(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159015
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】成形品取出機及び成形品取出機のティーチング方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/42 20060101AFI20221006BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022041966
(22)【出願日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2021059914
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000138473
【氏名又は名称】株式会社ユーシン精機
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】白崎 篤司
(72)【発明者】
【氏名】安藤 一貴
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AP02
4F202AR04
4F202AR07
4F202CA11
4F202CB01
4F202CM11
4F202CM14
4F206AP02
4F206AR04
4F206AR07
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM06
4F206JN41
4F206JP11
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】トルク監視部を設けた場合においても、成形品を確実に吸着して、しかも成形品取出機の構成部材を破損させたり、成形品を変形させることのない成形品取出機及びそのティーチング方法を提供する。
【解決手段】ティーチング実行部23は、指定位置特定部23Aと停止位置特定部23Bを備えている。指定位置特定部23Aは、トルク監視部22が予め定めた動作を行わない状態にして、吸着部16aを金型内の成形品に近づける方向に第2走行体15を移動させ、吸着部16aが成形品を吸着したことを吸着圧検知部40の検知結果で確認したときの第2走行体15の位置を指定位置として特定する。停止位置特定部23Bは、トルク検知部30が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達するかまたは達する前に、第2走行体15の駆動を停止し、停止した第2走行体15の位置を停止位置として特定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を成形する金型の開閉方向に延びる仮想中心線に沿って配置される引抜フレームと、
前記引抜フレームに配置されて該引抜フレームの長手方向に進退する走行体と、
前記走行体を駆動する駆動モータと、
前記走行体に支持されて可動するアーム構造体と、
前記アーム構造体に装着され、前記金型内の前記成形品を吸着する吸着部と、
前記駆動モータの駆動トルクを検知するトルク検知部と、
予め設定した動作シーケンスに従って、少なくとも前記走行体及び前記アーム構造体を動作させることにより前記金型から前記成形品を取り出し、取り出した前記成形品を所定の位置まで搬送して開放する動作を制御する動作制御部を備え、
前記動作制御部が、
前記トルク検知部の検出値が前記アーム構造体を構成する部材を破損させことがない許容上限トルクを越えると予め定めた動作を行うトルク監視部と、
前記動作シーケンスの教示及び該動作シーケンスのパラメータの決定を行うことを可能にするティーチング実行部を含んでいる成形品取出機のティーチング方法であって、
前記吸着部の吸着圧を検知する吸着圧検知部と前記走行体の位置を検出する走行体位置検知部を設け、
前記ティーチング実行部を用いて、
前記トルク監視部が前記予め定めた動作を行わない状態にして、前記前記吸着部を前記金型内の前記成形品に近づける方向に前記走行体を移動させ、前記吸着部が前記成形品を吸着したことを前記吸着圧検知部の検知結果で確認したときの前記走行体の位置を指定位置として特定し、
その後前記トルク監視部が前記予め定めた動作を行う状態にして、前記走行体を前記成形品側にさらに移動させて前記吸着部により前記成形品をさらに押圧し、前記トルク検知部が検知する前記駆動トルクが前記許容上限トルクに達するまたは達する前に、前記走行体の駆動を停止し、停止した前記走行体の位置を停止位置として特定し、
前記指定位置と前記停止位置を前記動作シーケンスにおける前記パラメータの一部として定めることを特徴とする成形品取出機のティーチング方法。
【請求項2】
前記吸着部が前記成形品を吸着したことは、前記吸着圧検知部の検知結果が安定状態に入ったか否かにより判定する請求項1に記載の成形品取出機のティーチング方法。
【請求項3】
前記吸着圧検知部の検知結果、前記トルク検知部の検知結果及び前記走行体位置検知部の検知結果を表示する表示部をさらに備え、前記表示部に表示された表示結果に基づいて前記指定位置及び前記停止位置を特定する請求項1または2に記載の成形品取出機のティーチング方法。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記吸着圧検知部の検知結果に基づいて前記指定位置を特定する指定位置特定部と、
前記トルク検知部の検知結果に基づいて前記停止位置を特定する停止位置特定部をさらに備えている請求項1に記載の成形品取出機のティーチング方法。
【請求項5】
前記許容上限トルクは、使用する前記駆動モータの特性、前記アーム構造体の機械的強度に基づいて定められている請求項1に記載の成形品取出機のティーチング方法。
【請求項6】
成形品を成形する金型の開閉方向に延びる仮想中心線に沿って配置される引抜フレームと、
前記引抜フレームに配置されて該引抜フレームの長手方向に進退する走行体と、
前記走行体を駆動する駆動モータと、
前記走行体に支持されて可動するアーム構造体と、
前記アーム構造体に装着され、前記金型内の前記成形品を吸着する吸着部と、
前記駆動モータの駆動トルクを検知するトルク検知部と、
前記吸着部の吸着圧を検知する吸着圧検知部と、
前記走行体の位置を検出する走行体位置検知部と、
予め設定した動作シーケンスに従って、少なくとも前記走行体及び前記アーム構造体を動作させることにより前記金型から前記成形品を取り出し、取り出した前記成形品を所定の位置まで搬送して開放する動作の制御を行う動作制御部とを備え、
前記動作制御部が、
前記トルク検知部の検出値が前記アーム構造体を構成する部材を破損させることがない許容上限トルクを越えると予め定めた動作を行うトルク監視部と、
前記動作シーケンスの教示及び該動作シーケンスのパラメータの決定を行うことを可能にするティーチング実行部を含んでおり、
前記ティーチング実行部は、前記トルク監視部が前記予め定めた動作を行わない状態にして、前記前記吸着部を前記金型内の前記成形品に近づける方向に前記走行体を移動させ、前記吸着部が前記成形品を吸着したことを前記吸着圧検知部の検知結果で確認したときの前記走行体の位置を指定位置として特定する指定位置特定部と、
前記指定位置特定部が前記指定位置を特定した後、前記トルク監視部が前記予め定めた 動作を行う状態にして、前記走行体を前記成形品側にさらに移動させて前記吸着部により前記成形品をさらに押圧し、前記トルク検知部が検知する前記駆動トルクが前記許容上限トルクに達するまたは達する前に、前記走行体の駆動を停止し、停止した前記走行体の位置を停止位置として特定する停止位置特定部とを備え、
前記指定位置と前記停止位置を前記動作シーケンスにおける前記パラメータの一部として定めることを特徴とする成形品取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品取出機及び成形品取出機のティーチング方法に関し、特に、成形品を吸着部で確実に吸着保持することができる成形品取出機及びその成形品取出機のティーチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形機において生産された成形品を取り出す装置として、トラバース型の取出機が知られている。この種の成形品取出機は、樹脂成形機の金型で成形された成形品を保持するヘッドと、金型の開閉方向に沿って配置され、金型からの成形品の引き抜き方向に沿うヘッドの移動を実現する引抜フレームと、ヘッドの鉛直方向に沿う移動を実現する昇降アームと、金型開閉方向及び鉛直方向と直交する方向に沿って配置され、樹脂成形機外の所定位置へのヘッドの移動を実現する横行フレームとを備えている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
このような成形品取出機では、昇降アームの下降により型開きした金型の間にヘッドが挿入されるとともに、当該ヘッドが引抜フレームに沿って金型により成形された成形品側の方向に移動される。そして、成形品がヘッドに保持されると、ヘッドが引抜フレームに沿って成形品の引抜方向に移動されるとともに、昇降アームの上昇によりヘッドが金型外に搬出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-283357号公報
【特許文献2】特開2003-080529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような成形品取出機では、成形品の取出動作を実現するために、ヘッドの移動経路(動作シーケンス)を予め記憶させるティーチングが行われる。具体的には、例えば、(a)成形機外から金型開型時の開空間上方へのヘッドの水平移動、(b)金型開型時の開空間への昇降アームの下降によるヘッドの下降、(c)成形品吸着位置への引抜フレームに沿うヘッドの水平移動(前進移動)、(d)上昇可能位置への引抜フレームに沿うヘッドの水平移動(後退移動)、(e)昇降アームの上昇によるヘッドの上昇、(f)成形機外へのヘッドの水平移動、等のヘッドの移動経路が記憶される。
【0006】
以上のティーチングにおいて、(c)成形品吸着位置への引抜フレームに沿うヘッドの水平移動では、ヘッドが取出対象の成形品をより確実に保持できる位置を設定する必要がある。そのため、成形品を吸着により保持するヘッドでは、成形品を確実に吸着できるように、成形品吸着位置は成形された成形品にヘッドの吸着バッドが押し付けられた状態となる位置が設定される。
【0007】
以上のようなティーチングは人手によって行われることが多い。したがって、成形品へのヘッドの押し付け具合は、操作者の感覚のみで判断されている実情がある。ヘッドが成形品に必要以上に押し付けられた状態は、ヘッドを引抜フレームに沿って移動させる走行体が必要以上に成形品側の方向に移動している状態であり、走行体の昇降アーム支持部に過大な負荷が付与されていることになる。このような過大な負荷は、ティーチング後の通常動作(成形品取出動作)において繰り返し付与されるため、昇降アーム支持部が破損する要因となる。また、金型において成形された成形品にも負荷が付与されるため、成形品が破損してしまう可能性もある。
【0008】
このような課題を解決する手法として、先行文献1は、ヘッドが成形品と反対側に移動可能に構成されるとともに、ヘッドを成形品側に付勢する付勢手段を備えた構成を開示している。この構成によれば、ヘッドが成形品に必要以上に押し付けられる場合、ヘッドが付勢手段の付勢力に抗して成形品と反対側に移動する。その結果、昇降アーム支持部に過大な負荷が付与されることが回避でき、昇降アーム支持部が破損したり、成形品が破損したりすることを回避できる。しかしながら、このような構成では、ヘッドに特別な機構を設ける必要があり、構造が複雑となるためコスト高となってしまう。
【0009】
一方、先行文献2が開示するような、駆動モータの駆動トルクを検知可能なトルク監視部を設ける構成を採用することで、上述の押付時の走行体を駆動するモータの駆動トルクが予め設定された値以上となったときに走行体の移動を強制的に停止させることが可能になる。このような構成によれば、原理上は、昇降アーム支持部に過大な負荷が付与されることが回避でき、昇降アーム支持部が破損したり、成形品が破損したりすることを回避できる。しかしながら、駆動モータの駆動トルクを監視する構成を採用する場合、上述の押付量を小さく設定しようとすると、駆動トルクの閾値を小さな値に設定する必要がある。このような小さな値の閾値を設定した場合には、昇降アームの下降位置からの前進移動時の振動に反応してしまい、成形品に接触していないにも関わらず、走行体が強制停止されてしまうおそれがある。このような強制停止を避けるために、駆動トルクの閾値を大きな値に設定すると、成形品に対して吸着部を押し付ける力が大きくなりすぎて、走行体の昇降アーム支持部に過大な負荷が付与されるだけでなく、成形品を変形させて不良品の発生率を高くする可能性が高くなる。したがって、トルク監視部を設けて、駆動モータの駆動トルクを検知可能な構成を採用する構成であっても十分に満足できる結果を得ることはできない。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、トルク監視部を設けた場合においても、成形品を確実に吸着して、しかも成形品取出機の構成部材を破損させたり、成形品を変形させることのない成形品取出機及びそのティーチングを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明は以下の技術的手段を採用している。本発明が対象とする成形品取出機は、成形品を成形する金型の開閉方向に延びる仮想中心線に沿って配置される引抜フレームと、引抜フレームに配置されて該引抜フレームの長手方向に進退する走行体と、走行体を駆動する駆動モータと、走行体に支持されて可動するアーム構造体と、アーム構造体に装着され、金型内の成形品を吸着する吸着部と、駆動モータの駆動トルクを検知するトルク検知部と、動作制御部を備えている。ここでアーム構造体は、走行体と吸着部との間に存在する部品を含むものであり、アーム自体、吸着部が装着される取出ヘッド、走行体とアームの接続部などが含まれる。動作制御部は、予め設定した動作シーケンスに従って、少なくとも走行体及びアーム構造体を動作させることにより金型から成形品を取り出し、取り出した成形品を所定の位置まで搬送して開放する動作を制御する。また動作制御部は、トルク検知部の検出値がアーム構造体を構成する部材を破損させことがない許容上限トルクを越えると予め定めた動作を行うトルク監視部と、動作シーケンスの教示及び該動作シーケンスのパラメータの決定を行うことを可能にするティーチング実行部を含んでいる。トルク監視部が行う予め定めた動作とは、警報の発生や、検出したトルク値によっては動作を停止することなどである。
【0012】
本発明の成形品取出機のティーチング方法においては、吸着部の吸着圧を検知する吸着圧検知部と前記走行体の位置を検出する走行体位置検知部を設ける。そしてティーチング実行部を用いて、トルク監視部が予め定めた動作を行わない状態にして、吸着部を金型内の成形品に近づける方向に走行体を移動させ、吸着部が成形品を吸着したことを吸着圧検知部の検知結果で確認したときの走行体の位置を指定位置として特定する。トルク監視部が予め定めた動作を行わない状態にするには、トルク監視部において使用する閾値を大きくするか、トルク監視部の出力を停止するようにすればよい。
【0013】
その後トルク監視部が予め定めた動作を行う状態にして、走行体を成形品側にさらに移動させて吸着部により成形品をさらに押圧し、トルク検知部が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達するかまたは達する前に、走行体の駆動を停止し、停止した走行体の位置を停止位置として特定する。トルク監視部が予め定めた動作を行う状態にするには、トルク監視部において使用する閾値を通常使用する閾値にして、トルク監視部が出力をだすようにすればよい。そして本発明では、指定位置と停止位置を動作シーケンスにおけるパラメータの一部として定める。
【0014】
なお吸着圧検知部が検知する吸着圧及びトルク検知部が検知する駆動トルクは、吸着圧及びトルクそのものではなく吸着圧の変化率及びトルクの変化率であってもよいのは勿論である。変化率を採用することで、走行体の位置をより詳細に特定することができる。
本発明の方法は、上記の特定を自動で実施してもよいし、ユーザーが実施してもよい。ユーザーが実施する場合には、吸着圧検知部の検知結果、トルク検知部の検知結果及び走行体位置検知部の検知結果を表示する表示部をさらに設ける。そして表示部に表示された表示結果に基づいて指定位置及び前記停止位置を特定すればよい。自動で行う場合には、(請求項4)動作制御部は、吸着圧検知部の検知結果に基づいて指定位置を特定する指定位置特定部と、トルク検知部の検知結果に基づいて停止位置を特定する停止位置特定部をさらに備えているのが好ましい。
【0015】
なお前述の吸着部が成形品を吸着したことは、例えば、吸着圧検知部の検知結果が安定状態に入ったか否かにより判定することができる。安定状態とは、吸着圧が上昇した後にほぼ飽和状態に近づいていく状態を意味する。
【0016】
また前述の許容上限トルクは、トルク監視部の閾値を設定する際に定められるものであり、使用する駆動モータの特性、アーム構造体の機械的強度に基づいて定まる。したがってトルク検知部が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達することは、トルク監視部の動作により判断することができる。また駆動トルクが許容上限トルクに達する前であることは、この許容上限トルクを基準としてこれより低い閾値を定めれば、自動検出が可能である。これらの閾値は、事前の実験によって定めることができる。なお許容上限トルクを駆動トルクが越えたからといって直ちにアーム構造体を構成する部材に損傷が発生するものではないので、本発明のティーチングの実施が成形品取出機を損傷させることはない。
【0017】
本発明の方法によれば、走行体を移動させて吸着部を成形品側に進めることにより、とりあえず吸着部を成形品に吸着させことができる指定位置を特定する際に、トルク監視部が予め定めた動作を行わない状態にしているので、トルク監視部の動作によって、ティーチングの実施が中断されることがない。しかしこの状態では、十分な吸着を得られていない可能性が高い。そこで本発明では、走行体をさらに移動させて、吸着部を成形品に更に押し付けることによって、吸着部による成形品の吸着を確実なものとすることができる停止位置を特定する。本発明では、トルク監視部で使用する許容上限トルクを停止位置の決定の基準として用いるので、本発明で特定された停止位置を動作シーケンスのパラメータとして使用すれば、長期に亘って使用しても、アーム構造体が損傷を受けたり、成形品が変形することはない。
【0018】
本発明の方法を実施する成形品取出機は、成形品を成形する金型の開閉方向に延びる仮想中心線に沿って配置される引抜フレームと、引抜フレームに配置されて該引抜フレームの長手方向に進退する走行体と、走行体を駆動する駆動モータと、走行体に支持されて可動するアーム構造体と、アーム構造体に装着され、金型内の前記成形品を吸着する吸着部と、駆動モータの駆動トルクを検知するトルク検知部と、吸着部の吸着圧を検知する吸着圧検知部と、走行体の位置を検出する走行体位置検知部と、予め設定した動作シーケンスに従って、少なくとも前記走行体及びアーム構造体を動作させることにより前記金型から前記成形品を取り出し、取り出した前記成形品を所定の位置まで搬送して開放する動作の制御を行う動作制御部を備えている。動作制御部は、トルク検知部の検出値がアーム構造体を構成する部材を破損させことがない許容上限トルクを越えると予め定めた動作を行うトルク監視部と、動作シーケンスの教示及び該動作シーケンスのパラメータの決定を行うことを可能にするティーチング実行部を含んでいる。ティーチング実行部は、トルク監視部が予め定めた動作を行わない状態にして、吸着部を金型内の前記成形品に近づける方向に走行体を移動させ、吸着部が成形品を吸着したことを吸着圧検知部の検知結果で確認したときの走行体の位置を指定位置として特定する指定位置特定部と、指定位置特定部が指定位置を特定した後、トルク監視部が予め定めた動作を行う状態にして、走行体を成形品側にさらに移動させて吸着部により成形品をさらに押圧し、トルク検知部が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達するかまたは達する前に、前記走行体の駆動を停止し、停止した走行体の位置を停止位置として特定する停止位置特定部とを備えている。そして本発明の成形品取出機では、指定位置と停止位置を動作シーケンスにおけるパラメータとして定める。本発明の成形品取出機では、本発明の成形品取出機のティーチング方法を自動的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成形品取出機の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る成形品取出機の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】(a)から(c)は、本発明の一実施形態に係る成形品取出機における成形品吸着位置のティーチング過程の一例を模式的に示す説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る成形品取出機の動作制御部の主要部を、マイクロコンピュータを用いて実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、水平方向に金型が開閉する樹脂射出成形機の固定プラテン上に配置され、金型の開閉方向と直交する方向に沿う横行フレームにより成形品を樹脂射出成形機外に搬出する成形品取出機として本発明を具体化する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る成形品取出機10を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、成形品取出機10はいわゆるトラバース型の成形品取出機であり、成形機100の固定プラテン101上に固定されている。
【0022】
成形機100は、公知の構造であり、固定プラテン101及び可動プラテン102が対向する状態で配置されている。可動プラテン102は、固定プラテン101の四隅から水平方向に沿って配置された4本のタイバー103に摺動可能に支持されている。可動プラテン102は型締装置105によって水平方向に駆動され、当該駆動により、固定プラテンン101に装着された固定金型104aと可動プラテン102に装着された可動金型104bにより構成される金型104の型締め及び型開きがなされる。金型104が型締め状態にあるときに、固定プラテン101に接続された射出装置106から金型104のキャビティ内に加熱溶融された樹脂が射出されることで成形品が製造される。
【0023】
成形品取出機10は、取付台11、横行フレーム12、第1走行体13、引抜フレーム14、第2走行体15、取出ヘッド16、昇降アーム17を備えている。横行フレーム12は、成形機100で生産された成形品の、成形機外への搬出方向に延びるように沿って配置される。この例では、
図1に示すように、横行フレーム12は、成形機100のタイバー103の軸を含む鉛直面に垂直な方向に沿って配置されている。横行フレーム12の基端部が固定プラテン101上に設置された取付台11に固定されることで成形品取出機10が固定プラテン101に取付けられている。
【0024】
第1走行体13は横行フレーム12に移動可能に支持されており、サーボモータを駆動源として横行フレーム12に沿って進退する。引抜フレーム14は、基端部が第1走行体13に固定されており、金型104の開閉方向に延びるように配置されている。第2走行体15は引抜フレーム14に移動可能に支持されており、サーボモータを駆動源として引抜フレーム14に沿って進退する。取出ヘッド16は、昇降アーム17の下端に支持されている。昇降アーム17は、鉛直方向に延びるように第2走行体15に対して可動可能に支持されており、第2走行体15が備えるサーボモータを駆動源として鉛直方向に昇降する。当該昇降アーム17の鉛直方向の移動に伴ってヘッド16は鉛直方向に沿って昇降する。取出ヘッド16は可動金型104bの成形品形成位置と対応する位置に配置された1又は複数の吸着パッドにより構成される吸着部16aを備える。公知のとおり、吸着部16aは、成形品に吸着パッドが当接した状態で吸着パッドと成形品との間にで構成される閉空間内を減圧することで成形品を吸着保持する。
【0025】
以上の構成を有する成形品取出機10では、成形品の取出動作を実現するために、取出ヘッド16の移動経路(または動作シーケンス)を予め記憶させるためにティーチングが行われる。具体的には、(1)昇降アーム17の上昇による成形品解放位置(基準位置)からの取出ヘッド16の上昇、(2)第1走行体13及び第2走行体15の移動による成形機外から金型104上方への取出ヘッド16の水平移動、(3)昇降アーム17の下降による開型時の固定金型104aと可動金型104bとの間の開空間への取出ヘッド16の下降、(4)第2走行体15の移動による成形品吸着位置へのヘッド16の水平移動(前進移動)、(5)第2走行体15の移動による上昇可能位置への取出ヘッド16の水平移動(後退移動)、(6)昇降アーム17の上昇による取出ヘッド16の上昇、(7)第1走行体13及び第2走行体15の移動による成形機外への取出ヘッド16の水平移動、(8)昇降アーム17の下降による成形品解放位置への取出ヘッド16の下降、等のヘッド16の移動経路が記憶される。このようなティーチングは、例えば、成形品取出機10の動作制御部20が備える操作パネルを通じてユーザーにより実行される。動作制御部20において信号処理やデータ処理を実施する各要素は、例えば、専用の演算回路、あるいは、プロセッサとRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等のメモリとを備えたハードウェア、及び当該メモリに格納され、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実現することができる。
【0026】
本実施形態の成形品取出機10では、特に、上記(4)における成形品吸着位置の設定に特徴があるため、以下では当該動作について説明する。
図2は、当該動作を実現可能とする本実施形態の成形品取出機10の要部の機能ブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の成形品取出機10は、被制御部19、動作制御部20、トルク検知部30、吸着圧検知部40、走行体位置検知部50、表示装置28及び指示入力部29を備える。被制御部19は、吸着部16a、吸着ヘッド16及び昇降アーム17を含むアーム構造体18と、走行体15と、走行体15を駆動する駆動モータMを含むものである。アーム構造体18は、走行体と吸着部との間に存在する部品を含むものであり、昇降アーム17自体、吸着部16aが装着される取出ヘッド16、走行体15と昇降アーム17の接続部などが含まれる。
【0027】
動作制御部20は、第2走行体15を駆動するための駆動モータMを含む複数の駆動モータの動作を制御するモータ制御部21と、動作シーケンス記憶部24と、動作シーケンスのためのパラメータを記憶するパラメータ記憶部25と、トルク監視部22と、指定位置特定部23A及び停止位置特定部23Bを含むティーチング実行部23と、警報発生部26を備えている。そしてセンサ装置として、トルク検知部30、吸着圧検知部40及び走行体位置検知部50を備えている。ティーチング実行部23にティーチングを実行せるための指示は、指示入力部29より入力される。なお表示部28aがタッチスイッチ機能を有する場合には、指示入力部29を別に設ける必要はない。
【0028】
トルク検知部30は、第2走行体15の駆動モータMであるサーボモータの駆動トルクを検知する。駆動トルクの検知方法は特に限定されず公知の任意の手法を採用することができる。本実施形態では、トルク検知部30は走行体15の駆動モータMの駆動電流に基づいて駆動トルクを検知している。本実施の形態では、トルク検知部30は動作制御部20内のモータ制御部21から駆動電流に関する情報を取得している。なお、トルク検知部30は駆動トルクを直接計測する必要はなく、駆動トルクの大きさに対応して変化するパラメータであれば任意のパラメータを使用することができる。例えば、駆動トルクの変化率をトルク検知部30の出力として利用してもよい。
【0029】
吸着圧検知部40は、真空発生装置制御部41によって駆動される真空発生装置42と吸着部16aとの間の配管に設けられて、吸着部16aの吸着圧を検知する。吸着圧の検知方法は特に限定されず、公知の任意の手法を採用することができる。本実施形態では、吸着圧検知部40は吸着部16aの減圧を実行する配管内の圧力を検知することで吸着圧を検知している。
【0030】
走行体位置検知部50は、引抜フレーム14上における第2走行体15の位置を直接又は間接に検出できるものであれば、どのようなものでもよい。本実施の形態では、走行体位置検知部50は、第2走行体15の駆動モータMが備えるロータリーエンコーダの出力を用いて検知するように構成されている。
【0031】
トルク検知部30、吸着圧検知部40及び走行体位置検知部50の出力は、それぞれ表示装置28と動作制御部20に入力される。表示装置28は、トルク検知部30、吸着圧検知部40及び走行体位置検知部50の検知結果を文字、グラフ及びこれらの組み合わせで表示する。
【0032】
動作制御部20は、動作シーケンス記憶部24に予め記憶した動作シーケンスに従って、少なくとも第2走行体15及びアーム構造体18を動作させることにより金型104から成形品を取り出し、取り出した成形品を所定の位置まで搬送して開放する動作を制御する。また動作制御部20は、トルク検知部30の検出値がアーム構造体18を構成する部材を破損させことがない許容上限トルクを越えると予め定めた動作を行うトルク監視部22と、動作シーケンスの教示及び該動作シーケンスのパラメータの決定を行うことを可能にするティーチング実行部23を含んでいる。トルク監視部が行う予め定めた動作とは、警報の発生や、検出したトルク値によっては動作を停止することなどである。警報の報知方法は特に限定されない。表示、音、電子メール等、ユーザー等が認識可能な任意の方法を採用することができる。ここでは、警報発生部26は、表示装置28のディスプレイ等の表示部28aのユーザーが認識可能な位置に警告文字を表示するとともに、警報音を発することで警報を報知する。
【0033】
ティーチング実行部23は、指定位置特定部23Aと停止位置特定部23Bを備えている。指定位置特定部23Aは、トルク監視部22が予め定めた動作を行わない状態にして、吸着部16aを金型内の成形品に近づける方向に第2走行体15を移動させ、吸着部16aが成形品を吸着したことを吸着圧検知部40の検知結果で確認したときの第2走行体15の位置を指定位置として特定する。吸着部16aが成形品を吸着したことは、例えば、吸着圧検知部40の検知結果が安定状態に入ったか否かにより判定することができる。すなわち吸着圧検知部40が検出する吸着圧が上昇した後に、ほぼ飽和状態に近づけば、安定状態になったと判定してもよい、この判定は、安定状態を考慮して定めた閾値と吸着圧検知部40の出力を比較することにより、簡単に実現できる。
【0034】
なおトルク監視部22が予め定めた動作(警報発生部26からの警報の発生や、駆動モータMの一時停止等)を行わない状態にするには、トルク監視部22において使用する閾値を大きくするか、トルク監視部22の出力を停止するようにすればよい。
【0035】
停止位置特定部23Bは、指定位置特定部23Aが指定位置を特定した後、トルク監視部22が予め定めた動作(警報発生部26からの警報の発生や、駆動モータMの一時停止等)を行う状態にして、第2走行体15を成形品側にさらに移動させて吸着部16aにより成形品をさらに押圧する。そして停止位置特定部23Bは、トルク検知部30が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達するかまたは達する前に、第2走行体15の駆動を停止し、停止した第2走行体15の位置を停止位置として特定する。許容上限トルクは、トルク監視部22の閾値を設定する際に定められるものであり、使用する駆動モータの特性、アーム構造体の機械的強度に基づいて定まる。したがってトルク検知部30が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達することは、トルク監視部22の動作により判断することができる。また駆動トルクが許容上限トルクに達する前であることは、この許容上限トルクを基準としてこれより低い閾値を定めれば、自動検出が可能である。これらの閾値は、事前の実験によって定めることができる。なお許容上限トルクを駆動トルクが越えたからといって直ちにアーム構造体を構成する部材に損傷が発生するものではないので、ティーチングの実施が成形品取出機を損傷させることはない。
【0036】
またトルク監視部22が予め定めた動作を行う状態にするには、トルク監視部22において使用する閾値を通常使用する閾値にして、トルク監視部22がアラーム出力を出すようにすればよい。指定位置特定部23Aと停止位置特定部23Bにより特定した指定位置と停止位置は動作シーケンスにおけるパラメータとしてパラメータ記憶部15に記憶される。
【0037】
本実施の形態によれば、第2走行体15を移動させて吸着部16aを成形品側に進めることにより、とりあえず吸着部16aを成形品に吸着させことができる指定位置を特定する際に、トルク監視部22が予め定めた動作を行わない状態にしているので、トルク監視部22の動作によって、ティーチングの実施が中断されることはない。特定された指定位置において、トルク監視部22が予め定めた動作を行うか又は行わないかの切替を行う。この切替は、指定位置の特定と連動して行えばよく、動作シーケンスに含められる。なお指定位置を特定する際には、第2走行体15を指定位置で停止させる必要はないが、確実性を高めるたに第2走行体15を指定位置で一度停止させてもよい。
【0038】
しかし指定位置を特定した状態では、十分な吸着を得られていない可能性が高い。そこで本実施の形態では、第2走行体15をさらに成形品側に移動させて、吸着部16aを成形品に更に押し付けることにより、吸着部16aによる成形品の吸着を確実なものとすることができる停止位置を特定する。本実施の形態では、トルク監視部22で使用する許容上限トルクを停止位置の決定の基準として用いて、トルク検知部30が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達するかまたは達する前に走行体の駆動を停止する。本実施の形態で特定された停止位置を動作シーケンスのパラメータとして使用すれば、長期に亘って使用しても、アーム構造体18が損傷を受けたり、成形品が変形することはない。
【0039】
ティーチングを実施する場合の第2走行体15の移動開始は、指示入力部29からの指示によって行われる。本実施の形態では、第2走行体15の移動を開始した後は、停止位置の特定が行われるまで、第2走行体15の移動及び停止並びに指定位置及び停止位置の特定は、自動で行われる。しかしながら作業者が、表示装置28の表示部28aに表示される検知情報と警報発生部26からの警報に基づいて、第2走行体15の移動及び停止を指示入力部29から指示し、また指定位置及び停止位置の特定及び記憶の指示を指示入力部29から行うようしてもよい。
【0040】
なお、本実施の形態の動作制御部20の主要部は、プロセッサが、RAMを作業領域として利用し、ROMに格納されたプログラムを実行することで実現することができる。
図3(a)から
図3(c)は、本発明の一実施形態に係る成形品取出機におけるティーチング過程の一例を模式的に示す説明図である。また、
図4は、上記実施の形態に係る成形品取出機の動作制御部20の主要部を、マイクロコンピュータを用いて実現する場合に用いるプログラムのアルゴリズを示すフローチャートである。
【0041】
吸着位置のティーチングは、例えば、作業者が指示入力部29を通じて、上述のティーチングにおける(4)の吸着位置の設定を選択することで開始される。なお、当該吸着位置のティーチングは、
図3(a)に示すように、ヘッド16の吸着部16aが、金型104において成形され、型開き後に、可動金型104bの成形面側に露出した成形品Wと対向する位置に配置された状態(上述のティーチングにおける(3)が完了した状態)で開始される。
【0042】
当該手順が開始されると、まず、指示入力部29から入力された開始指示に基づいて、ティーチング実行部23は、真空発生装置制御部41に減圧開始を指示する。この指示を受けて、真空発生装置制御部41は、真空発生装置42を構成する真空ポンプ等の減圧手段を駆動し、吸着部16aの減圧を開始する(ステップST1)。また、ティーチング実行部23はは、モータ制御部21を通じて第2走行体15の駆動モータMを駆動し、成形品Wの方向への第2走行体15の移動を開始する(ステップST2)。
【0043】
ティーチング実行部23の指定位置特定部23Aは、トルク監視部22が予め定めた動作を行わない状態(トルク監視部不動作状態)にして(ステップST2)、吸着圧検知部40から吸着圧情報を取得しながら(ステップST3)、吸着部16aを金型内の成形品に近づける方向に第2走行体15を移動させる(ステップST4)。吸着部16aが成形品を吸着したことを吸着圧検知部40の検知結果が安定状態に入ったか否かにより判定する(ステップST5)。そして吸着圧検知部40の検知結果で吸着を確認したときの第2走行体15の位置を指定位置として特定する(ステップST6)。この例では、ステップST6で走行体15を一時停止している。またこの時点では減圧を維持する(ST7)。このとき、ヘッド16の吸着部16aは、
図3(b)に示すように、成形品Wの表面に当接するとともに、吸着部16aの内部が減圧された状態になっている(第1の位置)。このとき、指定位置特定部23Aは、走行体位置検知部50からの位置情報に基づいて、走行体5の位置を指定位置として特定する(ステップST6)。
【0044】
図3では、説明のため、吸着部16aの吸着パッドを1つのみ示しているが、通常は、吸着部16aが備える複数の吸着バッドにより成形品を同時に吸着することが多い。吸着部16aが複数の吸着パッドを備える場合、特に吸着パッド数が多数の場合は、吸着圧のみですべての吸着バッドが成形品Wを確実に吸着していることを判別することは困難である。一部の吸着パッドが成形品Wを吸着できていない場合、成形機100に連続的に成形品Wを成形した際に、吸着不良が発生して成形機100を停止しなければならない事態を発生させてしまう。そのため、第2走行体15を
図3(b)の状態からさらに成形品W側の方向に移動させ、吸着部16aを成形品Wにより押し付ける押付動作が必要となる。
【0045】
上述の指定位置の特定が完了すると、ティーチング実行部23の停止位置特定部23Bは、トルク監視部22が予め定めた動作(警報発生部26からの警報の発生や、駆動モータMの一時停止等)を行う状態(トルク監視部動作状態)にして(ステップST8)、第2走行体15を成形品側にさらに移動させて吸着部16aにより成形品をさらに押付ける(ステップST9)。吸着部16aが成形品Wの表面に当接しているため、第2走行体15が成形品W側に移動すると第2走行体15の駆動モータの駆動トルクが上昇することになる。このような押付動作により、ヘッド16の吸着部16aは、
図3(c)に示すように、成形品Wの表面により押し付けられることになる。そして停止位置特定部23Bは、トルク検知部30が検知する駆動トルクが許容上限トルクに達するかまたは達する前であるかを判定する(ステップST10)。そして判定結果がYesであれば、第2走行体15の駆動を停止し、停止した第2走行体15の位置を停止位置として特定する(ステップST11)。そして特定した前述の指定位置と停止位置を、パラメータ記憶部25に記憶させる(ステップST11)。これにより、吸着位置を設定する手順が終了する。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る成形品取出機10によれば、吸着部16aが成形品Wに当接して吸着を開始するまでは、トルク監視部22が予め定めた動作を行わない状態にしてあるので、吸着部16aが成形品Wに当接しない状態で第2走行体15の移動が禁止されるような不都合は生じない。また吸着部16aが成形品Wに当接した位置からの押付量を規定する押付動作において、第2走行体15の駆動トルクの大きさを監視する構成であるため、吸着部16aを支持する第2走行体15に過剰な負荷が付与されることを回避するための特別な機構をヘッド等に設ける必要もない。したがって、本実施形態に係る成形品取出機10によれば、成形品吸着位置を容易かつ適切に設定することが可能となる。その結果、成形機100が連続的に成形品Wを成形する場合でも、吸着部16aが成形品Wを安定して吸着支持することができる。
【0047】
なお、以上の実施形態では、吸着圧条件として、吸着圧検知部40により検知される吸着圧の値を設定したが、吸着圧の変化率の値を指定することもできる。同様に、トルク条件として、トルク検知部30により検知される駆動トルクの値を設定したが、駆動トルクの変化率の値を指定することも可能である。変化率を採用することで、第2走行体15の位置をより詳細に特定することができる。
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、成形品を吸着保持する吸着部が成形品の成形金型の開閉方向に沿って移動することにより成形品を保持する成形品取出機において、成形品吸着位置を容易かつ適切に設定することができる。
【0049】
なお、上述の実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、
図4に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において各ステップの順序等を適宜変更可能である。
【0050】
また、引抜フレーム、走行体、取出ヘッド等、上述した各要素の物理的な形状や材質も、本発明の効果を奏する範囲内で任意に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、成形品吸着位置を容易かつ適切に設定することができ、成形品取出機及びそのティーチング方法として有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 成形品取出機
14 引抜フレーム
15 第2走行体(走行体)
16 取出ヘッド
16a 吸着部
17 昇降アーム
18 アーム構造体
19 被制御部
20 動作制御部
21 モータ制御部
22 トルク監視部
23 ティーチング実行部
23A 指定位置特定部
23B 停止位置特定部
24 動作シーケンス記憶部
25 パラメータ記憶部
26 警報発生部
28 制御部
29 指示入力部
M 駆動モータ
30 トルク検知部
40 吸着圧検知部
50 走行体位置検知部