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特開2022-159074フルオレン骨格を有するアルコールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159074
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】フルオレン骨格を有するアルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 41/16 20060101AFI20221006BHJP
   C07C 43/23 20060101ALI20221006BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
C07C41/16
C07C43/23 D
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022049813
(22)【出願日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2021062572
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】日比野 樹
(72)【発明者】
【氏名】光實 真哉人
(72)【発明者】
【氏名】安田 理恵
(72)【発明者】
【氏名】磯田 隆夢
(72)【発明者】
【氏名】渡部 沙葵梨
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
(72)【発明者】
【氏名】塚田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】鞍谷 裕嗣
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC43
4H006AD15
4H006BA02
4H006BA32
4H006BB11
4H006BB16
4H006BD70
4H006BE13
4H006GN04
4H006GP03
4H039CA61
(57)【要約】
【課題】9,9-ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するアルコールを高い純度で効率良く製造する。
【解決手段】無機塩基触媒およびアミド類の存在下、9,9-ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレンとアルキレンカーボネートとを反応させることにより、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ縮合多環式アリール)フルオレンを製造する。前記無機塩基触媒は金属炭酸塩および/または金属炭酸水素塩であってもよい。前記アミド類はアルキルアミド類であってもよい。前記無機塩基触媒の割合は、前記アミド類100質量部に対して1~10質量部であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機塩基触媒およびアミド類の存在下、下記式(1a)
【化1】
(式中、
およびZは独立して縮合多環式アレーン環を示し、
およびRは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、nは0~8の整数を示す)
で表されるフルオレン化合物とアルキレンカーボネートとを反応させ、
下記式(1)
【化2】
[式中、AおよびAは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、環Z、環Z、R、R、R、m1、m2およびnは、それぞれ式(1a)に同じ]
で表されるフルオレン化合物を含む反応液を得る反応工程を含む、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記反応工程で得られた反応液に、アミド類、ケトン類および芳香族炭化水素類を含む晶析溶媒を用いて晶析する精製工程をさらに含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応工程の前工程として、酸触媒、チオール類および非プロトン性極性溶媒の存在下、下記式(2)
【化3】
[式中、Rおよびnは、それぞれ式(1a)に同じ]
で表されるフルオレノン類と、下記式(3a)および(3b)
【化4】
[式中、環Z、環Z、R、R、m1およびm2は、それぞれ式(1a)に同じ]
で表される化合物とを反応させて、前記式(1a)で表されるフルオレン化合物を含む中間反応液を得る中間反応工程をさらに含み、かつ前記中間反応液から前記式(1a)で表されるフルオレン化合物を取り出して、前記反応工程に供する請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)において、AおよびAがエチレン基であり、かつ前記環Zおよび環Zがナフタレン環である請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機塩基触媒が金属炭酸塩および/または金属炭酸水素塩であり、前記アミド類がアルキルアミド類であり、前記無機塩基触媒の割合が、前記アミド類100質量部に対して1~10質量部である請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9-ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するアルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料分野において、高い屈折率、低いアッベ数、低い複屈折、高い透明性などの光学的特性、耐熱性などに優れる点から、9,9-ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するアルコール類(フルオレン含有アルコール)が注目されている。
【0003】
このようなフルオレン含有アルコールの製造方法として、特開2009-155253号公報(特許文献1)には、1-メチルイミダゾールおよびジエチレングリコールの存在下で、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレンとエチレンカーボネートとを反応させる方法が開示されている。この文献の実施例では、純度95.7%のフルオレン含有アルコールが製造されている。
【0004】
また、前記フルオレン含有アルコールを工業的に好適に製造する方法として、特開2019-1780号公報(特許文献2)には、固体酸およびトルエンの存在下、9-フルオレノンとナフトールとを反応させて得られたビスナフトール化合物を、取り出すことなく炭酸カリウムの存在下、エチレンカーボネートと反応させる製造方法が開示されている。この文献の実施例では、純度95.1~96.7%のフルオレン含有アルコールが製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-155253号公報
【特許文献2】特開2019-1780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年の光学材料分野で高性能な光学特性が要求されており、特許文献1および2の方法でも、得られるフルオレン含有アルコールの純度を十分に向上することはできない。
【0007】
従って、本発明の目的は、9,9-ビス(縮合多環式アリール)フルオレン骨格を有するアルコールを高い純度で効率良く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、無機塩基触媒およびアミド類の存在下、9,9-ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレンとアルキレンカーボネートとを反応させることにより、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ縮合多環式アリール)フルオレンを高い純度で効率良く製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の製造方法は、無機塩基触媒およびアミド類の存在下、下記式(1a)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、
およびZは独立して縮合多環式アレーン環を示し、
およびRは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0以上の整数を示し、
は置換基を示し、nは0~8の整数を示す)
で表されるフルオレン化合物とアルキレンカーボネートとを反応させ、
下記式(1)
【0012】
【化2】
【0013】
[式中、AおよびAは独立して直鎖状または分岐鎖状アルキレン基を示し、環Z、環Z、R、R、R、m1、m2およびnは、それぞれ式(1a)に同じ]
で表されるフルオレン化合物を含む反応液を得る反応工程を含む、前記式(1)で表されるフルオレン化合物の製造方法である。
【0014】
前記製造方法は、前記反応工程で得られた反応液に、アミド類、ケトン類および芳香族炭化水素類を含む晶析溶媒を用いて晶析する精製工程をさらに含んでいてもよい。
【0015】
前記製造方法は、前記反応工程の前工程として、酸触媒、チオール類および非プロトン性極性溶媒の存在下、下記式(2)
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、Rおよびnは、それぞれ式(1a)に同じ]
で表されるフルオレノン類と、下記式(3a)および(3b)
【0018】
【化4】
【0019】
[式中、環Z、環Z、R、R、m1およびm2は、それぞれ式(1a)に同じ]
で表される化合物とを反応させて、前記式(1a)で表されるフルオレン化合物を含む中間反応液を得る中間反応工程をさらに含んでいてもよい。前記製造方法では、前記中間反応液から前記式(1a)で表されるフルオレン化合物を取り出して、前記反応工程に供してもよい。
【0020】
前記式(1)において、AおよびAはエチレン基であり、かつ前記環Zおよび環Zはナフタレン環であってもよい。前記無機塩基触媒は金属炭酸塩および/または金属炭酸水素塩であってもよい。前記アミド類はアルキルアミド類であってもよい。前記無機塩基触媒の割合は、前記アミド類100質量部に対して1~10質量部であってもよい。
【0021】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、無機塩基触媒およびアミド類の存在下、9,9-ビス(ヒドロキシ縮合多環式アリール)フルオレンとアルキレンカーボネートとを反応させているため、9,9-ビス(ヒドロキシアルコキシ縮合多環式アリール)フルオレンを高い純度で効率良く製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、無機塩基触媒およびアミド類の存在下、前記式(1a)で表されるフルオレン化合物[以下「フルオレン化合物(1a)」とも称する]とアルキレンカーボネートとを反応させ、前記式(1)で表されるフルオレン化合物[以下「フルオレン化合物(1)」とも称する]を含む反応液を得る反応工程を含む製造方法によって、前記式(1)で表されるフルオレン化合物を製造する。
【0024】
[式(1)で表されるフルオレン化合物]
前記式(1)において、環Zおよび環Zで表される縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)としては、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二ないし四環式アレーン環などが挙げられる。
【0025】
縮合二環式アレーン環としては、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。これらの縮合多環式アレーン環は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
2つの環ZおよびZの種類は、互いに同一でまたは異なっていてもよく、同一が好ましい。これらのうち、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環が好ましく、縮合多環式C10-14アレーン環がさらに好ましく、ナフタレン環が最も好ましい。
【0027】
基AおよびAで表される直鎖状または分岐鎖状アルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状または分岐鎖状C2-4アルキレン基などが挙げられる。これらのアルキレン基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
2つの基AおよびAの種類は、互いに同一でまたは異なっていてもよく、同一が好ましい。これらのうち、直鎖状または分岐鎖状C2-3アルキレン基が好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0029】
基RおよびRで表される置換基としては、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。
【0030】
これらの置換基のうち、代表的には、ハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基などの炭化水素基;アルコキシ基;アシル基;ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基などが挙げられる。好ましいRおよびRとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基などが挙げられ、アルキル基としては、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基などのC5-8シクロアルキル基などが挙げられ、アリール基としては、フェニル基などのC6-14アリール基などが挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルコキシ基などが挙げられる。置換基RおよびRの種類は、互いに同一でまたは異なっていてもよいが、同一が好ましい。これらのうち、アルキル基が好ましく、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基が特に好ましい。
【0031】
およびRの置換数m1およびm2は、0以上の整数であればよく、環Zおよび環Zの種類に応じて適宜選択でき、それぞれ、例えば0~8の整数であってもよく、好ましい置換数m1およびm2は、以下段階的に、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、0が最も好ましい。置換数m1と置換数m2とは、異なる置換数であってもよいが、同一の置換数が好ましい。また、置換数m1およびm2が2以上である場合、2以上のRまたはRの種類は、同一または異なっていてもよい。
【0032】
で表される置換基としては、炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。これらの置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
これらの基Rのうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、アルキル基がさらに好ましく、メチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基がより好ましく、C1-2アルキル基が最も好ましい。
【0034】
基Rの置換数nは、0~8の整数であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~6の整数、0~5の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、0または1であり、0が最も好ましい。なお、フルオレン環を構成する2つの異なるベンゼン環において、それぞれの置換数は、互いに同一または異なっていてもよい。また、前記異なるベンゼン環に置換する基Rの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。nが2以上である場合、同一のまたは異なるベンゼン環に置換する2以上の基Rの種類は、互いに同一または異なっていてもよい。また、基Rの置換位置は、特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位ないし7位であってもよく、2位、3位、7位が好ましい。
【0035】
フルオレン化合物(1)としては、代表的には、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。これらのうち、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンが好ましい。
【0036】
後述する本発明の製造方法で得られたフルオレン化合物(1)は、高い反応転化率で得られる。フルオレン化合物(1a)の反応転化率は、通常90モル%以上であり、例えば93モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは96モル%以上、より好ましくは98モル%以上、最も好ましくは99モル%以上である。
【0037】
また、フルオレン化合物(1)は、純度も高く、HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)により測定される純度(HPLC純度)は、例えば95%以上程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、96%以上、97%以上、97.5%以上、98%以上であり、最も好ましくは98.5%以上である。HPLC純度は、通常96~100%程度の範囲から選択でき、好ましくは98.5~99.99%、さらに好ましくは98.7~99.9%であってもよい。
【0038】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、転化率(反応転化率)および純度は後述の実施例に記載の方法(HPLCを使用する方法)などにより測定できる。
【0039】
[反応工程]
反応工程では、無機塩基触媒およびアミド類の存在下、前記式(1a)で表されるフルオレン化合物[以下「フルオレン化合物(1a)」とも称する]とアルキレンカーボネートとを反応させ、フルオレン化合物(1)を含む反応液を得る。反応工程の一方の原料となるフルオレン化合物(1a)は前記式(1a)で表され、前記式(1a)において、環Z、環Z、R、R、R、m1、m2およびnは、好ましい態様も含めて、それぞれ前記式(1)と同一である。
【0040】
(アルキレンカーボネート)
他方の原料となるアルキレンカーボネートとしては、前記式(1)の基AおよびAに対応するアルキレンカーボネートを利用できる。具体的なアルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのC2-4アルキレン-カーボネートなどが挙げられる。これらのアルキレンカーボネートは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、C2-3アルキレン-カーボネートが好ましく、エチレンカーボネート(炭酸エチレン)が特に好ましい。
【0041】
アルキレンカーボネートの割合は、フルオレン化合物(1a)1モルに対して2モル以上、好ましくは2.5モル以上であってもよく、例えば2~5モル、好ましくは2.5~4.5モル、さらに好ましくは2.8~4モル、より好ましくは3~3.5モルである。
【0042】
(触媒)
反応工程で使用される触媒は、無機塩基触媒を含む。本発明の製造方法では、触媒が無機塩基触媒を含み、かつ後述する溶媒がアミド類を含むことにより、純度の高いフルオレン化合物(1)を効率良く製造できる。
【0043】
無機塩基触媒には、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属水酸化物などが含まれる。
【0044】
金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸タリウム(I)などが挙げられる。
【0045】
金属炭酸水素塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などが挙げられる。
【0046】
金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物、水酸化タリウム(I)などが挙げられる。
【0047】
これらの無機塩基触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、金属炭酸塩および/または金属炭酸水素塩が好ましく、アルカリ金属炭酸塩および/またはアルカリ金属炭酸水素塩がさらに好ましく、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩が最も好ましい。
【0048】
金属炭酸塩および金属炭酸水素塩の合計割合は、無機塩基触媒中の主成分を占めるのが好ましく、全無機塩基触媒中50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。さらに、金属炭酸塩の割合は、無機塩基触媒中の主成分を占めるのがより好ましく、全無機塩基触媒中50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0049】
無機塩基触媒の割合は、アミド類100質量部に対して0.1質量部以上(例えば0.1~10000質量部程度)であり、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.1~1000質量部、0.1~100質量部、0.1~50質量部、0.1~20質量部、0.5~15質量部、1~10質量部、1.5~5質量部であり、最も好ましくは2~4質量部である。無機塩基触媒の割合が少なすぎると、収率が低下する虞があり、逆に多すぎると、純度が低下する虞がある。
【0050】
無機塩基触媒の割合は、フルオレン化合物(1a)100質量部に対して、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~10質量部、より好ましくは1.5~5質量部、最も好ましくは2~4質量部である。無機塩基触媒の割合が少なすぎると、反応転化率が低下する虞があるのみならず、未反応成分などの不純物により純度が低下する虞があり、逆に多すぎると、無機塩基触媒が不純物として残留する虞がある。
【0051】
触媒は、無機塩基触媒に加えて、有機塩基触媒、酸触媒などの他の触媒をさらに含んでいてもよい。他の触媒は、酸触媒であってもよいが、有機塩基触媒が好ましい。
【0052】
有機塩基触媒としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、1-メチルイミダゾールなどのアミン類;酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムなどの金属カルボン酸塩などが挙げられる。これらの有機塩基触媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
他の触媒の割合は、全触媒中50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。他の触媒の割合が多すぎると、高い純度でフルオレン化合物(1)を製造するのが困難となる虞がある。
【0054】
無機塩基触媒の割合は、全触媒中50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。無機塩基触媒の割合が少なすぎると、純度の高いフルオレン化合物(1)を効率良く製造するのが困難となる虞がある。
【0055】
触媒の割合は、フルオレン化合物(1a)100質量部に対して、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~10質量部、より好ましくは1.5~5質量部、最も好ましくは2~4質量部である。触媒の割合が少なすぎると、反応転化率が低下する虞があるのみならず、未反応成分などの不純物により純度が低下する虞があり、逆に多すぎると、触媒が不純物として残留する虞がある。
【0056】
(反応溶媒)
反応工程で使用される反応溶媒(反応に不活性な溶媒)は、アミド類を含む。なお、反応溶媒中のアミド類が少量の場合は、アミド類は添加剤として機能してもよい。アミド類には、アルキルアミド類(アルキルアシルアミン類)、環状アミド類などが含まれる。アミド類は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの環状アミド類であってもよいが、アルキルアミド類が好ましい。
【0057】
アルキルアミド類としては、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミドなどのN,N-ジC1-4アルキルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミドなどのN,N-ジC1-4アルキルアセトアミドなどが挙げられる。これらのアミド類は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、N,N-ジC1-4アルキルホルムアミド、N,N-ジC1-4アルキルアセトアミドが好ましく、N,N-ジC1-3アルキルホルムアミド、N,N-ジC1-3アルキルアセトアミドがさらに好ましく、N,N-ジC1-2アルキルホルムアミド、N,N-ジC1-2アルキルアセトアミドがより好ましく、DMFが最も好ましい。
【0058】
アミド類の割合は、フルオレン化合物(1a)100質量部に対して0.1~3000質量部(特に1~3000質量部)程度の範囲から選択でき、例えば10~3000質量部、好ましくは20~1000質量部、さらに好ましくは30~300質量部、より好ましくは50~150質量部、最も好ましくは80~130質量部である。アミド類の割合が少なすぎると、取り扱い性が低下する虞があり、逆に多すぎると、反応性が低下する虞がある。
【0059】
反応溶媒は、アミド類に加えて、他の溶媒をさらに含んでいてもよい。他の溶媒としては、水;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどの鎖状エーテル類;メチルセロソルブ、メチルカルビトール、ジメトキシエタンなどのグリコールエーテル類;テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類などが挙げられる。これら他の溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
これらのうち、トルエンなどの芳香族炭化水素、MIBKなどのケトン類および1,4-ジオキサンなどの環状エーテルからなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、芳香族炭化水素および/またはケトン類、芳香族炭化水素および/または環状エーテルがさらに好ましく、芳香族炭化水素とケトン類との組み合わせがより好ましい。
【0061】
芳香族炭化水素とケトン類とを組み合わせる場合、芳香族炭化水素の割合は、ケトン類100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは10~50質量部、より好ましくは20~30質量部である。
【0062】
他の溶媒の割合は、全反応溶媒中99.9質量%以下(特に99質量%以下)であり、好ましい範囲としては、以下段階的に、90質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下であり、最も好ましくは5質量%以下である。他の溶媒の割合が多すぎると、高い純度でフルオレン化合物(1)を製造するのが困難となる虞がある。
【0063】
アミド類と他の溶媒とを組み合わせ、アミド類を添加剤として機能させる場合、アミド類の割合は、他の溶媒100質量部に対して、例えば1~50質量部、好ましくは3~40質量部、さらに好ましくは5~30質量部、より好ましくは10~20質量部である。
【0064】
アミド類の割合は、全反応溶媒中0.1質量%以上(特に1質量%以上)であり、好ましい範囲としては、以下段階的に、10質量%以上、30質量%以上、50質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。アミド類の割合が少なすぎると、高い純度でフルオレン化合物(1)を製造するのが困難となる虞がある。
【0065】
反応溶媒の割合は、フルオレン化合物(1a)100質量部に対して、例えば10~3000質量部、好ましくは30~1000質量部、さらに好ましくは50~300質量部、より好ましくは80~200質量部、最も好ましくは100~150質量部である。
【0066】
(他の添加剤)
反応工程では、反応に利用される慣用の添加剤をさらに使用してもよい。慣用の添加剤としては、助触媒(相間移動触媒)などが挙げられる。助触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。これらの助触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの助触媒のうち、TBABなどがよく利用される。
【0067】
助触媒の割合は、フルオレン化合物(1a)100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは1~5質量部、より好ましくは2~4質量部である。
【0068】
(反応条件)
反応温度は、特に限定されないが、0~200℃程度の範囲から選択でき、例えば30~180℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは70~130℃、より好ましくは90~120℃である。反応時間は、特に制限されず、30分~24時間程度の範囲から選択でき、例えば0.5~12時間、好ましくは1~6時間、さらに好ましくは1.5~3時間である。
【0069】
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中や、窒素;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなど不活性雰囲気中で行ってもよく、常圧または加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
【0070】
[反応液の精製工程]
反応液(反応混合物)の精製工程では、前記反応工程で得られた反応液に、ケトン類および芳香族炭化水素類を含む晶析溶媒を用いて晶析することにより精製してもよい。反応工程で得られたフルオレン化合物(1)は、精製工程において、晶析溶媒として、アミド類、ケトン類および芳香族炭化水素を含む混合溶媒を用いて晶析することにより、より純度の高いフルオレン化合物(1)に調製できる。
【0071】
アミド類は、好ましい態様も含めて、前記反応溶媒の項で例示されたアミド類と同様である。
【0072】
ケトン類には、鎖状ケトン、環状ケトンなどが含まれる。鎖状ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ブチルプロピルケトンなどのC3-8鎖状ケトンなどが挙げられる。環状ケトンとしては、シクロヘキサノンなどのC5-10シクロアルカノンなどが挙げられる。これらのケトン類は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、鎖状ケトンが好ましく、MIBKなどのC4-7鎖状ケトンが特に好ましい。
【0073】
芳香族炭化水素類には、ベンゼン、アルキルベンゼンなどが含まれる。アルキルベンゼンとしては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルトルエン、プロピルベンゼン、クメンなどのモノないしテトラC1-4アルキル-ベンゼンなどが挙げられる。これらの芳香族炭化水素類は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのモノまたはジC1-2アルキル-ベンゼンが好ましく、トルエンが特に好ましい。
【0074】
反応溶媒として、アミド類、ケトン類および芳香族炭化水素からなる群より選択された少なくとも1種を用いた場合、反応溶媒をそのまま晶析溶媒として利用してもよく、反応溶媒として利用した晶析溶媒に対して、同一のまたは異なる晶析溶媒を追加して添加してもよい。
【0075】
反応の精製工程において、ケトン類の割合は、アミド類100質量部に対して、例えば10~1000質量部、好ましくは20~500質量部、さらに好ましくは50~200質量部、最も好ましくは80~120質量部である。
【0076】
芳香族炭化水素類の割合は、アミド類100質量部に対して、例えば10~1000質量部、好ましくは20~500質量部、さらに好ましくは50~200質量部、最も好ましくは80~120質量部である。
【0077】
晶析溶媒は、アミド類、ケトン類および芳香族炭化水素類に加えて、他の溶媒をさらに含んでいてもよい。他の溶媒としては、反応工程の反応溶媒として例示された溶媒や水などが挙げられる。他の溶媒としては、メタノールなどのC1-4アルカノールが好ましい。
【0078】
他の溶媒の割合は、全晶析溶媒中30質量%以下、例えば0~20質量%程度であってもよく、純度の高いフルオレン化合物(1)を効率良く製造できる点から、好ましい範囲としては、以下段階的に、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%、すなわち、実質的に他の溶媒を含まないのが好ましい。
【0079】
反応溶媒として、アミド類を添加剤として機能させた場合は、他の溶媒を含むのが好ましく、他の溶媒の割合は、アミド類100質量部に対して、例えば1~100質量部、好ましくは5~50質量部、さらに好ましくは10~30質量部である。
【0080】
晶析溶媒の割合は、フルオレン化合物(1)100質量部に対して、例えば10~2000質量部程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、50~1500質量部、100~1000質量部、200~700質量部、300~500質量部、350~450質量部である。
【0081】
精製工程では、前記晶析溶媒にフルオレン化合物(1)を溶解し、冷却することによって、より純度の高いフルオレン化合物(1)を析出させることができる。特に、フルオレン化合物(1)を前記晶析溶媒に、加熱して溶解し、冷却することによって、より純度の高いフルオレン化合物(1)を析出または晶析させることができる。なお、溶解後、必要に応じて所定量の溶媒を減圧留去して、晶析溶媒の量を前記割合の範囲に調整してもよい。また、晶析溶媒は、加熱前に全ての溶媒を予め添加(または混合)してもよく、段階的に添加、例えば、一部の溶媒を添加して所定温度に昇温後、残部の溶媒を添加してもよい。
【0082】
フルオレン化合物(1)を前記晶析溶媒に溶解する温度は、溶媒の沸点未満の温度、例えば30~200℃であり、好ましい範囲としては、以下段階的に、50~150℃、60~130℃、70~120℃、75~100℃である。
【0083】
晶析溶媒にフルオレン化合物(1)を溶解させて得られた溶液は、冷却することで、より純度の高いフルオレン化合物(1)を晶析させる。晶析は急冷、放冷または徐冷して行ってもよく、急冷すると純度の高いフルオレン化合物(1)を比較的容易に得易いようである。代表的な冷却速度は、例えば、0.1~100℃/分程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1℃/分以上、1~50℃/分、3~30℃/分、5~20℃/分、7~15℃/分、8~12℃/分、9~11℃/分である。また、析出温度(析出または晶析し始める温度)は80℃以下であってもよく、例えば30~80℃、好ましくは40~75℃、さらに好ましくは50~70℃、より好ましくは55~65℃である。到達冷却温度は、例えば-10℃~30℃、好ましくは-5℃~20℃、さらに好ましくは0~10℃である。前記到達冷却温度における保持時間は特に制限されず、例えば1分~12時間程度であってもよく、好ましくは0.5~6時間、さらに好ましくは1~3時間である。
【0084】
晶析操作において、必要であれば、種晶を添加してもよく、晶析操作は、一回のみ行ってもよく、複数回繰り返して行ってもよい。晶析により生成した結晶を、通常、吸引ろ過などのろ過、遠心分離などの分離手段によりろ別し、乾燥することにより、高い純度のフルオレン化合物(1)を得ることができる。
【0085】
晶析後の乾燥は減圧乾燥であってもよく、乾燥温度は、例えば、50~200℃程度であってもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、60~150℃、70~120℃、80~100℃、85~95℃であり、一度に昇温して乾燥してもよく、段階的に昇温して乾燥してもよい。乾燥時間は、例えば1時間~1週間程度であってもよく、好ましくは1~3日である。
【0086】
精製工程では、晶析に供される前の反応液(反応混合物)を必要に応じて中和、洗浄した後、反応液混合物から不純物を除去し、残渣を前記晶析溶媒にフルオレン化合物(1)を溶解して、より純度の高いフルオレン化合物を晶析してもよい。
【0087】
[中間反応工程]
中間反応工程では、前記反応工程の前工程として、酸触媒、チオール類および非プロトン性極性溶媒の存在下、前記式(2)で表されるフルオレノン類と前記式(3a)および(3b)で表される化合物とを反応させて、フルオレン化合物(1a)を含む中間反応液(中間反応混合物)を得る。
【0088】
(式(2)で表されるフルオレノン類)
前記式(2)において、Rおよびnは、好ましい態様も含めて、それぞれ前記式(1)と同一である。前記式(2)で表されるフルオレノン類としては、フルオレノン(または9-フルオレノン);メチルフルオレノンなどのアルキルフルオレノンなどが挙げられる。これらのうち、フルオレノンが好ましい。
【0089】
(式(3a)および(3b)で表される化合物)
前記式(3a)および(3b)において、環Z、環Z、R、R、m1およびm2は、好ましい態様も含めて、それぞれ前記式(1)と同一である。前記式(3a)および(3b)で表される化合物としては、1-ナフトール、2-ナフトールなどのナフトール;メチルナフトールなどのC1-4アルキルナフトールなどが挙げられる。これらのうち、2-ナフトールが好ましい。
【0090】
前記式(3a)および(3b)で表される化合物の割合は、前記式(2)で表されるフルオレノン類1モルに対して、例えば2~5モル、好ましくは2.3~4モル、さらに好ましくは2.5~3.5モルである。
【0091】
(酸触媒)
中間反応工程で使用される酸触媒としては、無機酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。これらのうち、無機酸が好ましい。無機酸としては、硫酸、塩化水素、塩酸、リン酸などが挙げられる。これらの無機酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機酸のうち、反応の進行により生成する水の脱水剤としても作用する点から、硫酸がさらに好ましく、濃硫酸がより好ましい。
【0092】
前記硫酸には、濃度30~90質量%程度の希硫酸、濃度90質量%以上の濃硫酸、発煙硫酸などが含まれ、反応系において硫酸に転化可能であれば、硫酸前駆体として、三酸化硫黄を使用してもよい。硫酸としては、HSO換算で、濃度が80~99質量%程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、90~99質量%、93~99質量%、96~99質量%、97~98.5質量%の濃硫酸であり、特に98質量%の濃硫酸が好ましい。
【0093】
酸触媒の割合は、前記フルオレノン類100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度の範囲から選択でき、例えば30~500質量部、好ましくは50~300質量部、さらに好ましくは80~200質量部、より好ましくは100~150質量部である。酸触媒の割合が少なすぎると、反応を効率よく進行できない(または反応速度が著しく低下する)虞があり、逆に多すぎると、純度が低下する虞がある。
【0094】
(チオール類)
チオール類としては、メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、β-メルカプトプロピオン酸、α-メルカプトプロピオン酸、チオシュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸などのメルカプトカルボン酸;チオ酢酸、チオプロピオン酸などのチオカルボン酸;メルカプトエタノールなどのチオグリコール;メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、1-オクチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;ベンジルメルカプタンなどのアラルキルメルカプタン;2-アミノエタンチオール(別称:システアミン)、2-アミノプロパンチオール、3-アミノプロパンチオール、2-アミノブタンチオール、3-アミノブタンチオール、4-アミノブタンチオール、6-アミノヘキサンチオール、8-アミノオクタンチオール、11-アミノウンデカンチオール、16-アミノヘキサデカンチオールなどのアミノC2-20アルカンチオールなどが挙げられる。これらのチオール類は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0095】
チオール類は塩の形態であってもよい。代表的な塩としては、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;酢酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩;またはこれらの複塩などが挙げられる。
【0096】
これらのチオール類のうち、メルカプトC2-4カルボン酸が好ましく、β-メルカプトプロピオン酸などのメルカプトC2-3カルボン酸が特に好ましい。
【0097】
チオール類の割合は、前記フルオレノン類100質量部に対して、例えば0.1~50質量部、好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部、より好ましくは1.5~3質量部である。チオール類の割合が少なすぎると、反応転化率が低下する虞があるのみならず、未反応成分などの不純物により純度が低下する虞があり、逆に多すぎると、チオール類が不純物として残留する虞がある。
【0098】
(溶媒)
中間反応工程で使用される溶媒は、純度が高いフルオレン化合物(1a)を効率よく製造できる点から、非プロトン性極性溶媒を含む。
【0099】
非プロトン性極性溶媒としては、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、アミド類、尿素類、ニトリル類、ニトロ化炭化水素類、ホスホルアミド類、スルホン類、スルホキシド類などが挙げられる。これらの非プロトン性極性溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0100】
前記非プロトン性極性溶媒のうち、エーテル類、スルホン類、スルホキシド類、尿素類およびアミド類から選択される少なくとも1種が好ましく、エーテル類、スルホン類、尿素類およびアミド類から選択される少なくとも1種を含むのがさらに好ましく、少なくとも分子内に環状構造を有する環式化合物(環状構造を有する非プロトン性極性溶媒)を含むのがより好ましく、環状エーテル類、環状スルホン類、環状尿素類および環状アミド類から選択される少なくとも1種を含むのが最も好ましい。
【0101】
前記環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどのC1-4アルキル基を有していてもよいテトラヒドロフラン類またはジオキサン類が挙げられ、なかでも、C1-3アルキル基を有していてもよいジオキサン類が好ましく、1,4-ジオキサンなどのC1-2アルキル基を有していてもよい1,4-ジオキサン類がより好ましく、1,4-ジオキサンが最も好ましい。
【0102】
前記環状スルホン類としては、スルホランなどのC1-4アルキル基を有していてもよいテトラないしペンタメチレンスルホン類が挙げられ、C1-3アルキル基を有していてもよいスルホラン類が好ましく、C1-2アルキル基を有していてもよいスルホラン類がさらに好ましく、スルホランが最も好ましい。
【0103】
前記環状尿素類としては、1,3-ジメチル-2-イミダゾール(DMI)、N,N’-ジメチル-N,N’-トリメチレン尿素などのC1-4アルキル基を有していてもよいN,N’-ジC1-6アルキル-N,N’-ジ乃至トリメチレン尿素類が挙げられ、C1-3アルキル基を有していてもよいN,N’-ジC1-4アルキル-エチレン尿素類が好ましく、C1-2アルキル基を有していてもよいN,N’-ジC1-3アルキル-エチレン尿素類がさらに好ましく、DMIが最も好ましい。
【0104】
前記環状アミド類としては、NMPなどのC1-4アルキル基を有していてもよい5~7員環ラクタムが挙げられ、C1-3アルキル基を有していてもよい5~6員環ラクタムが好ましく、C1-2アルキル基を有していてもよい5員環ラクタムがさらに好ましく、NMPが最も好ましい。
【0105】
これらの非プロトン性極性溶媒のうち、C1-3アルキル基を有していてもよいジオキサン類が好ましく、1,4-ジオキサンなどのC1-2アルキル基を有していてもよい1,4-ジオキサン類がより好ましく、1,4-ジオキサンが最も好ましい。
【0106】
非プロトン性極性溶媒の割合は、前記フルオレノン類100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度の範囲から選択してもよく、例えば30~500質量部、好ましくは50~300質量部、さらに好ましくは80~200質量部、より好ましくは100~150質量部である。非プロトン性極性溶媒の割合が多すぎると、原料の濃度が低すぎて反応性が低下する虞があり、非プロトン性極性溶媒の割合が少なすぎると、粘度が高すぎて反応性が低下する虞がある。
【0107】
溶媒は、非プロトン性極性溶媒に加えて、他の溶媒をさらに含んでいてもよい。他の溶媒としては、炭化水素類および/またはハロゲン化炭化水素類が好ましい。炭化水素類およびハロゲン化炭化水素類としては、反応工程で使用される溶媒として例示された脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。他の溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。他の溶媒のうち、芳香族炭化水素類が好ましく、モノないしトリC1-4アルキル-ベンゼンがさらに好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのモノまたはジC1-2アルキル-ベンゼンがより好ましい。
【0108】
他の溶媒の割合は、全溶媒中50質量%以下であり、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。他の溶媒の割合が多すぎると、高い純度でフルオレン化合物(1a)を製造するのが困難となる虞がある。
【0109】
非プロトン性極性溶媒の割合は、全溶媒中50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0110】
溶媒の割合は、前記フルオレノン類100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度の範囲から選択してもよく、例えば30~500質量部、好ましくは50~300質量部、さらに好ましくは80~200質量部、より好ましくは100~150質量部である。溶媒の割合が多すぎると、原料の濃度が低すぎて反応性が低下する虞があり、溶媒の割合が少なすぎると、粘度が高すぎて反応性が低下する虞がある。
【0111】
(反応条件)
反応温度は、特に限定されないが、例えば0~200℃程度の範囲から選択でき、例えば10~150℃、好ましくは30~100℃、さらに好ましくは40~80℃、より好ましくは50~70℃である。反応時間は、特に制限されず、0.1~24時間程度の範囲から選択でき、例えば0.5~12時間、好ましくは1~8時間、さらに好ましくは2~5時間である。
【0112】
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中または窒素ガスや希ガスなど不活性雰囲気中で行ってもよく、常圧または加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
【0113】
中間反応工程では、前記原料組成物を用いて特定の条件で反応を行うことにより、前記フルオレノン類を高い反応転化率で反応させることができる。そのため、前記フルオレノン類の反応転化率は、通常90モル%以上であり、例えば93モル%以上、好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは96モル%以上、より好ましくは98モル%以上、最も好ましくは99モル%以上である。
【0114】
[中間反応液の精製工程]
得られた中間反応液は、そのまま反応工程に供してもよいが、純度の高いフルオレン化合物(1)を効率良く製造できる点から、精製工程に供することにより中間反応液からフルオレン化合物(1a)を取り出して反応工程に供するのが好ましい。
【0115】
中間反応液には、フルオレン化合物(1a)以外に、未反応の前記式(3a)および(3b)で表される化合物、酸触媒、チオール類、溶媒、水などが含まれる。このような中間反応液からのフルオレン化合物(1a)の分離(または精製)には、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、中和、洗浄、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの精製または分離手段や、これらを組み合わせた精製または分離手段を利用できる。中間反応液の精製工程は、例えば、炭酸水素ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を加えて中和する方法などにより酸触媒(およびチオール類)を除去した後、フルオレン化合物(1a)を晶析することにより、分離(精製)してもよい。
【実施例0116】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。また、反応生成物である9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン(以下「BNF」と称する)および9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(以下「BNEF」と称する)の分析方法を以下に示す。
【0117】
(HPLC:BNFの分析)
HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LC-2010C HT」、カラムとして東ソー(株)製「ODS-80TM」を用いて、アセトニトリルに試料を溶解してアセトニトリルと水とを溶離液とし、HPLC純度[面積%]を測定した。
【0118】
(HPLC:BNEFの分析)
HPLC(高性能または高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「Nexera-iLC-2040C Plus」、カラムとして(株)島津ジーエルシー製「Luna PFP(2)」を用いて、アセトニトリルに試料を溶解して、アセトニトリルと0.1質量%リン酸水溶液とを溶離液とし、HPLC純度[面積%]を測定した。
【0119】
実施例1
1Lのセパラブルフラスコに、フルオレノン(以下「FLN」と称する)40.0g(0.22モル)、β-ナフトール96.0g(0.67モル)、1,4-ジオキサン55.5g、β-メルカプトプロピオン酸0.7gを加えて、60℃で溶解した。溶解後、55~65℃の温度範囲で濃硫酸57.2gを滴下した後、60℃で4時間撹拌したところ、FLNの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。得られた反応液に1,4-ジオキサン18.5gとo-キシレン255.1g、水74.0gを加えて、80℃で十分に撹拌し、水層を除去した。その後、5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液74.0gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した。さらに、1質量%塩酸74.0gを加えて、十分撹拌し、水層を除去した後、有機層を水で複数回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することで、o-キシレンを除去した後、70℃に加温したトルエン249.8gを加えて、冷却晶析を行った。冷却晶析は、50℃にて結晶析出を確認した後、ヘプタン36.7gを添加した後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、0~10℃の温度範囲でさらに2時間熟成させてろ過し、次いで、0~10℃に調整した冷トルエンですすいでろ過した後、85℃で減圧乾燥することで、BNF 66.8g(FLNからの換算収率66.8%、HPLC純度98.4%)を得た。
【0120】
続いて、500mLのセパラブルフラスコに、BNF 56.3g(0.13モル)、炭酸エチレン38.5g(0.44モル)、炭酸カリウム1.7g、DMF 62.6g、テトラブチルアンモニウムブロミド(以降、TBABともいう)2.0gを加えて、110℃で2時間反応したところ、BNFの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。
【0121】
その後、得られた反応液に3質量%水酸化ナトリウム水溶液50.0gを加えて、90℃で8時間撹拌した。その後、メチルイソブチルケトン(以下「MIBK」と称する)62.6g、トルエン62.6gを加えて、80℃で十分撹拌し、水層を除去した。続いて、3質量%塩酸38.0gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した。その後、有機層を水で複数回洗浄し、冷却晶析を行った。冷却晶析は、60℃にて結晶析出を確認した後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、0~10℃の温度範囲でさらに2時間熟成させてろ過し、次いで、0~10℃に調整した冷トルエンと冷メタノールで順にすすいでろ過した後、90℃で減圧乾燥することで、BNEF 57.4g(BNFからの換算収率85.3%、FLNからの換算収率57.0%、HPLC純度98.8%)を得た。
【0122】
実施例2
1Lのセパラブルフラスコに、FLN 80.0g(0.44モル)、β-ナフトール192.0g(1.33モル)、1,4-ジオキサン111.1g、β-メルカプトプロピオン酸1.4gを加えて、60℃で溶解した。溶解後、55~65℃の温度範囲で濃硫酸114.4gを滴下した後、60℃で4時間撹拌したところ、FLNの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。得られた反応液に1,4-ジオキサン37.0gとo-キシレン510.2g、水148.0gを加えて、80℃で十分に撹拌し、水層を除去した。その後、5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液148.0gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した。さらに、1質量%塩酸148.0gを加えて、十分撹拌し、水層を除去した後、有機層を水で複数回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮することで、o-キシレンを除去した後、70℃に加温したトルエン499.6gを加えて、冷却晶析を行った。冷却晶析は、50℃にて結晶析出を確認した後、ヘプタン73.4gを添加した後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、0~10℃の温度範囲でさらに2時間熟成させてろ過し、次いで、0~10℃に調整した冷トルエンですすいでろ過した後、85℃で減圧乾燥することで、BNF 133.6g(FLNからの換算収率66.8%、HPLC純度98.4%)を得た。
【0123】
続いて、500mLのセパラブルフラスコに、BNF 67.6g(0.15モル)、炭酸エチレン31.7g(0.36モル)、炭酸カリウム2.1g、MIBK 75.1g、トルエン19.1g、DMF 15.0g、TBAB 2.4gを加えて、110℃で6時間反応したところ、BNFの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。
【0124】
その後、得られた反応液にDMF60.0g、6質量%水酸化ナトリウム水溶液30.0gを加えて、90℃で2時間撹拌した。その後、トルエン56.1g、水30.0gを加えて、80℃で十分撹拌し、水層を除去した。続いて、3質量%シュウ酸水112.5gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した。2.4質量%食塩水61.4gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した後、DMF 37.8g、MIBK 37.6gを加えた。その後、有機層を水で複数回洗浄した後、メタノール25.0gを加えて、冷却晶析を行った。冷却晶析は、50℃にて結晶析出を確認した後、10℃/時の速度で20℃以下まで冷却し20℃で9時間熟成し、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、0~10℃の温度範囲でさらに1時間熟成させてろ過し、次いで、0~10℃に調整した冷トルエンと冷メタノールで順にすすいでろ過した後、120℃で減圧乾燥することで、BNEF 58.5g(BNFからの換算収率72.4%、FLNからの換算収率48.4%、HPLC純度98.2%)を得た。
【0125】
実施例3
1Lのセパラブルフラスコに、FLN 40.0g(0.22モル)、β-ナフトール96.0g(0.67モル)、1,4-ジオキサン55.5g、β-メルカプトプロピオン酸0.7gを加えて、60℃で溶解した。溶解後、55~65℃の温度範囲で濃硫酸57.2gを滴下した後、60℃で4時間撹拌したところ、FLNの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。得られた反応液にトルエン255.1g、水74.0gを加えて、80℃で十分に撹拌し、水層を除去した。その後、5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液74.0gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した。さらに、1質量%塩酸74.0gを加えて、十分撹拌し、水層を除去した後、有機層を水で複数回洗浄し、冷却晶析を行った。冷却晶析は、60℃にてヘプタン27.6gを添加した後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、0~10℃の温度範囲でさらに2時間熟成させてろ過し、次いで、0~10℃に調整した冷トルエンですすいでろ過することで、トルエンおよび1,4-ジオキサンを20質量%程度含む粗BNF 97.3g(HPLC純度96.9%)を得た。
【0126】
続いて、500mLのセパラブルフラスコに、粗BNF 68.6g、炭酸エチレン38.5g(0.44モル)、炭酸カリウム1.7g、DMF 62.6g、TBAB2.0gを加えて、110℃で2時間反応したところ、BNFの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。得られた反応液に3質量%水酸化ナトリウム水溶液50.0gを加えて、90℃で8時間撹拌した。その後、MIBK 62.6g、トルエン62.6gを加えて、80℃で十分撹拌し、水層を除去した。続いて、3質量%塩酸38.0gを加えて、十分に撹拌し、水層を除去した。その後、有機層を水で複数回洗浄し、冷却晶析を行った。冷却晶析は、60℃にて結晶析出を確認した後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、0~10℃の温度範囲でさらに2時間熟成させてろ過し、次いで、0~10℃に調整した冷トルエンと冷メタノールで順にすすいでろ過した後、90℃で減圧乾燥することで、BNEF 52.5g(FLNからの換算収率62.3%、HPLC純度98.3%)を得た。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の製造方法で得られたフルオレン含有アルコールは、耐熱性に優れ、着色も抑制できるため、樹脂原料や、耐熱性向上剤、屈折率向上剤などの添加剤(または樹脂添加剤)などとして有効に利用できる。