IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

特開2022-158919偏光シート、偏光レンズおよび光学部品
<>
  • 特開-偏光シート、偏光レンズおよび光学部品 図1
  • 特開-偏光シート、偏光レンズおよび光学部品 図2
  • 特開-偏光シート、偏光レンズおよび光学部品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158919
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】偏光シート、偏光レンズおよび光学部品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20221006BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20221006BHJP
   G02C 7/12 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20221006BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G02B5/30
G02C7/10
G02C7/12
B32B7/023
B32B27/40
B32B27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012861
(22)【出願日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2021062406
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 有香
(72)【発明者】
【氏名】大山 拓也
【テーマコード(参考)】
2H006
2H149
4F100
【Fターム(参考)】
2H006BE00
2H149AA23
2H149AB13
2H149BA02
2H149BA12
2H149BB13
2H149CA04
2H149EA02
2H149EA13
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA13X
2H149FA69
2H149FD12
2H149FD33
4F100AJ04E
4F100AJ06
4F100AK21
4F100AK21C
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AK46A
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AR00D
4F100AR00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA21A
4F100BA21E
4F100CA13
4F100CA13C
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100CB02
4F100CB02B
4F100DD05A
4F100DD05B
4F100DD05C
4F100DD05D
4F100DD05E
4F100EH36A
4F100EJ37
4F100EJ37C
4F100GB66
4F100JL11
4F100JL11B
4F100JL11D
4F100JN01
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN01D
4F100JN01E
4F100JN10
4F100JN10C
4F100JN18
4F100JN18A
4F100JN18E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施したとしても、透明性の低下が的確に抑制または防止された偏光シートを提供すること、また、かかる偏光シートを備える信頼性に優れた偏光レンズおよび光学部品を提供すること。
【解決手段】本発明の偏光シート10は、偏光膜13と第1保護シート11と第2保護シート12と第1接合層16と第2接合層17とを備えるものであり、第1接合層16は、ポリウレタン系接着剤を主材料として構成され、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光シート10を15分浸漬した後に、偏光シート10のヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸延伸され、該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光膜と、該偏光膜の一方の面側に積層された複屈折を有する第1保護シートと、前記偏光膜の他方の面側に積層された前記第1保護シートよりも複屈折が低い第2保護シートと、前記偏光膜と前記第1保護シートとを接合する第1接合層と、前記偏光膜と前記第2保護シートとを接合する第2接合層とを備える偏光シートであって、
前記第1接合層は、ポリウレタン系接着剤を主材料として構成され、
JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光シートを15分浸漬した後に、当該偏光シートのヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを特徴とする偏光シート。
【請求項2】
JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光シートを15分浸漬した後に、当該偏光シートの密着力を測定したとき、前記密着力が下記要件Aを満足する請求項1に記載の偏光シート。
要件A:JIS K 6854―2に準拠して、当該偏光シートを長さ200mm×幅25mmの大きさに切断し、次いで、140℃環境下で、当該偏光シートの前記第1保護シートの一端を持ち、180°の方向にて10mm/分の速度で、10mmの長さまで引き剥がしたときに測定される前記第1保護シートの前記偏光膜に対する密着力は、40N/25mm以上500N/25mm以下であることを満足する。
【請求項3】
前記ポリウレタン系接着剤は、一液湿気架橋型または二液架橋型である請求項1または2に記載の偏光シート。
【請求項4】
前記第1保護シートは、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂を主材料として構成され、前記第2保護シートは、セルロース系樹脂を主材料として構成される請求項1ないし3のいずれか1項に記載の偏光シート。
【請求項5】
前記偏光膜は、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を主材料として、二色性染料を含有して、一軸延伸されたものである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の偏光シート。
【請求項6】
当該偏光シートは、前記第1保護シートが凹面、前記第2保護シートが凸面を構成するように湾曲板状とし、当該偏光シートの前記凸面側が射出成型機の金型側となり、前記凹面側が露出するように、当該偏光シートを、前記射出成型機の金型のキャビティに設置して、射出成型用光学樹脂を主材料として構成された、前記第1保護シートに接合する光学用レンズを射出成形法により形成するために用いられるものである請求項1ないし5のいずれか1項に記載の偏光シート。
【請求項7】
前記第1保護シートが凹面、前記第2保護シートが凸面を構成して湾曲板状とされた請求項1ないし6のいずれか1項に記載の偏光シートと、前記凹面に前記第1保護シートに接合して、射出成形によって形成された前記光学用レンズとを備えることを特徴とする偏光レンズ。
【請求項8】
JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光レンズを15分浸漬した後に、当該偏光レンズのヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下である請求項7に記載の偏光レンズ。
【請求項9】
当該偏光レンズを使用するとき、前記偏光シートが備える前記第1保護シート側の凹面が、使用者の目側を臨む請求項7または8に記載の偏光レンズ。
【請求項10】
当該偏光レンズが備える前記偏光シートにおいて、MDにおけるカーブとTDにおけるカーブとの差は、0.05以上0.5以下である請求項7ないし9のいずれか1項に記載の偏光レンズ。
【請求項11】
請求項7ないし10のいずれか1項に記載の偏光レンズを備えることを特徴とする光学部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光シート、偏光レンズおよび光学部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂等を主材料として構成される被覆層で偏光膜の両面を被覆した構成をなす偏光性積層体(偏光シート)を備える偏光レンズが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この偏光レンズは、例えば、平面視で平板状をなす偏光性積層体(偏光シート)の両面に保護フィルムを貼付した状態で、平面視で円形状等の所定の形状に、偏光性積層体を打ち抜く。その後、この偏光性積層体に加熱下で熱曲げ加工を施すことで、熱曲げにより湾曲板状とされた偏光シートとする。そして、偏光シートから、保護フィルムを剥離させた後に、湾曲板状とされた凹部を備える金型に、金型の凹部と偏光シートの凸部とが当接するようにして、偏光シートを吸着させた状態で、射出成形法を用いて、この偏光シートの凹面にポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成される樹脂層(光学用レンズ)を形成することにより製造される。
また、この偏光レンズには、その用途に応じて、その少なくとも一方の面側に、最外層として、ハードコート層が形成される。
【0004】
このような偏光レンズが備える偏光性積層体では、偏光膜と被覆層との接合が、接合層を介してなされ、その透明性や接合強度を考慮して、この接合層を、ウレタン系接着剤を用いることがある。
【0005】
しかしながら、この場合、上述したような偏光レンズの製造方法を適用して偏光レンズを製造すると、加熱下における偏光性積層体(偏光シート)の熱曲げ加工や、樹脂層(光学用レンズ)の射出成形の後、さらには、ハードコート層の形成の後に、偏光性積層体における透明性の低下を招くと言う問題があった。
【0006】
また、このような問題、すなわち、偏光性積層体における透明性の低下は、この偏光レンズを備えるサングラス(眼鏡)を、車内のダッシュボードのような高温となる空間に長時間配置した場合においても同様に生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-294445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高温下に曝されたとしても、透明性の低下が的確に抑制または防止された偏光シートを提供すること、また、かかる偏光シートを備える信頼性に優れた偏光レンズおよび光学部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)~(11)に記載の本発明により達成される。
(1) 一軸延伸され、該一軸延伸の方向に吸収軸を有する偏光膜と、該偏光膜の一方の面側に積層された複屈折を有する第1保護シートと、前記偏光膜の他方の面側に積層された前記第1保護シートよりも複屈折が低い第2保護シートと、前記偏光膜と前記第1保護シートとを接合する第1接合層と、前記偏光膜と前記第2保護シートとを接合する第2接合層とを備える偏光シートであって、
前記第1接合層は、ポリウレタン系接着剤を主材料として構成され、
JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光シートを15分浸漬した後に、当該偏光シートのヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを特徴とする偏光シート。
【0010】
(2) JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光シートを15分浸漬した後に、当該偏光シートの密着力を測定したとき、前記密着力が下記要件Aを満足する上記(1)に記載の偏光シート。
要件A:JIS K 6854―2に準拠して、当該偏光シートを長さ200mm×幅25mmの大きさに切断し、次いで、140℃環境下で、当該偏光シートの前記第1保護シートの一端を持ち、180°の方向にて10mm/分の速度で、10mmの長さまで引き剥がしたときに測定される前記第1保護シートの前記偏光膜に対する密着力は、40N/25mm以上500N/25mm以下であることを満足する。
【0011】
(3) 前記ポリウレタン系接着剤は、一液湿気架橋型または二液架橋型である上記(1)または(2)に記載の偏光シート。
【0012】
(4) 前記第1保護シートは、ポリカーボネート系樹脂またはポリアミド系樹脂を主材料として構成され、前記第2保護シートは、セルロース系樹脂を主材料として構成される上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の偏光シート。
【0013】
(5) 前記偏光膜は、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を主材料として、二色性染料を含有して、一軸延伸されたものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の偏光シート。
【0014】
(6) 当該偏光シートは、前記第1保護シートが凹面、前記第2保護シートが凸面を構成するように湾曲板状とし、当該偏光シートの前記凸面側が射出成型機の金型側となり、前記凹面側が露出するように、当該偏光シートを、前記射出成型機の金型のキャビティに設置して、射出成型用光学樹脂を主材料として構成された、前記第1保護シートに接合する光学用レンズを射出成形法により形成するために用いられるものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の偏光シート。
【0015】
(7) 前記第1保護シートが凹面、前記第2保護シートが凸面を構成して湾曲板状とされた上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の偏光シートと、前記凹面に前記第1保護シートに接合して、射出成形によって形成された前記光学用レンズとを備えることを特徴とする偏光レンズ。
【0016】
(8) JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光レンズを15分浸漬した後に、当該偏光レンズのヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下である上記(7)に記載の偏光レンズ。
【0017】
(9) 当該偏光レンズを使用するとき、前記偏光シートが備える前記第1保護シート側の凹面が、使用者の目側を臨む上記(7)または(8)に記載の偏光レンズ。
【0018】
(10) 当該偏光レンズが備える前記偏光シートにおいて、MDにおけるカーブとTDにおけるカーブとの差は、0.05以上0.5以下である上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の偏光レンズ。
【0019】
(11) 上記(7)ないし(10)のいずれかに記載の偏光レンズを備えることを特徴とする光学部品。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、JIS 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光シートを15分浸漬した後に、偏光シートのヘイズ値を測定したとき、このヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足している。そのため、例えば、偏光シートを備える偏光レンズを製造するために、加熱下における偏光シートの熱曲げ加工や、光学用レンズの射出成形を偏光シートに施す場合のように、偏光シートを高温下に曝したとしても、偏光シートにおける透明性が低下するのが的確に抑制または防止されていると言える。したがって、信頼性に優れた偏光レンズおよび光学部品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の偏光シートを有する偏光レンズを備える光学部品としてサングラスに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の偏光シートを有する偏光レンズの製造方法を説明するための模式図である。
図3】本発明の偏光シートの実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の偏光シート、偏光レンズおよび光学部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中における主材料とは、50重量%以上含まれている構成材料のことを指し、例えば、「第1保護シートは、その主材料としてポリカーボネート系樹脂を含有している。」とは、第1保護シートの総重量を100重量%とした場合、第1保護シートに含まれるポリカーボネート系樹脂が50重量%以上を、第1保護シートにおいて占めていることを指す。
【0023】
本発明の偏光シート10は、偏光膜13と、この偏光膜13の一方の面側に積層された第1保護シート11と、偏光膜の他方の面側に積層された第2保護シート12と、偏光膜13と第1保護シート11とを接合する第1接合層16と、偏光膜13と第2保護シート12とを接合する第2接合層17とを備え、第1保護シート11が凹面、第2保護シート12が凸面を構成するように湾曲板状とし、偏光シート10の凸面側が射出成型機の金型40側となり、凹面側が露出するように、偏光シート10を、前記射出成型機の金型40のキャビティに設置して、射出成型用光学樹脂を主材料として構成された、第1保護シート11に接合する樹脂層35(光学用レンズ)を射出成形により形成するために用いられるものであり、第1接合層16は、ポリウレタン系接着剤を主材料として構成され、JIS 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光シート10を15分浸漬した後に、偏光シート10のヘイズ値を測定したとき、ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足する。
【0024】
したがって、例えば、偏光シート10を備える偏光レンズ30の製造の際に、加熱下における偏光シート10の熱曲げ加工や、樹脂層35(光学用レンズ)の射出成形を偏光シート10に施す場合のように、偏光シート10を高温下に曝したとしても、偏光シート10における透明性が低下するのが的確に抑制または防止されていると言える。よって、信頼性に優れた偏光レンズ30および光学部品としてのサングラス100を製造することができる。
【0025】
本発明の偏光シート10は、例えば、光学部品としての眼鏡の一種であるサングラス100が備える偏光レンズ30が有する偏光性の樹脂基板として使用される。そこで、以下では、まず、本発明の偏光シート10を説明するのに先立って、このサングラス100(本発明の光学部品)について説明する。
【0026】
<サングラス>
図1は、本発明の偏光シートを有する偏光レンズを備える光学部品としてサングラスに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。なお、図1において、サングラスを使用者の頭部に装着した際に、レンズの使用者の目側の面を裏側の面と言い、その反対側の面を表側の面と言う。
【0027】
サングラス100は、図1に示すように、フレーム20と、偏光レンズ30(本発明の偏光レンズ)とを備えている。
【0028】
なお、本明細書中において、「偏光レンズ」とは、集光機能を有するものと、集光機能を有していないものとの双方を含むこととする。
【0029】
フレーム20は、使用者の頭部に装着され、偏光レンズ30を使用者の目の前方近傍に配置させるためのものである。
【0030】
このフレーム20は、リム部21と、ブリッジ部22と、テンプル部23と、ノーズパッド部24とを有している。
【0031】
リム部21は、リング状をなし、右目および左目にそれぞれ対応して1つずつ設けられており、内側に偏光レンズ30が装着される。これにより、使用者は、偏光レンズ30を介して、外部の情報を視認することができる。
【0032】
また、ブリッジ部22は、棒状をなし、使用者の頭部に装着された際に、使用者の鼻の上部の前方に位置して、一対のリム部21を連結する。
【0033】
テンプル部23は、つる状をなし、各リム部21のブリッジ部22が連結されている位置の反対側における縁部に連結されている。このテンプル部23は、使用者の頭部に装着する際に、使用者の耳に掛けられる。
【0034】
ノーズパッド部24は、サングラス100を使用者の頭部に装着する際に、各リム部21における使用者の鼻に対応する縁部に設けられ、使用者の鼻に当接し、このとき使用者の鼻の当接部に対応した形状をなしている。これにより、装着状態を安定的に維持することができる。
【0035】
フレーム20を構成する各部の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や、各種樹脂材料等を用いることができる。なお、フレーム20の形状は、使用者の頭部に装着することができるものであれば、図示のものに限定されない。
【0036】
偏光レンズ30は、各リム部21に、それぞれ装着されている。この偏光レンズ30は、光透過性を有し、外側に向って湾曲した板状をなす部材、すなわち、湾曲した凸面が外側を臨み、凹面が使用者の眼側を臨む部材であり、偏光シート10と、偏光シート10に接合する樹脂層35と、を有している。
【0037】
樹脂層35は、光透過性を有し、偏光レンズ30の裏側に位置して光学用レンズとして機能し、偏光レンズ30に、集光機能を付与する際には、この樹脂層35が集光機能を有している。
【0038】
樹脂層35(光学用レンズ)の主材料として構成する構成材料としては、光透過性を有し、後述する偏光レンズ30の製造方法で説明する通り、この樹脂層35を射出成形により形成し得る樹脂材料(射出成形用光学樹脂)であれば、特に限定されないが、例えば、各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂のような各種硬化性樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
この樹脂材料(射出成形用光学樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられるが、中でも、後述する偏光シート10が備える第1保護シート11を構成する樹脂材料と、同種もしくは同一であるのが好ましい。これにより、樹脂層35と、偏光シート10との間において優れた密着性を発揮させることができるため、偏光シート10から樹脂層35が離脱するのを的確に抑制または防止することができる。
【0040】
樹脂層35の厚さは、特に限定されず、例えば、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.0mm以上3.0mm以下であるのがより好ましい。これにより、偏光レンズ30における、比較的高い強度と、軽量化との両立を図ることができる。
【0041】
偏光シート10は、樹脂層35の外側の面、すなわち、湾曲凸面上に、かかる形状に対応して、湾曲板状に熱曲げ加工を施した後に接合される偏光性の樹脂基板であり、これにより、サングラス100に偏光性が付与される。その結果、サングラス100が、偏光性を有する偏光サングラスとしての機能を発揮する。この偏光シート10が、本発明の偏光シートで構成されるが、その詳細な説明は、後に行うこととする。
【0042】
なお、前述の通り、サングラス100が備える偏光レンズ30は、集光機能を有するものであっても、集光機能を有していないもののいずれであってもよい。
【0043】
また、サングラス100は、前述のように、フレーム20を有するものの他、ファッション性、軽量性等の観点から、フレームのない構成をなすものであってもよい。
【0044】
さらに、本実施形態では、本発明の光学部品を、サングラス100に適用することとしたが、これに限定されず、本発明の光学部品は、例えば、度付き眼鏡、伊達メガネのような眼鏡、風雨、塵芥、薬品等から眼を保護するゴーグル、フェイスシールド、バイザーおよびスマートグラス用のゴーグル等であってもよい。
【0045】
以上のような構成をなすサングラス100において、サングラス100が備える偏光レンズ30(本発明の偏光レンズ)は、本発明では、以下に示すような、偏光レンズ30の製造方法により製造される。
【0046】
<偏光レンズの製造方法>
図2は、本発明の偏光シートを有する偏光レンズの製造方法を説明するための模式図である。なお、以下では、説明の都合上、図1の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0047】
以下、本発明の偏光シート10を備える偏光レンズ30の製造方法の各工程を詳述する。
【0048】
[1]まず、第1保護シート11と偏光膜13と第2保護シート12とを備え、これらがこの順で積層された、全体形状が平板状をなしている偏光シート10を用意する。そして、この偏光シート10の両面に、保護フィルム50(マスキングテープ)を貼付することで、偏光シート10の両面に保護フィルム50が貼付された多層積層体200を得る(図1(a)参照)。
【0049】
[2]次に、図1(b)に示すように、用意した多層積層体200を、すなわち、偏光シート10の両面に保護フィルム50を貼付した状態で偏光シート10を、その厚さ方向に打ち抜くことで、多層積層体200を平面視で円形状をなすものとする。
【0050】
[3]次に、図1(c)に示すように、円形状とされた多層積層体200に対して、加熱下で熱曲げ加工を施す。
【0051】
これにより、多層積層体200を、第1保護シート11側が湾曲凹面(凹面)とされ、第2保護シート12側が湾曲凸面(凸面)とされた湾曲板状(湾曲板状)をなすものとする。その結果、偏光シート10が、両面に保護フィルム50が貼付された状態で、第1保護シート11側が湾曲凹面(凹面)、第2保護シート12側が湾曲凸面(凸面)を構成する湾曲板状をなすものとされる。
【0052】
また、多層積層体200に対する熱曲げ加工により、偏光シート10は、MDにおけるカーブとTDにおけるカーブとの差が、好ましくは0.05以上0.5以下、より好ましくは0.05以上0.2以下に設定される。
【0053】
この熱曲げ加工は、通常、プレス成形または真空成形により実施される。
この際の多層積層体200(偏光シート10)の加熱温度(成形温度)は、前述の通り、本実施形態では、偏光シート10が保護シート11、12を備え、保護シート11、12の溶融または軟化温度を考慮して、好ましくは110℃以上170℃以下程度、より好ましくは140℃以上160℃以下程度に設定される。加熱温度をかかる範囲内に設定することにより、偏光シート10の変質・劣化を防止しつつ、偏光シート10を軟化または溶融状態として、偏光シート10を確実に熱曲げして、例えば、MDにおけるカーブとTDにおけるカーブとの差が前記範囲内に設定されている湾曲板状をなす偏光シート10とすることができる。
【0054】
なお、本工程[3]における熱曲げ加工に先立って、多層積層体200を乾燥させる乾燥工程を施しておくのが好ましい。これにより、吸湿に起因する偏光シート10の変形を的確に抑制または防止し得ることから、多層積層体200の熱曲げ加工、すなわち、両面に保護フィルム50が貼付された状態での偏光シート10の熱曲げ加工を優れた精度で実施することができる。この多層積層体200の乾燥は、例えば、多層積層体200の表面に、70℃以上80℃以下程度の熱風を、5時間以上15時間以下程度の時間で吹き付けることにより行うことができる。
【0055】
[4]次に、熱曲げがなされた偏光シート10すなわち多層積層体200から、保護フィルム50を剥離させる。その後、図2(d)に示すように、湾曲板状とされた湾曲凹面を備える、射出成型機の金型40に、金型40の湾曲凹面と偏光シート10の湾曲凸面すなわち第2保護シート12側とが当接するようにして、偏光シート10を吸着させた状態とする。これにより、偏光シート10の湾曲凹面すなわち第1保護シート11側が露出した状態で、偏光シート10が金型40のキャビティ401に設置される。そして、この状態で、インサート射出成形法(射出成形法)を用いて、この偏光シート10の湾曲凹面(第1保護シート11)に、樹脂材料で構成される樹脂層35を射出成形する。これにより、熱曲げがなされた偏光シート10と、樹脂層35(光学用レンズ)とを備える偏光レンズ30が製造される。
【0056】
また、インサート射出成形法の中でも、射出圧縮成形法が好ましく用いられる。射出圧縮成形法は、金型40の中に樹脂層35を形成するための樹脂材料(射出成形用光学樹脂)を低圧で射出した後、金型を40高圧で閉じてこの樹脂材料に圧縮力を加える方法をとるため、成形体としての樹脂層35ひいては偏光レンズ30に成形歪みや成形時の樹脂分子の局所的配向に起因する光学的異方性が生じにくいことから好ましく用いられる。また、樹脂材料に対して均一に加わる金型圧縮力を制御することにより、一定比容で樹脂材料を冷却することができるので、寸法精度の高い樹脂層35を得ることができる。
【0057】
なお、本工程[4]における樹脂層35の形成に先立って、熱曲げがなされた偏光シート10を乾燥させる乾燥工程を施しておくのが好ましい。これにより、熱曲げがなされた偏光シート10の吸湿に起因する変形を的確に抑制または防止し得ることから、熱曲げがなされた偏光シート10に対する樹脂層35の成形を優れた精度で実施することができる。そのため、偏光シート10と樹脂層35とを備える偏光レンズ30を、より高い寸法精度で得ることができる。この偏光シート10の乾燥は、例えば、偏光シート10の表面に、75℃以上85℃以下程度の熱風を、15分以上2時間以下程度の時間で吹き付けることにより行うことができる。
【0058】
また、この偏光レンズ30を、その用途に応じて、その少なくとも一方の面側に、最外層として、ハードコート層を備えるものとしてもよい。このハードコート層の形成は、例えば、熱硬化性を有する樹脂組成物を、偏光レンズ30の表面に塗布した後に、加熱・乾燥させることで行うことができる。この場合、樹脂組成物の加熱・乾燥は、例えば、偏光シート10の表面に、100℃以上130℃以下程度の熱風を、1時間以上3時間以下程度の時間で吹き付けることにより行うことができる。
【0059】
以上のような偏光レンズ30の製造方法において使用される偏光シート10として、本発明の偏光シートが用いられ、これにより、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光シート10を15分浸漬した後に、偏光シート10のヘイズ値を測定したとき、ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足している。そのため、偏光シート10を備える偏光レンズ30の製造の際に、加熱下における偏光シート10の熱曲げ加工や、樹脂層35(光学用レンズ)の射出成形を偏光シート10に施したとしても、偏光シート10における透明性が低下するのが的確に抑制または防止されていると言えるが、以下、本発明の偏光シートについて詳述する。
【0060】
<偏光シート10>
偏光シート10(本発明の偏光シート)は、偏光膜13と、この偏光膜13の一方の面側に積層された第1保護シート11と、偏光膜の他方の面側に積層された第2保護シート12と、偏光膜13と第1保護シート11とを接合する第1接合層16と、偏光膜13と第2保護シート12とを接合する第2接合層17とを備える偏光性積層体である。以下、この偏光シート10を構成する各部(各層)について説明する。
【0061】
図3は、本発明の偏光シートの実施形態を示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0062】
(偏光膜13)
偏光膜13は、一軸延伸され、この一軸延伸の方向に吸収軸を有しており、これにより、入射光(偏光していない自然光)から、一軸延伸の方向に偏光面をもつ直線偏光を取り出す機能を有している。これにより、偏光シート10を通過する光は、偏光されたものとなる。
【0063】
偏光膜13の偏光度は、特に限定されないが、例えば、50%以上100%以下であるのが好ましく、80%以上100%以下であるのがより好ましい。また、偏光膜13の可視光線透過率は、特に限定されないが、例えば、10%以上80%以下であるのが好ましく、20%以上50%以下であるのがより好ましい。
【0064】
このような偏光膜13の構成材料としては、上記機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合体部分ケン価物等が挙げられ、偏光膜13としては、この構成材料で構成された高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着、染色させ、一軸延伸したもの等が挙げられる。
【0065】
これらの中でも、偏光膜13は、ポリビニルアルコール(PVA)を主材料とした高分子フィルムに、ヨウ素または二色性染料を吸着、染色させ、一軸延伸したものが好ましい。ポリビニルアルコール(PVA)は透明性、耐熱性、染色剤であるヨウ素または二色性染料との親和性、延伸時の配向性のいずれもが優れた材料である。したがって、PVAを主材料とする偏光膜13は、耐熱性に優れたものとなるとともに、偏光能に優れたものとなる。
【0066】
なお、上記二色性染料としては、例えばクロラチンファストレッド、コンゴーレッド、ブリリアントブルー6B、ベンゾパープリン、クロラゾールブラックBH、ダイレクトブルー2B、ジアミングリーン、クリソフェノン、シリウスイエロー、ダイレクトファーストレッド、アシッドブラックなどが挙げられる。
【0067】
この偏光膜13の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。
【0068】
(第1保護シート11)
第1保護シート11は、複屈折を有する樹脂層であり、図2(d)、図3に示すように、偏光膜13の下面側(一方の面側)すなわち湾曲凹面(凹面)とされる側に積層され、これにより、偏光膜13の下面側を保護する保護層として機能する。
【0069】
この第1保護シート11は、複屈折を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリアミド系樹脂およびポリカーボネート系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成され、これらの樹脂材料のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ポリアミド系樹脂およびポリカーボネート系樹脂のうちの少なくとも1種を主材料として構成される第1保護シート11とすることで、第1保護シート11を、比較的高い複屈折を有するものとし得る。
【0070】
ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富むため、偏光シート10の透明性や耐衝撃性を向上させることができる。また、ポリカーボネート系樹脂は、その比重が1.2程度であり、樹脂材料のなかでも軽いものに分類されることから、偏光シート10の軽量化が図られる。また、ポリアミド系樹脂は、透明性および耐衝撃性の他に、耐薬品性、耐応力性等の向上を図ることができる。
【0071】
ポリアミド系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、脂環式ポリアミド、半芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂環式ポリアミドは、耐衝撃性に優れた材料である。そのため、偏光シート10を優れた耐衝撃性を発揮するものとし得る。また、半芳香族ポリアミドは、弾性率の高い材料である。そのため、曲げ等の応力に対して、優れた耐性を有する偏光シート10とすることができる。
【0072】
なお、本明細書において、半芳香族ポリアミドとは、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの一方が芳香族性化合物であり、他方が脂肪族化合物であるポリアミドのことを言い、具体的には、下記式(1B)で表すことができる。
【0073】
【化1】
(ただし、式(1B)中のRおよびRは、一方が2価の芳香族置換基、他方が2価の脂肪族置換基であり、nは、2以上の整数である。)
【0074】
なお、ポリアミドは、ジカルボン酸、ジアミンのうち少なくとも一方について、2種以上のモノマーを含む共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体等)であってもよい。
【0075】
また、上記式(1B)中のR、Rのうちの芳香族置換基としては、下記式(2B)で表されるものであるのが好ましい。
【0076】
【化2】
(ただし、式(2B)中、l、mは、それぞれ独立に0以上2以下の整数である。)
【0077】
これにより、偏光膜13をより好適に保護することができるとともに、偏光シート10の加工性をより優れたものとし得る。また、第1保護シート11にリタデーションを付与する場合には、第1保護シート11の延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
【0078】
上記式(1B)中のR、Rのうちの脂肪族置換基は、炭素数が4以上18以下のものであるのが好ましく、炭素数が4以上18以下の炭化水素基であるのがより好ましく、炭素数が4以上18以下の飽和炭化水素基であるのがさらに好ましい。
これにより、偏光シート10の加工性をより優れたものとし得る。
【0079】
さらに、半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と、脂肪族ジアミンとを構成モノマーとして含むものであるのが好ましい。これにより、偏光膜13をより好適に保護することができるとともに、偏光シート10の加工性をより優れたものとし得る。また、延伸によるリタデーションの制御をより容易に行うことができる。
【0080】
脂環式ポリアミドは、その分子内に脂環式の化学構造を有しており、主鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよいし、側鎖構造内に脂環式の化学構造を有していてもよい。
【0081】
この脂環式ポリアミドとしては、例えば、ポリアミドを構成するモノマーとしてのジカルボン酸、ジアミンのうちの少なくとも一方が脂環式の化学構造を有する化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(3B)で表すことができる。
【0082】
【化3】
(ただし、式(3B)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が4以下の炭化水素基、oは、2以上14以下の整数、pは、0以上6以下の整数、nは、2以上の整数である。)
【0083】
ポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、偏光シート10の強度をより優れたものとし得る。
【0084】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0085】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0086】
【化4】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0087】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0088】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を含んでもよく、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、偏光シート10は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。
【0089】
第1保護シート11中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における偏光シート10の熱曲げ加工を比較的容易に実施することができる。また、第1保護シート11にリタデーションを発現させる際には、このリタデーションの発現のための延伸を好適に行うことができる。さらに、偏光シート10の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0090】
また、第1保護シート11には、主材料として含まれる樹脂材料以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料等の着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤等)、可塑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0091】
この場合、第1保護シート11中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、第1保護シート11の100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、85質量部以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、偏光シート10を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0092】
さらに、第1保護シート11にリタデーションを発現させる場合、第1保護シート11のリタデーションは、比較的低く設定されているのが好ましい。
【0093】
これにより、第1保護シート11を、熱収縮により変形しにくいものとし得る。したがって、図2図3に示したように、偏光レンズ30が備える偏光シート10に適用することで、偏光シート10は、前述の通り、湾曲した湾曲状態で用いられることになるが、この際に、湾曲凹面側に第1保護シート11が位置して、偏光シート10全体として、熱による過剰な変形が生じるのを防止することができる。その結果、偏光シート10の熱変形に起因して、偏光レンズ30自体の形状が変形するのを、的確に抑制または防止することができる。
【0094】
第1保護シート11のリタデーションは、0nm以上500nm以下であるのが好ましく、50nm以上350nm以下であるのがより好ましい。これにより、偏光シート10の偏光性能を十分に発揮させることができる。また、偏光シート10を、前述の通り、MDにおけるカーブとTDにおけるカーブとに差を有するものとした場合、このカーブの差に、第1保護シート11の熱収縮により、ズレが生じるのを、的確に抑制または防止することができる。
【0095】
なお、第1保護シート11のリタデーションの差異は、層中に含まれる構成材料や、厚さ、さらには、延伸倍率等を異ならせることにより発現させることができる。
【0096】
第1保護シート11の平均厚さは、特に限定されず、例えば、0.05mm以上0.5mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上0.4mm以下であるのが好ましい。
【0097】
第1保護シート11の延伸倍率は、特に限定されないが、前記リタデーションの大きさに設定されるように、例えば、0.95以上1.1以下であるのが好ましい。
【0098】
また、第1保護シート11および偏光膜13の延伸方向は、一致しているのが好ましい。これにより、偏光シート10の偏光性能をより高めることができる。
【0099】
(第2保護シート12)
第2保護シート12は、第1保護シート11よりも複屈折が低い樹脂層であり、図2(d)、図3に示すように、偏光膜13の上面側(他方の面側)すなわち湾曲凸面(凸面)とされる側に積層され、これにより、偏光膜13の上面側を保護する保護層として機能する。
【0100】
この第2保護シート12は、第1保護シート11よりも低い複屈折を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、前述の通り、第1保護シート11がポリアミド系樹脂およびポリカーボネート系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成される場合、セルロース系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成されるものが挙げられる。セルロース系樹脂を主材料として構成される第2保護シート12とすることで、第2保護シート12を、確実に第1保護シート11よりも低い複屈折を有するものとし得る。
【0101】
セルロース系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができ、例えば、トリアセチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートのようなセルロースエステル、メチルセルロース、エチルセルロースのようなアルキルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのようなヒドロキシアルキルセルロース、ベンジルセルロースのようなアラルキルセルロース、シアンエチルセルロースのようなシアノアルキルセルロース、カルボキシエチルセルロースのようなカルボキシアルキルセルロース、アミノエチルセルロースのようなアミノアルキルセルロース等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、セルロース樹脂としては、セルロースエステルであることが好ましく、特に、トリアセチルセルロースであることが好ましい。セルロースエステル(特に、トリアセチルセルロース)は、複屈折が低く、また、透明性が高く、表面外観に優れることから、偏光シート10の湾曲凸面、すなわち樹脂層35と反対側の表面を構成する第2保護シート12の主材料として好ましく用いられる。
【0102】
第2保護シート12中に主材料として含まれる樹脂材料のガラス転移温度(Tg)は、第1保護シート11と同様に、100℃以上190℃以下であるのが好ましく、105℃以上155℃以下であるのがより好ましい。これにより、前記工程[3]における偏光シート10の熱曲げ加工を比較的容易に実施することができる。また、偏光シート10の耐久性、信頼性を優れたものとし得る。
【0103】
また、第2保護シート12には、主材料として含まれる樹脂材料以外に、他の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、特に限定されないが、例えば、主材料以外の樹脂材料や、染料等の着色剤、充填材、配向助剤、安定剤(熱安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤等)、可塑剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤および粘度調整剤等が挙げられる。
【0104】
この場合、第2保護シート12中の樹脂材料の含有量は、特に限定されないが、第2保護シート12の100質量部中、75質量部以上であるのが好ましく、85質量部以上であるのがより好ましい。樹脂材料の含有量を上記範囲内とすることにより、偏光シート10を、優れた強度を発揮するものとし得る。
【0105】
第2保護シート12の平均厚さは、特に限定されず、例えば、0.05mm以上0.5mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上0.4mm以下であるのが好ましい。
【0106】
(第1接合層16)
第1接合層16(第1接着剤層)は、偏光膜13と第1保護シート11とを接合する機能を有し、これにより、偏光シート10の耐久性の向上を図ることができる。
【0107】
第1接合層16を構成する接着剤(または粘着剤)として、本発明では、ウレタン系接着剤が用いられる。これにより、第1接合層16の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、第1接合層16を、形状変化に対する追従性に特に優れたものとし得る。そのため、本発明では、第1接合層16を構成する接着剤として、ウレタン系接着剤が用いられる。
【0108】
ここで、ウレタン系接着剤は、接着剤としての機能を発揮するために、その構成材料として、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含んでいる。このイソシアネート基は、空気中等の水と反応すると、カルバミン酸を経由して、二酸化炭素を生成して、アミノ基を形成する。
【0109】
また、前述の通り、第1保護シート11は、複屈折を有しており、特に、ポリアミド系樹脂およびポリカーボネート系樹脂等の樹脂材料を主材料として構成されると、第1保護シート11は、優れたガスバリア性を発揮する。
【0110】
このように、第1保護シート11が優れたガスバリア性を発揮する場合、第1接合層16に生成した二酸化炭素が第1接合層16中に残留し、これに起因して、第1接合層16に気泡が発生する。そして、この気泡の発生により、第1保護シート11の透明性の低下を招くと言う問題が生じる。特にこのような気泡の発生は、例えば、前述した偏光レンズの製造方法において、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施す場合のように、偏光シートを高温下に曝した際に、高頻度に認められ、そして、これは、第1接合層16中において、イソシアネート化合物に由来するイソシアネート基が残留しており、前記加熱処理の際に、残留したイソシアネート基が空気中等の水と反応することで生成された二酸化炭素に起因することが本発明者による検討により明らかとなっている。
【0111】
これに対して、本発明では、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光シート10を15分浸漬した後に、偏光シート10のヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足している。このように、本発明では、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足しており、前記加熱処理のように高温下に曝すことによる、第1保護シート11の透明性の低下が的確に抑制されており、偏光シート10が備える第1接合層16における気泡の発生が的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0112】
また、このような第1接合層16における気泡の発生の抑制は、第1接合層16に含まれるウレタン系接着剤の種類、すなわち、ウレタン系接着剤が二液架橋型または一液湿気架橋型である場合に応じて、例えば、以下のようにして実現し得る。
【0113】
すなわち、ウレタン系接着剤が、ポリイソシアネート化合物とポリオールとを含む二液架橋型のものである場合、ポリイソシアネート化合物とポリオールとが反応して、これら同士の間でウレタン結合が形成されることで、接着剤が硬化する。この二液架橋型のウレタン系接着剤では、通常、ポリイソシアネート化合物が空気中の水分等と反応して失活することを想定して、1.2倍程度の官能基等量で、ポリオールに対してポリイソシアネート化合物が接着剤中に含有されている。しかしながら、このような官能基等量でポリイソシアネート化合物がポリオールに対して多量にウレタン系接着剤に含まれていると、当然、このウレタン系接着剤で形成された接合層中には、未反応のイソシアネート基が残存する傾向を示す。そのため、このような接合層を備える偏光シートに対して、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施す場合のように、偏光シートを高温下に曝すと、接合層において、二酸化炭素が発生することに起因する気泡が生じてしまう。これに対して、本発明では、1.0倍程度の官能基等量、すなわち同官能基等量で、ポリオールに対してポリイソシアネート化合物を接着剤中に含有させることで、第1接合層16中に、未反応のイソシアネート基が残存するのを抑制させている。そのため、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施す場合のように、偏光シート10を高温下に曝したとしても、第1接合層16における気泡の発生が的確に抑制される。そのため、前記ヘイズ値を、0.05%以上1.00%以下の範囲内に設定することができる。
【0114】
また、ウレタン系接着剤が、ポリオールを含まずポリイソシアネート化合物として両末端ジイソシアネートを含む一液湿気架橋型のものである場合、両末端ジイソシアネートが空気中等の水と反応して、二酸化炭素と、アミノ基を有するアミノ基含有化合物とを生成する。そして、他の両末端ジイソシアネートと、このアミノ基含有化合物とが反応して、これら同士の間でウレア結合を形成することで、接着剤が硬化する。このように一液湿気架橋型のウレタン系接着剤では、通常、両末端ジイソシアネートが水と反応することで二酸化炭素が発生する。そのため、このような一液湿気架橋型のウレタン系接着剤に由来する接合層を備える偏光シートに対して、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施す場合のように偏光シートを高温下に曝すと、接合層中に残存する両末端ジイソシアネートと水とが反応することで、接合層において、二酸化炭素が発生することに起因する気泡が生じてしまう。これに対して、本発明では、第1接合層16を、両末端ジイソシアネートの他に、さらに、三官能イソシアネートを含む構成としている。これにより、第1接合層16において、3つのイソシアネート基が反応することで六員環が形成された化合物が生成され、両末端ジイソシアネートと水との反応が阻害される。そのため、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施す場合のように、偏光シート10を高温下に曝したとしても、第1接合層16における気泡の発生が的確に抑制される。そのため、前記ヘイズ値を、0.05%以上1.00%以下の範囲内に設定することができる。
【0115】
なお、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光シート10を15分浸漬した後に、偏光シート10のヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足していれば良いが、前記ヘイズ値は、好ましくは0.05%以上0.50%以下、より好ましくは0.05%以上0.20%以下であることを満足している。これにより、偏光シート10が備える第1接合層16における気泡の発生がより的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0116】
また、このようなヘイズ値を満足する偏光シート10を備える偏光レンズ30では、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に偏光レンズ30を15分浸漬した後に、偏光レンズ30のヘイズ値を測定したとき、前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることが好ましく、0.05%以上0.50%以下であることがより好ましい。これにより、偏光レンズ30が有する偏光シート10が備える第1接合層16における気泡の発生がより的確に抑制または防止されていると言うことができる。
【0117】
さらに、偏光シート10は、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に当該偏光シートを15分浸漬した後に、偏光シート10の密着力を測定したとき、前記密着力が下記要件Aを満足することが好ましい。
【0118】
すなわち、偏光シート10は、JIS K 6854―2に準拠して、偏光シート10を長さ200mm×幅25mmの大きさに切断し、次いで、140℃環境下で、偏光シート10の第1保護シート11の一端を持ち、180°の方向にて10mm/分の速度で、10mmの長さまで引き剥がしたときに測定される第1保護シート11の偏光膜13に対する密着力は、40N/25mm以上500N/25mm以下であることが好ましく、50N/25mm以上300N/25mm以下であることがより好ましく、80N/25mm以上250N/25mm以下であることがさらに好ましい(要件A)。
【0119】
偏光シート10に、気泡が発生していると、上述のように、偏光シート10の透明性が低下する傾向を示すが、この他に、第1接合層16の粘着力が低下する傾向を示す。これに対して、本発明では、偏光シート10を、比較的容易に前記要件Aを満足するものとし得ることから、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施した際に、偏光シート10にクラックが生じるのを的確に抑制または防止しつつ、第1接合層16の粘着力が低下するのを的確に抑制または防止することができる。したがって、第1接合層16における気泡の発生が的確に抑制されていると言える。
【0120】
また、第1接合層16の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。これにより、第1接合層16としての機能を、確実に付与することができる。
【0121】
(第2接合層17)
第2接合層17(第2接着剤層)は、偏光膜13と第2保護シート12とを接合する機能を有し、これにより、偏光シート10の耐久性の向上を図ることができる。
【0122】
第2接合層17を構成する接着剤(または粘着剤)としては、特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤のような水溶性接着剤等が挙げられる。中でも、ウレタン系接着剤が好ましい。これにより、第2接合層17の透明性、接着強度、耐久性をより優れたものとしつつ、形状変化に対する追従性を特に優れたものとし得る。
【0123】
なお、前述の通り、第2保護シート12は、第1保護シート11よりも複屈折が低く、セルロースエステル(特に、トリアセチルセルロース)等の樹脂材料を主材料として構成されると、第2保護シート12は、優れたガス透過性を発揮する。そのため、第2接合層17を構成する接着剤として、ウレタン系接着剤を用い、この第2接合層17において二酸化炭素が発生したとしても、この二酸化炭素を、第2保護シート12を介して、偏光シート10の外側に排出させることができる。そのため、第2接合層17における気泡の発生を的確に抑制または防止することができる。ただし、第2接合層17における気泡の発生をより確実に防止すると言う観点からは、第2接合層17を構成する接着剤としてウレタン系接着剤を用いる場合、第1接合層16で説明したウレタン系接着剤と同一または同種のものを用いることが好ましい。これにより、第2接合層17における気泡の発生を防止する効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0124】
この第2接合層17の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上60μm以下であるのが好ましく、10μm以上40μm以下であるのがより好ましい。これにより、第2接合層17としての機能を、確実に付与することができる。
また、偏光シート10は、その総厚が0.1mm以上2mm以下であるのが好ましい。
【0125】
なお、加熱処理を伴う熱曲げ加工や射出成形を施す場合の他、偏光レンズ30を、その最外層としてハードコート層を備えるものとするために、偏光シート10にハードコート層を形成する場合や、車内のダッシュボードのような高温となる空間にサングラス100が長時間配置されることを想定した場合においても、本発明では、前述の通り、偏光シート10が備える第1接合層16における気泡の発生が的確に抑制されているため、前記ヘイズ値を、0.05%以上1.00%以下の範囲内に設定することができる。
【0126】
以上、本発明の偏光シート、偏光レンズおよび光学部品について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0127】
例えば、本発明の偏光シートを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0128】
また、本発明の偏光シートは、前述した構成に加え、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0129】
より具体的には、例えば、本発明の偏光シートは、中間層や、レンズとしての度数を調整する度数調整層等を備えていてもよい。
【実施例0130】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0131】
1.偏光シートの製造
(実施例1)
まず、ポリビニルアルコール系フィルムを、水槽中で延伸しながら、染料を溶解した水溶液にて染色し、ホウ酸で処理した。その後、処理されたポリビニルアルコール系フィルムを水洗いし、乾燥した。これにより、厚さが35μmの偏光膜13を得た。
【0132】
一方で、ポリカーボネート系樹脂(三菱瓦斯化学工業社製、「ユーピロンE-2000」)を用い、ベント式単軸押出機による押出成形により、厚さ0.2mm、リタデーション100nmのシート状の第1保護シート11を得た。
【0133】
また、トリアセチルセルロースを主材料として構成される第2保護シート12として、フジタック(富士フイルム社製、「TD80UL」厚さ80mm)を用意した。
【0134】
次いで、第1保護シート11の一方の面上に、第1接着剤として二液型湿気硬化型ポリウレタン接着剤(主剤(ポリオール):三井化学社製、「タケラック A-520」、硬化剤(ポリイソシアネート化合物):三井化学社製、「タケネート A-50」、官能基等量;主剤:硬化剤=1.0:1.0)をバーコーターにて乾燥後の第1接合層16の厚さが20μmになるように塗布した。また、第2保護シート12の一方の面上に、第2接着剤として二液型湿気硬化型ポリウレタン接着剤(主剤(ポリオール):三井化学社製、「タケラック A-520」、硬化剤(ポリイソシアネート化合物):三井化学社製、「タケネート A-50」、官能基等量;主剤:硬化剤=1.0:1.0)をバーコーターにて乾燥後の第2接合層17の厚さが20μmになるように塗布した。
【0135】
次いで、第1接着剤および第2接着剤がそれぞれ塗布された第1保護シート11および第2保護シート12を、オーブンに入れ、第1接着剤および第2接着剤中の溶剤分が乾燥するまで加熱した。これにより、第1保護シート11の一方の面上に第1接合層16(第1接着剤層)が積層された第1積層体を得るとともに、第2保護シート12の一方の面上に第2接合層17(第2接着剤層)が積層された第2積層体を得た。
【0136】
その後、偏光膜13の一方の面上に、第1接合層16が接触するように、第1積層体を偏光膜13に積層し、偏光膜13の他方の面上に、第2接合層17が接触するように、第2積層体を偏光膜13に積層することで実施例1の偏光シート10を得た。この際、ラミネーター機のゴムロールを用いて、第1積層体、偏光膜13および第2積層体をそれぞれ圧着させて、偏光シート10の総厚を0.75mmとした。なお、偏光シート10を得た後に、30℃環境下で1週間養生することで、第1接合層16および第2接合層17にそれぞれ含まれる第1接着剤および第2接着剤を、完全硬化させた。
【0137】
(実施例2~実施例6、比較例1~比較例3)
偏光シート10が備える第1接合層16を形成するために用いるウレタン系接着剤として、表1に示すような官能基等量の関係となっているものを用いたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2~実施例6、比較例1~比較例3の偏光シート10を得た。
【0138】
なお、一液湿気架橋型ポリウレタン接着剤としては、両末端ジイソシアネート(三井化学社製、「LA2355」)と、三官能イソシアネート(DIC社製、「DN-902S」)とを備えるものを用いた。
【0139】
2.評価
各実施例および各比較例の偏光シートを、以下の方法で評価した。
【0140】
<1>偏光シートのヘイズ値の測定
まず、各実施例および各比較例の偏光シートについて、それぞれ、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に15分浸漬した。その後、この偏光シートのヘイズ値を、ヘイズメーター(日本電飾工業社製、「NDH4000」)を用いて測定した。
【0141】
<2>偏光シートにおける第1保護シートの密着力の測定
まず、各実施例および各比較例の偏光シートについて、それぞれ、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に15分浸漬した。その後、JIS K 6854―2に準拠して、偏光シートを長さ200mm×幅25mmの大きさに切断し、次いで、140℃環境下で、偏光シートの第1保護シートの一端を持ち、180°の方向にて10mm/分の速度で、10mmの長さまで引き剥がしたときに測定される第1保護シートの偏光膜に対する密着力を、引張試験機(島津製作所社製、「AG-10kNXplus」)を用いて測定した。
【0142】
<3>偏光レンズのヘイズ値の測定
まず、各実施例および各比較例の偏光シートについて、それぞれ、偏光シートの両面側、すなわち、第1保護シートの偏光膜とは反対側の面上に、また、第2保護シートの偏光膜とは反対側の面上にそれぞれポリオレフィンからなる保護フィルムをラミネート法により積層した。
【0143】
次いで、この偏光シートを、直径8cmに打ち抜いた後に、レマ成形機(真空成形機)(CR-32型)を用いて、150℃、10分間、吸引しつつ熱曲げ加工を行うことで、MDにおける曲率半径Rが80.5mmであり、TDにおける曲率半径Rが87.2mmである偏光シートとした。
【0144】
次いで、熱曲げがなされた偏光シート10から、保護フィルムを剥離させた後に、図2(d)に示す金型40を用いて、射出成形法により、偏光シート10の湾曲凹面(第1保護シート)側に、射出成型用光学樹脂(三菱瓦斯化学社製、「H―3000」)で構成される樹脂層を形成することで、偏光レンズを得た。
【0145】
そして、得られた偏光レンズについて、それぞれ、JIS K 7136:2000に準拠して、80℃の蒸留水に15分浸漬した。その後、この偏光レンズのヘイズ値を、ヘイズメーター(日本電飾工業社製、「NDH4000」)を用いて測定した。
【0146】
<4>偏光レンズにおける気泡の発生の有無の評価
まず、各実施例および各比較例の偏光シートについて、それぞれ、偏光シートの両面側、すなわち、第1保護シートの偏光膜とは反対側の面上に、また、第2保護シートの偏光膜とは反対側の面上にそれぞれポリオレフィンからなる保護フィルムをラミネート法により積層した。
【0147】
次いで、この偏光シートを、直径8cmに打ち抜いた後に、レマ成形機(真空成形機)(CR-32型)を用いて、150℃、10分間、吸引しつつ熱曲げ加工を行うことで、MDにおける曲率半径Rが80.5mmであり、TDにおける曲率半径Rが87.2mmである偏光シートとした。
【0148】
次いで、熱曲げがなされた偏光シート10から、保護フィルムを剥離させた後に、図2(d)に示す金型40を用いて、射出成形法により、偏光シート10の湾曲凹面(第1保護シート)側に、射出成型用光学樹脂(三菱瓦斯化学社製、「H―3000」)で構成される樹脂層を形成することで、偏光レンズを得た。
【0149】
そして、得られた偏光レンズにおける気泡の発生の有無を、目視にて観察し、気泡の発生が認められない場合を◎、気泡の発生が若干であるが認められる場合を〇、気泡の発生が確実に認められる場合を△、気泡の発生がより明らかに認められる場合を×として評価した。
【0150】
以上のようにして得られた各実施例および各比較例の偏光シートにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1に示すように、各実施例では、偏光シートにおける前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足しており、これにより、偏光レンズを得る際に、偏光レンズが備える偏光シートにおいて、気泡が発生するのを的確に抑制または防止し得る結果を示した。
【0153】
これに対して、各比較例では、偏光シートにおける前記ヘイズ値が0.05%以上1.00%以下であることを満足することができず、その結果、偏光レンズを得る際に、偏光レンズが備える偏光シートにおいて、気泡の発生が認められる結果を示した。
【符号の説明】
【0154】
10 偏光シート
11 第1保護シート
12 第2保護シート
13 偏光膜
16 第1接合層
17 第2接合層
20 フレーム
21 リム部
22 ブリッジ部
23 テンプル部
24 ノーズパッド部
30 偏光レンズ
35 樹脂層
40 金型
50 保護フィルム
100 サングラス
200 多層積層体
401 キャビティ
図1
図2
図3