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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159004
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】導電性材料
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/10 20060101AFI20221006BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20221006BHJP
   C25D 3/56 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C25D5/10
C25D7/00 G
C25D3/56 F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040294
(22)【出願日】2022-03-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2021063478
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133201
【氏名又は名称】松田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末野 伸治
(72)【発明者】
【氏名】水橋 正英
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AB44
4K023AB46
4K024AA24
4K024AB02
4K024BA09
4K024BB09
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、バリア層であるニッケル又はニッケル合金皮膜がなくとも、低い接触抵抗を有する導電性材料を提供することを課題とする。
【解決手段】銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体に、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜が積層した導電性材料であり、260℃で10分間、大気加熱後、荷重5gfの条件で測定した場合の接触抵抗が100mΩ以下である、導電性材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体に、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜が積層した導電性材料であり、260℃で10分間、大気加熱後、荷重5gfの条件で測定した場合の、接触抵抗が100mΩ以下である、導電性材料。
【請求項2】
ビッカース硬度が250Hv以上である、請求項1に記載の導電性材料。
【請求項3】
前記パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上100μm以下である、請求項1又は2に記載の導電性材料。
【請求項4】
銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体に、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜が積層し、前記パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜に、金-コバルト合金めっき皮膜が積層した導電性材料であり、260℃で10分間、大気加熱後、荷重5gfの条件で測定した場合の、接触抵抗が100mΩ以下である、導電性材料。
【請求項5】
ビッカース硬度が150Hv以上である、請求項4に記載の導電性材料。
【請求項6】
前記パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上15μm以下であり、前記金-コバルト合金めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上15μm以下である、請求項4又は5に導電性材料。
【請求項7】
前記パラジウム合金がパラジウム-ニッケルからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項8】
前記パラジウム合金がパラジウムを65wt%以上含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項9】
パラジウム又はパラジウム合金、及び/又は、金-コバルト合金の純度が99wt%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項10】
前記基体と前記パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜との間に金又は金合金めっき皮膜を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の導電性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料に関し、特に、電子部品や半導体基板の導通検査に使用されるコンタクトプローブなどに有用な導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの電子機器に半導体基板が用いられており、その半導体基板の製造工程の品質管理において、コンタクトプローブ用の検査針(プローブピン)が使用されている。プローブピンは、導電性材料を半導体基板に接触させて導通検査を行うことから、高硬度、低接触抵抗といった物性が求められている。また、通電時には、ジュール熱が発生して、加熱状態となることから、加熱後においても、低い接触抵抗を維持できるといった物性も求められている。
【0003】
プローブピンを構成する導電性材料の一般的な皮膜構成は、基体である銅又は銅合金に銅の拡散を防ぐためにニッケル又はニッケル-リンの皮膜(バリア層)が積層され、当該バリア層にパラジウム又はパラジウム合金(Ni又はCo:20wt%以上含む)皮膜が積層され、最外層に金-コバルト合金(Co:1wt%以下含む)が積層された3層構造からなる。また、前記のニッケル又はニッケル-リン皮膜と、パラジウム又はパラジウム合金皮膜の間に金のストライクめっきを施した4層構造のものも存在する。
【0004】
例えば、特許文献1には、接触抵抗の低い電気接点材料であって、導電性基体の表面上にニッケルの下地層を形成し、その上にパラジウムからなる第1貴金属層、さらにその上に金からなる第2貴金属層を形成してなるものが開示されている。特許文献2には、金属電気接点であって、電極基材の上に、Niめっき層、Pd-Niめっき層、さらにCo含有Auめっき層が順次積層されたものが開示されている。古い技術であるが、特許文献3、4には、導電性基材に直接、パラジウム合金を電気めっきで被着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/118627号
【特許文献2】特開2006-252862号公報
【特許文献3】特開平2-216721号公報
【特許文献4】特開平1-130431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バリア層としてのニッケル又はニッケル合金めっき皮膜は、通常、無電解ニッケルめっき液を使用して作製されるが、このとき、いくつかの問題が生じていた。例えば、めっき液の劣化により結晶の異常析出が生じ、製品不具合が生じることがあった。また、液寿命によって頻繁に液交換を行う必要があり、その際、めっき槽底面にNi粒子が析出し、硝酸等によって析出物を溶解する必要があった。さらに、無電解ニッケルめっきは、高温処理のため、試薬成分のミストやヒュームが発生して、環境側面において問題が生じた。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、バリア層であるニッケル又はニッケル合金皮膜がなくとも、低い接触抵抗を有する導電性材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための本発明の一態様は、銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体にパラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜が積層した導電性材料であり、260℃で10分間大気加熱後、荷重5gfで測定した接触抵抗が100mΩ以下である、導電性材料である。
【0009】
本発明の別の態様は、銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体にパラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜が積層し、該パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜に金-コバルト合金めっき皮膜が積層した導電性材料であり、260℃で10分間大気加熱後、荷重5gfで測定した接触抵抗が100mΩ以下である、導電性材料である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、導電性材料であって、銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体に、バリア層であるニッケル又はニッケル合金皮膜を形成せずとも、低い接触抵抗を維持することができるという優れた効果を有する。これにより、上述した無電解ニッケル又はニッケル合金めっきにおける諸問題を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0012】
接触抵抗が上昇する原因の一つとして、基体を構成する金属元素(Cu、Ni)が最表面の皮膜に拡散し、その金属元素が酸化することが挙げられる。そのため、通常の導電性材料は基体の金属元素の拡散を防ぐために、基体とPd(パラジウム)又はPd合金めっき皮膜との間にバリア膜として、Ni又はNi合金めっき皮膜が形成されている。しかしながら、Ni又はNi合金皮膜は無電解めっき法により形成されるが、めっき液の劣化により製品に不具合を生じさせたり、めっき槽の底面にNi金属粒子が析出したりする、などの問題が生じていた。
【0013】
このようなことから、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜を形成する際のめっき条件を調整することにより、ニッケル又はニッケル合金めっき皮膜(バリア層)を形成しなくとも、低い接触抵抗を得ることができるとの知見が得られた。これによって、無電解ニッケル又はニッケル合金めっきによって生じる種々の問題を解消でき、さらには、ニッケル又はニッケル合金めっき工程自体を省略できるので、コスト削減の恩恵を享受することができる。
【0014】
本発明に係る実施形態は、銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体に、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜を積層した導電性材料である。または前記パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜に、さらに金-コバルト合金めっき皮膜を積層した導電性材料である。本発明の実施形態に係る導電性材料は、基体にニッケル又はニッケル合金のバリア層を形成しなくとも、低い接触抵抗を維持することができるという優れた効果を有する。
【0015】
本実施形態に係る導電性材料は、260℃で10分間大気加熱後、荷重5gfで測定した接触抵抗が100mΩ以下である。加熱後においても接触抵抗が低く維持することが可能となり、コンタクトプローブとしての性能を向上させることができる。すなわち、高温環境下において接触抵抗を低く維持することができるので、長期の使用による経時劣化を抑制することができる。そのため、特に高温環境下で使用されるプローブピン等の構成皮
膜として有用である。また、他の用途、例えば、コネクタ、マイクロスイッチなどのコンタクト部においても、接触抵抗の低下は、その機能の向上に優位な影響を及ぼす。好ましくは、260℃で10分間大気加熱後、荷重5gfで測定した接触抵抗が50mΩ以下であり、より好ましくは30mΩ以下である。
【0016】
本実施形態の導電性材料は、最外層としてパラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜を形成した場合、ビッカース硬度が250Hv以上であることが好ましい。より好ましくは、ビッカース硬度が300Hv以上である。最外層として金-コバルト合金めっき皮膜を形成した場合、ビッカース硬度は150Hv以上であることが好ましく。より好ましくは、180Hv以上である。コンタクトプローブは、導電性材料を半導体基板に直接、接触させて導通検査を行うため、高硬度であれば、半導体基板との接触による皮膜の劣化を抑制することができる。
【0017】
本実施形態の導電性材料は、最外層としてパラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜を形成した場合、パラジウム又はパラジウム合金皮膜の膜厚は0.1μm以上、100μm以下の範囲であることが好ましい。より好ましくは0.5μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上であり、一方、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、最も好ましくは10μm以下である。最外層として金-コバルト合金めっき皮膜を形成した場合、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜の膜厚は0.1μm以上、15μm以下の範囲であることが好ましい。なお、ここでいう膜厚とは、クラックや剥離が生じていない状態の皮膜における膜厚を意味する。
【0018】
本実施形態の導電性材料において、パラジウム(Pd)合金めっき皮膜として、Pd-Ni合金、Pd-Co合金を挙げることができる。好ましくPd-Ni合金である。Pd合金中、Pd含有率を65wt%以上とすることが好ましい。より好ましくは、Pd含有率75wt%以上である。また、金(Au)-コバルト(Co)合金めっきでは、Au含有率を99wt%以上とすることが好ましい。
【0019】
本実施形態の導電性材料において、皮膜を構成するパラジウム又はパラジウム合金、及び/又は、金コバルトの純度は、99wt%以上であることが好ましい。より好ましい純度は99.9wt%以上である。さらに好ましくは純度が99.99wt%以上である。不純物が多く含まれていると、電気特性を劣化させるおそれがあるためである。
【0020】
本開示において純度は、各不純物の含有量(wt%)を測定し、その合計含有量を100wt%から差し引くことで、算出することができる。各不純物は、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-OES)により、その含有量を分析する。本開示の不純物は、Ag、Al、As、Au、B、Ba、Be、Bi、Ca、Cd、Ce、Ni、Co、Cr、Cu、Dy、Er、Eu、Fe、Ga、Gd、Ge、Hf、Hg、Ho、In、Ir、K、La、K、Li、Lu、Mg、Mn、Mo、Na、Nb、Ni、Os、P、Pb、Pd、Pr、Pt、Re、Rh、Ru、S、Sb、Sc、Se、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Tb、Te、Ti、Tl、Tm、V、W、Y、Yb、Zn、Zrである(但し、合金元素は除かれる)。
【0021】
本実施形態の導電性材料は、コンタクトプローブ、プランジャ、コネクタ、カンチレバー、マイクロスイッチ、制御用リレー、トグルスイッチ、モーターブラシ、電磁開閉機、ブレーカー、サーモスタット、リレー、タイマー、マグネットスイッチ、プリント配線板等のコネクタ、コンミテーター、クロスバー式電話交換機の接触部分、ファクシミリのブラシ及びスプリング、スリッピングコネクタ等に用いることができる。これらの用途では、基体として銅若しくは銅合金、又は、ニッケル若しくはニッケル合金が使用される。合金元素の種類やその含有量は特に制限はないが、たとえば、錫、亜鉛、ベリリウム、リン
、アルミニウム、マンガン、鉛が挙げられる。合金元素の含有量は、錫:40wt%以下、亜鉛:40wt%以下、ベリリウム:5wt%以下、リン:20wt%以下、アルミニウム:15wt%以下、マンガン:20wt%以下、鉛40:%以下、とすることができる。
【0022】
本実施形態の導電性材料は、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜を形成する前にめっき皮膜の密着性を高めるために、Au又はAu合金ストライクめっき皮膜を形成してもよい。すなわち、銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体と、金又は金合金めっき皮膜、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜の層構造を採用することができる。また、銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体と、金又は金合金めっき皮膜、パラジウム又はパラジウム合金めっき皮膜、金-コバルト合金めっき皮膜の層構造を採用することができる。
【0023】
[導電性材料の製造方法]
以下に、導電性材料の製造方法の一例を示す。
まず、母材として、銅又は銅合金板(めっき対象物:陰極板)を用意し、銅又は銅合金板をアルカリ脱脂、及び硫酸液による酸洗浄を行う。アルカリ脱脂は、陽極として、酸化イリジウム被覆チタン電極を用いて、液温60~70℃、3~10A、1分間程度の条件で行うことができる。また、酸洗浄は、硫酸濃度5%、液温40~60℃、浸漬時間30秒以下の条件で行うことができる。
【0024】
次に、以下の市販されている薬液を用いてパラジウム-ニッケルめっき液、金-コバルトめっき液、金ストライクめっき液を建浴する。
<パラジウム-ニッケルめっき液>
パラジウム金属塩:パラアシスト(松田産業株式会社製)
ニッケル金属塩:パラシグマNI-BR Ni補給液(松田産業株式会社製)
電導塩、緩衝剤等:パラシグマNI-BR建浴液(松田産業株式会社製)
皮膜光沢剤等:パラシグマNI-BR光沢液(松田産業株式会社製)
【0025】
<金-コバルトめっき液>
金塩:シアン化金カリウム(松田産業株式会社製)
コバルト塩:オーロシグマCO-SE Co補給液(松田産業株式会社製)
電導塩、緩衝剤等:オーロシグマCO-SE建浴液(松田産業株式会社製)
皮膜光沢剤等:オーロシグマCO-SE光沢液(松田産業株式会社製)
界面活性剤:オーロシグマCO-SE界面活性剤(松田産業株式会社製)
【0026】
<金ストライクめっき液>
金塩:シアン化金カリウム(松田産業株式会社製)
電導塩、緩衝剤等:オーロシグマST建浴液(松田産業株式会社製)
皮膜光沢剤等:オーロシグマST光沢液(松田産業株式会社製)
【0027】
上述しためっき液を用い、以下の条件で、電解めっきを行う。
<パラジウム-ニッケルめっきの条件>
陰極電流密度: 0.5~5A/dm
pH: 7~8
液温: 40~55℃
パラジウム塩: 5~15g/L
ニッケル塩: 0~10g/L
【0028】
<金-コバルトめっきの条件>
陰極電流密度: 0.5~5A/dm
pH: 3.5~4.5
液温: 30~60℃
金塩: 0.5~20g/L
コバルト塩: 0.2~0.8g/L
【0029】
<金ストライクめっきの条件>
陰極電流密度: 0.3~8.0A/dm
pH: 3.1~3.5
液温: 20~40℃
金塩: 0.8~1.2g/L
【0030】
以上により、(基体)/Pd-Ni、(基体)/Pd-Ni/Au-Co、(基体)/Auストライクめっき膜/Pd-Ni、あるいは、(基体)/Auストライクめっき膜/Pd-Ni/Au-Co、などの導電性材料を作製することができる。
【実施例0031】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例はあくまで代表的な例を示しているもので、本発明は、これらの実施例に制限される必要はなく、明細書の記載される技術思想の範囲で解釈されるべきものである。
【0032】
めっき皮膜の各種特性評価の方法について、以下に示す。
(加熱について)
株式会社松浦製作所製のデジタルマイクロHP-1SAを用いて、260℃で10分間、大気中で加熱した。
【0033】
(接触抵抗)
接触抵抗は、株式会社山崎精機研究所製の電気接点シミュレーターCRS-113-AU型(Auワイヤー、φ0.5mm)を用い、試料中央部を荷重5gf、操作荷重1mm、操作速度1mm/min、600点測定の条件で、試料(めっき皮膜最外層)の接触抵抗を1回測定し、各測定点結果の平均値を算出した。
【0034】
(めっき皮膜の膜厚及び合金比率)
<Pd又はPd合金めっき皮膜>
日立ハイテクサイエンス株式会社の蛍光X線膜厚計160hを用い、試料中央部を測定径0.1mm、管電圧45V、管電流1000μA、1次フィルターとしてA1000を用いて薄膜FP法の条件で測定した。標準試料として、Pd-Ni板はcalmetrics社、Cu板、Pd板はセイコーインスツルメンツ株式会社の製品を使用した。
<Au-Coめっき皮膜>
リガク株式会社の波長分散型蛍光X線装置ZSX-PrimusIIを用いて、測定範囲F~U、測定径20mmにてEZscanモードで測定した。なお、母材をCu100%のバルク試料として薄膜FP法にて測定した。
【0035】
(ビッカース硬度)
ビッカース硬度は、株式会社ミツトヨの微小硬さ試験機HM-221を用いて、ビッカース圧子により試料(めっき皮膜最外層)中央部を0.015F、0.02F、0.025Fの荷重で各3回測定し、その平均値を算出した。なお、皮膜の硬度測定は、圧子に加重を加えて皮膜上に圧痕を形成し、この圧痕の対角線から硬度を計算するため、膜厚が薄い場合、圧子が下地母材まで到達してしまう。また、加重を小さくし過ぎると、圧痕対角線のばらつきが大きくなり、定量下限値を超えることができない。このように膜厚が薄い
と、測定した硬度の値の信頼性が低いため、膜厚が薄い場合については硬度を測定しなかった。
【0036】
(実施例1-12、比較例1)
母材として角形銅板(2.5cm×2cm)を用意し、これをアルカリ脱脂及び酸洗浄した後、上述のパラジウム-ニッケルめっき液を用いて、電解めっきを行って、パラジウム-ニッケル合金皮膜を形成した。表1に示すように、実施例1-12、比較例1において、めっき液中のパラジウム濃度及びニッケル濃度、めっき条件(陰極電流密度及びめっき時間)を変化させて、パラジウム-ニッケル合金めっき皮膜を形成した。得られたパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜における、ニッケル含有量及びめっき膜厚を表1に示す。
【0037】
各々のパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜について、接触抵抗及びビッカース硬度を測定した。また、電界放出型走査電子顕微鏡(JSM-7000M:日本電子株式会社製)を用いて、合金めっき皮膜の中央部と端部を観察して、クラック等の有無を確認し、目視にて外観を確認し、光沢度合いを確認した。以上の測定結果を表1に示す。表1に示す通り、実施例1-12のいずれにおいても接触抵抗は低く、クラック等の異常は見られなかった。なお、ビッカース硬度については、膜厚が薄いため、測定が困難であった。
【0038】
各々のパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜を大気中260℃、10分間加熱して、加熱後の合金めっき皮膜について、接触抵抗を測定した。表1に示す通り、実施例1-12のいずれにおいても、接触抵抗も低く維持することができた。また、加熱後においても、クラックの発生は見られなかった。一方、比較例1においては、接触抵抗が急激に上昇した。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例13-16、比較例2)
実施例13-16においては、実施例1と同様に、めっき液中のパラジウム濃度及びニッケル濃度、めっき条件(陰極電流密度及びめっき時間)を変化させて、パラジウム-ニッケル合金皮膜を形成した。なお、実施例13-16は、めっき時間を長めに設定し、厚膜を形成した。得られたパラジウム-ニッケル合金皮膜のニッケル含有量及びめっき膜厚を表2に示す。
各々のパラジウム-ニッケル合金皮膜について、接触抵抗及びビッカース硬度を測定した。また、実施例1と同様、クラック等の有無を確認し、目視にて外観を確認し、光沢度合いを確認した。表2に示す通り、実施例13-16はいずれも接触抵抗は低く、ビッカ
ース硬度は250Hv以上であった。また、クラックなどの異常は見られなかった。
【0041】
各々のパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜を大気中260℃、10分間加熱して、加熱後の合金めっき皮膜について、接触抵抗を測定した。表2に示す通り、実施例13-16のいずれにおいても、接触抵抗も低く維持することができ、ビッカース硬度は250Hv以上であった。また、クラック等の異常は見られなかった。一方、比較例2においては、接触抵抗が急激に上昇した。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例17)
実施例6で作製したパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜上に、上述の金-コバルトめっき液を用いて、電解めっきを行い、金-コバルト合金めっき皮膜を形成した。めっき液中の金濃度及びコバルト濃度、めっき条件(陰極電流密度及びめっき時間)、得られた金-コバルト合金めっき皮膜におけるコバルト含有量及びめっき膜厚を表3に示す。
得られた金-コバルト合金めっき皮膜について、接触抵抗及びビッカース硬度を測定した。また、実施例1と同様、クラック等の有無を確認し、目視にて外観を確認し、光沢度合いを確認した。表3に示す通り、ビッカース硬度は180Hv以上を達成していた。また、クラック等の異常は見られなかった。
実施例1と同様、大気中260℃、10分間加熱して、加熱後の合金めっき皮膜について、接触抵抗及びビッカース硬度を測定した。表3に示す通り、接触抵抗が100mΩ以下であり、ビッカース硬度は180HV以上であった。また、クラック等の異常は見られなかった。
【0044】
【表3】
【0045】
なお、実施例は、基体である銅にパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜を形成したものであるが、パラジウム-ニッケル合金めっきを行う前にAu又はAu合金ストライクめっきを行う場合、接触抵抗は、より低くなる傾向にあることから、Au又はAu合金ストライクめっきは施さなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、バリア層としてのニッケル又はニッケル合金めっき皮膜を形成しなくても、低い接触抵抗を維持することができるという優れた効果を有する。本発明に係る導電性材料は、コンタクトプローブ、プランジャ、コネクタ、カンチレバー、マイクロスイ
ッチ、制御用リレー、トグルスイッチ、モーターブラシ、電磁開閉機、ブレーカー、サーモスタット、リレー、タイマー、マグネットスイッチ、プリント配線板などのコネクタ、コンミテーター、クロスバー式電話交換機の接触部分、ファクシミリのブラシ及びスプリング、スリッピングコネクタなどに有用である。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅若しくは銅合金又はニッケル若しくはニッケル合金からなる基体に、パラジウム又はパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜が積層し、前記パラジウム又はパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜に、金-コバルト合金めっき皮膜が積層した導電性材料であり、260℃で10分間、大気加熱後、荷重5gfの条件で測定した場合の、接触抵抗が100mΩ以下である、導電性材料。
【請求項2】
ビッカース硬度が150Hv以上である、請求項1に記載の導電性材料。
【請求項3】
前記パラジウム又はパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上15μm以下であり、前記金-コバルト合金めっき皮膜の膜厚が0.1μm以上15μm以下である、請求項1又は2に導電性材料。
【請求項4】
前記パラジウム-ニッケル合金がパラジウムを65wt%以上含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項5】
パラジウム又はパラジウム-ニッケル合金、の純度が99wt%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項6】
金-コバルト合金の純度が99wt%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性材料。
【請求項7】
前記基体と前記パラジウム又はパラジウム-ニッケル合金めっき皮膜との間に金又は金合金めっき皮膜を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性材料。