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特開2022-158998積層体、その硬化物およびこれを含む電子部品
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  • 特開-積層体、その硬化物およびこれを含む電子部品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022158998
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】積層体、その硬化物およびこれを含む電子部品
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20221006BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221006BHJP
   G03F 7/037 20060101ALI20221006BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20221006BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B27/30 A
G03F7/004 512
G03F7/037
G03F7/037 501
H05K1/03 630D
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038911
(22)【出願日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021059652
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】周 映▲旋▼
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大地
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 悠斗
(72)【発明者】
【氏名】宮部 英和
【テーマコード(参考)】
2H225
4F100
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC63
2H225AD06
2H225AE14N
2H225AE14P
2H225AM66P
2H225AM68N
2H225AM72P
2H225AM77P
2H225AM79N
2H225AM92P
2H225AM93P
2H225AN36N
2H225AN54P
2H225AN60N
2H225AN84P
2H225BA01P
2H225BA16N
2H225BA16P
2H225CA13
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4F100AK01D
4F100AK25B
4F100AK42C
4F100AK49A
4F100AK50A
4F100AT00C
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DD07C
4F100EH46
4F100EJ08
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JB08A
4F100JB08B
4F100JB14A
4F100JG04
4F100JK06
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】解像性に優れ、かつ回路の隠蔽性、機械物性においても良好な硬化物とされる積層体、その硬化物およびこれを有する電子部品を提供する。
【解決手段】
樹脂層(A)と、樹脂層(B)とを有し、樹脂層(A)の一方の面に、樹脂層(B)の一方の面が接するように設けられた積層体であって、
樹脂層(A)が、(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂と、(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂と、と、を有し、樹脂層(B)が、(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂を有することを特徴とする積層体、その硬化物およびこれを有する電子部品。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層(A)と、樹脂層(B)とを有し、
前記樹脂層(A)の一方の面に、前記樹脂層(B)の一方の面が接するように設けられた積層体であって、
前記樹脂層(A)が、
(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂と、
(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂と、
を有し、
前記樹脂層(B)が、
(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂を有することを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂が、下記一般式(1)または(2)、
【化1】
(式(1)中、X1は炭素数が24~48のダイマー酸由来の脂肪族ジアミン(a)の残基、式(2)中、X2はカルボキシル基を有する芳香族ジアミン(b)の残基、Yはそれぞれ独立にシクロヘキサン環または芳香環である)で示される何れか一方またはその双方の構造を一分子中に有するポリアミドイミド樹脂、またはこれら何れか2種類以上の混合物である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
第1フィルムと、第2フィルムと、をさらに含み、前記第1フィルム、前記樹脂層(A)、前記樹脂層(B)および前記第2フィルムを、この順に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の積層体における前記樹脂層(A)および前記樹脂層(B)を硬化した硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体の硬化物を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、特にプリント配線板等の電子部品の絶縁層として使用可能な積層体、その硬化物およびこれを含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器に用いられるプリント配線板の表層には、ソルダーレジストと呼ばれる絶縁膜が形成されている。例えば、回路の隠蔽性を得るための低光沢のソルダーレジストを得る方法として、ソルダーレジスト用の組成物として特定の樹脂組成を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、ソルダーレジスト用の組成物の成分として、相互に非相溶性の成分を用いることによりソルダーレジスト表面に入射する光の乱反射を生じさせ、光沢度を低下させようというものである。また、別の方法では、ソルダーレジスト層の表面を粗面化することにより、その光沢度を抑制し、低光沢のソルダーレジストが得られることが教示されている(例えば、特許文献2)。特許文献2では、ブラスト処理した支持体上にソルダーレジスト組成物を塗工する、物理的な粗面化の手法よりマット化されたソルダーレジストを得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2001/058977号
【特許文献2】特開2012-141605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的なソルダーレジストは、プリント配線板の回路の隠蔽性をある程度有しているが、基板の美感を向上させるため、回路の隠蔽性にさらに優れたソルダーレジストがしばしば求められる。
また上記特許文献1に記載されたソルダーレジストは、樹脂の非相溶性を利用しているため、塗膜全体が不均一に分離した状態となることから、塗膜の機械物性や、絶縁信頼性の確保については検討の余地がある。
【0005】
さらに、特許文献2に記載されているような、粗面化された支持体表面の凹凸を、その上に施されるソルダーレジスト組成物ないしドライフィルムの樹脂層に物理的に転写する手法では、パターニング露光時に、支持体の凹凸部で光が散乱し、結果としてソルダーレジストの解像性が影響を受けることがある。
【0006】
すなわち、本発明は、解像性に優れ、かつ回路の隠蔽性、機械物性においても良好な硬化物とされる積層体、その硬化物およびこれを有する電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明の上記課題は、樹脂層(A)と、樹脂層(B)とを有し、樹脂層(A)の一方の面に、樹脂層(B)の一方の面が接するように設けられた積層体であって、
樹脂層(A)が、
(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂と、
(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂と、
を有し、
樹脂層(B)が、
(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂を有することを特徴とする積層体により、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明者らは、上記各成分を有する樹脂層(A),(B)を有する積層体により、マット調の外観を有する硬化物を得ることができ、これによって、回路の隠蔽性を向上させたソルダーレジストを得ることができることを知見した。また、本発明の積層体によれば、解像性に優れ、かつ機械物性にも優れた硬化物を得ることができる。
【0008】
さらに、本発明の積層体において、(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂が、下記一般式(1)または(2)、
【化1】
(式(1)中、Xは炭素数が24~48のダイマー酸由来の脂肪族ジアミン(a)の残基、式(2)中、Xはカルボキシル基を有する芳香族ジアミン(b)の残基、Yはそれぞれ独立にシクロヘキサン環または芳香環である)で示される何れか一方またはその双方の構造を一分子中に有するポリアミドイミド樹脂、またはこれら何れか2種類以上の混合物であると好ましい。
【0009】
さらに、本発明の積層体は、第1フィルムと、第2フィルムと、をさらに含み、第1フィルム、樹脂層(A)、樹脂層(B)および第2フィルムを、この順に備えることができる。
【0010】
さらに、本発明の課題は、上記積層体の樹脂層(A)および樹脂層(B)を硬化した硬化物、または上記積層体の硬化物を有する電子部品により解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体は、回路の隠蔽性が高く、かつ解像度が高く、さらに機械物性においても良好な硬化物とされ、このような硬化物を有する電子部品も同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る積層体の模式断面図である。
図2】本発明の積層体を含む電子部品の製造方法の一例を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[積層体]
本発明の積層体は、樹脂層(A)と、樹脂層(B)とを有し、樹脂層(A)の一方の面に、樹脂層(B)の一方の面が接するように設けられた積層体であって、樹脂層(A)が(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂と、(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂と、樹脂層(B)が(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂と、を有する。樹脂層(A)は、さらに(A3)エポキシ樹脂と、(A4)光重合開始剤と、を有すると好ましく、樹脂層(B)は、さらに(B2)エポキシ樹脂を有すると好ましい。積層体の樹脂層(A)は第1フィルム上に形成され、樹脂層(A)の第1フィルムとは対向しない(反対側)面に樹脂層(B)が設けられて積層体として構成することが好ましい。樹脂層(B)の樹脂層(A)とは対向しない面には、さらに第2フィルムが設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明の積層体は、回路基板上に、樹脂層(B)が回路基板に接し、樹脂層(A)が最外層とされるように配置された硬化物として、プリント配線板の製造に用いられることが好ましい。
本発明の積層体の樹脂層(A)と樹脂層(B)とは、上記のように相互に接するよう配置されて、この配置において硬化する。この未硬化の積層体においては、特に加熱工程を通して、樹脂層(A)の構成成分と樹脂層(B)の構成成分とが界面において混ざり合う。このように、樹脂層(A)と樹脂層(B)の構成成分が混ざり合うことにより、界面で可視光の乱反射が生じるため、回路の隠蔽性に優れた硬化膜を得ることができると推察される。なお、本発明の積層体を用いることにより、回路の隠蔽性を得ることができるため、従来技術のような粗面化された支持体を第1フィルムとして用いる必要がなく、支持体の凹凸に起因する解像性の低下が生じないと考えられる。さらに、本発明の積層体は全体が不均一な状態とはならないため機械強度にも優れる。従って、本発明の積層体を用いることにより、回路の隠蔽性と機械強度や解像性を両立することができる。
【0015】
[樹脂層(A)]
樹脂層(A)を構成する樹脂組成物は以下の成分を含む。
((A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂)
本発明の積層体の樹脂層(A)に使用される(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂は、少なくとも1種以上のアルカリ溶解性基を含有し、アルカリ溶液で現像可能なものであればよく、公知慣用のものが用いられる。
アルカリ溶解性基とは、本発明の積層体をアルカリ溶液で現像可能とする官能基であり、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基が挙げられる。
このようなアルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂は、例えば、カルボン酸無水物成分とアミン成分とを反応させてイミド化物を得た後、得られたイミド化物とイソシアネート成分とを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。ここで、アルカリ溶解性基は、カルボキシル基やフェノール性水酸基を有するアミン成分を用いることにより導入される。また、イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよく、またこれらを併用して実施することもできる。
【0016】
カルボン酸無水物成分としては、テトラカルボン酸無水物やトリカルボン酸無水物などが挙げられるが、これらの酸無水物に限定されるものではなく、アミノ基やイソシアネート基と反応する酸無水物基およびカルボキシル基を有する化合物であれば、その誘導体含め用いることができる。また、これらのカルボン酸無水物成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0017】
アミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどのジアミン、脂肪族ポリエーテルアミンなどの多価アミン、カルボキシル基を有するジアミン、フェノール性水酸基を有するジアミンなどを用いることができる。アミン成分としては、これらのアミンに限定されるものではないが、少なくともフェノール性水酸基、カルボキシル基のうち1種の官能基を導入できるアミンを用いることが必要である。また、これらのアミン成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0018】
イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネートおよびその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類およびその異性体などのジイソシアネートやその他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらのイソシアネートに限定されるものではない。また、これらのイソシアネート成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0019】
以上説明したようなアルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂のアルカリ溶解性(現像性)と、ポリアミドイミド樹脂を含む樹脂組成物の硬化物の機械特性など他の特性とのバランスを良好にする観点から、その酸価(固形分酸価)は、30mgKOH/g以上とすることが好ましく、30mgKOH/g~150mgKOH/gとすることがより好ましく、50mgKOH/g~120mgKOH/gとすることが特に好ましい。この酸価を30mgKOH/g以上とすることにより、アルカリ溶解性、すなわち現像性が良好となり、さらには、光照射後の熱硬化成分との架橋密度が高くなり、十分な現像コントラストを得ることができる。また、この酸価を150mgKOH/g以下とすることにより、特に、後述する光照射後のPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程でのいわゆる熱かぶりを抑制でき、プロセスマージンが大きくなる。
【0020】
また、アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂の分子量は、現像性と硬化塗膜特性を考慮すると、質量平均分子量は、1,000以上、20,000以下であることが好ましく、1,000~17,000がより好ましく、2,000~15,000がさらに好ましい。分子量が20,000以下であると、未露光部のアルカリ溶解性が増加し、現像性が向上する。一方、分子量が1,000以上であると、露光・PEB工程後に、露光部において十分な耐現像性と硬化物性を得ることができる。
なお、本発明において質量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、JIS K7252―1:2008に準拠し、分子量標準物質としてポリスチレンを用いて測定する。
【0021】
特に本発明では、下記一般式(1)で示される構造または下記一般式(2)で示される何れか一方またはその双方の構造を一分子中に有するポリアミドイミド樹脂を用いることが、現像性をさらに向上させる点でより好ましい。
【化2】
(X1は炭素数が24~48のダイマー酸由来の脂肪族ジアミン(a)の残基、X2はカルボキシル基を有する芳香族ジアミン(b)の残基、Yはそれぞれ独立にシクロヘキサン環または芳香環である。)
【0022】
((A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂)
本発明の積層体の樹脂層(A)を構成する樹脂組成物には(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂が含まれる。この(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂は、上述したアルカリ溶解性基を有する。
【0023】
(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂は、アミド結合(-CONH-)を含まず、少なくともこの点で(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂とは相違する。
【0024】
(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂は、アルカリ溶解性基として少なくともカルボキシル基を有することが好ましく、アルカリ溶解性基としてカルボキシル基とフェノール性水酸基の双方を有することが特に好ましい。
【0025】
このような(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂は、例えば、カルボン酸無水物成分とアミン成分および/またはイソシアネート成分とを反応させて得られる樹脂が挙げられる。ここで、上記アルカリ溶解性基は、カルボキシル基やフェノール性水酸基を有するアミン成分を用いることにより導入される。また、イミド化は、熱イミド化で行っても、化学イミド化で行ってもよく、またこれらを併用して実施することもできる。
【0026】
カルボン酸無水物成分としては、テトラカルボン酸無水物やトリカルボン酸無水物などが挙げられるが、これらの酸無水物に限定されるものではなく、アミノ基やイソシアネート基と反応する酸無水物基およびカルボキシル基を有する化合物であれば、その誘導体を含め用いることができる。また、これらのカルボン酸無水物成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0027】
アミン成分としては、脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンなどのジアミン、脂肪族ポリエーテルアミンなどの多価アミン、カルボキシル基を有するジアミン、フェノール性水酸基を有するジアミンなどを用いることができる。アミン成分としては、これらのアミンに限定されるものではないが、フェノール性水酸基、カルボキシル基のうちの少なくとも1種の官能基を導入できるアミンを用いることが必要である。また、これらのアミン成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0028】
イソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネートおよびその異性体や多量体、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類およびその異性体などのジイソシアネートやその他汎用のジイソシアネート類を用いることができるが、これらのイソシアネートに限定されるものではない。また、これらのイソシアネート成分は、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。
【0029】
このような(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂の合成においては、公知慣用の有機溶剤を用いることができる。かかる有機溶媒としては、原料であるカルボン酸無水物類、アミン類、イソシアネート類と反応せず、かつこれら原料が溶解する溶媒であれば問題はなく、特にその構造は限定されない。特に、原料の溶解性が高いことから、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン等の非プロトン性溶媒が好ましい。
【0030】
(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂は、ポリイミド樹脂のアルカリ溶解性(現像性)と、ポリイミド樹脂を含む積層体の硬化物の機械特性など他の特性とのバランスを良好にする観点から、その酸価(固形分酸価)が20~200mgKOH/gであることが好ましく、60~150mgKOH/gであることが特に好ましい。
また、(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂の分子量は、現像性と硬化塗膜特性を考慮すると、質量平均分子量Mwが100,000以下であることが好ましく、1,000~100,000がより好ましく、2,000~50,000がさらに好ましい。
【0031】
上記(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂と(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂とを合算した配合量は、本発明の樹脂層(A)を構成する樹脂組成物100質量部に対して、例えば、10質量部以上85質量部以下であり、好ましくは30質量部以上80質量部以下であり、特に好ましくは45質量部以上75質量部以下である。
【0032】
また、(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂の固形分100質量部に対する(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂の配合量は10質量部以上、100質量部以下であることが好ましく、20質量部以上、70質量部以下であることがより好ましい。
【0033】
((A3)エポキシ樹脂)
樹脂層(A)を構成する樹脂組成物は、(A3)エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂としては公知慣用の樹脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂などが挙げられる。このうち、樹脂層(A)の成分として、特に好ましい(A3)エポキシは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ、またはその併用系である。
【0034】
(A3)エポキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製のjER828、jER834、jER1001、jER1004、DIC社製のEPICLON 840、850、850-S、1050、2055、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYD-011、YD-013、YD-127、YD-128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学社製のスミ-エポキシESA-011、ESA-014、ELA-115、ELA-128等(何れも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL903、DIC社製のEPICLON 152、165、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDB-400、YDB-500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学社製のスミ-エポキシESB-400、ESB-700等(何れも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER152、jER154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のEPICLON N-730、N-770、N-865、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDCN-701、YDCN-704、日本化薬社製のEPPN-201、EOCN-1025、EOCN-1020、EOCN-104S、RE-306、NC-3000、NC-3000L、住友化学社製のスミ-エポキシESCN-195X、ESCN-220、日鉄ケミカル&マテリアル社製のYDCN-700-2、YDCN-700-3、YDCN-700-5、YDCN-700-7、YDCN-700-10、YDCN-704 YDCN-704A、DIC社製のEPICLON N-680、N-690、N-695(いずれも商品名)等のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のEPICLON 830、三菱ケミカル社製jER807、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYDF-170、YDF-175、YDF-2004等(何れも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートST-2004、ST-2007、ST-3000(商品名)、三菱ケミカル社製のYX8034等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER604、日鉄ケミカル&マテリアル社製のエポトートYH-434、住友化学社製のスミ-エポキシELM-120等(何れも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル社製のセロキサイド2021等(何れも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-933、日本化薬社製のEPPN-501、EPPN-502等(何れも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のYL-6056、YX-4000、YL-6121(何れも商品名)等のビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS-200、ADEKA社製EPX-30、DIC社製のEXA-1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjER157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製のjERYL-931等(何れも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学社製のTEPIC等(何れも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日油社製ブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ZX-1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製ESN-190、ESN-360、DIC社製HP-4032、EXA-4750、EXA-4700等のナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;DIC社製HP-7200、HP-7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日油社製CP-50S、CP-50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらにシクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;CTBN変性エポキシ樹脂(例えば日鉄ケミカル&マテリアル社製のYR-102、YR-450等)などが挙げられる。
樹脂層(A)において、(A3)エポキシ樹脂は、どのような配合量であってもよいが、(A1)アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂および(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂に含まれるアルカリ溶解性基(フェノール性水酸基、カルボキシル基)当量と(A3)エポキシ樹脂のエポキシ当量の比が1:0.1~1:10となるような割合で配合することが好ましい。
【0035】
このような配合比の範囲とすることにより、現像が良好となり、微細パターンを容易かつ高精度に形成することができるものとなる。上記当量比は、1:0.2~1:5であることがより好ましい。
【0036】
((A4)光重合開始剤)
樹脂層(A)を構成する樹脂組成物は、(A4)光重合開始剤を含むことが好ましい。
(A4)光重合開始剤としては、オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を好適に使用することができる。
【0037】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、市販品として、BASFジャパン社製のIRUGACURE OXE01、IRUGACURE OXE02、アデカ社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができる。
【0038】
α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins B.V社製のOmnirad907、Omnirad369、Omnirad379などが挙げられる。
【0039】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、具体的には2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。市販品としては、IGM Resins B.V社製のOmnirad819などが挙げられる。
【0040】
(A4)光重合開始剤としては後述する光照射後のPEB工程に用いる場合には、光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤が好適に使用される。なお、このPEB工程では、光重合開始剤と光塩基発生剤とを併用してもよい。
【0041】
光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、後述する熱硬化性樹脂の重合反応の触媒として機能しうる1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。塩基性物質として、例えば2級アミン、3級アミンが挙げられる。このような光塩基発生剤としての機能も有する光重合開始剤としては、上述のα-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基以外にも、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメート基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。
【0042】
これらの光重合開始剤としては、オキシムエステル系光重合開始剤、α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤のうち少なくともいずれか1種を用いることが特に好ましい。(A4)光重合開始剤の配合量は、樹脂層(A)に含まれるすべての固形分に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましい。0.1質量%以上であると、銅上での光硬化性が向上し、塗膜の密着性が良好とされるとともに、耐薬品性などの塗膜特性も向上する。一方、20質量%以下とすることで、アウトガスの低減効果が得られる。
【0043】
[樹脂層(B)]
樹脂層(B)を構成する樹脂組成物は以下の成分を含む。
((B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂)
本発明に用いる(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂としては、分子中にカルボキシル基と(メタ)アクリロイル基、またその誘導体由来のものが好ましい。(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)を好適に使用できる。
【0044】
(1)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物と、カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物との重付加反応によるアルカリ溶解性のウレタン系(メタ)アクリレート樹脂。
【0045】
(2)前記(1)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したアルカリ溶解性のウレタン系(メタ)アクリレート樹脂。
【0046】
(3)前記(1)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したアルカリ溶解性のウレタン系(メタ)アクリレート樹脂。
【0047】
(4)2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂。
【0048】
(5)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂。
【0049】
(6)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂。
【0050】
(7)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂。
【0051】
(8)上記(1)~(7)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0052】
前記のような(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の酸価は、40~200mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは45~120mgKOH/gの範囲である。(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の酸価が40mgKOH/g以上であるとアルカリ現像が良好に行なわれ、一方、200mgKOH/g以下とすることにより、現像液による露光部の溶解は生じず、必要以上にラインが痩せることもなく、露光部と未露光部の区別が保たれて、現像液で溶解剥離等も生ずることなく、正常なレジストパターンの描画が行われる。
【0053】
また、(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の質量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に1,000~150,000、さらには2,000~100,000の範囲にあるものが好ましい。質量平均分子量が2,000以上であると、タックフリー性能が良好となり、露光後の塗膜の耐湿性が十分となり、現像が設計通りに行われて、解像度が向上する。一方、質量平均分子量が150,000以下とされることにより、優れた現像性が安定的に得られ、貯蔵安定性も良好となる。
【0054】
このような(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の配合量は、樹脂層(B)を構成する樹脂組成物の固形分量に対して、20~80質量%、好ましくは30~70質量%の範囲で含まれことが適当である。(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の配合量が20質量%以上の場合、皮膜強度が向上する。一方、80質量%以下とすることにより、樹脂組成物の粘度が良好とされて、塗布性が向上するため好ましい。。
【0055】
これら(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂は、前記列挙したものに限らず使用することができ、1種類でも複数種混合しても使用することができる。特にアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂の中で芳香環を有している樹脂が、屈折率が高く、解像性に優れるので好ましく、さらにノボラック構造を有しているものが解像性だけでなく、PCTやクラック耐性に優れているので好ましい。中でも、(4)、(6)、(7)に挙げたアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂を用いることが好ましく、(6)、(7)のごときフェノール化合物を出発材料として使用するアルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂はHAST耐性、PCT耐性が優れるため好適に用いることが出来る。
【0056】
本発明において、(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂((B1)成分)は、樹脂層(A)に含まれる前記(A1)アルカリ溶解性のアミドイミド樹脂((A1)成分)および前記(A2)アルカリ溶解性のポリイミド樹脂((A2)成分)の少なくとも一方と非相溶性を示すと考えられる。すなわち(A1)成分、(A2)成分、(B1)成分の混合物、またはこれらを含む樹脂層(A)および(B)形成用の樹脂組成物同士の混合物が、樹脂層(A)および樹脂層(B)の界面で、非相溶の混合状態を形成し、この結果、両層の界面が、平滑性を失い、凹凸を生ずる。この凹凸を有する界面に可視光が入射すれば、可視光の乱反射が生じて、電子部品の回路がより良好に隠蔽されると推察される。
【0057】
((B2)エポキシ樹脂)
樹脂層(B)を構成する樹脂組成物は(B2)エポキシ樹脂を含むことが好ましい。(B2)エポキシ樹脂としては、樹脂層(A)の構成成分として上述した(A3)エポキシ樹脂と同様のものが使用可能である。積層体の樹脂層(A)、樹脂層(B)に用いられる(A3)エポキシ樹脂と(B2) エポキシ樹脂は、相互に同種類のものであっても、別々の種類のものであってもよい。さらに、樹脂層(A)および樹脂層(B)のいずれか、または双方で複数種類のエポキシ樹脂を用いる場合においては、その一部を同種類のエポキシ樹脂としてもよい。
【0058】
樹脂層(B)における(B2)エポキシ樹脂は、どのような配合量であってもよいが、(B1)アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂のアルカリ溶解性基(フェノール性水酸基、カルボキシル基)当量と(B2)エポキシ樹脂のエポキシ当量の比が1:0.1~1:10となるような割合で配合することが好ましい。
【0059】
このような配合比の範囲とすることにより、現像が良好となり、微細パターンを容易かつ高精度に形成することができるものとなる。上記当量比は、1:0.2~1:5であることがより好ましい。
【0060】
[樹脂層(A)および樹脂層(B)の任意成分]
樹脂層(A)および樹脂層(B)は、さらに以下の成分を含むものであってもよい。
【0061】
(光重合性化合物)
樹脂層(A)および(B)は、光重合性化合物を含むものであってよく、ソルダーレジスト等の製造に従来より用いられる光重合性化合物がいずれも使用可能である。
【0062】
樹脂層(A)および(B)に含むことができる光重合性化合物としては、分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物等が挙げられる。
【0063】
分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのジアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス-ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物若しくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物若しくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの多価アクリレート類;およびメラミンアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくも1種等が挙げられる。
【0064】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、グリセリンジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくも1種等が挙げられる。
【0065】
グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAグリシジルエーテルジアクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリアクリレート等;その他、2,2-ビス(4-アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルアクリレート、および上記アクリレートに対応する各メタクリレート類のいずれか少なくも1種等が挙げられる。上記した光重合性化合物は、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
【0066】
また、光重合性化合物として、硬化物の強靭性などを付与する目的で、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、およびエポキシアクリレート等が挙げられる。また、粘度調節等の目的で、単官能(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート等の(メタ)アクリレート類や、アクリロイルモルホリン等を使用することもできる。
(無機充填剤)
無機充填材は、硬化物の硬化収縮を抑制し、密着性、硬度などの特性を向上させるために配合することができる。このような無機充填剤としては、例えば、硫酸バリウム、無定形シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ノイブルグシリシャスアース等が挙げられる。
【0067】
(熱硬化触媒)
樹脂層(A)および(B)は、熱硬化触媒を配合することができる。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物等が挙げられる。また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT 3513N(ジメチルアミン系化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CAT SA 102(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用可能である。
【0068】
さらに、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、テトラヒドロ無水フタル酸付加メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもできる。熱硬化触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
(着色剤)
着色剤としては、赤、青、緑、黄、白、黒などの公知慣用の着色剤を配合することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0070】
(有機溶剤)
有機溶剤は、樹脂層(A)および(B)用成分となる樹脂の製造や、これらを含む樹脂組成物の製造、または粘度調整のために配合することができる。このような有機溶剤としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。このような有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0071】
(その他成分)
必要に応じてさらに、メルカプト化合物、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分を配合することができる。これらは、公知慣用のものを用いることができる。また、微粉シリカ、ハイドロタルサイト、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および/またはレベリング剤、シランカップリング剤、防錆剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0072】
(積層体の製造工程)
本発明の積層体(ドライフィルム)の製造例を、図1を参照しながら説明する。
図1には、本発明の積層体の一実施の形態が断面図として示されている。図1において、積層体10は、まず、第1フィルム1上に、樹脂層(A)を構成する樹脂組成物を、有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、常法に従い、コンマコーター等の公知の手法で塗布する。その後、通常、50~140℃の温度で1~30分間乾燥することで、第1フィルム1上に樹脂層(A)の乾燥塗膜が形成される。このように得られた樹脂層(A)の上に、さらに樹脂層(B)を構成する樹脂組成物を、有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、常法に従い、コンマコーター等の公知の手法で塗布する。その後、通常、50~140℃の温度で1~30分間乾燥することで、樹脂層(A)の第1フィルム1とは反対側の面に樹脂層(B)の乾燥塗膜が形成される。
【0073】
樹脂層(A)および(B)の形成のための樹脂組成物の塗布は、上記のコンマコーターの他、ブレードコーター、リップコーター、フィルムコーター等の公知の機器によって行うことも可能であり、乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、蒸気による加熱方式の熱源を備えた機器を用いることにより好ましく行われ、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、およびノズルより吹き付ける方法等、公知の方法を用いることもできる。
【0074】
また、積層体の樹脂層(B)上、すなわち、積層体の樹脂層(B)の樹脂層(A)とは反対側に位置する面には、樹脂層表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、剥離可能な第2フィルム2を積層することができる。第1フィルム1および第2フィルム2としては、従来公知のプラスチックフィルムを適宜用いることができる。
【0075】
第2フィルム2の、樹脂層(B)との接着力は、第1フィルム1と樹脂層(A)との接着力よりも小さいものであることが好ましい。本発明の積層体10は、まず第2フィルム2を剥離した後で、電子機器上に載置されるため、上記のように接着力を制御することにより、この作業が容易とされる。第1フィルム1および第2フィルム2の厚さについては特に制限はないが、一般には10~150μmの範囲で適宜選択される。
このように、第1フィルム1、樹脂層(A)と、樹脂層(B)と、第2フィルム2とが、この順序に積層された4層構造の積層体がドライフィルムとして製造される。
また、本発明の積層体は、片面のみが、フィルム(第1フィルム1または第2フィルム2のいずれか)で支持または保護されてもよいし、フィルムを含まない積層体であってもよい。さらに、本発明の積層体(ドライフィルム)は、ロール状に巻回されていてもよい。
【0076】
塗膜強度の観点から、各層間の界面は、馴染んでいてもよい。すなわち、樹脂層(A)と樹脂層(B)とは密着性が高く、第1フィルム1や、第2フィルム2の剥離時、あるいは、積層体としてその他の剥離される層が存在する場合には、その剥離される層の剥離時において樹脂層(A)と樹脂層(B)は相互に密着して耐久性の高い永久被膜を形成することが好ましい。
【0077】
上記のように得られた積層体は、プリント配線板等の電子機器(保護対象)に対して適用され、ソルダーレジスト等として機能する。本発明の積層体は、保護対象に積層されて用いられる場合に、樹脂層(B)が電子部品側、樹脂層(A)が表層側となるようにラミネートされる。
【0078】
本発明の積層体が電子機器上に配置される際には、積層体は第2フィルム2を有する場合はこれを剥離し、樹脂層(B)が、回路基板の保護対象面を覆うように対向配置し、ラミネーターを用いて加圧することにより、積層体と電子機器とを密着させる。ラミネーターとしては、市販の真空加熱加圧型ラミネーターなどを用いることができる。たとえば名機製作所社製真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン社製バキューム・アプリケーターなどを用いることができる。この場合は前述の真空加熱加圧型ラミネーターのほか、ロールラミネーター、真空ロールラミネーターや真空プレスなどを使用して行うこともできる。真空プレスは市販されている通常の装置が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、クイックプレス、連続成形、オートクレーブ成形機等が使用できる。以上のラミネーター等の運転条件は、60~130℃で行うことができ、圧力0.1~0.7MPa、加熱加圧時間1~90秒、真空度10~10,000Pa、真空時間1~90秒の範囲で処理することができる。
【0079】
また、本発明の積層体を回路基板上に配置する方法としては、樹脂層(A)および樹脂層(B)をそれぞれ個別にドライフィルムとして作成し、このドライフィルムを回路基板の保護対象面に順次ラミネートする方法によることもできる。即ち、まず、樹脂層(B)のドライフィルムを回路基板にラミネートすることによって、回路基板上に樹脂層(B)を形成する。その後、樹脂層(A)のドライフィルムを樹脂層(B)上にラミネートすることによって、回路基板上に形成された本発明の積層体を得ることができる。
【0080】
なお、本発明において、「上」、「対向」とは、その対象として記載した層や面等が、必ずしも接している必要はなく、場合によっては他の層を介して設けられていることもある。一方で、「直接」等とは層や面が接している状態を意味する。
【0081】
この他、回路基板に対して直接的に、樹脂層(B)用の樹脂組成物を塗布、乾燥し、次いで乾燥状態とされた樹脂層(B)上に、樹脂層(A)用の樹脂組成物を塗布、乾燥することにより、積層体を形成してもよい。この場合は、積層体(ドライフィルム)は、回路基板側から、樹脂層(B)および樹脂層(A)が順に積層されてなり、樹脂層(B)および(A)は、回路基板上に積層した状態で、本発明の積層体を構成する。このように回路基板に対して直接設けられる場合も、第1フィルム1を用いて積層体を製造する場合と同様に、樹脂組成物の有機溶剤を用いた粘度調整、塗布、乾燥などが行われる。
【0082】
樹脂組成物の製造にあたり、粘度調整に用いられる有機溶剤は、上述したような公知の有機溶剤から適宜選択される。
【0083】
このように製造された積層体は、後述の硬化処理により硬化してプリント配線板等の電子機器(保護対象)上に永久被膜を構成する。
本発明の積層体は、電子部品、特にプリント配線板の保護膜の形成に好ましく用いることができ、中でもソルダーレジスト層、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ等の永久保護膜の形成に好ましく用いることができる。また、前記プリント配線板は特に限定されないが、本発明の積層体は、解像度が高く、さらに機械物性にも優れることから、パッケージ基板に好適に用いることができる。
【0084】
(硬化物および硬化物を含む電子部品の製造方法)
本発明の積層体10を含む電子部品の製造方法の一例を、図2の工程図を参照しながら説明する。
図2は、導体回路が形成されたプリント配線基板20に本発明の積層体(ドライフィルム)10を形成する工程(a)(積層工程)、この積層体に活性エネルギー線をパターン状に照射する工程(b)(露光工程)、および、この積層体をアルカリ現像して、パターン化された積層体を一括形成する工程(d)(現像工程)を含む製造方法である。また、必要に応じて、アルカリ現像後、さらなる光硬化や熱硬化を行う工程(e)(ポストキュア工程)を行い、積層体を完全に硬化させて、信頼性の高いプリント配線板を得ることができる。さらに、必要に応じて、露光工程と現像工程の間に積層体を加熱する工程(c)(PEB工程)を入れて、現像工程により、パターン化された積層体を一括形成してもよい。さらに、樹脂層(A)が、光照射により塩基性物質を生成する化合物を含有する場合には、解像性の観点から、前記PEB工程を行うことが好ましい。なお、現像工程では、上記の露光および任意のPEB工程を経ることにより、樹脂層(A)および(B)が同時(一括)に現像されるため、これを上記では「一括形成」と称している。
【0085】
[工程a:積層工程]
この工程では、導体回路21が形成されたプリント配線基板20に、樹脂層(B)および樹脂層(A)を構成する樹脂組成物を、順次、プリント配線基板20上に直接塗布、乾燥することにより、プリント配線基板20上に樹脂層(B)および樹脂層(A)を直接形成するか、または、樹脂層(B)および樹脂層(A)を、上述したように予め製造したドライフィルム形態にした積層体10を、プリント配線基板20にラミネートする。あるいは、上述のように樹脂層(A)と樹脂層(B)をそれぞれ別個にドライフィルムとして、順次プリント配線基板20にラミネートする。
【0086】
図2の工程(a)では、樹脂層(A)上の樹脂層(B)として予め作成したドライフィルムを、プリント配線板20上に積層される。積層体10はプリント配線板20に対し、真空ラミネーター等を用いて、加圧および加熱下で貼合することが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、プリント配線板20表面に凹凸があっても、ドライフィルム10が配線基材に密着するため、気泡の混入がなく、また、配線基材表面の凹部の穴埋め性も向上する。真空ラミネートの条件は上記の条件を適宜選択して用いることができる。
【0087】
[工程(b):露光工程]
工程(b)では、樹脂層(A)の上面にネガ型のマスク3が配置されている。活性エネルギー線の照射により、樹脂層(A)または樹脂層(B)に含まれる光重合開始剤をネガ型のパターン状に活性化させて、露光部を硬化する。露光機としては、メタルハライドランプを搭載した露光機などを用いることができる。また、マスク3の配置を割愛して直接描画装置により活性エネルギー照射することも可能である。
【0088】
露光に用いる活性エネルギー線としては、最大波長が350~450nmの範囲にあるレーザー光、散乱光または平行光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、効率よく光重合開始剤を活性化させることができる。また、その露光量は膜厚等によって異なるが、通常は、50~1500mJ/cmとすることができる。本発明では、積層体10を露光工程に付して硬化させた以降のものを積層体10の硬化物と呼ぶ。
【0089】
[工程(c)PEB工程]
上記露光後、任意の工程(c)として、樹脂層を加熱することにより、露光部を硬化することができる。この加熱工程はPEB(POST EXPOSURE BAKE)工程と呼ばれ、これによりフォトリソグラフィー後の積層体10の硬化収縮を抑制し、優れた硬化後の積層体10に優れた解像性を与えることができる。樹脂層(A)、樹脂層(B)が、光塩基発生剤としての機能を有する光重合開始剤、または光重合開始剤と光塩基発生剤との双方を含む場合は、露光工程で発生した塩基によって、樹脂層(A)、樹脂層(B)を深部まで硬化することができる。加熱温度は、例えば、70~140℃、好ましくは80~140℃である。加熱時間は、例えば、2~100分、好ましくは10~100分である。PEB工程では、主に熱反応によるエポキシ樹脂等の開環反応により硬化が進行することから、露光工程による光ラジカル反応により硬化を行う場合と比べてひずみや硬化収縮を抑えることができる。 なお、上記PEB工程として、露光工程と現像工程の間にドライフィルムの層を加熱することにより、露光部を硬化させてもよい。
【0090】
[工程(d):現像工程]
この工程(d)では、アルカリ現像により、未露光部を除去して、ネガ型のパターン状に硬化した積層体10の硬化物を、特には、カバーレイおよびソルダーレジストとして形成する。現像方法としては、ディッピング等の公知の方法によることができる。また、現像液としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、アミン類、2-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液、または、これらの混合液を用いることができる。
【0091】
[工程(e):ポストキュア工程]
なお、現像工程(d)の後に、さらに、積層体10の硬化物に光照射してもよく、また、例えば、150℃以上で加熱してもよい。加熱温度は、例えば、80~170℃であり、加熱時間は5~100分である。本発明における積層体10のポストキュアは、例えば、熱反応によるエポキシ樹脂の開環反応であるため、光ラジカル反応で硬化が進行する場合と比べてひずみや硬化収縮を抑えることができる。
以上のように、本発明の積層体10の硬化物を含む電子部品100が製造される。
【0092】
本発明の硬化物は、本発明の電子部品におけるソルダーレジスト等の機能を発揮する。電子部品においては、樹脂層(A)が最外層になるように硬化物が形成される。本発明の硬化物は優れた解像性を有することから微細なパターンを形成することが可能であり電子部品の品質を高めることができる。さらに、電子部品の回路を良好に隠蔽することができるとともに、優れた機械特性を発揮する。
【0093】
本発明において、電子部品とは、電子回路を有する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他、抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれる。本発明の積層体硬化物が、これら電子部品の絶縁層としての機械特性と良好な回路の隠蔽性を与えるものである。
【実施例0094】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。なお、本実施例および比較例の「部」、「%」の値は、特に断りが無い限り、質量を基準とする。
【0095】
<樹脂組成物の調製>
I.樹脂成分の合成
[合成例1:カルボキシル基を有するポリアミドイミド樹脂溶液(アルカリ溶解性のポリアイミドイミド樹脂1)の合成(一般式(1)または(2)の何れか一方またはその双方の構造を一分子中に有するポリアミドイミド樹脂)]
撹拌機、窒素導入管、分留環、冷却環を取り付けたセパラブル3つ口フラスコに、3,5-ジアミノ安息香酸を3.8g、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを6.98g、ジェファーミンXTJ-542(ハンツマン社製、分子量1025.64)を8.21g、γ-ブチロラクトンを86.49g、室温(25℃)で仕込み、溶解した。
【0096】
次いで、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物17.84gおよびトリメリット酸無水物2.88gを仕込み、室温で30分間保持した。次いで、トルエンを30g加え、160℃まで昇温して、トルエンおよび水を留去しながら3時間撹拌した後、室温まで冷却し、イミド化物溶液を得た。
【0097】
得られたイミド化物溶液に、トリメリット酸無水物9.61gおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート17.45gを仕込み、温度160℃で32時間撹拌した。こうしてカルボキシル基を有するポリアミドイミド樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液(樹脂1)の固形分は40.1質量%、固形分の酸価は88.1mgKOHであった。
【0098】
[合成例2:フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有するポリイミド樹脂溶液(アルカリ溶解性のポリイミド樹脂2)の合成]
撹拌機、窒素導入管、分留環、冷却環を取り付けたセパラブル3つ口フラスコに、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン22.4g、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンを8.2g、NMPを30g、γ-ブチロラクトンを30g、4,4’-オキシジフタル酸無水物を27.9g、トリメリット酸無水物を3.8g加え、窒素雰囲気下、室温、100rpmで4時間撹拌した。次いでトルエンを20g加え、シリコーン浴温度180℃、150rpmでトルエンおよび水を留去しながら4時間撹拌して、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有するポリイミド樹脂溶液(樹脂2)を得た。得られた樹脂(固形分)の酸価は18mgKOH、Mwは10,000、水酸基当量は390であった。
【0099】
[合成例3:カルボキシル基含有ノボラック型アクリレート樹脂(アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂3)の合成]
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(アイカ工業株式会社製、商品名「ショーノールCRG951」、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cm2で16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させた。このようにして、固形分酸価88mgKOH/g、固形分71%、質量平均分子量2,000のカルボキシル基含有感光性樹脂(樹脂3)溶液を得た。
【0100】
II.樹脂層(A)および(B)用の樹脂組成物の調製
下記表1の樹脂層(A)および(B)の配合に従って、各成分を攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルにて混練し、各樹脂組成物を調製した。
【0101】
表1
【表1】
*上記表中の各成分の割合は固形分による。
【0102】
表1に記載した各成分の詳細は以下のとおりである。
ポリアミドイミド樹脂:合成例1により合成、アルカリ溶解性のポリアミドイミド樹脂
ポリイミド樹脂:合成例2により合成、アルカリ溶解性のポリイミド樹脂
エポキシ樹脂((A3)および(B2)): ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂(DIC社製)
光重合開始剤:オキシムエステル系光重合開始剤IRUGACURE OXE 02(BASFジャパン社製)
アクリレート樹脂1:KAYARAD ZCR-1569H(多官能エポキシ(メタ)アクリレートの2塩基酸無水物の付加物、アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂)(日本化薬社製)
DHPA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製)
着色顔料:Paliogen Black S0084(ペリレンブラック顔料)(BASF社製)
アクリレート樹脂2:合成例3により合成、アルカリ溶解性の(メタ)アクリレート樹脂
*第1フィルムとしてマットPET(PTHA-25、ユニチカ株式会社製、表面粗さRa:0.3μm)を使用することにより、樹脂層(A)表面に凹凸を形成した
【0103】
III.積層体の作成とその硬化物の評価
III-1. 積層体(ドライフィルム)の作製
上記のように得られた各樹脂組成物を、それぞれ有機溶剤メチルエチルケトンで希釈して適切な粘度(10mPa・s~100dPa・s)に調整した。第1フィルム(PETフィルム、厚さ:25μm、表面粗さ(Ra):0.03μm)上に、表1に記載の樹脂層(A)に対応する樹脂組成物を、樹脂層(A)の乾燥後膜厚が同表に記載した厚みになるように塗布、90℃にて15分乾燥した。次に、上記の乾燥した樹脂層(A)上に、表1の樹脂層(B)に対応する樹脂組成物を、樹脂層(B)の乾燥後膜厚が同表に記載の厚みになるように塗布後、80℃にて30分乾燥した。これにより、第1フィルム上に、樹脂層(A)および樹脂層(B)を順に有する積層体がドライフィルムとして得られた。ただし、比較例3は樹脂層(A)のみの単層膜ドライフィルムとした。また、比較例2については、第1フィルムとして、マットPET(PTHA-25、ユニチカ株式会社製、表面粗さRa:0.3μm)を用いたため、マットPETの凹凸が樹脂層(A)に転写され、その結果、樹脂層(A)は、物理的に粗面化された表面を有していた。
【0104】
III-2. 試験基板の作製と評価
<試験基板Aの作製>
銅厚15μmの回路が形成してある片面プリント配線基板を用意し、メック社製CZ8100を使用して前処理を行った。上記により作成した各実施例、比較例の積層体(ドライフィルム)を、樹脂層(B)が基板に接するように、真空ラミネーターを用いて貼り合わせることにより、基板上に積層体を形成した。この基板に、高圧水銀灯(ショートアークランプ)を搭載した露光装置を用いて後述の最適露光量で、樹脂層(A)側からパターン露光し、100℃で30分間のベークを行った後、第1フィルムを剥離した。その後、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、ソルダーレジストパターンとして積層体を得た。この基板に対し、樹脂層(A)側から、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して硬化し、各積層体からなる硬化物を備える試験基板Aを作製した。
【0105】
[最適露光量の決定]
試験基板A作製時のパターン露光において用いた最適露光量は以下のように求めたものである。すなわち、銅厚15μmの回路が形成してある片面プリント配線基板を用意し、メック社製CZ8100を使用して前処理を行った。上記により作成した各実施例、比較例の積層体(ドライフィルム)を、樹脂層(B)が基板に接するように、真空ラミネーターを用いて貼り合わせることにより、基板上に積層体(最適露光量測定サンプル)を形成した。このように得られた、各最適露光量測定サンプルに対し、高圧水銀灯搭載の露光装置を用い、ステップタブレット(Kodak No.2)を介して露光した。露光後、100℃で30分間の加熱を行った。その後、第1フィルムを剥離し、現像(30℃、0.2MPa、1wt%NaCO水溶液)を60秒で行った。測定サンプルごとに、現像後に残存する部分の、ステップタブレット5段目の濃度部分に対応する時の光量を最適露光量として、試験基板Aのパターン露光時の光量とした。
【0106】
<隠蔽性評価>
上記試験基板Aを用い、30cmの距離から目視で観察し、回路の隠蔽性を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎:隠蔽力が高く回路が視認できない。
○:回路の一部を視認できる。
×:回路を明確に視認できる。
【0107】
<無電解金めっき耐性評価>
上記試験基板Aに対し、市販品の無電解ニッケルめっき浴及び無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、めっき面にJIS Z 1522に規定された呼び幅12~19mmのテープを貼り付け、テープを瞬間的に引きはがすことでテープピーリング試験を行った。試験後のレジスト層の剥がれの有無やめっきのしみ込みの有無を評価した。判定基準は以下のとおりである。
○:染み込み、剥がれが見られない。
×:めっき後に染み込みが確認される
【0108】
<試験基板Bの作製>
銅厚15μmの回路が形成してある片面プリント配線基板を用意し、メック社製CZ8100を使用して前処理を行った。上記により作成した各実施例、比較例の積層体(ドライフィルム)を、樹脂層(B)が基板に接するように、真空ラミネーターを用いて貼り合わせることにより、基板上に積層体を形成した。この基板の積層体の樹脂層(A)に、解像性評価用ネガマスクとしてビア開口径500μm、300μm、150μm、100μm、80μmを有するネガパターンを配し、これを介し、高圧水銀灯を搭載した露光装置を用いて、上述の試験基板Aの作成に関連して説明した最適露光量でパターン露光した。さらに、100℃で30分間のベークを行った後、第1フィルムを剥離した。その後、30℃の1wt%炭酸ナトリウム水溶液によりスプレー圧0.2MPaの条件で60秒間現像を行い、ソルダーレジストパターンを得た。この基板を、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射した後、150℃で60分加熱して硬化し、各積層体からなる硬化物を備える試験基板Bを作製した。
<解像性評価(最小開口径の評価))>
試験基板Bにおいて、パターン開口部をSEMにて倍率200で観察し、最小開口径を求めた。
【0109】
<密着性の評価>
試験基板Bの積層体の硬化物に対し、JIS D-0202に基づいた碁盤目付着性試験方法に従って、カッターナイフで1mm間隔の碁盤目が100個できるように切込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを剥離し、基板上の残存する硬化物の状態を以下の判定基準で評価した。
○:はがれが無い。
×:はがれがある。
【0110】
<B-HAST耐性>
試験基板Bを、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽内に入れ、ライン/スペース=12μm/13μmのくし型電極部(n=6)に電圧3.5Vを印加し、300時間、槽内B-HASTを行った。300時間経過後、以下の基準に従い、B-HAST耐性を評価した。抵抗値1×10Ω未満をショートと判定した。
◎:6個のすべてのくし型電極間でショート発生なし
○:6個中1個のくし型電極間でショート発生
×:6個中2個以上のくし型電極間でショート発生
【0111】
<破断強度>
試験基板Bから、積層体の硬化物を剥離し、剥離した硬化物をJIS K7127に準拠して幅10mm、長さ70mmに切断し試験片として破断強度を測定し、評価した。いずれの試料も破断強度が30MPa以上であった。
【0112】
<耐熱性評価>
試験基板Bにロジン系フラックスを塗布し、あらかじめ260℃および 280℃に設定したはんだ槽に10秒浸漬して、硬化塗膜の浮き、膨れ、剥がれの発生について評価した。評価基準は下記のとおりである。
◎:260℃および280℃のいずれの浸漬でも浮き、膨れ、剥がれの発生
がなかった。
〇:260℃の浸漬では浮き、膨れ、剥がれの発生がないが、280℃の浸
漬で浮き、膨れ、剥がれが発生した。
×:260℃および280℃のいずれの浸漬でも浮き、剥がれが発生した。
【0113】
本発明の実施例による積層体の硬化物は、すべての評価において良好な結果を示した。一方、樹脂組成または層構成の異なる比較例1および3によると回路の隠蔽性と、機械特性を両立することは困難であることがわかる。さらに比較例2では、物理的な手法で回路の隠蔽性を向上させたため、硬化物の解像度が低下している。
【0114】
以上、本発明者等によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0115】
1 第1フィルム
(A) 樹脂層(A)
(B) 樹脂層(B)
2 第2フィルム
図1
図2