(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158946
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ガス処理装置及び方法、並びに、二酸化炭素回収システム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/62 20060101AFI20221006BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20221006BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20221006BHJP
B01D 53/46 20060101ALI20221006BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20221006BHJP
B01D 53/81 20060101ALI20221006BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221006BHJP
【FI】
B01D53/62 ZAB
B01D53/86 200
B01D53/78
B01D53/46
B01D53/14 100
B01D53/14 210
B01D53/81
B01D53/14 311
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023271
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2021063626
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】村岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】藤田 己思人
(72)【発明者】
【氏名】村井 伸次
(72)【発明者】
【氏名】森垣 勇人
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 理
(72)【発明者】
【氏名】加藤 康博
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】村松 武彦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 遼介
(72)【発明者】
【氏名】半田 優介
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D148
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AA40
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4D002AC03
4D002AC04
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4D002CA13
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4G146JC21
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4G146JC28
4G146JC36
4G146JC40
4G146JD03
(57)【要約】
【課題】排ガスに対して二酸化炭素分離等の処理を行う処理剤(吸収溶媒等)への酸素の混入を抑制し、これにより処理剤の性能を良好に維持できるガス処理装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態によれば、ガス処理装置は、排ガスGに含まれる酸素を除去する酸素除去器2と、酸素除去器2によって酸素を除去された前処理済み排ガスG(P)を処理剤としての二酸化炭素吸収溶媒Sで処理するガス処理器3と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去器と、
前記酸素除去器によって酸素を除去された前処理済み排ガスを処理剤で処理するガス処理器と、を備える、ガス処理装置。
【請求項2】
前記酸素除去器は、前記排ガスにおける酸素濃度を低減させる、請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項3】
前記酸素除去器は、前記排ガスと酸素吸収溶媒とを接触させて前記排ガスに含まれる酸素を前記酸素吸収溶媒に吸収させることにより、酸素を除去する、請求項1又は2に記載のガス処理装置。
【請求項4】
前記酸素吸収溶媒は、二酸化炭素を吸収済みである、請求項3に記載のガス処理装置。
【請求項5】
前記酸素吸収溶媒は、アミン系溶媒、シリコーンオイル、及びイオン性液体のうちの少なくとも一つを含む、請求項3又は4に記載のガス処理装置。
【請求項6】
前記酸素除去器の上流側に配置され、前記排ガスを冷却する熱交換器をさらに備える、請求項3乃至5のいずれかに記載のガス処理装置。
【請求項7】
前記酸素除去器は、前記排ガスを非液体の脱酸素材に対して通過させることにより、酸素を除去する、請求項1又は2に記載のガス処理装置。
【請求項8】
前記脱酸素材は、鉄、銅、鉛、銀、ゼオライト及び活性炭のうちの少なくとも一つを含む、請求項7に記載のガス処理装置。
【請求項9】
前記脱酸素材は、粒状、ハニカム形状、多孔質状、及びこれら形状のうちの少なくとも2つの組合せである、請求項7又は8に記載のガス処理装置。
【請求項10】
前記酸素除去器と前記ガス処理器との間に設けられ、前記排ガスを冷却する熱交換器をさらに備える、請求項7乃至9のいずれかに記載のガス処理装置。
【請求項11】
前記ガス処理器は、前記処理剤としての二酸化炭素吸収溶媒と前記前処理済み排ガスとを接触させて前記前処理済み排ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸収溶媒に吸収させることにより、前記前処理済み排ガスから二酸化炭素を分離する吸収器である、請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項12】
前記酸素除去器は、前記排ガスと酸素吸収溶媒とを接触させて前記排ガスに含まれる酸素を前記酸素吸収溶媒に吸収させることにより、酸素を除去するようになっており、前記酸素吸収溶媒として、前記ガス処理器で使用された後の前記二酸化炭素吸収溶媒を使用する、請求項11に記載のガス処理装置。
【請求項13】
前記酸素除去器と前記ガス処理器との間の流路を流れる前記前処理済み排ガスにおける酸素濃度を検出する酸素濃度検出器をさらに備える、請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項14】
前記酸素除去器は、並列に配置される複数の酸素除去器を備え、
前記酸素濃度検出器が検出する酸素濃度が所定値以上である場合に、前記複数の酸素除去器のうちの使用中の一部の酸素除去器を未使用の酸素除去器に切り替えるか、又は、前記複数の酸素除去器のうちの使用中の一部の酸素除去器を未使用の酸素除去器に切り替えることを促す通知を生成する、請求項13に記載のガス処理装置。
【請求項15】
前記酸素除去器は、前記排ガスと酸素吸収溶媒とを接触させて前記排ガスに含まれる酸素を前記酸素吸収溶媒に吸収させることにより、酸素を除去し、前記酸素吸収溶媒を循環させて繰り返し使用するようになっており、
前記酸素濃度検出器が検出する酸素濃度が所定値以上である場合に、前記酸素吸収溶媒に、希釈用の酸素吸収溶媒を供給することで、前記酸素吸収溶媒に含まれる酸素の酸素濃度を低下させる、請求項13に記載のガス処理装置。
【請求項16】
前記酸素除去器は、前記排ガスに水素ガスを供給する水素ガス供給部を有し、前記水素ガス供給部からの前記水素ガスを前記排ガスと混ぜ合わせ、前記排ガスに含まれる酸素と前記水素ガスに含まれる水素とを化学反応させることで、前記排ガスから酸素を除去する、請求項1に記載のガス処理装置。
【請求項17】
前記酸素除去器は、金属触媒を含む除去部を有し、前記除去部における金属触媒で前記排ガスに含まれる酸素と前記水素ガスに含まれる水素とを化学反応させる、請求項16に記載のガス処理装置。
【請求項18】
排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去工程と、
前記酸素除去工程で酸素を除去された前処理済み排ガスを処理剤で処理するガス処理工程と、を備える、ガス処理方法。
【請求項19】
排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去器と、
二酸化炭素吸収溶媒と、前記酸素除去器によって酸素を除去された前処理済み排ガスとを接触させて前記前処理済み排ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸収溶媒に吸収させることにより、前記前処理済み排ガスから二酸化炭素を分離する吸収器と、
前記吸収器から排出された前記二酸化炭素吸収溶媒から二酸化炭素を放散させ、二酸化炭素を放散した前記二酸化炭素吸収溶媒と、二酸化炭素を含む再生器排出ガスとを排出する再生器と、を備える、二酸化炭素回収システム。
【請求項20】
前記吸収器は、前記再生器から排出された前記二酸化炭素吸収溶媒を前記前処理済み排ガスと接触させる、請求項19に記載の二酸化炭素回収システム。
【請求項21】
排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去工程と、
二酸化炭素吸収溶媒と、前記酸素除去工程によって酸素を除去された前処理済み排ガスとを接触させて前記前処理済み排ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸収溶媒に吸収させることにより、前記前処理済み排ガスから二酸化炭素を分離する吸収工程と、
前記吸収工程後の前記二酸化炭素吸収溶媒から二酸化炭素を放散させ、二酸化炭素を放散した前記二酸化炭素吸収溶媒と、二酸化炭素を含む再生器排出ガスとを排出する再生工程と、を備える、二酸化炭素回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ガス処理装置及び方法、並びに、二酸化炭素回収システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化に対する有効な対策の一つとして、二酸化炭素回収貯蔵技術(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)が注目されている。特に二酸化炭素ガスを大量に発生させる媒体(火力発電所や製鉄所、セメント工場等)に対して、CCS設備を利用する検討が世界中で行われている。
【0003】
CCS技術の一つに、二酸化炭素を含む排ガスと吸収溶媒とを接触させて二酸化炭素を分離、回収する化学吸収法がある。この手法で用いる吸収溶媒は、例えばシリコーンオイルやアミン系溶液、イオン性溶液等である。
【0004】
排ガスに含まれる成分は、排ガスを排出する媒体や排ガスを生成する原料によって変化する。しかしながら、多くの種類の排ガスは、二酸化炭素以外の成分として、窒素ガスや酸素ガスを共通して含んでいる。
【0005】
酸素ガスを含む排ガスがCCS設備に導入された場合、二酸化炭素を分離する工程において、酸素ガスも吸収溶媒に吸収される。このように酸素ガスが吸収溶媒に吸収されると、吸収溶媒で酸素ガスの吸収反応が生じ、吸収溶媒が酸化(分解)し得る。このような酸化(分解)は、吸収溶媒の成分濃度を減少させ得る。そのため、このような酸化(分解)は、吸収溶媒の二酸化炭素ガスを吸収する性能を低下させ得る。その結果、排ガス中の二酸化炭素ガスを望ましい状態で分離、回収できなくなる状況が生じ得る。
【0006】
また、吸収溶媒に吸収された酸素ガスも同伴される場合、最終的に回収される製品としての二酸化炭素中に酸素が混入することになる。この場合、二酸化炭素の純度が低下し得るため、品質が低下する状況も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件発明者は、酸素ガスを含まない窒素ガスリッチの二酸化炭素含有ガスに吸収溶媒を繰り返し接触させる試験と、酸素ガスリッチの二酸化炭素含有ガスに吸収溶媒を繰り返し接触させる試験とを行った。その結果、前者では、吸収溶媒は分解せず、後者では、分解が生じることを確認した。また、分解の程度は、酸素の分圧に応じて変化することも知見した。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、排ガスに対して二酸化炭素分離等の処理を行う処理剤(吸収溶媒等)への酸素の混入を抑制でき、これにより処理剤の性能を良好に維持できるガス処理装置及び方法、並びに、二酸化炭素回収システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態において、ガス処理装置は、排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去器と、前記酸素除去器によって酸素を除去された前処理済み排ガスを処理剤で処理するガス処理器と、を備える。
【0011】
一実施の形態において、ガス処理方法は、排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去工程と、前記酸素除去工程で酸素を除去された前処理済み排ガスを処理剤で処理するガス処理工程と、を備える。
【0012】
一実施の形態において、二酸化炭素回収システムは、排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去器と、二酸化炭素吸収溶媒と、前記酸素除去工程によって酸素を除去された前処理済み排ガスとを接触させて前記前処理済み排ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸収溶媒に吸収させることにより、前記前処理済み排ガスから二酸化炭素を分離する吸収器と、前記吸収器から排出された前記二酸化炭素吸収溶媒から二酸化炭素を放散させ、二酸化炭素を放散した前記二酸化炭素吸収溶媒と、二酸化炭素を含む再生器排出ガスとを排出する再生器と、を備える。
【0013】
一実施の形態において、二酸化炭素回収方法は、排ガスに含まれる酸素を除去する酸素除去工程と、二酸化炭素吸収溶媒と、前記酸素除去工程によって酸素を除去された前処理済み排ガスとを接触させて前記前処理済み排ガスに含まれる二酸化炭素を前記二酸化炭素吸収溶媒に吸収させることにより、前記前処理済み排ガスから二酸化炭素を分離する吸収工程と、前記吸収工程後の前記二酸化炭素吸収溶媒から二酸化炭素を放散させ、二酸化炭素を放散した前記二酸化炭素吸収溶媒と、二酸化炭素を含む再生器排出ガスとを排出する再生工程と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排ガスに対して二酸化炭素分離等の処理を行う処理剤への酸素の混入を抑制でき、これにより処理剤の性能を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図2】第2の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図3】第3の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図4】第4の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図5】第5の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図6】第6の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図7】第7の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【
図8】第8の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して各実施の形態を詳細に説明する。
【0017】
<<第1の実施の形態>>
図1は、第1の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS1を示す図である。
【0018】
<二酸化炭素回収システム>
まず、二酸化炭素回収システムS1の概略構成を説明する。
【0019】
図1に示す二酸化炭素回収システムS1は、排ガスライン1と、酸素除去器2と、吸収器3と、リッチ液移送ポンプ4と、再生熱交換器5と、再生器6と、リーン液移送ポンプ7と、リーン液クーラ8と、再生器出口クーラ9と、再生器出口セパレータ10と、吸収器出口クーラ11と、吸収器出口セパレータ12と、制御部30と、を備えている。
【0020】
排ガスライン1は、図示しない排ガス排出設備から排出される燃焼排ガス等の排ガスGを酸素除去器2を介して吸収器3に導入する流路である。排ガス排出設備は、例えば石炭火力発電所等の発電所や、製鉄所や清掃工場等の工場や、ごみ焼却所や製造設備等の燃焼設備でもよい。
【0021】
酸素除去器2は、排ガスライン1から供給される排ガスGから酸素を除去し、酸素が除去された前処理済み排ガスG(P)を吸収器3に送るものである。詳しくは、酸素除去器2は、排ガスから酸素を除去することにより酸素濃度を低減させるが、必ずしも排ガスにおける酸素濃度を低減させなくてもよい。酸素除去器2の詳しい構成については後述する。
【0022】
吸収器3は、酸素除去器2を通過した前処理済み排ガスG(P)と、処理剤としての二酸化炭素吸収溶媒Sとを気液接触させて、二酸化炭素吸収溶媒Sに二酸化炭素を吸収させる。これにより、吸収器3は、前処理済み排ガスG(P)から二酸化炭素を分離するものである。
【0023】
図1における吸収器3は、一例として充填層方式の向流型気液接触装置により構成され、充填層3aと、その下方に位置する液溜め部3bとを有する。吸収器3は、前処理済み排ガスG(P)を導入するためのガス導入口を、充填層3aの下方に有し、リーン溶媒である二酸化炭素吸収溶媒Sを導入するための吸収液導入口を、充填層3aの上方に有する。
【0024】
上記吸収液導入口から導入された二酸化炭素吸収溶媒Sは、充填層3aへと落下する一方、上記ガス導入口から導入された前処理済み排ガスG(P)は、充填層3aへと上昇する。この例では、充填層3aにおいて二酸化炭素吸収溶媒Sと前処理済み排ガスG(P)とが気液接触し、これにより、二酸化炭素を吸収したリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒Sが充填層3aから落下して液溜め部3bに溜まる。なお、以下の説明及び
図1では、上記リッチ溶媒に対応する二酸化炭素吸収溶媒Sのことを、説明の便宜のために、符号S(R)で示すものとする。
【0025】
一方、二酸化炭素が分離された前処理済み排ガスG(P)を含む吸収塔排出ガスは、充填層3aから上昇して、吸収器3の頂部から外部に排出(放出)される。
【0026】
本実施の形態では、上述のように吸収器3から排出される上記吸収器排出ガスが吸収器出口クーラ11で冷却され、その後、吸収器出口セパレータ12に導入される。この際、吸収器出口クーラ11は、吸収器排出ガスを冷却して吸収排出ガスの一部を凝縮させて、凝縮水と、気体のままの吸収器排出ガスとを吸収器出口セパレータ12に送る。そして、この例では、吸収器出口セパレータ12が二酸化炭素吸収溶媒Sを多く含む凝縮水を前処理済み排ガスG(P)との気液接触のために吸収器3に戻すようになっている。
【0027】
一方、吸収器出口セパレータ12は、気体のままの吸収器排出ガスは外部に排出する。この際、吸収器排出ガスを洗浄液で洗浄した後、排出してもよい。ただし、以上に説明したような吸収器出口クーラ11及び吸収器出口セパレータ12は設けられなくてもよい。この場合、吸収器3から排出される吸収器排出ガスはそのまま外部に排出されてもよい。
【0028】
本システムS1で用いる二酸化炭素吸収溶媒Sは、例えば、アミン系溶媒、シリコーンオイル、及びイオン性液体のうちの少なくとも一つを含む溶媒であり、目的に応じて添加剤等を含有してもよい。アミン系溶媒は、1種類以上のアミンを含有するものであればよい。アミンの例は、モノエタノールアミンや、ジエタノールアミン等である。
【0029】
また、
図1に示す吸収器3は、充填層方式であるが、棚段方式や、湿式スクラバー方式等が用いられてもよい。
【0030】
リッチ液移送ポンプ4は、吸収器3の液溜め部3bに溜まったリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒S(R)を、吸収器3の底部に設けられた吸収液排出口から再生熱交換器5を介して再生器6へ移送する。この移送の際、吸収器3から再生器6へ向かう二酸化炭素吸収溶媒S(R)は、再生熱交換器5における熱交換により加熱される。
【0031】
再生器6は、吸収器3から排出されたリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒S(R)から二酸化炭素を放散させて、このリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒S(R)をリーン溶媒である二酸化炭素吸収溶媒Sに再生する。そして、再生器6は、リーン溶媒である二酸化炭素吸収溶媒Sと、放散させた二酸化炭素を含む再生器排出ガスと、を排出するようになっている。
【0032】
図1における再生器6は、一例として充填層方式の向流型気液接触装置により構成され、充填層6aと、その下方に位置する液溜め部6bとを有する。再生器6は、吸収器3から排出されたリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒S(R)を導入するための吸収液導入口を、充填層6aの上方に有している。
【0033】
再生器6は、その吸収液導入口から導入された吸収液を加熱することにより、二酸化炭素吸収溶媒S(R)から大部分の二酸化炭素を蒸気とともに放散させて、二酸化炭素吸収溶媒S(R)から二酸化炭素を分離する。
【0034】
詳しくは、再生器6はリボイラ13を備え、リボイラ13から供給された高温蒸気と二酸化炭素吸収溶媒S(R)との熱交換を行うことにより二酸化炭素吸収溶媒S(R)を加熱する。加熱によって分離せずに充填層6aを通過する二酸化炭素吸収溶媒S(R)は、液溜め部6bに落下する。これにより、二酸化炭素を放散したリーン溶媒である二酸化炭素吸収溶媒Sが液溜め部6bに溜まることになる。
【0035】
上述のようにして再生器6の底部の液溜め部6bに溜まった二酸化炭素吸収溶媒Sは、リーン液移送ポンプ7により、再生熱交換器5とリーン液クーラ8とを介して吸収器3へ戻される。この際、再生器6から吸収器3へ向かう二酸化炭素吸収溶媒Sは、再生熱交換器5における熱交換と、リーン液クーラ8における冷却作用により冷却される。再生熱交換器5では、吸収器3から再生器6へ向かう二酸化炭素吸収溶媒S(R)と再生器6から吸収器3へ向かう二酸化炭素吸収溶媒Sとの熱交換が行われる。
【0036】
なお、再生器6は、充填層6aと液溜め部6bとを備えるが、これに代えて、タンク内で二酸化炭素吸収溶媒S(R)を加熱して二酸化炭素を蒸気とともに放散させるフラッシュドラム(フラッシュタンク)式として構成されてもよい。この場合、再生器6は、二酸化炭素吸収溶媒S(R)を加熱する加熱部として、例えば電気ヒーターを備えてもよい。
【0037】
一方、再生器6で二酸化炭素吸収溶媒S(R)から放散された二酸化炭素と蒸気とを含む上記再生器排出ガスは、再生器6の頂部に設けられたガス排出口から外部に排出され、再生器出口クーラ9に送られる。
【0038】
再生器出口クーラ9は、再生塔排出ガスを冷却して再生塔排出ガスの一部を凝縮させることで、再生塔排出ガスを、凝縮水と、気体のままの再生塔排出ガスとに分離する。凝縮水は二酸化炭素吸収溶媒成分を含む一方、気体のままの再生塔排出ガスは主として二酸化炭素を含む。そして、これら凝縮水と再生塔排出ガスは、再生器出口セパレータ10に移送される。
【0039】
再生器出口セパレータ10は、再生器出口クーラ9から凝縮水と再生器排出ガスとを受け入れ、このうちの冷却後再生塔排出ガスを洗浄液で洗浄して、再生塔排出ガス中に含まれる二酸化炭素吸収溶媒成分等の不純物を除去し、洗浄された再生塔排出ガスを排出する。洗浄液は、特に限られるものではないが、例えば水でもよい。
【0040】
そして、洗浄によって不純物を除去された再生塔排出ガスは純度の高い二酸化炭素となって、再生器出口セパレータ10から排出される。このように再生器出口セパレータ10から排出される二酸化炭素は例えば、圧縮ポンプにより超臨界状態や液体状態等の目的に応じた状態に転移され、タンク、ローリー、パイプライン等により保管または輸送されてもよい。
【0041】
一方、本例の再生器出口セパレータ10は、再生器出口クーラ9から受け入れた二酸化炭素吸収溶媒成分を含む凝縮水及び洗浄後の洗浄液を、セパレータ凝縮水移送ポンプ14によって再生器出口セパレータ10の底部の排出口から再生器6に移送する。再生器6に移送された二酸化炭素吸収溶媒成分を含む凝縮水及び洗浄後の洗浄液は、再生器6で加熱されることにより二酸化炭素を分離される。
【0042】
また、制御部30は、二酸化炭素回収システムS1の種々の動作を制御する。制御部30の例は、プロセッサ、電気回路、コンピュータ等である。制御部30は例えば、リッチ液移送ポンプ4、リーン液移送ポンプ7の回転数や、リーン液クーラ8、再生器出口クーラ9及び吸収器出口クーラ11の冷却動作や、リボイラ13の加熱動作等を制御する。
【0043】
また、本実施の形態における制御部30は、酸素除去器2の下流側に設けられた後述の酸素濃度検出器25と電気的に接続し、酸素濃度検出器25の検出結果に基づいて所定の制御を行うようにもなっている。
【0044】
<酸素除去器>
以下、酸素除去器2について詳述する。
【0045】
図1に示すように、本実施の形態における酸素除去器2は、その内部に着脱自在に収納された除去部21と、除去部21の下方に位置する液溜め部22とを有する。酸素除去器2は、排ガスGを導入するためのガス導入口を、除去部21の下方に有し、除去部21を通過した排ガスG(前処理済み排ガスG(P))を排出するガス排出口を、除去部21の上方に、詳しくは頂部に有している。
【0046】
酸素除去器2は、上記ガス導入口から導入した排ガスGを除去部21に対して通過させることで排ガスGから酸素を除去し、排ガスGにおける酸素濃度を低減させる。詳しくは、本実施の形態における除去部21は、非液体の脱酸素材を有し、排ガスGに含まれる酸素を脱酸素材に吸着させることで酸素を除去するようになっている。
【0047】
脱酸素材としては、例えば、鉄、銅、鉛、銀、ゼオライト及び活性炭のうちの少なくとも一つを含むものが採用されてもよい。また、脱酸素剤は、粒状(複数の粒状体の集合)、ハニカム形状、多孔質状、及びこれら形状の少なくとも2つの組合せでもよい。とりわけ脱酸素材として鉄粒子を使用した場合には、酸素との親和性が非常に高く且つコストの点でも有利なため、効果的に酸素を除去し得る。
【0048】
なお、脱酸素材の形状は、排ガスを酸素除去器2に導入する際の圧力損失が適正な範囲で担保できれば、その他の態様でも構わない。また、本実施の形態における除去部21は、酸素除去器2から着脱可能である。また、除去部21は、脱酸素材を交換可能に構成されてもよい。
【0049】
上述のように排ガスGを除去部21に対して通過させる場合、排ガスGの一部が凝縮し、凝縮水が液溜め部22に溜まる場合がある。本実施の形態では、酸素除去器2の底部に排出管23が接続されており、排出管23上の開閉弁24を開くことで、上述のようにして溜まる凝縮水を外部に排出することが可能となっている。開閉弁24は制御部30によって制御されてもよいし、手動で操作されてもよい。
【0050】
また、酸素除去器2から排出される前処理済み排ガスG(P)が流れる酸素除去器2と吸収器3との間の流路には、前処理済み排ガスG(P)における酸素濃度を検出する上述の酸素濃度検出器25が設けられている。制御部30は、この酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度の情報を取得する。
【0051】
そして、制御部30は、具体的には酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、除去部21の交換を促す通知を生成するようになっている。通知は特に限られるものではなく、例えばモニタへの表示や、警告表示、警告音等でもよい。
【0052】
なお、本実施の形態においては、酸素除去器2と、ガス処理器としての吸収器3とが、ガス処理装置P1を構成する。本実施の形態では、このガス処理装置P1が二酸化炭素回収システムに組み込まれる例を示したが、このガス処理装置P1は、二酸化炭素回収システムとは異なるその他の排ガス処理装置にも適用され得るものである。
【0053】
また、本実施の形態では、酸素除去器2における除去部21が非液体の脱酸素材である。この構成では、酸素除去器2を高温で稼働させることが望ましい。したがって、除去部21は、二酸化炭素回収システムS1における最上流の位置に設けることが望ましい。なお、吸収器3の上流側には、排ガスを冷却する熱交換器が設けられる場合がある。この場合、酸素除去器2は、上記熱交換器の上流側に設けることが望ましい。
【0054】
<動作>
次に、以上に説明した二酸化炭素回収システムS1の動作を
図1を参照しつつ説明する。
【0055】
二酸化炭素回収システムS1に導入される排ガスGは、まず、酸素除去器2に流入する。ここで、酸素除去器2は、排ガスGを除去部21に対して通過(接触)させることにより、排ガスGに含まれる酸素を除去する(酸素除去工程)。そして、酸素除去器2から排出される前処理済み排ガスG(P)は、吸収器3に送られ、その途中で酸素濃度検出器25により酸素濃度を検出され、検出された情報は制御部30に送られる。
【0056】
次いで、酸素除去器2から排出される前処理済み排ガスG(P)が吸収器3に流入し、吸収器3は、前処理済み排ガスG(P)を処理剤としての二酸化炭素吸収溶媒Sで処理する(ガス処理工程、吸収工程)。詳しくは、酸素除去器2は、二酸化炭素吸収溶媒Sと、前処理済み排ガスG(P)とを接触させて前処理済み排ガスG(P)に含まれる二酸化炭素を二酸化炭素吸収溶媒Sに吸収させ、これにより、前処理済み排ガスから二酸化炭素を分離する。
【0057】
そして、吸収器3において二酸化炭素を吸収したリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒S(R)は、吸収器3から再生器6に送られる。一方、二酸化炭素が分離された前処理済み排ガスG(P)を含む吸収塔排出ガスは、吸収器3の頂部から外部に排出(放出)される。
【0058】
次いで、再生器6は、受け入れた二酸化炭素吸収溶媒S(R)から二酸化炭素を放散させ、二酸化炭素を放散した二酸化炭素吸収溶媒Sと、二酸化炭素を含む再生器排出ガスとを排出する(再生工程)。この際、二酸化炭素吸収溶媒S(R)から二酸化炭素が放散されることで、二酸化炭素吸収溶媒Sが再生する。
【0059】
そして、再生された状態で再生器6から排出される処理剤としてのリーン溶媒である二酸化炭素吸収溶媒Sは、吸収器3に送られ、二酸化炭素分離処理のために繰り返し再利用される。
【0060】
また、以上のような処理過程において、酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上であることが検出された場合、制御部30が除去部21の交換を促す通知を生成する。
【0061】
上記通知が生成された場合、二酸化炭素回収システムS1の管理者は、除去部21の交換を行ってもよい。このような交換作業は、例えば排ガスGの導入を一時的に止めて、使用中の除去部21を新しいものに交換することにより行ってもよい。
【0062】
以上のような二酸化炭素回収システムS1では、排ガスGに含まれる酸素が二酸化炭素吸収溶媒Sに混入した場合に、二酸化炭素吸収溶媒Sが酸化(分解)し、二酸化炭素吸収性能が低下する虞がある。そして、このように酸素が混入した二酸化炭素吸収溶媒Sを使用し続けると、その二酸化炭素吸収性能の低下が進行し得る。これにより、吸収器3で繰り返し使用される二酸化炭素吸収溶媒Sの酸化が二酸化炭素回収システムS1に与える悪影響は経時的に高まり得る。
【0063】
そこで、本実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS1では、二酸化炭素吸収溶媒Sが繰り返し使用される吸収器3に排ガスGが流入する前の段階で、排ガスGに含まれる酸素が除去されるよう吸収器3の上流に酸素除去器2が設けられる。そして、吸収器3には、酸素除去器2によって酸素が除去された前処理済み排ガスG(P)が流入する。
【0064】
これにより、本実施の形態によれば、排ガスに対して二酸化炭素分離の処理を行う処理剤としての二酸化炭素吸収溶媒Sへの酸素の混入を抑制でき、その結果、二酸化炭素吸収溶媒Sの性能を良好に維持できる。すなわち、二酸化炭素吸収溶媒Sへの酸素の混入が抑制され、二酸化炭素吸収溶媒Sの酸化分解が起きない又は抑制されることで、二酸化炭素吸収溶媒Sの性能を良好に維持できる。
【0065】
また、二酸化炭素を吸収後のリッチ溶媒である二酸化炭素吸収溶媒S(R)が再生器6に移送された後、再生器6で二酸化炭素を放散させる際に、放散された二酸化炭素に酸素が同伴することも抑制される。そのため、再生器6から排出され、その後、再生器出口セパレータ10を経て排出される二酸化炭素(製品CO2)の純度も高くなり、製品品質も向上させることもできる。
【0066】
また、本実施の形態では、吸収器3に流入する前の前処理済み排ガスG(P)における酸素濃度が酸素濃度検出器25によって検出される。これにより、酸素除去器2の状態を監視でき、例えば酸素除去器2の性能低下に応じて交換作業を行うこと等が可能となる。これにより、二酸化炭素吸収溶媒Sへの酸素の混入をより効果的に抑制できる。
【0067】
また、酸素除去器2が着脱自在な除去部21を有する。この場合、酸素除去器2を容易に作製できる。また、二酸化炭素回収システムS1が小型であることに伴い、酸素除去器2が小型で済む場合には、交換作業を容易に実施できるため、使い勝手が良好となる。
【0068】
<<第2の実施の形態>>
次に、第2の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS2を
図2を参照しつつ説明する。
【0069】
本実施の形態における構成部分のうちの第1の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0070】
本実施の形態における酸素除去器2は、複数の酸素除去器201、202で構成される点で第1の実施の形態と異なる。
図2における酸素除去器2は、具体的には第1酸素除去器201と、第2酸素除去器202とを備える。
【0071】
各酸素除去器201、202は、基本的に、第1の実施の形態で示した酸素除去器2と同様の構成を有する。すなわち、第1酸素除去器201は、その内部に着脱自在に収納された第1除去部211と、第1除去部211の下方に位置する第1液溜め部212とを有する。第2酸素除去器202は、その内部に着脱自在に収納された第2除去部221と、第2除去部221の下方に位置する第2液溜め部222とを有する。第1除去部211及び第2除去部221はそれぞれ、非液体の脱酸素材を有し、排ガスGに含まれる酸素を脱酸素材に吸着することで酸素を除去する。
【0072】
第1酸素除去器201は、排ガスGを導入するためのガス導入口を、第1除去部211の下方に有し、第1除去部211を通過した排ガスG(前処理済み排ガスG(P))を排出するガス排出口を、第1除去部211の上方に、詳しくは頂部に有している。第2酸素除去器202は、排ガスGを導入するためのガス導入口を、第2除去部221の下方に有し、第2除去部221を通過した排ガスG(前処理済み排ガスG(P))を排出するガス排出口を、第2除去部221の上方に、詳しくは頂部に有している。
【0073】
第1酸素除去器201の底部には第1排出管213が接続され、第1排出管213上の第1開閉弁214を開くことで、第1酸素除去器201の底部に溜まる凝縮水を外部に排出できる。同様に、第2酸素除去器202の底部にも第2排出管223が接続され、第2排出管223上の第2開閉弁224を開くことで、第2酸素除去器202の底部に溜まる凝縮水を外部に排出できる。
【0074】
また、第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202は、供給側三方弁203を介して排ガスGを導入する。
【0075】
供給側三方弁203は、入口ポートから排ガスGを受け入れ、第1出口ポートから排ガスGを第1酸素除去器201に供給し、第2出口ポートから排ガスGを第2酸素除去器202に供給するように構成されている。本実施の形態では、制御部30が供給側三方弁203を制御することで、供給側三方弁203の入口ポートが受け入れた排ガスGを、第1出口ポートから第1酸素除去器201に供給する状態と、第2出口ポートから第2酸素除去器202に供給する状態とが切り替えられる。
【0076】
また、第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202は、排出側三方弁204を介して前処理済み排ガスG(P)を吸収器3に送る。
【0077】
排出側三方弁204は、第1入口ポートで受け入れる第1酸素除去器201からの前処理済み排ガスG(P)、又は、第2入口ポートで受け入れる第2酸素除去器202からの前処理済み排ガスG(P)を、排出ポートから吸収器3側に送る。本実施の形態では、制御部30が排出側三方弁204を制御することで、第1酸素除去器201からの前処理済み排ガスG(P)を排出ポートから排出する状態と、第2酸素除去器202からの前処理済み排ガスG(P)を排出ポートから排出する状態と、が切り替えられる。
【0078】
また、本実施の形態においても酸素濃度検出器25が設けられ、制御部30は、酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、使用中の第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202のうちの一方を、未使用の他方に切り替えるようになっている。なお、制御部30は、使用中の第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202のうちに一方を、未使用の他方に切り替えることを促す通知を生成するものでもよい。
【0079】
以上に説明した第2の実施の形態では、酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、使用中の第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202のうちの一方が、未使用の他方に切り替えられる。すなわち、前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、使用中の酸素除去器の酸素除去性能が低下していると判定し、未使用の酸素除去器に切り替えることができる。これにより、運転を停止することなく酸素除去性能を維持することができ、連続的な運転が望まれる場合に有利となる。
【0080】
なお、本実施の形態における酸素除去器2は、第1酸素除去器201と第2酸素除去器202とを備えるが、並列に配置される酸素除去器は3つ以上でもよい。
【0081】
また、本実施の形態では、第1酸素除去器201における第1除去部211及び第2酸素除去器202における第2除去部221が非液体の脱酸素材である。この構成では、第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202を高温で稼働させることが望ましい。したがって、第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202は、二酸化炭素回収システムS2における最上流の位置に設けることが望ましい。なお、吸収器3の上流側には、排ガスを冷却する熱交換器が設けられる場合がある。この場合、酸素除去器2は、上記熱交換器の上流側に設けることが望ましい。
【0082】
<<第3の実施の形態>>
次に、第3の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS3を
図3を参照しつつ説明する。
【0083】
本実施の形態における構成部分のうちの第1及び第2の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1及び第2の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0084】
本実施の形態における酸素除去器2は、充填層方式の向流型気液接触装置により構成される点で第1及び第2の実施の形態とは異なり、その内部の除去部21’は充填層である。
【0085】
酸素除去器2は、排ガスGを導入するための排ガス導入口を、除去部21’の下方に有し、酸素吸収溶媒OSを導入するための溶媒導入口を、除去部21’の上方に有する。酸素除去器2は、排ガスGと酸素吸収溶媒OSとを除去部21’で気液接触させて排ガスGに含まれる酸素を酸素吸収溶媒OSに吸収させることにより酸素を除去するようになっている。
【0086】
除去部21’で酸素を吸収した酸素吸収溶媒OSは、除去部21’から落下して酸素除去器2の下側に形成される液溜め部22’に溜まる。液溜め部22’に溜まった酸素吸収溶媒OSは排出口から外部に排出されるようになっており、本実施の形態では、この排出口と、上記酸素吸収溶媒OSを導入するための溶媒導入口とが、溶媒移送ポンプ232を有する循環用配管231で接続されている。すなわち、酸素吸収溶媒OSが循環して繰り返し使用される。
【0087】
一方、循環用配管231における溶媒移送ポンプ232の上流側の部分には、排出管233が接続され、循環用配管231における溶媒移送ポンプ232の下流側の部分には、補充管234が接続される。
【0088】
排出管233は排出制御弁233Aを有し、排出制御弁233Aを開くことで、循環用配管231から酸素吸収溶媒OSを外部に排出できる。また、補充管234は酸素吸収溶媒OSに含まれる酸素の酸素濃度を補正するために設けられている。補充管234は補充制御弁234Aを有し、補充制御弁234Aを開くことで、外部から循環用配管231内に希釈用としての新規の酸素吸収溶媒OSを導入できる。排出制御弁233A及び補充制御弁234Aは、制御部30によって制御されるが、手動で操作されてもよい。
【0089】
本実施の形態では、酸素吸収溶媒OSとして、吸収器3において使用された後の、より詳しくは不要となった二酸化炭素吸収溶媒Sが用いられる。不要か否かの判定は、例えば再生器6から排出される、二酸化炭素を含む再生器排出ガスにおける二酸化炭素濃度を指標とする二酸化炭素吸収溶媒Sの性能評価等によりなされる。このような吸収器3において使用された後の又は不要となった二酸化炭素吸収溶媒Sは、多くの二酸化炭素を吸収済みである傾向があり、排ガスGと接触した際に、二酸化炭素の吸収は促進されない一方で、酸素の吸収は促進される傾向がある。そのため、排ガスGにおける酸素濃度を好適に低減できる。
【0090】
吸収器3において使用された後の又は不要となった二酸化炭素吸収溶媒Sを酸素吸収溶媒OSとして用いる場合、例えば、再生器6から吸収器3に二酸化炭素吸収溶媒Sが戻る流路の途中の
図3における符号E1で示す位置から二酸化炭素吸収溶媒Sを引き込むことにより、二酸化炭素吸収溶媒Sが循環用配管231側に導入されてもよい。また、吸収器3から再生器6に二酸化炭素吸収溶媒Sが流れる流路の途中の
図3における符号E2で示す位置から二酸化炭素吸収溶媒Sが引き込まれてもよい。
【0091】
また、使用する酸素吸収溶媒OSは、吸収器出口ガス凝縮水や再生器出口ガス凝縮水でもよい。吸収器出口ガス凝縮水が用いられる場合、
図3における符号E3で示す位置で吸収器出口ガス凝縮水が引き込まれて、循環用配管231側に導入されてもよい。再生器出口ガス凝縮水が用いられる場合、
図3における符号E4で示す位置で吸収器出口ガス凝縮水が引き込まれて、循環用配管231側に導入されてもよい。また、酸素吸収溶媒OSは言うまでも無く、吸収器3、再生器出口セパレータ10、吸収器出口セパレータ12で使用されたもの以外のものでもよい。
【0092】
また、本実施の形態においても酸素濃度検出器25が設けられる。そして、本実施の形態における制御部30は、酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、繰り返し使用している酸素吸収溶媒OSに、希釈用の酸素吸収溶媒OSを供給する。これにより、酸素吸収溶媒OSに含まれる酸素の酸素濃度を低下させることができる。
【0093】
詳しくは、酸素濃度検出器25が検出する前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、制御部30は、排出制御弁233Aと補充制御弁234Aとを開き、自動で繰り返し使用している酸素吸収溶媒OSの酸素濃度を補正する。
【0094】
また、本実施の形態では、酸素除去器2が、排ガスGと酸素吸収溶媒OSとを除去部21’で気液接触させて排ガスGに含まれる酸素を酸素吸収溶媒OSに吸収させる。この構成では、酸素除去器2を稼働させる温度と、吸収器3を稼働させる温度との差が小さいほうがよく、詳しくは、酸素除去器2を稼働させる温度が吸収器3を稼働させる温度と同程度であることが好ましい。酸素吸収溶媒OSがアミンなどである場合、稼働温度が高温であると分解しやすくなることがある。この観点から、酸素吸収溶媒OSを使用する酸素除去器2を稼働させる温度は、過剰に高温であることは望ましくない。したがって、吸収器3の上流側に排ガスを冷却する熱交換器を設け、酸素除去器2を、この熱交換器の下流側に設けてもよい。
【0095】
以上に説明した第3の実施の形態によれば、排ガスGと酸素吸収溶媒OSとを気液接触させて排ガスGに含まれる酸素を酸素吸収溶媒OSに吸収させる。これにより酸素を除去する。第1及び第2の実施の形態のように非液体の脱酸素材を用いる場合、二酸化炭素回収システムの大きさよっては、コストが嵩むことがあり、この場合、本実施の形態はコスト的に有利になり得る。
【0096】
また、本実施の形態では、前処理済み排ガスG(P)の酸素濃度が所定値以上である場合に、使用中の除去部21’の酸素除去性能が低下していると判定し、酸素吸収溶媒OSに希釈用の酸素吸収溶媒OSを供給することで、酸素吸収溶媒OSに含まれる酸素の酸素濃度を低下させる。これにより、運転を停止することなく酸素除去性能を維持することができ、連続的な運転が望まれる場合に有利となる。
【0097】
なお、第3の実施の形態における酸素除去器2は充填層方式の向流型気液接触装置により構成されるが、棚段方式、湿式スクラバー方式等でもよい。また、第3の実施の形態における酸素除去器2は、複数の酸素除去機を並列に配置するものでもよい。
【0098】
<<第4の実施の形態>>
次に、第4の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS4を
図4を参照しつつ説明する。
【0099】
本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第3の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1乃至第3の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0100】
本実施の形態では、第1の実施の形態の構成に、排ガス冷却用熱交換器40がさらに設けられている。
図4に示すように、排ガス冷却用熱交換器40は、酸素除去器2と吸収器3との間に設けられている。詳しくは、排ガス冷却用熱交換器40は、酸素除去器2と吸収器3との間の流路における酸素濃度検出器25の下流側に設けられている。ただし、排ガス冷却用熱交換器40は、酸素濃度検出器25の上流側に設けられてもよい。
【0101】
排ガス冷却用熱交換器40は、酸素除去器2から排出される前処理済み排ガスG(P)が吸収器3に流入する前に、前処理済み排ガスG(P)を熱交換により冷却する。排ガス冷却用熱交換器40が前処理済み排ガスG(P)との熱交換のために導入する媒体は、ガスでも液体でもよい。排ガス冷却用熱交換器40が導入する媒体は、吸収器3から排出される吸収器排出ガスでもよい。この場合、排ガス冷却用熱交換器40は、吸収器出口クーラ11で冷却される前の吸収器排出ガスを導入してもよいし、吸収器出口クーラ11で冷却された後の吸収器排出ガスを導入してもよい。そして、排ガス冷却用熱交換器40は、前処理済み排ガスG(P)と熱交換した後の吸収器排出ガスを、例えば吸収器出口クーラ11の上流側に戻してもよいし、吸収器出口セパレータ12に送ってもよい。
【0102】
本実施の形態では、酸素除去器2における除去部21が非液体の脱酸素材である。この構成では、酸素除去器2を高温で稼働させることが望ましい。すなわち、除去部21が非液体の脱酸素材である場合、除去部21による酸素分離又は酸素吸収は、高温である程、促進される傾向がある。本実施の形態では、排ガス冷却用熱交換器40の上流側に酸素除去器2が設けられるため、酸素除去器2は、排ガス冷却用熱交換器40によって冷却される前の高温の状態の排ガスGから酸素を分離又は吸収する。したがって、本実施の形態によれば、除去部21により排ガスGから効果的に酸素を分離又は吸収できる。
【0103】
<<第5の実施の形態>>
次に、第5の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS5を
図5を参照しつつ説明する。
【0104】
本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第4の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1乃至第4の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0105】
本実施の形態では、第2の実施の形態の構成に、第4の実施の形態で説明した排ガス冷却用熱交換器40がさらに設けられている。
【0106】
図5に示すように、排ガス冷却用熱交換器40は、第1酸素除去器201が排出する前処理済み排ガスG(P)と第2酸素除去器202が排出する前処理済み排ガスG(P)との合流点と、吸収器3との間に設けられている。詳しくは、排ガス冷却用熱交換器40は、排出側三方弁204と吸収器3との間の流路における酸素濃度検出器25の下流側に設けられている。ただし、排ガス冷却用熱交換器40は、酸素濃度検出器25の上流側に設けられてもよい。排ガス冷却用熱交換器40のその他の構成は、第4の実施の形態と同様である。
【0107】
本実施の形態でも、第1酸素除去器201における除去部211及び第2酸素除去器202における除去部221が非液体の脱酸素材である。この構成では、第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202を高温で稼働させることが望ましい。すなわち、除去部211,221が非液体の脱酸素材である場合、除去部211,221による酸素分離又は酸素吸収は、高温である程、促進される傾向がある。本実施の形態では、排ガス冷却用熱交換器40の上流側に第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202が設けられるため、第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202は、排ガス冷却用熱交換器40によって冷却される前の高温の状態の排ガスGから酸素を分離又は吸収する。したがって、本実施の形態でも、除去部211,221により排ガスGから効果的に酸素を分離又は吸収できる。
【0108】
<<第6の実施の形態>>
次に、第6の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS6を
図6を参照しつつ説明する。
【0109】
本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第5の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1乃至第5の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0110】
本実施の形態では、第3の実施の形態の構成に、第4の実施の形態で説明した排ガス冷却用熱交換器40がさらに設けられている。ただし、排ガス冷却用熱交換器40の位置は、第4の実施の形態と異なる。
【0111】
すなわち、
図6に示すように、排ガス冷却用熱交換器40は、酸素除去器2の上流側に設けられている。詳しくは、排ガス冷却用熱交換器40は、排ガスライン1における酸素除去器2の上流側の位置に設けられている。本実施の形態における排ガス冷却用熱交換器40は、排ガスライン1を流れる排ガスGが酸素除去器2に流入する前に、排ガスGを熱交換により冷却する。排ガス冷却用熱交換器40が排ガスGとの熱交換のために導入する媒体は、ガスでも液体でもよい。排ガス冷却用熱交換器40が導入する媒体は、吸収器3から排出される吸収器排出ガスでもよい。この場合、排ガス冷却用熱交換器40は、吸収器出口クーラ11で冷却される前の吸収器排出ガスを導入してもよいし、吸収器出口クーラ11で冷却された後の吸収器排出ガスを導入してもよい。そして、排ガス冷却用熱交換器40は、排ガスGと熱交換した後の吸収器排出ガスを、例えば吸収器出口クーラ11の上流側に戻してもよいし、吸収器出口セパレータ12に送ってもよい。
【0112】
本実施の形態では、酸素除去器2が、排ガスGと酸素吸収溶媒OSとを除去部21’で気液接触させて排ガスGに含まれる酸素を酸素吸収溶媒OSに吸収させる。この構成では、酸素除去器2を稼働させる温度と、吸収器3を稼働させる温度との差が小さいほうがよく、詳しくは、酸素除去器2を稼働させる温度が吸収器3を稼働させる温度と同程度であることが好ましい。酸素吸収溶媒OSがアミンである場合、稼働温度が高温であると分解しやすくなることがある。この観点から、酸素吸収溶媒OSを使用する酸素除去器2を稼働させる温度は、過剰に高温であることは望ましくない。本実施の形態における排ガス冷却用熱交換器40は、排ガスGが酸素除去器2に流入する前に、排ガスGを熱交換により冷却する。これにより、酸素吸収溶媒OSの分解の進行を効果的に抑制できる。
【0113】
<<第7の実施の形態>>
次に、第7の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS7を
図7を参照しつつ説明する。
【0114】
本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第6の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1乃至第6の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0115】
本実施の形態では、第1の実施の形態の構成に、排ガス冷却用熱交換器40がさらに設けられる一方で、酸素除去器2の構成が、第1の実施の形態と異なる。排ガス冷却用熱交換器40の配置や機能は、
図4(第4の実施の形態)と同様のため説明は省略する。
【0116】
本実施の形態における酸素除去器2は、除去部21’’及び除去部21’’の下方に位置する液溜め部22を有する除去器本体2Aと、除去部212’’に排ガスGが流入する前に、排ガスGに水素ガスを供給する水素ガス供給部2Bと、を備える。水素ガス供給部2Bは、水素ガスを通流させる水素ガス供給流路2Cと、水素ガスを貯留する水素ガス源2Dとを有する。水素ガス供給部2Bは、水素ガス源2Dから水素ガス供給流路2Cを通して、除去部21’’に流入する前の排ガスGに水素ガスを供給する。
【0117】
本実施の形態では、水素ガス供給流路2Cが、排ガスライン1における除去器本体2Aの上流側の位置に接続されているが、水素ガス供給流路2Cは、除去器本体2Aに直接的に接続されてもよい。水素ガス源2Dは、例えば水素タンクで構成されてもよい。
【0118】
酸素除去器2は、水素ガス供給流路2Cからの水素ガスを排ガスGと混ぜ合わせた後、除去部21’’に対して通過させることで、排ガスGから酸素を除去し、排ガスGにおける酸素濃度を低減させる。本実施の形態では、除去部21’’が、排ガスGに含まれる酸素と水素ガスに含まれる水素とを反応させる金属触媒を含み、除去部21’’における金属触媒において排ガスGに含まれる酸素と水素とを化学反応させることで、酸素を除去するようになっている。
【0119】
除去部21’’は、金属触媒として、例えば、白金を含んでもよい。また、除去部21’’は、金属触媒として、白金をベースとする合金を含んでもよいし、それ以外の材質の触媒を含んでもよい。また、金属触媒の形状は、粒状(複数の粒状体の集合)、ハニカム形状、多孔質状、及びこれら形状の少なくとも2つの組合せでもよい。なお、金属触媒の形状は、排ガスを酸素除去器2に導入する際の圧力損失を適正な範囲で担保できれば、その他の態様でも構わない。
【0120】
また、本実施の形態における除去部21’’は、酸素除去器2から、詳しくは除去器本体2Aから着脱可能である。これにより、例えば金属触媒の性能低下に伴い、除去部21’’を交換することが可能となる。
【0121】
以上に説明した本実施の形態では、酸素除去器2及び吸収器3を備えるガス処理装置において、まず、排ガスGに含まれる酸素と水素とを、除去部21’’における金属触媒で化学反応させる。そして、水を生成することにより、排ガスGから酸素を除去し、排ガスGにおける酸素濃度を低減させる。その後、酸素を除去した前処理済み排ガスG(P)は、吸収器3に送られ、二酸化炭素吸収溶媒Sによって二酸化炭素を分離される。これにより、排ガスに対して二酸化炭素分離の処理を行う処理剤としての二酸化炭素吸収溶媒Sへの酸素の混入を抑制でき、その結果、二酸化炭素吸収溶媒Sの性能を良好に維持できる。すなわち、二酸化炭素吸収溶媒Sへの酸素の混入が抑制され、二酸化炭素吸収溶媒Sの酸化分解が起きない又は抑制されることで、二酸化炭素吸収溶媒Sの性能を良好に維持できる。
【0122】
また、本実施の形態では、酸素除去器2を高温で稼働させることが望ましい。金属触媒を用いる除去部21’’による酸素分離又は酸素吸収は、高温である程、促進される傾向がある。本実施の形態では、排ガス冷却用熱交換器40の上流側に酸素除去器2が設けられるため、酸素除去器2は、排ガス冷却用熱交換器40によって冷却される前の高温の状態の排ガスGから酸素を分離又は吸収する。したがって、除去部21’’により排ガスGから効果的に酸素を分離又は吸収できる。
【0123】
なお、変形例として、酸素除去器2から金属触媒を含む除去部21’’が取り除かれてもよい。すなわち、排ガスGに含まれる酸素と、水素ガス供給部2Bからの水素ガスとを混ぜ合わせることにより酸素と水素とを化学反応させることで、排ガスGから酸素を除去する構成が採用されてもよい。酸素と水素とは、温度及び圧力条件によっては触媒無しで化学反応を起こすことがある。この構成は、排ガスGが高温である場合に有効に使用できる場合がある。
【0124】
<<第8の実施の形態>>
次に、第8の実施の形態にかかる二酸化炭素回収システムS8を
図8を参照しつつ説明する。
【0125】
本実施の形態における構成部分のうちの第1乃至第7の実施の形態と同様の構成部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。以下においては、第1乃至第7の実施の形態に対して異なる部分についてのみ説明する。
【0126】
本実施の形態では、第2の実施の形態の構成に、排ガス冷却用熱交換器40がさらに設けられる一方で、酸素除去器2の構成が、第2の実施の形態と異なる。排ガス冷却用熱交換器40の配置や機能は、
図5(第5の実施の形態)と同様のため説明は省略する。
【0127】
本実施の形態における酸素除去器2は、第7の実施の形態で説明した水素ガス供給部2Bをさらに備えている。詳しくは、酸素除去器2は、第1酸素除去器201と、第2酸素除去器202と、水素ガス供給部2Bと、を備える。第1酸素除去器201は、除去部211’及び除去部211’の下方に位置する液溜め部212を有する除去器本体201Aを有する。第2酸素除去器202は、除去部221’及び除去部221’の下方に位置する液溜め部222を有する除去器本体202Aを有する。
【0128】
水素ガス供給部2Bにおける水素ガス供給流路2Cは、排ガスライン1における供給側三方弁203の上流側の位置に接続されている。すなわち、水素ガス供給流路2Cは、供給側三方弁203が第1酸素除去器201及び第2酸素除去器202に排ガスGを分配する前に、水素ガスを排ガスGに供給する。
【0129】
以上に説明した本実施の形態でも、第7の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0130】
以上、各実施の形態を説明したが、上記実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。このような実施の形態及びその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0131】
例えば、本実施の形態では吸収器3が二酸化炭素吸収溶媒を使用して二酸化炭素を除去するが、吸収器3は二酸化炭素吸収膜を有する構成等でもよい。この場合も、上述の各実施の形態で説明した酸素除去器2は有効に機能する。
【符号の説明】
【0132】
S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7,S8…二酸化炭素回収システム、1…排ガスライン、2…酸素除去器、2A…除去器本体、2B…水素ガス供給部、2C…水素ガス供給流路、2D…水素ガス源、21,21’,21’’…除去部、22,22’…液溜め部、23…排出管、24…開閉弁、25…酸素濃度検出器、201…第1酸素除去器、202…第2酸素除去器、203…供給側三方弁、204…排出側三方弁、211…第1除去部、212…第1液溜め部、213…第1排出管、214…第1開閉弁、221…第2除去部、222…第2液溜め部、223…第2排出管、224…第2開閉弁、231…循環用配管、232…溶媒移送ポンプ、233…排出管、233A…排出制御弁、234…補充管、234A…補充制御弁、3…吸収器、3a…充填層、3b…液溜め部、4…リッチ液移送ポンプ、5…再生熱交換器、6…再生器、6a…充填層、6b…液溜め部、7…リーン液移送ポンプ、8…リーン液クーラ、9…再生器出口クーラ、10…再生器出口セパレータ、11…吸収器出口クーラ、12…吸収器出口セパレータ、13…リボイラ、30…制御部、40…排ガス冷却用熱交換器