IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159086
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】自動食器洗浄機用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/83 20060101AFI20221006BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 7/16 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 7/10 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/06 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/22 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20221006BHJP
   C11D 1/04 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C11D1/83
C11D7/32
C11D7/16
C11D7/22
C11D7/10
C11D3/33
C11D3/06
C11D3/37
C11D3/20
C11D7/26
C11D1/22
C11D1/29
C11D1/14
C11D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022051066
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2021059928
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】川村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】穂積 賢司
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB03
4H003AB19
4H003AB27
4H003AB31
4H003AC09
4H003BA12
4H003DA19
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA03
4H003EA08
4H003EA09
4H003EA12
4H003EA21
4H003EA22
4H003EB08
4H003EB15
4H003EB16
4H003EB30
4H003EB32
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】液性が中性から弱アルカリの領域でも食器洗浄機による洗浄でタンパク質を含む汚れを効果的に洗浄できる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物、及び食器の洗浄方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量が0.5質量%を超え30質量%以下であり、25℃におけるpHが6以上11以下である、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
(a)成分:pH7.5、60℃における条件付きカルシウム安定度定数pK’Caが3.2以上のキレート剤
(b)成分:酸化還元電位が+71mV以下の還元剤
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量が0.5質量%を超え30質量%以下であり、25℃におけるpHが6以上11以下である、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
(a)成分:pH7.5、60℃における条件付きカルシウム安定度定数pK’Caが3.2以上のキレート剤
(b)成分:酸化還元電位が+71mV以下の還元剤
【請求項2】
(a)成分が、エチレンジアミン4酢酸、ヘキサメタリン酸、ポリアクリル酸、アクリル酸-マレイン酸共重合体、クエン酸、トリポリリン酸、ニトリロ三酢酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、酸化還元電位が+0mV以上+71mV以下の還元剤である、請求項1又は2に記載に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項4】
(b)成分が、亜硫酸塩、二硫酸塩、チオ硫酸塩、及びヨウ化物塩から選ばれる1種以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、二硫酸ナトリウム、二硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、ヨウ化ナトリウム、及びヨウ化カリウムから選ばれる1種以上である、請求項1~3の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項6】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(b)/(a)が、0.05以上7以下である、請求項1~5の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項7】
更に下記(c)成分を含有する、請求項1~6の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
(c)成分:ノニオン界面活性剤
【請求項8】
(a)成分の含有量と(c)成分の含有量との質量比(c)/(a)が、0.001以上8以下である、請求項7に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項9】
更に下記(d)成分を含有する、請求項1~8の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
(d)成分:アニオン性界面活性剤
【請求項10】
(d)成分が、アルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、アルカンスルホン酸、オレフィンスルホン酸、脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である、請求項9に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項11】
(d)成分が、炭素数6以上16以下のアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩である、請求項9又は10に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項12】
(a)成分の含有量と(d)成分の含有量との質量比(d)/(a)が、0.001以上20以下である、請求項9~11の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項13】
自動食器洗浄機を用いて、請求項1~12の何れか1項に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を水で希釈して調製した洗浄液で、タンパク質を含む汚れが付着した食器を洗浄する、食器の洗浄方法。
【請求項14】
前記洗浄液が、請求項1~12の何れか1項に記載の食器洗浄機用洗浄剤組成物を水で1倍超2000倍以下に希釈して調製されたものである、請求項13に記載の食器の洗浄方法。
【請求項15】
前記洗浄液を前記食器に20秒以上600秒以下接触させる、請求項13又は14に記載の食器の洗浄方法。
【請求項16】
前記洗浄液の温度が40℃以上80℃以下である、請求項13~15の何れか1項に記載の食器の洗浄方法。
【請求項17】
タンパク質を含む汚れが、卵黄に由来するタンパク質を含む汚れである、請求項13~16の何れか1項に記載の食器の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物及び食器の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食器洗浄機は、家庭やレストラン、喫茶店などの厨房における汚れた皿、グラス、料理器具等の食器類の洗浄、食品飲料工場で使用される食材及び製品用のプラスチックコンテナの洗浄に使用されている。主な対象汚れとして、食品由来のタンパク質、デンプン、油脂等があり、これらの汚れが複合して、皿、グラス、料理器具等の食器、プラスチックコンテナに付着している。また、加熱調理の際にこれらの汚れが熱変性し、強固な汚れとなり固着している場合もある。
【0003】
通常、食器洗浄機による洗浄は、洗浄工程、濯ぎ工程の順で行われている。これら工程の所要時間は、業務用途では、工程設計上では、洗浄工程が40~180秒程度、濯ぎ工程が5~20秒程度と、非常に短時間である。しかしながら、強固な汚れの場合にはこのような設計時間では洗浄が不充分になることがあり、充分な洗浄のためには洗浄工程に設計の数倍の時間をかけることは珍しくない。
【0004】
特許文献1には、亜硫酸ソーダ及び界面活性剤を必須成分とし、pHを5~8の範囲に調整した水溶液で、特に白木の洗浄に用いた場合に、素材を傷めることなく、優れた洗浄力と持続性を示す住居用洗浄剤が開示されている。
特許文献2には、特定のスルホコハク酸アルキルエステル(A)及びプロテアーゼ(B)を含有することで、大きな機械力をかけずに食器又は調理器具の汚れを洗浄することができる液体洗浄剤組成物が開示されている。
特許文献3には、a)アルカノールアミンと、b)亜硫酸塩と、c)アルデヒド又はケトンを含む香油と、d)イオウ含有プロ香料化合物と、を含み、改善された安定性と香料寿命をもたらす液体洗剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-146394号公報
【特許文献2】特開2015-199941号公報
【特許文献3】特表2016-522279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食器に付着する汚れは様々であるが、なかでもタンパク質を含む汚れは、変質、固化しやすく、業務用の食器洗浄機による短時間の洗浄では落としにくい汚れである。特に卵黄などは、汚れ付着後に経時の乾燥、変性等による汚れの変質の状態によっては、汚れが強固に固着し短時間での洗浄をより難しくしている。短時間の洗浄でタンパク質を含む汚れを効果的に洗浄するために、現状では強アルカリ条件での洗浄を余儀なくされるが、作業者や環境への影響を踏まえると、液性は中性から弱アルカリの領域での実施が望まれる。
【0007】
本発明は、液性が中性から弱アルカリの領域でも食器洗浄機による洗浄でタンパク質を含む汚れを効果的に洗浄できる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物、及び食器の洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有し、(b)成分の含有量が0.5質量%を超え30質量%以下であり、25℃におけるpHが6以上11以下である、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:pH7.5、60℃における条件付きカルシウム安定度定数pK’Caが3.2以上のキレート剤
(b)成分:酸化還元電位が+71mV以下の還元剤
【0009】
また本発明は、自動食器洗浄機を用いて、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を水で希釈して調製した洗浄液で、タンパク質を含む汚れが付着した食器を洗浄する、食器の洗浄方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液性が中性から弱アルカリの領域でも食器洗浄機による洗浄でタンパク質を含む汚れを効果的に洗浄できる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物、及び食器の洗浄方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物、及び食器の洗浄方法が、液性が中性から弱アルカリの領域でも食器洗浄機による洗浄でタンパク質を含む汚れを効果的に洗浄できる理由は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
本発明者らは、乾燥した卵黄汚れ等の難洗浄性タンパク汚れを解析した結果、洗浄剤に含まれる界面活性剤等で汚れを剥離、分散しづらい要因として、タンパク質構造体中のタンパク質分子内、或いは分子間でジスルフィド結合(-SS-結合)が構造を安定化していること、及び、タンパク構造体中のリン酸基がCaイオンを介してタンパク分子内、或いは分子間でリン酸Ca架橋構造が構造を安定化していること、により界面活性剤による膨潤や分散を起こしにくい構造が形成することに起因していることを見出した。そこで本発明においては、(b)成分である特定の酸化還元電位を有する還元剤によって、タンパク構造体中のジスルフィド結合を切断し、更に、(a)成分である特定の条件付きカルシウム安定度定数pK’Caのキレート剤によって、タンパク構造体中のリン酸Ca架橋を切断することで、中性から弱アルカリ性領域であっても容易に難洗浄性タンパク質を食器から剥離、水中に分散することができたものと考えられる。この時、還元剤はジスルフィド結合を切断できる還元能を持つことが重要であり、酸化還元電位が、ジスルフィド結合の酸化還元電位である+71mV以下であること、及び、キレート剤はリン酸Ca架橋を切断できるキレート能を持つことが重要であり、リン酸カルシウムのpK’Caが3.2以上であれば、相乗的に難洗浄性タンパク質の構造を緩めることができ、業務用食器洗浄機の短時間の洗浄時間であっても充分にタンパク構造体中のジスルフィド結合及びリン酸Ca架橋を切断できたものと考えられる。
尚、本発明の効果発現はここに示す作用機作に限定されるものではない。
【0012】
[自動食器洗浄機用洗浄剤組成物]
<(a)成分>
(a)成分は、pH7.5、60℃における条件付きカルシウム安定度定数pK’Caが3.2以上のキレート剤である。
(a)成分の条件付きカルシウム安定度定数pK’Caは、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは3.3以上、より好ましくは3.4以上である。(a)成分のpK’Caの上限値は、カルシウムへのキレート能から制限されるものではないが、入手容易性の観点から、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。
(a)成分のpH7.5、60℃における条件付きカルシウム安定度定数pK’Caは、以下の方法に測定される値を用いる。
カルシウムイオン選択電極(例えば、HORIBA社製)を用いて、60℃、100mLの蒸留水中に25℃、2g/Lの塩化カルシウム溶液を0.2mLずつ滴下し、その時の電位を測定し、各滴下量におけるカルシウムイオン濃度の対数を横軸に、電位を縦軸にとって、1次の近似式を算出する。続いて、(a)成分に蒸留水を加えて、1g/Lの濃度となるように調製し、1N水酸化ナトリウム及び/又は1N塩酸でpH7.5に調整して、キレート剤溶液を調製する。キレート剤溶液を100mL取り出し、60℃に加熱し、25℃、2g/Lの塩化カルシウム溶液を3mL滴下して、カルシウムイオン選択電極(例えば、HORIBA社製)を用いて、電位を測定する。この時の電位を近似式に代入して、キレート剤溶液中の捕捉されていないカルシウム濃度A(mol/L)を計算し、下記式に、キレート剤の濃度B(mol/L)とともに代入して、K’Caを計算し、対数をとってpK’Caを算出する。
K’Ca=(5.4×10-5-A)/(A×(B-(5.4×10-5-A)
【0013】
(a)成分は、具体的には、エチレンジアミン4酢酸(pK’Ca6.0)、ヘキサメタリン酸(pK’Ca5.7)、ポリアクリル酸(pK’Ca4.2)、アクリル酸-マレイン酸共重合体(pK’Ca約4.6(モノマー比率によって変動する可能性がある))、クエン酸(pK’Ca3.4)、トリポリリン酸(pK’Ca3.8)及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられ、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくはエチレンジアミン4酢酸、ヘキサメタリン酸、ポリアクリル酸、アクリル酸-マレイン酸共重合体、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはポリアクリル酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上である。塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられ、入手容易性の観点から、カリウム塩又はナトリウム塩が好ましい。
【0014】
(a)成分のポリアクリル酸又はその塩は、アクリル酸以外のモノマーであって、アクリル酸と共重合可能なモノマー(ただしマレイン酸を除く)を含んだコポリマーであってもよい。アクリル酸と共重合可能なモノマー(ただしマレイン酸を除く)の全構成モノマー中のモル比は、タンパク質洗浄性の観点から、0モル%以上、そして、5モル%以下、好ましくは3モル%以下であり、より好ましくは0モル%である。また(a)成分のポリアクリル酸又はその塩の重量平均分子量は、タンパク質洗浄性及び作業性の観点から、1,000以上、好ましくは2,000以上、そして、20,000以下、好ましくは17,000以下である。この重量平均分子量は、アセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝溶液)を展開溶媒とし、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで分子量既知の一般に市販され入手可能なポリマー標準試薬であるポリアクリル酸(例えば、シグマアルドリッチ製分子量スタンダード試薬)を標準物質として求めたものである。
【0015】
(a)成分のアクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩は、アクリル酸/マレイン酸のモル比が、タンパク質洗浄性の観点から、0.25以上、好ましくは0.4以上、そして、4以下、好ましくは2.5以下である。(a)成分のアクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩は、アクリル酸及びマレイン酸以外のモノマーであって、アクリル酸及び/又はマレイン酸と共重合可能なモノマーを含んだコポリマーであってもよい。アクリル酸及びマレイン酸以外のモノマーであって、アクリル酸及び/又はマレイン酸と共重合可能なモノマーの全構成モノマー中のモル比は、タンパク質洗浄性の観点から、0モル%以上、そして、5モル%以下、好ましくは3モル%以下、より好ましくは0モル%である。また(a)成分のアクリル酸-マレイン酸共重合体又はその塩の重量平均分子量は、タンパク質洗浄性及び作業性の観点から、1,000以上、好ましくは2,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは90,000以下である。この重量平均分子量は、アセトニトリルと水の混合溶媒(リン酸緩衝溶液)を展開溶媒とし、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで分子量既知の一般に市販され入手可能なポリマー標準試薬であるポリアクリル酸(例えば、シグマアルドリッチ製分子量スタンダード試薬)を標準物質として求めたものである。
【0016】
<(b)成分>
(b)成分は、酸化還元電位が+71mV以下の還元剤である。
(b)成分の酸化還元電位は、タンパク質洗浄性の観点から、+71mV以下、好ましくは+60mV以下、より好ましくは+55mV以下、更により好ましくは+50mV以下である。又、(b)成分の酸化還元電位の下限は、低ければ低いほど効果は期待でき、特に限定するものではないが、入手容易性の観点から、好ましくは0mV以上、より好ましくは3mV以上である。
(b)成分の酸化還元電位は、以下の方法に測定される値を用いる。
(b)成分に、0.016mol/Lの濃度となるように蒸留水を加え、1mol/Lの塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを添加してpH7.5に調整して、調製液を調製する。調整液を60℃に調温し、酸化還元電位計(例えば、株式会社セムコーポレーション製ORP測定器(ORP5 ペン ORP計))を用いて、酸化還元電位を測定する。
【0017】
(b)成分は、具体的には、亜硫酸塩、二硫酸塩、チオ硫酸塩、及びヨウ化物塩から選ばれる1種以上であり、具体的には、亜硫酸ナトリウム(+50mV)、亜硫酸カリウム(+50mV)、二硫酸ナトリウム(+17mV)、二硫酸カリウム(+17mV)、ヨウ化カリウム(+28mV)、ヨウ化ナトリウム(+28mV)、チオ硫酸ナトリウム(+5mV)、及びチオ硫酸カリウム(+5mV)から選ばれる1種以上が挙げられる。(b)成分は、酸化還元電位が、+71mV以下であれば特に限定するものではないが、タンパク質洗浄性及び入手容易性の観点から、好ましくは亜硫酸ナトリウム、二硫酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、及びチオ硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上であり、より好ましくは亜硫酸ナトリウム、二硫酸ナトリウム、及びチオ硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上である。但し( )内は、酸化還元電位の値を示す。
【0018】
<組成等>
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(a)成分を、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは12質量%以下含有することができる。
なお本発明において、(a)成分の質量に関する規定は、ナトリウム塩に換算した値を用いることとする。
【0019】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(b)成分を、タンパク質洗浄性及び作業性を考慮した製剤化の観点から、0.5質量%を超え、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上、より更に好ましくは1.0質量%以上、より更に好ましくは2.0質量%以上、そして、タンパク質洗浄性及び製剤としての性状安定性の観点から、30質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは18質量%以下、より更に好ましくは15質量%以下含有することができる。
【0020】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物において、(b)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(b)/(a)は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.08以上、更に好ましくは0.1以上、より更に好ましくは0.2以上、より更に好ましくは0.3以上、より更に好ましくは1以上、そして、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2.5以下である。
【0021】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、タンパク質洗浄性、油洗浄性及び洗浄物の仕上がり性の観点から、更に(c)成分として、ノニオン界面活性剤を含有することができる。
【0022】
(c)成分のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、アルキルポリグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリセリルエーテル等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらのノニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシドは、タンパク質洗浄性の観点から、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドから選ばれるアルキレンオキシドを含むことが好ましく、アルキレンオキシドの平均付加モル数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは2以上、そして、好ましくは25以下である。
【0023】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル〔以下、(c1)成分という〕が好ましい。(c1)成分におけるアルキル基の炭素数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。(c1)成分におけるアルキレンオキシドは、タンパク質洗浄性の観点から、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドから選ばれるアルキレンオキシドを含むことが好ましい。また、(c1)成分におけるアルキレンオキシドの平均付加モル数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0024】
(c1)成分としては、炭素数10以上24以下の第2級アルコールアルキレンオキシド付加物が挙げられる。前記第2級アルコールの炭素数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下である。アルキレンオキシドは、タンパク質洗浄性の観点から、炭素数2以上4以下のアルキレンオキシドが好ましい。アルキレンオキシドは、タンパク質洗浄性の観点から、エチレンオキシド、及びプロピレンオキシドから選ばれるアルキレンオキシドを含むことが好ましい。アルキレンオキシドの平均付加モル数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、より更に好ましくは8以上、より更に好ましくは10以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0025】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(c)成分を、タンパク質洗浄性、油洗浄性及び洗浄物の仕上がり性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは4質量%以下含有することができる。
【0026】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物において、(c)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(c)/(a)は、洗浄性と安定性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1以下、より更に好ましくは0.8以下、より更に好ましくは0.5以下である。
【0027】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、タンパク質洗浄性の観点から、更に(d)成分として、アニオン性界面活性剤を含有することができる。
【0028】
(d)成分としては、アルキル又はアルケニルベンゼンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル硫酸エステル、アルキル又はアルケニル硫酸エステル、アルカンスルホン酸、オレフィンスルホン酸、脂肪酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。これらのアニオン界面活性剤の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などであってよい。
【0029】
(d)成分としては、タンパク質洗浄性及び抑泡性の観点から、炭素数6以上16以下のアルキル又はアルケニル硫酸エステル又はその塩が好ましい。
前記炭素数は、アルキル基又はアルケニル基の炭素数である。アルキル基又はアルケニル基は、タンパク質洗浄性の観点から、炭素数が、6以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、抑泡性の観点から、16以下、好ましくは14以下、より好ましくは12以下であり、直鎖若しくは分岐鎖であり、好ましくは直鎖である。また、硫酸エステル基に結合するアルキル基又はアルケニル基の炭素は、タンパク質洗浄性の観点から、1級炭素であることが好ましい。炭素数6以上16以下のアルキル又はアルケニル硫酸エステルの塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などであってよい。(d)成分は、タンパク質洗浄性の観点から、例えば炭素数10のアルキル硫酸エステル又はその塩が好ましい。
【0030】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、(d)成分を、タンパク質洗浄の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは3質量%以上、そして、タンパク質洗浄性及び製剤としての性状安定性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下含有することができる。
なお本発明において、(d)成分の質量に関する規定は、ナトリウム塩に換算した値を用いることとする。
【0031】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物において、(d)成分の含有量と(a)成分の含有量との質量比(d)/(a)は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上、より更に好ましくは0.1以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは3以下、より更に好ましくは1以下である。
【0032】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物では、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分の含有量の範囲は、それぞれ、前述した数値を任意に選択して組み合わせて設定することができる。
【0033】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、薬傷リスク低減の観点から、25℃におけるpHが、6以上、好ましくは6.2以上、より好ましくは6.5以上、そして、11以下、好ましくは10以下、より好ましくは9以下である。このpHは以下の測定法によるものである。
(1)pHの測定法
pHメーター(株式会社堀場製作所製、pH/イオンメーターF-23)にpH電極内部液を飽和塩化カリウム水溶液(3.33モル/L)としたpH測定用複合電極(株式会社堀場製作所製、ガラス摺り合わせスリーブ型)を接続する。次に、pH4.01標準液(フタル酸塩標準液)、pH6.86(中性リン酸塩標準液)、pH9.18標準液(ホウ酸塩標準液)をそれぞれ100mLビーカーに充填し、25℃の恒温槽に30分間浸漬する。恒温に調整された標準液にpH測定用電極を3分間浸し、pH6.86→pH9.18→pH4.01の順に校正操作を行う。測定対象となる自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を25℃に調整し、前記のpHメーターの電極をサンプルに浸漬し、1分後のpHを測定する。
【0034】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、薬傷リスク低減及び排水のpH低減による環境負荷低減の観点から、水で0.1質量%濃度に希釈した希釈物の25℃におけるpHが、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、そして、好ましくは10.5以下、より好ましくは9以下である。このpHは前記の測定法(ただし、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を、自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の希釈物と読み替える)によるものである。
【0035】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、組成物の安定性及び作業性の観点から、水を含有することが好ましい。水は、特に限定するものではないが、水道水、井戸水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。本水は、組成物の残部の量(合計が100質量%となる量)で用いられることが好ましい。水の含有量は、例えば、組成物中、20質量%以上、更に30質量%以上、更に50質量%以上、更に55質量%以上、更に60質量%以上、更に65質量%以上、更に70質量%以上とすることができる。
【0036】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、界面活性剤、酵素(タンパク質分解酵素、油脂分解酵素、糖質分解酵素等)、溶剤、ハイドロトロープ剤、分散剤、pH調整剤、増粘剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、抑泡剤、漂白剤、漂白活性化剤などの成分(ただし、(a)~(d)成分に該当するものを除く)を配合することができる。
【0037】
本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物の20℃における粘度は、タンパク質洗浄性の観点から、例えば、1200mPa・s以下、更に1000mPa・s以下であってよい。粘度の下限値は0mPa・s以上であってよい。この粘度は、B型粘度計で測定されたものである。
【0038】
本発明において、食器とは、
(i)皿、椀、コップ、箸、ナイフ、フォーク、スプーン等のいわゆる食器の他に、
(ii)タッパー、瓶等の保存容器、
(iii)包丁、まな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具、
(iv)ラック、コンテナ等の収容ないし搬送器具、
などの食材が接触する部材や器具を含む意味であってよい。
【0039】
<食器の洗浄方法>
本発明は、自動食器洗浄機を用いて、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を水で希釈して調製した洗浄液で、タンパク質を含む汚れが付着した食器を洗浄する、食器の洗浄方法を提供する。
本発明の食器の洗浄方法には、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物で述べた事項を適宜適用することができる。(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、各質量比、pH、食器の具体例や好ましい例も本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物と同じである。
【0040】
本発明の洗浄液は、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を水で1倍超、更に300倍以上、そして、2000倍以下、更に1500倍以下に希釈して調製されたものであってよい。
【0041】
本発明の洗浄液は、タンパク質洗浄性の観点から、(a)成分を、例えば、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、より更に好ましくは0.002質量%以上、より更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下含有することができる。
【0042】
本発明の洗浄液は、タンパク質洗浄性の観点から、(b)成分を、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、より更に好ましくは0.002質量%以上、より更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下含有することができる。
【0043】
本発明の洗浄液は、タンパク質洗浄性、油洗浄性及び洗浄物の仕上がり性の観点から、(c)成分を、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上、より更に好ましくは0.001質量%以上、より更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下含有することができる。
【0044】
本発明の洗浄液は、タンパク質洗浄、食器洗浄機庫内のスケール抑制の観点から、(d)成分を、例えば、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、更に好ましくは0.001質量%以上、より更に好ましくは0.002質量%以上、より更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下含有することができる。
【0045】
本発明では、洗浄液における(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分の含有量の範囲は、それぞれ、前述した数値を任意に選択して組み合わせて設定することができる。
【0046】
本発明の洗浄液のpHは、薬傷リスク低減、排水のpH低減による環境負荷低減の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは6.2以上、更に好ましくは6.5以上、そして、好ましくは10.5以下、より好ましくは10.2以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは9以下である。
【0047】
本発明の食器の洗浄方法では、洗浄液を前記食器に、タンパク質洗浄性の観点から、例えば、20秒以上、更に30秒以上、更に40秒以上、そして、600秒以下、更に300秒以下、更に180秒以下接触させる。
【0048】
本発明の食器の洗浄方法では、洗浄液の温度は、例えば、30℃以上、更に35℃以上、更に40℃以上、そして、90℃以下、更に80℃以下、更に70℃以下とすることができる。
【0049】
本発明の食器の洗浄方法では、洗浄液を前記食器に接触させる際の流速は、タンパク質洗浄性の観点から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上、更に好ましくは50m/min以上、そして、好ましくは2000m/min以下、より好ましくは1000m/min以下、より好ましくは500m/min以下、更に好ましくは250m/min以下、より更に好ましくは150m/min以下とすることができる。
【0050】
タンパク質を含む汚れは、卵黄に由来するタンパク質を含む汚れであってよい。
【0051】
洗浄液を食器に接触させた後は、水で食器をすすぐ。食器をすすぐ水の温度は、50℃以上、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上、そして、80℃以下である。
食器のすすぎ時間は、4秒以上、好ましくは5秒以上、そして、10秒以下、好ましくは9秒以下である。
すすぎ水の流速は、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上、更に好ましくは100m/min以上、そして、好ましくは2500m/min以下、より好ましくは2000m/min以下、更に好ましくは1500m/min以下である。
【0052】
本発明において、自動食器洗浄機は、一般に市場で入手可能な食器洗浄機であればよく、家庭用自動食器洗浄機を用いることも可能であるが、好ましくは業務用自動食器洗浄機である。業務用食器洗浄機による洗浄の際には、一般的には、本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、水と混合された洗浄液として用いられる。その際、該組成物は、供給装置によって業務用食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。本発明の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物は、例えば、業務用食器洗浄機専用のチューブを該組成物が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて供給される。その後、洗浄液は業務用食器洗浄機内部へ供給される。
【実施例0053】
実施例、比較例で用いた配合成分を以下にまとめて示す。
【0054】
<(a)成分>
・クエン酸:pK’Ca3.4、昭和化工(株)製
・ポリアクリル酸Na:ポリアクリル酸ナトリウム、pK’Ca4.2、分子量17,000、花王(株)製「ポイズ530」
・EDTA:エチレンジアミン4酢酸、pK’Ca6.0、東京化成工業(株)製
【0055】
<(a’)成分((a)成分の比較成分)>
・ASDA:L-アスパラギン-N,N-二酢酸、pK’Ca2.5、日東化学工業(株)製
【0056】
(a)成分、(a’)成分のpH7.5、60℃における条件付きカルシウム安定度定数pK’Caは、以下の方法により測定した。
HORIBA社製のカルシウムイオン選択電極を用いて、60℃、100mLの蒸留水中に25℃、2g/Lの塩化カルシウム溶液を0.2mLずつ滴下し、その時の電位を測定し、各滴下量におけるカルシウムイオン濃度の対数を横軸に、電位を縦軸にとって、1次の近似式を算出した。続いて、(a)成分又は(a’)成分に蒸留水を加えて、1g/Lの濃度となるように調製し、1N水酸化ナトリウム及び/又は1N塩酸でpH7.5に調整して、キレート剤溶液を調製した。キレート剤溶液を100mL取り出し、60℃に加熱し、25℃、2g/Lの塩化カルシウム溶液を3mL滴下して、HORIBA社製のカルシウムイオン選択電極を用いて、電位を測定した。この時の電位を近似式に代入して、キレート剤溶液中の捕捉されていないカルシウム濃度A(mol/L)を計算し、下記式に、キレート剤の濃度B(mol/L)とともに代入して、K’Caを計算し、対数をとってpK’Caを算出した。
K’Ca=(5.4×10-5-A)/(A×(B-(5.4×10-5-A)
【0057】
<(b)成分>
・亜硫酸ナトリウム:酸化還元電位50mV、富士フイルム和光純薬(株)製
・二硫酸ナトリウム:酸化還元電位17mV、富士フイルム和光純薬(株)製
・チオ硫酸ナトリウム:酸化還元電位5mV、富士フイルム和光純薬(株)製
・ヨウ化カリウム:酸化還元電位28mV、富士フイルム和光純薬(株)製
【0058】
<(b’)成分((b)成分の比較成分)>
・亜ジチオン酸ナトリウム:酸化還元電位76mV、富士フイルム和光純薬(株)製
・二酸化チオ尿素:酸化還元電位147mV、富士フイルム和光純薬(株)製
【0059】
(b)成分、(b’)成分の酸化還元電位は、以下の方法により測定した。 (b)成分又は(b’)成分に、0.016mol/Lの濃度となるように蒸留水を加え、1mol/Lの塩酸及び/又は水酸化ナトリウムを添加してpH7.5に調整して、調製液を調製した。調整液を60℃に調温し、株式会社セムコーポレーション製ORP測定器(ORP5 ペン ORP計)を用いて、酸化還元電位を測定した。
【0060】
<(c)成分>
・secC12-14EO7PO8.5:日本触媒(株)製「ソフタノールEP7085」、炭素数12~14の第2級アルコールに、エチレンオキシドを平均7モル、プロピレンオキシドを平均8.5モル、この順で付加した非イオン界面活性剤
【0061】
<(d)成分>
・C10AS:デシル硫酸ナトリウム、花王(株)製「エマール3F」
【0062】
表1に示す自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を用いて、以下の手順で卵黄汚れに対する洗浄力を評価した。結果を表1に示す。なお、表1の組成物のpHは、必要に応じて水酸化ナトリウム及び/又は硫酸で調整した。
【0063】
(1)SUSのステンレスバット(外寸法:幅258mm×奥行177mm×高さ18mm、底内寸法:235mm×155mm)の質量(質量A)を測定した。
(2)前記ステンレスバットに、卵黄を3g塗布して室温で3時間以上乾燥させた。
(3)乾燥後のステンレスバットの質量(質量B)を測定した。
(4)食器洗浄機としてホシザキ電機株式会社製JWE-400TAを用い、表1の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物を0.1質量%になるように水で希釈して洗浄液とし、前記乾燥後のステンレスバットを、温度60℃、時間80秒、洗浄液の流速100m/minで洗浄し、その数秒後に80℃のすすぎ水にて7秒、すすぎ水の流速1000m/minですすぎを行った。なお洗浄液の一部を抜き取って25℃のpHを測定した。
(5)洗浄後のステンレスバットの質量(質量C)を測定し、質量変化率を卵黄汚れの洗浄率として評価した。質量変化率は、具体的には、下記の式で求められる。
質量変化率(%)=〔[B-C]/[B-A]〕×100
【0064】
【表1】