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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158923
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】縫製装置
(51)【国際特許分類】
   D05B 73/08 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
D05B73/08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015826
(22)【出願日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】202110344293.5
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】森本 泰介
(72)【発明者】
【氏名】筏井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】中山 一真
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼村 暢
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150GA02
3B150JA32
3B150JA33
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成でタイミングベルトの緩み調整を行うことができる縫製装置を提供すること。
【解決手段】動力源と、前記動力源からの駆動力が伝達される入力軸と、前記入力軸に伝達された駆動力を出力する出力軸と、前記入力軸からの駆動力を前記出力軸へ伝達する伝達機構と、を有し、前記伝達機構は、前記出力軸に設けられ、前記出力軸と一体的に回転する第1歯車と、前記第1歯車と歯合した第2歯車と、前記第2歯車と一体的に回転する中間軸と、前記入力軸と前記中間軸との間に架け渡したタイミングベルトと、を有し、前記第2歯車は、前記第1歯車の円周方向に移動可能に配設されている縫製装置。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被縫製物に縫い目を形成する縫製機構を備えた縫製装置であって、
動力源と、
前記動力源からの駆動力が伝達される入力軸と、
前記入力軸に伝達された駆動力を出力する出力軸と、
前記入力軸からの駆動力を前記出力軸へ伝達する伝達機構と、を有し、
前記伝達機構は、
前記出力軸に設けられ前記出力軸と一体的に回転する第1歯車と、
前記第1歯車と歯合した第2歯車と、
前記第2歯車と一体的に回転する中間軸と、
前記入力軸と前記中間軸との間に架け渡したタイミングベルトと、を有し、
前記第2歯車は、前記第1歯車の円周方向に移動可能に配設されている
縫製装置。
【請求項2】
前記中間軸をその端部で支持する支持部材が設けられ、
前記支持部材又は前記支持部材を取り付ける縫製装置の所定の取付部のいずれか一方に、前記支持部材を前記取付部に固定するために配設された固定ボルトと、
前記支持部材又は前記取付部のいずれか他方に、前記固定ボルトが挿通され、自己の曲率中心が前記第1歯車の回転中心と一致した円弧状の長孔と、を有し、
前記支持部材は、前記長孔の曲率中心を軸として回動可能に前記取付部に取り付けられている
請求項1に記載の縫製装置。
【請求項3】
前記取付部は、自己の曲率中心が前記第1歯車の回転中心と一致した円弧状に形成され前記接触面と摺接する荷重受け面を有する
請求項2に記載の縫製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
針とルーパーとで被縫製物に縫い目を形成する単環縫い式縫製装置が知られている(特許文献1を参照)。この縫製装置では、モータの回転運動を往復運動に変換する運動変換機構を介して針に伝達する一方、その回転運動を複数のプーリーとタイミングベルトとを含む回転伝達機構を介してルーパーに伝達している。針が、被縫製物をその一面側から他面側に貫いて、再び一面側に戻るように往復動作をする一方、ルーパーは被縫製物の他面側で回転動作する。針先側に設けられた挿通孔に縫製用糸が通された針が、繰り返し被縫製物の順次の部位を貫いていく針の往復動作と、被縫製物の順次の送り動作とが同期して繰り返される。針によって被縫製物の一面側から他面側に貫通した縫製用糸を、ルーパーがその爪で掬い取って回転するうちに、縫製用糸は所定のループを描く。このように描かれたループを、次に被縫製物を貫通した縫製用糸が通ってまたループを描く。この結果、ループが絡んで連なった既定の縫い目が被縫製物の他面側に形成される。プーリーとタイミングベルトとを含む回転伝達機構では、タイミングベルトの緩みを調整するための調整機構が設けられる。この調整機構としては、タイミングベルトに対してテンションローラーを押し付けてそのタイミングベルトの径路長を調節するテンショナーが一般的である。また、一方のプーリーと他方のプーリーとがタイミングベルトで結ばれた回転伝達機構で、一方のプーリーと同軸のモータの軸と他方のプーリーの軸との軸間距離を調節してタイミングベルトの緩みを調整するようにした調整機構が知られている。(特許文献2、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6804563号公報
【特許文献2】特許第3125480号公報
【特許文献3】特開2011-036403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1におけるような縫製装置において、テンションローラーを用いた一般的なテンショナーをルーパーへの回転伝達機構に適用すると、ルーパーの支持ユニットであるポストベッドが大型化して、被縫製物の細部を縫製することが難しくなる。特許文献2や特許文献3におけるように、それ自体が重量物であるモータの取付位置を調節する手法は、タイミングベルトの緩みに係る微妙な調節には不向きである。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされものであり、コンパクトな構成でタイミングベルトの緩み調整を行うことができる縫製装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 被縫製物に縫い目を形成する縫製機構を備えた縫製装置(例えば、後述する縫製装置1)であって、動力源(例えば、後述するモーター5)と、前記動力源からの駆動力が伝達される入力軸(例えば、後述する下軸12)と、前記入力軸に伝達された駆動力を出力する出力軸(例えば、後述する回転軸21)と、前記入力軸からの駆動力を前記出力軸へ伝達する伝達機構(例えば、後述する伝達機構35)と、を有し、前記伝達機構は、前記出力軸に設けられ前記出力軸と一体的に回転する第1歯車(例えば、後述する被動歯車20)と、前記第1歯車と歯合した第2歯車(例えば、後述する中間歯車19)と、前記第2歯車と一体的に回転する中間軸(例えば、後述する中間軸16)と、前記入力軸と前記中間軸との間に架け渡したタイミングベルト(例えば、後述するタイミングベルト18)と、を有し、前記第2歯車は、前記第1歯車の円周方向に移動可能に配設されている縫製装置。
【0007】
(2) 前記中間軸をその端部で支持する支持部材(例えば、後述する回動支持板24、24a、24b)が設けられ、前記支持部材又は前記支持部材を取り付ける縫製装置の所定の取付部(例えば、後述する取付部29)のいずれか一方に、前記支持部材を前記取付部に固定するために配設された固定ボルト(例えば、後述する第1固定ボルト27、第2固定ボルト28)と、前記支持部材又は前記取付部のいずれか他方に、前記固定ボルトが挿通され、自己の曲率中心が前記第1歯車の回転中心と一致した円弧状の長孔(例えば、後述する第1長孔25、第2長孔26)と、を有し、前記支持部材は、前記長孔の曲率中心を軸として回動可能に前記取付部に取り付けられている上記(1)の縫製装置。
【0008】
(3) 前記支持部材は、自己の曲率中心が前記第1歯車の回転中心と一致した円弧状の接触面(例えば、後述する接触面30)を前記入力軸側に有し、前記取付部は、自己の曲率中心が前記第1歯車の回転中心と一致した円弧状に形成され前記接触面と摺接する荷重受け面(例えば、後述する荷重受け面31)を有する上記(2)の縫製装置。
【発明の効果】
【0009】
(1)の縫製装置では、コンパクトな構成で、入力軸と出力軸の位置を変更することなくタイミングベルトの緩み(張力)を調整することができる。
【0010】
(2)の縫製装置では、支持部材を長孔に沿って移動させることでタイミングベルトの張力を容易に調整できる。
【0011】
(3)の縫製装置では、取付部の荷重受け面によってタイミングベルトの張力変化による荷重を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態としての縫製装置を示す模式図である。
図2図1の縫製装置の下軸からルーパーへの駆動力伝達機構の一つの状態を示す図である。
図3図2の駆動力伝達機構の他の状態を示す図である。
図4図2の駆動力伝達機構が一つの状態から他の状態へ遷移する状況を説明する図である。
図5図2の駆動力伝達機構の中間軸を支持する回動支持部材まわりの構成を説明する図である。
図6図5の回動支持部材を取り付ける取付部の荷重受け面まわりの構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態としての縫製装置1を示す模式図である。縫製装置1における縫製装置本体2は、アーム部2aとベッド部2bとが両者の接続部分で連なって一体に構成されている。アーム部2aには、縫製用の針3とルーパー4の作動に係る動力源であるモーター5が設けられている。
【0014】
モーター5の軸にベルトとプーリー等よりなる一般的な回転伝達機構5aを介して接続された上軸6の回転運動がクランク機構7を含む運動変換機構8によって往復運動に変換されて針3に伝達される。針3は、運動変換機構8における往復運動を出力する部材である摺動ロッド9の端部に取り付けられている。
【0015】
針3は、針先が同方向を向くようして並行に針フォルダー10に取り付けられた2本の針3a、3bを含み、針フォルダー10が摺動ロッド9の端部に取り付けられている。2本の針3a、3bそれぞれは、それらの糸通し孔に糸が挿通された状態で、同様の往復運動により、不図示の被縫製物に縫い目を形成する。
【0016】
上軸6の回転運動が、上軸6に設けられた上軸出力プーリー11と下軸12に設けられた下軸入力プーリー13との間に架け渡された動力伝達ベルト14によって、ベッド部2b内の下軸12に伝達される。下軸12に伝達された回転運動が、下軸12に設けられた下軸出力プーリー15と中間軸16に設けられた中間軸入力プーリー17との間に架け渡されたタイミングベルト18によって、中間軸16に伝達される。
【0017】
中間軸16に伝達された回転運動は、中間軸16に設けられた中間歯車19と歯合する被動歯車20に伝達されて、被動歯車20が設けられた回転軸21が回転する。回転軸21がルーパー4を回転させる。後述するように、下軸(入力軸)12からの駆動力を回転軸(出力軸)21へと伝達する部分を、伝達機構35と称する。
【0018】
ルーパー4は、縫製装置本体2のベッド部2bから針3の針先に向けて突出した概略中空角柱状のポストベッド22に設けられる。ポストベッド22は、その突出端側が平坦となって不図示の被縫製物を載置する載置部23が形成されている。
【0019】
一つの形態では、載置部23は、ルーパー4の回転軸21を軸支しルーパー4の所定部分を覆って保護する後述するケーシング34の頂部に形成される。この載置部23には、針3a、3bがポストベッド22の中空内部に進入ないし離脱することが可能な開口(図1では示されない)が設けられている。
【0020】
ルーパー4は、共通の回転軸21に同じ回転位相で軸支された2つのルーパー4a、4bが被動歯車20を挟んで軸方向に重なるように構成されている。回転軸21は、ポストベッド22内における載置部23の裏面に臨む位置に設けられている。回転軸21によって回転するルーパー4a、4bは、2本の針3a、3bにそれぞれ対応して、ポストベッド22の突出端側に臨んで位置している。2つのルーパー4a、4bは共通の回転軸21の周りに回動して、双方とも同様に機能する。以下の説明では、適宜、2つのルーパー4a、4bを、適宜、代表的にルーパー4と称する。
【0021】
図2は、図1の縫製装置1の下軸12からルーパー4への駆動力伝達機構の一つの状態を示す図である。ベッド部2bから立ち上がったポストベッド22の中に配置されるタイミングベルト18が、下軸12の下軸出力プーリー15から中間軸16の中間軸入力プーリー17へと架け渡されて、下軸12から中間軸16へと駆動力が伝達される。中間軸16に伝達された駆動力は、中間軸16に設けられた第2歯車としての中間歯車19と歯合する第1歯車としての被動歯車20に伝達される。これにより、この被動歯車20が設けられた回転軸21が回転する。回転軸21は、入力軸としての下軸12からの回転駆動力をルーパー4に出力する出力軸である。
【0022】
中間軸16は支持部材としての回動支持板24に軸端が固定されている。回動支持板24は、曲率中心が回転軸21の軸心に一致し曲率半径を異にする2つの円弧状長孔である第1長孔25と第2長孔26とを有する。第1長孔25及び第2長孔26には、それぞれ対応する第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28が挿通される。第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28は、ポストベッド22の外殻に設けられた強度部材である取付部29に締結される。
【0023】
回動支持板24は、中間軸16の軸端が固定されている部位から離隔した下軸12側に、自己の曲率中心が被動歯車20の回転中心に一致した円弧状の接触面30を有する。ポストベッド22の取付部29には、接触面30に対応して、自己の曲率中心が被動歯車20の回転中心(回転軸21の軸心)と一致した円弧状の摺接面である荷重受け面31が設けられている。タイミングベルト18の張力が変化して回動支持板24に大きな荷重がかかることがあっても、回動支持板24の接触面30が荷重受け面31によって支えられる。
【0024】
回動支持板24は、第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28を緩めた状態で、第1長孔25及び第2長孔26に案内されるようにして、一定範囲で移動可能である。回動支持板24の移動過程では、接触面30が、第1長孔25及び第2長孔26の共通の曲率中心である回転軸21の軸心、即ち、被動歯車20の中心を中心として回動する。第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28を締めた位置で、回動支持板24の位置が定まる。
【0025】
図2の状態では、回動支持板24の位置は、正面視で時計方向に回動した限界位置にある。この限界位置では、第1固定ボルト27が第1長孔25の右端に当接し、第2固定ボルト28が第2長孔26の右端に当接する。
【0026】
一方、ポストベッド22の外殻の頂部は平坦部32を成している。平坦部32の直上にベース部33が設けられる。ベース部33上に、回転軸21により回転されるルーパー4を支持しその所定部分を覆って保護するケーシング34が固定される。
【0027】
ケーシング34内のルーパー4への駆動力伝達系統について、ルーパー4側から駆動力の源へと遡って伝達経路を示せば、次のとおりである。ルーパー4→回転軸(出力軸)21→被動歯車(第1歯車)20→中間歯車(第2歯車)19→中間軸16→タイミングベルト18→下軸出力プーリー15→下軸(入力軸)12→下軸入力プーリー13→動力伝達ベルト14→上軸出力プーリー11→上軸6→回転伝達機構5a→モーター5。なお、上述の伝達経路のうち、下軸(入力軸)12からの駆動力を回転軸(出力軸)21へと伝達する部分が、本実施形態における伝達機構35を構成している。
【0028】
タイミングベルト18の緩み具合、即ち、張力の調整は、モーター5の回転がルーパー4に適切に伝達されるために重要なファクターとなる。タイミングベルト18は、経年変化で伸びを生じた場合や、定期メンテナンスで交換した場合などに際して、その緩み具合が調節される。
【0029】
図3は、図2の駆動力伝達機構の他の状態を示す図である。図3において、図2との対応部には同一の符号を附して示し、それら各部については、適宜、図2における説明を援用する。図3の状態では、回動支持板24の位置は、正面視で反時計方向に回動した限界位置にある。この限界位置では、第1固定ボルト27が第1長孔25の左端に当接し、第2固定ボルト28が第2長孔26の左端に当接する。
【0030】
回動支持板24が、図2の位置から図3の位置に回動しても、第1長孔25及び第2長孔26の曲率中心が回転軸21の軸心に一致しているため、回転軸21の被動歯車(第1歯車)20と中間軸16の中間歯車(第2歯車)19との軸間距離は一定に維持される。このため、回動支持板24が移動しても、被動歯車(第1歯車)20と中間歯車(第2歯車)19との歯合は正規の状態に維持され、ルーパー4を回転させる回転軸21への駆動力の伝達には支障がない。
【0031】
図4は、図2の駆動力伝達機構が一つの状態から他の状態へ遷移する状況を説明する図である。図4において、図2との対応部には同一の符号を附して示し、それら各部については、適宜、図2における説明を援用する。図4では、回動支持板24について、図2の位置にある場合が実線で示され、図3の位置にある場合が二点鎖線で示されている。タイミングベルト18については、図2の位置にある場合が破線で示され、図3の位置にある場合が二点鎖線で示されている。図示のように、回動支持板24は実線図示の第1位置から正面視で反時計方向に回動した二点鎖線図示の第2位置までが移動可能範囲である。回動支持板24が第1位置にある場合と第2位置にある場合とでは、下軸(入力軸)12と中間軸16との軸間距離が異なる。
【0032】
即ち、回動支持板24が第1位置から第2位置へと回動するに伴って、下軸(入力軸)12と中間軸16との軸間距離が増す。即ち、下軸(入力軸)12の下軸出力プーリー15に対して中間軸16の中間軸入力プーリー17が遠ざかる。これにより、下軸出力プーリー15と中間軸入力プーリー17との間に架け渡されたタイミングベルト18は、その緩みが減少して張力を増す。このため、ポストベッド22の側方にテンションローラーなどを設けないコンパクトな構成で、下軸(入力軸)12と回転軸(出力軸)21との位置を変更することなく、タイミングベルト18の緩みを調節することができる。
【0033】
図5は、図2の駆動力伝達機構の中間軸16を支持する回動支持板24まわりの構成を説明する図である。図5において、図2との対応部には同一の符号を附して示し、それら各部については、適宜、図2における説明を援用する。図5では、回動支持板24が、中間軸16の一端側の回動支持板24aと、中間軸16の他端側の回動支持板24bとの一対のものである様子が示されている。
【0034】
また、図5では、説明の便宜上、一対の回動支持板24a、24bを、取付部29から分離して示している。回動支持板24aが、図2を参照して上述の回動支持板24である。回動支持板24a、24bの正面視での形状・寸法は鏡面対称である。回動支持板24aの接触面30は、板状の回動支持板24aの厚み寸法の幅をもち、曲率中心を回転軸21の軸心とする弧状の湾曲面である。
【0035】
回動支持板24aの第1長孔25及び第2長孔26に対応して第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28が挿通され、第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28によって回動支持板24aが取付部29に取り付けられる。
【0036】
図6は、図5の回動支持板24aを取り付ける取付部29の荷重受け面31まわりの構成を説明する図である。図6において、図2との対応部には同一の符号を附して示し、それら各部については、適宜、図2における説明を援用する。取付部29の弧状に湾曲した荷重受け面31の曲率中心は回転軸21の軸心であり、回動支持板24aの湾曲した接触面30と曲率中心が一致している。
【0037】
即ち、荷重受け面31は、回動支持板24aの接触面30に沿うように円弧状に湾曲している。このため、荷重受け面31は、回動支持板24aが回転軸21の軸心の周りで回動するときの何れの移動位置にあっても、回動支持板24aの接触面30に隙間なく当接して回動支持板24aを支承する。回動支持板24bについても同様である。このため、回動支持板24a、24bは、タイミングベルト18の張力が変化して荷重が増加することがあっても、荷重受け面31に確実に支持されてその荷重に抗することができる。
【0038】
本実施形態の縫製装置、ルーパーの位置決め方法によれば、以下の効果を奏する。
【0039】
(1)の縫製装置1では、動力源としてのモーター5と、モーター5からの駆動力が伝達される入力軸としての下軸12と、下軸12に伝達された駆動力を出力する出力軸としての回転軸21と、下軸12からの駆動力を回転軸21へ伝達する伝達機構35と、を有し、伝達機構35は、回転軸21に設けられ回転軸21と一体的に回転する第1歯車としての被動歯車20と、被動歯車20と歯合した第2歯車としての中間歯車19と、中間歯車19と一体的に回転する中間軸16と、下軸12と中間軸16との間に架け渡したタイミングベルト18と、を有し、中間歯車19は、前記第1歯車の円周方向に移動可能に配設されている。第1歯車としての被動歯車20と第2歯車としての中間歯車19との歯合が維持されたままで、入力軸としての下軸12と中間軸16との軸間距離を変えてタイミングベルト18の緩み(張力)を調整することができる。この調整に際して、入力軸としての下軸12と出力軸としての回転軸21の位置は変わらない。タイミングベルト18の張力の調整にテンションローラーなどを必要とせず、入力軸としての下軸12の位置も変わらない構成であるため、縫製装置1のコンパクト化がはかられる。
【0040】
(2)の縫製装置1では、中間軸16をその端部で支持する支持部材としての回動支持板24、24a、24bが設けられ、回動支持板24、24a、24b又は回動支持板24、24a、24bを取り付ける縫製装置の所定の取付部29のいずれか一方に、回動支持板24、24a、24bを取付部29に固定するために配設された第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28と、回動支持板24、24a、24b又は取付部29のいずれか他方に、第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28が挿通され、自己の曲率中心が第1歯車としての被動歯車20回転中心と一致した円弧状の長孔である第1長孔25及び第2長孔26と、を有し、回動支持板24、24a、24bは、第1長孔25及び第2長孔26の曲率中心を軸として回動可能に取付部29に取り付けられている。このため、回動支持板24、24a、24bを第1長孔25及び第2長孔26に沿って移動させることで、下軸(入力軸)12の下軸出力プーリー15と中間軸16の中間軸入力プーリー17との軸間距離を変更して、タイミングベルト18の張力を容易に調整できる。
【0041】
(3)の縫製装置1では、支持部材としての回動支持板24、24a、24bは、自己の曲率中心が第1歯車としての被動歯車20の回転中心と一致した円弧状の接触面30を入力軸としての下軸12側に有し、取付部29は、自己の曲率中心が被動歯車20の回転中心と一致した円弧状に形成され接触面30と摺接する荷重受け面31を有する。このため、回動支持板24、24a、24bは、取付部29の荷重受け面31によってタイミングベルト18の張力変化による荷重に十分に抗することができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限られない。本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜変更してもよい。例えば、上述の実施形態では、回動支持板24a、24bに第1長孔25及び第2長孔26を設け、取付部29に第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28を設けたが、回動支持板24a、24bに第1固定ボルト27及び第2固定ボルト28を設け、取付部29に第1長孔25及び第2長孔26を設けるようにしてもよい。この場合も、回動支持板24、24a、24bを取付部29側に設けられた第1長孔25及び第2長孔26に沿って移動させることでタイミングベルト18の張力を容易に調整できる。
【符号の説明】
【0043】
1…縫製装置
2…縫製装置本体
2a…アーム部
2b…ベッド部
3、3a、3b…針
4、4a、4b…ルーパー
5…モーター
5a…回転伝達機構
6…上軸
7…クランク機構
8…運動変換機構
9…摺動ロッド
10…針フォルダー
11…上軸出力プーリー
12…下軸(入力軸)
13…下軸入力プーリー
14…動力伝達ベルト
15…下軸出力プーリー
16…中間軸
17…中間軸入力プーリー
18…タイミングベルト
19…中間歯車(第2歯車)
20…被動歯車(第1歯車)
21…回転軸(出力軸)
22…ポストベッド
23…載置部
24、24a、24b…回動支持板(支持部材)
25…第1長孔
26…第2長孔
27…第1固定ボルト
28…第2固定ボルト
29…取付部
30…接触面
31…荷重受け面
32…平坦部
33…ベース部
34…ケーシング
35…伝達機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6