(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159060
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60R 16/04 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
B60R16/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022048564
(22)【出願日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2021061261
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】中島 航
(57)【要約】
【課題】エンジン用マイコンと、バッテリと、該バッテリからエンジン用マイコンに電力を供給するための電源ケーブルとを備え、製造コストを安く抑え且つ全体をコンパクトに形成することも可能な作業車両を提供することを課題とする。
【解決手段】操縦部及び該操縦部の前方に形成されたエンジンルームに配置されたエンジンを有する走行機体と、エンジン用マイコンと、バッテリと、バッテリからエンジン用マイコンに電力を供給可能なように該エンジン用マイコンとバッテリとを電気的に接続する電源ケーブルとを備え、エンジン用マイコンは、操縦部に設置されたステアリングコラムの上部側に配置され、バッテリは、操縦部の左右一方の側部の下側に配置され、電源ケーブルは、走行機体の側部におけるバッテリを配置した箇所とステアリングコラムの上部側との間に配線された。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを制御するか、或いは該エンジンの状態を検知するマイコンが搭載された作業車両であって、
オペレータが乗り込む操縦部及び該操縦部の前方に形成されたエンジンルームに配置されたエンジンを有する走行機体と、
前記マイコンであるエンジン用マイコンと、
バッテリと、
前記バッテリから前記エンジン用マイコンに電力を供給可能なように該エンジン用マイコンと前記バッテリとを電気的に接続する電源ケーブルとを備え、
前記エンジン用マイコンは、前記操縦部に設置されたステアリングコラムの上部側に配置され、
前記バッテリは、前記操縦部の左右一方の側部の下側に配置され、
前記電源ケーブルは、前記走行機体の側部における前記バッテリを配置した箇所と前記ステアリングコラムの上部側との間に配線された
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記エンジン用マイコンとは別に設けられ且つ無線通信手段を有するマイコンである通信マイコンと、
前記ステアリングコラムにおける上部側に配置された表示パネルとを備え、
前記表示パネルには、前記操縦部側にいるオペレータから目視可能なモニタ又はメータが設置され、
前記エンジン用マイコン及び前記通信マイコンは前記表示パネルの前方側に配置され、
前記通信マイコンは、前記エンジン用マイコンよりも操縦部側に近い位置である前記ステアリングコラムの側方に配置された
請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記バッテリを支える支持体と、
前記支持体に支持された前記バッテリの少なくとも一部をカバーするカバー体とを備え、
前記支持体は、前記走行機体側に固定される被固定部と、該被固定部から左右外側に延出され且つ前記バッテリを載置する載置部とを一体的に有し、
前記被固定部の前端部又は後端部には、前記支持体を前記走行機体側に固定した状態のままで、前記載置部に載置された前記バッテリに接続された前記電源ケーブルを前記走行機体側に配線することが可能なように、開放された切欠き状の形状に成形された配線部が設けられた
請求項1又は2の何れかに記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを制御するか、或いは該エンジンの状態を検知するマイコンが搭載された作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
オペレータが乗り込む操縦部及び該操縦部の前方に形成されたエンジンルームに配置されたエンジンを有する走行機体と、エンジン用マイコンと、バッテリと、バッテリからエンジン用マイコンに電力を供給可能なように該エンジン用マイコンとバッテリとを電気的に接続する電源ケーブルとを備えたトラクタ(作業車両)が従来公知である。
【0003】
このようなトラクタは、エンジン用マイコンによって、エンジンの電子的な制御を行うことや、エンジンの詳細な状態を把握することが可能になるメリットがある一方で、エンジン用マイコン及びバッテリをどのように配置し、電源ケーブルをどのように配線するのかについては、製造コストを安く抑えるという観点や、全体をコンパクトに形成するという観点から問題になる。
【0004】
例えば、バッテリを走行機体の側部側に配置されたもの(例えば、特許文献1を参照)や、エンジン用マイコンをステアリングコラム側に配置したもの(例えば、特許文献2を参照。)が公知になっているが、エンジン用マイコン及びバッテリの配置と、電源ケーブルの配線との両方を明確に示した従来技術は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6573081号公報
【特許文献2】特開2011-246061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エンジン用マイコンと、バッテリと、該バッテリからエンジン用マイコンに電力を供給するための電源ケーブルとを備え、製造コストを安く抑え且つ全体をコンパクトに形成することも可能な作業車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、エンジンを制御するか、或いは該エンジンの状態を検知するマイコンが搭載された作業車両であって、オペレータが乗り込む操縦部及び該操縦部の前方に形成されたエンジンルームに配置されたエンジンを有する走行機体と、前記マイコンであるエンジン用マイコンと、バッテリと、前記バッテリから前記エンジン用マイコンに電力を供給可能なように該エンジン用マイコンと前記バッテリとを電気的に接続する電源ケーブルとを備え、前記エンジン用マイコンは、前記操縦部に設置されたステアリングコラムの上部側に配置され、前記バッテリは、前記操縦部の左右一方の側部の下側に配置され、前記電源ケーブルは、前記走行機体の側部における前記バッテリを配置した箇所と前記ステアリングコラムの上部側との間に配線されたことを特徴とする。
【0008】
前記エンジン用マイコンとは別に設けられ且つ無線通信手段を有するマイコンである通信マイコンと、前記ステアリングコラムにおける上部側に配置された表示パネルとを備え、前記表示パネルには、前記操縦部にいるオペレータから目視可能なようにモニタ又はメータが設置され、前記エンジン用マイコン及び前記通信マイコンは前記表示パネルの前方側に配置され、前記通信マイコンは、前記エンジン用マイコンよりも操縦部側に近い位置である前記ステアリングコラムの側方に配置されたものとしてもよい。
【0009】
前記バッテリを支える支持体と、前記支持体に支持された前記バッテリの少なくとも一部をカバーするカバー体とを備え、前記支持体は、前記走行機体側に固定される被固定部と、該被固定部から左右外側に延出され且つ前記バッテリを載置する載置部とを一体的に有し、前記被固定部の前端部又は後端部には、前記支持体を前記走行機体側に固定した状態のままで、前記載置部に載置された前記バッテリに接続された前記電源ケーブルを前記走行機体側に配線することが可能なように、開放された切欠き状の形状に成形された配線部が設けられたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
エンジン用マイコンを、ステアリングコラムの上部側に配置し、バッテリを、操縦部の左右一方の側部の下側に配置し、電源ケーブルを、走行機体の側部におけるバッテリを配置した箇所とステアリングコラムの上部側との間に配線したので、バッテリをエンジンルームに配置する場合に比べて、該バッテリの分だけ全長をコンパックに形成できるとともに、短い長さの電源ケーブルによってバッテリとエンジン用マイコンとを電気的に接続することが可能になるため、製造コストを安く抑えることも可能になる。
【0011】
前記エンジン用マイコンとは別に設けられ且つ無線通信手段を有するマイコンである通信マイコンと、前記ステアリングコラムにおける上部側に配置された表示パネルとを備え、前記表示パネルには、前記操縦部にいるオペレータから目視可能なようにモニタ又はメータが設置され、前記エンジン用マイコン及び前記通信マイコンは前記表示パネルの前方側に配置され、前記通信マイコンは、前記エンジン用マイコンよりも操縦部側に近い位置である前記ステアリングコラムの側方に配置されたものによれば、通信マイコンもエンジン用マイコン側に集中的に配置しているため、全体をコンパクトに形成可能であるとともに、他のマイコン比べ、通信マイコンを操縦部にいるオペレータから近い位置に設けたので、オペレータが通信マイコンと無線通信可能な情報端末を保持している場合、この無線通信を円滑に行うことが可能になる。
【0012】
前記バッテリを支える支持体と、前記支持体に支持された前記バッテリの少なくとも一部をカバーするカバー体とを備え、前記支持体は、前記走行機体側に固定される被固定部と、該被固定部から左右外側に延出され且つ前記バッテリを載置する載置部とを一体的に有し、前記被固定部の前端部又は後端部には、前記支持体を前記走行機体側に固定した状態のままで、前記載置部に載置された前記バッテリに接続された前記電源ケーブルを前記走行機体側に配線することが可能なように、開放された切欠き状の形状に成形された配線部が設けられたものによれば、支持体を走行機体側に固定した状態のままで、該支持体に載置されたバッテリに接続する電源ケーブルの着脱が可能になり、メンテナンス性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の作業車両を適用した農業用トラクタの側面図である。
【
図3】走行機体のフレーム側の要部の構成を示す斜視図である。
【
図4】カバー体によってバッテリを覆った状態を示す斜視図である。
【
図5】カバー体を取り外してバッテリを露出させた状態を示す斜視図である。
【
図6】バッテリの支持構造の要部構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の作業車両を適用した農業用トラクタの側面図である。作業車両の一種であるトラクタは、4つの車輪(走行部)1,2を有する走行機体3と、該走行機体3の後方に昇降リンク4を介して昇降可能且つ着脱可能に連結されるロータリ耕耘機等の作業機(図示しない)とを備えている。
【0015】
図2は走行機体の要部の構成を示す斜視図であり、
図3は走行機体のフレーム側の要部の構成を示す斜視図である。
図1乃至
図3に示す通り、走行機体3は、前側の左右一対の車輪である前輪1と後側の左右一対の車輪である後輪2とによって支持された前後方向の機体フレーム3aと、該機体フレーム3aの前寄り部分に支持されたエンジン6と、該エンジン6の後方に配置され且つオペレータが乗り込む操縦部7と、該エンジン6の左右の夫々の側方を覆う一対のサイドカバー8と、該エンジン6の前方を覆うフロントグリル9と、エンジン6の上方を覆うボンネット11と、エンジン6側の空間であるエンジンルーム12と操縦部7の空間とを隔てるように機体フレーム3aから真上に向かって立ち上がった隔壁13とを有している。
【0016】
ちなみに、エンジンルーム12は、左右のサイドカバー8と、フロントグリル9と、隔壁13とによって四方が囲繞され、その上方がボンネット11によって開閉自在にカバーされている。
【0017】
機体フレーム3aは、エンジン6を図示しない防振部材を介して支持するエンジン支持部14と、エンジン6から後方に延出されたクラッチハウジング16と、該クラッチハウジング16から後方に延出されたミッションケース17とを有している。
【0018】
ちなみに、ミッションケース17の内部には、図示しないトランスミッションが設けられている。クラッチハウジング16の内部には、エンジン6からトランスミッションへの動力伝動を断続する主クラッチが設けられている。トランスミッションの動力は、無段階変速可能なHSTを介して車輪1,2や作業機に伝動される他、作業機に伝動される。
【0019】
なお、HSTは、上述の例では、ミッションケース17の伝動経路の下流側に配置されているが、これに限定されるものではなく、ミッションケース17の伝動経路の上流側にHSTを設けてもよい。
【0020】
操縦部7は、オペレータが着座するシート18と、該シート18の前方斜め下方の位置に配置され且つその上面が床面になる床材19と、シート18に着材したオペレータの正面側に位置する前側パネル部21と、シート18の側方に配置され且つ前後方向の揺動によってトランスミッションを介した走行変速(具体的には副変速)を行う変速レバー22とを備えている。
【0021】
前側パネル部21は、隔壁部13から後方に膨出した樹脂製のカバー体である。前側パネル部21の上部側にはステアリング23が設けられ、前側パネル部21におけるステアリング23の前方且つ近傍に配置された設置部21aの図示しない凹部には、表示パネル(図示しない)が嵌め込み固定されている。表示パネルは、その表示面が後方斜め上方に向けられている。表示パネルの表示面には、シート18に着座したオペレータから目視可能なメータ及びモニタの一方又は両方が設けられている。
【0022】
この前側パネル部21と、隔壁部13との間には、ステアリング23の回転軸であるステアリングコラム24の一部を含めて各種の部材を収容する空間である収容スペース26が形成されている。
【0023】
ちなみに、このステアリングコラム24は、機体フレーム3a側から立設して固定されたステアリング支持フレーム25に取り付け支持されている。ステアリングコラム24は、後方斜め上方に向けられた姿勢で自身の軸回りに回転可能に支持され、その上端部以外の部分が収容スペース26に収容されている。ステアリングコラム24の上端部は、前側パネル部21から上方に突出しており、当該部分にはステアリング23が装着されている。
【0024】
また、前側パネル部21の下寄り部分における左右の夫々の部分は、その上部寄り部分及びその下部寄りの左右中央部分に対して、前方に窪んだ形状に成形され、これによって、前側パネル部21の下寄り部分の左右の両側部分には、操作スペース27が形成される。左右一方(左側)の操作スペース27には、シート18に着座したオペレータが踏み込み操作可能な左右一対のブレーキペダル28,28が設けられている。他方の操作スペース27には、シート18に着座したオペレータが踏み込み操作可能な左右一対の変速ペダル29,29が設けられている。
【0025】
左側のブレーキペダル28を踏み込み操作した場合には、左側の車輪1,2に制動力が作用する一方で、右側のブレーキペダル28を踏み込み操作した場合には、右側の車輪1,2に制動力が作用する。ちなみに、各ブレーキペダル28は踏み込み解除方向に弾性的に付勢されており、オペレータは、この付勢力に抗して、各ブレーキペダル28を踏み込み操作する。また、左右のブレーキペダル28,28は、基本的に一体的に動作するように、互いに連結固定され、この固定を解除している状態時にのみ、左右のブレーキペダル28,28を個別に操作可能である。
【0026】
各変速ペダル29は踏み込み解除方向に弾性的に常時付勢され、左右一方の変速ペダル29を付勢力に抗して踏み込み操作した場合、その操作量に応じて走行機体3が前進側に増速されるように、前記HSTが無段階で変速され、他方の変速ペダル29を付勢力に抗して踏み込み操作した場合、その操作量に応じて走行機体3が後進側に増速されるように、前記HSTが無段階で変速される。すなわち、変速ペダル29は、HSTを介して、走行の無段階の変速(具体的には主変速)を行う操作具である。
【0027】
ちなみに、左右一対の変速ペダル29,29の一方又は両方側には、踏み込み操作の検知によって走行機体3の前進又は後進を検出する検出スイッチが設けられている。この検出スイッチは、検出アームを有し、この検出アームの揺動によって変速ペダル29の踏み込み操作の有無を高い精度で検出することを可能にしている。
【0028】
床材19は、センターステップ31と、該センターステップ31の左右の両側に夫々に配置されたサイドステップ32,32等とから構成されている。センターステップ31及び各サイドステップ32の上面は、フラットに形成され、操縦部3の床面の一部を構成している。センターステップ31は、ミッションケース17の上面側に載置して固定されている。左右のサイドステップ32,32は、機体フレーム3aにおける操縦部7側の部分から左右両側方に夫々突出形成されたステップフレーム33,33に下支え支持されている。
【0029】
左右一方側(図示する例では、左側)のステップフレーム33側には、燃料タンク34が配置され、他方のステップフレーム33側には、バッテリ37が配置されている。このバッテリ37の支持構造については後述する。
【0030】
図2に示す通り、本トラクタの走行機体3の操縦部7のステアリングコラム24側には、各種の制御や検出を行う複数のマイコン38,39,41が設けられている。これらのマイコン38,39,41は、収容スペース26内における上述した表示パネルの前方近傍にまとめて配置され、各種の操作や制御や検出を行う。これらのマイコン38,39,41には、電源ケーブル42(
図7及び
図8を参照)を介して、バッテリ37からの電力が供給される。ちなみに、電源ケーブル42は、複数を束ねてハーネス43とした状態で走行機体3側に配線されている。なお、ハーネス43の中には、電源ケーブル42以外の配線ケーブルを束ねてもよい。
【0031】
次に、
図1乃至
図3に基づいて、マイコン38,39,41の構成を説明する。
【0032】
一のマイコン38は、エンジン6を制御するとともに、該エンジン6の状態を検出するECU(エンジン用マイコン)であり、他の一のマイコン39は、無線通信手段を有し且つ作業機や走行機体等の各部の制御や検出を行い通信マイコンであり、残りの一のマイコン41は、GPS等が搭載され且つオプションとして後から追加可能なオプション用マイコンであり、これらのマイコン38,39,41は、上述した収容スペース26に配置され、互いがCAN等で相互に接続されている。
【0033】
ECU38は、取付ブラケット(取付部材)44によって、隔壁13の背面の上寄り部分の左右方向中央側に着脱可能に取り付け固定されている。ECU38に左右一方の側方近傍の位置(具体的には、右側方近傍)には取付フレーム(取付部材)46が隔壁13にボルト固定されて配置され、他方の側方近傍の位置には支持台(取付部材)47が隔壁13にボルト固定されて配置されている。すなわち、ECU38は取付フレーム46と支持台47との間に配置されている。
【0034】
取付フレーム46は、隔壁13から後方に向かって一体的に延設され、その延出端側である後端側に通信マイコン39が支持されている。すなわち、通信マイコン39は、ECU38と比べて、操縦部7(具体的には、操縦部7のシート18に着座したオペレータ)から近い位置に配置されている。具体的には、通信マイコン39が、収容スペース26において、ステアリングコラムの側方(さらに具体的には、側方斜め前方)に位置している。
【0035】
通信マイコン39は、オペレータが携帯して操作するスマートフォン又はトラクタのエンジン始動や開錠等に用いるキーフォブ等の無線機能付きのキー等である無線通信端末との間で、無線通信を行うことが可能である。これによって、オペレータ側からトラクタの各種情報を取得可能であるとともに、無線通信端末を介してトラクタの各種の操作や制御を行うことが可能になる。
【0036】
支持台47の上面はフラットに形成されている。この上面側には、オプション用マイコン41が位置決め固定されている。このオプション用マイコン41の前後位置は、ECU38よりは後側であり、通信マイコン39よりは前側である。オプション用マイコン41は、GPS等によって本トラクタの位置を検出することが可能であり、これを用いることによって自動運転等や半自動的な補助運転等を実行することが可能になる。
【0037】
次に、
図2乃至
図8に基づいて、バッテリ37の構成を説明する。
【0038】
図4はカバー体によってバッテリを覆った状態を示す斜視図であり、
図5はカバー体を取り外してバッテリを露出させた状態を示す斜視図であり、
図6はバッテリの支持構造の要部構成を示す斜視図であり、
図7はバッテリ側の左右外側の分解斜視図であり、
図8はバッテリ側の左右内側の分解斜視図である。前後に長い直方体状に成形されたバッテリ37は、走行機体3の左右一方側の側部に支持して固定されている。
【0039】
詳しく説明すると、バッテリ37が金属製の支持体48に支持して固定され、該支持体48は、走行機体3の操縦部7の左右一方側(図示する例では、右側であり、以下、「電力供給側」)の側部の下側(具体的には、クラッチハウジング16の電力供給側の側部)から左右外側に一体的に突出形成された支持フレーム49における突出側の端部にボルト固定され、バッテリ37の少なくとも一部が合成樹脂製のカバー体51によってカバーされている。
【0040】
支持体48は、前後及び上下に延設された板状に成形され且つ走行機体3側に固定される被固定部52と、該被固定部52の下端部から左右外側(電力供給側)に延設された水平な板状部材であって且つその上面側にバッテリ37が載置される載置部53とを一体的に有している。
【0041】
支持体48は、その被固定部52が支持フレーム49に着脱可能に取り付けることによって、走行機体3側に支持して固定される。このようにして固定された支持体48の載置部53にバッテリ37を載置した場合、該バッテリの左右内側の側面の全体が、被固定部52によってカバーされた状態になる。被固定部52は、ステップフレーム33にもボルト固定され、高い取付強度が確保されている。
【0042】
載置部53の上面は、バッテリ37の下面との関係で、その左右幅が同一又は略同一に設定され、その前後長が長くなる寸法に設定されている。そして、バッテリ37は位置決め具54によって載置部53の上面に位置決め固定される。
【0043】
位置決め具54は、バッテリ37において上端部側で且つ左右外側の端部側に位置し前後方向に延びる角部に当接するアングル状に成形された当接部材56と、バッテリ37の角部に当接させた状態の当接部材56が該バッテリ37と共に載置部53に対して固定されているように該当接部材56と載置部53と連結する前後一対の固定棒57,57とを有している。
【0044】
各固定棒57は、その上端部が当接部材56に着脱可能にネジ固定され、その下端部にはフック部57aが曲げ形成されている。載置部53には、このフック部57aの中途部を上面から下面側に挿通させる挿通孔53aと、挿通孔54aに挿通された固定棒57のフック部57aを挿入して係止する係止孔53bとが該固定棒57毎に設けられている。固定棒57の当該構造によって当接部材56が載置部53に連結して固定される。
【0045】
載置部53上においてバッテリ37を固定する位置は、その前後の一方側(図示する例では後側)に偏っている。支持体48における載置部53及び被固定部52におけるバッテリ37を寄せて配置する側の縁部には、両者を連接させて一体化するカバー部58が設けられている。バッテリ37は、このカバー部58に近接又は接触させた状態で、載置部53上に位置決め固定される。
【0046】
被固定部52におけるカバー部48が固定される側と反対側の端部には、平面視で、該カバー部48側に開放されたコの字状をなす上下複数(図示する例では、上下一対)の取付部材59,59が固定されている。また、載置部53の支持部材59側の端部からは一体的に垂直に立ち上がった取付座部55が一体的に設けられている。この複数の取付部材59,59と、取付座部53aとには、単一の金属製のプレート状部材61が着脱可能にボルト固定され、これによって被固定部52、載置部53、支持部材59,59の強度が相互に補強される。
【0047】
載置部53に位置決め固定されたバッテリ37と、取付部材59,59及び取付座部53aに固定されたプレート状部材61との間には、空間60が形成されている。この空間60には、複数のマイコン38,39,41の少なくとも1つに対して過電流の発生を防止するヒューズ62が、電源ケーブル42に電気的に接続されて設けられている。このヒューズ62は、取付部材59,59に着脱可能に取り付け固定されている。すなわち、取付部材59は、プレート状部材61を支持する部材であるとともに、ヒューズ62を支持する部材としても機能している。
【0048】
また、前記ヒューズ62によって過電流の発生が防止されるマイコン38,39,41とは別のマイコン38,39,41の内の少なくとも1つ、或いは、前記ヒューズ62によって過電流の発生が防止される一又は複数のマイコン38,39,41に対して過電流の発生を防止するヒューズ63が、収容スペース26内における隔壁13の背面における電力供給側の端部に設置されている。
【0049】
被固定部52の前後の一方側(本例では、プレート状部材61が配置された側である前側)の端部には、配線部52aが設けられ、この配線部52aは、前記一方側(図示する例では前方)が開放された切欠き状に成形され、電源ケーブル42又はそれを束ねたハーネス43(図示する例ではハーネス)を、配線部52aに挿通させて配線する際に、該配線部52aの開放側から導入することが可能になる。
【0050】
この配線部52aの構成によって、支持体48を走行機体3側に固定した状態のままで、載置部53に載置して固定されたバッテリ37に接続された電源ケーブル42を、走行機体3側に配線することが容易になる。
【0051】
ちなみに、図示する例では、ヒューズ62から複数の電源ケーブル42が導出され、これらの複数の電源ケーブル42が束ねられて構成されたハーネス43の中途部が、配線部42aに挿通され、この状態のハーネス43が係止材64によって配線部52aに係止されている。この係止材64は、弾性的に変形可能なリング状に成形され、その外周縁部が配線部52aの内周縁に嵌合して固定され、その内周縁部にはハーネス43の外周面が嵌合して挿通され、これによって、配線部42a側にハーネス43の中途部を係止する。
【0052】
さらに、被固定部52の上端部には、バッテリ37からの電力供給の有無を大元で切り替える操作具66を設置している。
【0053】
カバー体51は、プレート状部材61と、カバー部58とを、その外側である前方側と、後方側とからそれぞれカバーするとともに、バッテリ37の上方及び左右外側とをカバーするボックス状に成形され、支持体48側に着脱可能に装着されている。言い換えると、バッテリ37は、支持体48及びカバー体51によって四方及び上下がカバーされて保護されている。さらに、ヒューズ62もバッテリ37と共に支持体48及びカバー体51に覆われて保護されている。
【0054】
以上のように構成される本トラクタによれば、化学的な変化をする可能性があるバッテリ37を、エンジンルーム12及び収容スペース26に配置しないため、エンジンルーム12に設置するエンジン6や、収容スペース26に設置するマイコン38,39,41への影響を最小限に抑えることが可能になる。
【0055】
また、バッテリ37は、エンジンルーム12や収容スペース26以外のスペースである走行機体3の操縦部7の側部の下側に配置したので、エンジンルーム12における前後長や機体フレーム3aからの高さを、必要以上に確保する必要性が低くなり、全体をコンパクト化することが可能になる。
【0056】
また、マイコン38,39,41を、他の部分に比べればスペースに余裕がある、ステアリングコラム24の上部の周囲に配置したので、他の部分にスペース的な余裕を持たせることも可能になる。通信マイコン39は、他のマイコン38,41に比べて操縦部7に近い位置に配置するとともに、収容スペース26と操縦部7との空間を隔てる前側パネル部21の少なくとも一部(本例では全部)が、電波を通しやすい材料である樹脂製材料から構成されているため、通信マイコン39と操縦部7側のオペレータとの無線通信状態も良好なものとなる。
【0057】
また、電源ケーブル42(ハーネス43)を、走行機体3の側部におけるバッテリ37を配置した箇所と、ステアリングコラム24の上部との間に配線すればよいため、電気的にアースさせる箇所を、走行機体3の前部の左右中央部に位置させることが容易になり、全体の配線構成も簡略化可能になり、回路の故障等を効率的に防止することが可能になる。
【0058】
また、一のヒューズ62をバッテリ37に近接して配置するとともに、該ヒューズ62がバッテリ37と共にカバー体51によってカバーされて保護されるため、配線を短くすることが可能であるとともに、該ヒューズ62自体の故障も防止できる。
【0059】
また、他のヒューズ63も、走行機体3において、バッテリ37が配置された側の側部側に配置するとともに、収容スペース26に配置しているため、上述したヒューズ62と同様の効果が期待できる。
【0060】
さらに、カバー体51によって、その内部に配置されたヒューズ62及びバッテリ37等に対する防水性や防塵性が向上するとともに、バッテリ37に作業者が接触して生じる不具合も低減される。この他、電源ケーブル42の配線やその他の電子部品もカバー体51によってカバーされるため、デザイン性も向上する。
【0061】
ところで、作業機が予め定めた所定の高さである非作業高さ以上に上昇された場合、走行機体3からの回転動力を作業機に伝動するPTO軸を、自動的に停止させる制御(自動駆動制御)を実行可能なトラクタが従来公知である。このようなトラクタでは、通常、マイコンを用いるのが一般的である。具体的には、マイコンの入力側に、作業機の昇降高さが非作業高さ以上であるか否かを直接的又は間接的に検出する昇降高さ検出手段を接続し、該マイコンの出力側に、PTO軸の回転駆動の有無を切り替える駆動切換手段を接続するのが一般的である。
【0062】
昇降高さ検出手段は、構成を簡略化して製造コストを低減させるために、検出スイッチを用いることが考えられる。
【0063】
例えば、操縦部7側には、その揺動操作位置に応じて作業機の昇降高さを変更するポジションコントロールレバーを設け、このポジションコントロールレバー側に検出スイッチを配置してもよい。そして、この検出スイッチは、ポジションコントロールレバーが、作業機を非作業高さ以上に上昇させる操作範囲に揺動されたか否かによって、その入切が切り換わるように構成されている。
【0064】
その他には、昇降リンク4側に検出スイッチを配置することも考えられる。この検出スイッチは、作業機の昇降高さが非作業高さ以上になった場合には入作動する一方で、非作業高さよりも低くなった場合には切作動するように構成されている。
【0065】
ちなみに、検出スイッチは、通常、押しボタン式のものを用いるが、検出スイッチとして、揺動作動する検出アームを有するタイプのものを用いてもよい。検出アームの揺動範囲によって入切が切り換えられるため、利便性が高い。また、検出スイッチの取付位置や取付角度を調整可能なブラケットを介して、該検出スイッチを走行機体3側に装着させてもよい。
【0066】
駆動切換手段は、例えば、エンジン6からPTO軸への動力伝動を断続する油圧クラッチと、該油圧クラッチへの作動油の供給・排出を切り換えることによって前記油圧クラッチの断続を制御する電磁弁とから構成してもよい。
【0067】
そして、マイコンは、作業機の昇降高さが非作業高さ以上になっていることを検出スイッチによって検出した場合、電磁弁によってPTO軸を自動的に駆動停止させる一方で、作業機の昇降高さが非作業高さよりも低くなっていることを検出スイッチによって検出した場合、電磁弁によってPTO軸を自動的に駆動させる自動駆動制御を実行する。
【0068】
なお、PTO軸の駆動の有無を切り換えるPTOスイッチをマイコンの入力側に設け、PTOスイッチが入状態の場合のみ、PTO軸が駆動されるようにしてもよい。すなわち、作業機が非作業高さよりも低い高さに下降された場合でも、PTOスイッチが切状態であれば、PTO軸は駆動されない。
【0069】
なお、上述したような一連の制御は、マイコンを省略しても実現可能であり、具体的には、検出スイッチと、電磁弁と、PTOスイッチとを電気的に直列に接続した回路を、バッテリ37に接続する。検出スイッチは、作業機の昇降高さが非作業高さ未満である場合には入作動し且つ作業機の昇降高さが非作業高さ以上である場合には切作動するように構成される。
【0070】
以上の構成によれば、PTOスイッチが入操作され、作業機の昇降高さが非高さ未満になって検出スイッチが入状態の場合には、PTO軸が回転駆動されるが、それ以外の場合には、PTO軸の駆動が停止され、マイコンを用いた場合と同様の制御内容が実現できる。
【0071】
さらに、直列回路と、並列回路を組み合わせるによって、マイコンを用いずに、複雑な制御を実現することも可能である。例えば、バッテリ37からの電力が直接的に電磁弁及びPTOスイッチに供給される状態と、バッテリ37からの電力が検出スイッチを介して電磁弁及びPTOスイッチに供給される状態とを切り換える切替スイッチを設ければ、上述の制御の実行の有無も選択可能になる。また、この際、検出スイッチと並列接続される報知ランプ(報知手段)を設ければ、作業機の昇降高さによってPTO軸の駆動の有無を自動的に切り換える制御を実行している間は、報知ランプによる報知が行われるようになる。
【符号の説明】
【0072】
3 走行機体
6 エンジン
7 操縦部
12 エンジンルーム
24 ステアリングコラム
37 バッテリ
38 ECU(エンジン用マイコン,マイコン)
39 通信マイコン(マイコン)
41 オプション用マイコン(マイコン)
42 電源ケーブル
48 支持体
51 カバー体
52 被固定部
53 載置部
53a 配線部