(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159096
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】音叉型機械共振器を備える、流体の特性を感知するための流体センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 29/028 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
G01N29/028
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022051554
(22)【出願日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】21305414.1
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517220508
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ センサーズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ゲラール
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン ドゥチェレ
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA01
2G047BA04
2G047BB06
2G047BC01
2G047GG32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に広い温度範囲および/または厳しい環境において、その寿命と信頼性を向上させるために、当技術分野で既知の流体センサをさらに改良する必要がある。
【解決手段】音叉型機械共振器3は、ベース11と、ベースから突出する少なくとも1つのタイン15A、15Bとを含み、ベースと少なくとも1つのタインとは圧電材料で形成され、少なくとも1つのタインは、流体に晒されるように構成されている少なくとも2つの電極17A、17B;19A、19Bを含む。圧電材料はタンタル酸リチウムを含む。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音叉型機械共振器(3)を備える、感知対象の流体の複数の特性を感知するための流体センサであって、
前記音叉型機械共振器(3)は、ベース(11)と少なくとも1つのタインとを含み、前記少なくとも1つのタインは、前記少なくとも1つのタインの長手方向に沿って前記ベース(11)から突出し、
前記ベース(11)と前記少なくとも1つのタインとは圧電材料で形成され、
前記少なくとも1つのタインは、前記流体に晒されるように構成されている少なくとも2つの電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)を含む、流体センサにおいて
前記圧電材料はタンタル酸リチウムを含むことを特徴とする、流体センサ。
【請求項2】
前記音叉型機械共振器(3)は2つのタイン(15A、15B)を備え、前記2つのタイン(15A、15B)は、前記2つのタインの長手方向に沿って前記ベース(11)から突出する、請求項1に記載の流体センサ。
【請求項3】
前記電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)は、前記タイン(15A、15B)の表面(21A、21B)上もしくは表面(21A、21B)上方に設けられ、または少なくとも部分的に前記タイン(15A、15B)に埋め込まれている、請求項1または2に記載の流体センサ。
【請求項4】
前記電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)のうちの少なくとも1つは、X軸を中心とする回転Yカットの110度~140度の結晶カット角を有する、前記タンタル酸リチウムの表面(21A、21B)に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の流体センサ。
【請求項5】
各タイン(15A、15B)は、略矩形断面を有し、4つの電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)を含み、各電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)は、各タイン(15A、15B)の異なる表面上または異なる表面上方に設けられている、請求項1から4のいずれか一項に記載の流体センサ。
【請求項6】
各電極(170A、170B、190A、190B)は、前記音叉型機械共振器(3)の前記ベース上または前記ベース上方にさらに設けられている、請求項5に記載の流体センサ。
【請求項7】
各電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)は、略長円形状、特に矩形形状を有し、
前記タイン(15A、15B)の表面上または表面上方に設けられた前記電極(17A、17B;19A、19B;170A、170B;190A、190B)の一部の、前記タイン(15A、15B)の長手方向に沿った長さ(L4)は、3mm~10mmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の流体センサ。
【請求項8】
前記ベース(11)からの前記タイン(15A、15B)の長手方向への延出に対して横方向に沿った各タイン(15A、15B)の幅(L3)は、0.5mm~2mmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の流体センサ。
【請求項9】
前記ベース(11)から各タイン(15A、15B)の自由端(9A、9B)までの前記音叉型機械共振器(3)の長さ(L1)が、6mm~30mm、特に10mm~13mmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の流体センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型機械共振器を備える、流体の特性を感知するための流体センサに関する。
【背景技術】
【0002】
流体センサは、当技術分野で公知であり、建設機器、農業車両、油圧システム、風車、もしくは圧縮機などの産業機械または輸送車両に応用されている。流体センサは、流体の品質を決定するのに使用される粘度、濃度、誘電率、または導電率などの1つ以上の流体パラメータを監視するために使用される。流体は、非導電性オイル、例えば、エンジンオイル、トランスミッションおよび車軸オイル、ギヤオイル、パワーステアリングオイル、作動油などのオイルであり得る。各応用は、温度範囲、粘度状態、および機械的要件などの特定の状態を伴う。
【0003】
このような流体センサは、米国特許出願公開第2006/218996(A1)号から知られており、クォーツ音叉とタインの電極とを含む共振器を備える。
【0004】
このような共振器は、電圧を印加すると変形し、機械的応力の作用により相互に電気的に分極する。電圧を印加すると、2つのタインが振動し、流体センサが浸漬されている流体の物理化学的特性および電気的特性を示す反応を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に広い温度範囲および/または厳しい環境において、その寿命と信頼性を向上させるために、当技術分野で既知の流体センサをさらに改良する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のこの目的は、請求項1に記載の、感知対象の流体の複数の特性を感知するための流体センサによって達成される。流体センサは、音叉型機械共振器を備える。音叉型機械共振器は、ベースと少なくとも1つのタインとを含み、少なくとも1つのタインは、少なくとも1つのタインの長手方向に沿ってベースから突出する。ベースと少なくとも1つのタインとは圧電材料で形成される。少なくとも1つのタインは、流体に晒されるように構成されている少なくとも2つの電極を含む。本発明によれば、圧電材料はタンタル酸リチウムを含む。
【0007】
他の圧電材料と比べて、タンタル酸リチウムは、音叉型機械共振器、したがって流体センサをより堅牢にする機械的特性をもたらす。したがって、より信頼性の高い流体センサを提供することができる。加えて、タンタル酸リチウムは、センサの寿命を延ばすことができるように化学的に安定しているという利点を有する。
【0008】
流体センサを、様々な有利な実施形態によって、さらに改良することができる。実施形態は、従属請求項に開示される。
【0009】
一実施形態によれば、音叉型機械共振器は2つのタインを含むことができ、2つのタインは、2つのタインの長手方向に沿ってベースから突出する。
【0010】
一実施形態によれば、電極は、タインの表面上もしくは表面上方に(タインの表面に、もしくはタインの表面の上方に、on or over a surface of the tine(s))設けることができ、または少なくとも部分的にタインに埋め込まれる。
【0011】
このような電極配置により、圧電材料の外側により大きい電界を発生させることができる。したがって、流体の特性を測定しながら、流体パラメータの測定に対する圧電材料の影響を低減させることができる。さらに、この配置により、流体の電気抵抗率を測定することができる。
【0012】
一実施形態によれば、電極のうちの少なくとも1つを、X軸を中心とする回転Yカットの110度~140度の結晶カット角を有する、タンタル酸リチウムの表面に設けることができる。
【0013】
この範囲の表面配向を使用すると、流体センサの反応は、温度に対する感度が低くなる。したがって、それにより、広い温度範囲にわたる液体センサの使用が可能になる。
【0014】
一実施形態によれば、各タインは、略矩形断面を有することができ、4つの電極を含み、各電極は、各タインの異なる表面上または異なる表面上方に設けられる。
【0015】
この電極配置は、デバイスの感度を向上させることができる。
【0016】
一実施形態によれば、各電極を、音叉型機械共振器のベース上またはベース上方にさらに設けることができる。
【0017】
この電極配置も、装置の感度を向上させることができる。実際に、このような電極は、電極がタイン上またはタイン上方にのみ設けられる場合と同様のタインの励振を有する。
【0018】
一実施形態によれば、各電極は、略長円形状、特に矩形形状を有することができ、タインの表面上または表面上方に設けられた電極の一部の、タインの長手方向に沿った長さは、3mm~10mmであってよい。
【0019】
電極を、タイン上またはタイン上方にのみ設けることができる。変形形態において、電極を、タイン上またはタイン上方に、かつ少なくとも部分的にベース上またはベース上方に設けてもよい。いずれの場合も、本発明によれば、タイン上またはタイン上方に設けられた電極の一部の長さは、3~10mmである。
【0020】
音叉型機械共振器の電極の寸法が大きいため、したがって、電極が設けられるタインの長さが長いため、高粘度状態、すなわち50cP~最大20,000cPであっても共振信号の検出が可能になる。これは、各電極の長さが、減衰した信号の回復を回避することができるように十分に大きいからである。実際に、タインの長さは、オイルなどの高粘度流体によって引き起こされるせん断力に対抗するのに十分に大きい。タインは、十分な大きさの電極により、圧電効果によって励振される。
【0021】
一実施形態によれば、ベースからのタインの長手方向への延出に対して横方向に沿った各タインの幅は、0.5mm~2mmであってよい。
【0022】
タインの幅が広いことによって、当技術分野の共振器と比べて、タインは機械的応力に対する耐性が高くなる。したがって、流体センサの堅牢性が向上し、その寿命および信頼性が向上する。
【0023】
また、各タインの幅が、減衰した信号の回復を回避するのに十分な大きさであるため、高粘度状態であっても共振信号の検出を向上させ、粘性流体の高せん断力に対抗することにも寄与する。
【0024】
一実施形態によれば、ベースから各タインの自由端までの音叉型機械共振器の長さは、6mm~30mm、特に10mm~13mmであってよい。
【0025】
したがって、従来技術と比べて、全体的により長い音叉型機械共振器が得られ、これにより、共振器の長さが、減衰した信号を回復する必要をなくすのに十分な大きさであるため、高粘度状態であっても共振信号の検出がより読み取りやすくなり、粘性流体の高せん断力に対抗する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を示すために、添付図面が本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す。これらの図面は明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明を形成し使用する方法の好ましい例および代替例を示すためのものに過ぎず、本発明を図示し記載する実施形態のみに限定するものと解釈すべきでない。さらに、実施形態のいくつかの態様は、個々にまたは異なる組合せで本発明による解決策を形成することができる。したがって、以下に記載の実施形態を、単独でまたは任意の組合せで考慮することができる。さらなる特徴および利点が、添付図面に示す本発明の様々な実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになろう。図中、同一の参照符号は同一の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1a】本発明の第1の実施形態による音叉型機械共振器を備える流体センサの概略斜視図である。
【
図1b】本発明の第2の実施形態による音叉型機械共振器を備える流体センサの概略斜視図である。
【
図2】切断面Cによる、
図1aに示す流体センサの断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による流体センサの断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態による流体センサの断面図である。
【
図5】X軸に対する回転Yカットの110度~140度のタンタル酸リチウムの結晶カット角における、温度に応じたタンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウムの弾性コンプライアンス/圧電効果を表す図である。
【
図6】標準の音叉型装置および本発明による流体センサについての、50cP~2,000cPの粘度範囲における周波数に応じたインピーダンスを表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下で、添付図面を参照しながら本発明について説明する。図面では、当業者に周知の詳細により本開示を曖昧にしないように、説明のみを目的として、様々な構造、システム、および装置が概略的に示される。それにもかかわらず、添付図面は、本開示の説明のための例について記載および説明するために含まれている。本明細書で使用される単語および語句は、関連技術の当業者によるそれらの単語および語句の理解に一貫した意味を有するものとして理解および解釈されるべきである。本明細書の用語または語句の一貫した使用によって、用語または語句の特殊な定義、すなわち当業者によって理解される通常または慣例の意味とは異なる定義が示唆されることを意図するものではない。
【0029】
図1aは、本発明の第1の実施形態による音叉型機械共振器3を備える流体センサ1を示す。
【0030】
流体センサ1を、
図1aに示されていない支持体に取り付けて、既知の組立方法により、流体において維持することができる。使用時に、流体センサ1は、流体の特性を感知するために少なくとも部分的に流体に浸漬される。流体は、産業機械用または輸送車両用のオイルであってよい。
【0031】
音叉型機械共振器3は、
図1aに示すデカルト座標のX軸に沿って、一方の第1の自由端7から反対側の第2の自由端9A、9Bまでの長さL1を有する本体5を含む。
【0032】
本体5は、デカルト座標のX軸に沿って、自由端7から本体5の接合領域13まで延びるベース11を含む。
【0033】
図1aに示す実施形態において、接合領域13から、2つのタイン15A、15Bが、タイン15A、15Bの長手方向に沿って対応する自由端9A、9Bまで互いに別々に延びる。別の実施形態(図示せず)において、単一のタインのみが、音叉型機械共振器3の本体5の接合領域13から延びることができる。さらなる一実施形態(図示せず)において、3つ以上のタインが、機械共振器3の本体5の接合領域13から延びることができる。
【0034】
2つのタイン15A、15Bは、デカルト座標のX軸に沿ってベース11から突出する。したがって、タイン15A、15Bの長手方向は、
図1aに示すデカルト座標のX軸に平行である。
【0035】
図1aに示す実施形態において、タイン15A、15Bは矩形断面を有する。変形形態において、タインの断面は平行六面体の断面に対応する。
【0036】
第1の実施形態において、タイン15A、15Bは、デカルト座標のX軸に対して互いに対称である。変形形態において、タイン15A、15Bは非対称であってよい。
【0037】
参照数字に続く文字「A」は、
図1aに示す左のタインを指し、文字「B」は
図1aに示す右のタインを指す。
【0038】
図1aに示す長さL2は、接合領域13と自由端9A、9Bとの間の長さを表し、すなわち、L2はタイン15A、15Bの長さを示す。
【0039】
各タイン15A、15Bは幅L3を有する。寸法L1~L3については、表1を参照してさらに後述する。
【0040】
各タイン15A、15Bは電極17A、17B、19A、19Bを備える。電極17A、17B、19A、19Bは、ベース11から2つのタイン15A、15Bの長手方向に沿って、すなわちデカルト座標のX軸に沿って、長さL4の長円形状を有する。
【0041】
変形形態において、電極17A、17B、19A、19Bは矩形形状を有することができる。
【0042】
単一のタイン(図示せず)を含む音叉型機械共振器の実施形態において、単一のタインは、単一のタインの表面に、もしくは単一のタインの表面上方に、2つの電極を備えてもよく、または、少なくとも部分的に単一のタインに埋め込まれた2つの電極を備えてもよい。
【0043】
図1に示す第1の実施形態において、2つの電極17A、17B(または19A、19B)が、タイン15A(またはタイン15B)の表面21A(または表面21B)上あるいは表面21A(または表面21B)上方に設けられている。変形形態において、電極17A、17B、19A、19Bを、少なくとも部分的にタイン15A、15Bに埋め込むことができる。
【0044】
第2の実施形態において、
図1bに示すように、電極170A、170B、190A、190Bが、タイン15A、15Bの長手方向に沿って延長されて、音叉型機械共振器3のベース11上または音叉型機械共振器3のベース11上方にさらに設けられている。
図1bの第2の実施形態において、長さL4は、タイン15A、15B上またはタイン15A、15B上方に設けられた各電極170A、170B、190A、190Bの一部の長さに対応する。言い換えると、第2の実施形態において、長さL4は、各電極170A、170B、190A、190Bの全長に対応しない。
【0045】
したがって、
図1aおよび
図1bに示す両実施形態において、長さL4は、タイン15A、15B上またはタイン15A、15B上方の電極17A、17B、170A、170B、19A、19B、190A、190Bの一部の長さを表し、すなわち、電極17A、17B、170A、170B、19A、19B、190A、190Bの一部の長さは、接合領域13とタイン15A、15Bの自由端9A、9Bとの間を構成する。
【0046】
図1aの第1の実施形態において、長さL4は、電極17A、17B、19A、19Bの全長にさらに対応するが、
図1bの第2の実施形態においては、長さL4は、電極170A、170B、190A、190Bの一部にのみ対応する。
【0047】
図2に示す、切断面Cによる流体センサ1の断面図に示すように、電極17A、19A(または電極17B、17B)は、タイン15A(またはタイン15B)の表面21A(または表面21B)上あるいは表面21A(または表面21B)上方に設けられた貴層NBによって形成される。好ましい変形形態において、貴層NBは金の層である。
【0048】
貴層NBは、10nm~600nmの厚さt1を有する。特に、貴層NBは200nmの厚さを有する。
【0049】
図2に示すように、貴層NBの下および表面21A、21B上または表面21A、21B上方に、厚さt2のクロムまたはチタンの薄い接着層を設けることができる。このような接着層は、5nm~40nmの厚さを有することができる。接着層は、タイン15A、15Bの圧電材料に対する貴層NBの接着性を向上させる。それにより、流体センサ1の積層の堅牢性が向上する。したがって、化学的応力または機械的応力(熱衝撃、振動、機械的衝撃など)による剥離または損傷を減らすことができる。
【0050】
図1aに示すように、電極17A、17Bは、それぞれの導電路(例えばリード線)25A、25Bを介して共通の第1のコンタクトパッド23に電気的に接続され、したがって、互いに共通して電気的に連通している。
【0051】
同様に、電極19A、19Bは、それぞれの導電路(例えばリード線)29A、29Bを介して共通の第1のコンタクトパッド27に電気的に接続され、したがって、互いに共通して電気的に連通している。
【0052】
タイン15Aに位置する電極17Aは、タイン15Bに位置する電極17Bおよびコンタクトパッド23に電気的に接続される。
【0053】
同様に、タイン15Aに位置する電極19Aは、タイン15Bに位置する電極19Bおよびコンタクトパッド27に電気的に接続される。
【0054】
コンタクトパッド23、27を使用して、電極17A、17B、19A、19Bを流体センサ1の制御ユニット(図示せず)に電気的に接続する。
【0055】
図3および
図4は、本発明による電極配置の2つの実施形態を示す。
【0056】
図3に示す第3の実施形態において、各タイン15A、15Bは2つの電極17A、17B、19A、19Bを含む。
【0057】
電極17Aは、タイン15Aの表面21A上または表面21A上方に設けられる。電極17Bは、タイン15Bの表面31A上または表面31A上方に設けられる。
【0058】
電極19Aは、タイン15Aの表面31A上または表面31A上方に設けられる。電極19Bは、タイン15Bの表面21B上または表面21B上方に設けられる。
【0059】
表面31A、31Bは、デカルト座標のY軸に沿った表面21A、21Bとは反対側である。
【0060】
単一のタイン(図示せず)を含む音叉型機械共振器の実施形態において、単一のタインは、単一のタインの両面上または両面上方に2つの電極を備えてもよい。3つ以上のタインを含む音叉型機械共振器の実施形態(図示せず)についても同様である。
【0061】
図4に示す第4の実施形態において、各タイン15A、15Bは4つの電極17A~17D、19A~19Dを含む。
【0062】
電極17A、17Bおよび17C、17Dは、接続されていても接続されていなくてもよい。
【0063】
電極19A、19Bおよび19C、19Dは、接続されていても接続されていなくてもよい。
【0064】
各電極17A、17B、19A、19B、17C、17D、19C、17Dは、各タイン15A、15Bの異なる表面21A、31A、21B、31B、39B、37B、37A、39A上または異なる表面21A、31A、21B、31B、39B、37B、37A、39A上方に設けられる。各タイン15A、15Bについて、表面37A、37Bは、デカルト座標のY軸に沿った表面39A、39Bとは反対側である。
【0065】
単一のタイン(図示せず)を含む音叉型機械共振器の実施形態において、単一のタインは、単一のタインの表面上または表面上方に4つの電極を備えてもよい。3つ以上のタインを含む音叉型機械共振器の実施形態(図示せず)についても同様である。
【0066】
本発明の任意の実施形態において、電極17A、17B、19A、19Bは、センサ1が浸漬されている流体に晒されるように構成されている。したがって、電極17A、17B、19A、19Bは、流体センサ1が浸漬されている流体に直接表面接触する。
【0067】
電極17A、17B、19A、19B(17C、17D、19C、19D)により電圧を印加すると、各タイン15A、15Bの自由端9A、9Bは、流体において、音叉型機械共振器3のベース11に対して変位することができる。したがって、対のタイン15A、15Bを、音叉型機械共振器3の振動アームとも呼ぶこともできる。タイン15A、15Bの振動により、流体センサ1が浸漬されている流体の物理化学的特性および電気的特性を示す反応を生じさせることができる。
【0068】
使用時に、電極17A、17B、19A、19B(17C、17D、19C、19D)は流体に晒され、音叉型機械共振器3の圧電材料の内外に電界を発生させることができる。流体に電界が発生するので、流体センサ1は、粘度、濃度、および誘電率に加えて、流体の電気抵抗率を測定することができる。
【0069】
図4に示す電極(17A、17B、19A、19B、17C、17D、19C、19D)の配置により、
図1a、
図1b、
図2、および
図3の実施形態よりも、音叉型機械共振器3の圧電材料の外側にさらに大きい電界を発生させることができ、流体センサ1は流体の電気抵抗率を測定するのにさらに適したものになる。
【0070】
本発明によれば、音叉型機械共振器3の本体5は、圧電材料としてタンタル酸リチウム(LiTaO3)を含む。タンタル酸リチウムは圧電効果を示し、よって音叉型機械共振器に使用することができる。タンタル酸リチウムの使用は、その有利な機械的特性のため、ニオブ酸リチウムまたはクォーツから形成された音叉型機械共振器に比べて、流体センサ1をより堅牢にする。したがって、流体センサ1の信頼性が向上する。
【0071】
さらに、タンタル酸リチウムは化学的に安定している。したがって、このような流体センサ1の寿命を、最新技術から既知の音叉装置に対して有利に延ばすことができる。
【0072】
好ましい実施形態において、電極17A、17B、19A、19Bが設けられる圧電材料の表面21Aは、X軸を中心とする回転Yカットの110度~140度の結晶カット角を有し、タインのひずみはX軸に沿っている。
【0073】
この結晶カット範囲(すなわち、X軸を中心とする回転Yカットの110度~140度の結晶カット角)において、
図5の曲線により示すように、タンタル酸リチウム(LiTaO
3)によってもたらされる圧電効果は、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)に比べて温度依存性が低い。したがって、流体センサ1を、広範囲の温度状態および粘度状態で使用することができる。
【0074】
その結果、タンタル酸リチウムを圧電材料として含む流体センサ1は、クォーツから形成された共振器を備える既知の流体センサよりも、特に広い温度範囲および/または厳しい環境において寿命および信頼性が向上する。
【0075】
一実施形態(図示せず)において、本体5は、所望の用途に応じて、異なる材料、したがって、タンタル酸リチウムと、クォーツ、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ニオブ酸リチウム、ベルリナイト、または酸化亜鉛のうちの1つ以上との組合せを含むことができる。例えば、所望の用途に応じて、窒化ケイ素、炭化ケイ素、または酸化ケイ素などの非圧電材料を含む異なる材料の多層から、タインを形成することができる。
【0076】
厳しい環境、特に高粘度状態、好ましくは50cP超~最大20,000cPの粘度範囲における寿命および信頼性をさらに向上させるために、流体センサ1は以下の寸法(下記の表1参照)を有する。表1の寸法L1~L4は、
図1aおよび
図1bに関して前述した寸法に対応する。
【0077】
【0078】
タンタル酸リチウムを含む流体センサ1のより大きい寸法L1~L4は、より小さいサイズの既知の音叉よりも堅牢な流体センサ1を実現することに加えて、高粘度流体状態でより高品質の共振信号を示す流体センサ1を提供する。
図6は、標準の音叉型装置(L1=6mm、L2=4mm、およびL3=0.5mmを有する)ならびに表1に開示した寸法を有する本発明による流体センサ1についての、50cP~2,000cPの粘度範囲における周波数に応じたインピーダンスを表す。したがって、
図6に示すように、流体センサ1のサイズは、実際には、特に高粘度流体状態、すなわち50cP~最大20,000cPで共振信号が減衰することを避けるのに十分に大きい。
【0079】
上記で定義された寸法L1~L4は、単一のタインまたは3つ以上のタインを備える流体センサの実施形態(図示せず)にも当てはまる。
【0080】
実施形態について特定の例に関連して説明したが、本発明は限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、開示した実施形態に多数の変更を加えることができる。したがって、様々な実施形態および例は、開示した特定の形態に限定されることを意図したものではない。むしろ、様々な実施形態および例は、特許請求の範囲に含まれる修正および代替形態を包含しており、個々の特徴を互いに自由に組み合わせて、本発明によるさらなる実施形態または例を得ることができる。
【符号の説明】
【0081】
1 流体センサ
3 音叉型機械共振器
5 本体
7 自由端
9A、9B 自由端
11 ベース
13 接合領域
15A、15B タイン
17A、17B、17C、17D 電極
170A、170B 電極
19A、19B、19C、19D 電極
190A、190B 電極
21A、21B 表面
23 コンタクトパッド
25A、25B 導電路
27 コンタクトパッド
29A、29B 導電路
31A、31B 表面
37A、37B 表面
39A、39B 表面
L1、L2、L3、L4 長さ
t1、t2 厚さ
NB 貴層
【外国語明細書】