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特開2022-158982伝熱システムおよび伝熱システムの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158982
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】伝熱システムおよび伝熱システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20221006BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
F25B1/00 399Y
F25B5/02 510Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022036119
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】21166193
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュアン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージアナ カワリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス フリーマン
(57)【要約】
【課題】相変化物質(PCM)を含む、または相変化物質(PCM)から成る、熱媒液が冷却回路内を循環する伝熱システムと伝熱システムの作動方法とを提供する。
【解決手段】冷却回路内に位置するセンサシステムから得られた情報に基づき、熱媒液の複合相状態値が判定される。このセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、またはこれらセンサから成る。「相状態」とは、そのPCMの結晶化/凝固量に関する熱媒液の品質を意味し、熱媒液内で結晶化が発生しているかどうかの情報を提供する。本システムおよび方法は、凝固したPCMによるシステムの室内熱交換器の流路に起こり得る閉塞と室内熱交換器の伝熱面への固体PCM(結晶)の望ましくない堆積とを確実且つ効果的に防止できる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱システムであって、
a)第1の熱媒液と、圧縮器と、凝縮器と、膨張装置と、室外熱交換器とを備えた冷凍回路と、
b)相変化物質を備えた、または相変化物質から成る、第2の熱媒液と、前記第2の熱媒液を前記冷却回路の周囲に循環させるためのポンプと、前記第2の熱媒液から前記第1の熱媒液に熱を伝達させるための熱交換器と、冷却対象空間から前記第2の熱媒液に熱を伝達するための少なくとも1つの室内熱交換器とを備えた冷却回路と、
c)温度センサと電気抵抗センサとを備えた、または温度センサと電気抵抗センサとから成る、前記冷却回路内のセンサシステムであって、前記温度センサと前記電気抵抗センサとが2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現されたセンサシステムと、
d)温度情報と電気抵抗情報とを前記センサシステムから取得するように構成された制御装置と、
を備えた伝熱システムにおいて、
前記制御装置は、
前記取得された温度情報と前記取得された電気抵抗情報とに基づき、複合相状態値(SOPflow)を求め、
前記求められた複合相状態値(SOPflow)に基づき、前記伝熱システムの動作を制御する、
ように構成されている、伝熱システム。
【請求項2】
前記複合相状態値(SOPflow)を求めるために、前記制御装置は、
i)前記熱媒液の温度(Tme)を前記センサシステムから取得し、
ii)前記熱媒液の電気抵抗(Rme)を前記センサシステムから取得し、
iii)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の温度成分(SOP)を前記温度(Tme)から求め、
iv)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)を前記電気抵抗(Rme)から求め、
v)前記温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、重み付けされた温度成分を求め、
vi)前記第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と前記温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、重み付けされた電気抵抗成分を求め、
vii)前記第1の重み付けされた温度成分と前記第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、複合相状態値(SOPflow)を求める、
ように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサシステムは前記少なくとも1つの室内熱交換器の上流に位置し、前記システムは、前記少なくとも1つの室内熱交換器の下流に位置する第2のセンサシステムを備え、前記第2のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、または前記温度センサと前記電気抵抗センサとから成り、前記制御装置は、
i)前記センサシステムと前記第2のセンサシステムとから温度情報を取得し、前記センサシステムと前記第2のセンサシステムとから電気抵抗情報を取得し、
ii)前記取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき、前記少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の前記熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求め、
iii)前記求められた相状態の差(ΔSOP)に基づき、前記伝熱システムの動作を制御する、
ように構成され、
前記少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の前記熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるために、前記制御装置は、好ましくは、
i)前記熱媒液の第1の温度(Tme)を前記センサシステムから取得し、前記熱媒液の第2の温度(Tme)を前記第2のセンサシステムから取得し、
ii)前記熱媒液の第1の電気抵抗(Rme)を前記センサシステムから取得し、第2の電気抵抗(Rme)を前記第2のセンサシステムから取得し、
iii)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第1の温度成分(SOP)を前記第1の温度(Tme)から求め、前記伝熱体の前記相状態(SOP)の第2の温度成分(SOP)を前記第2の温度(Tme)から求め、
iv)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第1の電気抵抗成分(SOP)を前記第1の電気抵抗(Rme)から求め、前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第2の電気抵抗成分(SOP)を前記第2の電気抵抗(Rme)から求め、
v)前記第1の温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、第1の重み付けされた温度成分を求め、前記第2の温度成分(SOP)と前記温度係数(β)との積を算出することによって、第2の重み付けされた温度成分を求め、
vi)前記第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と前記温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第1の重み付けされた電気抵抗成分を求め、前記第2の電気抵抗成分(SOP)と、1と前記温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第2の重み付けされた電気抵抗成分を求め、
vii)前記第1の重み付けされた温度成分と前記第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第1の複合相状態値(SOPflow)を求め、前記第2の重み付けされた温度成分と前記第2の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第2の複合相状態値(SOPreturn)を求め、
viii)前記第2の相状態値(SOPreturn)と前記第1の相状態値(SOPflow)との間の差を算出することによって、前記少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の前記熱媒液の前記相状態の差(ΔSOP)を求める、
ように構成されている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記熱媒液の前記相状態(SOP)の温度成分(SOP)を、
me>(Teq+u(+))であれば、SOP=0であり、
me<(Teq-u(-))であれば、SOP=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、SOPは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.1~0.9の範囲内、より好ましくは0.2~0.8の範囲内、更に好ましくは0.3~0.7の範囲内、特に好ましくは0.4~0.6の範囲内、特に0.5、である、
ように求めるように構成され、
式中、
meは、前記測定された温度の値であり、
eqは、前記相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、前記相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における前記平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、前記相変化プロセス中、例えば結晶化中の前記相変化状態の下限における前記平衡温度からの温度偏差である、請求項2または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記熱媒液の前記相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)を、
SOP=SOP+α・(Rme-R
のように求めるように構成され、
式中、
SOPは基準相状態値であり、前記熱媒液が液体であり、固体結晶が存在しないときのSOPは好ましくは0であり、
αは、前記基準抵抗値Rに対する前記測定された電気抵抗の変化を相状態に変換するための係数であり、
meは、前記測定された電気抵抗の値であり、
は、基準抵抗値である、請求項2~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記複合相状態値(SOPflow,SOPreturn)を、
SOPflow,SOPreturn=β・SOP+(1-β)・SOP
のように求めるように構成され、
式中、
βは、エンタルピーに基づく相状態測定の最も精確な予測をもたらす特定の相変化物質のための重み付け値を表す係数であり、βは、好ましくは、
me>(Teq+u(+))であれば、β=1であり
me<(Teq-u(-))であれば、β=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、βは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.01~0.8の範囲内、より好ましくは0.05~0.6の範囲内、更に好ましくは0.10~0.4の範囲内、特に好ましくは0.15~0.3の範囲内、特に0.2、である、
ように求められ、
式中、
meは、前記測定された温度の値であり、
eqは、前記相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、前記相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における前記平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、前記相変化プロセス中、例えば結晶化中の前記相変化状態の下限における前記平衡温度からの温度偏差である、請求項2~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、
i)好ましくは前記システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、前記圧縮器の速度を制御することによって求められた前記複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)前記少なくとも1つの室内熱交換器のファンの回転速度を制御することによって、および/または前記少なくとも1つの室内熱交換器を通る前記熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記室内熱交換器に流体接続されている前記ポンプのポンプ速度、および/または前記室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、前記少なくとも1つの熱交換器の両端間で求められた相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、前記伝熱システムの動作を制御するように構成されている、請求項1~6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記冷却回路は、更なる室内熱交換器を少なくとも1つ備え、第3のセンサシステムが前記冷却回路内の前記更なる室内熱交換器の下流に配設され、前記第3のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、または前記温度センサと前記電気抵抗センサとから成り、前記制御装置は、
i)好ましくは前記システムにおける室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、前記圧縮器の速度を制御することによって求められた前記複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように制御することによって、および/または、前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器を通る前記熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されている前記ポンプのポンプ速度、および/または前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、前記少なくとも1つの更なる熱交換器の両端間で求められた相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、前記伝熱システムの動作を制御するように構成されている、請求項1~7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
相変化物質を備えた、または前記相変化物質から成る、熱媒液が冷却回路内を循環する伝熱システムの作動方法であって、
相変化物質を備えた、または前記相変化物質から成る、熱媒液が循環する伝熱システムの冷却回路内に位置するセンサシステムから温度情報と電気抵抗情報とを取得するステップであって、前記センサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備える、ステップを含む方法において、
前記取得された温度情報と前記取得された電気抵抗情報とに基づき、複合相状態値(SOPflow)を求めるステップと、
前記求められた相状態値(SOPflow)に基づき、前記伝熱システムの動作を制御するステップと、
を更に含んでいる方法。
【請求項10】
前記複合相状態値(SOPflow)を求めるために、
i)前記熱媒液の温度(Tme)を前記センサシステムから取得し、
ii)前記熱媒液の電気抵抗(Rme)を前記センサシステムから取得し、
iii)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の温度成分(SOP)を前記温度(Tme)から求め、
iv)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)を前記電気抵抗(Rme)から求め、
v)前記温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、重み付けされた温度成分を求め、
vi)前記第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と前記温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、重み付けされた電気抵抗成分を求め、
vii)前記第1の重み付けされた温度成分と前記第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、前記複合相状態値(SOPflow)を求める、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記センサシステムは、前記少なくとも1つの熱交換器の上流に位置し、前記システムは、前記少なくとも1つの室内熱交換器の下流に位置する第2のセンサシステムを備え、前記第2のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、または前記温度センサと前記電気抵抗センサとから成り、前記方法は、
i)前記センサシステムと前記第2のセンサシステムとから温度情報を取得し、前記センサシステムと前記第2のセンサシステムとから電気抵抗情報を取得するステップと、
ii)前記取得された温度情報と前記取得された電気抵抗情報とに基づき、前記少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の前記熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるステップと、
iii)前記求められた相状態の差(ΔSOP)に基づき、前記伝熱システムの動作を制御するステップと、
を含み、
相状態の差(ΔSOP)を求めるために、前記方法は、好ましくは、
a)前記熱媒液の第1の温度(Tme)を前記センサシステムから取得し、前記熱媒液の第2の温度(Tme)を前記第2のセンサシステムから取得するステップと、
b)前記熱媒液の第1の電気抵抗(Rme)を前記センサシステムから取得し、第2の電気抵抗(Rme)を前記第2のセンサシステムから取得するステップと、
c)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第1の温度成分(SOP)を前記第1の温度(Tme)から求め、前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第2の温度成分(SOP)を前記第2の温度(Tme)から求めるステップと、
d)前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第1の電気抵抗成分(SOP)を前記第1の電気抵抗(Rme)から求め、前記熱媒液の前記相状態(SOP)の第2の電気抵抗成分(SOP)を前記第2の電気抵抗(Rme)から求めるステップと、
e)前記第1の温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、第1の重み付けされた温度成分を求め、前記第2の温度成分(SOP)と前記温度係数(β)との積を算出することによって、第2の重み付けされた温度成分を求めるステップと、
f)前記第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と前記温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第1の重み付けされた電気抵抗成分を求め、前記第2の電気抵抗成分(SOP)と、1と前記温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第2の重み付けされた電気抵抗成分を求めるステップと、
g)前記第1の重み付けされた温度成分と前記第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第1の複合相状態値(SOPflow)を求め、前記第2の重み付けされた温度成分と前記第2の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第2の複合相状態値(SOPreturn)を求めるステップと、
h)前記第2の相状態値(SOPreturn)と前記第1の相状態値(SOPflow)との間の差を算出することによって、前記少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の前記熱媒液の前記相状態の差(ΔSOP)を求めるステップと、
を含んでいる、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱媒液の前記相状態(SOP)の温度成分(SOP)は、
me>(Teq+u(+))であれば、SOP=0であり、
me<(Teq-u(-))であれば、SOP=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、SOPは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.1~0.9の範囲内、より好ましくは0.2~0.8の範囲内、更に好ましくは0.3~0.7の範囲内、特に好ましくは0.4~0.6の範囲内、特に0.5、である、
ように求められ、
式中、
meは、前記測定された温度の値であり、
eqは、前記相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、前記相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、前記相変化プロセス中、例えば結晶化中の前記相変化状態の下限における前記平衡温度からの温度偏差である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記熱媒液の前記相状態(SOP)の前記電気抵抗成分(SOP)は、SOP=SOP+α・(Rme-R)のように求められ、
式中、
SOPは基準相状態値であり、前記熱媒液が液体であり、固体結晶が存在しないときのSOPは好ましくは0であり、
αは、前記基準抵抗値Rに対する、前記測定された電気抵抗変化を相状態に変換するための係数であり、
meは、前記測定された電気抵抗の値であり、
は、基準抵抗値である、請求項10~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合相状態値(SOPflow,SOPreturn)は、
SOPflow,SOPreturn=β・SOP+(1-β)・SOP
のように求められ、
式中、
βは、エンタルピーに基づく相状態測定の最も精確な予測をもたらす特定の相変化物質のための重み付け値に関する係数であり、βは、好ましくは、
me>(Teq+u(+))であれば、β=1であり、
me<(Teq-u(-))であれば、β=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、βは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.01~0.8の範囲内、より好ましくは0.05~0.6の範囲内、更に好ましくは0.10~0.4の範囲内、特に好ましくは0.15~0.3の範囲内、特に0.2、であり、
式中、
meは、前記測定された温度の値であり、
eqは、前記相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、前記相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、前記相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における前記平衡温度からの温度偏差である、請求項10~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記伝熱システムの動作は、
i)好ましくは前記システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、前記圧縮器の速度を制御することによって求められた前記複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)前記少なくとも1つの室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように制御することによって、および/または前記少なくとも1つの室内熱交換器を通る前記熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記室内熱交換器に流体接続されている前記ポンプのポンプ速度、および/または前記室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、前記少なくとも1つの熱交換器の両端間で求められた相状態の差(ΔSOP)、
に基づき制御される、請求項9~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却回路は、更なる室内熱交換器を少なくとも1つ備え、第3のセンサシステムが前記冷却回路内の前記更なる室内熱交換器の下流に配設され、前記第3のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、または前記温度センサと前記電気抵抗センサとから成り、前記制御装置は、
i)好ましくは前記システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、前記圧縮器の速度を制御することによって求められた前記複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように制御することによって、および/または前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器を通る前記熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されている前記ポンプのポンプ速度、および/または前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、求められた前記少なくとも1つの更なる熱交換器の両端間の相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、前記伝熱システムの動作を制御するように構成されている、請求項9~15の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、相変化物質(PCM:phase change material)を含む、またはこの物質から成る熱媒液が、冷却回路内を循環する伝熱システムと伝熱システムの作動方法とに関する。本システムおよび方法においては、冷却回路内に位置するセンサシステムから取得された情報に基づき、熱媒液の複合相状態値が求められる。このセンサシステムは、温度センサと電気抵抗センサを備え、またはこれらセンサから成り、これらセンサは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現される。「相状態」とは、そのPCMの結晶化/凝固量に関する熱媒液の品質を意味し、熱媒液内で結晶化が起きているかどうかの情報を提供する。本システムおよび方法は、凝固したPCMによるシステムの室内熱交換器の流路に起こり得る閉塞と室内熱交換器の伝熱面への固体PCM(結晶)の望ましくない堆積とを確実且つ効果的に防止できる。
【背景技術】
【0002】
相変化物質(PCM)を使用する静的蓄熱システムにおける、またはPCMが封入された動的伝熱システム(すなわち流動システム)における、相変化プロセスは、PCMが封入されていない動的伝熱システム(すなわち流動システム)に比べ、引き起こされる問題が小さい。その理由は、システムの狭い移送流路内での熱媒液の非封入PCMの相変化/結晶化は、流路の閉塞、または伝熱面への結晶の望ましくない堆積、を招き得るからである。PCMスラリーの流動中に相(またはチャージ)状態を精確に判定できると、移送システムのより良好な制御が可能になるであろう。更に、上記の悪影響を回避するために、移送経路の複数の特定点において固液転移を操作することが望ましい。
【0003】
第1の課題は、チャージ/相状態(SOC/P:state of charge/phase)の精確な判定である。特に、液体から固体/スラリーへの、およびこの逆の、転移中の相転移温度がほぼ一定である場合は、スラリー流の温度を直接測定する伝統的な直接的方法は不利である。相転移が広い温度範囲にわたって発生する場合、単一パラメータとしての温度の測定は、SOC/P判定に誤差を招くことになる。
【0004】
ここ何年にもわたって種々のSOC/P判定方法が公開または特許付与されている。ただし、これらの方法は極めて複雑であるか、または大きな誤差マージンをもたらす。実際の応用例においてPCMスラリーのポテンシャルを完全に実現するには、伝熱システムにおける相状態の評価のために、より精確で低コストの方法が必要とされている。
【0005】
非流動式蓄熱用途のために使用されている多くの単一成分相変化物質は、相転移中の温度範囲が極めて狭い。その結果、PCMの温度測定は、相転移中のその相状態(SOP)を予測するためにあまり役に立たない。
【0006】
この問題を回避するために、従来技術において公知であるのは、PCM状態が相転移領域の内側か外側かに応じて、温度と他の熱物理的性質(例えば圧力)との間を別々に切り換えることである。小さいが無視できない温度範囲(20重量%TBABに対して~8℃)にわたって相変化するTBABなどの相変化スラリーの場合、相転移領域内での温度測定は、SOPの予測に使用できる有用な情報を依然として提供する。ただし、判定精度は低い。
【0007】
特許文献1は、蓄熱媒体と冷媒との間の熱交換により蓄熱するための蓄熱槽における蓄熱量を精度よく測定できる蓄熱装置および蓄熱量測定方法を開示している。この装置および方法は、PCMを有する熱媒液の熱容量(「蓄熱量」)を求め、それを蓄熱装置の制御に実際に使用しているが、そのPCMの結晶化/凝固量に関して求められた熱媒液の品質を蓄熱装置の制御に使用していない。すなわち、この文献に開示されている制御および方法は、熱媒液内のPCMの結晶化/凝固に関連付けられる諸欠点を防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-240130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本開示の目的は、従来技術のシステムおよび方法の欠点を有さない伝熱システムと伝熱システムの作動方法とを提供することであった。具体的には、本システムおよび方法は、そのPCMの結晶化/凝固量に関して本システムおよび/または方法において使用される熱媒液の品質の高精度の判定を保証する必要がある。更に、本システムおよび方法は、本システムおよび方法に使用される室内熱交換器の内部の狭い流路が固体の相変化物質によって閉塞されることを確実に防止する必要があり、更には本システムおよび方法に使用される室内熱交換器の伝熱面への固体の相変化物質(結晶)の望ましくない堆積を防止する必要がある。好ましくは、本システムおよび方法は、室内熱交換器に送給される冷却量が前記室内熱交換器内への熱媒液の流量に(線形)従属することも保証する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の伝熱システムによって、および請求項9に記載の方法によって、解決される。従属請求項は、有利な実施形態を示している。
【0011】
本開示によると、伝熱システムが提供される。本伝熱システムは、
a)第1の熱媒液と、圧縮器と、凝縮器と、膨張装置と、室外熱交換器とを備えた冷凍回路と、
b)相変化物質を備えた、または相変化物質から成る、第2の熱媒液と、この第2の熱媒液を冷却回路の周囲に循環させるためのポンプと、第2の熱媒液から第1の熱媒液に熱を伝達するための熱交換器と、冷却対象空間から第2の熱媒液に熱を伝達させるための少なくとも1つの室内熱交換器とを備えた冷却回路と、
c)温度センサと電気抵抗センサとを備えた、または温度センサと電気抵抗センサとから成る、冷却回路内のセンサシステムであって、温度センサおよび電気抵抗センサは2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された、センサシステムと、
d)センサシステムから温度情報および電気抵抗情報を取得するように構成された制御装置と、
を備え、
制御装置は、
取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき、複合相状態値(SOPflow)を求め、
求められた複合相状態値(SOPflow)に基づき、伝熱システムの動作を制御する、
ように構成されている。
【0012】
取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき複合相状態値(SOPflow)を求めるように制御装置が構成されることにより、制御装置は、熱媒液のSOPを求めるために熱媒液の温度または電気抵抗のみが使用された場合に比べ、PCMの相転移領域における熱媒液のSOPをより高い精度で求めることができる。
【0013】
本開示によると、用語「相状態」は、熱媒液のPCMの残りの熱容量の量を指すのではなく、そのPCMの結晶化/凝固量に関する熱媒液の品質を指す。したがって、本開示による熱媒液の相状態の判定は、熱媒液内のPCMの結晶化が発生しているときの判定を可能にする。
【0014】
前記求められたSOP値に基づき伝熱システムの動作を制御することにより、システムは、室内熱交換器の流路の閉塞を防止でき、更にはその伝熱面への結晶の望ましくない堆積を防止できる。本開示のシステムは単純且つ効果的であり、高価な機器類を必要としない。
【0015】
本システムにおいて、センサシステムの温度センサは、熱電対ベースのセンサ、サーミスタセンサ、RTDベースのセンサ、およびこれらの組み合わせから成る群から選択可能である。電気抵抗センサは、導電率センサ(抵抗は電導度の逆数であるので)、較正されたRTDベースのセンサ、およびこれらの組み合わせから成る群から選択可能である。温度・電気抵抗複合センサは、較正されたRTDとすることができる。
【0016】
本システムにおいて、熱媒液のPCMは、非封入PCMであることが好ましい。PCMは、無機PCM、好ましくは塩、より好ましくは包接水和物を含み得る、または無機PCM、好ましくは塩、より好ましくは包接水和物から成り得る。包接水和物(CHS:clathrate hydrates)、例えば臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB:tetrabutylammonium bromide)およびトリメチロールエタン(TME:trimethylolethane)、の電気抵抗は、包接水和物のSOPと相関可能であることが判明している。
【0017】
本システムは、複合相状態値(SOPflow)を求めるために、制御装置が、
i)熱媒液の温度(Tme)をセンサシステムから取得し、
ii)熱媒液の電気抵抗(Rme)をセンサシステムから取得し、
iii)熱媒液の相状態(SOP)の温度成分(SOP)を温度(Tme)から求め、
iv)熱媒液の相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)を電気抵抗(Rme)から求め、
v)温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、重み付けされた温度成分を求め、
vi)第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、重み付けされた電気抵抗成分を求め、
vii)第1の重み付けされた温度成分と第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、複合相状態値(SOPflow)を求める、
ように構成されることを特徴とし得る。
【0018】
温度成分(SOP)および電気抵抗成分(SOP)の重み付けのための、温度成分(SOP)への温度係数(β)の適用、および電気抵抗成分(SOP)への1と温度係数(β)との間の差(すなわち1マイナスβ)の適用は、PCMの二相領域全体にわたって適用可能な連続複合関数をもたらす。
【0019】
本システムは、センサシステムが少なくとも1つの室内熱交換器の上流に位置することを特徴とし得る。本システムは、少なくとも1つの室内熱交換器の下流に位置する第2のセンサシステムを備えることができる。この第2のセンサシステムは温度センサと電気抵抗センサとを備え、これらセンサは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現される。この場合、制御装置は、
i)センサシステムと第2のセンサシステムとから温度情報を取得し、センサシステムと第2のセンサシステムとから電気抵抗情報を取得し、
ii)取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき、少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求め、
iii)求められた相状態の差(ΔSOP)に基づき、伝熱システムの動作を制御する、
ように構成される。
【0020】
少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求め、求められたΔSOPに基づきシステムの動作を制御することの利点は、室内熱交換器に送給される冷却が熱媒液の流量に(線形)従属することを保証できる点である。すなわち、冷却効率をより精確に制御できる。
【0021】
少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるために、制御装置は、好ましくは、
i)熱媒液の第1の温度(Tme)をセンサシステムから取得し、熱媒液の第2の温度(Tme)を第2のセンサシステムから取得し、
ii)熱媒液の第1の電気抵抗(Rme)をセンサシステムから取得し、第2の電気抵抗(Rme)を第2のセンサシステムから取得し、
iii)熱媒液の相状態(SOP)の第1の温度成分(SOP)を第1の温度(Tme)から求め、熱媒液の相状態(SOP)の第2の温度成分(SOP)を第2の温度(Tme)から求め、
iv)熱媒液の相状態(SOP)の第1の電気抵抗成分(SOP)を第1の電気抵抗(Rme)から求め、熱媒液の相状態(SOP)の第2の電気抵抗成分(SOP)を第2の電気抵抗(Rme)から求め、
v)第1の温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、第1の重み付けされた温度成分を求め、第2の温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、第2の重み付けされた温度成分を求め、
vi)第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第1の重み付けされた電気抵抗成分を求め、第2の電気抵抗成分(SOP)と、1と温度係数(β)との間の差と、の積を算出することによって、第2の重み付けされた電気抵抗成分を求め、
vii)第1の重み付けされた温度成分と第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第1の複合相状態値(SOPflow)を求め、第2の重み付けされた温度成分と第2の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第2の複合相状態値(SOPreturn)を求め、
viii)第2の相状態値(SOPreturn)と第1の相状態値(SOPflow)との間の差を算出することによって、少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求める、
ように構成される。
【0022】
本システムは、熱媒液の相状態(SOP)の温度成分(SOP)を求めるために、制御装置が、
me>(Teq+u(+))であれば、SOP=0であり、
me<(Teq-u(-))であれば、SOP=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、SOPは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.1~0.9の範囲内、より好ましくは0.2~0.8の範囲内、更に好ましくは0.3~0.7の範囲内、特に好ましくは0.4~0.6の範囲内、特に0.5、である、
ように構成され、
式中、
meは、測定された温度の値であり、
eqは、相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における平衡温度からの温度偏差である、
ことを特徴とし得る。
【0023】
更に、本システムは、制御装置が、熱媒液の相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)を、
SOP=SOP+α・(Rme-R
のように求めるように構成され、
式中、
SOPは基準相状態値であり、熱媒液が液体であり、固体結晶が存在しないときのSOPは好ましくは0であり、
αは、基準抵抗値Rに対する測定された電気抵抗の変化を相状態に変換するための係数であり、
meは、測定された電気抵抗の値であり、
は、基準抵抗値である、
ことを特徴とし得る。
【0024】
更に、本システムは、制御装置が、複合相状態値(SOPflow,SOPreturn)を、
SOPflow,SOPreturn=β・SOP+(1-β)・SOP
のように求めるように構成され、
式中、
βは、エンタルピーに基づく相状態測定値の最も精確な予測をもたらす特定の相変化物質のための重み付け値を表す係数であり、βは、好ましくは、
me>(Teq+u(+))であれば、β=1であり、
me<(Teq-u(-))であれば、β=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、βは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.01~0.8の範囲内、より好ましくは0.05~0.6の範囲内、更に好ましくは0.10~0.4の範囲内、特に好ましくは0.15~0.3の範囲内、特に0.2、である、
ように求められ、
式中、
meは、測定された温度の値であり、
eqは、相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における平衡温度からの温度偏差である、
ことを特徴とし得る。
【0025】
更に、本システムは、制御装置が、
i)好ましくは本システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、圧縮器の速度を制御することによって求められた複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)少なくとも1つの室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように(例えば、所定の回転速度でオンに切り換えるかどうかを)制御することによって、および/または少なくとも1つの室内熱交換器を通る媒熱液の流速を制御することによって、好ましくは、前記室内熱交換器に流体接続されているポンプのポンプ速度、および/または前記室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、求められた少なくとも1つの熱交換器の両端間の相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、伝熱システムの動作を制御するように構成されることを特徴とし得る。
【0026】
加えて、本システムは、冷却回路が少なくとも1つの更なる室内熱交換器を備え、第3のセンサシステムが冷却回路内の前記更なる室内熱交換器の下流に配設され、第3のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、またはこれらセンサから成り、制御装置が、
i)好ましくは本システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、圧縮器の速度を制御することによって求められた複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)少なくとも1つの更なる室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように(例えば、所定の回転速度でオンに切り換えるかどうかを)制御することによって、および/または少なくとも1つの更なる室内熱交換器を通る熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されているポンプのポンプ速度、および/または前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、求められた少なくとも1つの更なる熱交換器の両端間の相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、伝熱システムの動作を制御するように構成されることを特徴とし得る。
【0027】
更なる室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力が室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力と同じになるように本システムが構成される場合は、センサシステムと第3のセンサシステムとから取得した温度情報に基づき、およびセンサシステムと第3のセンサシステムとから取得した電気抵抗情報に基づき、更なる室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるように、制御装置を構成できる。更なる室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力が室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力と異なるように本システムが構成される場合は、第3のセンサシステムと第4のセンサシステムとから取得した温度情報に基づき、および第3のセンサシステムと第4のセンサシステムとから取得した電気抵抗情報に基づき、更なる室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるように、制御装置を構成できる。第4のセンサシステムは冷却回路内の更なる室内熱交換器の上流に配設される。第4のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備える、またはこれらセンサから成る。この場合のΔSOPは、上記の室内熱交換器の場合のΔSOPと同様に求めることができる。
【0028】
本開示によると、相変化物質を備えた、または相変化物質から成る、熱媒液が冷却回路内を循環する伝熱システムの作動方法は、
相変化物質を備えた、または相変化物質から成る、熱媒液がその内部を循環する伝熱システムの冷却回路内に位置するセンサシステムから温度情報と電気抵抗情報とを取得するステップであって、このセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサを備える、またはこれらセンサから成る、ステップを含み、
本方法は、
取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき、複合相状態値(SOPflow)を求めるステップと、
求められた相状態値(SOPflow)に基づき、伝熱システムの動作を制御するステップと、
を含むことを特徴とする。
【0029】
本開示による方法は、本開示によるシステムと同じ諸利点を有する。具体的には、取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき複合相状態値(SOPflow)を求めるステップにより、制御装置は、熱媒液のSOPを求めるために熱媒液の温度または電気抵抗のみが使用された場合に比べ、PCMの相転移領域における熱媒液のSOPをより高い精度で求めることができる。前記求められた値に基づき伝熱システムの動作を制御するステップにより、本方法は、室内熱交換器の流路の閉塞を防止でき、更にはその伝熱面への結晶の望ましくない堆積を防止できる。本開示の方法は簡単且つ効果的であり、高価な機器類を必要としない。
【0030】
本システムにおいて、センサシステムの温度センサは、熱電対ベースのセンサ、サーミスタセンサ、RTDベースのセンサ、およびこれらの組み合わせから成る群から選択可能である。電気抵抗センサは、導電率センサ(抵抗は電導度の逆数であるので)、較正されたRTDベースのセンサ、およびこれらの組み合わせから成る群から選択可能である。温度・電気抵抗複合センサは、較正されたRTDとすることができる。
【0031】
本方法において、熱媒液のPCMは、非封入PCMであることが好ましい。PCMは、無機PCM、好ましくは塩、より好ましくは包接水和物、を含み得る、またはこの無機PCMから成り得る。包接水和物(CHS)、例えば臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)およびトリメチロールエタン(TME)、の電気抵抗は、包接水和物のSOPと相関可能であることが判明している。
【0032】
本方法は、複合相状態値(SOPflow)を求めるために、
i)熱媒液の温度(Tme)をセンサシステムから取得するステップと、
ii)熱媒液の電気抵抗(Rme)をセンサシステムから取得するステップと、
iii)熱媒液の相状態(SOP)の温度成分(SOP)を温度(Tme)から求めるステップと、
iv)熱媒液の相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)を電気抵抗(Rme)から求めるステップと、
v)温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、重み付けされた温度成分を求めるステップと、
vi)第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、重み付けされた電気抵抗成分を求めるステップと、
vii)第1の重み付けされた温度成分と第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、複合相状態値(SOPflow)を求めるステップと、
を含むことを特徴とし得る。
【0033】
更に、本システムは、センサシステムが少なくとも1つの室内熱交換器の上流に位置することを特徴とし得る。本システムは、少なくとも1つの室内熱交換器の下流に位置する第2のセンサシステムを備えることができる。この第2のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、またはこれらセンサから成り、本方法は、
i)センサシステムと第2のセンサシステムとから温度情報を取得し、センサシステムと第2のセンサシステムとから電気抵抗情報を取得するステップと、
ii)取得された温度情報と取得された電気抵抗情報とに基づき、少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるステップと、
iii)求められた相状態の差(ΔSOP)に基づき、伝熱システムの動作を制御するステップと、
を含む。
【0034】
少なくとも1つの室内熱交換器の両端における熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求め、求められたΔSOPに基づきシステムの動作を制御することの利点は、室内熱交換器に送給される冷却が熱媒液の流量に(線形)従属することを保証できる点である。すなわち、冷却効率をより精確に制御できる。
【0035】
相状態の差(ΔSOP)を求めるために、本方法は、好ましくは、
a)熱媒液の第1の温度(Tme)をセンサシステムから取得し、熱媒液の第2の温度(Tme)を第2のセンサシステムから取得するステップと、
b)第1の熱媒液の電気抵抗(Rme)をセンサシステムから取得し、第2の電気抵抗(Rme)を第2のセンサシステムから取得するステップと、
c)熱媒液の相状態(SOP)の第1の温度成分(SOP)を第1の温度(Tme)から求め、熱媒液の相状態(SOP)の第2の温度成分(SOP)を第2の温度(Tme)から求めるステップと、
d)熱媒液の相状態(SOP)の第1の電気抵抗成分(SOP)を第1の電気抵抗(Rme)から求め、熱媒液の相状態(SOP)の第2の電気抵抗成分(SOP)を第2の電気抵抗(Rme)から求めるステップと、
e)第1の温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、第1の重み付けされた温度成分を求め、第2の温度成分(SOP)と温度係数(β)との積を算出することによって、第2の重み付けされた温度成分を求めるステップと、
f)第1の電気抵抗成分(SOP)と、1と温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第1の重み付けされた電気抵抗成分を求め、第2の電気抵抗成分(SOP)と、1と温度係数(β)との間の差、との積を算出することによって、第2の重み付けされた電気抵抗成分を求めるステップと、
g)第1の重み付けされた温度成分と第1の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第1の複合相状態値(SOPflow)を求め、第2の重み付けされた温度成分と第2の重み付けされた電気抵抗成分との和を算出することによって、第2の複合相状態値(SOPreturn)を求めるステップと、
h)第2の相状態値(SOPreturn)と第1の相状態値(SOPflow)との間の差を算出することによって、少なくとも1つの室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めるステップと、
を含む。
【0036】
本方法は、熱媒液の相状態(SOP)の温度成分(SOP)が、
me>(Teq+u(+))であれば、SOP=0であり、
me<(Teq-u(-))であれば、SOP=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、SOPは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.1~0.9の範囲内、より好ましくは0.2~0.8の範囲内、更に好ましくは0.3~0.7の範囲内、特に好ましくは0.4~0.6の範囲内、特に0.5、である、
ように求められ、
式中、
meは、測定された温度の値であり、
eqは、相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における平衡温度からの温度偏差である、
ことを特徴とし得る。
【0037】
更に、本方法は、熱媒液の相状態(SOP)の電気抵抗成分(SOP)が、
SOP=SOP+α・(Rme-R
のように求められ、
式中、
SOPは基準相状態値であり、熱媒液が液体であり、固体結晶が存在しないときのSOPは好ましくは0であり、
αは、基準抵抗値Rに対する、測定された電気抵抗の変化を相状態に変換するための係数であり、
meは、測定された電気抵抗の値であり、
は、基準抵抗値である、
ことを特徴とし得る。
【0038】
更に、本方法は、複合相状態値(SOPflow,SOPreturn)が、
SOPflow,SOPreturn=β・SOP+(1-β)・SOP
のように求められ、
式中、
βは、エンタルピーに基づく相状態測定の最も精確な予測をもたらす特定の相変化物質の重み付け値に関する係数であり、βは、好ましくは、
me>(Teq+u(+))であれば、β=1であり、
me<(Teq-u(-))であれば、β=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、βは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.01~0.8の範囲内、より好ましくは0.05~0.6の範囲内、更に好ましくは0.10~0.4の範囲内、特に好ましくは0.15~0.3の範囲内、特に0.2、であり、
式中、
meは、測定された温度の値であり、
eqは、相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における平衡温度からの温度偏差である、
ことを特徴とし得る。
【0039】
更に、本方法は、
i)好ましくは本システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、圧縮器の速度を制御することによって求められた複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)少なくとも1つの室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように(例えば、所定の回転速度でオンに切り換えるかどうかを)制御することによって、および/または少なくとも1つの室内熱交換器を通る熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記室内熱交換器に流体接続されているポンプのポンプ速度、および/または、前記室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、求められた少なくとも1つの熱交換器の両端間の相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、伝熱システムの動作が制御されることを特徴とし得る。
【0040】
加えて、本方法は、冷却回路が少なくとも1つの更なる室内熱交換器を備え、第3のセンサシステムが前記更なる室内熱交換器の下流に配設され、第3のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備え、またはこれらセンサから成り、制御装置は、
i)好ましくは本システム内の室内熱交換器の最も高い冷却負荷に応じて、圧縮器の速度を制御することによって求められた複合相状態値(SOPflow)、および/または、
ii)少なくとも1つの更なる室内熱交換器のファンをオンまたはオフに切り換えるように(例えば、所定の回転速度でオンに切り換えるかどうかを)制御することによって、および/または少なくとも1つの更なる室内熱交換器を通る熱媒液の流量を制御することによって、好ましくは、前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されているポンプのポンプ速度、および/または前記少なくとも1つの更なる室内熱交換器に流体接続されている弁の開度、を制御することによって、求められた少なくとも1つの更なる熱交換器の両端間の相状態の差(ΔSOP)、
に基づき、伝熱システムの動作を制御するように構成されることを特徴とし得る。
【0041】
更なる室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力が室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力と同じである場合は、センサシステムと第3のセンサシステムとから得られた温度情報に基づき、およびセンサシステムと第3のセンサシステムとから得られた電気抵抗情報に基づき、更なる室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めることができる。更なる室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力が室内熱交換器に入る熱媒液の温度および圧力と異なる場合は、第3のセンサシステムと第4のセンサシステムとから得られた温度情報に基づき、および第3のセンサシステムと第4のセンサシステムとから得られた電気抵抗情報に基づき、更なる室内熱交換器の両端間の熱媒液の相状態の差(ΔSOP)を求めることができる。第4のセンサシステムは冷却回路内の更なる室内熱交換器の上流に配設され、第4のセンサシステムは、2つの別個のセンサとして、または1つの温度・電気抵抗複合センサとして、実現された温度センサと電気抵抗センサとを備える、またはこれらセンサから成る。このΔSOPは、上記の室内熱交換器の場合と同様に求めることができる。
【0042】
以下の図および例を参照して、ただし、ここに示されている特定の実施形態に本開示を限定することなく、本開示の主題をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】PCM TBABの相図を示す。
図2】DSCによって求められたPCM TBABの熱流曲線を示す。
図3】経時的に複数の異なる時点におけるPCM TBABの電導度測定および温度測定の結果を示す。図3のプロットのx軸は、時間(分単位)を表し、測定点が取られた時点を示す。
図4】経時的なPCM TBABの電導度測定および温度測定によってもたらされた電導度(y軸)対温度(x軸)のプロットを示す。
図5】貯熱装置が無い伝熱システムを示す。
図6】貯熱装置を有する伝熱システムを示す。
図7】複数の異なるゾーンを有する伝熱システムを示す。
図8】最も高い冷却負荷を有するシステムのゾーンの制御図を示す。
図9】最も高い冷却負荷より低い冷却負荷を有するシステムのゾーンの制御図を示す。
図10】システムの残りの部分(室外機/温水循環ボックス)の制御図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
例1 - PCM TBABの特性の決定
【0045】
PCM TBABの相変化温度を求めるために、伝統的な示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)が使用された。その結果は、図2に示されている。
【0046】
SOC/Pを求めるために、電導度測定と温度測定とが実施された。この目的のために、20重量%TBAB水溶液が温度調整用のサーモスタット調温槽内に保持され、電導度を測定するために導電率プローブが使用された。測定結果は図3に示されており、図4に示されている電導度対温度のプロットを描くために使用された。図4に示されている電導度対温度のプロットが両パラメータ間の関係が不明確であることを示していることは注目するに値する。これが示唆し得るのは、温度は、相変化転移期間における相状態を解明するには限界があることである。
【0047】
例2 - 係数αおよびβの決定
【0048】
αは、基準抵抗値Rに対する測定された電気抵抗変化を相状態に変換するための係数である。
【0049】
βは、エンタルピーに基づく相状態測定の最も精確な予測をもたらす特定の相変化物質のための重み付け値を表す係数である。βは、
me>(Teq+u(+))であれば、β=1であり
me<(Teq-u(-))であれば、β=1であり、
me≧((Teq-u(-))且つ≦(Teq+u(+))であれば、βは、>0と<1の範囲内、好ましくは0.01~0.8の範囲内、より好ましくは0.05~0.6の範囲内、更に好ましくは0.10~0.4の範囲内、特に好ましくは0.15~0.3の範囲内、特に0.2、である、
ように求めることができ、
式中、
meは、測定された温度の値であり、
eqは、相変化物質の相変化温度であり、
u(+)は、相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差であり、
u(-)は、相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における平衡温度からの温度偏差である。
【0050】
係数αおよびβを特定のPCMを有する熱媒液に適合させるために、エンタルピーに基づく相状態を内部温度および電気抵抗の関数としてプロットできる。この目的のために、相変化領域における特定のPCMを有する熱媒液の加熱曲線を測定するための一連の試験を実施できる。
【0051】
例3 - 伝熱システムの作動方法
【0052】
伝熱システムを作動させるために、図7に示されている伝熱システム例のための以下の想定に基づき、制御アルゴリズムを定義できる。
1. 2つ以上の室内機(ファンコイルユニット)が存在する。各室内機は、室温を測定する専用のサーモスタットを有するそれぞれ専用の熱ゾーン(すなわち、室)のために働く。
2. システム制御ために利用可能な主な構成要素は、室内機ファン、分岐弁、圧縮器速度、およびスラリーポンプ速度である。
3. スラリーの相状態(SOP)は、測定された電気抵抗(R)および温度(T)の関数として求められる。
4. 室/ゾーン毎に、各室内機の両端でほぼ同じ目標ΔSOPが必要とされる。これが意味するのは、各ゾーンに送給される冷却は、各ゾーンへのスラリーの質量流量に伴い、(線形的に)変化することである。
【0053】
最も高い冷却負荷を有するゾーンの場合、主アルゴリズムは、以下のように説明可能である(例示的制御機構としてPIを使用している図8も参照)。
・室内機ファンは、常に(居住者によって選択された)固定速度で稼働している。
・目標SOPflowを達成するために、圧縮器速度は自動的に調整される。目標SOPflowは、室の設定点と実際の室温との間のΔTに応じて設定される。
・室内機の分岐上の弁位置(分流/バイパス弁または調節されたボール弁のどちらか)は、分岐の目標流量に応じて設定される。目標ΔSOPを達成するために、室内機への目標流量が設定される。
【0054】
より低い冷却負荷を有するゾーンの場合、主アルゴリズムは、以下のように説明可能である(図9も参照)。
・不感帯を有する室温を維持するために、サーモスタットに応じて、室内機ファンがオンまたはオフに切り換わる。
・最も高い冷却負荷を有するゾーンに応じて、室内機へのSOPflowが固定される。
・分岐の目標流量に応じて、室内機の分岐上の弁位置が設定される。目標ΔSOPを達成するために、室内機への目標流量が設定される。
【0055】
本システムの残りの部分(室外機/温水循環ボックス)のための主制御アルゴリズムは、以下のように説明可能である(図10も参照)。
・室内熱交換器(PHEX)における目標スラリー流量を達成するために設定されたポンプ速度
・冷媒側で目標過熱を達成するために設定された弁(LEV)の開度
【符号の説明】
【0056】
PCM 相変化物質、SOP PCMを有する熱媒液の相状態、SOPflow 室内熱交換器の上流の第1の複合相状態SOP値、SOPreturn 室内熱交換器の下流の第2の複合相状態SOP値、 ΔSOP SOPreturnからSOPflowを引いた値、Tme 熱媒液の温度、Teq PCMの相変化温度、Rme 熱媒液の測定された電気抵抗、R 基準抵抗値、SOP SOPの温度成分、SOP SOPの電気抵抗成分、SOP 基準相状態値、α 基準抵抗値Rに対する、測定された電気抵抗変化を相状態に変換するための電気係数、β 温度係数、u(+) 相変化プロセス中、例えば融解中の相変化状態の上限における平衡温度からの温度偏差、u(-) 相変化プロセス中、例えば結晶化中の相変化状態の下限における平衡温度からの温度偏差、TBAB 臭化テトラブチルアンモニウム、TME トリメチロールエタン、R SOPセンサ、すなわち温度および電気抵抗センサ、T 熱電対、P 圧力センサ、PHEX プレート熱交換器、FCU ファンコイルユニット、Tindoor 室内温度、LEV 線膨張弁、RTD 抵抗温度検出器、SP 設定点、e(t) 所望の設定点と測定されたプロセス変数との間の差としての誤差値、PI 比例積分制御装置、V_flow 体積流量、Super_Heat 冷媒蒸気の実際温度と冷媒の飽和温度との間の差として測定された過熱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】