(露点10℃以下)
・周囲ガス:空気
・柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速:8m/s
・レーザー回折式粒度分布測定装置:MALVERN社製インシテックスプレー
・稼働時間:20秒
・エアロゾルジェネレータのノズル内径:Φ8mm
・エアロゾルジェネレータのノズル先端から柱状ハニカム構造体の入口側底面までの距離:1000mm
・エアロゾルの噴射速度:20m/s
【0158】
粒子付着装置の稼働中にレーザー回折式粒度分布測定装置でエアロゾルから噴射されるセラミックス粒子の体積基準による粒度分布を測定したところ、メジアン径(D50)は2.4μmであった。
【0159】
このようにして得られたセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体の入口側底面に付着したセラミックス粒子をバキュームで吸引除去した。その後、柱状ハニカム構造体を電気炉に入れ、最高温度1200℃で2時間キープする条件で大気雰囲気下で加熱処理し、第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカム構造フィルタを得た。柱状ハニカム構造フィルタは、下記の特性評価を実施するのに必要な数を作製した。
【0160】
(2)特性評価
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの所定位置における多孔質膜の平均厚みを実施例1と同様の方法で測定した。結果を表8-1に示す。
【0161】
【0162】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの多孔質膜及び隔壁の気孔率を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表8-2に示す。
【0163】
上記の製造方法によって得られた柱状ハニカム構造フィルタの「圧力損失」、及び「捕集効率(%)」を実施例1と同様の方法により測定した。結果を表8-2に示す。
【0164】