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特開2022-158956光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物、光半導体封止材および光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158956
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物、光半導体封止材および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20221006BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20221006BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20221006BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20221006BHJP
【FI】
C08G59/62
C08L63/00 C
C08K5/00
H01L33/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026901
(22)【出願日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2021061301
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内藤 龍介
(72)【発明者】
【氏名】山根 実
(72)【発明者】
【氏名】松尾 曉
(72)【発明者】
【氏名】萩原 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大田 真也
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
5F142
【Fターム(参考)】
4J002AE032
4J002BB032
4J002CD051
4J002CD131
4J002CH022
4J002CP032
4J002DA036
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE156
4J002DE266
4J002DG046
4J002EE056
4J002EF058
4J002EG018
4J002EQ016
4J002ES006
4J002EU026
4J002EU056
4J002FD096
4J002FD147
4J002FD157
4J002FD162
4J002FD168
4J002GJ02
4J002GQ05
4J002HA03
4J036AA05
4J036AB02
4J036AB17
4J036AD08
4J036DA05
4J036DA06
4J036DB15
4J036DC03
4J036DC06
4J036DC10
4J036FA10
4J036FA12
4J036FA14
4J036FB07
4J036FB12
4J036KA06
5F142AA63
5F142CG04
(57)【要約】
【課題】保存安定性に優れる光半導体封止用樹脂組成物、並びにこれを用いた光半導体封止用樹脂成形物、光半導体封止材および光半導体装置を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤ならびに、可視光を吸収する染料および/または顔料を含み、硬化体(大きさ:直径50mm×厚み1mmの円柱状)とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上である光半導体封止用樹脂組成物。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤ならびに、可視光を吸収する染料および/または顔料を含み、
下記方法により硬化体(大きさ:直径50mm×厚み1mmの円柱状)とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上である光半導体封止用樹脂組成物。
(硬化体の作製方法)
樹脂組成物を、150℃で4分間加熱して成形し、その後150℃で3時間加熱することで、硬化体を得る。
【請求項2】
エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の反応物を含む請求項1記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
重量平均分子量Mwが3000以上である請求項1または2記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
受光素子用である請求項1~3のいずれか1項に記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂としてトリグリシジルイソシアヌレートを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の水酸基数比(酸無水物系硬化剤の水酸基数/フェノール系硬化剤の水酸基数)が50/50~85/15である請求項1~5のいずれか1項に記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項7】
フェノール系硬化剤100質量%中、繰り返し構造の数が5以上の樹脂の割合が20質量%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
離型剤を含み、総せん断歪量が30以上となるように混練された請求項1~7のいずれか1項に記載の光半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光半導体封止用樹脂組成物を含む光半導体封止用樹脂成形物。
【請求項10】
請求項9記載の光半導体封止用樹脂成形物を成形して得られる光半導体封止材。
【請求項11】
光半導体素子と、当該光半導体素子を封止する請求項10記載の光半導体封止材とを備える光半導体装置。
【請求項12】
受光装置である請求項11記載の光半導体装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物、光半導体封止材および光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体素子は、セラミックパッケージまたはプラスチックパッケージによって封止され装置化されている。ここで、セラミックパッケージは、構成材料が比較的高価であること、量産性に劣ることから、プラスチックパッケージを用いることが主流となっている。なかでも、作業性、量産性、信頼性の点で、エポキン樹脂組成物を、予めタブレット状に打錠成形したものをトランスファーモールド成形する技術が主流となっている。
【0003】
一方、近年、テレビなどの多くの電子機器は、リモートコマンダーにより遠隔操作が可能となっている。この種の電子機器には、リモートコマンダーから送られる赤外線信号を受信するための赤外線受光装置が設けられている。
【0004】
赤外線受光装置においては、受光素子として、シリコンによるpinダイオードなどの半導体受光素子が通常用いられている。この場合、半導体受光素子の最大感度は900~1000nmの波長で得られるものの、受光波長は300~1250nmと可視光線から近赤外線までの広範囲の波長帯に亘っている。
【0005】
一方、赤外線受光装置に信号を送るリモートコマンダーに用いられている発光素子のピーク波長は通常940nmである。従って、可視光線(波長400~780nm)は半導体受光素子の外来光として誤動作の原因となり得る。
【0006】
可視光線による誤動作を防止するために、特許文献1、2では、エポキシ樹脂組成物に可視光を吸収する染料を配合することにより、可視光線による誤動作を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-36394号公報
【特許文献2】特開昭61-162515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、従来の光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物は、常温で保管した場合に流動性が悪化することがあり、その結果、安定して成形できないという問題があることが新たに判明した。
本発明は、本発明者らが新たに見出した前記課題を解決するものであり、保存安定性に優れる光半導体封止用樹脂組成物、並びにこれを用いた光半導体封止用樹脂成形物、光半導体封止材および光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤ならびに、可視光を吸収する染料および/または顔料を含み、
下記方法により硬化体(大きさ:直径50mm×厚み1mmの円柱状)とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上である光半導体封止用樹脂組成物に関する。
(硬化体の作製方法)
樹脂組成物を、150℃で4分間加熱して成形し、その後150℃で3時間加熱することで、硬化体を得る。
【0010】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の反応物を含むことが好ましい。
【0011】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、重量平均分子量Mwが3000以上であることが好ましい。
【0012】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、受光素子用であることが好ましい。
【0013】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂としてトリグリシジルイソシアヌレートを含むことが好ましい。
【0014】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の水酸基数比(酸無水物系硬化剤の水酸基数/フェノール系硬化剤の水酸基数)が50/50~85/15であることが好ましい。
【0015】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、フェノール系硬化剤100質量%中、繰り返し構造の数が5以上の樹脂の割合が20質量%以上であることが好ましい。
【0016】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、離型剤を含み、総せん断歪量が30以上となるように混練されたものであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記光半導体封止用樹脂組成物を含む光半導体封止用樹脂成形物に関する。
【0018】
また、本発明は、前記光半導体封止用樹脂成形物を成形して得られる光半導体封止材に関する。
【0019】
また、本発明は、光半導体素子と、当該光半導体素子を封止する前記光半導体封止材とを備える光半導体装置に関する。
【0020】
前記光半導体装置が受光装置であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤ならびに、可視光を吸収する染料および/または顔料を含み、前記方法により硬化体(大きさ:直径50mm×厚み1mmの円柱状)とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上であるため、保存安定性に優れる。また、可視光線による誤動作を防止することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤ならびに、可視光を吸収する染料および/または顔料を含み、
下記方法により硬化体(大きさ:直径50mm×厚み1mmの円柱状)とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上である。
(硬化体の作製方法)
樹脂組成物を、150℃で4分間加熱して成形し、その後150℃で3時間加熱することで、硬化体を得る。これにより、保存安定性に優れると共に、可視光線による誤動作を防止できる。
【0023】
前記組成物で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤に加えて、フェノール系硬化剤を含むことにより、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の反応物が形成され、該反応物の存在により、例えば、25℃で長時間保管した場合であっても、流動性の低下を抑制でき、良好な保存安定性が得られる。そして、本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、保存安定性に優れるため、本発明の光半導体封止用樹脂組成物や本発明の光半導体封止用樹脂成形物は、安定的にトランスファー成形などの成形を行うことが可能となり、安定的に光半導体封止材を得ることが可能となる。
また、可視光を吸収する染料および/または顔料を含み、硬化体とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上であるため、近赤外領域の透過性に優れ、近赤外センサーなどの受光装置としての機能を発揮しつつ、可視光線による誤動作を防止できる。
【0024】
<光半導体封止用樹脂組成物>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤ならびに、可視光を吸収する染料および/または顔料を含有する。
【0025】
<<熱硬化性樹脂>>
エポキシ樹脂としては、着色の少ないものが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインエポキシ等の含複素環エポキシ樹脂、水添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。なかでも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートの併用がより好ましい。
ここで、保存安定性は、硬化速度(硬化性)と背反する性能であるが、エポキシ樹脂としてトリグリシジルイソシアヌレートを含むこと、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートの併用により、保存安定性、硬化性を両立できる。これは、トリグリシジルイソシアヌレートを配合することにより、硬化速度を増大できるためであると推測される。
【0026】
エポキシ樹脂100質量%中、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。前記範囲内であると、保存安定性、硬化性を両立できる傾向がある。
【0027】
エポキシ樹脂100質量%中、トリグリシジルイソシアヌレートの割合は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。前記範囲内であると、保存安定性、硬化性を両立できる傾向がある。
【0028】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含有してもよい。
【0029】
<<硬化剤>>
酸無水物系硬化剤としては、無水物基(好ましくはカルボン酸無水物基)を有する硬化剤であれば特に限定されないが、例えば、多価カルボン酸(2つ以上のカルボキシル基を有する化合物)の無水物が挙げられる。酸無水物系硬化剤は、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0030】
酸無水物系硬化剤は、硬化時または硬化後に樹脂組成物の硬化体の着色を低減でき、酸無水物系硬化剤を配合することにより、光半導体封止用樹脂組成物を硬化体とした場合に、1000nmでの直線透過率を80%以上とすることができる。
【0031】
多価カルボン酸の無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水2-ドデシルコハク酸、無水2-(2-オクタ-3-エニル)コハク酸、無水2-(2,4,6-トリメチルノナ-3-エニル)コハク酸、無水トリカルバリル酸、無水1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の鎖状多価カルボン酸無水物;
ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ジメチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ノルボルネンジカルボン酸、無水メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、無水ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、無水ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、無水メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボン酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸等の脂環式多価カルボン酸無水物;
無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水3-ビニルフタル酸、無水4-ビニルフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリントリス(アンヒドロトリメリテート)、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香族多価カルボン酸無水物;等があげられる。これらは、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。なかでも、脂環式多価カルボン酸無水物が好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸がより好ましい。
【0032】
フェノール系硬化剤としては、フェノールに基づく構造を有する硬化剤であれば特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、トリスフェノールノボラック樹脂、テトラキスフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
トリフェノールメタン型樹脂、トリフェノールプロパン型樹脂等のトリフェノールアルカン型フェノール樹脂;
フェニレン骨格および/またはジフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
ポリ(p-ヒドロキシスチレン)等のポリヒドロキシスチレン樹脂;等があげられる。また、これらの樹脂は、シクロペンタジエン変性、ジシクロペンタジエン変性、テルペン変性、パラキシリレン変性、メタキシリレン変性、オルソキシリレン変性等の変性が施された変性樹脂であってもよい。これらは、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。なかでも、ノボラック型フェノール樹脂が好ましく、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂がより好ましい。
なお、本明細書において、フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との縮合反応により得られる樹脂であり、ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との酸性触媒下での縮合反応により得られる樹脂を意味し、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドとの酸性触媒下での縮合反応により得られる樹脂を意味する。
【0033】
フェノール系硬化剤100質量%中、繰り返し構造の数が5以上の樹脂の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、上限は特に限定されない。前記範囲内であると、より良好な保存安定性が得られる傾向がある。
ここで、フェノール系硬化剤の繰り返し構造の数とは、例えば、ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂の場合、フェノールにメチレン基が結合した構造の繰り返し数(重合度)(下記式(1)では、カッコ内が繰り返し構造、nが繰り返し構造の数)を意味する。
【化1】
【0034】
フェノール系硬化剤の軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上であり、上限は特に限定されない。前記範囲内であると、より良好な保存安定性が得られる傾向がある。
なお、フェノール系硬化剤の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0035】
フェノール系硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して5~20質量部が好ましく、5~10質量部がより好ましい。5質量部未満では、保存安定性の安定効果が小さく、20質量部を超えると、硬化物の物性が著しく低下する傾向がある。
【0036】
酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の水酸基数比(酸無水物系硬化剤の水酸基数/フェノール系硬化剤の水酸基数)が50/50~85/15であることが好ましい。フェノール系硬化剤は硬化速度が遅いため、フェノール系硬化剤の含有割合が多いと、硬化速度の低下を招くおそれがあるため、保存安定性、硬化性の両立という観点からは、下限は、好ましくは55/45以上、より好ましくは60/40以上、さらに好ましくは65/35以上であり、上限は、好ましくは80/20以下である。
【0037】
酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤以外の硬化剤としては、メタフェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミン、プロピルアミン等のアミン系硬化剤等があげられる。これらも、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
硬化剤100質量%中、酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤の合計割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。前記範囲内であると、より良好な保存安定性が得られる傾向がある。
【0039】
硬化剤の配合量(好ましくは酸無水物系硬化剤およびフェノール系硬化剤の合計配合量)は、特に限定されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して20~80質量部が好ましく、40~60質量部がより好ましい。20質量部未満では、硬化の速度が遅くなり、80質量部を超えると硬化反応に対して過剰量が存在するため、諸物性の低下を引き起こすおそれがある。
【0040】
<<染料、顔料>>
可視光を吸収する染料および/または顔料としては、可視光を吸収する染料(有機、無機)、可視光を吸収する顔料(有機、無機)であれば特に限定されない。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。染料は、顔料と比較して、とても小さな粒子であるため、樹脂組成物に均一に分散させることができ、また、硬化体の曇り度(ヘイズ値)を小さくできる点から、染料が好ましい。
【0041】
前記染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ベリノン染料などが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、樹脂組成物への均一な分散を容易に図ることができることから、油溶性の染料が好ましい。
【0042】
前記顔料としては、例えば、アゾ系(溶性アゾ系,不溶性アゾ系)、縮合系、多環系(フタロシアニン系)、スレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリン系などの有機顔料;、酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、カーボンブラック、群青(ウルトラマリン)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、チタンブラック、合成鉄黒等の無機顔料;等があげられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
可視光を吸収する染料、顔料は、波長650nmでの直線透過率が、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下であり、下限は特に限定されない。これにより、可視光線による誤動作を防止できる光半導体封止材が得られ、受光素子用の封止材、受光素子を備えた受光装置用の封止材として好適に使用できる。
染料、顔料の直線透過率は、染料または顔料1gを1Lの溶剤に溶解または懸濁して得られた溶液について、分光光度計を用いて、波長650nmでの透過スペクトルを光路長1cmとして測定することにより求めることができる。
【0044】
染料および/または顔料の配合量(染料および顔料の合計配合量)は、特に限定されないが、樹脂固形物の質量に対して0.01~1質量%が好ましく、0.05~0.2質量%がより好ましい。0.01質量%未満では、光半導体封止用樹脂組成物を硬化体とした場合に、波長650nmでの直線透過率を5%以下、1000nmでの直線透過率を80%以上とすることができないおそれがあり、1質量%を超えると硬化反応に対して過剰量が存在するため、諸物性の低下を引き起こすおそれがある。
【0045】
なお、光半導体封止用樹脂組成物は、染料および/または顔料の配合に際して、予め有機溶剤に溶解した状態で配合することが好ましい。
【0046】
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;ギ酸、酢酸、酪酸等の酸系溶剤;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル等のギ酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の酢酸エステル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル等の酪酸エステル等のエステル系溶剤;等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。特に、工業的に、安価に入手可能であり、樹脂組成物の製造工程中に揮発により除去可能であるという点から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチルを単独でもしくは2種以上併用したものが好ましく用いられる。なお、前記有機溶剤は、最終的には除去されることが好ましく、加熱混合時に大部分は揮散されるが、減圧処理や粉砕したものを60℃以下で数時間放置する等の処理を行なうことが好ましい。
【0047】
染料および/または顔料を有機溶剤に配合する際の、有機溶剤での染料および/または顔料の濃度(染料および顔料の合計濃度)は、樹脂組成物に対する染料および/または顔料の配合量とも関係するが、例えば、0.1~25質量%の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは1~20質量%である。すなわち、濃度が低過ぎると、必要量の染料および/または顔料を樹脂組成物に配合するために多量の有機溶剤を必要とするため、後工程において有機溶剤を完全に除去し難くなる傾向がみられ、逆に濃度が高過ぎると、染料および/または顔料の濃度が高くなり過ぎて飽和状態になり析出するという問題が生じる傾向がみられるからである。
【0048】
<<硬化促進剤>>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤に加えて、硬化促進剤を含有することが好ましい。
【0049】
硬化促進剤としては、トリエタノールアミン等の三級アミン;、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボーレートや、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物;1,8-ジアザビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン-7や1,5-ジアザビシクロ〔4,3,0〕ノネン-5等のジアザビシクロアルケン系化合物;等があげられる。これらも、単独で用いても2種以上を併用してもよい。なかでも、イミダゾール類が好ましい。
【0050】
硬化促進剤の配合量は、特に限定されないが、エポキシ樹脂100質量部に対して例えば0.1~5質量部の範囲から適宜選択でき、0.5~3質量部が好ましく、1~2質量部がより好ましい。硬化促進剤の配合量が少なすぎると、硬化の速度が遅くなり、生産性が低下し、一方、硬化促進剤の配合量が多すぎると硬化反応の速度が速く、反応状態の制御が困難となり、反応のばらつきを生じさせるおそれがある。
【0051】
<<反応物>>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤を含有し、光半導体封止用樹脂組成物を製造する際に加温を行うことなどから、硬化反応が一部進行し、通常は、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の反応物を含むことになるが、エポキシ樹脂、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の反応物を含むことが好ましい。
【0052】
組成物中の反応物の存在割合、すなわち硬化反応の進行度は特に限定されないが、反応物の存在割合を示す指標として、光半導体封止用樹脂組成物の重量平均分子量Mwを測定した場合に、すなわち、光半導体封止用樹脂組成物を有機溶媒に溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した重量平均分子量Mwは、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、さらに好ましくは4000以上、特に好ましくは4800以上、最も好ましくは5300以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは9000以下、より好ましくは7000以下である。
Mwが2000未満では、反応物の割合が少なく、良好な保存安定性が得られない傾向があり、Mwが9000を超えると、成形時に樹脂の流動性が低く、製品の充填不良となる傾向がある。
【0053】
重量平均分子量Mwは、硬化成分と硬化剤の混練時の反応等を制御することにより調整することができる。反応の制御は、例えば、熱硬化性樹脂の種類と量、硬化剤の種類と量、硬化促進剤の種類と量、反応温度、反応時間、樹脂形状などを適宜調整することにより行うことができる。
【0054】
<<その他添加剤>>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物には、前記各成分以外に必要に応じて着色防止剤、滑沢剤、変性剤、劣化防止剤、離型剤等の添加剤が用いられる。これらの添加剤は、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0055】
着色防止剤としては、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等があげられる。
【0056】
滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のワックスやタルク等があげられる。なお、前記滑沢剤を配合する場合、その配合量は、打錠成形条件に応じて適宜設定されるが、例えば、樹脂組成物全体の0.1~0.4質量%に設定することが好適である。
【0057】
前記光半導体封止用樹脂組成物は、離型剤を含み、総せん断歪量が30以上となるように混練されたものであることが好ましい。離型剤を含有することにより、成形性が改善される。
【0058】
離型剤は、離型剤としての機能を発揮するため、組成物の表面に偏析する必要があり、組成物中で相溶性が低い化合物を使用することが一般的である。そのため、フェノール系硬化剤を含む前記光半導体封止用樹脂組成物は、さらに離型剤を含む場合、離型剤の分散性が悪化し、1000nmでの直線透過率が80%未満となる場合があることが本発明者らの検討の結果明らかとなった。これは、フェノール系硬化剤の含有量が多い場合に生じやすいことも本発明者らの検討の結果明らかとなった。この本発明者らが見出した新たな課題について、本発明者らが鋭意検討した結果、前記光半導体封止用樹脂組成物が、さらに離型剤を含む場合、総せん断歪量が一定値以上となるように混練することにより、離型剤の分散性が改善し、1000nmでの直線透過率を80%以上とすることができることを見出した。
【0059】
前記光半導体封止用樹脂組成物が混練される際に加えられる総せん断歪量は、好ましくは30以上、より好ましくは80以上、さらに好ましくは120以上、特に好ましくは150以上、最も好ましくは180以上である。これにより、離型剤の分散性が改善し、1000nmでの直線透過率を80%以上とすることができる。前記総せん断歪量の上限は、特に限定されないが、大きすぎると発熱が多くなり、硬化反応が進行しすぎて粘度が上昇するおそれがあるため、好ましくは1000以下、より好ましくは800以下、さらに好ましくは600以下、特に好ましくは500以下である。
本明細書において、総せん断歪量は、せん断速度(1/s)に混練時間(s)を乗じて算出される無次元量である。
【0060】
前記光半導体封止用樹脂組成物の混練は、後述するように、たとえば押出機、ニーダーを用いて行えばよい。
【0061】
離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸;前記脂肪酸の金属塩;ポリエチレン系離型剤;カルナバワックス等のワックス;エーテル結合を有する離型剤;フッ素系離型剤;シリコーン系離型剤等が挙げられる。離型剤は、単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。なかでも、相溶性の観点でエーテル結合を有する離型剤が好ましい。
【0062】
エーテル結合を有する離型剤としては、例えば、下記の構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位を有する分子構造を備えた離型剤(ブロック重合体)が好ましく、下記の構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位を有する分子構造を備えた離型剤であって、前記構造式(3)で表される構造単位の占める割合が、離型剤を構成する分子構造全体の25~95質量%に設定されてなる離型剤であることがより好ましい。なお、式(2)、(3)で表される構造単位の末端部分の結合手は、水素原子に結合する。
【化2】

(式(2)において、mは8~100の正数である。)
【化3】

(式(3)において、nは正数である。)
【0063】
前記構造式(2)で表される構造単位における繰り返し数mは8~100の正数であって、かつ、前記構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、離型剤を構成する分子構造全体の25~95質量%の範囲に設定される。より好ましくは、前記構造式(2)で表される構造単位における繰り返し数mは13~60の正数であって、かつ、前記構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、離型剤を構成する分子構造全体の35~85質量%の範囲である。特に好ましくは、前記構造式(2)で表される構造単位における繰り返し数mは17~40の正数であって、かつ、前記構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、離型剤を構成する分子構造全体の40~70質量%の範囲である。また、前記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位は、分子構造内において連続して存在してもよいし、ランダム等不連続にて存在してもよく、その存在形態に関しては特に限定するものではないが、連続して存在する形態、いわゆるブロック状であることが好ましい。さらに、前記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位は、分子構造内において各々1個のみでなく複数個存在してもよい。
【0064】
前記離型剤を構成する単位として、前記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位以外に、アルキル基、アルキレン基、カルボキシル基、エステル結合、ケトン結合、ベンゼン環、水素原子、金属原子等があげられる。ただし、前記特定の離型剤において、分子構造全体中の前記構造式(2)で表される構造単位および構造式(3)で表される構造単位の占める割合は、通常、70~99質量%となることが好ましい。
【0065】
離型剤の数平均分子量は、通常、300~12000であることが好ましく、より好ましくは600~5000、特に好ましくは900~2500である。なお、前記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算により求める値である。また、前記離型剤の分子構造の特定方法としては、つぎの方法があげられる。すなわち、H-NMRにて、隣接する酸素を有する炭素に結合する水素〔-(CHCHO)-〕と、炭素間に挟まれた炭素に結合する水素〔-(CHCH)-〕の積算スペクトル比にて、各構造単位の比率を求め、分子量の値から繰り返し数を算出することにより特定することができる。
【0066】
離型剤の配合量は、光半導体封止用樹脂組成物100質量%中、0.5~10質量%が好ましく、0.7~8質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0067】
<光半導体封止用樹脂組成物の製造方法>
本発明の光半導体封止用樹脂組成物の製造方法は、前記各成分を混錬、分散できる方法であれば特に限定されないが、熱処理してBステージ状(半硬化状)とすることが好ましい。
【0068】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物の製造方法は、例えば、
熱硬化性樹脂、硬化剤および硬化促進剤を混練し、硬化性樹脂組成物を得る工程と、
該硬化性樹脂組成物を熱処理する工程と
を含む製造方法が挙げられる。
【0069】
混練する方法は特に限定されないが、たとえば押出機、ニーダーを用いる方法などが挙げられる。混練温度も特に限定されず、熱硬化性樹脂の特性によって適宜変更することができ、混練時に反応を進行させるように温度を高く設定することも可能である。具体的には、80~150℃が好ましく、110~130℃がより好ましい。
【0070】
混練して得られた硬化性樹脂組成物の形状は特に限定されず、フィルム状、シート状、粒状、塊状などが挙げられる。
【0071】
混練して得られた硬化性樹脂組成物の厚さは特に限定されないが、1~30mmが好ましく、2~20mmがより好ましく、2~10mmがさらに好ましい。1mm未満では、厚さが薄く、吸湿の影響を受けやすく、30mmを超えると、冷却までに時間を要し、内部蓄熱から反応がばらつく傾向がある。
【0072】
混練して得られた硬化性樹脂組成物は、熱処理してBステージ状(半硬化状)の光半導体封止用樹脂組成物を得る。熱処理温度は特に限定されないが、25~100℃が好ましく、60~80℃がより好ましい。25℃未満では、硬化反応が遅く、生産性が低下する傾向があり、100℃を超えると、硬化反応が速く、所定の反応状態で終了させることが困難となる傾向がある。熱処理時間は特に限定されず、熱硬化性樹脂の特性によって適宜変更することができる。
【0073】
熱処理して得られたBステージ状(半硬化状)の光半導体封止用樹脂組成物を以下の工程に供することが好ましい。
熱処理した硬化性樹脂組成物(Bステージ状(半硬化状)の光半導体封止用樹脂組成物)を粉砕および/または造粒し、粒状硬化性樹脂組成物を得る工程
【0074】
粉砕を行う場合、熱処理した樹脂組成物を、粉砕して、粒状樹脂組成物を得る。粉砕は、ボールミル、ターボミル等を用いて行えばよい。
【0075】
造粒を行う場合、熱処理した樹脂組成物を、造粒して、粒状樹脂組成物を得る。造粒前に、ボールミル、ターボミル等を用いて粉砕することもできる。造粒方法は特に限定されないが、乾式圧縮造粒機を用いる方法等が挙げられる。
【0076】
粉砕および/または造粒して得られた粒状物の平均粒径は特に限定されないが、1~5000μmが好ましく、100~2000μmがより好ましい。5000μmを超えると、圧縮率が低下する傾向がある。
【0077】
前記粒状硬化性樹脂組成物を得る工程は、熱処理した硬化性樹脂組成物(Bステージ状(半硬化状)の光半導体封止用樹脂組成物)を造粒し、粒状硬化性樹脂組成物を得る工程であることが好ましい。
【0078】
前記製法等により得られる本発明の光半導体封止用樹脂組成物は、下記方法により硬化体(大きさ:直径50mm×厚み1mmの円柱状)とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上である。
(硬化体の作製方法)
樹脂組成物を、150℃で4分間加熱して成形し、その後150℃で3時間加熱することで、硬化体を得る。
【0079】
波長650nmでの直線透過率は5%以下であり、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下であり、下限は特に限定されない。これにより、可視光線による誤動作を防止できる光半導体封止材が得られ、受光素子用の封止材、受光素子を備えた受光装置用の封止材として好適に使用できる。
【0080】
波長1000nmでの直線透過率は80%以上であり、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上であり、上限は特に限定されない。これにより、赤外線受光装置に信号を送るリモートコマンダーに用いられている発光素子のピーク波長付近の光の透過率が高い光半導体封止材が得られ、受光素子用の封止材、受光素子を備えた受光装置用の封止材として好適に使用できる。
【0081】
前記直線透過率は、分光光度計を用いて前記硬化体の波長650nmまたは波長1000nmでの透過スペクトルを測定することにより求める。なお、透過スペクトルの測定は、円柱形状のサンプルの底面(または上面)に対して垂直方向に行う。
【0082】
光半導体封止用樹脂組成物を前記硬化体とした場合の、波長650nmでの直線透過率を5%以下、1000nmでの直線透過率を80%以上とするためには、可視光を吸収する染料および/または顔料を配合すればよい。好ましくはアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アゾ染料、またはアントラキノン染料を配合すればよく、より好ましくはアゾ染料またはアントラキノン染料を配合すればよい。
【0083】
<光半導体封止用樹脂成形物>
本発明の光半導体封止用樹脂成形物としては、タブレット、シート等が挙げられ、光半導体装置を構成する光半導体素子を覆うように成形することにより、当該素子を封止することができる。
【0084】
光半導体封止用樹脂成形物がタブレットの場合、その体積は、特に限定されないが、1~100cmが好ましく、10~100cmがより好ましい。
【0085】
本発明の光半導体封止用樹脂成形物の製造方法は、例えば、前記工程に加えて、
前記粒状硬化性樹脂組成物を得る工程により得られた粒状樹脂組成物を成形する工程
を含む。
【0086】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物を成形して本発明の光半導体封止用樹脂成形物を得る。これにより、光半導体封止用樹脂組成物を含む光半導体封止用樹脂成形物が得られる。成形物としてはタブレットやシートが挙げられ、成形方法としてはタブレットを得る打錠成形や、シートを得る押出成形などが挙げられる。得られた成形物は、良好な保存安定性が得られるため、安定して成形可能な高品質の成形物となる。
【0087】
光半導体封止用樹脂組成物を成形して光半導体封止用樹脂成形物を得るが、光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物の組成はほぼ同一であり、例えば、光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物中の酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤の水酸基数比や重量平均分子量Mw等は、ほとんど変動がない。
【0088】
成形物がタブレットの場合、タブレットを打錠成形する際の条件は、光半導体封止用樹脂組成物の組成等に応じて適宜調整されるが、一般に、その打錠成形時の圧縮率は、90~96%に設定することが好適である。すなわち、圧縮率の値が90%より小さいと、タブレットの密度が低くなって割れやすくなるおそれがあり、逆に、圧縮率の値が96%より大きいと、打錠時にクラックが発生して離型時に欠けや折れが生じるおそれがあるからである。
【0089】
<光半導体封止材、光半導体装置>
本発明の光半導体封止用樹脂成形物は、トランスファーモールド成形等の成形方法により光半導体素子を封止して、光半導体装置を作製する。すなわち、本発明の光半導体封止用樹脂成形物は、トランスファーモールド成形等の成形により光半導体素子を樹脂封止する光半導体封止材となる。このように、本発明の光半導体封止材は、本発明の光半導体封止用樹脂成形物を成形して得られる。
本明細書において、光半導体封止材とは、光半導体装置を構成する光半導体素子を覆うように形成され、当該素子を封止する部材である。
【0090】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物は、保存安定性に優れ、可視光線による誤動作を防止することも可能であるため、本発明の光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物を成形して得られる光半導体封止材は、光学ムラ等がなく、信頼性が高く、可視光線による誤動作を防止可能な高品質の光半導体封止材である。
【0091】
本発明の光半導体装置は、光半導体素子と、当該光半導体素子を封止する本発明の光半導体封止材とを備える。本発明の光半導体装置は、本発明の光半導体封止材を備えるので、光学ムラ等がなく、信頼性が高く、可視光線による誤動作を防止可能な高品質の光半導体装置である。
【0092】
本発明の光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物は、硬化体とした場合の、波長650nmでの直線透過率が5%以下、1000nmでの直線透過率が80%以上であるため、近赤外センサーなどの受光装置としての機能を発揮しつつ、可視光線による誤動作を防止できる。よって、本発明の光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物は、受光素子用の封止材、受光素子を備えた受光装置用の封止材として好適に使用でき、近赤外受光素子用の封止材、近赤外受光素子を備えた近赤外センサー用の封止材としてより好適に使用できる。同様に、本発明の光半導体装置は、受光素子を備えた受光装置であることが好ましく、近赤外受光素子を備えた近赤外センサー(赤外線受光装置)であることがより好ましい。
【実施例0093】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0094】
使用した材料を以下に示す。
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量650)
エポキシ樹脂2:トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100)
硬化剤1 :テトラヒドロ無水フタル酸(酸無水当量152)
硬化剤2 :ノボラック型フェノールホルムアルデヒド樹脂(フェノール当量106)(繰り返し構造の数が5以上の樹脂の割合:40質量%、軟化点:84℃)
硬化促進剤 :2-エチル-4-メチルイミダゾール
染料 :ジスアゾ系黒色染料、(波長650nmでの直線透過率:1%未満)
離型剤 :下記式で表される化合物(m=25、n=6.4、ここで、繰り返し単位の数は、全分子の平均値であり、全ての分子がこの繰り返し単位の数ではない。)
【化4】
【0095】
実施例1~12および比較例1、2
各原料を表1、2に示す配合量で、表1、2に記載した温度に設定した押出機で加熱溶解し混合した後、押出機の吐出口から出てきた樹脂を2~10mm厚で成形し、60℃で60分間熱処理した。押出機中での滞留時間は約2分であった。この処理により、アセトンは全て揮発した。得られたエポキシ樹脂組成物を、ロールグラニュレータ(日本グラニュレーター株式会社製、テスト機:1531型)にて、造粒と整粒を行うことにより、光半導体封止用樹脂組成物を得た。得られた光半導体封止用樹脂組成物を、20号ロータリー打錠機を用いて打錠成形することにより、表1、2に示す光半導体封止用樹脂タブレットを作製した。圧縮率は、90~93%であった。押出機で加熱溶解し混合する際に組成物に加えられる総せん断歪量は、表1の各例では、329.7であり、表2の各例では、表2に記載の通りである。
【0096】
各実施例、比較例で作製した光半導体封止用樹脂組成物、タブレットを用いて、以下に示す方法で評価した。評価結果を表1、2に示す。
【0097】
<試験片(硬化体)の作製>
前記のようにして作製した光半導体封止用樹脂組成物を用いて、金型で成形する(硬化条件:150℃×4分間加熱)ことにより、直径50mm×厚み1mmの円柱状の試験片用硬化物を作製した。これを、150℃で3時間加熱することにより完全に硬化を終了させ、試験片を得た。
【0098】
<直線透過率>
まず石英セル中を富士フィルム和光純薬社製の流動パラフィンで満たし、日本分光社製の分光光度計V-670を使用して、ベースラインを測定した。その後、前記で作製した試験片(直径50mm×厚み1mmの円柱状)を石英セル中の流動パラフィンに浸漬し、波長650nmでの光透過率(直線透過率)、波長1000nmでの光透過率(直線透過率)を測定した。なお、透過スペクトルの測定は、円柱形状のサンプルの底面(円形状の底面)に対して垂直方向に行った。
【0099】
<保存安定性>
得られたタブレットをアルミ袋に入れて真空脱気して密封した。密封したアルミ袋を5℃で24時間静置した後、25℃で24時間静置し、このサンプルを0日目のサンプルとした。また、密封したアルミ袋を5℃で24時間静置した後、25℃で192時間静置し、このサンプルを7日目のサンプルとした。
0日目のサンプル、7日目のサンプルについて、アルミ袋を開封し、アルミ袋から取り出したタブレットを用いて、以下の方法にてスパイラルフロー長SFを測定し、0日目のサンプルに対する7日目のサンプルのスパイラルフロー長SFの残存率を保存安定性(%)とした。保存安定性(%)が大きいほど、流動性の低下を抑制できていることを示す。
<スパイラルフロー長SFの測定>
EMMI(Epoxy Molding Materials Institute)規格1-66に準じ、金型温度150℃、成形圧力970kgf/cm、硬化時間120s、射出速度2.0cm/sの条件で測定した。具体的には、流動性測定装置を用い、得られたタブレットを粗粉砕して開口径5mmのふるいを通ったパウダーを、150℃に維持したポッドに投入し、プランジャーを一定速度で押し込んでプレスした。スパイラルフロー長SFは、プランジャーの変位量とその時間を計測して算出した。
【0100】
<分子量>
得られた光半導体封止用樹脂組成物の一部をテトラヒドロフランに溶解させ、GPC装置(東ソー株式会社製、HLC-8320GPC)を用いて以下の条件で測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量Mwを求めた。
カラム:TSKgel Super HZMH/HZ4000/HZ3000/HZ2000
カラムサイズ:6.0mmI.D.×150mm
溶離液:THF
流量:0.6mL/min
検出器:RI
カラム温度:40℃
注入量:20μL
【0101】
【表1】
【0102】
表1に示す実験結果から、実施例1~4の光半導体封止用樹脂組成物では、保存安定性が良好なタブレットが得られた。よって、光半導体生産において安定してトランスファー成形などの成形が可能である。
一方、比較例1では、保存安定性が低いタブレットしか得られなかった。よって、光半導体生産において安定してトランスファー成形などの成形を行うことが難しい。
【0103】
【表2】
【0104】
表2に示す実験結果から、本発明の光半導体封止用樹脂組成物が離型剤を含む場合、総せん断歪量が一定値以上となるように混練することにより、離型剤の分散性が改善し、1000nmでの直線透過率を80%以上とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、光半導体素子の封止に用いられる光半導体封止用樹脂組成物、光半導体封止用樹脂成形物に関し、光半導体封止材、光半導体装置の製造に利用することができる。