(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158986
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】光ファイバ担持樹脂管
(51)【国際特許分類】
G01D 5/26 20060101AFI20221006BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20221006BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
G01D5/26 D
G02B6/44 366
G01B11/16 Z
G02B6/44 396
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037048
(22)【出願日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2021061309
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】太田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井上 将男
(72)【発明者】
【氏名】石原 岳
【テーマコード(参考)】
2F065
2F103
2H201
【Fターム(参考)】
2F065AA65
2F065DD04
2F065FF41
2F065GG04
2F065LL02
2F065UU03
2F103BA02
2F103BA10
2F103BA37
2F103CA06
2F103CA07
2F103EB02
2F103EC09
2F103GA07
2F103GA14
2F103GA15
2H201AX49
2H201BB12
2H201BB14
2H201BB22
2H201BB33
2H201DD05
2H201KK17
2H201KK32C
2H201KK33C
2H201KK34C
2H201KK75
(57)【要約】
【課題】構造物の歪みや温度変化を計測できるセンサーとして用いることができ、成形収縮を解消でき、信号損失を低減できる光ファイバ担持樹脂管を提供する。
【解決手段】円筒状であり、筒壁11A内に4本以上の光ファイバ12を有し、光ファイバ12は、管軸O1方向に延び、筒壁11Aは、樹脂(A)を含むポリオレフィン樹脂組成物で形成され、樹脂(A)の密度は、ISO 1183-1:2019に準じて測定された値が0.920g/cm
3以上0.940g/cm
3以下であり、かつ樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.1g/10min.以上1.3g/10min.以下である、光ファイバ担持樹脂管10。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状であり、筒壁内に4本以上の光ファイバを有し、
前記光ファイバは、管軸方向に延び、
前記筒壁は、樹脂(A)を含むポリオレフィン樹脂組成物で形成され、
前記樹脂(A)の密度は、ISO 1183-1:2019に準じて測定された値が0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、
かつ前記樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.1g/10min.以上1.3g/10min.以下である、光ファイバ担持樹脂管。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂組成物は、樹脂(B)を含み、
前記樹脂(B)の密度は、ISO 1183-1:2019に準じて測定された値が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、
かつ前記樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.03g/10min.以上0.1g/10min.以下である、請求項1に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂組成物において、前記樹脂(A)と前記樹脂(B)の含有比(樹脂(A)/樹脂(B))は、質量比で0.1以上1.5以下である、請求項2に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項4】
前記筒壁の厚さは、2.5mm以上10mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項5】
外径が、20mm以上50mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項6】
前記4本以上の光ファイバは、前記管軸方向と垂直な断面において互いに回転対称の位置に配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項7】
前記光ファイバは、前記筒壁内に前記管軸方向から周方向に向けて0度超90度未満の傾斜角度で螺旋状に埋め込まれている、請求項1~6のいずれか1項に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【請求項8】
前記光ファイバの螺旋ピッチは、10mm以上600mm以下である、請求項7に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ担持樹脂管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバを用いて構造物の変位を監視できるセンサーとして、例えば、光ファイバを有する接続体が用いられている。その接続体は、筒状の内管と、前記内管の外周を覆うように筒状に配設された光ファイバ取付層と、前記光ファイバ取付層に所定のピッチで螺旋状に敷設され、前記内管の変形とともに変形するように取付けられた4本以上の光ファイバとを有する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、成形後に樹脂に残留する圧縮応力等が少なく、計測データに発生するノイズ(信号損失)を抑制する光ファイバセンサーとしては、例えば、加熱成形後の冷却による成形収縮を解消できる吸水膨張性樹脂から構成され、筒状に組立て可能な樹脂ベルトが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5851630号公報
【特許文献2】特許3929378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のセンサーでは、筒状の内管とその内管のピッチで螺旋状に敷設される光ファイバについては、光ファイバ取付層が光ファイバから剥離してしまうため、内管の変形を光ファイバに伝えることができないという課題があった。
また、特許文献2の光ファイバセンサーでは、上記の樹脂ベルトにおいて、樹脂の吸湿ムラにより応力が発生し、計測データにノイズが発生するという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、構造物の歪みや温度変化を計測できるセンサーとして用いることができ、成形収縮を解消でき、信号損失を低減できる光ファイバ担持樹脂管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]円筒状であり、筒壁内に4本以上の光ファイバを有し、前記光ファイバは、管軸方向に延び、前記筒壁は、樹脂(A)を含むポリオレフィン樹脂組成物で形成され、前記樹脂(A)の密度は、ISO 1183-1:2019に準じて測定された値が0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ前記樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.1g/10min.以上1.3g/10min.以下である、光ファイバ担持樹脂管。
[2]前記ポリオレフィン樹脂組成物は、樹脂(B)を含み、前記樹脂(B)の密度は、ISO 1183-1:2019に準じて測定された値が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下であり、かつ前記樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.03g/10min.以上0.1g/10min.以下である、[1]に記載の光ファイバ担持樹脂管。
[3]前記ポリオレフィン樹脂組成物において、前記樹脂(A)と前記樹脂(B)の含有比(樹脂(A)/樹脂(B))は、質量比で0.1以上1.5以下である、[2]に記載の光ファイバ担持樹脂管。
[4]前記筒壁の厚さは、2.5mm以上10mm以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
[5]外径が、20mm以上50mm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
[6]前記4本以上の光ファイバは、前記管軸方向と垂直な断面において互いに回転対称の位置に配置されている、[1]~[5]のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
[7]前記光ファイバは、前記筒壁内に前記管軸方向から周方向に向けて0度超90度未満の傾斜角度で螺旋状に埋め込まれている、[1]~[6]のいずれかに記載の光ファイバ担持樹脂管。
[8]前記光ファイバの螺旋ピッチは、10mm以上600mm以下である、[7]に記載の光ファイバ担持樹脂管。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、構造物の歪みや温度変化を計測できるセンサーとして用いることができ、成形収縮を解消でき、信号損失を低減できる光ファイバ担持樹脂管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂管を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る光ファイバ担持樹脂管を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光ファイバ担持樹脂管]
本実施形態の光ファイバ担持樹脂管としては、例えば、
図1に示すものが挙げられる。
図1に示す光ファイバ担持樹脂管10は、円筒状の長尺の樹脂製の管である。光ファイバ担持樹脂管10は、円筒状の樹脂管11と、樹脂管11の筒壁11A内に樹脂管11の軸(管軸)O1方向に延びる光ファイバ12と、を有する。
【0011】
図1に示すように、樹脂管11の筒壁11A内に埋め込まれている光ファイバ12は、曲げ変位を検知するために少なくとも2本であり、さらにねじりや扁平変位を検知するために、4本以上であることが好ましい。また、樹脂管11の機械的強度を確保するためには、光ファイバ12は20本以下であることが好ましい。
光ファイバ12は、筒壁11Aの厚さ方向の中心で二分する位置から表面に向かう25%以内にあることが好ましい。これにより、光ファイバ担持樹脂管10を設置施工する際に樹脂管の表面が削られることで、光ファイバ12が樹脂管11の外部に露出して、損傷することを抑制できる。
【0012】
図1に示すように、4本の光ファイバ12は、樹脂管11の筒壁11Aにおける管軸O1方向と垂直な断面において互いに回転対称の位置に配置されていることが好ましい。すなわち、
図1では、光ファイバ12は、樹脂管11の筒壁11Aにおける管軸O1方向と垂直な断面において90°おきに配置されていることが好ましい。光ファイバ12が5本以上である場合にも、5本以上の光ファイバ12は、樹脂管11の筒壁11Aにおける管軸O1方向と垂直な断面において互いに回転対称の位置に配置されることが好ましい。
【0013】
筒壁11Aの厚さは、2.5mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上5mm以下であることがより好ましい。筒壁11Aの厚さが前記下限値未満では、施工時に筒壁11Aが傷つき光ファイバが筒壁から露出することがある。筒壁11Aの厚さが前記上限値を超えると、樹脂管11の曲げ剛性が高くなり、構造物の変位に追従しにくくなる。なお、筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物が後述する樹脂(A)を含む場合と、筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物が後述する樹脂(A)および樹脂(B)を含む場合とを比較すると、樹脂(A)が樹脂(B)に対して多ければ多い程の場合が筒壁11Aの厚さが大きくなる傾向にある。
【0014】
筒壁11Aの外径は、20mm以上50mm以下であるであることが好ましく、30mm以上40mm以下であることがより好ましい。筒壁11Aの外径が前記下限値未満では、光ファイバ同士が信号干渉する。筒壁11Aの外径が前記上限値を超えると、樹脂管11の曲げ剛性が高くなり、構造物の変位に追従しにくくなる。
【0015】
筒壁11Aは、樹脂(A)を含むポリオレフィン樹脂組成物で形成されている。
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物に含まれる樹脂(A)の密度は、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された値が0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、0.925g/cm3以上0.939g/cm3以下であることが好ましく、0.930g/cm3以上0.938g/cm3以下であることがより好ましい。樹脂(A)の密度が前記下限値未満では、剛性を得ることができない。樹脂(A)の密度が前記上限値を超えると、成形収縮が大きくなり信号損失が増加する。
【0016】
従来の光ファイバ担持樹脂管において、筒壁を形成する樹脂組成物の密度は、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された値が0.940g/cm3以上0.960g/cm3以下であった。従来の光ファイバ担持樹脂管では、剛性を得ることを目的としているため、筒壁を形成する樹脂組成物の密度を前記の範囲内とした。
【0017】
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物に含まれる樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.1g/10min.以上1.3g/10min.以下であり、0.2g/10min.以上0.8g/10min.以下であることが好ましく、0.2g/10min.以上0.6g/10min.以下であることがより好ましい。
【0018】
従来の光ファイバ担持樹脂管において、筒壁を形成するポリオレフィン樹脂組成物のMFRは、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じて測定された値が0.01g/10min.以上0.1g/10min.以下であった。従来の光ファイバ担持樹脂管では、剛性を得ることを目的としているため、筒壁を形成するポリオレフィン樹脂組成物のMFRを前記の範囲内とした。
【0019】
上記のような樹脂(A)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
樹脂(A)の具体例としては、上記の密度が0.938g/cm3かつ上記のメルトフローレート(MFR)が0.2g/10min.の中密度ポリエチレンが好ましい。
【0021】
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物における樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)中、40質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。樹脂(A)の含有量が上記下限値未満では、成形収縮が大きくなり信号損失が増加する。樹脂(A)の含有量が上記上限値を超えると、管寸法が安定しない。
【0022】
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物は、さらに樹脂(B)を含むことが好ましい。
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物が、樹脂(A)に加えて樹脂(B)を含むとは、筒壁11Aが樹脂(A)と樹脂(B)を含むポリオレフィン樹脂組成物で形成されていることをいう。なお、筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)が均一に混合(分散)したものである。また、樹脂(B)は、剛性を上げることを目的として添加される。
【0023】
樹脂(B)の密度は、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された値が0.940g/cm3以上0.970g/cm3以下であることが好ましく、0.940g/cm3以上0.960g/cm3以下であることがより好ましく、0.940g/cm3以上0.950g/cm3以下であることがさらに好ましい。樹脂(B)の密度が前記下限値未満では、管寸法が安定しない。樹脂(B)の密度が前記上限値を超えると、成形収縮が大きくなり信号損失が増加する。
【0024】
ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じた樹脂(B)の密度の具体的な測定方法は、樹脂(A)の密度の測定方法と同様である。
【0025】
樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.03g/10min.以上0.1g/10min.以下であることが好ましい。樹脂(B)のMFRが前記下限値未満、あるいは前記上限値を超えると、成形性が不安定となる。
【0026】
ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じた樹脂(B)のMFRの具体的な測定方法は、樹脂(A)のMFRの測定方法と同様である。
【0027】
上記のような樹脂(B)としては、例えば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
樹脂(B)の具体例としては、上記の密度が0.952g/cm3かつ上記のメルトフローレート(MFR)が0.02g/10min.の高密度ポリエチレンが好ましい。
【0029】
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物における樹脂(B)の含有量は、ポリオレフィン樹脂組成物の総量(100質量%)中、10質量%以上60質量%以下であることが好ましい。樹脂(B)の含有量が上記下限値未満では、管寸法が安定しない。樹脂(B)の含有量が上記上限値を超えると、成形収縮が大きくなり信号損失が増加する。
【0030】
筒壁11Aを形成するポリオレフィン樹脂組成物に含まれる樹脂(A)、樹脂(B)以外の成分としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0031】
光ファイバ12としては、コアとクラッドと被覆層とを有し、コアにレーザー光等の不連続ポンプ光を入射して、ブリルアン散乱やラマン散乱等のコアの歪や温度等に由来する散乱光を発生させるものが用いられる。
光ファイバ12は、ひずみ測定用光ファイバや、温度測定用光ファイバとして用いられる。このような光ファイバ12としては、コアとクラッドとで構成されるものを好適に用いることができる。
コアとクラッドの材質は、プラスチックや石英ガラスが挙げられる。
【0032】
光ファイバとしては、クラッドの外周に一次被覆を備える光ファイバ素線や、さらに一次被覆の外周に二次被覆を備える光ファイバ芯線、さらに二次被覆の外周に補強材と補強材の外周を覆う外被とを備える光ファイバコード等が挙げられる。
【0033】
一次被覆の材質としては、例えば、紫外線硬化型樹脂、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエチレン等が挙げられる。
二次被覆の材質としては、例えば、難燃性ポリエステルエラストマーやポリイミド等が挙げられる。
補強材の材質としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。
外被の材質としては、難燃性ポリエチレン等の難燃性ポリオレフィンや、難燃性架橋ポリエチレン等の難燃性架橋ポリオレフィン、耐熱ビニル等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも成形熱による被覆樹脂の変形に起因する信号損失を低減するには、高耐熱性の材質であることが好ましい。ここで高耐熱性とは、融点もしくはガラス転移温度が存在しないか、もしくは200℃以上であることが好ましく、さらには250℃以上であることがより好ましい。このような材質としてはポリイミドやフッ素樹脂、高耐熱性のナイロンや硬化型樹脂等が好適である。耐熱性にそれほど優れない材質の場合には、局所的に断熱する等の成形法を適用してもよい。
【0035】
ひずみ測定用光ファイバや、温度測定用光ファイバとして用いる光ファイバの種類は、特に限定されず、それぞれひずみや、温度の測定方法、測定の際に用いる散乱光の種類等に応じて選択することができる。例えば、ひずみ測定用光ファイバ、および温度測定用光ファイバとしては、シングルモード光ファイバ、マルチモード光ファイバおよび偏波保持光ファイバからなる群から選択される少なくとも1種類の光ファイバを用いることが好ましい。
ひずみ測定用光ファイバと温度測定用光ファイバとは、同じ種類の光ファイバであってもよく、異なる種類の光ファイバであってもよい。
【0036】
また、本実施形態の光ファイバ担持樹脂管10は、ひずみ測定用光ファイバと温度測定用光ファイバとして、測定方式等に応じて、それぞれ1本または2本以上の光ファイバを有することができる。そのため、例えば、ひずみ測定用光ファイバとして異なる種類の光ファイバ、または同じ種類の光ファイバを2本以上用いることもでき、温度測定用光ファイバについても同様である。
【0037】
特に、計測を行う際には、散乱光としてブリルアン散乱光や、レイリー散乱光等を好ましく用いることができ、シャープなピークが得られることから、ひずみ測定用光ファイバとしては、シングルモード光ファイバを用いることが好ましい。また、温度測定を行う際には、散乱光としてラマン散乱光等を好ましく用いることができ、高いピーク強度が得られることから、温度測定用光ファイバとしては、マルチモード光ファイバを用いることが好ましい。
このように、計測(測定)に用いる散乱光に適した光ファイバを選択することにより、精度よくひずみや温度を測定することができる。
【0038】
光ファイバ12の外径は、125μm以上2000μm以下であることが好ましく、150μm以上1000μm以下であることがより好ましい。光ファイバ12の外径が前記下限値未満では、少しの荷重でも断線するため製造過程で扱いにくい。光ファイバ12の外径が前記上限値を超えると、計測時に被覆を剥がしにくい。
【0039】
本実施形態の光ファイバ担持樹脂管10は、円筒状であり、筒壁11A内に4本以上の光ファイバ12を有し、光ファイバ12は、管軸O1方向に延び、筒壁11Aは、樹脂(A)を含むポリオレフィン樹脂組成物で形成され、樹脂(A)の密度は、ISO 1183-1:2019に準じて測定された値が0.920g/cm3以上0.940g/cm3以下であり、かつ樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定された値が0.1g/10min.以上1.3g/10min.以下である。そのため、光ファイバ12を伝送する信号損失を抑えて、より精度よく長距離範囲の計測をすることができる。
【0040】
[光ファイバ担持樹脂管の製造方法]
本実施形態の光ファイバ担持樹脂管の製造方法について説明する。
上記の樹脂(A)のみを含むポリオレフィン樹脂組成物、または上記の樹脂(A)および樹脂(B)を含むポリオレフィン樹脂組成物と、光ファイバ12とを金型に供給し、樹脂管と光ファイバ12とが一体成形された押出成形体を、金型の下流側に設置された引取機を用いて引き取り、
図1に示す光ファイバ担持樹脂管10を得た。
【0041】
<他の実施形態>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0042】
例えば、
図2に示すような変形例に係る光ファイバ担持樹脂管20を採用してもよい。
図2に示す光ファイバ担持樹脂管20は、円筒状の長尺の樹脂製の管である。光ファイバ担持樹脂管20は、円筒状の樹脂管21と、樹脂管21の筒壁21A内に樹脂管21の軸(管軸)O2方向から周方向に向けて0度超90度未満の傾斜角度で螺旋状に埋め込まれている光ファイバ22と、を有する。
【0043】
図2に示すように、樹脂管21の筒壁21A内に埋め込まれている光ファイバ22は、少なくとも4本であり、ひずみ変化等を検知する感度を高くするために、5本以上であってもよい。また、樹脂管21の機械的強度を確保するためには、光ファイバ22は20本以下であることが好ましい。
光ファイバ22は、筒壁11Aの厚さ方向の中心で二分する位置から表面に向かう25%以内にあることが好ましい。これにより、光ファイバ担持樹脂管20を曲げた際に、光ファイバ22が樹脂管21の外部に露出して、損傷することを抑制できる。
【0044】
図2に示す光ファイバ22の螺旋ピッチPは、10mm以上600mm以下であることが好ましく、100mm以上500mm以下であることがより好ましく、300mm以上400mm以下であることがさらに好ましい。光ファイバ22の螺旋ピッチが前記下限値未満では、計測精度は変わらず光ファイバ22が多く必要となり、コストが高くなる。光ファイバ22の螺旋ピッチが前記上限値を超えると、計測精度が低下する。
【0045】
樹脂管21は樹脂管11と同様の構成であり、光ファイバ22は光ファイバ12と同様の構成である。
【0046】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。さらに、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。
【実施例0047】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
中低密度ポリエチレンと、ポリイミド被覆光ファイバとを金型に供給し、樹脂管とポリイミド被覆光ファイバとが一体成形された押出成形体を、金型の下流側に設置された回転引取機を用いて、周方向にねじりながら引き取り、
図2に示すような光ファイバ担持樹脂管を得た。
得られた光ファイバ担持樹脂管では、樹脂管の筒壁内に4本以上の光ファイバが配置され、その光ファイバが筒壁における光ファイバ担持樹脂管の管軸方向と垂直な断面において回転対称の位置に配置されている。
ポリエチレンとしては、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された密度が0.938g/cm
3、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが0.2g/10min.であるものを用いた。
【0049】
[実施例2]
中低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンを含む樹脂組成物と、ポリイミド被覆光ファイバとを金型に供給し、樹脂管とポリイミド被覆光ファイバとが一体成形された押出成形体を、金型の下流側に設置された回転引取機を用いて、周方向にねじりながら引き取り、
図2に示すような光ファイバ担持樹脂管を得た。
得られた光ファイバ担持樹脂管では、樹脂管の筒壁内に4本以上の光ファイバが配置され、その光ファイバが筒壁における光ファイバ担持樹脂管の管軸方向と垂直な断面において回転対称の位置に配置されている。
中低密度ポリエチレンとしては、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された密度が0.938g/cm
3、ISO 1133「プラスチックスの質量フローレートと体積フローレート」のA法に準じ、190℃、荷重2.16kgで測定されたメルトフローレートが0.2g/10min.であるものを用いた。
高密度ポリエチレンとしては、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された密度が0.952g/cm
3であるものを用いた。
【0050】
[比較例]
高密度ポリエチレンと、ポリイミド被覆光ファイバとを金型に供給し、樹脂管とポリイミドン被覆光ファイバとが一体成形された押出成形体を、金型の下流側に設置された回転引取機を用いて、周方向にねじりながら引き取り、
図2に示すような光ファイバ担持樹脂管を得た。
得られた光ファイバ担持樹脂管では、樹脂管の筒壁内に4本以上の光ファイバが配置され、その光ファイバが筒壁における光ファイバ担持樹脂管の管軸方向と垂直な断面において回転対称の位置に配置されている。
高密度ポリエチレンとしては、ISO 1183-1:2019「プラスチック-非発泡プラスチックの密度の測定方法-第1部:液浸法,液体ピクノメータ法及び滴定法」に準じて測定された密度が0.952g/cm
3であるものを用いた。
【0051】
「信号損失評価方法」
非常に波長が短いパルス光を、光ファイバ担持樹脂管の光ファイバに入射して、光ファイバの信号損失を評価した。
光ファイバの信号損失は、光ファイバで発生する後方散乱光と反射のパワーを測定するOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)法と、光源(Light Source)とパワーメータ(Power Meter)とを用いて減衰量を測定するLSPM法によって評価した。
光ファイバ担持樹脂管と信号損失の測定機器の間には、ダミーコードを設けた。光ファイバ担持樹脂管から露出した光ファイバとダミーコードとを接続し、ダミーコードを測定機器に接続した後、光ファイバ担持樹脂管における信号損失を測定した。
信号損失の判定基準を下記の通りとした。結果を表1に示す。
<信号損失の判定基準>
信号損失5dB/km以下の場合「○」、信号損失5dB/km超の場合「×」
【0052】
【0053】
表1の結果から、実施例1および2の光ファイバ担持樹脂管は、信号損失を低減できることが確認された。