(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159022
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20221006BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B25J19/00 G
F15B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022043281
(22)【出願日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2021058908
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智己
(72)【発明者】
【氏名】林 喬之
(72)【発明者】
【氏名】市川 真也
【テーマコード(参考)】
3C707
3H089
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707CS08
3C707CT05
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY13
3C707DS01
3C707ES03
3C707HS13
3C707HS24
3C707LV22
3C707MT05
3C707WA16
3H089AA03
3H089BB27
3H089DB05
3H089GG02
3H089JJ20
(57)【要約】
【課題】ロボット装置の複数の流体アクチュエータに流体を供給する流体供給装置のサイズアップを抑制しつつ、当該複数の流体アクチュエータの各々に要求に応じた流体圧を確実に供給可能にする。
【解決手段】本開示のロボット装置の流体供給装置は、流体の供給源と、それぞれ供給源からの流体の圧力を調整して出力する複数のリニアソレノイドバルブと、入力ポート、出力ポート、信号圧入力ポートおよびスプールを有する少なくとも1つのコントロールバルブとを含み、複数の流体アクチュエータのうち、少なくとも1つの流体アクチュエータには、コントロールバルブから流体が供給され、残余の流体アクチュエータには、各々に対応したリニアソレノイドバルブから流体が供給される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の関節と、複数のリンクと、それぞれ流体の供給を受けて作動すると共に前記関節を介して連結された対応する2つの前記リンクを相対的に回動させる複数の流体アクチュエータと、前記複数の流体アクチュエータに前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、
前記流体供給装置は、
前記流体の供給源と、
それぞれ前記供給源側からの前記流体の圧力を調整して出力する複数のリニアソレノイドバルブと、
入力ポート、出力ポート、信号圧入力ポートおよびスプールを有すると共に、対応する前記リニアソレノイドバルブから前記信号圧入力ポートに供給される信号圧の作用により前記スプールに付与される力と、前記出力ポートにおける前記流体の圧力の作用により前記スプールに付与される力とを少なくともバランスさせて前記供給源側から前記入力ポートに供給される前記流体の圧力を調整して前記出力ポートから出力する少なくとも1つのコントロールバルブと、
を含み、
前記複数の流体アクチュエータのうち、少なくとも1つの前記流体アクチュエータには、前記コントロールバルブの前記出力ポートから出力された前記流体が供給され、残余の前記流体アクチュエータには、各々に対応した前記リニアソレノイドバルブから出力された前記流体が供給されるロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置において、
少なくとも前記複数の流体アクチュエータの中で予め定められた指標の最大値が最大となる前記流体アクチュエータには、前記コントロールバルブから前記流体が供給されるロボット装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロボット装置において、
前記流体アクチュエータは、2つの流体室を有する複動アクチュエータであり、
何れかの前記関節に対応した前記流体アクチュエータの前記2つの流体室の一方に前記コントロールバルブから前記流体が供給され、前記2つの流体室の他方に前記ソレノイドバルブから前記流体が供給されるロボット装置。
【請求項4】
請求項3に記載のロボット装置において、
前記流体アクチュエータは、シリンダと、前記シリンダ内に摺動自在に配置されるピストンと、前記ピストンに固定されるピストンロッドと、前記シリンダ内の前記ピストンの一側に画成される第1の流体室と、前記シリンダ内の前記ピストンの他側に画成される第2の流体室とを含む複動シリンダであり、
前記コントロールバルブは、前記第1および第2の流体室のうち、予め定められた指標の最大値が大きくなる一方に前記流体を供給するロボット装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のロボット装置において、
前記指標は、前記流体アクチュエータの前記流体室に供給される流体の流量、前記流体室に供給される流体の圧力および流量の積値、前記流体アクチュエータの最大伸縮速度の何れか1つであるロボット装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のロボット装置において、
2つの前記リンクが互いに拮抗するように配置された一対の前記流体アクチュエータにより相対的に回動させられ、
前記コントロールバルブは、何れかの前記関節に対応した一対の前記流体アクチュエータのうち、予め定められた指標の前記関節の可動範囲から定まる最大値が大きくなる一方に前記流体を供給するロボット装置。
【請求項7】
請求項6に記載のロボット装置において、
前記指標は、前記流体アクチュエータに供給される流体の圧力、前記流体アクチュエータに供給される流体の流量、前記流体アクチュエータに供給される流体の圧力および流量の積値、前記流体アクチュエータの最大収縮時における前記流体の収容空間の体積、前記流体アクチュエータが発生する収縮力、前記流体アクチュエータの最大収縮速度の何れか1つであるロボット装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載のロボット装置において、
前記複数の関節、前記複数のリンク、および前記複数の流体アクチュエータは、ロボットアームを形成し、
前記コントロールバルブは、前記ロボットアームの最基端側の前記関節に対応した前記流体アクチュエータに前記流体を供給するロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体の供給を受けて作動する少なくとも1つの流体アクチュエータと、当該流体アクチュエータに流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、両端部が栓体で閉じられたゴムチューブと、当該ゴムチューブを覆う網体とを有する2つのゴム人工筋(液圧アクチュエータ)を含む関節装置(ロボット装置)が知られている(例えば、特許文献1参照)。この関節装置は、2つのゴム人工筋に加えて、基台と、支持部材を介して基台により支持されたプーリと、プーリに固定されたアームと、プーリの回転中立に対して両側に位置するように基台に取り付けられると共にゴム人工筋の一端がそれぞれ連結される2つの係止ブラケットと、2つのゴム人工筋の他端に連結されると共にプーリに巻き掛けられるロープとを含む。また、各ゴム人工筋の出入口は、導電性作動液を圧送する液圧源に圧力制御弁を介して接続されている。これにより、各ゴム人工筋は、出入口に作動液が流入する際に軸方向に収縮しながら径方向に膨張し、出入口から作動液が流出する際に径方向に収縮しながら軸方向に伸長する。
【0003】
なお、従来、サーボモータによって垂直方向に旋回位置決めされるロボットアームとして、アームと柱の間でロボットアームの重量の一部を負担するように作用する油圧バランサを含むものが知られている(例えば、特許文献2参照)。このロボットアームでは、第1アンプによってサーボモータのロボットアームの上向き旋回時の負荷に比例する入力変動が増幅され、当該第1アンプの出力に応じて電磁比例リリーフ付第1減圧弁により調圧された油圧が油圧バランサの後室に供給される。また、第2アンプによってサーボモータのロボットアームの下向き旋回時の負荷に比例する入力変動が増幅され、当該第2アンプの出力に応じて電磁比例リリーフ付第2減圧弁により調圧された油圧が油圧バランサの前室に供給される。これにより、サーボモータの回転方向に対応して油圧バランサの作用方向が自動的に切り換えられ、サーボモータの負荷に比例して油圧バランサの出力が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-216691号公報
【特許文献2】特開昭63-212489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の関節装置のように複数の流体アクチュエータを含む装置では、一般に、複数の流体アクチュエータ間で要求出力(流体アクチュエータが発生する力×流体アクチュエータの変位の微分値(速度))の最大値が異なる。このため、複数の流体アクチュエータに流体を供給する流体供給装置には、要求出力が小さい流体アクチュエータだけではなく、要求出力が大きい流体アクチュエータに対しても要求に応じた流体圧を確実に供給することが求められる。その一方で、複数の流体アクチュエータを含む装置の小型軽量化を図るためには、流体供給装置のサイズアップを抑制する必要がある。
【0006】
そこで、本開示は、ロボット装置の複数の流体アクチュエータに流体を供給する流体供給装置のサイズアップを抑制しつつ、当該複数の流体アクチュエータの各々に要求に応じた流体圧を確実に供給可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のロボット装置は、複数の関節と、複数のリンクと、それぞれ流体の供給を受けて作動すると共に前記関節を介して連結された対応する2つの前記リンクを相対的に回動させる複数の流体アクチュエータと、前記複数の流体アクチュエータに前記流体を給排する流体供給装置とを含むロボット装置であって、前記流体供給装置が、前記流体の供給源と、それぞれ前記供給源側からの前記流体の圧力を調整して出力する複数のリニアソレノイドバルブと、入力ポート、出力ポート、信号圧入力ポートおよびスプールを有すると共に、少なくとも、対応する前記リニアソレノイドバルブから前記信号圧入力ポートに供給される信号圧の作用により前記スプールに付与される力と、前記出力ポートにおける前記流体の圧力の作用により前記スプールに付与される力とをバランスさせて前記供給源側からの前記流体の圧力を調整して前記出力ポートから出力する少なくとも1つのコントロールバルブとを含み、前記複数の流体アクチュエータのうち、少なくとも1つの前記流体アクチュエータには、前記コントロールバルブから前記流体が供給され、残余の前記流体アクチュエータには、各々に対応した前記リニアソレノイドバルブから前記流体が供給されるものである。
【0008】
本開示のロボット装置の流体供給装置は、供給源側からの流体の圧力を調整して出力する複数のリニアソレノイドバルブと、入力ポート、出力ポート、信号圧入力ポートおよびスプールを有する少なくとも1つのコントロールバルブとを含む。コントロールバルブは、少なくとも、対応するリニアソレノイドバルブから信号圧入力ポートに供給される信号圧の作用によりスプールに付与される力と、出力ポートにおける流体の圧力の作用によりスプールに付与される力とをバランスさせて供給源側からの流体の圧力を調整して出力ポートから出力するものである。そして、複数の流体アクチュエータのうち、少なくとも1つの流体アクチュエータには、コントロールバルブから流体が供給され、残余の流体アクチュエータには、各々に対応したリニアソレノイドバルブから流体が供給される。ここで、コントロールバルブでは、リニアソレノイドバルブに比べて、流体アクチュエータに供給される流体の流量増加に伴う出力ポートにおける流体の圧力低下を良好に抑制することが可能である。そして、コントロールバルブとリニアソレノイドバルブとの組み合わせによれば、単体のリニアソレノイドバルブよりも体格を小さくしつつ、要求出力が大きい流体アクチュエータに要求に応じた流体圧を確実に供給することができる。この結果、本開示のロボット装置では、複数の流体アクチュエータに流体を供給する流体供給装置のサイズアップを抑制しつつ、当該複数の流体アクチュエータの各々に要求に応じた流体圧を確実に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のロボット装置を示す概略構成図である。
【
図3】本開示のロボット装置の流体供給装置を示す系統図である。
【
図4】本開示のロボット装置の他の流体供給装置を示す系統図である。
【
図5】本開示の他のロボット装置を示す概略構成図である。
【
図6】本開示の他のロボット装置に含まれる流体アクチュエータを示す断面図である。
【
図7】本開示の他のロボット装置の流体供給装置を示す系統図である。
【
図8】本開示の他のロボット装置に適用可能な他の流体供給装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示のロボット装置1を示す概略構成図であり、
図2は、ロボット装置1を示す拡大図である。これらの図面に示すロボット装置1は、ロボットアーム2と、流体供給装置(液体供給装置)10とを含む。本実施形態において、ロボット装置1は、指定された目的位置まで自走可能な、いわゆる無人搬送車(AGV)または自律走行搬送ロボット(AMR)である搬送台車20に搭載される。ただし、ロボット装置1は、搬送台車20に搭載されるものに限られず、予め定められた設置箇所に定置されてもよい。
【0012】
ロボットアーム2は、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3と、複数(本実施形態では、3つ)のアーム(リンク)3と、関節J1,J2,J3ごとに例えば偶数個(本実施形態では、2つ)ずつ設けられる人工筋肉としての複数の流体アクチュエータ(液圧アクチュエータ)M1,M2,M3,M4,M5,M6と、先端側のアーム3に取り付けられる把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4とを含む多関節アームである。ロボットアーム2のハンド部4は、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1の制御装置100(
図3参照)により制御される。また、流体供給装置10は、当該制御装置100により制御されて各流体アクチュエータM1-M6に流体(作動流体)としての作動油(液体)を給排する。これにより、ロボットアーム2を油圧(液圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0013】
ロボットアーム2の各流体アクチュエータM1-M6は、
図2に示すように、作動油の圧力によって膨張するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含む、いわゆるマッキベン型の人工筋肉である。チューブTは、高い耐油性をもった例えばゴム材等の弾性材により円筒状に形成されており、当該チューブTの両端部は、封止部材Cにより封止されている。チューブTの基端側(流体供給装置10側、
図2中下端側)の封止部材Cには、作動油の出入口IOが形成されている。編組スリーブSは、所定方向に配向された複数のコードを互いに交差するように編み込むことにより円筒状に形成されており、軸方向および径方向に収縮可能である。編組スリーブSを形成するコードとしては、繊維コード、高強度繊維、極細のフィラメントによって構成される金属製コード等を採用することができる。このような流体アクチュエータM1-M6のチューブT内に上記出入口IOから作動油を供給して当該チューブT内の作動油の圧力を高めることで、チューブTは、編組スリーブSの作用により径方向に膨張すると共に軸方向に収縮し、内部の作動油の圧力に応じた収縮力を発生する。
【0014】
図1および
図2に示すように、複数のアーム3のうち、最基端側(最も流体供給装置10側)のアーム3は、関節J1を介してリンクとしての支持部材5により回動自在に支持される。また、2つのアーム3同士が、関節J2またはJ3を介して互いに回動自在に連結される。更に、流体供給装置10側の2つのアーム3の先端部(手先側の端部)には、連結部材6が固定されている。図示するように、支持部材5は、最基端側の関節J1に対応した流体アクチュエータM1の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、当該関節J1に対応した流体アクチュエータM2の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0015】
また、各連結部材6は、基端側に位置する関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM1またはM3の先端側(手先側)の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J1またはJ2に対応した流体アクチュエータM2またはM4の先端側(手先側)の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。更に、各連結部材6は、先端側に位置する関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM3またはM5の基端側の封止部材Cを第1の連結軸を介して回動自在に支持すると共に、関節J2またはJ3に対応した流体アクチュエータM4またはM6の基端側の封止部材Cを第2の連結軸を介して回動自在に支持する。
【0016】
これにより、関節J1-J3の関節軸から手先側(ハンド部4側)に延びる各アーム3の両側には、流体アクチュエータM1-M6のうちの対応する2つが当該アーム3と平行に配列される。そして、各アーム3の一側に配置される流体アクチュエータM1,M3,M5は、1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第1の人工筋肉(一方の拮抗筋)を構成し、各アーム3の他側に配置される流体アクチュエータM2,M4,M6は、当該第1の人工筋肉と対をなす1つの関節J1,J2またはJ3に対応した第2の人工筋肉を構成する。
【0017】
ただし、第1および第2の人工筋肉は、それぞれ2つ以上(同数)の流体アクチュエータにより構成されてもよく、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの数とが異なっていてもよい。更に、本実施形態において、1つの関節J1,J2またはJ3に対して設けられる複数(2つ)の流体アクチュエータM1,M2等は、互いに同一の諸元を有するが、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元と、第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータの諸元とが異なっていてもよい。
【0018】
また、本実施形態において、各アーム3は、中空に形成されており、各アーム3の内部には、流体供給管としての複数のホースH(
図2における破線参照)が配置される。各ホースHは、対応する流体アクチュエータM1-M6の基端側の封止部材Cに形成された出入口IOに接続され、流体アクチュエータM1-M6のチューブT内には、ホースHを介して流体供給装置10からの作動油(油圧)が供給される。
【0019】
従って、制御装置100により流体供給装置10を制御することで、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等のチューブT内の油圧と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等のチューブT内の油圧とを互いに異ならせることができる。これにより、互いに拮抗するように配置された2つの流体アクチュエータM1,M2等すなわち対をなす(1組の)第1および第2の人工筋肉から連結部材6を介して各アーム3に力(回転トルク)を伝達し、支持部材5または基端側のアーム3に対して各アーム3を回動させて関節J1-J3の関節角度を変化させることが可能となる。本実施形態において、第1の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM1等と、第1の人工筋肉と対をなす第2の人工筋肉を構成する流体アクチュエータM2等とは、チューブTが自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮した状態を初期状態として流体供給装置10からの油圧により駆動される。
【0020】
また、本実施形態では、ロボット装置1の作動中、ロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応した一対の流体アクチュエータM1,M2のうち、流体アクチュエータM1は、アーム3に関してハンド部4の反対側に常時位置し、関節J1の可動範囲から定まる流体アクチュエータM1に対する要求出力の最大値(最大要求出力)が流体アクチュエータM2に対する最大要求出力よりも大きくなる。更に、本実施形態において、ロボット装置1(ロボットアーム2)の作動中、流体アクチュエータM1に対する最大要求出力が、すべての流体アクチュエータM1-M6の中で最大となる。流体アクチュエータM1-M6に対する要求出力は、流体アクチュエータM1-M6に対して要求される収縮力および収縮速度(伸縮速度)の積(仕事率あるいはパワー)である。
【0021】
上記流体アクチュエータM1-M6等に作動油を供給するロボット装置1の流体供給装置10は、
図1に示すように、作動油貯留部(流体貯留部)を画成するタンク11と、当該タンク11を上下方向に延びる回転軸(
図1における一点鎖線参照)の周りに回転自在に支持するベース部12とを含む。タンク11は、例えば上端および下端が閉鎖された筒体であり、内部に作動油を貯留可能なものである。本実施形態において、ロボットアーム2の支持部材5は、タンク11の回転軸と同軸に延在するように、タンク11の上壁部11uに図示しないボルト等を介して固定される(
図2参照)。すなわち、ロボットアーム2は、流体供給装置10のタンク11(上壁部11u)により支持される。
【0022】
ベース部12は、ロボットアーム2およびタンク11の下方に位置するように搬送台車20に搭載(固定)される。また、ベース部12は、タンク11を上記回転軸の周りに所定角度(例えば360°)だけ回転させる図示しない回転駆動ユニットを支持している。これにより、回転駆動ユニットを作動させることで、ロボットアーム2を当該回転軸の周りにタンク11と一体に回転させることが可能となる。本実施形態において、回転駆動ユニットは、流体供給装置10から供給される油圧により駆動される揺動モータである。ただし、当該回転駆動ユニットは、電動モータやギヤ機構等を含むものであってもよい。
【0023】
更に、流体供給装置10は、
図3に示すように、タンク11およびベース部12に加えて、流体供給源としてのポンプ13と、タンク11内に配置される図示しないバルブボディと、第1リリーフ弁(圧力制御弁)RV1と、第2リリーフ弁RV2と、逆止弁CVと、アキュムレータ(蓄圧器)14と、流体調整バルブ(流体調整部)としての複数のリニアソレノイドバルブ151,152,153,154,155,156およびコントロールバルブ(圧力制御弁)16とを含む。
【0024】
ポンプ13は、制御装置100により制御される電動ポンプであり、タンク11内に貯留された作動油を吸入して吐出口から油路L1に吐出(圧送)する。本実施形態において、ポンプ13は、タンク11内に配置されるポンプ部と、電動モータや減速ギヤ機構、制御装置100により制御されるインバータ等の駆動回路等を有すると共にタンク11内またはタンク11外に配置される駆動ユニット130とを含む。
【0025】
第1リリーフ弁RV1は、ポンプ13により吐出された作動油の圧力を予め定められた一定の上限圧(制限圧)Plim(上限値、本実施形態では、例えば6-7MPa程度)を超えないように制限するものである。本実施形態において、第1リリーフ弁RV1は、バルブボディ内に配置されるスプールS1および当該スプールS1を付勢するスプリングSP1を含むリリーフバルブである。更に、第1リリーフ弁RV1は、上記油路L1に連通する入力ポートi1と、第1排出ポートda1と、第2排出ポートdb1とを含む。
【0026】
ポンプ13から入力ポートi1に作動油が供給されない第1リリーフ弁RV1の取付状態において、当該第1リリーフ弁RV1は、スプールS1がスプリングSP1により付勢されて入力ポートi1と第1排出ポートda1とを連通させる第1連通状態を形成する。また、ポンプ13の吐出圧すなわちポンプ13から入力ポートi1に供給される作動油の圧力が予め定められた比較的低い待機圧Pst(第2目標圧、本実施形態では、例えば1000kPa程度)よりも高く、かつ上記上限圧Plimよりも十分に低く定められた切替圧(本実施形態では、例えば1-2MPa程度)未満であるときに、第1リリーフ弁RV1は、スプールS1が入力ポートi1と第1排出ポートda1とを連通させる上記第1連通状態を形成する。
【0027】
更に、ポンプ13から入力ポートi1に供給される作動油の圧力が上記切替圧以上であり、かつ上限圧Plimを超えていないときに、第1リリーフ弁RV1は、スプールS1がスプリングSP1の付勢力に抗して入力ポートi1と第1および第2排出ポートda1,db1との連通を遮断する遮断状態を形成する。また、ポンプ13から入力ポートi1に供給される作動油の流量が必要供給流量を上回って当該作動油の圧力が上限圧Plimに達すると、第1リリーフ弁RV1は、スプールS1がスプリングSP1の付勢力に抗して入力ポートi1と第2排出ポートdb1とを連通させる第2連通状態を形成する。
【0028】
図3に示すように、第1リリーフ弁RV1の第1排出ポートda1は、図示しないバルブボディに形成された油路L0を介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。また、油路L0には、第1排出ポートda1に近接するようにオリフィスOrが設置されている。オリフィスOrには、ポンプ13から入力ポートi1に供給される作動油の圧力が上記切替圧未満であって第1リリーフ弁RV1のスプールS1が第1連通状態を形成するときに、第1リリーフ弁RV1の第1排出ポートda1からの作動油が流入する。そして、オリフィスOrのオリフィス径等の諸元は、ポンプ13が予め定められている下限回転数より所定値だけ高い回転数で作動したときに当該ポンプ13から供給された作動油の通過により発生する前後差圧が、上記待機圧Pstになるように定められている。この際、下流側すなわちタンク11側の作動油の圧力が概ねゼロであるため、上流側すなわち第1排出ポートda1における作動油の圧力は上記待機圧Pstになる。
【0029】
第2リリーフ弁RV2は、バルブボディ内に配置されるスプールS2および当該スプールS2を付勢するスプリングSP2を含む。更に、第2リリーフ弁RV2は、バルブボディに形成された油路を介して第1リリーフ弁RV1の第2排出ポートdb1に連通する入力ポートi2と、上記オリフィスOrの下流側で上記油路L0に連通する排出ポートdb2とを含む。かかる第2リリーフ弁RV2は、第1リリーフ弁RV1から排出される作動油を一時的に堰き止めて所定圧まで昇圧させると共に、昇圧させた圧力によりスプールを移動させて減圧させた作動油を排出ポートdb2からタンク11内の作動油貯留部へと流出させる。
【0030】
逆止弁CVは、ポンプ13(および第1リリーフ弁RV1)側すなわち油路L1からの作動油を油路LLに流出させると共に、油路LLから油路L1すなわちポンプ13(および第1リリーフ弁RV1)側への作動油の流通を規制する。アキュムレータ14は、逆止弁CVの下流側で油路LLにバルブ等を介在させることなく直結(接続)された作動油の出入口を有しており、ポンプ13側からの油圧を蓄える。また、アキュムレータ14としては、最高作動圧が上記上限圧Plim以上であるものが用いられる。更に、油路LLには、逆止弁CVの下流側かつアキュムレータ14の上流側で当該油路LLにおける作動油の圧力(元圧)を検出する元圧センサPSが設置されている。
【0031】
リニアソレノイドバルブ151-156は、共通の構成を有しており、それぞれバルブボディ内に配置されると共に制御装置100により制御される。本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151は、コントロールバルブ16への信号圧を調整し、リニアソレノイドバルブ152は、流体アクチュエータM2への油圧(駆動圧)を調整する。また、リニアソレノイドバルブ153は、流体アクチュエータM3への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ154は、流体アクチュエータM4への油圧(駆動圧)を調整する。更に、リニアソレノイドバルブ155は、流体アクチュエータM5への油圧(駆動圧)を調整し、リニアソレノイドバルブ156は、流体アクチュエータM6への油圧(駆動圧)を調整する。
【0032】
図3に示すように、リニアソレノイドバルブ151-156は、制御装置100により通電制御される電磁部15eと、バルブボディにより保持されるスリーブ内に軸方向に移動可能に配置されるスプール15sと、スプール15sを電磁部15e側(出力ポート15o側から入力ポート15i側、
図3中上側)に付勢するスプリング15spとを含む。更に、リニアソレノイドバルブ151-156は、入力ポート15iと、出力ポート15oと、出力ポート15oに連通するフィードバックポート15fと、入力ポート15iおよび出力ポート15oと連通可能なドレンポート15dとを含む。リニアソレノイドバルブ151-156の入力ポート15iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLにそれぞれ連通する。また、リニアソレノイドバルブ152-156の出力ポート15oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して対応する流体アクチュエータM2-M6(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。更に、リニアソレノイドバルブ151-156のドレンポート15dは、それぞれ油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0033】
本実施形態において、リニアソレノイドバルブ151-156は、電磁部15eに電流が供給される際に開弁する常閉弁であり、各電磁部15eは、印加される電流に応じて入力ポート15iと出力ポート15oとを連通させるようにスプール15sを軸方向に移動させる。これにより、電磁部15e(コイル)への給電により発生する推力と、スプリング15spの付勢力と、出力ポート15oからフィードバックポート15fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール15sに作用する電磁部15e側への推力とをバランスさせることで、入力ポート15iに供給されたポンプ13(および第1リリーフ弁RV1)側からの作動油を所望の圧力に調整して出力ポート15oから流出させることが可能となる。
【0034】
また、流体アクチュエータM1-M6側に供給される油圧(信号圧または駆動圧)をリニアソレノイドバルブ151-156にフィードバックすることで、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6により駆動されるロボットアーム2に当該流体アクチュエータM1-M6以外からの外力が加えられたときに、当該外力による流体アクチュエータM1-M6のチューブTの体積変化に応じた油圧の変動を吸収することができる。加えて、当該外力が無くなった後には、速やかに要求に応じた油圧(駆動圧)を流体アクチュエータM1-M6に供給することが可能となる。
【0035】
コントロールバルブ16は、リニアソレノイドバルブ151からの信号圧に応じて油路LLからの作動油の圧力を調整して上記最大要求出力が最大となる流体アクチュエータM1のチューブTに供給するものである。コントロールバルブ16は、バルブボディ内に配置されるスプール16sおよび当該スプール16sを付勢するスプリング16spを含むスプールバルブである。また、コントロールバルブ16は、
図3に示すように、入力ポート16iと、出力ポート16oと、フィードバックポート16fと、信号圧入力ポート16cと、ドレンポート16dとを含む。
【0036】
入力ポート16iは、アキュムレータ14の下流側で油路LLに連通する。出力ポート16oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して流体アクチュエータM1(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。フィードバックポート16fは、バルブボディに形成された油路を介して出力ポート16oに連通する。信号圧入力ポート16cは、バルブボディに形成された油路を介してリニアソレノイドバルブ151の出力ポート15oに連通する。ドレンポート16dは、油路LDを介してタンク11内の作動油貯留部に連通する。
【0037】
かかるコントロールバルブ16のスプール16sは、電磁部15eに印加される電流に応じたリニアソレノイドバルブ151からの信号圧が作用することで、スプリング16spの付勢力に抗して軸方向に移動する。これにより、信号圧の作用によりスプール16sに付与される推力と、スプリング16spの付勢力と、出力ポート16oからフィードバックポート16fに供給された油圧(駆動圧)によりスプール16sに作用する推力とをバランスさせることで、入力ポート16iに供給されたポンプ13(および第1リリーフ弁RV1)側からの作動油の一部を適宜ドレンポート16dを介してドレンして出力ポート16oから流体アクチュエータM1のチューブTへと供給される作動油を所望の圧力に調整することができる。
【0038】
ロボット装置1の制御装置100は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータや各種ロジックIC等(何れも図示省略)を含む。制御装置100は、上記元圧センサPSや、リニアソレノイドバルブ151-156等の電源の電圧を検出する図示しない電圧センサ等の検出値を入力する。また、制御装置100は、元圧センサPSにより検出される油路LLにおける油圧(元圧)が目標値になるように、ポンプ13の駆動ユニット130を制御する。更に、制御装置100は、リニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eに供給される電流を制御する。
【0039】
続いて、上述のように構成されるロボット装置1の動作について説明する。
【0040】
図示しない起動スイッチがオフされてロボット装置1の動作が完全に停止している際、ハンド部4は、図示しない支持台に形成された係止部により保持される。これにより、ロボットアーム2の姿勢は、予め定められた待機姿勢に強制的に保持される。また、ロボット装置1の起動スイッチがオンされてシステム起動が完了すると、制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、リニアソレノイドバルブ151-156に供給される油路LLにおける油圧(元圧)が上記待機圧Pst(例えば1000kPa程度)になるようにポンプ13を制御する。
【0041】
本実施形態において、待機圧Pstは、複数の流体アクチュエータM1-M6の各々を自然状態から上記初期状態まで軸方向に収縮させることができる圧力(例えば700-900kPa程度)よりも所定値だけ高い圧力に定められている。また、油路LLにおける油圧(元圧)が待機圧Pstに設定される際、ポンプ13は、予め定められている下限回転数以上の回転数で作動するように制御される。この際、第1リリーフ弁RV1は、上記第1連通状態を形成し、ポンプ13から吐出される作動油の一部は、当該第1連通状態を形成する第1リリーフ弁RV1、オリフィスOrおよび油路L0を介してタンク11の流体貯留部へと流出させられる。これにより、第1リリーフ弁RV1の入力ポートi1並びに油路LLにおける油圧(元圧)がオリフィスOrによって待機圧Pstになるように調整されることになる。
【0042】
次いで、制御装置100は、予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに作動油を充填して各チューブTを上記初期状態とするようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTには、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156の対応する何れかから作動油が供給され、各チューブTは、自然状態から所定量(例えば、自然長の10%程度)だけ軸方向に収縮する。これ以後、ハンド部4が上記支持台等に載置されてロボット装置1の動作が停止されるまで、リニアソレノイドバルブ151-156の各電磁部15eには継続して電流が供給され、リニアソレノイドバルブ151-156は、ポンプ13側からの作動油の圧力を電磁部15eに供給される電流に応じて調整する。
【0043】
上述のようなロボット装置1の作業開始準備の完了後、ロボットアーム2およびハンド部4を用いた作業の開始が指示されると、制御装置100は、元圧センサPSの検出値に基づいて、油路LLにおける油圧(元圧)が予め定められた比較的高い常用圧Pw(第1目標圧、本実施形態では、例えば5-6MPa程度)になるようにポンプ13を制御する。本実施形態において、常用圧Pwは、上記待機圧Pstおよび切替圧よりも高く、上限圧Plimよりも低く、かつアキュムレータ14の最低作動圧以上に定められている。更に、制御装置100は、外部(支持台)からの強制力無しにロボットアーム2を上記待機姿勢に保持するのに要求される油圧が予め定められた順番で流体アクチュエータM1-M6のチューブTに供給されるようにリニアソレノイドバルブ151-156の電磁部15eへの電流を制御する。
【0044】
そして、制御装置100は、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156から各流体アクチュエータM1-M6に対してロボットアーム2への要求に応じた油圧が供給されるように各電磁部15eへの電流指令値を設定し、当該電流指令値に基づいて各電磁部15eに供給される電流を制御する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTに対し、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156により要求に応じて調整された油圧(駆動圧)を供給することが可能となる。この結果、複数の流体アクチュエータM1-M6により各アーム3を回動させてロボット装置1のハンド部4を所望の位置に移動させることができる。
【0045】
また、ポンプ13は、流体アクチュエータM1-M6のチューブTの収縮状態等に起因した油路LLにおける油圧(元圧)の変動に応じて制御されるが、ポンプ13の回転数がオーバーシュートして吐出量が過剰になった場合、入力ポートi1に供給される作動油の圧力が上限圧Plimに達することで第1リリーフ弁RV1は上記第2連通状態を形成する。これにより、ポンプ13から吐出される作動油の一部は、第1リリーフ弁RV1(入力ポートi1および第2排出ポートdb1)、第2リリーフ弁RV2および油路L0を介してタンク11の流体貯留部へと流出させられ、第1リリーフ弁RV1によって油路LLにおける油圧(元圧)が上限圧Plimを超えないように調整されることになる。
【0046】
更に、流体供給装置10は、逆止弁CVと流体アクチュエータM1-M6とを結ぶ油路(流体通路)LLに接続されたアキュムレータ14を含む。これにより、ロボットアーム2の動作中(運動中)にポンプ13が停止したとしても、しばらくの間、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156を介してアキュムレータ14からの作動油を流体アクチュエータM1-M6に供給することができる。この結果、流体アクチュエータM1-M6(チューブT)の状態の急変を抑えることが可能となる。
【0047】
上述のように、ロボット装置1において、流体供給装置10は、ポンプ13側からの作動油の圧力を調整して出力する複数のリニアソレノイドバルブ151-156と、入力ポート16i、出力ポート16o、信号圧入力ポート16cおよびスプール16sを有するコントロールバルブ16とを含む。コントロールバルブ16は、対応するリニアソレノイドバルブ151から信号圧入力ポート16cに供給される信号圧の作用によりスプール16sに付与される力と、出力ポート16oにおける作動油の圧力(駆動圧)の作用によりスプール16sに付与される力とを少なくともバランスさせてポンプ13側からの作動油の圧力を調整して出力ポート16oから出力するものである。そして、複数の流体アクチュエータ(人工筋肉)M1-M6のうち、1つの流体アクチュエータM1には、コントロールバルブ16の出力ポート16oから出力された作動油が供給され、残余の流体アクチュエータM2-M6には、各々に対応したリニアソレノイドバルブ152-156から出力された作動油が供給される。
【0048】
ここで、コントロールバルブ16は、いわゆるオーバーライド特性に優れるものであり、リニアソレノイドバルブ152-156に比べて、流体アクチュエータ(人工筋肉)に供給される作動油の流量増加に伴う出力ポート16oにおける作動油の圧力低下を良好に抑制可能である。更に、コントロールバルブ16とリニアソレノイドバルブ151との組み合わせによれば、単体のリニアソレノイドバルブよりも体格を小さくしつつ、要求出力が大きい流体アクチュエータM1に要求に応じた油圧を確実に供給することができる。この結果、ロボット装置1では、複数の流体アクチュエータM1-M6に作動油を供給する流体供給装置10のサイズアップを抑制しつつ、当該複数の流体アクチュエータM1-M6の各々に要求に応じた油圧を確実に供給することが可能となる。
【0049】
また、ロボット装置1では、複数の流体アクチュエータM1-M6の中で最大要求出力が最大となる流体アクチュエータM1にコントロールバルブ16から作動油が供給される。これにより、流体供給装置10のサイズアップを抑制しつつ、複数の流体アクチュエータM1-M6の中で最大の出力が要求される流体アクチュエータM1に対して要求に応じた油圧を確実に供給可能することが可能となる。ただし、複数の流体アクチュエータM1-M6のうちの2つ以上にコントロールバルブ16から作動油が供給されてもよいことはいうまでもない。
【0050】
更に、ロボット装置1において、コントロールバルブ16は、関節J1に対応した一対の流体アクチュエータM1,M2のうち、関節J1の可動範囲から定まる最大要求出力が大きくなる流体アクチュエータM1に作動油を供給する。これにより、関節J1を介して連結されるアーム3と支持部材5とを安定かつスムースに相対的に回動させることが可能となる。ただし、何れかの関節J1-J3に対応した一対の流体アクチュエータM1,M2等の双方に対応するコントロールバルブ16から作動油が供給されてもよいことはいうまでもない。
【0051】
また、ロボット装置1において、コントロールバルブ16は、ロボットアーム2の最基端側の関節J1に対応した流体アクチュエータM1に作動油を供給する。これにより、ロボットアーム2を安定かつスムースに作動させることが可能となる。ただし、ロボットアーム2の構造によっては、ロボットアーム2の最基端側の関節J1以外の関節に対応した流体アクチュエータにコントロールバルブ16から作動油が供給されてもよいことはいうまでもない。
【0052】
なお、ロボット装置1では、流体アクチュエータM1-M6の最大要求出力を指標としてコントロールバルブ16に接続される流体アクチュエータが定められているが、コントロールバルブ16に接続される流体アクチュエータは、最大要求出力以外の指標に基づいて定められてもよい。すなわち、コントロールバルブ16に接続される流体アクチュエータは、当該流体アクチュエータ(チューブ)に供給される流体の圧力、流体アクチュエータに供給される流体の流量、流体アクチュエータに供給される流体の圧力および流量の積値、流体アクチュエータの最大収縮時における流体の収容空間の体積、流体アクチュエータが発生する収縮力、または流体アクチュエータの最大収縮速度(最大伸縮速度)の最大値に基づいて定められてもよい。そして、最大要求出力以外の指標の最大値が複数の流体アクチュエータの中で最大になるものがコントロールバルブ16に接続されてもよく、1つの関節に対応した一対の流体アクチュエータのうち、最大要求出力以外の指標の当該関節の可動範囲から定まる最大値が大きくなる一方がコントロールバルブ16に接続されてもよい。
【0053】
図4は、ロボット装置1に適用可能な他の流体供給装置10Bを示す系統図である。同図に示す流体供給装置10Bでは、コントロールバルブ16の出力ポート16oと流体アクチュエータM1との間、並びにリニアソレノイドバルブ152-156と対応する流体アクチュエータM2-M6との間に、開閉バルブ17が1つずつ配置される。開閉バルブ17は、バルブボディ内に配置されるスプール17sおよび当該スプール17sを付勢するスプリング17spを含む常閉型のスプールバルブであり、制御装置100により制御される信号圧出力バルブとしてのオンオフソレノイドバルブ18により駆動される。
【0054】
開閉バルブ17は、図示するように、入力ポート17iと、出力ポート17oと、信号圧入力ポート17cとを含む。入力ポート17iは、バルブボディに形成された油路を介してコントロールバルブ16あるいは対応するリニアソレノイドバルブ152-156の出力ポート15o,16oに連通する。出力ポート17oは、バルブボディに形成された油路やホースH等を介して対応する流体アクチュエータM1-M6(チューブT)の作動油の出入口IOに連通する。オンオフソレノイドバルブ18は、入力ポート18iと、出力ポート18oと、制御装置100により通電制御される電磁部18eとを含む常閉弁である。入力ポート18iは、上記油路LLあるいは当該油路LLに接続された図示しない減圧弁(モジュレータバルブ)の出力ポートに連通する。出力ポート18oは、バルブボディに形成された油路を介して各開閉バルブ17の信号圧入力ポート17cに連通する。
【0055】
各開閉バルブ17は、信号圧入力ポート17cにオンオフソレノイドバルブ18からの信号圧が供給されていないときに、スプール17sがスプリング17spにより付勢されて入力ポート17iを閉鎖すると共に入力ポート17iと出力ポート17oとの連通を遮断する流出規制状態を形成する。また、各開閉バルブ17は、電磁部16eへの通電に応じてオンオフソレノイドバルブ18からの信号圧が信号圧入力ポート17cに供給されるときに、スプール17sが当該信号圧に基づく推力により付勢されてスプリング17spの付勢力に抗して入力ポート17iを開放すると共に入力ポート17iと出力ポート17oとを連通させる連通状態を形成する。
【0056】
ロボット装置1がシステム起動され、ポンプ13が作動している間、オンオフソレノイドバルブ18の電磁部18eには電流が供給され、当該オンオフソレノイドバルブ18は、電磁部18eへの通電に応じて入力ポート18iに供給される作動油を出力ポート18oに流出させることにより各開閉バルブ17への信号圧を出力する。これにより、各開閉バルブ17が上記連通状態を形成し、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-156から流体アクチュエータM1-M6に作動油を供給可能となる。
【0057】
また、電源失陥によりオンオフソレノイドバルブ18の電磁部18eへの電力供給が断たれると、オンオフソレノイドバルブ18から信号圧が出力されなくなり、それに応じて各開閉バルブ17は、上記流出規制状態を形成する。これにより、流体アクチュエータM1-M6のチューブTから開閉バルブ17の出力ポート17oに逆流した作動油をスプール17sによりブロックし、当該作動油のコントロールバルブ16,リニアソレノイドバルブ152-156側への流出を規制することができる。更に、流体供給装置10Bすなわちポンプ13やリニアソレノイドバルブ151-156等の異常が発生した際にも、電磁部18eへの通電を解除することで、各開閉バルブ17に流出規制状態を形成させて流体アクチュエータM1-M6のチューブTからの作動油の流出を規制することができる。
【0058】
これにより、複数の開閉バルブ17およびオンオフソレノイドバルブ18を含む流体供給装置10Bによれば、流体アクチュエータM1-M6のチューブTへの作動油の供給に異常が発生しても、チューブTの状態の急変を抑えて流体アクチュエータM1-M6により駆動される駆動対象としてのロボットアーム2の予期せぬ動作の発生を良好に抑制することができる。この結果、ロボット装置1の動作の安定性や信頼性をより向上させることが可能となる。ただし、流体供給装置10Bにおいて、複数の開閉バルブ17およびオンオフソレノイドバルブ18の代わりに、それぞれ電磁部を有する複数の電磁式の開閉バルブが用いられてもよい。
【0059】
更に、上記実施形態において、人工筋肉としての流体アクチュエータM1-M6は、内部に作動油が供給されると共に当該内部の油圧の上昇に応じて径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブTと、当該チューブTを覆う編組スリーブSとを含むマッキベン型の人工筋肉であるが、ロボット装置1における流体アクチュエータM1-M6の構成は、これに限られるものではない。すなわち、流体アクチュエータM1-M6は、流体が供給された際に径方向に膨張しながら軸方向に収縮するチューブを含むものであればよく、例えば弾性体により形成された内側筒状部材と、弾性体により形成されると共に内側筒状部材の外側に同軸に配置され外側筒状部材と、内側筒状部材と外側筒状部材との間に配置された繊維層とを含む軸方向繊維強化型の流体アクチュエータ(例えば、特開2011-137516号参照)であってもよい。
【0060】
図5は、本開示の他のロボット装置1Cを示す概略構成図である。なお、ロボット装置1Cの構成要素のうち、上述のロボット装置1と同一の要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
図5に示すロボット装置1Cは、ロボットアーム2Cと、当該ロボットアーム2Cを作動させる流体アクチュエータ(液圧アクチュエータ)としての複数(本実施形態では、2つ)の複動シリンダ(液圧シリンダ)7に流体を給排する流体供給装置(液体供給装置)10Cとを含む。かかるロボット装置1Cも、指定された目的位置まで自走可能な無人搬送車(AGV)または自律走行搬送ロボット(AMR)である搬送台車に搭載されるか、あるいは予め定められた設置箇所に定置されて使用される。ロボットアーム2Cは、
図5に示すように、複数の複動シリンダ7に加えて、支持部材(ブラケット)5と、複数のアーム(リンク)3a,3b,3cと、当該複数のアーム3a,3b,3cとの協働により第1および第2の平行リンク機構を構成するリンク61,62,63,64と、把持部(手先)としてのハンド部(ロボットハンド)4と、複数(本実施形態では、3つ)の関節(ピン結合部)J1,J2,J3とを含む多関節アームである。
【0062】
ロボットアーム2Cの各複動シリンダ7は、
図6に示すように、シリンダ70と、シリンダ(シリンダチューブ)70内に軸方向に摺動自在に配置されるピストン74と、当該ピストン74に同軸に固定されるピストンロッド75とを含む。更に、各複動シリンダ7は、シリンダ(シリンダチューブ)70内のピストン74の一側(
図6における右側)に画成される第1流体室(収縮側流体室)71と、シリンダ70内のピストン74の他側(
図6における左側)に画成される第2流体室(伸長側流体室)72とを含む。流体供給装置10Cにより第1流体室71に作動油を供給すると共に第2流体室72から作動油を排出させることで、ピストン74およびピストンロッド75をシリンダ70に対して
図6における左側に移動させて複動アクチュエータとしての複動シリンダ7を伸長させることができる。また、流体供給装置10Cにより第2流体室72に作動油を供給すると共に第1流体室71から作動油を排出させることで、ピストン74およびピストンロッド75をシリンダ70に対して
図6における右側に移動させて複動シリンダ7を収縮させることができる。
【0063】
ロボットアーム2Cのアーム3aは、関節J1を介してリンクとしての支持部材5に回動自在に連結され、1つの複動シリンダ7の伸縮により支持部材5に対して回動する。支持部材5およびアーム3aすなわち関節J1に対応した複動シリンダ7の一端すなわちピストンロッド75の端部は、支持部材5に固定されたレバー部材に回動自在に連結され、他端すなわちシリンダ70の端部は、アーム3aの先端部(アーム3b側の端部)に回動自在に連結される。また、アーム3bは、関節J2を介してアーム3aに回動自在に連結され、1つの複動シリンダ7の伸縮によりアーム3aに対して回動する。アーム3a,3bすなわち関節J2に対応した複動シリンダ7の一端すなわちピストンロッド75の端部は、アーム3aの基端部(支持部材5側の端部)に回動自在に連結され、他端すなわちシリンダ70の端部は、アーム3bの基端部(アーム3a側の端部)に固定されたレバー部材に回動自在に連結される。更に、アーム3cは、関節J3を介してアーム3bの先端部に回動自在に連結される。なお、支持部材5およびアーム3aに対して、平行に配列される2つの複動シリンダ7が設けられてもよく、アーム3a,3bに対して、平行に配列される2つの複動シリンダ7が設けられてもよい。
【0064】
リンク61は、支持部材5に固定され、リンク62の基端部は、関節J2を介してアーム3aの先端部およびアーム3bの基端部に回動自在に連結される。また、リンク63は、アーム3aと同一のリンク長を有し、リンク61の遊端部(ピボット部)に回動自在に連結されると共に、関節J2からリンク61のリンク長に相当する長さだけ離間した位置でリンク62に回動自在に連結される。これにより、アーム3aを固定リンクとし、リンク61を駆動リンクとし、リンク62を従動リンクとし、リンク63を中間リンクとする第1の平行リンク機構が構成される。更に、リンク64は、関節J3から所定長さだけ離間した位置でアーム3cに回動自在に連結されると共に、関節J2から当該所定長さだけ離間した位置でリンク62に回動自在に連結される。これにより、アーム3bを固定リンクとし、リンク62を駆動リンクとし、アーム3cを従動リンクとし、リンク64を中間リンクとする第2の平行リンク機構が構成される。そして、これらの第1および第2の平行リンク機構の作用により、アーム3cは、アーム3a,3bの回動角度に拘わらず搬送台車の走行面またはロボット装置1Cの設置面に対して常時平行に維持される。
【0065】
ロボットアーム2Cのハンド部4は、最も手先側のアーム3cに取り付けられており、対象となる物体(以下、「把持対象」という。)を把持するようにロボット装置1Cの制御装置100Cにより制御される。また、流体供給装置10Cは、例えば上端および下端が閉鎖された筐体であって内部に作動流体としての作動油を貯留可能なタンクや、作動油を圧送するポンプ、複数のリニアソレノイドバルブ等を含み、各複動シリンダ7に作動油を給排するように制御装置100Cにより制御される。これにより、ロボットアーム2Cを油圧(流体圧)により駆動してハンド部4を所望の位置に移動させることができる。ただし、流体供給装置10Cは、例えば水といった作動油以外の液体を各複動シリンダ7に給排するものであってもよく、例えば圧縮空気等の気体を各複動シリンダ7に給排するものであってもよい。
【0066】
図7は、ロボット装置1Cの流体供給装置10Cを示す系統図である。同図に示すように、流体供給装置10Cは、ポンプ13と、第1リリーフ弁RV1と、第2リリーフ弁RV2と、逆止弁CVと、アキュムレータ14と、流体調整バルブ(流量調整部)としての複数のリニアソレノイドバルブ152,153,154およびコントロールバルブ16とを含む。流体供給装置10Cにおいて、コントロールバルブ16は、リニアソレノイドバルブ151からの信号圧に応じて関節J1に対応した複動シリンダ7の第1流体室71への油圧(駆動圧)を調整する。すなわち、コントロールバルブ16の出力ポート16oは、関節J1に対応した複動シリンダ7の第1流体室71の作動油の出入口にバルブボディに形成された油路やホースH等を介して連通する。これに対して、関節J1に対応した複動シリンダ7の第2流体室72の作動油の出入口は、ホースHやバルブボディに形成された油路等を介してリニアソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ)152の出力ポート15oに連通する。すなわち、関節J1に対応した複動シリンダ7の第2流体室72への油圧は、リニアソレノイドバルブ152により調整される。更に、流体供給装置10Cにおいて、リニアソレノイドバルブ153は、関節J2に対応した複動シリンダ7の第1流体室71への油圧を調整する。また、リニアソレノイドバルブ154は、関節J2に対応した複動シリンダ7の第2流体室72への油圧を調整する。
【0067】
上述のようなロボット装置1Cでは、その作動中、ロボットアーム2Cの最基端側の関節J1に対応した複動シリンダ7に対する要求出力(複動シリンダ7が発生する推力と複動シリンダ7の伸縮速度との積値)の最大値(最大要求出力)が関節J2に対応した複動シリンダ7に対する最大要求出力よりも大きくなる(最大になる)。更に、ロボット装置1C(ロボットアーム2C)の作動中、関節J1の複動シリンダ7に対する最大要求出力は、第1流体室71に作動油が供給されると共に第2流体室72から作動油が排出されるときに、第2流体室72に作動油が供給されると共に第1流体室71から作動油が排出されるときよりも大きくなる。従って、オーバーライド特性に優れるコントロールバルブ16とリニアソレノイドバルブ151との組み合わせを関節J1に対応した複動シリンダ7の第1流体室71に適用することで、単体のリニアソレノイドバルブよりも体格を小さくしつつ、要求出力が大きい関節J1に対応した複動シリンダ7の第1流体室71に要求に応じた油圧を確実に供給することができる。
【0068】
この結果、ロボット装置1Cでは、複数の複動シリンダ7に作動油を供給する流体供給装置10Cのサイズアップを抑制しつつ、当該複数の複動シリンダ7の各々に要求に応じた油圧を確実に供給してロボットアーム2Cを安定かつスムースに作動させることが可能となる。更に、ロボット装置1Cにおいて、コントロールバルブ16は、ロボットアーム2Cの最基端側の関節J1に対応した複動シリンダ7の第1流体室71に作動油を供給する。これにより、関節J1を介して連結されるアーム3aと支持部材5とを安定かつスムースに相対的に回動させることができる。
【0069】
ただし、ロボット装置1Cの複数の複動シリンダ7の第1および第2流体室71,72の2つ以上にコントロールバルブ16から作動油が供給されてもよいことはいうまでもなく、流体供給装置10Cには、例えば、関節J2に対応した複動シリンダ7の第1流体室71への油圧を調整するコントロールバルブおよびリニアソレノイドバルブが設けられてもよい。また、1つの複動シリンダ7の第1および第2流体室71,72の双方に、対応するコントロールバルブ16から作動油が供給されてもよいことはいうまでもない。更に、ロボットアーム2Cの構造によっては、ロボットアーム2Cの最基端側の関節J1以外の関節に対応した複動シリンダ7にコントロールバルブ16から作動油が供給されてもよいことはいうまでもない。
【0070】
なお、ロボット装置1Cでは、複動シリンダ7の最大要求出力を指標としてコントロールバルブ16に接続される複動シリンダ7および流体室が定められているが、コントロールバルブ16に接続される複動シリンダ7および流体室は、最大要求出力以外の指標に基づいて定められてもよい。すなわち、コントロールバルブ16に接続される複動シリンダ7および流体室は、複動シリンダ7の第1および第2流体室71,72に供給される作動油(流体)の流量の最大値、作動油の圧力および流量(あるいはピストンロッドの伸縮速度)の積値の最大値、または複動シリンダ7の最大伸縮速度の最大値に基づいて定められてもよい。
【0071】
また、
図8に示すように、流体供給装置10Cには、流体供給装置10Bと同様に、制御装置100Cにより制御される信号圧出力バルブとしてのオンオフソレノイドバルブ18により駆動される少なくとも1つの開閉バルブ17が設けられてもよい。
図8の例では、コントロールバルブ16の出力ポート16oと関節J1に対応した複動シリンダ7の第1流体室71との間、リニアソレノイドバルブ152の出力ポート15oと関節J1に対応した複動シリンダ7の第2流体室72との間、リニアソレノイドバルブ153の出力ポート15oと関節J2に対応した複動シリンダ7の第1流体室71との間、およびリニアソレノイドバルブ154の出力ポート15oと関節J2に対応した複動シリンダ7の第2流体室72との間に、開閉バルブ17が1つずつ配置される。
【0072】
ロボット装置1Cがシステム起動され、ポンプ13が作動している間、オンオフソレノイドバルブ18は、電磁部18eへの通電に応じて各開閉バルブ17への信号圧を出力する。これにより、各開閉バルブ17が連通状態を形成し、コントロールバルブ16およびリニアソレノイドバルブ152-154から各複動シリンダ7の第1および第2流体室71,72に作動油を供給可能となる。また、電源失陥によりオンオフソレノイドバルブ18の電磁部18eへの電力供給が断たれると、オンオフソレノイドバルブ18から信号圧が出力されなくなるのに応じて各開閉バルブ17は、流出規制状態を形成する。これにより、各複動シリンダ7の第1および第2流体室71,72から開閉バルブ17の出力ポート17oに逆流した作動油をスプール17sによりブロックし、当該作動油のコントロールバルブ16,リニアソレノイドバルブ152-154側への流出を規制することができる。更に、ポンプ13やリニアソレノイドバルブ151-154等の異常が発生した際にも、電磁部18eへの通電を解除することで、各複動シリンダ7の第1および第2流体室71,72からの作動油の流出を規制することができる。
【0073】
これにより、複数の開閉バルブ17およびオンオフソレノイドバルブ18を含む流体供給装置10Cによれば、各複動シリンダ7への作動油の供給に異常が発生しても、ロボットアーム2の予期せぬ動作の発生を良好に抑制することができるので、ロボット装置1Cの動作の安定性や信頼性をより向上させることが可能となる。ただし、流体供給装置10Cにおいて、複数の開閉バルブ17およびオンオフソレノイドバルブ18の代わりに、それぞれ電磁部を有する複数の電磁式の開閉バルブが用いられてもよい。
【0074】
なお、流体供給装置10,10B、10Cにおいて、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、常開弁であってもよい。この場合、当該常開弁は、電磁部からの推力および当該電磁部からの推力と同方向に作用するようにフィードバックポートに供給された液圧による推力を、スプリングの付勢力とバランスさせるものであってもよい。また、リニアソレノイドバルブ151-156の少なくとも何れか1つは、専用のフィードバックポートをもたず、スプールを収容するスリーブの内側で出力圧(駆動圧)をフィードバック圧としてスプールに作用させるように構成されたものであってもよい(例えば、特開2020-41687号公報参照)。同様に、コントロールバルブ16も、出力圧(駆動圧)をスプールの内部でフィードバック圧として当該スプールに作用させるように構成されたものであってもよい。
【0075】
また、流体供給装置10,10B、10Cは、流体調整バルブ(流体調整部)として、例えば圧力センサにより検出される液圧(流体圧)が要求に応じた圧力になるように流体アクチュエータM1-M6あるいは複動シリンダ7への液体(流体)の流量を制御する流量制御弁を含むものであってもよい。そして、流体供給装置10,10B、10Cは、水等の作動油以外の液体や空気等の気体を流体アクチュエータM1-M6や複動シリンダ7に供給するものであってもよい。
【0076】
更に、ロボット装置1,1Cは、関節を1つだけ含むものであってもよく、流体アクチュエータM1等あるいは複動シリンダ7を1つまたは2つだけ含むものであってもよい。また、ロボット装置1,1Cは、少なくとも1つの流体アクチュエータM1等あるいは複動シリンダ7とハンド部4とを有するロボットアーム2,2Cを含むものに限られず、少なくとも1つの流体アクチュエータと、例えばドリルビット等の工具や例えばスイッチ等を押圧する押圧部材といったハンド部4以外の要素が手先に取り付けられたロボットアームとを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1,1Cは、歩行ロボットや、ウェアラブルロボット等であってもよい。
【0077】
また、ロボット装置1,1Cのロボットアーム2,2Cは、アーム3等を駆動する流体アクチュエータ(複動アクチュエータ)として揺動モータ(例えば、ハンド部4の根元(手首部)を回転させる揺動モータ)を含むものであってもよい。すなわち、ロボット装置1,1Cのロボット本体は、流体アクチュエータM1等または複動シリンダ7と揺動モータとの少なくとも何れか1つを含むものであってもよい。更に、ロボット装置1Cにおいて、複動シリンダ7の少なくとも何れか1つが、例えば互いに拮抗するように配置された2つの単動シリンダを含む複動アクチュエータで置き換えられてもよい。また、ロボット装置1,1Cのロボットアーム2,2Cは、流体アクチュエータとしてエアシリンダを含むものであってもよい。更に、関節J1-J3を介して連結された2つのアーム3等のすべてに必ずしも対をなす複数の流体アクチュエータ(人工筋肉)Mが設けられる必要はなく、何れか1組の2つのアーム3等に、1つまたは複数の流体アクチュエータと、当該流体アクチュエータと拮抗するように配置されるスプリングやゴム材等の弾性体とが連結されてもよい。また、ロボット装置1,1Cにおいて、タンク11がロボットアーム2,2Cといったロボット本体により支持されてもよい。
【0078】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示の発明は、流体の供給を受けて作動する少なくとも1つの流体アクチュエータを含むロボット装置の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,1C ロボット装置、2 ロボットアーム、3,3a,3b,3c アーム、5 支持部材、7 複動シリンダ、70 シリンダ、71 第1流体室、72 第2流体室、74 ピストン、75 ピストンロッド、10,10B、10C 流体供給装置、11 タンク、13 ポンプ、14 アキュムレータ、151,152,153,154,155,156 リニアソレノイドバルブ、16 コントロールバルブ、CV 逆止弁、J1,J2,J3 関節、M1,M2,M3,M4,M5,M6 流体アクチュエータ(人工筋肉)、Or オリフィス、RV1 第1リリーフ弁、RV2 第2リリーフ弁。