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  • 特開-オレフィン重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158974
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】オレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20221006BHJP
   C08F 10/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034776
(22)【出願日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021062287
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堅固山 千尋
(72)【発明者】
【氏名】田村 直也
(72)【発明者】
【氏名】室戸 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽一
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA16Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100FA06
4J100FA10
4J100FA19
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC01
4J128AC28
4J128AD06
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128CB27C
4J128CB30C
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC01
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA09
4J128GB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハフニウム錯体を用いたオレフィン重合体の製造方法として、ハフニウム錯体中に不純物として含まれるジルコニウム錯体由来の重合体の副生を抑制することができる製造方法を提供する。
【解決手段】ハフニウム系メタロセン化合物である成分(A)とジルコニウム系メタロセン化合物である成分(B)と特定の共触媒成分(C)(成分(C)は、好ましくは、有機アルミニウムオキシ化合物)とを含んでなるオレフィン重合用触媒、および、R17-E-R18[式中、Eは周期表第16族原子を示し、R17およびR18は独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。]で表される成分(D)の存在下、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、(共)重合する工程を含むオレフィン重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含んでなるオレフィン重合用触媒、および、下記成分(D)の存在下、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、(共)重合する工程を含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
成分(A):下記一般式(1)で表されるハフニウム化合物;
【化1】
[一般式(1)中、nはHfの価数を満たす数であり、
1~R8はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R1~R8のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
1は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
成分(B):下記一般式(2)で表されるジルコニウム化合物;
【化2】
[一般式(2)中、nはZrの価数を満たす数であり、
9~R16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R9~R16のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
2は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
成分(C):下記一般式(3)~(5)で表される有機金属化合物(c-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)、ならびに、成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物;
a mAl(ORbnpq ・・・(3)
[一般式(3)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。]
aAlRa 4 ・・・(4)
[一般式(4)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示す。]
a rbb st ・・・(5)
[一般式(5)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示し、MbはMg、ZnおよびCdから選ばれ、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。]
成分(D):下記一般式(6)で表される化合物;
17-E-R18・・・(6)
[一般式(6)中、Eは周期表第16族原子を示し、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。]
【請求項2】
前記一般式(6)において、Eは酸素原子または硫黄原子である、請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(6)において、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基である、請求項1または2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(6)において、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(6)において、R17およびR18は同一の炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記オレフィン重合用触媒が固体状である請求項1~5のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記オレフィン重合用触媒が、さらに固体状担体(S)を含む、請求項6に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
前記成分(C)が有機アルミニウムオキシ化合物であり、前記固体状担体(S)が多孔質酸化物である請求項7に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記成分(A)が、下記一般式(7)で表されるハフニウム化合物であり、前記成分(B)が、下記一般式(8)で表されるジルコニウム化合物である、請求項1~8のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【化3】
[一般式(7)中、nはHfの価数を満たす数であり、
19~R30はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R19~R30のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
1は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
【化4】
[一般式(8)中、nはZrの価数を満たす数であり、
31~R42はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R31~R42のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
2は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体の製造方法、より詳しくは、遷移金属触媒を用いるオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン(共)重合体を製造する際、オレフィン重合用触媒として、メタロセンなどの遷移金属錯体と有機アルミニウムオキシ化合物(アルミノキサン)などの助触媒成分とからなる触媒が広く採用されている。このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合を行うにあたり、オレフィン重合を種々の添加剤の存在下で行うことにより、得られるオレフィン重合体の物性を調整する試みは種々なされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、メタロセン系の担持触媒を用いたエチレンの重合を、エーテルまたはチオエーテルの存在下で行うことにより、得られる重合体の融点を低下させることができることが開示されている。ここで、特許文献1の実施例には、ジルコニウム化合物またはチタン化合物を含む担持触媒を用いてエチレン/オレフィン共重合を得たことが具体的に示されている。ただ、特許文献1には、2種以上のメタロセン化合物を含む担持触媒を用いた重合も、ハフニウム化合物を含む担持触媒を用いた重合も、具体的に示されていない。
【0004】
これに関連して、特許文献2には、チーグラー- ナッタ触媒を用いたエチレンと他のオレフィンとの共重合を、エーテルまたはチオエーテルの存在下で行うことにより、得られる重合体の融点を低下させることができることが開示されている。
【0005】
また、特許文献3にも、オレフィン重合体の製造方法として、メタロセン系の担持触媒および特定のチオエーテルの存在下でオレフィンを重合することが開示されている。ここで、特許文献3の実施例には、ジルコニウム化合物を含む担持触媒を用いてエチレン/オレフィン共重合を得たことが具体的に示されている。なお、特許文献3に記載の製造方法は、オレフィン系重合体を高活性で製造できると共に、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れを効果的に防止することにより安定した重合を行うことを目的としている。ただ、特許文献3には、メタロセン系の担持触媒として、複数の遷移金属錯体を組み合わせてなるものを用いることは記載されておらず、ハフニウム化合物を含む担持触媒を用いた重合も、具体的に示されていない。
【0006】
また、オレフィン重合用触媒として、互いに特性の異なる2種類の遷移金属錯体を組み合わせてなるものを用いることも従来行われている。このようなオレフィン重合についても、種々の添加剤の存在下で行う試みがなされてきている。
【0007】
例えば、特許文献4には、互いに特性の異なる2種類の遷移金属錯体を組み合わせてなる触媒を用いたオレフィンの重合を、ポリアルキレンオキサイドブロックポリマーや高級脂肪族アミドなど活性プロトンを有する化合物の存在下で行うことが開示されている。ただ、特許文献4には、オレフィンの重合を、2つの炭化水素基が1つの酸素原子を介して互いに結合してなるエーテル、または、2つの炭化水素基が1つの硫黄原子を介して互いに結合してなるチオエーテルの存在下で行うことは記載されていない。また、特許文献4には、メタロセン系の担持触媒としてハフニウム化合物を含む担持触媒を用いた重合も、具体的に示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003-501527号公報
【特許文献2】特表2003-501526号公報
【特許文献3】特開2020-164685号公報
【特許文献4】特開2014-019825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
互いに構成金属の異なる2種類の遷移金属錯体を組み合わせてなるオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合は、多くの場合、得られるオレフィン重合体の物性を調整するために積極的に行われる。ただ、用いる遷移金属の種類によっては、遷移金属錯体を構成する第1の遷移金属に第2の遷移金属が不純物として含まれる場合もあり、この場合にも、互いに構成金属の異なる複数種類の遷移金属錯体を組み合わせてなるオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合が行われることになる。例えば、オレフィン重合用触媒としてハフニウム錯体を用いる場合、このオレフィン重合用触媒に、ジルコニウム錯体が不純物として含まれる場合がある。これについて、本発明者らは、ハフニウム錯体のほかに対応するジルコニウム錯体を含むオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行う場合、(i) ジルコニウム錯体の方がハフニウム錯体よりも重合触媒としての活性が高い傾向があり、(ii) ハフニウム錯体由来の重合体の生成量に対するジルコニウム錯体由来の重合体の生成量の割合が、オレフィン重合用触媒におけるハフニウム錯体の量に対するジルコニウム錯体の量の割合よりも多くなる傾向にある、という知見を得ている。
【0010】
ハフニウム錯体を用いてオレフィン重合体の製造を行う際、ハフニウム錯体中に不純物として含まれるジルコニウム錯体由来の重合体が混入し、得られる重合体の物性に影響を及ぼす恐れがある。そこで、本発明は、ハフニウム錯体とジルコニウム錯体とを含むオレフィン重合用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法として、ジルコニウム錯体由来の重合体の生成量を低減させることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ハフニウム錯体を含む触媒系中でオレフィンの重合を行う際、当該触媒系に特定の添加剤を添加すると、ハフニウム錯体の活性をある程度維持しながら、ハフニウム錯体中に不純物として含まれるジルコニウム錯体由来の重合体の副生を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]~[9]に関する。
【0012】
[1]
下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含んでなるオレフィン重合用触媒、および、下記成分(D)の存在下、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、(共)重合する工程を含むことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
成分(A):下記一般式(1)で表されるハフニウム化合物;
【0013】
【化1】
【0014】
[一般式(1)中、nはHfの価数を満たす数であり、
1~R8はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素
含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基お
よびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R1~R8
うちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
1は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含
有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素
基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、
ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選
ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
成分(B):下記一般式(2)で表されるジルコニウム化合物;
【0015】
【化2】
【0016】
[一般式(2)中、nはZrの価数を満たす数であり、
9~R16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R9~R16のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
2は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
成分(C):下記一般式(3)~(5)で表される有機金属化合物(c-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)、ならびに、成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物;
a mAl(ORbnpq ・・・(3)
[一般式(3)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。]
aAlRa 4 ・・・(4)
[一般式(4)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示す。]
a rbb st ・・・(5)
[一般式(5)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示し、MbはMg、ZnおよびCdから選ばれ、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。]
成分(D):下記一般式(6)で表される化合物;
17-E-R18・・・(6)
[一般式(6)中、Eは周期表第16族原子を示し、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。]
【0017】
[2]
前記一般式(6)において、Eは酸素原子または硫黄原子である、請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0018】
[3]
前記一般式(6)において、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基である、[1]または[2]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0019】
[4]
前記一般式(6)において、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基である、[1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0020】
[5]
前記一般式(6)において、R17およびR18は同一の炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基である、[1]~[4]のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0021】
[6]
前記オレフィン重合用触媒が固体状である[1]~[5]のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0022】
[7]
前記オレフィン重合用触媒が、さらに固体状担体(S)を含む、[6]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0023】
[8]
前記成分(C)が有機アルミニウムオキシ化合物であり、前記固体状担体(S)が多孔質酸化物である[7]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0024】
[9]
前記成分(A)が、下記一般式(7)で表されるハフニウム化合物であり、前記成分(B)が、下記一般式(8)で表されるジルコニウム化合物である、[1]~[8]のいずれかに記載のオレフィン重合体の製造方法。
【0025】
【化3】
【0026】
[一般式(7)中、nはHfの価数を満たす数であり、
19~R30はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R19~R30のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
1は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0027】
【化4】
【0028】
[一般式(8)中、nはZrの価数を満たす数であり、
31~R42はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、R31~R42のうちの互いに隣接する2個の基が連結して環を形成してもよく、
2は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良く、
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0029】
本発明では、ハフニウム錯体を用いてオレフィン重合体を製造するにあたり、ハフニウム錯体中に不純物として含まれるジルコニウム錯体を選択的に失活させ、得られる重合体中のジルコニウム錯体由来重合体量比を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】実施例1および2、並びに、製造例3における、共重合により得られる成分(A)由来ポリマーの割合および成分(B)由来ポリマーの割合と成分(D)の添加量との関係を示す図。
図2】実施例3、および、製造例6における、共重合により得られる成分(A)由来ポリマーの割合および成分(B)由来ポリマーの割合と成分(D)の添加量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0032】
ここで、本明細書において、「重合」なる記載および「(共)重合」なる記載は、別途の記載がない限り、いずれも単独重合および共重合を包括する意味で用いられる。
また、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0033】
[オレフィン重合体の製造方法]
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、後述するオレフィン重合用触媒、および、後述する成分(D)の存在下、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、(共)重合する工程を含む。この(共)重合は、通常、重合器内で行われる。
以下、本発明に係る製造方法について詳述する。
【0034】
<オレフィン重合用触媒>
本発明の製造方法では、下記成分(A)と、下記成分(B)と、下記成分(C)とを含んでなるオレフィン重合用触媒が用いられる。このオレフィン重合用触媒は、固体状であることが好ましい。また、このオレフィン重合用触媒は、成分(A)、成分(B)および成分(C)に加えて、固体状担体(S)を含んでもよく、さらに成分(G)も含んでも良い。
上記オレフィン重合用触媒で用いられる各成分について説明する。
【0035】
成分(A)
本発明では、オレフィン重合用触媒を構成する成分(A)として、ハフニウム錯体が用いられる。本発明で用いられる成分(A)は、具体的には、下記一般式(1)で表されるハフニウム化合物である:
【0036】
【化5】
【0037】
前記一般式(1)中、nはHfの価数を満たす数であり、具体的には1~4の整数、好ましくは2である。
1~R8はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0038】
前記炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアリールアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、ノニル基、ドデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基およびアダマンチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基およびシクロヘキセニル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、α-またはβ-ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ベンジルフェニル基、ピレニル基、アセナフチル基、フェナレニル基、アセアントリレニル基、テトラヒドロナフチル基、インダニル基およびビフェニリル基が挙げられる。アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基およびフェニルプロピル基などが挙げられる。
【0039】
前記ケイ素含有基としては、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチル-tert-ブチルシリル基等のアルキルシリル基;ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等のアリールシリル基などが挙げられる。
【0040】
前記R1~R8のうちの互いに隣接する2個の基は、連結して環を形成してもよい。ここで、本発明の好適な態様の1つにおいて、R5とR6、および、R7とR8はそれぞれ互いに連結して環を形成している。
【0041】
1は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良い。
【0042】
1となりうる、酸素を含有していても良い炭素原子数1~20の炭化水素基の例として、メチレン基、1,2-エチリデン基、1,2-エチリデン基、イソプロピリデン基など炭素原子数1~20のアルキリデン基;ジフェニルメチレン基、ジ(p-トリル)メチレン基など、2以上のアリール基を有する炭素原子数13~20のメチレン基;並びに、ジ(p-メトキシフェニル)メチレン基など炭素原子数15~20のジ(アルコキシフェニル)メチレン基などが挙げられる。
【0043】
1となりうるケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル-t-ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレンおよびシクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられ、特に好ましくは、ジメチルシリレン基およびジブチルシリレン基などのジアルキルシリレン基が挙げられる。
【0044】
本発明の特に好ましい態様の1つにおいて、Q1は、ジ(p-メトキシフェニル)メチレン基である。また、本発明のもう1つの特に好ましい態様において、Q1は、ジ(p-トリル)メチレン基である。
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、好ましくはハロゲン原子または炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。また、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は、互いに同一でも異なっていてもよい。またXで示される基が複数存在する場合、当該複数のXは互いに結合して環を形成してもよい。
【0045】
本発明の好適且つ例示的な態様において、本発明で用いられる成分(A)は、下記一般式(7)で表されるハフニウム化合物である。
【0046】
【化6】
【0047】
前記一般式(7)中、nは、上記一般式(1)におけるnと同じである。
19~R30はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、R19~R30となりうる炭化水素基およびケイ素含有基の例は、前記一般式(1)におけるR1~R8となりうる炭化水素基およびケイ素含有基とそれぞれ同様である。
【0048】
前記R19~R30のうちの互いに隣接する2個の基は、連結して環を形成してもよい。ここで、本発明の好適な態様の1つにおいて、R24とR25、および、R28とR29はそれぞれ互いに連結して環を形成している。
【0049】
1およびXは、それぞれ、上記一般式(1)におけるQ1およびXと同じである。
本発明の特に好適な態様の1つにおいて、本発明で用いられる成分(A)は、下記一般式(9)で表されるハフニウム化合物である。
【0050】
【化7】
【0051】
前記一般式(9)中、n、Q1およびXは、それぞれ、上記一般式(1)におけるn、Q1およびXと同じである。
また、本発明のもう1つの特に好適な態様において、本発明で用いられる成分(A)は、下記一般式(11)で表されるハフニウム化合物である。
【化8】
【0052】
前記一般式(11)中、n、Q1およびXは、それぞれ、上記一般式(1)におけるn、Q1およびXと同じである。
【0053】
成分(B)
本発明において、オレフィン重合用触媒を構成する成分(B)は、ジルコニウム錯体である。本発明で用いられる成分(B)は、具体的には、下記一般式(2)で表されるジルコニウム化合物である:
【0054】
【化9】
【0055】
前記一般式(2)中、nはZrの価数を満たす数であり、具体的には1~4の整数、好ましくは2である。
9~R16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、R9~R16となりうる炭化水素基およびケイ素含有基の例は、前記一般式(1)におけるR1~R8となりうる炭化水素基およびケイ素含有基とそれぞれ同様である。
【0056】
前記R9~R16のうちの互いに隣接する2個の基は、連結して環を形成してもよい。ここで、本発明の好適な態様の1つにおいて、R13とR14、および、R15とR16はそれぞれ互いに連結して環を形成している。
【0057】
2は二価の基であり、炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基またはスズ含有基であり、前記炭素原子数1~20の炭化水素基は酸素を含有していても良い。ここで、Q2となりうる炭素原子数1~20の炭化水素基およびケイ素含有基の例は、前記一般式(1)におけるQ1となりうる炭化水素基およびケイ素含有基とそれぞれ同様である。
【0058】
Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基からなる群より選ばれる原子または基であり、好ましくはハロゲン原子または炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。また、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよい。またXで示される基が複数存在する場合、当該複数のXは互いに結合して環を形成してもよい。
【0059】
本発明の好適且つ例示的な態様において、本発明で用いられる成分(B)は、下記一般式(8)で表されるジルコニウム化合物である。
【0060】
【化10】
【0061】
前記一般式(8)中、nは、上記一般式(2)におけるnと同じである。
19~R30はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基からなる群より選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、R19~R30となりうる炭化水素基およびケイ素含有基の例は、前記一般式(2)におけるR1~R8となりうる炭化水素基およびケイ素含有基とそれぞれ同様である。
【0062】
前記R19~R30のうちの互いに隣接する2個の基は、連結して環を形成してもよい。ここで、本発明の好適な態様の1つにおいて、R24とR25、および、R28とR29はそれぞれ互いに連結して環を形成している。
【0063】
2およびXは、それぞれ、上記一般式(2)におけるQ2およびXと同じである。
本発明の特に好適な態様の1つにおいて、本発明で用いられる成分(B)は、下記一般式(10)で表されるジルコニウム化合物である。
【0064】
【化11】
【0065】
前記一般式(10)中、n、Q2およびXは、それぞれ、上記一般式(2)におけるn、Q2およびXと同じである。
また、本発明のもう1つの特に好適な態様において、本発明で用いられる成分(B)は、下記一般式(12)で表されるジルコニウム化合物である。
【化12】
【0066】
前記一般式(12)中、n、Q2およびXは、それぞれ、上記一般式(2)におけるn、Q2およびXと同じである。
ここで、本発明の典型的な態様の1つにおいて、本発明の製造方法は、上記成分(A)に加えて、不純物として上記成分(B)が含まれるハフニウム触媒を用いてオレフィン重合体の製造を行う際に行われる。この態様において、上記成分(B)を構成する配位子は、多くの場合、上記成分(A)を構成する配位子と同じである。したがって、本発明の例示的な態様の1つにおいて、上記一般式(2)におけるR9~R16、n、Q2およびXは、それぞれ、上記一般式(1)におけるR1~R8、n、Q1およびXと同じである。ただ、上記一般式(2)におけるR9~R16、n、Q2およびXの全てが、必ずしも、それぞれ、上記一般式(1)におけるR1~R8、n、Q1およびXと同じである必要はなく、例えば、上記一般式(2)におけるR9~R16、n、Q2およびXのうちのいずれか1以上が、それぞれ、上記一般式(1)におけるR1~R8、n、Q1およびXと異なっていてもよい。同様のことは、一般式(8)におけるR31~R42、n、Q2およびXと上記一般式(7)におけるR19~R30、n、Q1およびXとの関係、上記一般式(10)におけるn、Q2およびXと上記一般式(9)におけるn、Q1およびXとの関係、並びに、上記一般式(12)におけるn、Q2およびXと上記一般式(11)におけるn、Q1およびXとの関係についてもあてはまる。
【0067】
成分(C)
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、前記成分(A)および前記成分(B)のほかに、成分(C)として、特定の有機アルミニウム化合物が用いられる。この成分(C)は、助触媒として機能するものであり、具体的には、下記一般式(3)~(5)で表される有機金属化合物(c-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)、ならびに、成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である;
a mAl(ORbnpq ・・・(3)
[一般式(3)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1~15の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。]
aAlRa 4 ・・・(4)
[一般式(4)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示す。]
a rbb st ・・・(5)
[一般式(5)中、RaおよびRbは、それぞれ独立に炭素原子数が1以上15以下の炭化水素基を示し、MbはMg、ZnおよびCdから選ばれ、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。]
一般式(3)、(4)または(5)で表される有機金属化合物(c-1)の中では、一般式(3)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0068】
有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0069】
成分(A)および成分(B)と反応してイオン対を形成する化合物(c-3)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
本発明において、成分(C)は、好ましくは前記有機アルミニウムオキシ化合物(c-2)である。
【0070】
固体状担体(S)
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、前記成分(A)、(B)および(C)に加えて、固体状担体(S)をさらに含んでいても良い。本発明の好適な態様において、オレフィン重合用触媒は、固体状担体(S)をさらに含んでいる。本発明において用いることができる固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0071】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは多孔質酸化物が挙げられる。
多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaOおよびThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23およびSiO2-TiO2-MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0072】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2~300μm、好ましくは1~200μmであって、比表面積が通常50~1200m2/g、好ましくは100~1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3~30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して用いられる。
本発明において、固体状担体(S)は、好ましくは前記多孔質酸化物である。
【0073】
成分(G)
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、前記成分(A)、(B)および(C)、並びに、オプショナルの固体状担体(S)に加えて、成分(G)として、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルをさらに含んでいても良い。
【0074】
本願発明において、このような成分(G)は、反応器内でのファウリングを抑制し、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、オレフィン重合用触媒中に共存させることができる。前記ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテルの例として、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0075】
オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒の調製方法について記載する。
本発明で用いられるオレフィン重合用触媒は、前記成分(A)、前記成分(B)および前記成分(C)を不活性炭化水素中または、不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製することができる。
【0076】
各成分の添加順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
i)成分(A)と成分(B)を混合接触させた後に、成分(C)を接触させ、重合系中に添加する方法
ii)成分(A)と成分(C)を混合接触させた接触物および成分(B)と成分(C)を混合接触させた接触物を重合系内に添加する方法
iii)成分(A)、成分(B)および成分(C)それぞれを連続的に重合系中に添加する方法、などが挙げられる。
【0077】
また、オレフィン重合用触媒が固体状担体(S)を含む場合、成分(A)、成分(B)および成分(C)の少なくとも1つの成分と、固体状担体(S)とを不活性炭化水素中で接触させ、固体触媒成分(X)を調製することができる。各成分の接触順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
iv)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)および成分(B)を接触させて固体触媒成分(X)を調製する方法
v)成分(A)、成分(B)および成分(C)を混合接触させた後に、固体状担体(S)を接触させて調製する方法
vi)成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(A)と接触させて調製した固体触媒成分(X1)と、成分(C)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(B)と接触させて調製した固体触媒成分(X2)とを用いる方法、などが挙げられ、より好ましいのはiv)である。
【0078】
ここで、オレフィン重合用触媒が成分(G)も含む場合、成分(G)は、上記オレフィン重合用触媒の調製におけるいずれの工程に共存させてもよく、接触順序も任意である。
例えば、各成分の接触順序が上記iv)で行われる場合、成分(G)は、前記成分(A)および成分(B)の接触を行った後に加えることができる。
【0079】
不活性炭化水素として、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0080】
成分(C)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0~20時間、好ましくは0~10時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-20~120℃である。また、成分(C)と固体状担体(S)との接触のモル比(成分(C)/固体状担体(S))は、通常0.2~2.0、特に好ましくは0.4~2.0である。
【0081】
成分(C)および固体状担体(S)の接触物と、成分(A)および成分(B)との接触時間は、通常0~5時間、好ましくは0~2時間であり、接触温度は、通常-50~200℃、好ましくは-50~100℃である。成分(A)と成分(B)との接触量は、成分(C)の種類と量に大きく依存し、成分(c-1)を使用する場合は、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)と、成分(c-1)とのモル比[(c-1)/M]が、通常0.01~100000、好ましくは0.05~50000となる量で用いられ、成分(c-2)を使用する場合は、成分(c-2)中のアルミニウム原子と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c-2)/M]が、通常10~500000、好ましくは20~100000となる量で用いられ、成分(c-3)を使用する場合は、成分(c-3)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(c-3)/M]が、通常1~10、好ましくは1~5となる量で用いられる。なお、成分(C)と、成分(A)および成分(B)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められる。
【0082】
成分(A)と成分(B)との使用量比は、オレフィン重合体の分子量および分子量分布から任意に決定できるが、成分(A)と成分(B)との合計100%に対する、成分(A)のモル比率は通常40~99.9%である。ここで、本発明の典型的な態様の1つにおいて、本発明の製造方法は、成分(A)の量が成分(B)の量に対して十分多い状況で行われる。そのような態様においては、前記モル比率は、好ましくは80~99.9%、より好ましくは90~99.9%である。ただ、本発明の製造方法を実施する状況によっては、本発明の製造方法が、成分(A)の量と成分(B)の量とが等量あるいはこれに近い態様で行われることを妨げるものでなく、例えば、前記モル比率が40~60%であっても良い。
【0083】
上記オレフィン重合用触媒は、オレフィンが予備重合されてなる予備重合触媒成分であってもよい。予備重合触媒成分は、オレフィン重合用触媒と、必要に応じて予備重合により生成するオレフィン重合体とから形成されている。予備重合触媒は、前記成分(A),(B)および(C)、オプショナルの固体状担体(S)、並びに、オプショナルの成分(G)を含み、必要に応じて予備重合により生成するオレフィン重合体を含む。予備重合触媒を調製する方法としては、例えば、上記i)~vi)のいずれかに記載の接触により得られる固体触媒成分に、少量のオレフィンを予備重合する方法がある。予備重合触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒の具体例としては、前記不活性炭化水素と同様のものが挙げられる。
【0084】
予備重合時に用いられるオレフィンは、エチレンを100~0モル%、プロピレンを0~49モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0~100モル%の範囲、好ましくはエチレンを100~0モル%、プロピレンを0~20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0~100モル%の範囲、より好ましくはエチレンを100~20モル%、プロピレンを0~20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0~80モル%の範囲、特に好ましくはエチレンを100~20モル%および炭素原子数が4以上のオレフィンを0~80モル%の範囲で含有していることが望ましい。
【0085】
炭素原子数が4以上のオレフィンとして具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が4~20のα-オレフィンが挙げられる。さらに、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン類等を用いることもできる。
【0086】
予備重合触媒を調製するに際して、成分(A)および成分(B)はそれぞれ、固体状担体(S)1g当り、通常0.001~1.0ミリモル、好ましくは0.005~0.5ミリモルの量で用いられる。また成分(C)は、成分(C)に含まれる金属原子換算で、通常0.1~100ミリモル、好ましくは0.5~20ミリモルの量で用いられる。
【0087】
上記のようにして得られる予備重合触媒には、固体状担体(S)1g当たり、成分(A)および成分(B)が0.005~1.0ミリモル、好ましくは0.01~0.3ミリモルの量で担持され、成分(C)が、成分(C)に含まれる金属原子換算で約1.0~100ミリモル、好ましくは2.0~50ミリモルの量で担持され、予備重合により生成するオレフィン重合体が、約0.1~500g、好ましくは0.3~300g、特に好ましくは1~100gの量で担持されていることが望ましい。
【0088】
<成分(D)>
前記成分(A)および前記成分(B)を含む前記オレフィン重合用触媒を用いてエチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを(共)重合する場合、得られる重合体には、前記成分(A)による触媒反応により生成する重合体(本明細書において「成分(A)由来ポリマー」)と前記成分(B)による触媒反応により生成する重合体(本明細書において「成分(B)由来ポリマー」)とが含まれる。このような(共)重合においては、前記成分(B)の方が前記成分(A)よりも重合触媒としての活性が高い傾向があり、成分(B)由来ポリマーの生成量に対する成分(A)由来ポリマーの生成量の割合が、オレフィン重合用触媒における前記成分(A)の量に対する前記成分(B)の量の割合よりも多くなる傾向にある。本発明の製造方法では、この(共)重合を特定の添加剤の存在下で行うことにより、成分(A)由来ポリマーの生成量をある程度維持しながら、成分(B)由来ポリマーの生成を抑制することができる。なお、得られる重合体における成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの量比は、下記実施例中「成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの量比の測定方法」に記載の方法により求めることができる。
【0089】
本発明では、成分(D)としてそのような添加剤が用いられる。成分(D)は、具体的には、下記一般式(6)で表される化合物である:
17-E-R18・・・(6)
[一般式(6)中、Eは周期表第16族原子を示し、R17およびR18はそれぞれ独立に、炭素原子数1~20の炭化水素基を示す。]
本発明者らは、成分(A)由来ポリマーの生成量をある程度維持しながら、成分(B)由来ポリマーの生成を抑制するという効果は、成分(D)が、前記成分(A)の触媒活性を維持しながら、前記成分(B)の触媒活性を選択的に低下させることによってもたらされると推測している。
【0090】
ここで、前記式(6)において、前記Eは、好ましくは酸素原子または硫黄原子である。
前記R17およびR18を構成する炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。例えば、アルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れも用いることができる。前記R17およびR18はそれぞれ独立に、好ましくは炭素原子数1~20のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基である。
【0091】
ここで、前記R17およびR18は、同一であってもよく、あるいは、互いに異なっていても良い。ただ、本発明では、前記R17とR18は、同一であることが好ましく、同一の炭素原子数1~20の直鎖状アルキル基であることがより好ましい。
【0092】
前記一般式(6)で表される化合物の好ましい具体例としては、ジブチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジセチルエーテル、ジブチルスルフィド、ジセチルスルフィド等が挙げられ、ジブチルエーテルが特に好ましい。
【0093】
成分(D)の使用量は、得られるオレフィン重合体の量を基準として、好ましくは1~500ppm、より好ましくは1~300ppm、特に好ましくは3~100ppmである。
【0094】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明に係るオレフィン重合体の製造方法は、前記オレフィン重合用触媒、および、前記成分(D)の存在下、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、(共)重合する工程を含む。
【0095】
重合は、懸濁液中、溶液中または気相中の何れでも行うことができ、特に懸濁液中または気相中で、スラリー重合または気相重合により好適に行われる。スラリー重合において用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素が好ましい。また、前記オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0096】
重合温度は、スラリー重合の場合は通常-50~150℃、好ましくは0~100℃であり、気相重合の場合は通常0~120℃、好ましくは20~100℃である。重合圧力は、通常、常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法でも行うことができる。
【0097】
重合を、反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。
【0098】
エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらは1種単独で、また2種以上組み合わせて用いることができる。また、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィンに加えて、さらに他の共重合モノマーを併用して共重合してもよい。共重合モノマーとしては、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエンを用いることもできる。
【0099】
オレフィンとしては、エチレン単独またはエチレンと炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンとを用いることが好ましい。特に、エチレンを100~0モル%、プロピレンを0~49モル%および炭素原子数4以上のオレフィンを0~100モル%の範囲内で用いることが好ましく、エチレンを100~0モル%、プロピレンを0~20モル%および炭素原子数4以上のα-オレフィンを0~100モル%の範囲内で用いることがより好ましく、エチレンを100~20モル%、プロピレンを0~20モル%および炭素原子数4以上のα-オレフィンを0~80モル%の範囲内で用いることが特に好ましく、エチレンを100~20モル%および炭素原子数4以上のα-オレフィンを0~80モル%の範囲内で用いることが最も好ましい。さらに本発明においては、エチレンを主モノマーとするエチレン系重合体を製造することが好ましく、エチレン系重合体としては、エチレン成分を50モル%以上含み、必要に応じて炭素原子数4ないし10のα-オレフィン成分を含む(共)重合体が好ましい。
【0100】
重合に際して前記オレフィン重合用触媒を構成する前記成分(A)および前記成分(B)は、前記成分(A)および前記成分(B)中の遷移金属原子の合計に換算して、それぞれ重合容積1リットル当り、通常10-8~10-3モル、好ましくは10-7~10-4モルの量で用いることが望ましい。前記成分(C)は、成分(C)に含まれる金属原子換算で前記成分(A)および前記成分(B)中の遷移金属原子1モル当り、通常10~500モル、好ましくは20~200モルの量で用いることが望ましい。
【0101】
前記成分(D)は、得られるオレフィン重合体のMFRを調整する効果が十分現れる傾向にあることから、オレフィン重合体収量に対して1質量ppm以上の量で用いることが望ましい。一方、重合溶媒およびガスの回収、精製処理への負荷増大や触媒性能低下を抑制できる傾向にあることから、500質量ppm以下の量で用いることが望ましい。前記成分(D)の使用量は、より好ましくは1質量ppm以上300質量ppm以下、特に好ましくは3質量ppm以上100質量ppm以下である。
【実施例0102】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0103】
[成分(A)および(B)の合成]
<合成例1>
下記式(A-1)で示される[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ハフニウムジクロリド(以下「成分(A-1)」ともいう。)は、WO2015/122414に記載の方法に基づいて合成した。
【0104】
【化13】
【0105】
<合成例2>
下記式(B-1)で示される[ビス(4-メトキシフェニル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)( η5-テトラメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド(以下「成分(B-1)」ともいう。)は、四塩化ハフニウムを四塩化ジルコニウムに変更したこと以外は上記合成例1と同様の方法で合成した。
【0106】
【化14】
【0107】
<合成例3>
下記式(A-2)で示される[ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ハフニウムジクロリド(以下「成分(A-2)」ともいう。)は、特開2008―231266記載の[ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド合成方法において、四塩化ジルコニウムを四塩化ハフニウムに変更したこと以外は特開2008―231266記載の[ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド合成方法と同様の方法で合成した。
【化15】
【0108】
<合成例4>
下記式(B-2)で示される[ジ(p-トリル)メチレン(η5-シクロペンタジエニル)(η5-オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)]ジルコニウムジクロリド(以下「成分(B-2)」ともいう。)は、特開2008―231266に記載の方法に基づいて合成した。
【化16】
【0109】
[固体触媒成分(X)の合成]
<合成例5>
内容積270Lの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、固体状担体(S)として、富士シリシア株式会社製シリカ(平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃焼成)10kgを77Lのトルエンに懸濁させた後0~5℃に冷却した。この懸濁液に成分(C)として、メチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)20.4Lを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0~5℃に保った。引き続き0~5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95~100℃まで昇温して、引き続き95~100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量58.0Lのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:248.0g/L、Al濃度:1.21mol/Lであった。
【0110】
次いで、充分に窒素置換した20mLシュレンク管に、トルエン12.6mL、および上記で得られたスラリーを0.6mL(0.60mL)装入した。合成例1で得られた成分(A-1)の2mMトルエン溶液1.8mL(1.82mL)を加え、系内温度20~25℃で1時間接触させることで、固体触媒成分(X-1)のトルエンスラリーを得た。
【0111】
<合成例6>
合成例5において、成分(A-1)の代わりに(B-1)を用いたこと以外は、合成例3と同様に調製し、固体触媒成分(X-2)のトルエンスラリーを得た。
【0112】
<合成例7>
合成例5において、成分(A-1)の2mMトルエン溶液の添加量を0.9mL(0.91mL)に変更し、成分(A-1)のトルエン溶液添加後に(B-1)の2mMトルエン溶液を0.9mL(0.91mL)添加したこと以外は、合成例5と同様に調製し、固体触媒成分(X-3)のトルエンスラリーを得た。
【0113】
<合成例8>
合成例5において、成分(A-1)の代わりに(A-2)を用いたこと以外は、合成例5と同様に調製し、固体触媒成分(X-4)のトルエンスラリーを得た。
【0114】
<合成例9>
合成例5において、成分(A-1)の代わりに(B-2)を用いたこと以外は、合成例5と同様に調製し、固体触媒成分(X-5)のトルエンスラリーを得た。
【0115】
<合成例10>
合成例5において、成分(A-1)の2mMトルエン溶液1.82mLの代わりに成分(A-2)の2mMトルエン溶液1.64mLを添加し、成分(A-2)のトルエン溶液添加後に(B-2)の2mMトルエン溶液を0.18mL添加したこと以外は、合成例5と同様に調製し、固体触媒成分(X-6)のトルエンスラリーを得た。
【0116】
[製造例1]
充分に窒素置換した内容積1Lの撹拌翼付きSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500mLを添加した後、エチレンを流通させ液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.150mmol、および固体触媒成分(X-1)のトルエンスラリーを5.0mL装入した後、エチレンガスを用いて80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、ポリエチレン15.74gを得た。
【0117】
[製造例2]
製造例1において、固体触媒成分(X-1)のトルエンスラリーの代わりに(X-2)のトルエンスラリーを5.0mL用いたこと以外は製造例1と同様に実施し、ポリエチレン9.42gを得た。
【0118】
[製造例3]
製造例1において、固体触媒成分(X-1)のトルエンスラリーの代わりに(X-3)のトルエンスラリーを5.0mL用いたこと以外は製造例1と同様に実施し、ポリエチレン50.92gを得た。
【0119】
[製造例4]
充分に窒素置換した内容積1Lの撹拌翼付きSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500mLを添加した後、エチレンを流通させ液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、1-ヘキセンを1.0mL、トリイソブチルアルミニウムを0.150mmol、および固体触媒成分(X-4)のトルエンスラリーを5.0mL装入した後、水素濃度0.45vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体8.17gを得た。
【0120】
[製造例5]
製造例4において、固体触媒成分(X-4)のトルエンスラリーの代わりに(X-5)のトルエンスラリーを5.0mL用いたこと以外は製造例4と同様に実施し、エチレン系重合体31.23gを得た。
【0121】
[製造例6]
製造例4において、固体触媒成分(X-4)のトルエンスラリーの代わりに(X-6)のトルエンスラリーを5.0mL用いたこと以外は製造例4と同様に実施し、エチレン系重合体18.33gを得た。
【0122】
[実施例1]
充分に窒素置換した内容積1Lの撹拌翼付きSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500mLを添加した後、エチレンを流通させ液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、トリイソブチルアルミニウムを0.150mmol、成分(D)としてジブチルエーテルの1mg/mLトルエン溶液を1.5mL、および固体触媒成分(X-3)のトルエンスラリーを5.0mL装入した後、エチレンガスを用いて80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、ポリエチレン43.02gを得た。
【0123】
[実施例2]
実施例1において、ジブチルエーテルの1mg/mLトルエン溶液の添加量を2.5mLに変更したこと以外は実施例1と同様に実施し、ポリエチレン25.65gを得た。
【0124】
[実施例3]
充分に窒素置換した内容積1Lの撹拌翼付きSUS製オートクレーブに、窒素雰囲気下、ヘプタン500mLを添加した後、エチレンを流通させ液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、1-ヘキセンを1.0mL、トリイソブチルアルミニウムを0.150mmol、成分(D)としてジブチルエーテルの1mg/mLトルエン溶液を2.5mL、および固体触媒成分(X-6)のトルエンスラリーを5.0mL装入した後、水素濃度0.45vol%のエチレン・水素混合ガスを用いて80℃、0.8MPaGに昇温、昇圧し、90分間重合反応を行った。得られたポリマーをろ過後、80℃で10時間真空乾燥することで、エチレン系重合体11.25gを得た。
【0125】
[成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの量比の測定方法]
前記製造例および前記実施例において、得られたポリエチレン中に含まれる成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの量比の決定は、GPCピーク分離により以下のように行った。
【0126】
まず、得られたポリエチレンの分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。ここで、液体クロマトグラフとしてゲル浸透クロマトグラフHLC―8321GPC/HT型(東ソー社製)を用い、分離カラムとしてTSKgel GMH6-HT 2本、TSKgel GMH6-HTL 2本(いずれも内径7.5mm、長さ30cm)を用い、カラム温度を140℃とし、移動相媒体としてオルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)を用い、移動相媒体を1.0mL/分で移動させ、試料濃度は0.15mg/mLとし、試料注入量は0.4mLとし、検出器は示差屈折計を用いた。装置の較正は、単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いて実施した。前記測定によって得られる保持時間と信号強度との関係をクロマトグラムとして記録した。
【0127】
前記クロマトグラムから得られた分子量分布曲線(G1)(以下、「(G1)」と呼ばれる場合がある。)につき、成分(A)由来ポリマーの分子量分布曲線(G2)(以下、「(G2)」と呼ばれる場合がある。)と成分(B)由来ポリマーの分子量分布曲線(G3)(以下、「(G3)」と呼ばれる場合がある。)を種々の割合で足し合わせて得られた分子量分布曲線と比較した。ここで、前記製造例1で得られたポリエチレンについて得られた分子量分布曲線を、成分(A)由来ポリマーの分子量分布曲線(G2)として用い、前記製造例2で得られたポリエチレンについて得られた分子量分布曲線を、成分(B)由来ポリマーの分子量分布曲線(G3)として用いた。
【0128】
前記比較は、具体的には、下記(S1)~(S5)の手順で行った。
(S1)前記(G1)、(G2)、(G3)の数値データのそれぞれにおいて、lоg(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに分子量分布曲線の面積が1となるように強度[d重量分率/dlоg(分子量)]を規格化した。
【0129】
(S2)前記(G2)につき、全てのlоg(分子量)に定数aを加え、全ての強度に、任意の倍率x(xは0以上の実数)を乗じて、第1の分子量分布曲線(G2')を得た。ここで、前記aは、前記(G1)の高分子量側の立ち上がりのlоg(分子量)と前記(G2)の高分子量側の立ち上がりのlоg(分子量)が一致するように定めた。また、前記(G3)につき、全てのlоg(分子量)に定数bを加え、全ての強度に、任意の倍率y(yは0以上の実数)を乗じて、第2の分子量分布曲線(G3')を得た。ここで、前記bは、前記(G1)の低分子量側の立ち上がりのlоg(分子量)と前記(G3)の低分子量側の立ち上がりのlоg(分子量)が一致するように定めた。そして、前記第1の分子量分布曲線(G2')と、前記第2の分子量分布曲線(G3')とを足し合わせて、合成分子量分布曲線(GS)を作成した。
【0130】
(S3)前記(G1)と、前記(S2)で得られた合成分子量分布曲線(GS)につき、各lоg(分子量)における強度の差を求めた。
【0131】
(S4)前記倍率xおよびyのそれぞれを変えながら、複数の倍率xおよびyにて前記(S3)で求められる差をそれぞれ求めた。その中で、前記(S3)で求められる差の絶対値が0.04より少なくなったときに、(G1)と、前記(S2)で得られた合成分子量分布曲線とが一致すると判定した。
【0132】
(S5)前記一致すると判定されたときの前記倍率xおよびyを、それぞれ質量%に換算し、成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの量比とした。
前記比較により、
製造例3で得られたポリエチレン中に含まれる成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの割合は、それぞれ7.2質量%および92.8質量%と、
製造例6で得られたポリエチレン中に含まれる成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの割合は、それぞれ73.7質量%および26.3質量%と、
実施例1で得られたポリエチレン中に含まれる成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの割合は、それぞれ9.4質量%および90.6質量%と、
実施例2で得られたポリエチレン中に含まれる成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの割合は、それぞれ10.3質量%および89.7質量%と、
実施例3で得られたポリエチレン中に含まれる成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの割合は、それぞれ80.6質量%および19.4質量%と
それぞれ算出された。
【0133】
前記製造例及び実施例の結果を表1に示す。ここで、実施例1および2、並びに、製造例3において得られた成分(A)由来ポリマーと成分(B)由来ポリマーの割合と、成分(D)の添加量との関係を図1に示す。また、実施例3および製造例6において得られた成分(A-2)由来ポリマーと成分(B-2)由来ポリマーの割合と、成分(D)の添加量との関係を図2に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
製造例3及び実施例1,2を比較すると、また、製造例6及び実施例3を比較すると、成分(D)の添加量増加に伴い、得られたポリエチレン中に含まれる成分(B)由来ポリマーの割合が減り、成分(A)由来ポリマーの割合が増えていることが分かる。即ち、添加剤を用いることで、成分(B)を選択的に失活させ、成分(B)のポリマー生成を抑制することができる。
図1
図2