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特開2022-158971バッテリー管理システムでの高速な過電流検出
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158971
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】バッテリー管理システムでの高速な過電流検出
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/12 20060101AFI20221006BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20221006BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221006BHJP
   H02H 3/087 20060101ALI20221006BHJP
   G05F 1/10 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H02H7/12 B
H02H7/18
H02J7/00 S
H02H3/087
G05F1/10 304M
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022033473
(22)【出願日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】17/219,025
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519383544
【氏名又は名称】アナログ・ディヴァイシス・インターナショナル・アンリミテッド・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ガウラヴ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ウレージュ・バウミク
【テーマコード(参考)】
5G004
5G053
5G503
5H410
【Fターム(参考)】
5G004AA04
5G004BA04
5G053AA01
5G053CA01
5G053EA01
5G053EC03
5G053FA05
5G503BA02
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB11
5G503CB13
5G503FA17
5H410BB01
5H410BB05
5H410CC02
5H410DD02
5H410EA11
5H410EB01
5H410FF03
5H410FF05
5H410FF07
5H410FF14
5H410FF25
5H410LL06
(57)【要約】
【課題】本明細書では、BMSのための改良された過電流検出および緩和システム、方法、ならびに技術を提供する。
【解決手段】BMSモニタは、2つの異なる技術を使用して過電流を検出し得る。第1の技術は、異なる、重複する期間にわたる平均電力に基づいて過電流を検出し得る。第2の技術は、スイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することに基づいて過電流を検出し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護するためのバッテリーモニタであって、
電圧を受信するための入力を含む変換器回路と、
前記電圧に基づいてパルスシーケンスを生成する発振器と、
デジタル回路であって、
少なくとも2つの異なる時間窓にわたって測定された前記パルスシーケンスの決定された特性に基づいて、前記スイッチングデバイスについての第1の障害事象の発生または非発生を検出する第1の検出器、および
前記パルスシーケンスに基づいて前記スイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することによって、前記スイッチングデバイスについての第2の障害事象の発生または非発生を検出する第2の検出器、
を含むデジタル回路と、
を備える、バッテリーモニタ。
【請求項2】
前記パルスシーケンス内のパルスをカウントするリセット可能なカウンタをさらに備え、
前記デジタル回路が、前記リセット可能なカウンタによってカウントされるパルスのカウントを決定し、一定期間に受信したパルスの数を決定するように構成されている、請求項1に記載のバッテリーモニタ。
【請求項3】
前記第1および第2の障害事象が、過電流状態を含む、請求項1に記載のバッテリーモニタ。
【請求項4】
前記バッテリーモニタが、前記第1の障害事象または前記第2の障害事象のうちの少なくとも1つの検出に応答して、前記スイッチングデバイスを無効にするように構成されている、請求項1に記載のバッテリーモニタ。
【請求項5】
前記スイッチングデバイスが、金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタ(MOSFET)である、請求項1に記載のバッテリーモニタ。
【請求項6】
前記第1の検出器が、
前記パルスシーケンスに基づいて、前記異なる時間窓にわたって散逸される電力を決定し、
各時間窓について、その時間窓で散逸された電力をその時間窓のそれぞれの電力閾値と比較し、
前記時間窓のうちの少なくとも1つにわたって散逸された前記電力が、その窓の前記それぞれの電力閾値を超えることに応答して、前記第1の障害事象を検出するように構成されている、請求項1に記載のバッテリーモニタ。
【請求項7】
前記第2の検出器が、
前記スイッチングデバイスの熱特性を表す抵抗器およびコンデンサの線状ネットワークの抵抗値および容量値のデジタル表現を取得し、
前記抵抗値および前記容量値と、前記パルスシーケンスに基づいて、前記モデル化されたジャンクション温度を決定するように構成されている、請求項1に記載のバッテリーモニタ。
【請求項8】
前記第2の検出器が、
前記抵抗器および前記コンデンサをバイナリペアのセットにグループ化し、
前記バイナリペアの第1のセットに第1のコンピューティング要素を割り当て、
前記バイナリペアの残りのセットに第2のコンピューティング要素を割り当てるようにさらに構成されている、請求項7に記載のバッテリーモニタ。
【請求項9】
前記変換器回路が、
前記電圧を2乗電流信号に変換するための電圧対電力変換器をさらに含み、
前記発振器が、前記2乗電流信号を前記パルスシーケンスに変換するように構成されている、請求項1に記載のモニタ。
【請求項10】
負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護する方法であって、
入力電圧を検出することと、
前記入力電圧に基づいてパルスシーケンスを生成することと、
少なくとも2つの異なる時間窓にわたって測定された前記パルスシーケンスの決定された特性に基づいて、前記スイッチングデバイスについての第1の障害事象の発生または非発生を決定することと、
前記パルスシーケンスに基づいて前記スイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することによって、前記スイッチングデバイスについての第2の障害事象の発生または非発生を決定することと、
前記第1または第2の障害事象の前記発生を決定することに応答して、前記スイッチングデバイスの動作を無効にすることと、を含む、方法。
【請求項11】
前記パルスシーケンス内のパルスをカウントしてリセット可能なカウントを生成することと、
前記リセット可能なカウントに基づいて、一定期間内に受信したパルスの数を決定することと、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2の障害事象が、過電流状態を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記スイッチングデバイスが、金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタ(MOSFET)である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の障害事象の前記発生または非発生を決定することが、
前記パルスシーケンスに基づき、前記異なる時間窓にわたって散逸される電力を決定することと、
各時間窓について、その時間窓で散逸された電力をその時間窓のそれぞれの電力閾値と比較することと、
前記時間窓のうちの少なくとも1つにわたって散逸された前記電力が、その窓の前記それぞれの電力閾値を超えることに応答して、前記第1の障害事象を検出することと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の障害事象の前記発生または非発生を決定することが、
前記スイッチングデバイスの熱特性を表す抵抗器およびコンデンサの線状ネットワークの抵抗値および容量値のデジタル表現を取得することと、
前記抵抗値および前記容量値と、前記パルスシーケンスに基づいて、前記モデル化されたジャンクション温度を決定することと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記抵抗器および前記コンデンサをバイナリペアのセットにグループ化することと、
前記バイナリペアの第1のセットに第1のコンピューティング要素を割り当てることと、
前記バイナリペアの残りのセットに第2のコンピューティング要素を割り当てることと、をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護するための装置であって、
電圧を受信するための入力を含む変換器回路と、
前記電圧に基づいてパルスシーケンスを生成する発振器と、
複数のタイミングフィルタおよび比較器を含む障害検出器であって、
前記パルスシーケンスに基づいて、複数の時間窓にわたって散逸される電力を決定し、
前記複数の時間窓の各時間窓について、その時間窓で散逸された前記電力をその窓のそれぞれの電力閾値と比較し、
前記比較に基づいて、過電流事象を検出し、
前記過電流事象の検出に応答して、前記スイッチングデバイスを無効にする、
障害検出器と、
を備える装置。
【請求項18】
前記パルスシーケンス内のパルスをカウントするリセット可能なカウンタをさらに備え、
前記障害検出器が、前記リセット可能なカウンタによってカウントされるパルスのカウントを決定し、一定期間内に受信したパルスの数を決定するように構成されている、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記スイッチングデバイスが、金属酸化物半導体フィールド効果トランジスタ(MOSFET)である、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
前記パルスシーケンスに基づいて前記スイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することによって、前記スイッチングデバイスのついての第2の障害事象の発生または非発生を検出する異なる障害検出器をさらに備える、請求項17に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、過電流検出などの、バッテリー管理システム(BMS)のための安全技術および機構に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートグリッドと電気自動車(EV)の技術が急速に進化する中で、充電式バッテリーが大規模なエネルギー貯蔵装置として登場した。BMSは、充電式バッテリーを監視して、バッテリーの充電レベルなどの関連データを制御システムに提供する。BMSには、グリッドエネルギーの貯蔵から電気自動車、電動自転車、電動スクーターなどの他の消費者向け製品まで、様々な用途があり得る。
【0003】
充電式バッテリーは、本質的に電気化学的であり、アウトガス、電解物の漏れ、または過熱もしくは酸素との放熱反応などの熱的問題などの様々な望ましくない動作特性を示すことがある。そのような望ましくない状態の1つは、意図したよりも大きい電流が個々のセルまたはバッテリーセルスタックによって供給されるか、または沈められる過電流状態である。過電流は過熱や熱暴走にさえつながる可能性がある。
【0004】
バッテリーが誤動作しているときに、バッテリーを対応する負荷(例えば、電気自動車(EV)牽引モータまたは関連する制御回路)から選択的に接続および切断するために、機械式リレーなどのスイッチング機構が提供され得る。しかしながら、機械式リレーは、高価であり、遅く、かつかさばることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護するためのバッテリーモニタであって、電圧を受信するための入力を含む変換器回路と、前記電圧に基づいてパルスシーケンスを生成する発振器と、デジタル回路であって、少なくとも2つの異なる時間窓にわたって測定された前記パルスシーケンスの決定された特性に基づいて、前記スイッチングデバイスについての第1の障害事象の発生または非発生を検出する第1の検出器、および前記パルスシーケンスに基づいて前記スイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することによって、前記スイッチングデバイスについての第2の障害事象の発生または非発生を検出する第2の検出器、を含むデジタル回路と、を備える、バッテリーモニタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
添付の図面の様々なものは、本開示の例示的な実施形態を示すに過ぎず、その範囲を限定するものと見なされるべきではない。
図1】BMSの例示的な部分のブロック図である。
図2A】システム内の電流スパイクの例を示す。
図2B】システム内の電流スパイクの例を示す。
図3】BMSモニタの例示的な部分を示す。
図4】時間窓の例を示す。
図5A】サンプルMOSFETの熱インピーダンスプロファイルを示す。
図5B】サンプルMOSFETのカウエルモデルの回路表現を示す。
図6A】サンプルバイナリR-Cシステムを示す。
図6B】バイナリR-Cシステムにおける電流の流れのグラフを示す。
図6C】サンプルMOSFETのカウエルモデルの回路図を示す。
図6D】バイナリR-Cペアのセットを示す。
図6E】スイッチド抵抗器を有するネットワークを示す。
図6F】スイッチタイミング方式を示す。
図7】BMSモニタの例示的な部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態は、バッテリー管理システムBMSで使用される改良された過電流検出および緩和システム、方法、および技術を提供する。BMSは、EVに提供されてもよい。BMSモニタは、2つの異なる技術を使用して過電流を検出してもよく、冗長性を提供し、信頼性を向上させる。第1の技術は、異なる、重複する期間にわたる平均電力に基づいて過電流を検出し得る。第2の技術は、半導体素子などのスイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定し、バッテリーを負荷に結合することに基づいて過電流を検出し得る。両方の技術は、過去の電流のグリッチなどの回路性能の履歴情報を考慮してもよい。いずれかの技術によって過電流が検出された場合、スイッチングデバイスはすばやく無効にされ得、スイッチングデバイスが故障するのが防止される。したがって、本明細書に記載される過電流検出技術は、コストを低減しながら、BMSの安全性および信頼性を向上させる。
【0008】
本文献は、負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護するためのバッテリーモニタについて説明する。バッテリーモニタは、電圧を受信するための入力を有する変換器回路と、電圧に基づいてパルスシーケンスを生成するための発振器とを含み得る。バッテリーモニタはさらに、少なくとも2つの異なる時間窓にわたって測定されたパルスシーケンスの決定された特性に基づいて、スイッチングデバイスについての第1の障害事象の発生または非発生を検出するための第1の検出器と、パルスシーケンスに基づいてスイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することによってスイッチングデバイスについての第2の障害事象の発生または非発生を検出するための第2の検出器とを有するデジタル回路を含んでもよい。
【0009】
本文献は、負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護する方法についても説明する。方法は、入力電圧を検出することと、入力電圧に基づいてパルスシーケンスを生成することと、少なくとも2つの異なる時間窓にわたって測定されたパルスシーケンスの決定された特性に基づいて、スイッチングデバイスについての第1の障害事象の発生または非発生を決定することと、パルスシーケンスに基づいてスイッチングデバイスのモデル化されたジャンクション温度を決定することによって、スイッチングデバイスについての第2の障害事象の発生または非発生を決定することと、第1または第2の障害事象の発生を決定することに応答して、スイッチングデバイスの動作を無効にすることと、を含み得る。
【0010】
本文献はさらに、負荷に電力を供給するために使用されるスイッチングデバイスを保護するための装置について説明する。装置は、電圧を受信する入力を有する変換器回路と、電圧に基づいてパルスシーケンスを生成する発振器とを含み得る。装置はまた、複数のタイミングフィルタおよび比較器を含む障害検出器を含んでもよく、パルスシーケンスに基づいて複数の時間窓にわたって散逸した電力を決定し、複数の時間窓の時間窓ごとに、その時間窓で散逸した電力をその窓のそれぞれの電力閾値と比較し、比較に基づいて過電流事象を検出し、過電流事象の検出に応答して、スイッチングデバイスを無効にする。
【0011】
図1は、BMS100の例示的な部分のブロック図を示す。BMS100は、複数のバッテリーセル102.1~102.N、BMSモニタ104、ヒューズ106、負荷108、スイッチングデバイス110、シャント抵抗器112、OR論理ゲート114、および駆動回路116を含み得る。
【0012】
バッテリーセル102.1~102.Nは、バッテリーパック用のバッテリーモジュールとして設けられてもよい。例えば、バッテリーパックは、リチウムイオン化学を使用し、48ボルトの公称出力または他の所望の出力を提供するような、バッテリーセルのスタックまたは他の集合を提供してもよい。異なる仕様、サイズ、および形状のバッテリーを使用することができる。バッテリーセル102.1~102.Nは、BMSモニタ104によって監視され得る。例えば、BMSモニタ104は、複数の電圧測定チャネル、例えば、16チャネルを含み得る。
【0013】
用例として、BMSモニタ104は、集積回路として設けられてもよく、集積回路は、モノリシック集積回路、または多数の集積回路ダイもしくは共通共有集積回路デバイスパッケージ内の他の回路要素を含む集積モジュールを含み得る。BMSモニタ104は、バッテリーセル102.1~102.Nの電圧、電流、および/または温度レベルを測定するためのハードウェアおよびソフトウェアを含み得る。BMSモニタ104は、これらの測定値を、EEPROMなどのメモリに格納し得る。BMSモニタ104はまた、有線ネットワーク、無線ネットワーク、またはそれらの組み合わせを使用し、通信インターフェースを介して、これらの測定値をマスタコントローラ(図示せず)に通信してもよい。
【0014】
バッテリーセル102.1~102.Nはまた、ヒューズ106、負荷108、スイッチングデバイス110、およびシャント抵抗器112に結合されてもよい。負荷108は、EV牽引モータなど、バッテリーセル102.1~102.Nから電力を受信する構成要素であり得る。負荷108は、バッテリーセル102.1~102.Nによって完全にまたは部分的に電力供給されてもよい。ヒューズ106は、バッテリーセル102.1~102.Nが負荷108から恒久的に切断される必要がある(例えば、極端な過熱)緊急事態のために提供され得る。
【0015】
スイッチングデバイス110は、バッテリーセル102.1~102.Nを負荷108に選択的に接続および切断し得る。スイッチングデバイス110は、金属酸化物-半導体フィールド効果トランジスタ(MOSFET)として設けられてもよい。例えば、スイッチングデバイス110は、高電圧で動作するように構成された炭化ケイ素(SiC)MOSFETとして提供されてもよい。MOSFETは、コストが低く、応答時間が速いため、機械式リレーよりも利点がある。しかしながら、MOSFETはより低い耐障害性を有し得るため、MOSFETは過電流などのバッテリーの誤動作事象によって、より容易に損傷され得る。また、MOSFETは、スイッチングデバイス110として使用される場合、回路において故障する最初のデバイスのうちの1つであり得る。MOSFETが故障するとき、ショートとして故障することが多い。この故障-ショート特性は、バッテリーセル102.1~102.Nと負荷108との間に短絡を生じさせるため、1つ以上のセルの壊滅的な故障を引き起こし得る。ヒューズ106は、著しい損傷が行われる前にとび得るが、ヒューズ106がとぶと、組み込まれたデバイス(例えば、負荷)は使用不能になり得る。EVの例では、EVは駆動不能になり得、サービスステーションに持って行って、高額な修理を受けなければならない場合がある。
【0016】
したがって、BMSモニタ104は、過電流状況などの特定の状況で、スイッチングデバイス110(例えば、MOSFET)を無効にする(例えば、オフにする、動作を制限する)ことができる。BMSモニタ104は、シャント抵抗器112にわたる電圧を検出してもよい。検出された電圧から、過電流事象を検出し、次いで、スイッチングデバイス110(例えば、MOSFET)が故障する前に、比較的速い時間でスイッチングデバイス110をオフにし得る。この例では、BMSモニタ104は、以下でさらに詳細に説明するように、2つの異なる技術(OC1およびOC2)を使用することによって過電流事象を検出してもよい。OC検出技術のいずれかが過電流事象を示す場合、OR論理ゲート114の出力は、駆動回路116をトリガして、スイッチングデバイス110を無効にし得る。OR論理ゲート114および/またはドライバ回路116は、BMSモニタ104と統合されてもよい。
【0017】
いくつかの過電流検出技術は、スイッチングデバイス110の過電流事象を正確に検出することができない場合がある。電流の流れは、負荷108(例えば、EV牽引モータ)のスイッチングに起因する過渡を含むことができ、したがって、過電流事象を単に「ある期間にわたって閾値を超える電流」として定義することは、スイッチングデバイス110を保護するのに有効ではない場合がある。
【0018】
図2A図2Bは、システムにおける電流スパイクの例を示す。図2Aは、2つのスパイク(またはグリッチ):1マイクロ秒の持続時間にわたって2000Aの大きさの第1のスパイク202と、2マイクロ秒の持続時間にわたって500Aの大きさの第2のスパイク204と、を示す。過電流事象を検出するための閾値が、少なくとも2マイクロ秒の持続時間にわたって400Aを超える電流スパイクに設定されていると考える。ここで、第2のスパイク204(2マイクロ秒の持続時間にわたって500A)は、過電流事象として検出されるが、第1のスパイク202(1マイクロ秒の持続時間にわたって2000A)は過電流事象として検出されない。これは、第1のスパイク202が、より広い第2のスパイク204と比較して、スイッチングデバイス(例えば、MOSFET)におけるエネルギーの8倍を散逸し得るため、問題となり得る。
【0019】
さらに、スイッチングデバイス(例えば、MOSFET)の故障は、単一の時点での電流ではなく、システム内の電流(および散逸された電力および熱)の履歴に依存し得る。図2Bは、1マイクロ秒の持続時間にわたって2000Aの大きさを各々が有する第1のセットの電流スパイク206、および2マイクロ秒の持続時間にわたって500Aの大きさを各々が有する第2のセットの電流スパイク208を示す。過電流事象を検出するための閾値が、少なくとも2マイクロ秒の持続時間にわたって600Aを超える電流スパイクに設定されていると考える。ここで、第1のセットまたは第2のセットのスパイク206、208のいずれのスパイクも、過電流事象の検出をトリガし得るものではない。これは、各スパイクがスイッチングデバイス(例えば、MOSFET)内に一定量の熱を生成させ得、スパイクの連続的な性質がスイッチングデバイスの過熱をもたらし、スイッチングデバイスの故障をもたらし得るため、問題となり得る。したがって、MOSFETなどのスイッチングデバイスの過電流は、特定の時間における電流の量だけでなく、回路性能の履歴にも基づいてもよい。
【0020】
図3は、BMSモニタ300の例示的な部分を示す。BMSモニタ300は、シャント抵抗器R(例えば、図1のシャント抵抗器112)にわたる電圧を検出し得る。検出された電圧に基づいて、BMSモニタ300は、それぞれ過電流事象1(OC1)および事象2(OC2)を検出する2つの異なる検出技術に基づいて過電流事象を検出してもよい。図1を参照して上で説明したように、過電流事象(OC1および/またはOC2)のいずれかの生成は、MOSFET(例えば、図1のスイッチングデバイス110)などのスイッチングデバイスを無効にすることをトリガし得る。
【0021】
BMSモニタ300は、2つの異なる障害検出技術に対応する2つの処理チェーン310、350を含み得る。第1の処理チェーン310は、第1のアナログフロントエンド回路312と、第1のカウンタ314と、第1のデジタルエンジン316と、を含み得る。第1のアナログフロントエンド回路312は、シャント抵抗器にわたる電圧を受信または検出し、検出された電圧をパルスシーケンス(または周期的パルス)に変換し得る。
【0022】
第1のアナログフロントエンド回路312は、第1の電圧対電力変換器312.1と、第1の電流制御発振器(CCO)312.2と、を含み得る。第1の電圧対電力変換器312.1は、検出された電圧を電力信号に変換し得る。第1の電圧対電力変換器312.1は、例えば、特定のトランスコンダクタンス特性を有するデバイスを使用して、検出された電圧を電流信号に変換してもよい。次いで、電流信号は、電力信号を生成するために2乗され得、電流の2乗が電力を表し得るので、p(t)=i(t)Rであり、Iは電流であり、Rは抵抗である。第1のCCO312.2は、電力信号をパルスシーケンスに変換し得る。したがって、パルスシーケンスは、電流制御され得る。各パルスは、「エネルギーの単位」に対応し得る。パルスシーケンスの周波数は、検出された電圧の2乗に比例し得る。例えば、1Vの検出された電圧が、1Hzの周波数を有するパルスシーケンスを生成する場合、2Vの検出された電圧は、4Hzの周波数(2Vの2乗)を有するパルスシーケンスを生成し得る。
【0023】
第1のカウンタ314は、生成されたパルスシーケンス内のパルスの数をカウントし得る。第1のカウンタ314は、ロータリーカウンタまたは他のリセットカウンタであり得、そのカウンタが最大カウントに達した後、ロールオーバーし、カウントを再び開始し得る。例えば、カウントが1~12である場合、カウントが12に達した後、カウントは再び1から開始される。第1のカウンタ314は、4ビットのグレイカウンタなどのグレイカウンタとして提供されてもよい。
【0024】
第1のカウンタ314は、第1のデジタルエンジン316に結合されてもよい。第1のデジタルエンジン316は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して実装され得る。第1のデジタルエンジン316は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、デジタル状態機械、および/または他の好適な構成要素を含み得る。
【0025】
第1のデジタルエンジン314は、パルスシーケンスを受信してもよく、受信したパルスシーケンスに基づいて、第1の過電流事象(OC1)などの第1の障害事象を検出してもよい。第1のカウンタ314によって生成されたパルスシーケンスは、上述したように、スパイク(またはグリッチ)を含むことができる電流を表すので、非同期的に生成され得る。したがって、第1のデジタルエンジン314は、パルスシーケンスをそのシステムクロック(SCLK)に同期させてもよい。システムクロックの各クロックサイクル(例えば、125ナノ秒)またはクロックサイクルのセットについて、第1のデジタルエンジン314は、パルスシーケンスの事前に取得された値をレジスタ316.1に格納してよく、減算器316.2を使用して、それをパルスシーケンスの現在取得された値から減算し、そのクロックサイクル(またはクロックサイクルのセット)のためのエネルギーシーケンス(電力シーケンスとも呼ばれる)を生成してもよい。エネルギーシーケンスは、最後のサイクル(またはクロックサイクルのセット)で散逸されるエネルギー/電力に対応し得る。第1のカウンタ314は、システムクロックのクロックサイクル内でそのカウントの完全な回転を完了しないように、十分なサイズであり得る。
【0026】
第1のデジタルエンジン316は、生成されたエネルギーシーケンスに基づいて過電流事象を検出するためにOC1検出器316.3を含み得る。OC1検出器316.3は、異なる期間にわたるエネルギーの平均に基づいてOC1を検出し得る。OC1検出器316.3は、多数の指数移動平均(EMA)窓を使用してもよい。
【0027】
図4は、時間窓の例を示す。図4は、5つの時間窓W1~W5を示す。時間窓W1~W5は、現在の時間に基づいて後ろ向きに測定され得る。時間窓W1は、現在の時間から後ろ向きに第1の時間、例えば、1マイクロ秒までの最短の窓であってもよい。時間窓W2は、現在の時間から後ろ向きに第2の時間、例えば10マイクロ秒まで、W1よりも長くてもよい。時間窓W3は、現在の時間から後ろ向きに第3の時間、例えば、100マイクロ秒まで、W2よりも長くてもよい。時間窓W4は、現在の時間から後ろ向きに現在の時間、例えば、1000マイクロ秒まで、W3よりも長くてもよい。時間窓W5は、現在の時間から後ろ向きに第5の時間、例えば10000マイクロ秒まで、W4よりも長くてもよい。時間窓は、タイミングフィルタを使用して実装され得る。タイミング窓の期間は、構成可能であってもよい。期間は、以下でさらに詳細に論じられるように、MOSFETの熱ラダーの期間に基づいて構成されてもよい。
【0028】
各時間窓について、散逸された平均電力が同時に決定され得る。平均電力は、それぞれの期間中に観察されるエネルギーシーケンスの関数であり得る。したがって、図4の例では、時間窓W1~W5の平均電力は、最後の1マイクロ秒、10マイクロ秒、100マイクロ秒、1000マイクロ秒、および10000マイクロ秒でそれぞれ散逸した電力を示し得る。
【0029】
各時間窓はまた、電力閾値に関連付けられ得る。各窓の平均電力は、それぞれの電力閾値と比較され得る。各窓の個々の閾値は、構成可能であってもよい。例えば、閾値は、スイッチングデバイス(MOSFET)のシミュレーションに基づいて取得されてもよい。シミュレーションは、以下でさらに詳細に説明するように、最大許容ケース温度およびジャンクション温度を想定し得る。
【0030】
任意の時間窓について決定された平均電力がそのそれぞれの電力閾値を超える場合、BMSモニタ300(例えば、OC1検出器316.3)は、過電流事象OC1の発生を決定し得る。異なる時間窓を使用して、散逸された電力のデジタル推定を決定することは、多数の短いスパイクに応答しながらも、電流スパイク(グリッチ)から生じる過電流事象の誤検知を排除または減少させ得る。
【0031】
図3に戻って参照すると、次に、第2の処理チェーン350が説明される。第2の処理チェーン350は、第2のアナログフロントエンド回路352、第1のカウンタ354、および第1のデジタルエンジン356を含み得る。第2のアナログフロントエンド回路352は、第1のアナログフロントエンド回路312と同様であってもよく、または実質的に同じであってもよい。そのため、第2のアナログフロントエンド回路352は、シャント抵抗器にわたる電圧を受信または検出し、検出された電圧をパルスシーケンス(または周期的パルス)に変換し得る。
【0032】
第2のアナログフロントエンド回路352は、上記のように、第2の電圧対電力変換器352.1と、第2の電流制御発振器(CCO)352.2とを含み得、これらの構成要素は、第1のアナログフロントエンド回路312内のそれらの対応物と同じように動作し得る。第2の電圧対電力変換器352.1は、検出された電圧を電力信号に変換し得る。第2の電圧対電力変換器352.1は、例えば、トランスコンダクタデバイスを使用して、検出された電圧を電流信号に変換してもよい。次いで、電流信号は、電力信号を生成するために2乗されてもよい。第2のCCO352.2は、電力信号をパルスシーケンスに変換し得る。したがって、パルスシーケンスは、電流制御され得る。各パルスは、「エネルギーの単位」に対応し得る。パルスシーケンスの周波数は、検出された電圧の2乗に比例し得る。
【0033】
第2のカウンタ354は、上記の第1のカウンタ314と同じように動作し得る。第2のカウンタ354は、ロータリーカウンタであり得、そのカウンタが最大カウントに達した後、カウントをロールオーバーし、カウントを再び開始し得る。例えば、カウントが1~12である場合、カウントが12に達した後、カウントは再び1から開始される。第2のカウンタ354は、4ビットのグレイカウンタなどのグレイカウンタとして提供されてもよい。
【0034】
一例では、第1の処理チェーン310および第2の処理チェーン350の1つ以上のアナログおよびカウンタ構成要素(例えば、312および315、314および354)は、一緒に組み合わされるか、または統合され得る。例えば、単一のアナログフロントエンド回路および/またはカウンタが提供され得る。
【0035】
第2のカウンタ354は、第2のデジタルエンジン356に結合され得る。第2のデジタルエンジン356は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを使用して実装され得る。第2のデジタルエンジン356は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、デジタル状態機械、および/または他の好適な構成要素を含み得る。
【0036】
第2のデジタルエンジン354は、パルスシーケンスを受信してもよく、受信したパルスシーケンスに基づいて、第2の過電流事象(OC2)などの第2の障害事象を検出してもよい。第2のカウンタ354によって生成されたパルスシーケンスは、上述したように、スパイク(またはグリッチ)を含むことができる電流を表すので、非同期的に生成され得る。したがって、第2のデジタルエンジン354は、パルスシーケンスをそのシステムクロック(SCLK)に同期させてもよい。システムクロックの各クロックサイクル(例えば、125ナノ秒)またはクロックサイクルのセットについて、第2のデジタルエンジン354は、パルスシーケンスの事前に取得された値をレジスタ356.1に格納してよく、減算器356.2を使用して、それをパルスシーケンスの現在取得された値から減算し、そのクロックサイクル(またはクロックサイクルのセット)のためのエネルギーシーケンス(電力シーケンスとも呼ばれる)を生成してもよい。エネルギーシーケンスは、最後のサイクル(またはクロックサイクルのセット)で散逸されるエネルギー/電力に対応し得る。第2のカウンタ354は、システムクロックのクロックサイクル内でそのカウントの完全な回転を完了しないように、十分なサイズであり得る。
【0037】
第2のデジタルエンジン356は、生成されたエネルギーシーケンスに基づいて過電流事象を検出するためにOC2検出器356.3を含み得る。OC2検出器356.3は、スイッチングデバイス(例えば、MOSFETジャンクション)のモデル化された(例えば、仮想)ジャンクション温度を決定し、決定されたモデル化されたジャンクション温度を温度閾値と比較し、比較に基づいて、過電流事象OC2の発生を検出し得る。
【0038】
MOSFETのジャンクション温度は、その安全かつ適切な動作性の信頼できる指標であり得る。例えば、特定のMOSFETは、それらのジャンクション温度が175°C未満である間、安全かつ適切に機能し得、それらのジャンクション温度が175°Cを一定期間超えると、故障することがある。したがって、スイッチングMOSFETのジャンクション温度に基づいて過電流状態が検出されてもよい。
【0039】
実際の(またはリアルな)ジャンクション温度は、測定することが困難であり得る。しかし、ジャンクション温度は、MOSFETによって散逸された電力に関連しており、選択された時点で散逸された瞬間電力だけでなく、一定期間にわたって散逸された電力の履歴に関連している。したがって、OC2検出器356.3は、エネルギーシーケンスによって検出されるようなMOSFETによって散逸された電力およびMOSFETの熱特性のデジタル表現に基づいて、モデル化されたジャンクション温度を決定し得る。
【0040】
図5Aは、サンプルMOSFETの熱インピーダンスプロファイルを示し、図5Bは、サンプルMOSFETのカウエルモデルの回路表現を示す。図5Aおいて、x軸は時間スケールを表し、y軸はサンプルMOSFETの熱抵抗(またはインピーダンス)を示す。熱抵抗は、ジャンクションとエネルギー量で割られたMOSFETのケースとの間に生じる温度差に対応し得る。
【0041】
MOSFETは、図5Bに示すように、カウエル熱ラダーとして知られる、カスケードされた抵抗器およびコンデンサのネットワークとしてモデル化され得る。カウエルモデルは、電力に比例する電流として提供される入力ポートと、既知の熱電位、例えば、ケース温度Tcaseとして提供される他端の終端ポートと、を有する抵抗器およびコンデンサの線状ネットワークを含み得る。ジャンクション温度Tjは、カウエルモデルの第1のコンデンサ(Cj1)と第1の抵抗器(RTj13)との間のノードに対応してもよい。カウエルモデルにおける抵抗器およびコンデンサの値は、MOSFETの固有の特性に基づいており、したがって、MOSFETのデジタルモデル、例えば、SPICE(集積回路強調付きシミュレーションプログラム)モデルから取得されてもよい。一例では、デジタル表現は、ΔT/(RiCi)として特徴付けられてもよい。
【0042】
図3に戻って参照すると、OC2検出器356.3は、例えば、スイッチングデバイスのデジタルモデルからスイッチングデバイス(例えば、MOSFET)のカウエルモデルの値を取得してもよく、それらをデジタルレジスタ値に変換してもよい。したがって、カウエルモデルにおける抵抗器およびコンデンサに対するこれらのデジタルレジスタ値は、構成可能であってもよい。そのため、エネルギーシーケンスおよびデジタルカウエルモデルレジスタ値に基づいて、OC2検出器356.3は、スイッチングデバイスの仮想ジャンクション温度Tjを計算し得る。次いで、OC2検出器353.3は、仮想ジャンクション温度Tjを温度閾値、例えば、175°Cと比較し得る。決定された仮想ジャンクション温度Tjが温度閾値を超える場合、BMSモニタ300(例えば、OC2検出器356.3)は、過電流事象OC2の発生を決定し得る。
【0043】
過電流事象OC1およびOC2のいずれか(または両方)の検出に応答して、スイッチングデバイスは、無効にされ得る。本明細書に記載されるこれらの検出技術は、過電流事象をすばやく検出することができ、スイッチングデバイスが故障する前に比較的速い方法で無効にできる。
【0044】
図6A図6Fは、モデル化された(例えば、仮想)ジャンクション温度の計算技術を説明するために使用される。図6Aは、サンプルバイナリR-Cシステムを示す。ここで、2つのコンデンサC1、C2は、その間に抵抗器Rを備えて並列に結合され、バイナリR-Cシステムを作成する。図6Bは、図6AのバイナリR-Cシステムにおける電流の流れのグラフを示す。第1の電位V1は、C1とRとの間に存在し、第2の電位V2は、C2とRとの間に存在する。
【0045】
V1およびV2は、以下のように特徴付けられ得る:
【数1】
ここで、nは時間サイクル、Δtはサイクル時間、τは時定数である。
【0046】
V1およびV2はまた、以下のように特徴付けられてもよい。
【数2】
【0047】
上述したように、MOSFETは、抵抗器およびコンデンサのネットワーク、例えば、カウエルモデルとしてモデル化されてもよい。したがって、上記のV1[n+1]およびV2[n+1]のための計算技術を使用して、仮想ジャンクション温度を計算してもよい。図6Cは、サンプルMOSFETのカウエルモデルの回路図を示す。示されるように、モデルの回路図は、抵抗器(R1、R2、R3、R4、R5、R6)およびコンデンサ(C0、C1、C2、C3、C4、C5)のネットワークを含む。この抵抗器およびコンデンサのネットワークは、バイナリペアのセットに変換され得る。図6Dは、バイナリR-Cペアのセットを示す。2つのコンピューティング要素(コンピューティング要素1およびコンピューティング要素2)を使用して、スイッチングおよびタイミング方式を使用してバイナリ要素に分割されるときの熱ラダーの値を解くことができる。第1のコンピューティング要素は、第1のRC時定数を解くことに専用であってもよく、第2のコンピューティング要素は、他のRC要素によって共有されてもよい。
【0048】
図6Eは、スイッチド抵抗器を有するネットワークを示す。ここで、線状ネットワーク内の抵抗器は、スイッチド抵抗器に置き換えられ得、抵抗値は、それらのバイナリ位置に基づき、相応じて調整され得る。R1はR1/1のままであり、R2はR2/2となり、R3はR3/4となり、R4はR/8となり、R5はR5/16となり、R6はR6/32となるなどである。図6Fは、スイッチタイミング方式を示す。示されるように、スイッチタイミングは、抵抗器接続タイミングが相互排他的であるように、設定されてもよい。すなわち、一度に1つの抵抗器スイッチのみが閉じられる。
【0049】
したがって、サイクルごとに1つのバイナリペアを解くことができる。2つのコンピューティング要素では、2Δt、4Δt、8Δt、16Δt、32Δt、64Δtなどの第2のコンピューティング要素について相互排他的なタイムスロットがあり得る。第1のコンピューティング要素は、第1のバイナリペアを解くことに専用であってもよい。第1のバイナリペアの時定数は、Δtに匹敵してもよい。第2のコンピューティング要素は、他のバイナリペアにより、それらの相互排他的なタイムスロットに基づいて、共有されてもよい。次いで、2つのコンピューティング要素は、MOSFETを表す熱ラダーの値を解くことができ得る。第1のコンデンサC0の値は比例定数を有してジャンクション温度に対応してもよく、コンデンサの値は履歴データに対応してもよい。
【0050】
図7は、BMSモニタ700の例示的な部分を示す。BMSモニタ700は、シャント抵抗器R(例えば、図1のシャント抵抗器112)にわたる電圧を検出し得る。検出された電圧に基づいて、BMSモニタ300は、それぞれ過電流事象1(OC1)および事象2(OC2)を検出する2つの異なる検出技術を使用して過電流事象を検出してもよい。図1を参照して上で説明したように、過電流事象(OC1および/またはOC2)のいずれかまたは両方の生成は、MOSFET(例えば、図1のスイッチングデバイス110)などのスイッチングデバイスを無効にすることをトリガし得る。
【0051】
BMSモニタ700は、2つの異なる過電流検出技術に対応する2つの処理チェーン710、750を含み得る。第1の処理チェーン710は、アナログ構成要素:レベルシフタ712、極性比較器714、極性スイッチ716、トランスコンダクタ718、電流信号2乗デバイス720、およびCCO722を含み得る。
【0052】
レベルシフタ712、極性比較器714、および極性スイッチ716は、シャント抵抗器にわたる電圧を検出し、調整することができる。トランスコンダクタ718は、検出された(および調整された)電圧を電流信号に変換し得る。また、トランスコンダクタ718は、調整可能であり得るゲインを適用し得る。電流信号2乗デバイス720は、電流信号を2乗して、電力信号を表す2乗電流信号を生成し得る。CCO722は、2乗電流信号をパルスシーケンスに変換し得る。したがって、パルスシーケンスは、電流制御され得る。各パルスは、「エネルギーの単位」に対応し得る。パルスシーケンスの周波数は、検出された電圧の2乗に比例し得る。
【0053】
カウンタ724は、生成されたパルスシーケンス内のパルスの数をカウントし得る。カウンタ724は、ゲーリーカウンタなどのロータリーカウンタとして提供されてもよい。
【0054】
次に、パルスカウントは、デジタルエンジンによって受信されてもよい。ここで、システムクロック(SCLK)に基づき、パルスカウントの前の値は、遅延部726および減算器728を使用してパルスカウントの現在の値から減算されて、所与のクロックサイクル(またはクロックサイクルのセット)に対するエネルギーシーケンス(または電力シーケンス)が生成され得る。次に、エネルギーシーケンスは、複数のEMAフィルタ730に送信され得る。EMAフィルタ730は、上述のように、それぞれ異なる期間にわたって定義され得る。各EMAフィルタ730は、そのそれぞれの時間窓内で散逸される電力を決定し得る。デジタル比較器732は、各EMAフィルタ730からの平均電力をそれぞれの電力閾値と比較し得る。異なる窓の電力閾値は、構成可能であってもよく、メインレジスタファイル734からのレジスタ値に基づいて設定されてもよい。デジタル比較器732の出力は、ORゲート736に供給され得る。したがって、任意の時間窓に決定された平均電力がそのそれぞれの電力閾値を超える場合、BMSモニタ700は、過電流事象OC1の発生を検出し得る。
【0055】
第2の処理チェーン750は、アナログ構成要素:レベルシフタ752、極性比較器754、極性スイッチ756、電流信号2乗デバイス760、およびCCO762を含み得る。これらの構成要素は、第1の処理チェーン710内のそれらの対応物と同じまたは同様の方法で動作し得る。第2の処理チェーン750内のこれらの構成要素の1つ以上は、第1の処理チェーン710内のそれらの対応物と一緒に組み合わされるか、または統合され得る。
【0056】
第2の処理チェーンは、エネルギーシーケンスを生成するためのカウンタ764、遅延部766、および減算器768も含み得る。これらの構成要素は、第1の処理チェーン710内のそれらの対応物と同じまたは同様の方法で動作し得る。第2の処理チェーン750内のこれらの構成要素の1つ以上は、第1の処理チェーン710内のそれらの対応物と一緒に組み合わされるか、または統合され得る。
【0057】
第2の処理チェーン750では、カウエルサーマルフィルタ770は、エネルギーシーケンスを受信してもよい。本明細書に記載されるように、カウエルサーマルフィルタ770はまた、スイッチングデバイス、例えば、Tcaseのカウエルモデルのデジタルレジスタ値を受信してもよく、スイッチングデバイス(例えば、MOSFET)の仮想ジャンクション温度Tjを計算してもよい。デジタルレジスタ値は、構成可能であってもよく、冗長レジスタファイル772(またはメインレジスタファイル734)からのレジスタ値に基づいて設定されてもよい。デジタル比較器774は、仮想ジャンクション温度を温度閾値と比較し得る。温度閾値は、構成可能であってもよく、冗長レジスタファイル772(またはメインレジスタファイル734)からのレジスタ値に基づいて設定されてもよい。決定された仮想ジャンクション温度が温度閾値を超える場合、BMSモニタ700は、過電流事象OC1の発生を検出し得る。過電流事象OC1およびOC2のうちの少なくとも1つの検出に応答して、スイッチングデバイスは無効にされ得る。
【0058】
様々なメモ
上記の非限定的な態様の各々は、それ自体で成り立つ場合もあれば、または本文献に記載される他の態様もしくは他の主題のうちの1つ以上と様々な順列もしくは組み合わせで組み合わされる場合もある。
【0059】
上記の詳細な説明は、詳細な説明の一部を形成する添付図面の参照を含む。図面は、例示として、本発明を実施することができる特定の実装を示す。これらの実装は、一般に「例」とも呼ばれる。そのような例は、示されまたは記載されたものに加えて要素を含むことができる。しかし、本発明者らは、示されまたは記載された要素のみが提供される例も想到する。さらに、本発明者らはまた、本明細書に示されまたは記載された特定の例(またはその1つ以上の態様)に関して、または他の例(またはその1つ以上の態様)に関してのいずれかで示されまたは記載されたそれらの要素(またはその1つ以上の態様)の任意の組合せまたは順列を使用する例も想到する。
【0060】
本文献と参照により組み込まれる任意の文献との間に不整合な使用法がある場合には、本文献における使用法が支配する。
【0061】
本文献では、単数を表す用語は、特許文献で一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の他の例または使用法とは関係なく、1つまたは2つ以上を含むように使用される。本文献では、「または」という用語は、特に指定のない限り、「AまたはB」が「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むように、非排他的な「または」を指すために使用される。本文献では、「含む」および「で」という用語は、「備える」および「そこで」というそれぞれの用語の平易な英語の同等語として使用される。また、以下の特許請求の範囲において、「含む」および「備える」という用語は制限のないものであり、すなわち、請求項においてそのような用語の後に列挙されたものに加えて、要素を含むシステム、デバイス、物品、組成物、製剤、またはプロセスは、依然としてその請求項の範囲内にあると考えられる。さらに、以下の請求項では、「第1」、「第2」、および「第3」などの用語は単にラベルとして使用され、その対象に数値的な要件を課すことを意図するものではない。
【0062】
本明細書に記載される方法の例は、少なくとも部分的に機械またはコンピュータに実装することができる。いくつかの例は、上記の例の方法を実行するために電子デバイスを構成するように動作可能な命令でコード化されたコンピュータ可読媒体または機械可読媒体を含むことができる。そのような方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準の言語コードなどのコードを含むことができる。そのようなコードは、様々な方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成することができる。さらに、一例では、コードは、実行中または他の時点などで、1つ以上の揮発性、非一時的、または不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体に有形に格納することができる。これらの有形のコンピュータ可読媒体の例は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光ディスク(例えば、コンパクトディスクおよびデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)などを含み得るが、これらに限定されない。
【0063】
上記の説明は例示的であることを意図しており、限定的なものではない。例えば、上記の例(またはその1つ以上の態様)を互いに組み合わせて使用することができる。当業者であれば、上記の説明を検討することにより、他の実装を使用することができる。要約書は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために提供される。要約書は、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないということを理解した上で提出される。また、上記の発明を実施するための形態では、開示を効率化するために、様々な特徴をグループ化してまとめることができるこれは、特許請求されていない開示された特徴がいずれかの請求項に不可欠であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実装のすべての特徴にない場合がある。したがって、以下の特許請求の範囲は、例または実装として発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は別個の実装としてそれ自体で成り立ち、かつそのような実装は、様々な組み合わせまたは順列で互いに組み合わせることができることが想到される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲とともに決定されるべきである。
【符号の説明】
【0064】
104 BMSモニタ
106 ヒューズ
108 負荷
110 スイッチングデバイス
112 シャント抵抗器
114 OR論理ゲート
116 駆動回路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
【外国語明細書】