(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159069
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】研磨レートが向上したCMP研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20221006BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20221006BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
B24B37/24 B
B24B37/24 C
B24B37/00 H
B24B37/24 Z
H01L21/304 622D
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022049560
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】17/218,716
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】モハメッド・ティー・イスラム
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA09
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3C158BA04
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5F057AA03
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5F057GA12
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】除去速度は、電子デバイスを作製するプロセスの効率にとって重要である。除去速度を、好ましくは欠陥を増加させることなく改善させる手段を提供する。
【解決手段】ポリマー母材とIII-A族またはIV-A族金属のリン酸塩またはヒ酸塩を含むレート向上層状粒子とを含む研磨部を有する研磨パッドは、ケミカルメカニカルポリッシングにおいて、とりわけスラリーの状態で正電荷を有する粒子を含むスラリーを使用した際のケミカルメカニカルポリッシングにおいて有効であり得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー母材と研磨レートを向上させるための層状粒子とを含む研磨部を有する、ケミカルメカニカルポリッシングにおいて有用な研磨パッドであって、層状粒子が、III-A族またはIV-A族金属のリン酸塩またはヒ酸塩を含む、研磨パッド。
【請求項2】
層状粒子が、式M(HYO4)2n(H2O)[式中、Mは、Zr+4、Ti+4またはCe+4であり、Yは、PまたはAsであり、そして、nは、0、1または2である]を有する材料を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
層状粒子が、板状へと開裂する交互結晶構造を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
層状粒子が、リン酸水素ジルコニウム粒子である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
ポリマー母材が、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ナイロン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、およびフルオロポリマー、それらのコポリマー、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項6】
層状粒子の量が、研磨層の総重量を基準にして1~20重量パーセントである、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項7】
層状粒子が、0.5~20ミクロンの平均長を有する板状の形態である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項8】
最大50体積パーセントの多孔度を有する、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項9】
基板を提供する工程、請求項1に記載の研磨パッドを提供する工程、研磨パッドと基板との間にスラリーを提供する工程であって、スラリーが粒子を含む工程、パッドとスラリーを用いてスラリー中の粒子の少なくとも一部分が正電荷を有するpHで基板を研磨する工程を含む、方法。
【請求項10】
粒子が酸化セリウム粒子を含み、pHが6.5未満である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、特にプリメタル絶縁膜の形成途中などのセリア系スラリーを使用した研磨を含む、基板のケミカルメカニカルポリッシングのための研磨パッドに関する。
【0002】
背景
集積回路および他の電子デバイスの組み立てにおいて、導電材料、半導体材料および絶縁材料の複数層が、半導体ウェーハの表面に堆積され、表面から部分的または選択的に除去される。導電材料、半導体材料および絶縁材料の薄層を、いくつかの堆積技術を使用して堆積させることができる。また、ダマシンプロセスでは、トレンチおよびビアのパターン化エッチングによって生じた陥凹部を埋めるように材料が堆積される。充填は、コンフォーマルであるので、この結果、不規則な表面トポグラフィーがもたらされ得る。また、充填不足を避けるために、過剰の材料を堆積させることができる。したがって、リセスの外側の材料を除去する必要がある。現代のウェーハ加工における一般的な堆積技術としては、とりわけ、スパッタリングとしても知られている物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)および電気化学堆積法(ECD)が挙げられる。一般的な除去技術としては、とりわけ、湿式および乾式エッチング;等方性および異方性エッチングが挙げられる。
【0003】
材料が連続的に堆積および除去されるにつれて、基板のトポグラフィーは不均一または非平面になり得る。後続の半導体加工(例えば、フォトリソグラフィ、メタライゼーションなど)はウェーハが平坦面を有することを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、粗面、凝集材料、結晶格子損傷、スクラッチおよび汚染された層または材料などの望ましくない表面トポグラフィーおよび表面欠陥を除去するのに有用である。
【0004】
ケミカルメカニカルポリッシング(CMP)とも称される、ケミカルメカニカルプラナリゼーションは、ダマシンプロセス、フロントエンドオブライン(FEOL)加工またはバックエンドオブライン(BEOL)加工における、半導体ウェーハなどの被加工物を平坦化または研磨して、過剰な材料を除去するために使用される、一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェーハキャリヤ、または研磨ヘッドが、キャリヤアセンブリ上に取り付けられる。研磨ヘッドは、ウェーハを保持し、ウェーハを、CMP装置内のテーブルまたはプラテン上に取り付けられた研磨パッドの研磨面と接触するように位置付ける。キャリヤアセンブリは、ウェーハと研磨パッドとの間に制御可能な圧力を提供する。同時に、スラリーまたは他の研磨媒体が、研磨パッド上に分注され、ウェーハと研磨層との間の間隙に引き込まれる。研磨を実施するために、研磨パッドとウェーハは、通常、互いに相対的に回転する。研磨パッドがウェーハの下で回転するにつれて、ウェーハは、一般に環状の研磨トラック、または研磨領域を掃き出し、その中でウェーハの表面が研磨層と直接対面する。ウェーハ表面は、表面上での研磨面および研磨媒体(例えば、スラリー)の化学的および機械的作用によって研磨され、平坦化される。
【0005】
除去速度は、電子デバイスを作製するプロセスの効率にとって重要である。例えば、大容量多層メモリ素子(例えば、3D NANDフラッシュメモリ)では、製造プロセスは、SiO2およびSi3N4膜の多層スタックを交互にピラミッド状の階段形式で組み立てることを含むことができる。完成したら、スタックは、厚いSiO2被覆層でキャッピングされる。これは、素子構造の完成前に平坦化されなければならない。素子容量は、積層スタック中の層の数に比例する。市販されている素子は、一般に、32層および64層を使用しており、産業界は、128層へと急速に進展している。スタック中の各酸化物/窒化物ペアの厚さは、約125nmである。したがって、スタックの厚さは、層の数に正比例して増加する(32層は約4,000nmの厚さを有する、64層は約8,000nmの厚さを有する、128層は約16,000nmの厚さを有する)。除去しようとするキャッピング絶縁体の総量は、スタックの厚さの約1.5倍(例えば、最大約24,000nm)であることができる。従来の絶縁体CMPスラリーは、約250nm/minの除去速度を有し、不必要に長いCMPプロセス時間をもたらし、このことは、3D NAND製造プロセスにおいて障壁となり得る。より速いCMPプロセスの開発への多くの取り組みは、プロセス条件、例えば、より高い圧力、より速い接触速度、パッドコンディショニング、スラリー組成物に注がれてきた。しかしながら、除去速度の改善は、研磨された基板中の欠陥の増加の犠牲なしにはできない。したがって、除去速度を、好ましくは欠陥を増加させることなく改善させる手段が所望されている。
【0006】
発明の概要
本明細書において、ポリマー母材材料と;研磨レートを向上させるための層状粒子とを含む研磨材を有する、ケミカルメカニカルポリッシングにおいて有用な研磨パッドであって、層状粒子が、III-A族またはIV-A族金属のリン酸水素塩またはヒ酸水素塩、好ましくは、式:
M(HYO4)2n(H2O)
[式中、Mは、III-A族またはIV-A族の金属イオン、好ましくは、Zr+4、Ti+4またはCe+4、最も好ましくは、Zr+4であり、Yは、PまたはAs、好ましくは、Pであり、そして、nは、0、1または2、好ましくは、1である]で示される、金属リン酸水素塩または金属ヒ酸水素塩を含む、研磨パッドが開示される。
【0007】
また、本明細書において、基板を提供する工程、請求項1に記載の研磨パッドを提供する工程、研磨パッドと基板との間にスラリーを提供する工程、パッドとスラリーを用いて基板を研磨する工程を含む方法であって、好ましくは、スラリーが脱イオン水などの水性媒体中で全体的に正の表面電荷を有する粒子を含むpHで研磨が行われる、方法も開示される。本明細書の目的において、正の表面電荷は、研磨スラリーのpHがその等電点を下回ることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本明細書に開示されるレート向上層状粒子添加物の一例の化学構造を示している略図である。
【0009】
発明の詳細な説明
本明細書において、ポリマー母材とレート向上層状粒子とを含む研磨部を有する研磨パッドが開示される。
【0010】
レート向上層状粒子は、金属リン酸水素塩または金属ヒ酸水素塩であることができる。レート向上層状粒子は、積層構造を有することができる。制約されることを望むわけではないが、積層構造は、大きな粒子の研磨しようとする基板を傷つけ欠陥を生じさせ得る可能性を低減させ得ると想定される。レート向上層状粒子は、板状構造(特に、積層板状構造)を有することができる。粒子の主軸方向(すなわち、厚さに対して実質的に垂直な、長さおよび/または幅)の平均寸法は、少なくとも0.5、または少なくとも1ミクロン、または少なくとも2ミクロンであることができ、同時に、最大20、または最大10、または最大5ミクロンであることができる。粒子は、3~20または3~10のアスペクト比(長さまたは幅:厚さ)を有することができる。
【0011】
レート向上層状粒子は、結晶構造を有することができる。
図1は、そのような層状粒子の分子構造の一例を図示しており、ジルコニウム(金属として)とリン酸基を示している。各層は、金属イオンの面を有することができ、その金属イオン面の上下にリン酸水素(またはヒ酸)基が結合している(例えば、架橋している)。リン酸水素(またはヒ酸)が架橋している層の外面は、P-OH基(またはAs-OH基)で終端され得る。金属イオン(Zr
+4が示されている)は、リン酸基またはヒ酸基(リン酸基が示されている)、好ましくはリン酸といずれかの側で結合して、交互構造または層状構造を形成することができる。水は、ヒドロキシル基と結合することができる。金属イオンは、III-A族またはIV-A族の金属イオン、例えば、ジルコニウムイオン(例えばZr
+4)、チタンイオン(例えばTi
+4)、またはセリウムイオン(例えばCe
+4)であることができる。
【0012】
粒子は、金属イオン(例えばZr+4)の、典型的には、金属酸化物の形態でリン酸基(またはヒ酸基)が結合している、いくつかの層を有することができる。水溶液中で等電pH(リン酸水素ジルコニウムでは約3)を上回るpHでは、表面は、多数の表面ヒドロキシル基に起因して強く陰性である。粒子はまた、親水性であるが、水中で化学的に不活性かつ不溶性である。粒子は、高破砕性であり得るので、その結果、大きな粒子の研磨時にスクラッチ欠陥を生じさせる可能性が低下する。さらに、これらの粒子は、開裂して板状を形成することができ、該板状は、除去速度を高めるなどによって研磨性能を改善することができる。
【0013】
金属リン酸塩または金属ヒ酸塩は、式:
M(HYO4)2n(H2O)
[式中、Mは、III-A族またはIV-A族の金属イオン、好ましくは、Zr+4、Ti+4またはCe+4、最も好ましくは、Zr+4であり、Yは、PまたはAs、好ましくは、Pであり、そして、nは、0、1または2、好ましくは、1である]を有することができる。
【0014】
パッドの研磨部において使用される本明細書に開示されるレート向上層状粒子の量は、研磨部の総重量を基準にして少なくとも0.1、または少なくとも1、または少なくとも2、または少なくとも3、または少なくとも5から、最大でも、最大20、または最大15または最大10重量パーセントであることができる。レート向上層状粒子の量は、研磨部の総体積を基準にして0.1~20体積パーセント、または1~18体積パーセント、または2~15体積パーセントであることができる。
【0015】
研磨部は、研磨パッドにおいて一般的に使用されている任意のポリマー母材材料を含むことができる。研磨部は、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーを含むことができる。ベースパッドまたは研磨部において使用することができるポリマー材料中の研磨部において使用することができるポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、エポキシ樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、アクリルポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、エポキシ、シリコーン、それらのコポリマー(ポリエーテル-ポリエステルコポリマーなど)、およびそれらの組み合わせまたは配合物が挙げられる。ポリマーは、ポリウレタンであることができる。
【0016】
研磨部は、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも5、少なくとも10、または少なくとも50MPaから、最大900、最大700、最大600、最大500、最大400、最大300、または最大200MPaのヤング率(ASTM D412-16による)を有することができる。研磨部は、終点検出に使用されるシグナルに不透明であることができる。
【0017】
研磨部はまた、他の粒子、例えば、特に、中空微小要素、特に、フレキシブルな中空高分子微小要素(例えば、微小球)などを含むことができる。例えば、複数の微小要素を研磨層全体に均一に分散させることができる。複数の微小要素は、単に、母材中の孔(例えば、封入されたガス気泡)であってもよく、中空コアポリマー材料、液体充填中空コアポリマー材料、水溶性材料または不溶性相材料(例えば、鉱油)であってもよい。複数の微小要素は、例えば、微小要素が、研磨層全体に均一に分配された、封入されたガス気泡および中空コアポリマー材料から選択される場合に、研磨要素に多孔性を提供する。微小要素は、少なくとも10ミクロンの直径を有しながら、最大150ミクロンまたは最大50ミクロンの重量平均直径を有することができる。重量平均直径は、レーザ回折、例えば、低角レーザ光散乱(LALLS)を使用して測定することができる。複数の微小要素は、ポリアクリロニトリルまたはポリアクリロニトリルコポリマーのどちらかのシェル壁を有する高分子マイクロバルーン(例えば、Akzo Nobel製のExpancel(登録商標)微小球)を含むことができる。複数の微小要素は、研磨層中に、0、または少なくとも5または少なくとも10体積パーセントから、最大50、最大45、最大40、または最大35体積パーセントの量で組み込むことができる。微小要素が多孔性を提供する場合、研磨部の多孔度は、0~50、5~45または10~35体積パーセントの多孔度であることができる。多孔度の体積パーセントは、無充填研磨層の比重と微小要素を含有する研磨層の比重の差を無充填研磨層の比重で割ることによって決定することができる。あるいは、多孔度パーセントは、研磨層の密度を研磨層の非充填成分の加重平均密度で割ることによって決定することもできる。金属リン酸塩は、非多孔性研磨パッドの機械加工に特に有用である。例えば、金属リン酸塩粒子は、固定された切削工具と共に作動する立旋盤からの溝の機械加工またはスピニング工具ビットでの溝切り加工を改善することができる。
【0018】
研磨部は、ASTM D1622 (2014)に従って測定した場合に0.4~1.15、または0.7~1.0g/cm3の密度を有することができる。
【0019】
研磨部は、ASTM D2240 (2015)に従って測定した場合に28~75のショアD硬度を有することができる。
【0020】
研磨部は、20~150ミル、30~125ミル、40~120ミル、または50~100ミル(0.5~4、0.7~3、1~3、または1.3~2.5mm)の平均厚を有することができる。
【0021】
本発明の研磨パッドは、任意で、研磨層と面接触する少なくとも1つの追加の層をさらに含む。例えば、研磨パッドは、研磨層に接着する圧着可能なベース層をさらに含むことができる。圧着可能なベース層は、好ましくは、研磨される基板の表面に対する研磨層の適合性を改善する。ベースパッド(サブ層またはベース層とも称される)は、研磨部の下に使用することができる。ベースパッドは、単層であっても、複数の層を含んでもよい。ベースパッドの上部面は、x-y直交座標で平面と規定することができる。例えば、研磨部は、メカニカルファスナーを介してまたは接着剤によってベースパッドに接着させてもよい。ベース層は、少なくとも0.5mmまたは少なくとも1mmの厚さを有することができる。ベース層は、5mm以下、3mm以下、または2mm以下の厚さを有することができる。
【0022】
ベースパッドまたはベース層は、研磨パッド用のベース層として使用するために公知である任意の材料を含み得る。例えば、ベースパッドまたはベース層は、ポリマー、ポリマーの配合物またはポリマー材料と他の材料との複合物、例えば、セラミック、ガラス、金属または石材を含むことができる。ポリマーおよびポリマー複合物は、研磨部を形成することができる材料との適合性上の理由で、ベースパッドとして、特に、複数の層がある場合には上部層に使用することができる。そのような複合物の例としては、炭素または無機フィラーが充填されたポリマー、およびポリマーが含浸された繊維マット(例えば、ガラスまたは炭素繊維の)が挙げられる。パッドの基部は、以下の性質の1つまたは複数を有する材料から構成することができる:少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも5、少なくとも10、または少なくとも50MPaから、最大900、最大700、最大600、最大500、最大400、最大300、または最大200MPaの範囲のヤング率(例えば、ASTM D412-16によって決定した場合);少なくとも0.05、少なくとも0.08、または少なくとも0.1から、最大0.6または最大0.5のポアソン比(例えば、ASTM E132によって決定した場合);少なくとも0.4または少なくとも0.5から、最大1.7、最大1.5、または最大1.3グラム/立法センチメートル(g/cm3)の密度。
【0023】
ベースパッドまたは研磨部において使用することができるそのようなポリマー材料の例としては、ポリカーボネート、ポリスルホン、ナイロン、エポキシ樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、アクリルポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、エポキシ、エチレン-酢酸ビニル(EVAまたはPEVA)、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDMゴム)、シリコーン、それらのコポリマー(ポリエーテル-ポリエステルコポリマーなど)、またはそれらの組み合わせもしくは配合物が挙げられる。
【0024】
ポリマーは、ポリウレタンであることができる。ポリウレタンは、単独で使用しても、炭素または無機フィラーおよび繊維マット(例えば、ガラスまたは炭素繊維の)用の母材であってもよい。
【0025】
本明細書の目的において、「ポリウレタン」は、二官能性または多官能性イソシアネートから得られる生成物、例えば、ポリエーテルウレア、ポリイソシアヌレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、それらのコポリマーおよびそれらの混合物である。したがって、CMP研磨パッドは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを提供する工程;硬化性成分を別個に提供する工程;および、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと硬化性成分とを組み合わせて組み合わせ物を形成し、その組み合わせ物を反応させて生成物を形成する工程を含む方法によって製造されてもよい。成形ポリウレタンケーキを所望の厚さにスカイビングすることによってベースパッドまたはベース層を形成することが可能である。任意で、ケーキ鋳型をIR照射、誘導または直流電流で予加熱すれば、多孔性ポリウレタン母材を成形する際に生成物の変動を低減させることができる。任意で、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーのいずれかを使用することが可能である。ポリマーは、架橋された熱硬化性ポリマーであることができる。
【0026】
ポリウレタンがベースパッドおよび/または研磨層において使用される場合、ポリウレタンは、多官能性イソシアネートとポリオールの反応生成物であることができる。例えば、ポリイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを使用することができる。本発明のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨層の形成において使用される多官能性イソシアネートは、脂肪族多官能性イソシアネート、芳香族多官能性イソシアネートおよびそれらの混合物からなる群より選択することができる。例えば、本発明のケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨層の形成において使用される多官能性イソシアネートは、2,4-トルエンジイソシアネート;2,6-トルエンジイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート;ナフタレン-1,5-ジイソシアネート;トリジンジイソシアネート;パラ-フェニレンジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート;およびそれらの混合物からなる群より選択されるジイソシアネートであることができる。多官能性イソシアネートは、ジイソシアネートとプレポリマーポリオールとの反応によって形成されるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーであることができる。イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、2~12wt%、2~10wt%、4~8wt%または5~7wt%の未反応イソシアネート(NCO)基を有することができる。多官能性イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを形成するために使用されるプレポリマーポリオールは、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、それらのコポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択することができる。例えば、プレポリマーポリオールは、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコールおよびそれらの混合物);ポリカーボネートポリオール;ポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール;それらの混合物;ならびに、それらとエチレングリコール;1,2-プロピレングリコール;1,3-プロピレングリコール;1,2-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5-ペンタンジオール;3-メチル-1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;およびトリプロピレングリコールからなる群より選択される1つまたは複数の低分子量ポリオールとの混合物からなる群より選択することができる。例えば、プレポリマーポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG);エステル系ポリオール(アジピン酸エチレン、アジピン酸ブチレンなど);ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG);ポリカプロラクトンポリオール;それらのコポリマー;およびそれらの混合物からなる群より選択することができる。例えば、プレポリマーポリオールは、PTMEGおよびPPGからなる群より選択することができる。プレポリマーポリオールがPTMEGである場合、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、4~12wt%(より好ましくは6~10wt%;最も好ましくは8~10wt%)の未反応イソシアネート(NCO)濃度を有することができる。市販のPTMEG系イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの例としては、Imuthane(登録商標)プレポリマー(COIM USA, Inc.から入手可能、例えば、PET 80A、PET 85A、PET 90A、PET 93A、PET 95A、PET 60D、PET 70D、PET 75D);Adiprene(登録商標)プレポリマー(Chemturaから入手可能、例えば、LF 800A、LF 900A、LF 910A、LF 930A、LF 931A、LF 939A、LF 950A、LF 952A、LF 600D、LF 601D、LF 650D、LF 667、LF 700D、LF750D、LF751D、LF752D、LF753DおよびL325);Andur(登録商標)プレポリマー(Anderson Development Companyから入手可能、例えば、70APLF、80APLF、85APLF、90APLF、95APLF、60DPLF、70APLF、75APLF)が挙げられる。プレポリマーポリオールがPPGである場合、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、3~9wt%(より好ましくは4~8wt%、最も好ましくは5~6wt%)の未反応イソシアネート(NCO)濃度を有することができる。市販のPPG系イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの例としては、Imuthane(登録商標)プレポリマー(COIM USA, Inc.から入手可能、例えば、PPT 80A、PPT 90A、PPT 95A、PPT 65D、PPT 75D);Adiprene(登録商標)プレポリマー(Lanxessから入手可能、例えば、LFG 963A、LFG 964A、LFG 740D);およびAndur(登録商標)プレポリマー(Anderson Development Companyから入手可能、例えば、8000APLF、9500APLF、6500DPLF、7501DPLF)が挙げられる。イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、0.1wt%未満の遊離トルエンジイソシアネート(TDI)モノマー含量を有する低遊離イソシアネート末端ウレタンプレポリマーであることができる。非TDI系イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを使用することもできる。例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMEG)などのポリオールとの反応によって形成されるものが挙げられるが、1,4-ブタンジオール(BDO)などの任意のジオールが許容される。そのようなイソシアネート末端ウレタンプレポリマーが使用される場合、未反応イソシアネート(NCO)濃度は、好ましくは3~10wt%(より好ましくは4~10wt%、最も好ましくは5~10wt%)である。このカテゴリーの市販のイソシアネート末端ウレタンプレポリマーの例としては、Imuthane(登録商標)プレポリマー(COIM USA, Inc.から入手可能、例えば、27 85A、27 90A、27 95A);Andur(登録商標)プレポリマー(Anderson Development Companyから入手可能、例えば、IE75AP、IE80AP、IE85AP、IE90AP、IE95AP、IE98AP);およびVibrathane(登録商標)プレポリマー(Chemturaから入手可能、例えば、B625、B635、B821)が挙げられる。
【0027】
最終形態の本発明の研磨パッドはさらに、その上面への一次元または複数次元のテクスチャの組み込みを含むことができる。これらは、それらのサイズによってマクロテクスチャまたはマイクロテクスチャに分類され得る。流体力学的反応および/またはスラリー輸送を制御するためのCMPに用いられる一般的なタイプのマクロテクスチャとしては、非限定的に、環状、放射状およびクロスハッチングなどの多くの構成および設計の溝が挙げられる。これらは、機械加工を介して薄い均一なシートに形成しても、ネットシェイプ成形加工を介してパッド表面上に直接形成してもよい。一般的なタイプのマイクロテクスチャは、研磨が行われる基板ウェーハとの接触点である表面凹凸団を生み出す、精細なスケールの形状である。一般的なタイプのマイクロテクスチャとしては、非限定的に、ダイヤモンド(しばしば、パッドコンディショニングと称される)などの多くの硬質粒子による摩耗によって使用前、使用中または使用後のいずれかに形成されるテクスチャ、およびパッド製作プロセスの間に形成されるマイクロテクスチャが挙げられる。
【0028】
本発明の研磨パッドは、ケミカルメカニカルポリッシング機のプラテンと面接触するように適合可能である。研磨パッドは、研磨機のプラテンに固定することができる。研磨パッドは、感圧接着剤およびバキュームの少なくとも1つを使用して、プラテンに固定することができる。
【0029】
本発明のCMPパッドは、使用されるパッドポリマーの性質と適合可能な多種多様なプロセスによって製造され得る。これらは、上述したような構成要素を混合して鋳型に流し込み、焼鈍し、所望の厚さのシートにスライスすることを含む。あるいは、これらは、より正確なネットシェイプ成形で製造してもよい。製造プロセスは、以下を含む:1.熱硬化性射出成形(しばしば、「反応射出成形」または「RIM」と称される)、2.熱可塑性または熱硬化性射出吹込成形、3.圧縮成形、または、4.流動性材料が配置されて固化されることで、パッドのマクロテクスチャまたはマイクロテクスチャの少なくとも一部を作り出す、任意の類似のタイプのプロセス。研磨パッドの成形の一例では:1.流動性材料が構造物または基板中にまたはその上に送られ;2.材料が固化するにつれて、構造物または基板が材料に表面テクスチャを付与することができ、3.構造物または基板がその後に固化した材料から分離される。
【0030】
方法
ここに開示される研磨パッドは、基板を研磨するために使用することができる。例えば、研磨法は、研磨しようとする基板を提供する工程、次いで、本明細書に開示されるパッドを使用して研磨する工程を含むことができる。基板は、研磨および/または平坦化が所望される任意の基板であることができる。そのような基板の例としては、磁性基板、光学基板および半導体基板が挙げられる。具体例は、プリメタル絶縁膜スタックである。基板上の研磨しようとする具体的な材料は、酸化ケイ素層であることができる。該方法は、集積回路用のフロントエンドオブラインまたはバックエンドオブライン加工の一部であることができる。例えば、粗面、凝集材料、結晶格子損傷、スクラッチおよび汚染された層または材料などの望ましくない表面トポグラフィーおよび表面欠陥を除去するために、このプロセスを使用することができる。また、ダマシンプロセスでは、フォトリソグラフィ、パターン化エッチングおよびメタライゼーションの1つまたは複数の工程によって生じた陥凹部を埋めるように材料が堆積される。ある特定の工程は、不正確である可能性があり、例えば、リセスの過剰充填が存在し得る。ここに開示される方法を、リセスの外側の材料を除去するために使用することができる。このプロセスは、ケミカルメカニカルプラナリゼーションまたはケミカルメカニカルポリッシングであることができ、両方ともCMPと称され得る。キャリヤは、研磨しようとする基板、例えば、研磨パッドの研磨要素と接触する、半導体ウェーハ(リソグラフィおよびメタライゼーションによって形成される層ありまたはなし)を保持することができる。スラリーまたは他の研磨媒体を、基板と研磨パッドとの間の間隙に分注することができる。研磨パッドと基板は、互いに相対的に運動する、例えば、回転する。研磨パッドは、典型的には、研磨しようとする基板の下に置かれる。研磨パッドは、回転することができる。研磨しようとする基板もまた、例えば研磨トラック(例えば、環状)上で、運動することができる。相対的な運動によって、研磨パッドは、基板の表面に近づき、接触する。
【0031】
本明細書に開示されるパッドを任意のスラリーと共に使用することができる。本発明者らは、本明細書に開示されるパッドを研磨条件中に正に荷電される(または正の表面電荷を有する)粒子を有するスラリーと共に使用することで、除去速度の有意な改善を提供できることを見いだした。制約されることを望むわけではないが、レート向上層状粒子は、研磨中に存在する正に荷電された粒子が結合できる比較的高濃度の陰イオンヒドロキシル部位を有するパッド表面を提供することができると想定される。
【0032】
プラテンの圧力は、1~5、1.5~4.5、または2~4ポンド毎平方インチ(psi)(約6~35、10~30、または13~28キロパスカル(KPa))であることができる。プラテンの速度は、約40~150、または50~130rpmであることができる。加えられるスラリーの量は、例えば、50~500ミリリットル/分であることができる。研磨中のスラリーのpHは、最大7、または最大6.8から、低くても2、2.5、または3であることができる。
【0033】
例えば、除去速度の改善の有益性は、セリア系スラリーにおいて特に顕著である。セリア系スラリーでは、CeO2によって粒子は約6.5以下のpHで正電荷(または正の表面電荷)を有することができ、例えば、そのようなセリア系スラリーは、スラリーの総重量を基準にしてセリア粒子を少なくとも0.01、または少なくとも0.1重量パーセントから、セリア粒子を最大20、または最大15、または最大10、または最大5または最大2重量パーセント含むことができる。セリア系スラリーは、セリアのみを単独粒子として含むことができ、または、追加の他の粒子を含むこともできる。これらの他の粒子は、例えば、研磨が行われるpHで正(表面)電荷を有する他の粒子であることができる。他の粒子は、例えば、シリカ粒子またはアルミナ粒子、好ましくは、研磨が行われるpHで正の表面電荷を有する、シリカ粒子またはアルミナ粒子であることができる。除去速度の改善はまた、ある特定のシリカ系スラリー、特に、研磨が行われるpHで正(表面)電荷を有する粒子を有するシリカ系スラリーにおいて観察することもできる。
【0034】
例えば、該方法は、プラテンまたはキャリヤアセンブリを有するケミカルメカニカルポリッシング装置を提供する工程;研磨しようとする少なくとも1つの基板を提供する工程;本明細書に開示されるケミカルメカニカルポリッシングパッドを提供する工程;プラテン上にケミカルメカニカルポリッシングパッドを取り付ける工程;任意で、ケミカルメカニカルポリッシングパッドの研磨部と基板との間の界面に研磨媒体(例えば、砥粒を含有するスラリーおよび/または砥粒を含有しない反応性液体組成物)を提供する工程;研磨パッドの研磨部と基板との間に動的接触を生み出す工程を含むことができ、少なくとも一部の材料が基板から除去される。キャリヤアセンブリは、研磨される基板(例えば、ウェーハ)と研磨パッドとの間に制御可能な圧力を提供することができる。研磨媒体は、研磨パッド上に分注され、ウェーハと研磨層との間の間隙に引き込まれ得る。研磨媒体は、水、pH調整剤、および任意で、限定されないが以下の1つまたは複数を含むことができる:砥粒粒子、酸化剤、インヒビター、殺生物剤、可溶性ポリマーおよび塩。砥粒粒子は、酸化物、金属、セラミック、または他の適切に硬質な材料であることができる。典型的な砥粒粒子は、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、セリア、およびアルミナである。研磨パッドと基板は、互いに相対的に回転することができる。研磨パッドが基板の下で回転するにつれて、基板は、一般に環状の研磨トラック、または研磨領域を掃き出すことができ、その中でウェーハの表面が研磨パッドの研磨部と直接対面する。ウェーハ表面は、表面上での研磨層および研磨媒体の化学的および機械的作用によって研磨され、平坦化される。任意で、研磨パッドの研磨面は、研磨を開始する前に、砥粒コンディショナーでコンディショニングすることができる。
【0035】
ここに記載されるレート向上層状粒子を含むパッドを使用することは、欠陥を回避しながら除去速度を改善するのに特に有効であり得る。例えば、正電荷粒子を有するスラリー(例えば、最大7または最大6.5または最大6のpHのセリア系スラリー)を用いると、除去速度(例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)の除去速度)は、レート向上層状粒子(例えばZHP)を欠いている同等なパッドで研磨する場合と比較して10パーセント以上、15パーセント以上または20パーセント以上改善できる一方で、欠陥性は10パーセント以上、30パーセント以上、または50パーセント以上低減できる。
【0036】
任意で、パッドは、終点検出用の窓を含むことができる。その場合、本発明の方法において、提供されるケミカルメカニカルポリッシング装置は、シグナル源(例えば、光源)およびシグナル検出器(例えば、光センサー(好ましくは、マルチセンサースペクトログラフ)をさらに含むことができる。その場合、該方法は、窓にシグナル(例えば、光源からの光)を通過させて、基板の表面から反射されて終点検出窓を反対に通ってセンサー(例えば、光センサー)に入射するシグナル(例えば、光)を解析することによって研磨終点を決定する工程をさらに含むことができる。基板は、金属または金属化表面、例えば、銅またはタングステンを含有するものを有することができる。基板は、磁性基板、光学基板および半導体基板であることができる。
【実施例0037】
材料
PTMEGポリテトラメチレンエーテルグリコール配合物
プレポリマー 8.95~9.25wt%のNCOを有するH12MDI/TDI-PTMEG配合物
TDI(トルエンジイソシアネート)の銘柄 Dow製のVoranate T-80(商標)
H12MDI(脂環式ジイソシアネート)
MBOCA(4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)
リン酸水素ジルコニウム粉末(ZHP、平均粒径1~6ミクロンの板状)
Nouryon(以前はAkzo Nobel)製のExpancel(商標)微孔性粒子551DE40d42
【0038】
プレポリマーの合成
プレポリマーは、バッチ(例えば、200~1000グラム)で合成することができる。PTMEG成分を一緒に配合してポリオール混合物を作製する。ポリオール混合物に加える前に、TDIとH12MDIを80:20の比で混合する。次いで、ポリオール混合物に、所望のNCO重量パーセントを達成するのに十分なイソシアネート混合物を加える。混合物全体を再度混合し、次いで、使用する前に65℃の予熱したオーブン内に4時間置く。試料はすべて、合成と同じ日に使用した。あるいは、プレポリマーH12MDI/TDI-PTMEG配合物を直接使用してパッドを作製することもできる。
【0039】
パッド生産
合成したプレポリマーまたはL-325を65℃に加熱する。Mbocaを事前に計量し、95℃のオーブン内で融解しておく。プレポリマーにZHPを加えて、種々のレベルの層状粒子を生産する。ZHPとプレポリマーは機械的に混合する。次いで、プレポリマーとZHPの配合物に、Expancel(商標)551DE40d42微孔性粒子を加える。プレポリマー、ZHPおよびExpancel中空微小球の配合物を十分に混合し、バキュームを使用して脱気する。試料はすべて、所望の最終密度に達するまで添加された十分なExpancelを有していた。脱気後、プレポリマー、ZHPおよびExpancelの配合物にMBOCAを加え、十分に混合する。次いで、試料を加熱プレート上に注ぎ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)被覆バーを使用して175ミルの間隔設定で引き延ばす。次いで、プレートをオーブンに移し、104℃に加熱して、この温度で16時間保持する。次いで、垂れ下りを型から取り除き、縁取りして、直径22インチ(55.9cm)に打ち抜き、これを使用して研磨用の薄板状パッドを調製した。すべてのパッドは、直径20インチ(50.8cm)で、トップパッド厚80ミル(0.2cm)、円形(深さ30ミル、幅20ミルおよびピッチ120ミル、または深さ0.76mm、幅0.51mmおよびピッチ3mm)の溝切り加工、感圧接着剤、Suba IVサブパッド、およびCR-IIプラテン接着剤で仕上げた。対照パッドは、同様のプロセスを使用してZHP添加物なしで作製した。また、各材料セットを特性試験用にプラークに加工し、Expancelフィラーありとなしの両方で特性試験を行った。
【0040】
実施例1
ポリウレタン製剤の試料を上記手順に従って様々なZHP添加度で作製した。3種の材料について材料特性の概要を表1に示す。硬度または弾性率(G’)は使用可能な範囲内に留まっていた一方で、引張強度は添加量に正比例して低下した。研磨プロセスに対して望ましくない効果を伴うことのない伸長および靱性の低下の機能的限界は、最大約15重量パーセントの添加重量で発生すると推定された。
【0041】
【0042】
実施例2
10重量パーセントのZHPを有するパッドおよびZHPを有しないパッドを用いて、市販のCeO2系スラリー(Asahi CES333)を使用してTEOSウェーハを研磨した。スラリーは、製造業者の説明書を用いて調製した。スラリーのpHは5.5であった。過去のデータに基づけば、この使用pHは、使用されている粒子の等電pHを十分に下回っており、粒子は少なくともある程度の正電荷を担持する。各パッドを用いて、単一セットのプロセス条件を使用して200mmのTEOSウェーハを研磨した。各試験に使用した研磨条件は、プラテン速度93rpm、ウェーハキャリヤ速度87rpm、およびスラリー流量200ml/minであった。使用した研磨装置は、Applied Materials MirraのCMP研磨工具であった。研磨レートの有意な改善が観察され、ZHPを有しないパッドの1604オングストローム/minの除去速度と比較して、ZHP-10パッドは1930オングストローム/minの除去速度を有していた。また、研磨欠陥の低下も観察され、ZHPなしのパッドでは1ウェーハ当たり平均62個のスクラッチ欠陥があったのに対して、10重量パーセントのZHPを有するパッドでは15個だけであった。これらの結果から、本発明のパッドへの本発明のリン酸水素塩層状粒子の導入は、粒子が少なくとも部分的に陽イオンであるpHで研磨が行われる場合に、研磨レートを増加させることに有効であったことが実証される。
【0043】
実施例3
10重量パーセントのZHPを有するパッドおよびZHPを有しないパッドを用いて、3種の市販のCeO2系スラリー(Hitachi H8005、Versum STI2100FおよびAsahi CES333)を使用してTEOSウェーハを研磨した。すべてのスラリーは、製造業者の説明書を用いて調製した。使用中のpHは、5.5であった。過去のデータに基づけば、この使用pHは、使用されている粒子の等電pHを十分に下回っており、粒子は少なくともある程度の正電荷を担持するはずである。各パッドを用いて、単一セットのプロセス条件を使用して200mmのTEOSウェーハを研磨した。各試験に使用した研磨条件は、プラテン速度93rpm、ウェーハキャリヤ速度87rpm、およびスラリー流量150ml/minであった。使用した研磨装置は、Applied Materials MirraのCMP研磨工具であった。
【0044】
表2に示すように、すべての試験スラリーで、ZHP不含参照と比べて本発明のパッドで研磨レートの有意な向上が観察された。これらの結果から、本発明のパッドへのリン酸水素塩添加物の導入は、複数のセリアスラリー製剤に対して本発明に示されたpH基準が満たされた場合に、研磨レートを増加させることに有効であることが実証された。
【0045】
【0046】
さらに、3種のスラリーで、ZHPなしの対照パッドと比較してZHP-10パッドで窒化ケイ素選択比は平均12%増加した。
【0047】
実施例4
10重量パーセントのZHPを有するパッドおよびZHPを有しないパッドを用いて、市販のCeO2系スラリー(Asahi CES333)および市販のSiO2系スラリー(Dow K1730)を使用してTEOSウェーハを研磨した。スラリーは、製造業者の説明書を用いて調製した。CeO2系スラリーのpHは5.5で、使用時の固形分は1wt%であった。SiO2スラリーのpHは10.5(これは、スラリーの等電pHを上回り、粒子は正電荷を担持しない)で、使用時の固形分は16wt%であった。4種のスラリー/パッド組み合わせの各々を、2種の異なる研磨速度で、1.5~4psiの範囲の種々のダウンフォースで研磨した。前記組み合わせの各々で複数のTEOSウェーハを研磨し、除去速度と同様に研磨中の摩擦係数も測定した。
【0048】
さらに、実験を用いて、圧力、レートおよび速度データを使用して、各試料の研磨レートを試験の圧力と速度の積で割ることによってプレストン係数kを決定した。使用した2種のスラリーは全く異なる固形分を有していたので、kを研磨される試料の各々の固形質百分率で割ることによって、研磨効率の追加尺度を決定することもできる。SiO2系スラリーの研磨効率は、ZHPありのパッドとZHPなしのパッドの両方について0.5で同じであった。CeO2系スラリーの研磨効率は、ZHPなしのパッドで4.9であり、ZHPありのパッドで6.5であった。
【0049】
研磨テーブルのモータトルクおよびスラリー温度から算出される摩擦係数(COF)データは、本発明のパッドによって達成される改善に関する追加の洞察を提供した。表3から明らかなように、CeO2系スラリーのデータはすべて、SiO2系スラリーのデータよりも有意に高いCOFを示した。さらに、ZHPを含むパッドのCOFは、ZHPを含まなかったパッドのものよりも有意に高かった。これは、ZHPを含むパッドのパッド表面上のCeO2粒子の濃度が金属リン酸水素塩粒子の存在に起因してより高いことの証拠であった。レートと同様、負に荷電された粒子スラリー(例えば、負に荷電されたSiO2粒子)を使用した場合ではそのような効果は観察されなかった。
【0050】
【0051】
実施例5
ZHPなしのパッドおよび10wt%のZHPを有するパッドと、粒子が負電荷を有するような等電ポテンシャルを上回るpHでシリカ系スラリーを用いて研磨に着手した。TEOSの除去速度は、ほぼ同じであり、ZHPを含有するパッドではZHPなしのパッドと比較して平均で最大1.7パーセントより低かった。SiN選択比は、ZHPありのパッドの場合よりもZHPなしのパッドで2倍高かった。また、ZHPありのパッドは、実質的により高い欠陥(スクラッチおよびびびり)を示した。
【0052】
実施例6
ZHPなしのパッドおよび10wt%のZHPを有するパッドと、粒子が正電荷を有するような等電ポテンシャルを下回るpHでシリカ系スラリーを用いて研磨に着手した。TEOS除去速度は、ZHPありのパッドではZHPなしのパッドよりも18パーセントより高かった(2278Å/min対1922Å/min)。
【0053】
本開示はさらに、以下の態様を包含する:
【0054】
態様1:ポリマー母材とIII-A族またはIV-A族金属のリン酸塩またはヒ酸塩を含む研磨レート向上層状粒子とを含む研磨部を有する、ケミカルメカニカルポリッシングにおいて有用な研磨パッド。
【0055】
態様2:レート向上層状粒子が、式M(HYO4)2n(H2O)[式中、Mは、III-A族またはIV-A族の金属イオンであり、Yは、PまたはAs、好ましくは、Pであり、そして、nは、0、1または2である]を有する材料を含む、態様1の研磨パッド。
【0056】
態様3:MがZr+4、Ti+4またはCe+4であり、YがPであり、そして、nが1である、態様2の研磨パッド。
【0057】
態様4:レート向上層状粒子が、積層結晶構造を有する、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0058】
態様5:レート向上層状粒子が、リン酸水素ジルコニウムである、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0059】
態様6:ポリマー母材が、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエーテル、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ナイロン、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、およびフルオロポリマー、それらのコポリマー、またはそれらの混合物を含み、好ましくは、ポリウレタンを含む、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0060】
態様7:レート向上層状粒子の量が、研磨部の総重量を基準にして少なくとも0.1、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2、さらにより好ましくは少なくとも3、最も好ましくは少なくとも5から、最大20、好ましくは最大15、より好ましくは最大10重量パーセントである、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0061】
態様8:レート向上層状粒子の量が、研磨層の総体積を基準にして0.1~20体積パーセント、または1~18体積パーセント、または2~15体積パーセントであることができる、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0062】
態様9:レート向上層状粒子が、板状の形態である、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0063】
態様10:板状が、厚さに対して垂直(または実質的に垂直)な方向で少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1、より好ましくは少なくとも2ミクロンの平均寸法を有し、同時に、最大20、好ましくは最大10、より好ましくは最大7、または最も好ましくは最大5ミクロンであることができる、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0064】
態様11:板状が、3~20、好ましくは3~10のアスペクト比を有する、態様9または10の研磨パッド。
【0065】
態様12:研磨部が、1つまたは複数の微小要素をさらに含む、先行態様のいずれか1つの研磨パッド。
【0066】
態様13:微小要素が、研磨部において多孔性を提供する、態様12の研磨パッド。
【0067】
態様14:1つまたは複数の微小要素が中空微小要素を含む、態様13の研磨パッド。
【0068】
態様15:1つまたは複数の中空微小要素の量(体積パーセント)が、0~50、好ましくは5~45、より好ましくは10~35体積パーセントである、態様14の研磨パッド。
【0069】
態様16:微小要素が、少なくとも10ミクロンの直径を有しながら、レーザ回折によって測定した場合に最大150ミクロンまたは最大50ミクロンの重量平均直径を有する、態様14または15の研磨パッド。
【0070】
態様17:研磨部が、ASTM D1622 (2014)に従って測定した場合に0.4~1.15、好ましくは0.7~1.0g/cm3の密度を有する、先行態様のいずれかの研磨パッド。
【0071】
態様18:研磨部が、ASTM D2240 (2015)に従って測定した場合に28~75のショアD硬度を有する、先行態様のいずれかの研磨パッド。
【0072】
態様19:研磨部が、0.5~4mm、好ましくは0.7~3mm、より好ましくは1~3mm、さらにより好ましくは1.3~2.5mmの平均厚を有する、先行態様のいずれかの研磨パッド。
【0073】
態様20:研磨層と面接触する少なくとも1つの追加の層をさらに含む、先行態様のいずれかの研磨パッド。
【0074】
態様21:少なくとも1つの追加の層がベース層を含む、態様20の研磨パッド。
【0075】
態様22:ベース層が、研磨部の裏面に接着している、態様20または21の研磨パッド。
【0076】
態様23.ベース層が圧着可能である、態様20~22のいずれかの研磨パッド。
【0077】
態様24:研磨部中の体積多孔度が、0~50、好ましくは5~45、より好ましくは10~35パーセントであることができる、先行態様のいずれかの研磨パッド。
【0078】
態様25:ポリマー母材がポリウレタンを含む、先行態様のいずれかの研磨パッド。
【0079】
態様26:基板を提供する工程、態様1~25のいずれか1つの研磨パッドを提供する工程、研磨パッドと基板との間にスラリーを提供する工程、パッドとスラリーを用いて基板を研磨する工程を含む、方法。
【0080】
態様27:スラリーが粒子を含み、粒子の少なくとも一部分が正電荷または正の表面電荷を有するpHで研磨が行われる、態様26の方法。
【0081】
態様28:スラリーが酸化セリウム粒子を含む、態様26または27の方法。
【0082】
態様29:スラリーが、スラリーの総重量を基準にして少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1から、最大20、好ましくは最大10、より好ましくはなお、または最大5重量パーセントのセリア粒子を含む、態様28の方法。
【0083】
態様30:スラリーが酸化ケイ素粒子を含む、態様26~29のいずれか1つの方法。
【0084】
態様31:研磨パッドがプラテン上にあり、プラテンの圧力が、6~35、好ましくは10~30キロパスカル(kPa)である、態様26~30のいずれか1つの方法。
【0085】
態様32:プラテンの速度が、40~100、好ましくは50~90rpmである、態様31の方法。
【0086】
態様33:研磨中のスラリーのpHが、2~7、好ましくは2.5~6.8である、態様26~32のいずれか1つの方法。
【0087】
組成物、方法および物品は、代替的に、本明細書に開示される任意の適切な材料、工程または構成要素を含む、それからなる、またはそれから本質的になることができる。組成物、方法および物品は、追加的にまたは代替的に、それ以外の点で組成物、方法および物品の機能または目的の達成に必要でない任意の材料(または種)、工程または構成要素を欠くようにまたは実質的に含まないように処方することができる。
【0088】
本明細書に開示されるすべての範囲は、その終点を包含し、該終点は、互いに独立に組み合わせ可能である(例えば、「最大25wt.%、またはより具体的には、5wt.%~20wt.%」という範囲は、「5wt.%~25wt.%」の範囲の終点およびすべての中間値を包含する、など)。さらに、記載の上限および下限を組み合わせて範囲を形成することができる(例えば、「少なくとも1または少なくとも2重量パーセント」および「最大10または5重量パーセント」を、「1~10重量パーセント」、または「1~5重量パーセント」または「2~10重量パーセント」または「2~5重量パーセント」という範囲として組み合わせることができる)。「組み合わせ」は、配合物、混合物、合金、反応生成物などを包含する。用語「第一の」、「第二の」などは、いかなる順序、量または重要度をも表すものではなく、ある要素を他のものと区別するために使用されるものである。用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」は、量に関する限定を表すものではなく、本明細書において別途指示がある場合または文脈上明らかに矛盾する場合を除き、単数形と複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。「または」は、別途明確な定めがある場合を除き、「および/または」のことを意味する。本明細書全体にわたる「いくつかの実施態様」、「ある実施態様」などへの言及は、該実施態様に関連して記載された特定の要素が、本明細書中に記載された少なくとも1つの実施態様に包含され、他の実施態様に存在していても存在していなくてもよいことを意味する。また、記載された要素は、様々な実施態様において任意の好適な方法で組み合わされてよいと理解されるべきである。「その組み合わせ」は、制限がなく、列記された構成要素または性質の少なくとも1つを任意で列記されていない類似または等価な構成要素または性質と一緒に含む、任意の組み合わせを包含する。
【0089】
本明細書において反対のことが示される場合を除き、すべての試験標準は、本出願の出願日、または、優先権が主張される場合は試験標準が現れる最も早い優先出願の出願日として、実質的に最も新しい標準である。