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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158979
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20221006BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20221006BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08J5/18 CFD
C08J5/18 CFG
C08J3/12 A CET
B29B9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035047
(22)【出願日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2021062024
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】木林 達也
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4F201
【Fターム(参考)】
4F070AA13
4F070AA15
4F070AA18
4F070AA47
4F070AA54
4F070AB26
4F070DA41
4F070DA55
4F071AA15
4F071AA16
4F071AA18
4F071AA19
4F071AA20
4F071AA22
4F071AA43
4F071AA54
4F071AA56
4F071AA88
4F071AF34
4F071AH04
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F201AA50
4F201BA02
4F201BC02
4F201BC17
4F201BC25
4F201BL43
4F201BP11
4F201BP32
(57)【要約】
【課題】再生原料を用いて品質の高いフィルムを製造できるフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルムの製造方法は、破砕フィルムを含む再生原料と、製造するフィルムの任意の層のバージン原料とを含む混合材料をペレット化することによって、再生ペレットを製造する再ペレット化ステップと、前記再生ペレットの流動性を測定する測定ステップと、前記再生ペレットの流動性に基づいて、前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する決定ステップと、前記再生ペレットを用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する製造ステップと、を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕フィルムを含む再生原料と、製造するフィルムの任意の層のバージン原料とを含む混合材料をペレット化することによって、再生ペレットを製造する再ペレット化ステップと、
前記再生ペレットの流動性を測定する測定ステップと、
前記再生ペレットの流動性に基づいて、前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する決定ステップと、
前記再生ペレットを用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する製造ステップと、を含む
フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記製造ステップでは、前記再生ペレットと前記バージン原料とを混合したフィルム原料を用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する
請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記製造ステップでは、前記再生ペレットの流動性と、前記任意の層の流動性との差に基づいて、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する
請求項2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記製造ステップでは、前記フィルム原料の流動性が、前記任意の層の流動性を含む所定範囲に含まれるように前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する
請求項3に記載のフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記製造ステップでは、
前記フィルム原料の流動性が、
第1温度における前記任意の層の流動性を含む第1所定範囲に含まれるように、かつ、
第2温度における前記任意の層の流動性を含む第2所定範囲に含まれるように、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する
請求項4に記載のフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記決定ステップでは、前記再生ペレットの流動性に加えて、前記再生ペレットの光学特性、色見、純度、および、形状の少なくとも1つに基づいて前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する
請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【請求項7】
破砕フィルムを含む再生原料と、製造するフィルムの任意の層のバージン原料とを含む混合材料の流動性を測定する測定ステップと、
前記混合材料の流動性に基づいて、前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する決定ステップと、
前記混合材料を用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する製造ステップと、を含む
フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記決定ステップでは、前記混合材料の流動性に加えて、前記混合材料の光学特性、色見、純度、および、形状の少なくとも1つに基づいて前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する
請求項7に記載のフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記破砕フィルムは、脱墨処理が施されている
請求項1~8のいずれか一項に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、再生原料の流動性を測定し、流動性が第1範囲に含まれる再生原料を第1出荷用として管理し、流動性が第2範囲に含まれる再生原料を第2出荷用として管理する品質管理方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-168855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、再生原料を用いて高い品質のフィルムを製造できるフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係るフィルムの製造方法は、破砕フィルムを含む再生原料と、製造するフィルムの任意の層のバージン原料とを含む混合材料をペレット化することによって、再生ペレットを製造する再ペレット化ステップと、前記再生ペレットの流動性を測定する測定ステップと、前記再生ペレットの流動性に基づいて、前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する決定ステップと、前記再生ペレットを用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する製造ステップと、を含む。
【0006】
再生原料の重量平均分子量は、バージン原料の重量平均分子量よりも小さいため、再生原料のみを用いて高い品質のフィルムを製造することは難しい。上記フィルムの製造方法においては、バージン原料を含む再生ペレットがフィルムの製造に用いられる。再生ペレットの重量平均分子量がある程度の大きさに保たれるため、再生原料のみを用いてフィルムを製造する場合と比較して、高い品質のフィルムを製造できる。
【0007】
本発明の第2観点に係るフィルムの製造方法は、第1観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記再生ペレットと前記バージン原料とを混合したフィルム原料を用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する。
【0008】
上記フィルムの製造方法では、再生ペレットにさらにバージン原料が混合されたフィルム原料がフィルムの製造に用いられる。このため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【0009】
本発明の第3観点に係るフィルムの製造方法は、第2観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記再生ペレットの流動性と、前記任意の層の流動性との差に基づいて、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する。
【0010】
再生ペレットの流動性と任意の層の流動性との差が小さいほど、フィルム原料に占めるバージン原料の割合を小さくできる。一方、高い品質のフィルムを製造するためには、再生ペレットの流動性と任意の層の流動性との差が大きいほど、フィルム原料に占めるバージン原料の割合が大きくなる。上記フィルムの製造方法では、再生ペレットとバージン原料との混合比を適切に決めることができる。
【0011】
本発明の第4観点に係るフィルムの製造方法は、第3観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記フィルム原料の流動性が、前記任意の層の流動性を含む所定範囲に含まれるように前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する。
【0012】
上記フィルムの製造方法によれば、フィルム原料に占める再生ペレットの割合を大きくできる。
【0013】
本発明の第5観点に係るフィルムの製造方法は、第4観点に係るフィルムの製造方法であって、前記製造ステップでは、前記フィルム原料の流動性が、第1温度における前記任意の層の流動性を含む第1所定範囲に含まれるように、かつ、第2温度における前記任意の層の流動性を含む第2所定範囲に含まれるように、前記再生ペレットと前記バージン原料との混合比を決定する。
【0014】
上記フィルムの製造方法によれば、複数の温度におけるフィルム原料の流動性が任意の層の流動性と近いため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【0015】
本発明の第6観点に係るフィルムの製造方法は、前記決定ステップでは、前記再生ペレットの流動性に加えて、前記再生ペレットの光学特性、色見、純度、および、形状の少なくとも1つに基づいて前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する。
【0016】
上記フィルムの製造方法によれば、詳細な観点に基づいて製造するフィルムの品番が決定されるため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【0017】
本発明の第7観点に係るフィルムの製造方法は、破砕フィルムを含む再生原料と、製造するフィルムの任意の層のバージン原料とを含む混合材料の流動性を測定する測定ステップと、前記混合材料の流動性に基づいて、前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する決定ステップと、前記混合材料を用いて、前記決定ステップにおいて決定された品番のフィルムを製造する製造ステップと、を含む。
【0018】
再生原料の重量平均分子量は、バージン原料の重量平均分子量よりも小さいため、再生原料のみを用いて高い品質のフィルムを製造することは難しい。上記フィルムの製造方法においては、バージン原料を含む混合材料がフィルムの製造に用いられる。混合材料の重量平均分子量がある程度の大きさに保たれるため、再生原料のみを用いてフィルムを製造する場合と比較して、高い品質のフィルムを製造できる。
【0019】
本発明の第8観点に係るフィルムの製造方法は、第7観点に係るフィルムの製造方法であって、前記決定ステップでは、前記混合材料の流動性に加えて、前記混合材料の光学特性、色見、純度、および、形状の少なくとも1つに基づいて前記フィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する。
【0020】
上記フィルムの製造方法によれば、詳細な観点に基づいて製造するフィルムの品番が決定されるため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【0021】
本発明の第9観点に係るフィルムの製造方法は、第1観点~第8観点のいずれか1つに係るフィルムの製造方法であって、前記破砕フィルムは、脱墨処理が施されている。
【0022】
上記フィルムの製造方法によれば、破砕フィルムが印刷層を有さないため、より品質の高いフィルムを製造できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に関するフィルムの製造方法によれば、再生原料を用いて高い品質のフィルムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】フィルムの断面図。
図2】フィルムの品番と内層の流動性との関係を示す表。
図3】フィルムの製造工程の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法について説明する。
【0026】
[第1実施形態]
<1.概要>
図1は、フィルム100の層構成の一例を示す断面図である。フィルム100は、外層10、20と、内層30と、接着層40と、を含む。外層10、20を構成する材料は、例えば、ポリエステル系樹脂である。ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、または、ポリブチレンナフタレートである。本実施形態では、外層10、20を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレートである。内層30は、外層10と外層20との間に積層される。内層30を構成する材料は、例えば、スチレン系樹脂である。スチレン系樹脂は、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、または、共役ジエンとの共重合体である。本実施形態では、内層30を構成する材料は、ポリスチレンである。接着層40は、第1接着層41および第2接着層42を含む。第1接着層41は、外層10と内層30とを接合する。第2接着層42は、外層20と内層30とを接合する。接着層40を構成する材料は、例えば、ポリエステル系エラストマー等の接着剤である。フィルム100は、商品に関する説明等が記載された印刷層が任意の位置に積層され、ペットボトル等に貼り付けられて使用される。
【0027】
図2は、フィルム100の品番と、内層30の流動性との関係を示す表である。フィルム100は、層構成が同じであっても、例えば、外層10および外層20に対する内層30の比率が異なる複数の品番を有する。複数の品番は、例えば、品番A101、品番A102、および、品番A103を含む。品番A101、品番A102、および、品番A103のフィルム100においては、第1温度TAおよび第2温度TBにおける内層30の流動性が異なる。内層30の流動性を評価する指標は、例えば、MFR(Melt Flow Rate)である。内層30の流動性は、公知のメルトフローインデクサによって測定される。本実施形態では、第2温度TBは、第1温度TAよりも高い。第2温度TBは、好ましくは、フィルム100を押出成形する場合に、ダイを通過するときの樹脂の温度であることが好ましい。なお、図2に示されるMFR値は、一例である。
【0028】
フィルム100のような、複数種類の層を含む積層フィルムが一般的に知られている。一般的に、積層フィルムから得られた再生原料を用いて生産されたフィルムにおいては、例えば、フィルムの外観が悪化し、フィルムの性能が低下するため、積層フィルムのリサイクルは難しい。
【0029】
本実施形態のフィルムの製造方法においては、工夫が施されているため、積層フィルムから回収された再生原料を用いたとしても、高品質のフィルムを製造可能となっている。以下、本実施形態のフィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0030】
<2.フィルムの製造方法>
図3は、本実施形態のフィルムの製造方法におけるフィルムの製造工程の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示される工程の前には、廃棄フィルムに対して印刷層を除去する脱墨処理が実施される。脱墨処理が実施された廃棄フィルムは、粉砕され、多数のフィルム片(以下では、「破砕フィルム」という)を含む再生原料となる。再生原料には、外層10、20、内層30、および、接着層40が含まれる。本実施形態では、再生原料を内層30を構成する材料として用いる場合について説明する。
【0031】
ステップS11(再ペレット化ステップ)では、フィルムの製造装置によって、破砕フィルムを含む再生原料と内層30のバージン原料とを含む混合材料がペレット化され、再生ペレットが製造される。混合材料に占めるバージン原料の割合は、10%~90%の範囲で任意に選択できる。品質面および生産性等の観点から、混合材料に占めるバージン原料の割合は、20%~80%であることが好ましく、20%~50%であることがさらに好ましい。
【0032】
ステップS12(測定ステップ)では、メルトフローインデクサによって、再生ペレットのMFR値が測定される。ステップS12では、第1温度TAおよび第2温度TBにおける再生ペレットのMFR値が測定される。なお、再生ペレットのMFR値は、例えば、「JIS K7210-1 プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の求め方-第1部:標準的試験方法」に基づいて測定することができる。
【0033】
ステップS13(決定ステップ)では、ステップS12で測定された再生ペレットのMFR値に基づいて、フィルム100の品番A101~A103から、製造するフィルム100の品番を決定する。本実施形態では、ステップS13において、内層30の第2温度TBにおけるMFR値と、再生ペレットの第2温度TBにおけるMFR値とを比較することによって、製造するフィルム100の品番が決定される。内層30の第1温度TAにおけるMFR値と再生ペレットの第1温度TAにおけるMFR値とを比較することによって、製造するフィルム100の品番を決定してもよい。
【0034】
例えば、再生ペレットの第2温度TBにおけるMFR値が品番A101のフィルムの内層30のMFR値と最も近い場合、製造するフィルム100の品番として、品番A101が決定される。再生ペレットの第2温度TBにおけるMFR値が品番A102のフィルムの内層30のMFR値と最も近い場合、製造するフィルム100の品番として、品番A102が決定される。再生ペレットの第2温度TBにおけるMFR値が品番A103のフィルムの内層30のMFR値と最も近い場合、製造するフィルム100の品番として、品番A103が決定される。なお、ステップS13では、作業者が製造するフィルム100の品番を決定してもよく、記憶装置に記憶されるプログラムをコンピュータが実行することによって製造するフィルム100の品番が決定されてもよい。
【0035】
ステップS14(製造ステップ)では、製造装置によって、再生ペレットと、内層30のバージン原料とを混合したフィルム原料が製造される。再生ペレットとバージン原料との混合比は、再生ペレットのMFR値と、製造するフィルム100の品番の内層30のMFR値と、の差に基づいて決定されることが好ましい。例えば、再生ペレットのMFR値と、製造するフィルム100の品番の内層30のMFR値との差が小さい程、フィルム原料に占めるバージン原料の割合が小さくなるように、混合比が決められる。再生ペレットのMFR値と、製造するフィルム100の品番の内層30のMFR値との差が大きい程、フィルム原料に占めるバージン原料の割合が大きくなるように、混合比が決められる。
【0036】
ステップS14では、フィルム原料のMFR値が、内層30のMFR値を含む所定範囲に含まれるように、再生ペレットとバージン原料との混合比が決められることが好ましい。所定範囲は、フィルム100の高い品質を維持することができる範囲である。所定範囲は、第1所定範囲および第2所定範囲を含む。第1所定範囲は、図2に示される第1温度TAにおけるMFR値を中央値とする範囲である。第2所定範囲は、図2に示される第2温度TBにおけるMFR値を中央値とする範囲である。第1所定範囲および第2所定範囲は、例えば、内層30のMFR値を中央値として、-20g/10min~+20g/10minの範囲である。一般的には、再生ペレットのMFR値は、バージン原料のMFR値よりも高いため、再生ペレットとバージン原料とが混合されたフィルム原料は、図2に示される内層30のMFR値よりも高くなる。ステップS14では、フィルム原料のMFR値が、第1所定範囲および第2所定範囲に含まれるように、再生ペレットとバージン原料との混合比が決定されることが好ましい。
【0037】
ステップS15(製造ステップ)では、製造装置によって、フィルム原料を用いてフィルム100が製造される。
【0038】
<3.第1本実施形態の効果>
第1本実施形態のフィルムの製造方法においては、バージン原料を含む再生ペレットがフィルムの製造に用いられる。再生ペレットの重量平均分子量がある程度の大きさに保たれるため、再生原料のみを用いてフィルムを製造する場合と比較して、高い品質のフィルムを製造できる。
【0039】
[第2実施形態]
第2実施形態のフィルムの製造方法は、再ペレット化ステップS11を有していない点において、第1実施形態と異なり、その他の構成は、第1実施形態と実質的に同様である。以下では、第1実施形態と同一の内容については、その説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0040】
第2実施形態のフィルムの製造方法は、第1実施形態の再ペレット化ステップS11が省略され、測定ステップS12において、破砕フィルムを含む再生原料と、製造するフィルムの任意の層のバージン原料とを含む混合材料の流動性が測定される。本実施形態のフィルムの製造方法は、第1実施形態の決定ステップS13、製造ステップS14、S15の説明における再生ペレットの文言を混合材料に置換することによって実現される。
【0041】
第2実施形態のフィルムの製造方法においては、破砕フィルムをペレット化しないため、再生原料の熱履歴が少ない。再生原料が劣化しにくいため、より高い品質のフィルムを製造できる。
【0042】
[第3実施形態]
第3実施形態のフィルムの製造方法は、決定ステップS13が第1実施形態と異なり、その他の構成は、第1実施形態と実質的に同様である。以下では、第1実施形態と同一の内容については、その説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、本実施形態の決定ステップS13は、再生ペレットの文言を混合材料に置換することによって、第2実施形態にも同様に適用できる。
【0043】
第3実施形態のフィルムの製造方法の決定ステップS13では、再生ペレットの流動性に加えて、再生ペレットの光学特性、色見、純度、および、形状の少なくとも1つに基づいてフィルムの複数の品番から、製造する品番を決定する。
【0044】
再生ペレットの光学特性は、例えば、ヘイズ、光沢、および、全光線透過率の少なくとも1つを含む。光学特性が低い再生ペレットを用いてフィルムを製造するとフィルムの光学特性が悪化する。このため、再生ペレットの光学特性を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、光学特性が低い再生ペレットの使用量を制限すること、または、光学特性が低い再生ペレットを高い品質が求められないフィルムの製造に優先的に使用することができる。
【0045】
再生ペレットの色見は、例えば、色彩値を含む。色彩値は、例えば、例えば、「JIS Z8730 色の表示方法-物体色の色差」に基づいて測定することができる。色彩値が低い、換言すれば、劣化している再生ペレットは黄変しているため、製造されるフィルムも黄変する。このため、再生ペレットの色見を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、色彩値が低い再生ペレットの使用量を制限すること、または、色彩値が低い再生ペレットを高い品質が求められないフィルムの製造に優先的に使用することができる。
【0046】
再生ペレットの純度は、例えば、水分量、灰分、PH値、密度、および、欠点数の少なくとも1つを含む。
【0047】
水分量は、例えば、乾燥減量法によって測定される。再生ペレットに含まれる水分量が多い場合、フィルムの成膜時に気泡が発生するおそれがある。このため、再生ペレットの水分量を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、水分量が多い再生ペレットを使用する場合には、予め乾燥処理を施すことによって、高い品質のフィルムを製造できる。
【0048】
灰分は、例えば、「JIS K2272 原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法」に基づいて測定することができる。再生ペレットの灰分を測定することによって、欠点要因となる不純物量を定量化できる。このため、再生ペレットの灰分を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、灰分が多い再生ペレットの使用量を制限すること、または、灰分が多い再生ペレットを高い品質が求められないフィルムの製造に優先的に使用することができる。
【0049】
PH値は、例えば、破砕フィルムを所定の濃度で純水に投入し、一定時間攪拌後、液のPH値を測定することによって得られる。廃棄フィルムの脱墨処理には、一般的にアルカリ水溶液が使用される。脱墨処理が施された破砕フィルムの表面にアルカリ水溶液が付着している場合、破砕フィルムが押出機に投入されると、原料(主にポリエチレンテレフタレートおよびナイロン)の加水分解が発生するおそれがある。このため、破砕フィルムのPH値を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、PH値が高い破砕フィルムを使用する場合には、予め水洗浄を施してアルカリ水溶液の残渣を除去することによって、高い品質のフィルムを製造できる。
【0050】
密度は、例えば、例えば、「JIS K7112 プラスチック-非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」に基づいて測定することができる。再生ペレットの密度が低い場合、フィルムの成膜時に気泡が発生するおそれがある。このため、再生ペレットの密度を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、密度が低い再生ペレットの使用量を制限すること、または、密度が低い再生ペレットを高い品質が求められないフィルムの製造に優先的に使用することができる。なお、再生ペレット製造時の真空度および溶融温度を調整することによって、密度が低い再生ペレットが製造されることを抑制できる。
【0051】
欠点数は、例えば、再生ペレットを用いて、溶融押出法によってサンプルシートを製造し、サンプルシートの巻取装置前に設置した検査機によってサンプルシートの所定の間隔毎の欠点数をカウントすることによって測定される。再生ペレットの欠点数が多い場合、フィルムの品質が低下する。このため、再生ペレットの欠点数を考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、欠点数が多い再生ペレットの使用量を制限すること、または、欠点数が多い再生ペレットを高い品質が求められないフィルムの製造に優先的に使用することができる。
【0052】
再生ペレットの形状は、例えば、大きさを含む。大きさは、例えば、再生ペレットを所定の個数採取し、その重量に基づいて規定される。再生ペレットの大きさのばらつきが大きい場合、再生原料の輸送不良が発生するおそれ、または、バージン原料と混合するときに混合不良が発生するおそれがある。このため、再生ペレットの大きさを考慮して製造する品番を決定することによって、例えば、大きさのばらつきが大きい再生ペレットが使用されることを抑制できる。なお、再生ペレット製造時のペレタイジング速度および押出量を調整することによって、再生ペレットの大きさのばらつきを抑制できる。
【0053】
<4.変形例>
上記各実施形態は本発明に関するフィルムの製造方法が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関するフィルムの製造方法は、各実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、各実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に各実施形態の変形例の幾つかの例を示す。なお、以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0054】
<4-1>
上記第1実施形態では、フィルム製造工程のステップS14において、フィルム原料のMFR値が、第1所定範囲および第2所定範囲に含まれるように、再生ペレットとバージン原料との混合比が決定された。しかし、再生ペレットとバージン原料との混合比の決め方は、これに限定されない。例えば、フィルムの製造工程のステップS14において、フィルム原料のMFR値が第1所定範囲または第2所定範囲の一方のみに含まれるように再生ペレットとバージン原料との混合比を決定してもよい。
【0055】
<4-2>
上記第1実施形態では、フィルムの製造工程のステップS14において、再生ペレットにさらにバージン原料を混合したが、フィルムの製造工程は、これに限定されない。例えば、再生ペレットのMFR値と製造するフィルム100の品番の内層30のMFR値との差が十分に小さい場合、ステップS14を省略し、ステップS15において、再生ペレットのみを用いて内層30を構成してもよい。
【0056】
<4-3>
上記第1実施形態では、フィルムの製造工程のステップS12(測定ステップ)において、第1温度TAおよび第2温度TBにおける再生ペレットのMFR値が測定されたが、第1温度TAまたは第2温度TBの一方における再生ペレットのMFR値を測定してもよい。この変形例では、第1温度TAまたは第2温度TBのうちのフィルム100を押出成形する場合に、ダイを通過するときの樹脂の温度に近い温度における再生ペレットのMFR値を測定することが好ましい。
【0057】
<4-4>
上記第1実施形態では、破砕フィルムを含む再生原料をフィルム100の内層30を構成する材料として用いた。しかし、破砕フィルムを含む再生原料が材料として用いられるフィルム100の層は、これに限定されない。例えば、破砕フィルムを含む再生原料を、フィルム100の外層10、20を構成する材料として用いてもよい。この変形例では、フィルムの製造工程のステップS13(決定ステップ)において、再生ペレットの流動性と外層10、20の流動性とに基づいて、フィルム100の複数の品番A101~A103から、製造するフィルム100の品番が決定される。また、再生ペレットの流動性が著しく高い場合、換言すれば、再生ペレットのMFR値が著しく高い場合、再生ペレットを接着層40を構成する材料として用いてもよい。再生ペレットには、外層10、20を構成する材料が含まれるため、再生ペレットを接着層40を構成する材料として用いる場合、外層10、20と、内層30とを好適に接合できる。
【0058】
<4-5>
上記第1実施形態では、破砕フィルムを含む再生原料を用いて、複数の層を有する積層フィルムが製造された。しかし、破砕フィルムを含む再生原料を用いて製造されるフィルムの構成は、これに限定されない。例えば、破砕フィルムを含む再生原料を用いて、単層のフィルムが製造されてもよい。
【0059】
<4-6>
上記各実施形態において、フィルム100の外層10、20、および、内層30を構成する材料は、任意に選択可能である。
【0060】
第1例では、接着層40を省略し、フィルム100の外層10、20、および、内層30を構成する材料を同じ種類の樹脂材料としてもよい。同じ種類の樹脂材料は、例えば、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、または、ポリアミド系樹脂である。ポリエチレン系樹脂は、例えば、分岐鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、または、高密度ポリエチレン(HDPE)である。ポリアミド系樹脂は、例えば、脂肪族ポリアミド、または、芳香族ポリアミドである。第1例の場合、再生原料を内層30を構成する材料として用いることが好ましい。
【0061】
フィルム100の外層10、20、および、内層30を構成する材料が、ポリエステル系樹脂またはスチレン系樹脂である場合、フィルム100は、例えば、ペットボトル用の熱収縮フィルムとして用いられる。
【0062】
フィルム100の外層10、20、および、内層30を構成する材料が、ポリプロピレン系樹脂である場合、フィルム100は、例えば、包装用フィルムとして用いられる。
【0063】
フィルム100の外層10、20、および、内層30を構成する材料が、ポリエチレン系樹脂である場合、フィルム100は、例えば、バックグラインド用フィルム、または、ダイシング用基体フィルムとして用いられる。
【0064】
フィルム100の外層10、20、および、内層30を構成する材料が、ポリアミド系樹脂である場合、フィルム100は、例えば、食品等の包装体として用いられる。
【0065】
第1例の場合、外層10、20および内層30を構成する材料が全く同じ材料である場合もあれば、外層10、20を構成する材料と、内層30を構成する材料とは、例えば、次のような違いがある場合もある。例えば、フィルム100の収縮性およびバリア性能を考慮して、外層10、20と内層30とに異なる品番の樹脂材料、または、異なる組成の樹脂材料が用いられる場合がある。ヒートシール性、印刷適性、滑り性、および、密着性等、フィルム100の表面状態に依存する特性の発現のために、外層10、20を構成する材料にアンチブロッキング剤(AB剤)、および、他の樹脂種が添加される場合がある。また、フィルム100の着色のために、外層10、20を構成する材料に樹脂用着色剤(MB-COLOR)が添加される場合がある。
【0066】
第2例では、接着層40を省略し、フィルム100の外層10、20を構成する材料と内層30を構成する材料とを異なる材料としてもよい。第2例の第1具体例では、フィルム100の外層10、20を構成する材料は、ポリエチレン系樹脂であり、内層30を構成する材料は、ポリプロピレン系樹脂である。この具体例では、フィルム100は、バックグラインド用フィルム、または、ダイシング用基体フィルムとして用いられる。第1具体例では、再生原料を内層30を構成する材料として用いることが好ましい。
【0067】
第2例の第2具体例では、フィルム100の外層10、20を構成する材料は、環状オレフィンコポリマーであり、内層30を構成する材料は、ポリプロピレン系樹脂である。第2具体例では、フィルム100は、例えば、ペットボトル用の熱収縮フィルムとして用いられる。第2具体例では、再生原料を内層30を構成する材料として用いることが好ましい。
【0068】
第2例の第3具体例では、フィルム100の外層10、20を構成する材料は、ポリアミド系樹脂であり、内層30を構成する材料は、エチレン-ビニルアルコール共重合体である。第3具体例では、フィルム100は、食品等の包装体として用いられる。第3具体例では、再生原料を外層10、20を構成する材料として用いることが好ましい。ポリアミド系樹脂とエチレン-ビニルアルコール共重合体とは相溶しないため、第3具体例の層構成を有するフィルム100の再生原料を内層30を構成する材料として用いる場合、内層30が白濁する。また、エチレン-ビニルアルコール共重合体によって構成される内層30は、ガスバリア性能に寄与する層であるため、他の樹脂が含まれるとバリア性能が低下する。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、反応性の樹脂であるため他の樹脂種が混合されると凝集物(ゲル化物)が発生する。このような観点から、第3具体例では、再生原料を内層30を構成する材料として用いることは、好ましくない。
【0069】
第2例の第4具体例では、フィルム100の外層10、20を構成する材料は、ポリエチレン系樹脂であり、内層30を構成する材料は、ポリアミド系樹脂である。第4具体例では、フィルム100は、食品等の包装体として用いられる。第4具体例では、再生原料を外層10、20を構成する材料として用いることが好ましい。
【0070】
<4-7>
上記各実施形態では、流動性を評価する指標として、MFRを用いたが、MVR(Melt Volume Rate)を流動性を評価する指標として用いてもよい。
【符号の説明】
【0071】
S11:再ペレット化ステップ
S12:測定ステップ
S13:決定ステップ
S14:製造ステップ
S15:製造ステップ
図1
図2
図3