(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159041
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】液体中に存在する微粒子の分離装置及び分離方法
(51)【国際特許分類】
B03D 1/14 20060101AFI20221006BHJP
B03D 1/02 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B03D1/14 108
B03D1/14
B03D1/14 112
B03D1/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045976
(22)【出願日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021061189
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】中島 康晴
(72)【発明者】
【氏名】西 佳樹
(72)【発明者】
【氏名】内田 雄基
(57)【要約】
【課題】低コストで、ノズル閉塞の問題も生じない、液体中に存在する微粒子の分離装置及び分離方法を提供すること。
【解決手段】微粒子δを含む液体を入れる処理槽10と、ガス等を液体に溶解させるガス溶解手段20と、ガス溶解手段20から溶解液を処理槽10内に注入する液体注入手段30と、処理槽10内に音響波を発生させる音響波発生手段40と、音響波発生手段40を制御する制御手段50とを具備し、ガス溶解手段20が陸上等に設置され、処理槽10が水中に配置され、処理槽10に、微粒子δを含む液体を供給する供給口11と、溶解液体を注入する注入口12と、分離された微粒子δを排出する微粒子排出口13を設け、音響波発生手段40が処理槽10の側面等に配置され、制御手段50が音響波発生手段40を制御し、音響波により処理槽10内で生じた気泡γに微粒子δを付着させることにより、微粒子δを分離する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に存在する微粒子を分離する装置であって、前記微粒子を含む液体を入れる処理槽と、ガスおよび/または空気を前記液体に溶解させるガス溶解手段と、前記ガス溶解手段から、前記ガスおよび/または前記空気を溶解した前記液体を前記処理槽内に注入する液体注入手段と、前記処理槽内に音響波を発生させる音響波発生手段と、前記音響波発生手段を制御する制御手段とを具備し、前記ガス溶解手段が陸上または船上もしくは水上に設置され、前記処理槽が水中に配置され、前記処理槽の上面または側面に前記微粒子を含む前記液体を供給するための供給口と、前記供給口よりも下方に前記ガスおよび/または前記空気を溶解した前記液体を注入するための注入口と、前記処理槽の上方および/または下方に分離された前記微粒子を排出するための微粒子排出口とを有し、前記音響波発生手段が、前記処理槽の側面および/または下面に配置される、もしくは柱状の形状を有し前記処理槽内に配置されるものであり、また、前記ガスおよび/または前記空気を溶解した前記液体の注入に応じて、前記制御手段が前記音響波発生手段を制御し、前記音響波により前記処理槽内で生じた気泡に前記微粒子を付着させることにより、前記微粒子を分離することを特徴とする液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項2】
液体中に存在する微粒子を分離する装置であって、前記微粒子を含む液体を入れる処理槽と、液化ガスの微細液滴を前記液体中に分散させる液滴分散手段と、前記液滴分散手段から、前記液化ガスの前記微細液滴を分散した前記液体を前記処理槽内に注入する液体注入手段と、前記処理槽内に音響波を発生させる音響波発生手段と、前記音響波発生手段を制御する制御手段とを具備し、前記液滴分散手段が陸上または船上もしくは水上に設置され、前記処理槽が水中に配置され、前記処理槽の上面または側面に前記微粒子を含む前記液体を供給するための供給口と、前記供給口よりも下方に前記液化ガスの前記微細液滴を分散した前記液体を注入するための注入口と、前記処理槽の上面および/または下面に分離された前記微粒子を排出するための微粒子排出口とを有し、前記音響波発生手段が、前記処理槽の側面および/または下面に配置される、もしくは柱状の形状を有し前記処理槽内に配置されるものであり、また、前記液化ガスの前記微細液滴を分散した前記液体の注入に応じて、前記制御手段が前記音響波発生手段を制御し、前記音響波により前記処理槽内で生じた気泡に前記微粒子を付着させることにより、前記微粒子を分離することを特徴とする液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項3】
前記音響波発生手段が発生させる前記音響波が超音波であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記ガスおよび/または前記空気を溶解した前記液体の注入の開始または停止、若しくは、前記液化ガスの前記微細液滴を分散した前記液体の注入の開始または停止に応じて、前記音響波発生手段を作動または作動停止することにより、前記気泡の発生の有無を制御することを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記ガスおよび/または前記空気を溶解した前記液体の注入量および/または注入流量、若しくは、前記液化ガスの前記微細液滴を分散した前記液体の注入量および/または注入流量に応じて、前記音響波発生手段の出力を調整することにより、前記気泡の発生量を制御することを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項6】
前記ガス溶解手段、若しくは、前記液滴分散手段が加圧手段を有することを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項7】
前記処理槽に前記微粒子を含む前記液体を供給または供給停止する供給・停止手段をさらに具備し、前記制御手段が前記供給・停止手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項8】
分離された前記微粒子を前記処理槽から排出または排出停止する排出・停止手段をさらに具備し、前記制御手段が前記排出・停止手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項9】
前記排出・停止手段により前記処理槽から排出された前記微粒子を収容する収容手段をさらに具備することを特徴とする請求項8に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項10】
前記収容手段により収容された前記微粒子を、陸上または船上もしくは水上まで回収する回収手段をさらに具備することを特徴とする請求項9に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項11】
前記収容手段により収容された前記微粒子を、地下または水底下に埋設する埋設手段をさらに具備することを特徴とする請求項9に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項12】
前記処理槽内の前記液体の液位を調節する液位調節手段をさらに具備し、前記制御手段が前記液位調節手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項11のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置。
【請求項13】
前記請求項1から請求項12のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置を利用し、前記微粒子を前記液体から除去し、回収または処分することを特徴とする液体中に存在する微粒子の分離方法。
【請求項14】
前記請求項1から請求項12のうちの1項に記載の液体中に存在する微粒子の分離装置を利用し、前記微粒子同士の性状の違いに応じて前記微粒子を選別し、回収または処分することを特徴とする液体中に存在する微粒子の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中に存在する微粒子を分離する分離装置及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋、港湾、河川及び湖沼などの水中及び水底には、様々な微粒子が存在している。例えば、海底から噴出した熱水に含まれていた亜鉛や鉛などの金属の硫化物が海底に堆積して形成された海底熱水鉱床は、将来の金属鉱物資源として期待されている。海底熱水鉱床の鉱物は海底に固着しているが、開発の段階では採掘や破砕等の工程を経て相当量が微粒子となるため、その回収技術が求められている。
一方、河口やその沖合の海域では、河川から流入した土砂等の微粒子が海底に堆積しているが、その中には廃棄されたプラスチック製品が破砕されて生じたマイクロプラスチック微粒子等も含まれており、近年ではその回収や処分が求められている。
【0003】
ここで、特許文献1には、超音波を照射して試薬と混合された原液中の石炭微粒子を浮選適性粒子に凝集する超音波照射設備と、同原液を浮選機に送ったときに油性泡とともに持去られる試薬の不足分を補給する試薬補給装置とを具えた石炭微粒子の浮選機が開示されている。
また、特許文献2には、微粒子含有ガスを気泡状化した液体中に吹き込むガス吹き込み工程と、ガス吹き込み工程において液体の気泡表面に捕捉された微粒子を気泡と共に回収する気泡回収工程と、気泡回収工程において回収された気泡の消泡を行う消泡工程とを有する微粒子分離方法が開示されている。
また、特許文献3には、懸濁液内に、マイクロバブル発生装置を用いて気泡径が1μmから100μmマイクロバブルを分散させ、マイクロバブル表面に懸濁物を付着させ、このマイクロバブルを分散させた懸濁液に超音波発信器から周波数が20kHzから1MHzの超音波を照射することによりマイクロバブル同士の凝集を促し、懸濁物の浮上分離を促進する液体中懸濁物の分離装置が開示されている。
また、特許文献4には、第1条件に基づく超音波を照射することにより、水に空気を気泡として発生させると共に、第1粒子及び第2粒子を含む混合粒子群を維持するステップと、第2条件に基づく超音波を照射することにより、混合粒子群の維持を停止するステップと、第3条件に基づく超音波を照射することにより、水に空気を気泡として発生させると共に、第1粒子を含む第1粒子群を超音波の第1腹位置において維持し、第2粒子を含む第2粒子群を超音波の第2腹位置において維持するステップとを含む粒子分離方法が開示されている。
また、特許文献5には、活性炭粒子及び親水性無機粒子の混合凝集体水系懸濁液から活性炭粒子を分離する方法であって、(1)カルボン酸塩を添加して活性炭を親水化処理する、親水性の活性炭粒子及び親水性無機粒子を分散させて、親水性の活性炭粒子及び親水性無機粒子の分散液を得る工程、(2)工程(1)で得られた分散液中の親水性の活性炭粒子に無機酸を添加して、疎水化させた疎水化活性炭粒子及び親水性無機粒子の混合懸濁液を得る工程、及び(3)工程(2)で得られた混合懸濁液に気泡を供給する工程を含み、工程(3)は浮選槽を有する浮選機中で気泡により、浮上分離して、活性炭を分離する工程であることが開示されている。
また、特許文献6には、海底に存在する熱水鉱床の鉱物資源を採鉱する海底に設けた採鉱機と、採鉱機で採鉱した鉱物資源を粉砕する海底に設けた粉砕手段と、粉砕手段で粉砕した鉱物資源から精鉱と脈石を選別する海底に設けた海底鉱物処理用カラム浮選機と、精鉱を海上の母船に揚鉱する精鉱揚鉱手段を備えた海底鉱物処理システムにおいて、海底鉱物処理用カラム浮選機は、脈石を海底に排出する排出口を有していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59-130550号公報
【特許文献2】特開2004-290761号公報
【特許文献3】特開2008-36585号公報
【特許文献4】特開2017-109145号公報
【特許文献5】特開2018-94477号公報
【特許文献6】特開2012-57350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、石炭微粒子の浮選を行うものであるが、海底熱水鉱床からの鉱物の回収や、海底に堆積した土砂からのマイクロプラスチック微粒子の回収又は処分などを行うものではない。
特許文献2は、ガス中に含まれる微粒子を分離回収するものであるが、海底熱水鉱床からの鉱物の回収や、海底に堆積した土砂からのマイクロプラスチック微粒子の回収又は処分などを行うものではない。
特許文献3は、排水処理を行うものであるが、海底熱水鉱床からの鉱物の回収や、海底に堆積した土砂からのマイクロプラスチック微粒子の回収又は処分などを行うものではない。
特許文献4は、溶存ガスを含む液体に含まれた第1粒子と第2粒子とを分離するものであるが、海底熱水鉱床からの鉱物の回収や、海底に堆積した土砂からのマイクロプラスチック微粒子の回収又は処分などを行うものではない。
特許文献5は、活性炭粒子を選別して回収するものであるが、海底熱水鉱床からの鉱物の回収や、海底に堆積した土砂からのマイクロプラスチック微粒子の回収又は処分などを行うものではない。
特許文献6は、海底熱水鉱床の鉱石微粒子の回収において、資源としての経済性を高めるため、微粒子の性状の違いを利用して、海底で微粒子を選別し、有用鉱物のみを回収するものであり、海底分離手段が、空気又はガスを海上あるいは地上に設けた送気手段から供給し、浮遊選鉱手段を用いて微粒子を選別することが記載されている。しかし、空気やガスは水と比較して密度が非常に小さく、圧縮性が大きいため、海底熱水鉱床が多く存在する水深数百メートル以深の海底まで気体として輸送するためには、送気手段として圧縮機等が必要となり、送気に要するコストが増加する可能性がある。また、浮遊選鉱手段では、送気手段から供給された空気又はガスを気泡発生ノズルから鉱石微粒子を含む水が充填されたカラム内に圧入し、気泡を発生させることが示されているが、鉱石微粒子により気泡発生ノズルが閉塞する可能性を考慮する必要がある。
そこで本発明は、低コストで、気泡発生ノズルを使用する場合に懸念されるノズル閉塞の問題も生じない、液体中に存在する微粒子の分離装置及び分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載に対応した液体中に存在する微粒子の分離装置においては、液体中に存在する微粒子を分離する装置であって、微粒子を含む液体を入れる処理槽と、ガスおよび/または空気を液体に溶解させるガス溶解手段と、ガス溶解手段から、ガスおよび/または空気を溶解した液体を処理槽内に注入する液体注入手段と、処理槽内に音響波を発生させる音響波発生手段と、音響波発生手段を制御する制御手段とを具備し、ガス溶解手段が陸上または船上もしくは水上に設置され、処理槽が水中に配置され、処理槽の上面または側面に微粒子を含む液体を供給するための供給口と、供給口よりも下方にガスおよび/または空気を溶解した液体を注入するための注入口と、処理槽の上方および/または下方に分離された微粒子を排出するための微粒子排出口とを有し、音響波発生手段が、処理槽の側面および/または下面に配置される、もしくは柱状の形状を有し処理槽内に配置されるものであり、また、ガスおよび/または空気を溶解した液体の注入に応じて、制御手段が音響波発生手段を制御し、音響波により処理槽内で生じた気泡に微粒子を付着させることにより、微粒子を分離することを特徴とする。
請求項1に記載の本発明によれば、ガス溶解手段において液体にガスや空気を溶解させ、そのガス等が溶解した液体を処理槽内に注入し、音響波の照射によって処理槽内で気泡を発生させるため、圧縮機等が不要であり、トータルコストを低減することができる。また、処理槽内における気泡の生成には気泡発生ノズルではなく音響波を用いるため、微粒子による気泡発生ノズルの閉塞を考慮する必要がない。また、供給口、注入口、微粒子排出口、及び音響波発生手段が処理槽に適切に配置されているため、効率良く微粒子を分離することができる。
【0007】
請求項2記載に対応した液体中に存在する微粒子の分離装置においては、液体中に存在する微粒子を分離する装置であって、微粒子を含む液体を入れる処理槽と、液化ガスの微細液滴を液体中に分散させる液滴分散手段と、液滴分散手段から、液化ガスの微細液滴を分散した液体を処理槽内に注入する液体注入手段と、処理槽内に音響波を発生させる音響波発生手段と、音響波発生手段を制御する制御手段とを具備し、液滴分散手段が陸上または船上もしくは水上に設置され、処理槽が水中に配置され、処理槽の上面または側面に微粒子を含む液体を供給するための供給口と、供給口よりも下方に液化ガスの微細液滴を分散した液体を注入するための注入口と、処理槽の上面および/または下面に分離された微粒子を排出するための微粒子排出口とを有し、音響波発生手段が、処理槽の側面および/または下面に配置される、もしくは柱状の形状を有し処理槽内に配置されるものであり、また、液化ガスの微細液滴を分散した液体の注入に応じて、制御手段が音響波発生手段を制御し、音響波により処理槽内で生じた気泡に微粒子を付着させることにより、微粒子を分離することを特徴とする。
請求項2に記載の本発明によれば、液滴分散手段において液体中に液化ガスの微細液滴を分散させ、その液化ガスの微細液滴を分散した液体を処理槽内に注入し、音響波の照射によって処理槽内で気泡を発生させるため、圧縮機等が不要であり、トータルコストを低減することができる。また、処理槽内における気泡の生成には気泡発生ノズルではなく音響波を用いるため、微粒子による気泡発生ノズルの閉塞を考慮する必要がない。また、供給口、注入口、微粒子排出口、及び音響波発生手段が処理槽に適切に配置されているため、効率良く微粒子を分離することができる。
【0008】
請求項3記載の本発明は、音響波発生手段が発生させる音響波が超音波であることを特徴とする。
請求項3に記載の本発明によれば、超音波による液体の圧力変動により、微粒子の分離に適した小さいサイズの気泡を発生させやすくなる。
【0009】
請求項4記載の本発明は、制御手段が、ガスおよび/または空気を溶解した液体の注入の開始または停止、若しくは、液化ガスの微細液滴を分散した液体の注入の開始または停止に応じて、音響波発生手段を作動または作動停止することにより、気泡の発生の有無を制御することを特徴とする。
請求項4に記載の本発明によれば、気泡を無駄なく効率よく生じさせることができる。
【0010】
請求項5記載の本発明は、制御手段が、ガスおよび/または空気を溶解した液体の注入量および/または注入流量、若しくは、液化ガスの微細液滴を分散した液体の注入量および/または注入流量に応じて、音響波発生手段の出力を調整することにより、気泡の発生量を制御することを特徴とする。
請求項5に記載の本発明によれば、微粒子の分離に必要な気泡を過不足なく生じさせやすくなる。
【0011】
請求項6記載の本発明は、ガス溶解手段、若しくは、液滴分散手段が加圧手段を有することを特徴とする。
請求項6に記載の本発明によれば、効率的にガスや空気を多く液体に溶解させることができる。
【0012】
請求項7記載の本発明は、処理槽に微粒子を含む液体を供給または供給停止する供給・停止手段をさらに具備し、制御手段が供給・停止手段を制御することを特徴とする。
請求項7に記載の本発明によれば、処理槽に供給する微粒子を含む液体の量やタイミングを調節して微粒子の分離を効率よく行うことができる。
【0013】
請求項8記載の本発明は、分離された微粒子を処理槽から排出または排出停止する排出・停止手段をさらに具備し、制御手段が排出・停止手段を制御することを特徴とする。
請求項8に記載の本発明によれば、分離した微粒子を適切なタイミングで処理槽から排出しやすくなる。
【0014】
請求項9記載の本発明は、排出・停止手段により処理槽から排出された微粒子を収容する収容手段をさらに具備することを特徴とする。
請求項9に記載の本発明によれば、排出された微粒子を一時的に収容手段に収容し、回収や処分を容易にすることができる。
【0015】
請求項10記載の本発明は、収容手段により収容された微粒子を、陸上または船上もしくは水上まで回収する回収手段をさらに具備することを特徴とする。
請求項10に記載の本発明によれば、収容手段に溜まった微粒子をまとめて処理でき、必要な微粒子を水中から回収できるため、回収効率が向上する。
【0016】
請求項11記載の本発明は、収容手段により収容された微粒子を、地下または水底下に埋設する埋設手段をさらに具備することを特徴とする。
請求項11に記載の本発明によれば、収容手段に溜まった微粒子をまとめて処理でき、不要な微粒子を埋設できるため、処理効率が向上する。
【0017】
請求項12記載の本発明は、処理槽内の液体の液位を調節する液位調節手段をさらに具備し、制御手段が液位調節手段を制御することを特徴とする。
請求項12に記載の本発明によれば、処理槽の液位を微粒子の分離に適した適切な範囲に保ちやすくなる。
【0018】
請求項13記載に対応した液体中に存在する微粒子の分離方法においては、液体中に存在する微粒子の分離装置を利用し、微粒子を液体から除去し、回収または処分することを特徴とする。
請求項13に記載の本発明によれば、水中で液体中に存在する微粒子を分離し、効率よく回収または処分することができる。
【0019】
請求項14記載に対応した液体中に存在する微粒子の分離方法においては、液体中に存在する微粒子の分離装置を利用し、微粒子同士の性状の違いに応じて微粒子を選別し、回収または処分することを特徴とする。
請求項14に記載の本発明によれば、水中で液体中に存在する微粒子を気泡への付着の有無によって選別して液体から分離し、例えば、気泡に付着した微粒子を回収し、気泡に付着しない微粒子を処分することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液体中に存在する微粒子の分離装置によれば、ガス溶解手段において液体にガスや空気を溶解させ、そのガス等が溶解した液体を処理槽内に注入し、音響波の照射によって処理槽内で気泡を発生させるため、圧縮機等が不要であり、トータルコストを低減することができる。また、処理槽内における気泡の生成には気泡発生ノズルではなく音響波を用いるため、微粒子による気泡発生ノズルの閉塞を考慮する必要がない。また、供給口、注入口、微粒子排出口、及び音響波発生手段が処理槽に適切に配置されているため、効率良く微粒子を分離することができる。
【0021】
また、本発明の液体中に存在する微粒子の分離装置によれば、液滴分散手段において液体中に液化ガスの微細液滴を分散させ、その液化ガスの微細液滴を分散した液体を処理槽内に注入し、音響波の照射によって処理槽内で気泡を発生させるため、圧縮機等が不要であり、トータルコストを低減することができる。また、処理槽内における気泡の生成には気泡発生ノズルではなく音響波を用いるため、微粒子による気泡発生ノズルの閉塞を考慮する必要がない。また、供給口、注入口、微粒子排出口、及び音響波発生手段が処理槽に適切に配置されているため、効率良く微粒子を分離することができる。
【0022】
また、音響波発生手段が発生させる音響波が超音波である場合には、超音波による液体の圧力変動により、微粒子の分離に適した小さいサイズの気泡を発生させやすくなる。
【0023】
また、制御手段が、ガスおよび/または空気を溶解した液体の注入の開始または停止、若しくは、液化ガスの微細液滴を分散した液体の注入の開始または停止に応じて、音響波発生手段を作動または作動停止することにより、気泡の発生の有無を制御する場合には、気泡を無駄なく効率よく生じさせることができる。
【0024】
また、制御手段が、ガスおよび/または空気を溶解した液体の注入量および/または注入流量、若しくは、液化ガスの微細液滴を分散した液体の注入量および/または注入流量に応じて、音響波発生手段の出力を調整することにより、気泡の発生量を制御する場合には、微粒子の分離に必要な気泡を過不足なく生じさせやすくなる。
【0025】
また、ガス溶解手段、若しくは、液滴分散手段が加圧手段を有する場合には、効率的にガスや空気を多く液体に溶解させることができる。
【0026】
また、処理槽に微粒子を含む液体を供給または供給停止する供給・停止手段をさらに具備し、制御手段が供給・停止手段を制御する場合には、処理槽に供給する微粒子を含む液体の量やタイミングを調節して微粒子の分離を効率よく行うことができる。
【0027】
また、分離された微粒子を処理槽から排出または排出停止する排出・停止手段をさらに具備し、制御手段が排出・停止手段を制御する場合には、分離した微粒子を適切なタイミングで処理槽から排出しやすくなる。
【0028】
また、排出・停止手段により処理槽から排出された微粒子を収容する収容手段をさらに具備する場合には、排出された微粒子を一時的に収容手段に収容し、回収や処分を容易にすることができる。
【0029】
また、収容手段により収容された微粒子を、陸上または船上もしくは水上まで回収する回収手段をさらに具備する場合には、収容手段に溜まった微粒子をまとめて処理でき、必要な微粒子を水中から回収できるため、回収効率が向上する。
【0030】
また、収容手段により収容された微粒子を、地下または水底下に埋設する埋設手段をさらに具備する場合には、収容手段に溜まった微粒子をまとめて処理でき、不要な微粒子を埋設できるため、処理効率が向上する。
【0031】
また、処理槽内の液体の液位を調節する液位調節手段をさらに具備し、制御手段が液位調節手段を制御する場合には、処理槽の液位を微粒子の分離に適した適切な範囲に保ちやすくなる。
【0032】
また、本発明の液体中に存在する微粒子の分離方法によれば、水中で液体中に存在する微粒子を分離し、効率よく回収または処分することができる。
【0033】
また、本発明の液体中に存在する微粒子の分離方法によれば、水中で液体中に存在する微粒子を気泡への付着の有無によって選別して液体から分離し、例えば、気泡に付着した微粒子を回収し、気泡に付着しない微粒子を処分することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の第一の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図
【
図2】本発明の第二の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図
【
図3】本発明の第三の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図
【
図4】同分離装置における制御回路を示すブロック図
【
図5】同分離装置の制御シーケンスを示すフローチャート
【
図6】本発明の第四の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の第一の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置及び分離方法について説明する。
図1は本実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図である。
分離装置は、液体中に存在する微粒子δを分離する装置であって、微粒子δを含む液体(以下、「微粒子含有液」ということがある。)を入れる処理槽10と、ガスを液体に溶解させるガス溶解手段20と、ガスを溶解した液体(以下、「溶解液」ということがある。)を処理槽10内に注入する液体注入手段30と、処理槽10内に音響波を発生させる音響波発生手段40と、溶解液の注入に応じて音響波発生手段40を制御する制御手段50と、処理槽10への微粒子含有液の供給と供給停止に用いる供給・停止手段60と、処理槽10からの微粒子δの排出と排出停止に用いる排出・停止手段70と、処理槽10から排出された微粒子δを収容する収容手段80と、収容手段80から微粒子δを回収する回収手段90と、微粒子δを埋設する埋設手段100と、処理槽10内の液体の液位を調節する液位調節手段110を備える。
【0036】
ガス溶解手段20は、撹拌槽21と、撹拌槽21にガス管22を通じて気泡γの成分となるガスを供給するガス供給源23と、液体を供給する加圧手段24を有する。撹拌槽21には、ガス濃度を計測するガス濃度センサ25と、圧力を計測する圧力センサ26が設けられている。ガス供給源23は、陸上、船上、または水上に設置されたガスボンベである。
ガス溶解手段20は、陸上、船上、または水上に設置され、撹拌槽21においてガスを水等の液体に溶解させる。なお、ガス溶解手段20においては、ガスに代えて空気を液体に溶解させることもでき、ガスと空気の両方を液体に溶解させることもできる。
また、ガス溶解手段20は、加圧手段24によって液体を供給しつつ撹拌槽21内を加圧することにより、効率的にガスを液体に多く溶解させることができる。加圧手段24は、ガス濃度センサ25、圧力センサ26、及び水位センサ(図示せず)の計測値を用いて制御される。
【0037】
撹拌槽21に貯留されている溶解液は、液体注入手段30によって処理槽10に注入される。液体注入手段30は、撹拌槽21に一端側が接続され他端側が処理槽10に接続された注入管31と、注入管31に設けられた液送ポンプ32を有する。
また、注入管31には、注入される溶解液の流量を計測する流量センサ33と、溶解液の流れや注入の開始、停止を制御する注入バルブ34が設けられている。液送ポンプ32は陸上、船上、または水上に設けられ、注入バルブ34は水底付近に設けられている。
【0038】
処理槽10は水中に配置される。処理槽10は、処理槽10の側面に配置された供給口11と、供給口11よりも下方に配置された注入口12と、微粒子排出口13を有する。なお、供給口11は処理槽10の上面に配置してもよい。また、処理槽10の側面、又は上面に配置された供給口11よりも下方に注入口12を配置することにより、処理槽10に供給された微粒子含有液に対して、下方から溶解液から発生する気泡γを作用させることができ、効率的に微粒子δを分離させることが可能となる。
微粒子排出口13は、処理槽10の上方に配置された上面側微粒子排出口13Aと、処理槽10の下方に配置された下面側微粒子排出口13Bがある。上面側微粒子排出口13Aは収容手段80の一つである上面側収容手段80Aにつながり、下面側微粒子排出口13Bはもう一つの収容手段80である下面側収容手段80Bにつながっている。この
図1の場合、上面側収容手段80Aに収容される微粒子δが回収対象の微粒子であり、下面側収容手段80Bに収容される微粒子δが処分対象の微粒子である。
また、処理槽10の上方に上面側微粒子排出口13Aを、また下方に下面側微粒子排出口13Bを配置することにより、処理槽10内で気泡γとともに浮上した微粒子δ、浮上しなかった微粒子δを分別して回収することが容易になる。
なお、微粒子排出口13は、必要に応じて上面側微粒子排出口13Aと下面側微粒子排出口13Bのどちらか一方のみを配置することもできる。
注入口12には、注入管31の他端側が接続されており、ガス溶解手段20から送出された溶解液は、注入口12から処理槽10内に注入される。
【0039】
音響波発生手段40は、処理槽10内に音響波を発生させる。音響波発生手段40は、処理槽10の下面に配置されている。なお、音響波発生手段40は、処理槽10の下面と側面の両方に配置すること、側面のみに配置すること、又は形状を柱状として処理槽10内に配置することもできる。
音響波発生手段40は、処理槽10内に溶解液を所定量注入した後に作動させる。処理槽10内の液層βに音響波が照射されると、音響波による圧力変動により溶解液にガスの気泡γが発生する。この気泡γが浮上し、気泡γ同士が合体することにより処理槽10の上部にガス層αが形成される。
【0040】
供給・停止手段60は、一端が供給口11に接続された供給管61と、配管の途中に設けられた供給ポンプ62を有する。供給管61の他端は、微粒子含有液を供給する液体供給源120に接続されている。液体供給源120から供給される微粒子含有液は、例えば、海底で採掘および粉砕された鉱物微粒子を含む海水や、海底に堆積した土砂に含まれるマイクロプラスチック微粒子を含む海水などである。
処理槽10の上部にガス層αが形成され、液層βに適切な量の気泡γが生じる状態となった後、供給・停止手段60を作動させて微粒子含有液を処理槽10内に供給する。この場合、微粒子含有液の供給と停止は、供給ポンプ62の駆動、停止により行われるが、適宜バルブ等を併用することもできる。
処理槽10内に供給された微粒子含有液に含まれている微粒子δは、気泡γに接触して付着することにより気泡γとともに浮上し、ガス層αと液層βの間に泡沫層εを形成する。泡沫層εとは、多数の細かい気泡γが、気泡としての形状を維持したまま層状に集積した状態である。これにより、微粒子δを微粒子含有液から分離することができる。
【0041】
音響波発生手段40が発生させる音響波は、超音波であることが好ましい。これにより、超音波による液体の圧力変動で微粒子δの分離に適した小さいサイズの気泡γを発生させやすくなる。音響波を超音波とする場合、音響波発生手段40は、例えば超音波発振器とする。
また、超音波の周波数帯は、20kHz~40kHz程度とすることが好ましい。これにより、微粒子δの分離に適したサイズの気泡γをより一層発生させやすくなる。
【0042】
液位調節手段110は、処理槽10内のガス層αと液層βとの境界面の高さ(液位)の調節に用いられる。液位調節手段110は、処理槽10の上面を覆うカバー111と、液位を計測する液位センサ112と、カバー111の上部に設けられたガス抜き用上部バルブ113と、カバー111の下部に設けられたガス抜き用下部バルブ114を有する。
カバー111は処理槽10の直上に位置する上面部111Aと、上面部111Aから延設し処理槽10の側壁よりも外方へ突き出した延設部111Bを有する。上面部111A及び延設部111Bと処理槽10との間には隙間が設けられており、この隙間を上面側微粒子排出口13Aとしている。
【0043】
泡沫層εが上面側微粒子排出口13Aからあふれることにより、泡沫層εに含まれる微粒子δは上面側微粒子排出口13Aから排出され、処理槽10の周辺部14へと流出する。周辺部14には、流出した微粒子δの受け皿となる板材14Aが処理槽10から周状に張り出している。液位調節手段110の機能は、単に液位を調節するだけでなく、この泡沫層εを適切に維持させ微粒子δをスムーズに排出させるためにも重要である。
周辺部14は、上面側収容手段80Aに上面側排出管71で接続されている。上面側収容手段80Aは、排出された微粒子δを所定量貯留する容器等である。排出管には、排出・停止手段70としてバルブ等で構成された上面側排出・停止手段70Aが設けられている。周辺部14に流出した泡沫層εに含まれる微粒子δは、上面側排出・停止手段70Aを経て上面側収容手段80Aに収容される。上面側排出・停止手段70Aは、微粒子δを含んだ泡沫層εを排出するときには開け、排出しないときには閉じる、液位を調節するときや処理槽10使用しないときは閉じるなど様々な場面で機能できる。
回収手段90は、上面側収容手段80Aに一端側が接続された回収管91と、回収管91の他端側に設けられた回収ポンプ92と回収容器93を有する。回収ポンプ92と回収容器93は、陸上、船上、または水上に設置されている。回収手段90は、上面側収容手段80Aに溜まった微粒子δを回収する。
このように、周辺部14に流出した泡沫層εに含まれる微粒子δは、上面側排出・停止手段70Aを経て上面側収容手段80Aに一時的に収容されたのち、回収手段90により陸上等に回収される。上面側収容手段80Aを設けることで、微粒子δを一時的に収容し、回収を容易にすることができる。また、回収手段90を設けることで、上面側収容手段80Aに溜まった必要な微粒子δを水中からまとめて陸上、船上、または水上に回収できるため、微粒子δの回収効率が向上する。
【0044】
一方、表面の性状等の違いにより気泡γに付着しない微粒子δは、処理槽10内を沈降し、処理槽10の下面に設けられた下面側微粒子排出口13Bから排出される。
下面側微粒子排出口13Bと下面側収容手段80Bとの間の管路にはバルブ等の排出・停止手段70として下面側排出・停止手段70Bが設けられている。下面側排出・停止手段70Bは、処理槽10に注入された溶解液が直ちに流れ去らないように微粒子δの分離を行っている最中は、下方に流れる液体の流量を制限したり止めたりし、バッチ的に開けて管路に溜まった微粒子δを下面側収容手段80Bに収容させることもできる。
下面側微粒子排出口13Bから排出された微粒子δは、下面側排出・停止手段70Bを経て下面側収容手段80Bに収容される。下面側収容手段80Bには、収容された微粒子δの量を測定するための下面側微粒子量測定センサ81を設けている。下面側微粒子量測定センサ81は、例えば荷重センサである。
埋設手段100は、下面側収容手段80Bに一端側が接続され地下または水底下に至る埋設管101と、埋設管101の他端側に設けられた埋設ポンプ102を有する。埋設手段100は、下面側収容手段80Bに溜まった微粒子δを、地下または水底下の空間に移送する。
このように、下面側微粒子排出口13Bから排出された微粒子δは、下面側排出・停止手段70Bを経て下面側収容手段80Bに一時的に収容されたのち、埋設手段100により地下または水底下の空間に埋設される。下面側収容手段80Bを設けることで、微粒子δを一時的に収容し、埋設を容易にすることができる。また、埋設手段100を設けることで、下面側収容手段80Bに溜まった微粒子δをまとめて埋設でき、不要な微粒子を埋設できるため、微粒子δの処理効率が向上する。
また、処理槽10に上面側微粒子排出口13Aと下面側微粒子排出口13Bという上下二箇所の微粒子排出口13を設けることで、気泡γにより微粒子δを選別し、気泡γに付着する微粒子δを回収し、気泡γに付着しない微粒子δを埋設等して処分することができる。なお、微粒子排出口13を処理槽10の上下どちらか一箇所のみに設け、分離された微粒子δの全量を回収または処分することもできる。また、気泡γに付着する微粒子δも付着しない微粒子δも回収すること、また処分することもできる。
【0045】
音響波発生手段40や液位調節手段110等を制御する制御手段50は、耐圧容器130に収容され、水中に設置されている。制御手段50には、流量センサ33や液位センサ112の計測データが入力される。なお、耐圧容器130を拡大し制御手段50の収容のみならず、処理槽10、上面側収容手段80A、下面側収容手段80B、また埋設手段100等水中に存在する機能部を任意に組み合わせた状態で収容することもできる。
制御手段50は、ガス溶解手段20から処理槽10への溶解液の注入の開始または停止に応じて、音響波発生手段40を作動または作動停止することにより、気泡γの発生の有無を制御する。この場合において制御手段50は、流量センサ33から取得した流量データにより計算した処理槽10内への溶解液の注入量に基づいて、音響波発生手段40の作動開始と停止を制御する。これにより、気泡γを無駄なく効率よく生じさせることができる。溶解液の注入量は、流量センサ33から取得した流量データを時間で積算した値や、撹拌槽21に設けた液位センサ112の液位データ等により検出する。なお、処理槽10内への溶解液の注入量を計算する場合は、計算上、新たに処理槽10内に注入された溶解液によって、それ以前に処理槽10内に存在していた液体が置き換えられるタイミング、すなわち処理槽10の液体が注入された液体で置換されるタイミングで音響波発生手段40を作動するのが最も効率的と考えられる。
また、制御手段50は、溶解液の注入量または注入流量の少なくとも一方に応じて、音響波発生手段40の出力を調整することにより、気泡γの発生量を制御する。これにより、微粒子δの分離に必要な気泡γを過不足なく生じさせやすくなる。なお、溶解液の注入流量は、流量センサ33から流量データを取得することにより検出でき、気泡発生量は、液位センサ112の信号から推定することができる。
【0046】
また、制御手段50は、液位調節手段110のガス抜き用上部バルブ113及びガス抜き用下部バルブ114を制御して処理槽10の液位を調節する。これにより、処理槽10の液位を微粒子δの分離に適した適切な範囲に保ちやすくなる。なお、処理槽10の液位は、制御手段50が、液体注入手段30、供給・停止手段60、または排出・停止手段70の作動開始と停止を制御することによっても調節できる。
【0047】
また、制御手段50は、下面側微粒子量測定センサ81の計測データから下面側収容手段80B内の微粒子量を算出し、所定量に達した段階で埋設手段100を稼働させる制御を実施する。これにより、効率よく微粒子δを埋設することができる。
【0048】
また、制御手段50が供給・停止手段60を制御することで、処理槽10に供給する微粒子含有液の量やタイミングを調節して微粒子δの分離を効率よく行うことができる。また、例えば、供給・停止手段60の作動時に排出・停止手段70が有するバルブを開放し、供給・停止手段60の停止時に当該バルブを閉止させるなど、制御手段50が排出・停止手段70を制御することで、分離した微粒子δを適切なタイミングで処理槽10から排出しやすくなる。
なお、制御手段50は、注入バルブ34等の制御も行う。
【0049】
処理槽10が水深の深い水底に設置されている場合、ガスや空気を気体のまま処理槽10に圧入しようとすると、水深に相当する圧力まで気体を加圧するための圧縮機等が必要になる。これに対して本発明の処理装置は、陸上等に設置したガス溶解手段20においてあらかじめ液体にガスや空気を溶解させ、その溶解液を処理槽10内に注入し、音響波の照射によって処理槽10内で気泡γを発生させるため、圧縮機等が不要であり、トータルコストを低減することができる。
また、本発明の処理装置は、処理槽10内における気泡γの生成には気泡発生ノズルではなく超音波等の音響波を用いるため、微粒子δによる気泡発生ノズルの閉塞を考慮する必要がない。また、供給口11、注入口12、微粒子排出口13、及び音響波発生手段40が処理槽10に適切に配置されているため、効率良く微粒子δを分離することができる。
【0050】
図2は本発明の第二の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図である。なお、上記した第一の実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
第一の実施形態では、制御手段50を耐圧容器130に収納して水中に設置し、陸上側から独立した制御系を構築しているが、本実施形態では、制御手段50を陸上側に設置する。本実施形態は、制御手段50を陸上側に設置していることを除き、装置の構成、配置は第一の実施形態と同様である。
【0051】
図3は本発明の第三の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図である。なお、上記した第一又は第二の実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態は、制御手段50を水中側または陸上側に設置し、水底側の機器だけでなく陸上に設置された液体注入手段30や回収手段90の制御をも行うものである。なお、制御手段50は水中に設置する場合は耐圧容器130に収容する。
また、本実施形態では、上面側微粒子排出口13Aから排出された微粒子δを収容する下面側収容手段80Bに、収容された微粒子δの量を測定するための上面側微粒子量測定センサ82が設けられている。上面側微粒子量測定センサ82は、例えば荷重センサである。制御手段50は、上面側微粒子量測定センサ82の計測データから上面側収容手段80A内の微粒子量を算出し、所定量に達した段階で回収手段90を稼働させる等の制御を実施する。
また、制御手段50は、ガス溶解手段20のガス濃度センサ25と圧力センサ26の計測データに基づき、液体注入手段30による注入の開始及び停止を制御する。
また、制御手段50は、液体注入手段30から入力された作動信号に基づいて、音響波発生手段40の作動開始と停止を制御することもできる。
【0052】
図4は
図3に示す第三の実施形態の分離装置における制御回路を示すブロック図、
図5はその分離装置の制御シーケンスを示すフローチャートである。
液体中に存在する微粒子δの分離装置が処理を開始すると、制御手段50は、ガス溶解手段20を作動させる(ステップS1)。ステップS1において、ガス溶解手段20は、撹拌槽21内の液体にガスを供給して溶解させる。
次に、制御手段50は、加圧手段24を作動させる(ステップS2)。ステップ2において撹拌槽21内を加圧することにより、液体にガスを効率的に溶解させることができる。
次に、制御手段50は、ガス濃度センサ25及び圧力センサ26から、撹拌槽21内のガス濃度と圧力を取得し、充分な量のガスが液体に溶解しているか否かを判断する(ステップS3)。
制御手段50は、ステップS3において、充分な量のガスが液体に溶解していない(NO)と判断した場合は、ガス溶解手段20による液体へのガスの溶解を継続させる。一方、充分な量のガスが液体に溶解している(YES)と判断した場合は、液体注入手段30を作動させる(ステップS4)。制御手段50は、液体注入手段30による溶解液の注入量に応じてガス溶解手段20や加圧手段24を制御し、注入により減少した溶解液の量を補う。溶解液の注入量は、上記したように流量センサ33から取得した流量データを時間で積算すること等により検出できる。
【0053】
ステップS4により、ガスが溶解した液体が処理槽10に注入される。処理槽10に注入される液体の流量は流量センサ33によって計測され、その計測データは制御手段50に送られる。制御手段50は流量センサ33の計測データに基づいて注入バルブ34の開度を調節する。
制御手段50は、流量センサ33から取得した流量データ等に基づき処理槽10に溶解液が所定量満たされたと判断すると、音響波発生手段40を作動させる(ステップS5)。音響波発生手段40から照射された音響波により処理槽10内の液体に気泡γが生じる。処理槽10の液位は液位センサ112によって計測され、その計測データは制御手段50に送られる。
次に、制御手段50は、処理槽10の上部にガス層αが形成されているか否かを、液位センサ112の測定結果に基づいて判断する(ステップS6)。
制御手段50は、ステップS6において、処理槽10の上部にガス層αが形成されていないと判断した場合は、音響波発生手段40から処理槽10内の液体に向けた音響波の照射を継続する。一方、処理槽10の上部にガス層αが形成されていると判断した場合は、処理槽10内の液位を調節する(ステップS7)。液位の調節は、ガス抜き用上部バルブ113やガス抜き用下部バルブ114の開度等の制御により行われる。
また、制御手段50は、液位センサ112が計測した液位に基づいて、音響波発生手段40の出力を調節し(ステップS8)、これにより、液層β中の気泡発生量を調節する(ステップS9)。
【0054】
気泡発生量を調節した後、制御手段50は、供給・停止手段60を作動させ、処理槽10に微粒子含有液を供給する(ステップS10)。微粒子含有液に含まれる微粒子δのうち、気泡γに付着した微粒子δは気泡γとともに浮上し、ガス層αと液層βの間に形成された泡沫層εに集まる。気泡γに付着しない微粒子δは沈降する。
次に、制御手段50は、上面側排出・停止手段70Aを制御して上面側収容手段80Aに周辺部14に流出した微粒子δを上面側収容手段80Aに収容するとともに(ステップS11)、下面側排出・停止手段70Bを制御して沈降した微粒子δを下面側収容手段80Bに収容する(ステップS12)。上面側収容手段80Aに収容された微粒子δの量は上面側微粒子量測定センサ82によって計測され、下面側収容手段80Bに収容された微粒子δの量は下面側微粒子量測定センサ81によって計測され、それぞれの計測データは制御手段50に送られる。
【0055】
ステップS11の後、制御手段50は、上面側収容手段80Aに収容された微粒子δの量が所定量に達した段階で回収手段90を作動させる(ステップS13)。これにより、上面側微粒子排出口13Aから流出した微粒子δは陸上等に回収される。
ステップS13の後、制御手段50は、回収手段90を停止し(ステップS14)、供給・停止手段60を停止し(ステップS15)、音響波発生手段40を停止し(ステップS16)、液体注入手段30を停止し(ステップS17)、ガス溶解手段20及び加圧手段24を停止する(ステップS18)。
【0056】
また、ステップS12の後、制御手段50は、下面側収容手段80Bに収容された微粒子δの量が所定量に達した段階で埋設手段100を作動させる(ステップS19)。これにより、下面側微粒子排出口13Bから排出された微粒子δは地下または水底下に埋設される。
ステップS19の後、制御手段50は、埋設手段100を停止させる(ステップS20)。
なお、これらの各ステップの実施の順番は、各手段の性能、機能、またおかれた状況等に応じ、液体中に存在する微粒子δの分離に支障を来さない範囲で適宜、同時にまた入れ変えて実施ができる。
【0057】
このように、本発明の液体中に存在する微粒子の分離装置及び分離方法によれば、水中で液体中に存在する微粒子δを分離し、効率よく回収または埋設等の処分をすることができる。また、水中で液体中に存在する微粒子δを気泡γへの付着の有無によって選別して液体から分離し、例えば、気泡γに付着した微粒子δを回収し、気泡γに付着しない微粒子δを処分することができる。
【0058】
次に、本発明の第四の実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置及び分離方法について説明する。なお、上記した第一から第三の実施形態と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図6は本実施形態による液体中に存在する微粒子の分離装置の概念図である。
分離装置は、液体中に存在する微粒子δを分離する装置であって、微粒子δを含む液体(微粒子含有液)を入れる処理槽10と、液化ガスの微細液滴を液体中に分散させる液滴分散手段20Aと、液化ガスの微細液滴を分散した液体(以下、「分散液」ということがある。)を処理槽10内に注入する液体注入手段30と、処理槽10内に音響波を発生させる音響波発生手段40と、分散液の注入に応じて音響波発生手段40を制御する制御手段50と、処理槽10への微粒子含有液の供給と供給停止に用いる供給・停止手段60と、処理槽10からの微粒子δの排出と排出停止に用いる排出・停止手段70と、処理槽10から排出された微粒子δを収容する収容手段80と、収容手段80から微粒子δを回収する回収手段90と、微粒子δを埋設する埋設手段100と、処理槽10内の液体の液位を調節する液位調節手段110を備える。
【0059】
液滴分散手段20Aは、撹拌槽21と、撹拌槽21にガス管22を通じて気泡γの成分となる液化ガスを供給する液化ガス供給源23Aと、液体を供給する加圧手段24を有する。撹拌槽21には、圧力を計測する圧力センサ26と、濁度を計測する濁度センサ27Aが設けられている。本実施形態において、液化ガス供給源23Aから撹拌槽21へ供給する液化ガスとしては、液化炭酸ガス等が考えられる。
液滴分散手段20Aは、水等の液体が貯留されている撹拌槽21において、例えば細孔を有するノズルから液化ガスを液体中に噴出することにより、液化ガスを微細な液滴として液体中に分散させる。
このとき、液滴分散手段20Aは、加圧手段24によって液体を供給しつつ撹拌槽21内を加圧することにより、効率的に液化ガスの微細液滴を液体中に分散させることができる。加圧手段24は、圧力センサ26、濁度センサ27A、及び水位センサ(図示せず)の計測値を用いて制御される。
【0060】
微細液滴が分散している液体である分散液は、撹拌槽21から液体注入手段30によって処理槽10に注入される。注入される分散液の流量は、流量センサ33によって計測される。
音響波発生手段40は、処理槽10内に分散液を所定量注入した後に作動させる。処理槽10内の液層βに音響波が照射されると、音響波による圧力変動により分散液にガスの気泡γが発生する。この気泡γが浮上し、気泡γ同士が合体することにより処理槽10の上部にガス層αが形成される。
処理槽10の上部にガス層αが形成され、液層βに適切な量の気泡γが生じる状態となった後、供給・停止手段60を作動させて微粒子含有液を処理槽10内に供給する。
処理槽10内に供給された微粒子含有液に含まれている微粒子δは、気泡γに接触して付着することにより気泡γとともに浮上し、ガス層αと液層βの間に泡沫層εを形成する。泡沫層εとは、多数の細かい気泡γが、気泡としての形状を維持したまま層状に集積した状態である。これにより、微粒子δを微粒子含有液から分離することができる。
【0061】
泡沫層εが上面側微粒子排出口13Aからあふれることにより、泡沫層εに含まれる微粒子δは上面側微粒子排出口13Aから排出され、処理槽10の周辺部14へと流出する。
周辺部14は上面側収容手段80Aに上面側排出管71で接続されており、回収手段90は上面側収容手段80Aに溜まった微粒子δを回収する。
一方、表面の性状等の違いにより気泡γに付着しない微粒子δは、処理槽10内を沈降し、処理槽10の下面に設けられた下面側微粒子排出口13Bから排出される。
下面側微粒子排出口13Bから排出された微粒子δは、下面側排出・停止手段70Bを経て下面側収容手段80Bに収容される。
埋設手段100は、下面側収容手段80Bに溜まった微粒子δを、地下または水底下の空間に移送する。
【0062】
制御手段50は、気泡γの発生有無の制御や気泡γの発生量の制御等を行う。
なお、本実施形態では第一の実施形態と同様に制御手段50を耐圧容器130に収容して水中に設置しているが、第二の実施形態と同様に制御手段50を陸上側に設置したり、第三の実施形態と同様に水底側の機器と陸上側の機器の両方を制御したりすることもできる。また、第三の実施形態と同様に、上面側微粒子量測定センサ82を設けてその計測データに基づく制御を制御手段50に行わせること、圧力センサ26及び濁度センサ27Aの計測データに基づく制御を制御手段50に行わせること、液体注入手段30からの作動信号に基づく制御を制御手段50に行わせること等もできる。
【0063】
このように本実施形態による分離装置は、液化ガスの微細液滴を液体中に分散させる液滴分散手段20Aを備えること、液体注入手段30は分散液を処理槽10内に注入すること、及び処理槽10では分散液に超音波を照射すること以外は基本的に第一から第三の実施形態と同様であり、溶解液を分散液に置き換えて
図5のステップS1からステップS20を実行することにより、微粒子含有液から微粒子を効率良く分離することができる。
なお、ガスや空気を液体に溶解させるガス溶解手段20と、液化ガスの微細液滴を液体中に分散させる液滴分散手段20Aとを併用して用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、海底熱水鉱床等の海底鉱物資源の開発において、海底で採掘・粉砕した鉱物微粒子から有用金属鉱物に富む微粒子を選別し、回収すること等に適用できる。
また、本発明は、海域、内湾、湖沼等の水中に浮遊または沈殿している微粒子を分離・回収することによる水質改善に適用できる。特に、水よりも気泡に対する親和性の高い微粒子(マイクロプラスチック等)の分離に適する。
【符号の説明】
【0065】
10 処理槽
11 供給口
12 注入口
13 微粒子排出口
14 周辺部
20 ガス溶解手段
20A 液滴分散手段
24 加圧手段
30 液体注入手段
40 音響波発生手段
50 制御手段
60 供給・停止手段
70 排出・停止手段
80 収容手段
90 回収手段
100 埋設手段
110 液位調節手段
γ 気泡
δ 微粒子