IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社vegetaの特許一覧 ▶ 公立大学法人県立広島大学の特許一覧

特開2022-159110農業支援装置、プログラム、農業支援システム
<>
  • 特開-農業支援装置、プログラム、農業支援システム 図1
  • 特開-農業支援装置、プログラム、農業支援システム 図2
  • 特開-農業支援装置、プログラム、農業支援システム 図3
  • 特開-農業支援装置、プログラム、農業支援システム 図4
  • 特開-農業支援装置、プログラム、農業支援システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159110
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】農業支援装置、プログラム、農業支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20221006BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022052683
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021058941
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521135625
【氏名又は名称】株式会社vegeta
(71)【出願人】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】谷口 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三苫 好治
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】農業管理に資する作業情報を提供可能な農業支援装置、プログラム及び農業支援システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る農業支援装置は、生育モデルを用い、指定日以降の生育状態を予測する生育状態予測手段21と、圃場情報と前記生育状態予測手段21が予測する生育状態と各種情報とを用い、圃場毎に作業情報を算出する作業情報算出手段22と、を備え、前記各種情報に生育状態と紐付けられた作業項目情報、作業時間情報、機械・資材情報、作業者情報、作業スキル情報が含まれ、前記作業情報に作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、前記作業項目を実施するに必要なスキル、前記作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材が含まれる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生育モデルを用い、指定日以降の生育状態を予測する生育状態予測手段と、
圃場情報と前記生育状態予測手段が予測する生育状態と各種情報とを用い、圃場毎に作業情報を算出する作業情報算出手段と、
を備え、
前記各種情報に生育状態と紐付けられた作業項目情報、作業時間情報、機械・資材情報、作業者情報、作業スキル情報が含まれ、
前記作業情報に作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、前記作業項目を実施するに必要なスキル、前記作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材が含まれることを特徴とする農業支援装置。
【請求項2】
前記指定日が、定植日、又は定植日から収穫日までの任意の日であることを特徴とする請求項1に記載の農業支援装置。
【請求項3】
前記作業情報算出手段は、生育状態と紐付けられた前記作業時間情報に基づき算出される作業時間を補正する作業時間補正手段を有し、
前記作業時間補正手段は、
予め定められた、圃場の面積と作業時間の上乗せ時間との関係に基づき圃場面積に応じて前記作業時間を補正し、
又は予め定められた、雨天時の作業項目と作業時間の上乗せ時間との関係に基づき雨天時に前記作業時間を補正し、
前記作業情報算出手段は、前記作業情報として補正後の作業時間を提示することを特徴とする請求項1又は2に記載の農業支援装置。
【請求項4】
前記生育モデルが、気温と葉齢とが関連付けられた葉齢増加モデルであり、
前記生育状態が、前記葉齢であり、
前記圃場情報には、圃場の位置データが含まれ、
前記作業情報算出手段は、前記圃場の気象データと、前記葉齢増加モデルとから前記生育状態を予測することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項5】
前記作業情報算出手段は、生育状態と紐付けられた前記作業項目及び前記作業時間情報に基づき算出される作業スケジュールを補正するスケジュール補正手段を有し、
前記作業項目情報は、作業項目と天候とが紐付けられたデータを含み、
前記スケジュール補正手段は、天候情報に基づき前記作業スケジュールを補正し、
前記作業情報算出手段は、前記作業情報として補正後の作業スケジュールを提示することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項6】
前記作業情報算出手段は、さらに圃場情報と各種情報とを用い、圃場毎に定植前の作業情報を算出する手段を備え、
前記各種情報に定植日を基準とした定植前の作業項目情報、作業時間情報、機械・資材情報、作業者情報、作業スキル情報が含まれ、
前記作業情報に定植前の作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、前記定植前の作業項目を実施するに必要なスキル、前記定植前の作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材が含まれることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項7】
前記作業者情報は、作業者と各作業者が所有するスキルとが紐付けられたデータを含み、
前記機械・資材情報は、前記作業項目とそれに必要な機械・資材とが紐付けられたデータを含み、
前記作業情報算出手段は、前記作業情報として、算出された作業項目と前記機械・資材情報及び前記作業者情報とから前記作業項目を担当可能な作業者を選出することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項8】
前記作業者情報は、作業者と各作業者が所有するスキルとが紐付けられたデータを含み、
前記機械・資材情報は、前記作業項目とそれに必要な機械・資材とが紐付けられたデータを含み、
前記作業情報算出手段は、算出された作業項目と前記機械・資材情報及び前記作業者情報とから機械の使用予定日及び前記機械を担当可能な作業者を選出し、
同一の機械又は同一の作業者が、同じ時間帯に2以上の圃場又は2以上の作業項目を担当しないように前記機械及び前記作業者を割り振り、
前記作業情報に割り振られた機械の使用予定日及び作業者名が含まれることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項9】
前記作業情報算出手段は、人工知能を用いて前記機械及び前記作業者の割り振りを行うことを特徴とする請求項8に記載の農業支援装置。
【請求項10】
前記作業者情報は、各作業者と作業者の拠点事務所とが紐付けられたデータを含み、
前記作業情報算出手段は、前記作業者の拠点事務所の位置情報と作業を行う圃場の位置情報とから作業者の移動距離を算出し、
前記作業者を割り振るとき、全作業者の移動距離の積算値が最小となるように前記作業者を決定することを特徴とする請求項9に記載の農業支援装置。
【請求項11】
前記作業情報算出手段は、1つ前の作業から得られる前記機械及び作業者の位置情報と、次に予定されている作業から得られる前記機械及び作業者の位置情報とから、前後作業に係る各機械及び各作業者の移動距離を算出し、
前記機械及び作業者を割り振るとき、全機械及び/又は全作業者の移動距離の積算値が最小となるように前記機械及び前記作業者を決定することを特徴とする請求項9に記載の農業支援装置。
【請求項12】
前記生育モデルが、
標準生育モデルと、
過去の実績に基づき前記標準生育モデルが修正された、圃場と紐付けられた固有生育モデルと、
で構成され、
前記生育状態予測手段は、前記固有生育モデルと紐付けられた圃場については、前記固有生育モデルを用い、その他の圃場については前記標準生育モデルを用いて生育状態を予測することを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の農業支援装置。
【請求項13】
コンピュータを請求項1から12のいずれか1項に記載の前記農業支援装置として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか1項に記載の農業支援装置と、端末とが互いにデータを送受信可能に、ネットワークを介して接続された農業支援システムであって、
前記農業支援装置は、前記各手段の他に前記各種情報を格納したデータベースを備え、
前記端末は、前記農業支援装置に対し、圃場及び前記指定日を指定して前記作業情報を要求可能に構成され、
前記農業支援装置は、前記端末の要求に対し前記各手段と前記データベースとを用い、前記端末が指定した圃場及び指定日に基づく前記作業情報を算出、作成し、前記端末に自動送信可能に構成されることを特徴とする農業支援システム。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか1項に記載の農業支援装置と、端末と、データーサーバーとが互いにデータを送受信可能に、ネットワークを介して接続された農業支援システムであって、
前記データーサーバーは、前記各種情報を格納したデータベースを有し、
前記端末は、前記農業支援装置に対し、圃場及び前記指定日を指定して前記作業情報を要求可能に構成され、
前記農業支援装置は、前記端末の要求に対し前記各手段と前記データベースとを用い、前記端末が指定した圃場及び指定日に基づく前記作業情報を算出、作成し、前記端末に自動送信可能に構成されることを特徴とする農業支援システム。
【請求項16】
前記農業支援装置が、前記生育モデルに気温と葉齢とが関連付けられた葉齢増加モデルを使用する前記農業支援装置であり、
気象データが前記ネットワークに接続可能な気象データ提供手段から得られることを特徴とする請求項14又は15に記載の農業支援システム。
【請求項17】
前記端末は、前記データベースに格納されたデータベースを読み出し、読み出したデータベースのデータを追加・削除・修正可能に構成され、
前記農業支援装置は、前記端末からデータベースを受信すると該当するデータベースを更新することを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載の農業支援システム。
【請求項18】
前記農業支援装置は、
作成した前記作業情報に識別番号を付与し前記作業情報を記憶手段に書き込み、また前記記憶手段に保存された前記作業情報を更新する作業情報管理手段と、
を備え、
前記端末から送信される修正された作業情報を受信すると、前記記憶手段に保存した対応する識別番号の前記作業情報を、前記端末から送信された作業情報に更新することを特徴とする請求項14から17のいずれか1項に記載の農業支援システム。
【請求項19】
前記端末は、管理者が使用する管理者端末と、地区責任者が使用する責任者端末と、作業者が使用する作業者端末と、で構成され、
前記農業支援装置は、前記端末を使用する者と各端末の識別番号とが紐付けられた端末情報を前記データベースに格納し、前記端末の権限を設定する手段を有することを特徴とする請求項14から18のいずれか1項に記載の農業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業管理に資する作業情報を提供する農業支援装置及び農業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICT、ロボット技術を活用し自動化、省力化さらには生産・経営管理を行うスマート農業がある。これまでにスマート農業に関連する発明も多くなされており、例えば葉面積の積算値とサイズとの関係を表す生育曲線を用いて、生育状態を評価し、サイズ予測、摘果作業のアドバイス、収穫日予測を行う栽培支援方法がある(例えば特許文献1参照)。またスマート農業に活用可能な技術として、葉齢増加シミュレーションにより収穫期を予測するレタス・キャベツ出荷調整支援システムも開発されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
ロボット技術を活用したものとしては、例えば農園内で対象物を収穫する収穫ロボットと、対象物を収納した収納籠を回収して集荷ステーションに運搬する回収ロボットと、収穫ロボット及び回収ロボットそれぞれと通信可能に構成されたサーバーと、を含み、トマトやリンゴなどの果実類を自動的に収穫し、かつ回収も自動で行う収穫ロボットシステムも開発されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-187259号公報
【特許文献2】特開2020-201882号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/laboratory/narc/2015/15_012.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおりICT、ロボット技術を活用した農業も増えているが、農業管理、経営管理の点において人に頼っている部分はまだまだ多い。通常の農作業では、定植前に行う圃場の準備、定植、追肥、除草、収穫など多くの作業項目があり、それぞれの作業において要求される作業者のスキル、必要とする機械・資材も異なる。現状、作業計画、作業者の配置等は、管理者が現場リーダーあるいは作業者から作業状況を聞いた上で、これまでの経験を基に決定される場合が多い。
【0007】
従来の管理者の経験に基づき作業計画等を立案するやり方は、効率的とは言い難く、また作業計画等の立案に多くの時間がかかる。圃場の数が多くまた圃場が広くなると従来の方法では、作業計画の立案自体も難しくなる。このため作業スケジュールの立案、作業に適した作業者、機械の効率的な配置など農業管理に資する作業情報を提供する農業支援装置、農業支援システムの開発が待たれている。
【0008】
本発明の目的は、農業管理に資する作業情報を提供可能な農業支援装置、プログラム及び農業支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、生育モデルを用い、指定日以降の生育状態を予測する生育状態予測手段と、圃場情報と前記生育状態予測手段が予測する生育状態と各種情報とを用い、圃場毎に作業情報を算出する作業情報算出手段と、を備え、前記各種情報に生育状態と紐付けられた作業項目情報、作業時間情報、機械・資材情報、作業者情報、作業スキル情報が含まれ、前記作業情報に作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、前記作業項目を実施するに必要なスキル、前記作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材が含まれることを特徴とする農業支援装置である。
【0010】
本発明に係る農業支援装置において、前記指定日が、定植日、又は定植日から収穫日までの任意の日であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業情報算出手段は、生育状態と紐付けられた前記作業時間情報に基づき算出される作業時間を補正する作業時間補正手段を有し、前記作業時間補正手段は、予め定められた、圃場の面積と作業時間の上乗せ時間との関係に基づき圃場面積に応じて前記作業時間を補正し、又は予め定められた、雨天時の作業項目と作業時間の上乗せ時間との関係に基づき雨天時に前記作業時間を補正し、前記作業情報算出手段は、前記作業情報として補正後の作業時間を提示することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る農業支援装置において、前記生育モデルが、気温と葉齢とが関連付けられた葉齢増加モデルであり、前記生育状態が、前記葉齢であり、前記圃場情報には、圃場の位置データが含まれ、前記作業情報算出手段は、前記圃場の気象データと、前記葉齢増加モデルとから前記生育状態を予測することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業情報算出手段は、生育状態と紐付けられた前記作業項目及び前記作業時間情報に基づき算出される作業スケジュールを補正するスケジュール補正手段を有し、前記作業項目情報は、作業項目と天候とが紐付けられたデータを含み、前記スケジュール補正手段は、天候情報に基づき前記作業スケジュールを補正し、前記作業情報算出手段は、前記作業情報として補正後の作業スケジュールを提示することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業情報算出手段は、さらに圃場情報と各種情報とを用い、圃場毎に定植前の作業情報を算出する手段を備え、前記各種情報に定植日を基準とした定植前の作業項目情報、作業時間情報、機械・資材情報、作業者情報、作業スキル情報が含まれ、前記作業情報に定植前の作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、前記定植前の作業項目を実施するに必要なスキル、前記定植前の作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材が含まれることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業者情報は、作業者と各作業者が所有するスキルとが紐付けられたデータを含み、前記機械・資材情報は、前記作業項目とそれに必要な機械・資材とが紐付けられたデータを含み、前記作業情報算出手段は、前記作業情報として、算出された作業項目と前記機械・資材情報及び前記作業者情報とから前記作業項目を担当可能な作業者を選出することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業者情報は、作業者と各作業者が所有するスキルとが紐付けられたデータを含み、前記機械・資材情報は、前記作業項目とそれに必要な機械・資材とが紐付けられたデータを含み、前記作業情報算出手段は、算出された作業項目と前記機械・資材情報及び前記作業者情報とから機械の使用予定日及び前記機械を担当可能な作業者を選出し、同一の機械又は同一の作業者が、同じ時間帯に2以上の圃場又は2以上の作業項目を担当しないように前記機械及び前記作業者を割り振り、前記作業情報に割り振られた機械の使用予定日及び作業者名が含まれることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業情報算出手段は、人工知能を用いて前記機械及び前記作業者の割り振りを行うことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業者情報は、各作業者と作業者の拠点事務所とが紐付けられたデータを含み、前記作業情報算出手段は、前記作業者の拠点事務所の位置情報と作業を行う圃場の位置情報とから作業者の移動距離を算出し、前記作業者を割り振るとき、全作業者の移動距離の積算値が最小となるように前記作業者を決定することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る農業支援装置において、前記作業情報算出手段は、1つ前の作業から得られる前記機械及び作業者の位置情報と、次に予定されている作業から得られる前記機械及び作業者の位置情報とから、前後作業に係る各機械及び各作業者の移動距離を算出し、前記機械及び作業者を割り振るとき、全機械及び/又は全作業者の移動距離の積算値が最小となるように前記機械及び前記作業者を決定することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る農業支援装置において、前記生育モデルが、標準生育モデルと、過去の実績に基づき前記標準生育モデルが修正された、圃場と紐付けられた固有生育モデルと、で構成され、前記生育状態予測手段は、前記固有生育モデルと紐付けられた圃場については、前記固有生育モデルを用い、その他の圃場については前記標準生育モデルを用いて生育状態を予測することを特徴とする。
【0021】
本発明は、コンピュータを前記農業支援装置として機能させるためのプログラムである。
【0022】
本発明は、前記農業支援装置と、端末とが互いにデータを送受信可能に、ネットワークを介して接続された農業支援システムであって、前記農業支援装置は、前記各手段の他に前記各種情報を格納したデータベースを備え、前記端末は、前記農業支援装置に対し、圃場及び前記指定日を指定して前記作業情報を要求可能に構成され、前記農業支援装置は、前記端末の要求に対し前記各手段と前記データベースとを用い、前記端末が指定した圃場及び指定日に基づく前記作業情報を算出、作成し、前記端末に自動送信可能に構成されることを特徴とする農業支援システムである。
【0023】
本発明は、前記農業支援装置と、端末と、データーサーバーとが互いにデータを送受信可能に、ネットワークを介して接続された農業支援システムであって、前記データーサーバーは、前記各種情報を格納したデータベースを有し、前記端末は、前記農業支援装置に対し、圃場及び前記指定日を指定して前記作業情報を要求可能に構成され、前記農業支援装置は、前記端末の要求に対し前記各手段と前記データベースとを用い、前記端末が指定した圃場及び指定日に基づく前記作業情報を算出、作成し、前記端末に自動送信可能に構成されることを特徴とする農業支援システムである。
【0024】
本発明に係る農業支援システムにおいて、前記農業支援装置が、前記生育モデルに気温と葉齢とが関連付けられた葉齢増加モデルを使用する前記農業支援装置であり、気象データが前記ネットワークに接続可能な気象データ提供手段から得られることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る農業支援システムにおいて、前記端末は、前記データベースに格納されたデータベースを読み出し、読み出したデータベースのデータを追加・削除・修正可能に構成され、前記農業支援装置は、前記端末からデータベースを受信すると該当するデータベースを更新することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る農業支援システムにおいて、前記農業支援装置は、作成した前記作業情報に識別番号を付与し前記作業情報を記憶手段に書き込み、また前記記憶手段に保存された前記作業情報を更新する作業情報管理手段と、を備え、前記端末から送信される修正された作業情報を受信すると、前記記憶手段に保存した対応する識別番号の前記作業情報を、前記端末から送信された作業情報に更新することを特徴とする。
【0027】
本発明に係る農業支援システムにおいて、前記端末は、管理者が使用する管理者端末と、地区責任者が使用する責任者端末と、作業者が使用する作業者端末と、で構成され、前記農業支援装置は、前記端末を使用する者と各端末の識別番号とが紐付けられた端末情報を前記データベースに格納し、前記端末の権限を設定する手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、農業管理に資する作業情報を提供可能な農業支援装置、プログラム及び農業支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態の農業支援システム1の構成図である。
図2】本発明の第1実施形態の農業支援システム1を構成する農業支援装置10の機能構成図である。
図3】本発明の第1実施形態の農業支援システム1で使用する生育モデルを説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態の農業支援システム1が作成した作業情報の一例である。
図5】本発明の第1実施形態の農業支援システム1を用いた作業情報を算出、作成、送信する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態の農業支援システム1の構成図であり、図2は、農業支援システム1を構成する農業支援装置10の機能構成図である。図3は、農業支援システム1で使用する生育モデルを説明するための図、図4は、農業支援システム1が作成した作業情報の一例、図5は、農業支援システム1を用いた作業情報を算出、作成、送信する手順を示すフローチャートである。本実施形態では、複数の圃場でキャベツ栽培を行う場合を例として説明する。
【0031】
農業支援システム1は、農業管理に資する、作業スケジュール、作業内容に適した作業者、機械の配置などの作業情報を提供するシステムであり、作業情報を算出、作成し、提供する農業支援装置10と、ネットワーク100を介して接続する管理者端末40(40a、40b)と、責任者端末50(50a、50b)と、作業者端末60(60a、60b、60c)とを含む。この農業支援システム1には、オンラインで気象データを提供する気象データ提供手段200がネットワーク100を介して接続する。
【0032】
本実施形態において、管理者は、圃場全体を管理する者であり、また管理者端末40を使用、管理する者である。地区責任者(責任者)は、予め定められた地区の圃場を管理する者であり、また責任者端末50を使用する者である。作業者60は、作業を行う者であり、また作業者端末60を使用する者である。管理者及び地区責任者は、圃場の管理及び端末との関係で作業者と区別されているが、管理者及び地区責任者は、実際の作業を行う作業者であってもよい。通常、管理者は1人であり、地区責任者及び作業者は複数人であり、管理者、地区責任者及び作業者は各自端末を所有する。
【0033】
農業支援装置10は、CPU、メモリなどで構成される演算制御手段、プログラム、各種データを記憶する記憶装置14を備える本体11、キーボード、マウス、データ読み取り装置などの入力装置12、表示装置13を備える。農業支援装置10は、農業管理に資する、作業スケジュール、作業内容に適した作業者、機械の配置などの作業情報の作成等を行うためのプログラムを除き、従来から一般的に使用されているコンピュータと大きく異なるところはない。
【0034】
農業支援装置10には、農業管理に資する、作業スケジュール、作業内容に適した作業者、機械の配置などの作業情報を作成するためのプログラムがインストールされており、演算制御手段は、プログラムに基づき入力装置12、表示装置13の制御、記憶装置14へのデータの保存、読み出し、管理者端末40、責任者端末50、作業者端末60とのデータの送受信、気象データ提供手段200ヘの接続等を制御し、作業情報の算出、作成、記録、送信等を行う。
【0035】
記憶装置14は、作業スケジュール、作業内容に適した作業者、機械の配置などの作業情報作成の際に使用する各種情報を格納したデータベースを備える。これらデータベースは、基本的に過去の農作業の実績をベースとし、各種データの関連性が整理され構築されている。
【0036】
データベースには、作業項目情報(作業項目データベース)、作業時間情報(作業時間データベース)、作業スキル情報(作業スキルデータベース)、機械情報(機械データベース)、作業者情報(作業者データベース)、端末情報(端末データベース)、圃場情報(圃場データベース)、天候作業情報(天候作業データベース)、定植前作業情報(定植前作業データベース)が含まれる。
【0037】
作業項目データベースは、作業項目情報に関するデータベースであり、表1に示すように生育状態と作業項目とが紐付けられている。ここでは生育状態として葉齢を用いる。葉齢は、生育状態を葉の枚数で表現したものである。作業項目には、定植から収穫までの作業として、定植、中耕追肥、防除、除草、収穫がある。作業項目データベースにより生育状態に応じてなすべき作業内容が分かる。表1に示す作業項目データベースは、キャベツ栽培用の作業項目データベースの一例であり、生育状態、作業項目等がこれに限定されるものではない。作業項目データベースをはじめ、各種データベースに記載のデータは、作物、品種などにより異なるため、作物、品種等に応じたデータベースを準備、使用する。またデータベースの形態も本実施形態に限定されるものではない。
【0038】
【表1】
【0039】
作業時間データベースは、作業に必要な時間、必要人数等に関するデータベースであり、表2に示すように作業項目と、作業項目識別番号、必要人数、標準作業時間とが紐付けられている。ここで作業項目識別番号は、作業項目を識別、管理するために設定された番号である。必要人数は、作業項目に記載の作業を行うに必要な最少人数である。標準作業時間は、作業項目に記載の作業を行うに要する標準的な作業時間である。表2に示す作業時間データベースは、キャベツ栽培用の作業時間データベースの一例であり、作業時間等がこれに限定されるものではない。
【0040】
【表2】
【0041】
作業スキルデータベースは、作業に必要なスキルに関するデータベースであり、表3に示すように作業項目と、必要技術・資格・能力とが紐付けられている。ここで必要技術・資格・能力は、普通自動車免許、中型自動車免許、大型自動車免許、大型特殊免許、フォークリフト免許である。さらに必要技術・資格・能力として、各作業項目において最低限必要な免許保有者の人数が示されている。
【0042】
【表3】
【0043】
例えば、定植作業においては最低、普通自動車免許所有者1人、収穫においては最低、中型自動車免許又は大型自動車免許所有者1人とフォークリフト免許所有者1人が必要となる。図中の*は、当該資格があればより好ましいことを示す。例えば、定植作業においては普通自動車免許以外には大型特殊免許を保有する者が好ましいことを示す。また収穫においては中型自動車免許又は大型自動車免許所有者が2名、フォークリフト免許所有者が2名いることが好ましいことを示す。表3に示す作業スキルデータベースは、キャベツ栽培用の作業スキルデータベースの一例であり、作業スキルがこれに限定されるものではない。
【0044】
機械データベースは、作業に必要な機械及び資材に関するデータベースであり、表4に示すように作業項目と、必要機械、機械を識別、管理するために設定された機械識別番号、必要資材とが紐付けられている。同種の機械が複数台ある場合には、それぞれの機械識別番号に枝番号が付与され区別される。例えば移植機が3台あれば、識別番号は、M01-1、M01―2、M01-3が与えられる。表4に示す機械データベースは、キャベツ栽培用の機械データベースの一例であり、作業に必要な機械・資材がこれに限定されるものではない。
【0045】
【表4】
【0046】
作業者データベースは、作業者の情報に関するデータベースであり、表5に示すように作業者名と作業者識別番号、拠点事務所、拠点事務所の位置情報、資格(免許)とが紐付けられている。作業者識別番号は、作業者を識別、管理するために設定された番号である。拠点事務所は、作業者が拠点とする事務所であり、各拠点事務所にはそれぞれの位置情報が付されている。ここに示す資格は、作業に必要な資格であり、表3に示す作業スキルデータベースに記載のものと一致する。
【0047】
【表5】
【0048】
端末データベースは、端末情報に関するデータベースであり、表6に示すように端末名と端末識別番号とその端末を使用、管理する者とが紐付けられている。端末は、パーソナルコンピュータのような固定式のものであってもよく、スマートフォンのような携帯可能なものであってもよい。例えば本実施形態では、端末1が管理者端末40a、端末2が管理者端末40b、端末3が責任者端末50a、端末4が責任者端末50b、端末5が作業者端末60aである。端末識別番号は、端末を識別、管理するために設定された番号であり、例えばIPアドレスを使用することができる。作業者は、各自端末を所持する。
【0049】
【表6】
【0050】
圃場データベースは、圃場情報に関するデータベースであり、表7に圃場名称と圃場識別番号と圃場面積と圃場位置と圃場の管理責任者(地区責任者)が紐付けられている。圃場識別番号は、圃場を識別、管理するために設定された番号である。
【0051】
【表7】
【0052】
天候作業データベースは、天候と作業との関係に関する示すデータベースであり、表8において、作業項目のうち雨天時に行えない作業項目が区別されている。表8において丸印が付された作業項目は、雨天時に作業を行うことができない。この天候作業データベースから定植は、雨天時行うことができない作業であり、除草、収穫は、雨天時で行える作業であることが分かる。表8に示す天候作業データベースは、キャベツ栽培用の天候作業データベースの一例であり、作業項目、雨天時に作業を行うことができない作業項目がこれに限定されるものではない。
【0053】
【表8】
【0054】
定植前作業データベースは、定植前に行う作業情報に関するデータベースであり、表9に示すように作業項目と、作業項目識別番号、作業時期、必要機械、必要資材とが紐付けられている。定植前の作業には、排水対策、堆肥施用、圃場準備、pH調整、耕耘、畝立てがある。定植前作業データベースにより定植前に行うべき作業内容、その実施時期、必要機械・資材が分かる。表9に示す定植前作業データベースは、キャベツ栽培用の定植前作業データベースの一例であり、定植前作業及びこれに関係する作業時期、必要機械等がこれに限定されるものではない。
【0055】
【表9】
【0056】
定植前作業については、定植後の作業と同様に、表2に示す作業時間情報、表3に示す作業スキル情報、表5に示す作業者情報、表8に示す天候作業情報など定植前の作業に関するデータを別途有する。
【0057】
農業支援装置10は、機能的には生育状態予測手段21、作業情報算出手段22、スケジュール補正手段23、作業時間補正手段24、作業情報作成手段25、作業情報管理手段26、定植前作業情報算出手段27、データ送受信手段28、データベース管理手段29、メニュー提供手段30、アクセス権限設定手段31を備える。
【0058】
生育状態予測手段21は、定植以降の生育状態を予測する手段であり、生育モデルを用いて生育状態を予測する。生育モデルは、特に限定されるものではないが、気温と葉齢とが関連付けられた葉齢増加モデルを好適に使用することができる(図3参照)。この葉齢増加モデルでは、算出される葉齢が生育状態を示す。キャベツ、レタスについては、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の葉齢増加モデルを使用することができる。
【0059】
生育モデルに葉齢増加モデルを使用する場合には、以下の要領で生育状態を予測することができる。圃場及び日付が指定されると圃場の位置データを圃場データベースから取得し、指定された日以降の圃場の位置における気象データを取得する。この気象データは、オンラインで気象データを提供する気象データ提供手段200を介して取得する。このような気象データ提供手段200としては、例えば国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構のメッシュ気象データがある。
【0060】
圃場の指定日以降の気象データが得られれば葉齢増加モデルを用いて、日ごとの葉齢を算出することができる。気象データは、位置(場所)によって異なるので生育状態の予測は、圃場を指定し圃場毎に行われる。生育状態の予測を行う日は、生育モデルに葉齢増加モデルを使用する場合には、定植日、定植日から収穫までの任意の日を指定することができる。ここで指定する日が、指定日である。
【0061】
生育状態予測手段21の他の態様を示す。生育モデルに葉齢増加モデルを使用する場合、前記のとおり国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の葉齢増加モデルを使用することができる。この葉齢増加モデルは、圃場が特定されない点において、標準葉齢増加モデルと言える。このような標準葉齢増加モデルは、幅広い圃場に適用することができる一方で、圃場の特性が考慮されていないため圃場の位置によっては、生育状態の予測に誤差が多くなる場合がある。
【0062】
例えば標高の高い圃場、山のかげとなり日当たりの悪い圃場の場合、気象データ提供手段200が提供する気温データと実際の気温が異なる。このため気象データ提供手段200が提供する気温データを用いて生育状態を予測すると誤差が多くなる。圃場毎に実際の気温データを測定すればよいが圃場の数が多いような場合には難しい。
【0063】
標準葉齢増加モデルをした生育状態の予測では、実際の生育状態との差が大きな圃場については、同一圃場の実測された生育状態に基づき標準葉齢増加モデルを修正し使用するのがよい。このように圃場固有の葉齢増加モデル(固有葉齢増加モデル)を使用することで生育状態の予測精度が高まる(図3参照)。
【0064】
ここでは葉齢増加モデルを用い、標準葉齢増加モデルと固有葉齢増加モデルとの関係、2つのモデルの使い分けを説明したが、他の生育モデルについても標準モデルと圃場固有モデルの考え方を用いることができる。
【0065】
作業情報算出手段22は、農業管理に資する作業情報を算出する手段であり、圃場情報と生育状態と各種情報とを用い、圃場毎に作業情報を算出する。作業情報には基礎作業情報、選出作業者情報、特定作業者・機械情報などがある。以下、作業情報算出手段22による各作業情報の算出要領を説明する。
【0066】
基礎作業情報は、作業情報の基礎となる部分であり、作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、作業項目を実施するに必要なスキル、作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材に関する情報を含む。
【0067】
作業情報算出手段22は、圃場が指定されると圃場データベースから圃場面積を取得する。また指定日を指定し、生育状態予測手段21を介して指定日以降の各日付における生育状態に関するデータを取得する。作業項目は、生育状態予測手段21により算出された生育状態と作業項目データベースとを用いて算出する。これにより日付と関連した作業項目が得られる。作業項目は、作業時間、必要な作業者人数及び機械・資材等を算出する基礎情報であり、1次情報と言える。
【0068】
圃場毎の日付に対応した作業項目が得られると、作業時間データベースを用いて圃場毎に作業に必要な標準作業時間、必要人数が算出される。これにより圃場毎に作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュールが得られる。また作業スキルデータベースを用いて作業項目を実施するに必要なスキルが算出される。また機械データベースを用いて圃場毎に作業に必要な機械・資材が算出される。このような基礎作業情報は、農業管理を行う上で必要となる全体計画の立案などに好適に活用できる。
【0069】
作業情報算出手段22による基礎作業情報の算出の他の形態を示す。作業情報算出手段22が算出する作業スケジュールは、生育モデルから生育状態を予測、作業項目の算出、さらに作業時間を算出することで得られるが、ここには天候の要素が入っていない。しかしながら天候作業データベースに示すように雨天時には行えない作業もある。
【0070】
スケジュール補正手段23は、作業情報算出手段22に組み込まれ作業情報算出手段22が算出する作業スケジュールを補正する。スケジュール補正手段23は、気象データ提供手段から指定日の天気データを入手する。スケジュール補正手段23は、指定日から収穫日、例えば定植日から収穫日までの期間の間の天気データに雨天時が含まれている場合、天候作業データベースを参照し、雨天時に行うことができない作業を選出する。
【0071】
さらにスケジュール補正手段23は、気象データから雨天によりできないとされた作業を実施可能な最短日を算出しその作業をそこに当てはめ、作業情報算出手段22が算出する作業スケジュールを補正する。作業情報算出手段22は、スケジュール補正手段23が算出した補正後の作業スケジュールを採用する。
【0072】
作業情報算出手段22による基礎作業情報の算出のさらに他の形態を示す。作業情報算出手段22が算出する各作業に対応した作業時間は、作業時間データベースを用いて算出されるが、算出される作業時間は標準的な作業時間である。機械を使用する作業においては、小さい圃場の場合大きい圃場に比較して機械の操作に時間がかかる。そのため圃場の大きさが所定の大きさ以下の圃場に対しては、作業時間の上乗せをすることが合理的である。
【0073】
作業時間補正手段24は、作業情報算出手段22に組み込まれ作業情報算出手段22が算出する基礎作業情報に含まれる作業時間を補正する。作業時間補正手段24は、予め定められた圃場の面積と作業時間の上乗せ時間との関係に基づき圃場面積に応じて標準作業時間に上乗せ時間を加算する。作業情報算出手段22は、作業時間補正手段24が算出する、標準作業時間に上乗せ時間を加算した時間を作業時間として採用する。圃場の面積と作業時間の上乗せ時間との関係は、例えば20a以上の圃場は、上乗せ時間はゼロ、10a以上20a以下の圃場は、上乗せ時間を標準作業時間の10%、10a未満の圃場は、上乗せ時間を標準作業時間の20%とする。
【0074】
選出作業者情報は、作業項目を実施するに適した作業者に関する情報である。作業情報算出手段22は、基礎作業情報として、作業項目を実施するに必要なスキル、必要な機械・資材が算出されると、作業者データベースを用いて当該作業を行うことができる作業者を選出する。作業に適した作業者の情報が得られれば、管理者又は地区責任者は、この中から実際に作業を行う者を決めることができる。
【0075】
特定作業者・機械情報は、圃場毎に作業項目を担当する作業者・機械を割付けた情報である。圃場の数が少ない場合には、選出作業者情報が得られれば管理者又は地区責任者が、実際に作業を行う者を決めることは難しくない。しかしながら圃場の数が多くなり、さらに定植日が異なると作業を担当可能なスキルを持つ作業者をダブルブッキング、つまり同じ時間帯に2以上の圃場又は2以上の作業項目を担当しないように割り振ることは容易ではない。これは作業に使用する機械にも同じである。
【0076】
また実際の農業経営においては、作業者の人数、機械・資材の数は無制限ではなく上限値があるため、圃場毎に作業項目を担当する作業者・機械を割付けることはさらに難しくなる。ここでは作業情報算出手段22が、人工知能を用いて、算出された基礎作業情報、選出作業者情報、さらに機械データベースを用い、同じ作業者及び同じ機械が同じ時間帯に2以上の圃場又は2以上の作業項目を担当しないように割り振る。人工知能は特に限定されるものではなく、公知の機械学習を使用することができる。
【0077】
圃場毎に作業項目を担当する作業者・機械の割付けについて好ましい態様を説明する。第1の態様は、作業項目を担当する作業者を割り振るとき、同じ作業者が同じ時間帯に2以上の圃場又は2以上の作業項目を担当しないように割り振ることを前提とし、人工知能を用いて、全作業者の移動距離の積算値が最小となるように作業者を決定する。
【0078】
ここで作業者の移動距離は、作業者の拠点事務所から作業を行う圃場への移動距離をいう。例えば、作業者「野菜一郎」が、圃場「富田下01」で作業する場合には、作業者「野菜一郎」の拠点事務所Aから圃場「富田下01」への移動距離である。同様に作業者「野菜二郎」が、圃場「富田下02」で作業する場合には、作業者「野菜二郎」の拠点事務所Bから圃場「富田下02」への移動距離である。
【0079】
移動距離は、作業者データベースに記載された拠点事務所の位置データ、圃場データベースに記載された圃場の位置データと、公知の地図情報とから道路に沿った移動距離を得て使用する。簡易的に拠点事務所と圃場との間の直線距離を移動距離として使用してもよい。各作業者の移動距離を算出し、得られた作業者全員の移動距離を合算し、その値が最小となるように作業者を割り振る。このような作業者の割り付け方法は、全作業者の移動時間が最小となるため効率的であり、農業経営上も好ましい。
【0080】
圃場毎に作業項目を担当する作業者・機械の割付けについてより好ましい態様を説明する。第2の態様は、作業項目を担当する作業者・機械を割り振るとき、同じ作業者が同じ時間帯に2以上の圃場又は2以上の作業項目を担当しないように割り振ることを前提とし、人工知能を用いて、全作業者及び全機械の前後作業の移動距離の積算値が最小となるように作業者及び機械を決定する。
【0081】
作業者の前後作業及び移動について説明する。例えば、作業者「野菜一郎」が、午前中に圃場「富田下01」で作業「除草」を行い、同日の午後に圃場「富田下02」で作業「除草」を行う場合、前の作業が圃場「富田下01」での除草作業、後の作業が圃場「富田下02」での除草作業に該当する。また前後作業の移動は、圃場「富田下01」から圃場「富田下02」への移動である。他の作業者、機械についても同じように考える。
【0082】
前後作業の移動距離は、圃場データベースに記載された圃場の位置データと、公知の地図情報とから道路に沿った移動距離を得て使用する。簡易的に2つの圃場の間の直線距離を移動距離として使用してもよい。各作業者の前後作業の移動距離を算出し、得られた作業者全員の移動距離を合算し、その値が最小となるように作業者を割り振る。機械についても同様である。このような作業者、機械の割り付け方法は、全作業者、機械の移動時間が最小となるため効率的であり、農業経営上も好ましい。
【0083】
作業情報作成手段25は、作業情報算出手段22が算出した作業情報、さらには後述の定植前作業情報算出手段27が算出した作業情報を、端末へ送信可能に、また記憶装置14への保存可能に所定の様式にとりまとめる。図4は、(A)カレンダー形式の作業スケジュール表であり、(B)は作業内容、作業時間、作業者等の作業情報である。ここで様式は、特に限定されるものではないが作業情報を得た作業者が容易に理解でき、また作業情報を得た管理者・地区責任者が作業情報を容易に編集できるものが好ましい。管理者・地区責任者による作業情報の編集については後述する。
【0084】
作業情報管理手段26は、作業情報作成手段25が作成する作業情報に識別番号を付与し、記憶装置14へ保存する。また管理者端末40、責任者端末50から送信された修正された作業情報を受信すると、記憶手段14に保存した対応する識別番号の作業情報を受信した作業情報に更新する。
【0085】
定植前作業情報算出手段27は、定植前の作業情報を算出する。前記作業情報算出手段22は、生育状態と紐付けた作業項目を1次情報として作業情報を算出することからも分かるようにこの作業情報は、定植後の作業情報である。これに対して定植前作業情報算出手段27は、定植後の作業情報と同様の定植前の作業情報を算出するものである。
【0086】
定植前作業情報算出手段27は、定植前作業データベース、定植前の作業項目と作業時間とを紐付けた定植前作業時間データベース(図示を省略)、表3に示す作業スキル情報、表5に示す作業者情報、表8に示す天候作業情報など定植前の作業に関するデータを用い、定植後の作業情報と同様の作業情報を圃場毎に算出する。定植前作業データベースに示すように定植前の作業項目の作業時期は、定植日を基準に決められているので、定植前作業情報算出手段27で算出される作業スケジュールも、定植日を基準としたスケジュールとすることができる。
【0087】
以上により作業情報算出手段22及び定植前作業情報算出手段27を用いることで各圃場毎に定植前作業から収穫までの作業スケジュール、換言すれば年間を通じた作業スケジュールを得ることができる。ここでは、定植前の作業スケジュールについて説明したが、定植前の作業における作業者・機械の割り振りも、先に説明した定植後の作業における作業者・機械の割り振りと同じ要領で算出することができる。
【0088】
データ送受信手段28は、端末からの要求に応じ各種データを端末に送信する。また端末から送信されるデータを受信する。さらに気象データ提供手段200にアクセスし、気象データを受信する。
【0089】
データベース管理手段29は、端末から送信されるデータベースを保存する。既に同じ名称のデータベースがある場合は、上書き保存してデータを更新する。またデータベースに新たにデータが追加された場合には、識別番号を自動的に付与した上でデータベースを更新する。例えば、作業者データベースに新たに作業者が追加された場合、圃場データベースに新たに圃場が追加されたような場合である。またデータベース管理手段29は、新たに圃場、作業者の拠点事務所が追加された場合には、その住所、地図情報から位置情報を取得し、データベースに追加した上でデータベースを更新する。
【0090】
メニュー提供手段30は、管理者端末40、責任者端末50、作業者端末60に送信すするメニューを作成し記憶手段16に保存する。また端末40、50、60の要求に応じ、データ送受信手段28を介して要求されたメニューを端末40、50、60に送信する。メニューには、「データベース作成・更新」、「作業情報作成」、「作業情報更新」、「作業情報閲覧」が含まれる。但し、メニューはこれに限定されるものではない。
【0091】
メニューの「データベース作成・更新」は、各データベースを作成する、また作成したデータベースを更新するためのメニューであり、端末がメニュー一覧から「データベース作成・更新」を選択すると、データベース作成・更新のために必要なデータ入力画面を送信する。このデータ入力画面は、データベース一覧が表示され、データベースを選択可能に構成されおり、管理者は「データベース」を指定し、データを追加、削除、修正する。端末から返信される作成・更新後のデータベースは、データベース管理手段29が所定のデータベースに保存する。
【0092】
メニューの「作業情報作成」は、作業スケジュールなどの作業情報を作成するためのメニューであり、端末がメニュー一覧から「作業情報作成」を選択すると、作業情報作成のために必要なデータ入力画面を送信する。このデータ入力画面は、指定日の指定、圃場名及び作業情報の種類等を選択可能に構成されており、管理者は「作業情報作成」の条件を指定することができる。農業支援装置10は、端末から返信される指定された条件で作業情報を作成し、端末に送信する。
【0093】
メニューの「作業情報更新」は、作成され記憶装置14に保存された「作業情報」を更新するためのメニューであり、端末がメニュー一覧から「作業情報更新」を選択すると、作業情報更新のために必要なデータ入力画面を送信する。このデータ入力画面は、作業情報一覧が表示され、作業情報を選択可能に構成されており、管理者又は地区責任者は「作業情報」を指定し、データを修正する。端末から返信されるデータが修正された作業情報は、記憶装置14に上書き保存される。
【0094】
メニューの「作業情報閲覧」は、作成され記憶装置14に保存された「作業情報」を閲覧するためのメニューであり、端末がメニュー一覧から「作業情報閲覧」を選択すると、作業情報閲覧のために必要なデータ入力画面を送信する。このデータ入力画面は、作業情報一覧が表示され、作業情報を選択可能に構成されており、管理者、地区責任者、作業者は「作業情報」を指定する。端末から返信された指定された作業情報を閲覧可能に端末に送信する。
【0095】
アクセス権限設定手段31は、端末が農業支援装置10にアクセスできる範囲を設定するものであり、本実施形態では、端末に応じて実行可能なメニューを設定する。例えば、管理者が管理、使用する管理者端末40は、全てのメニューを実行可能、地区責任者が管理、使用する責任者端末50は、地区責任者が管理する地区に関する「作業情報作成」、「作業情報更新」、さらに全ての「作業情報閲覧」が可能に、管理者及び地区責任者以外の作業者が管理、使用する作業者端末60は全ての「作業情報閲覧」が可能に設定する。
【0096】
端末データベースに示すように各端末には端末識別番号が付され、また圃場データベースに示すように各圃場には責任者が決められているので、これらを使用することでアクセス権限を設定することができる。このように端末が農業支援装置10にアクセスできる範囲を設定することで情報管理を適切に行うことができる。
【0097】
上記構成からなる農業支援装置10は、コンピュータに、コンピュータを前記各手段として機能させるためのプログラムをインストールすることで容易に実現することができる。農業支援装置10は、クラウドサーバーでもよい。さらに農業支援装置10は、データベースが分離した形態のものであってもよい。例えばデータベースにクラウドサーバーを用いてもよい。
【0098】
端末は、管理者が管理、使用する管理者端末40(40a、40b)、地区責任者が管理、使用する責任者端末50(50a、50b)、管理者及び地区責任者以外の作業者が管理、使用する作業者端末60(60a、60b、60c)で構成される。本実施形態では管理者端末40は、事務所に設置される端末40aと管理者が形態する端末40bとからなる。責任者端末50及び作業者端末60は、各自一台所持する。事務所に設置される端末40aは、パーソナルコンピュータであり、他に端末はスマートフォンである。管理者端末40、責任者端末50、作業者端末60の数は特に制限されるものではない。
【0099】
管理者端末40、責任者端末50、作業者端末60は、いずれも入出力手段、送受信手段、制御手段、記憶手段を備え、農業支援装置10とデータを送信可能に接続する。管理者端末40、責任者端末50、作業者端末60が備える機能は基本的に同じである。但し、端末の種類により農業支援装置10により実行可能なメニューが制限される。
【0100】
農業支援システム1の使用例として、作業情報を算出、作成、送信する手順を、図5を用いて説明する。ここでは作業情報は、作業項目・作業日程及び作業時間を含む作業スケジュール、作業項目を実施するに必要なスキル、作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材に関する情報であるとする。
【0101】
管理者が管理者端末40aから農業支援装置10にアクセスすると(ステップS1)、農業支援装置10はメニューを管理者端末40aに送信する(ステップS2)。管理者がメニューから「作業情報作成」を選択すると当該データが農業支援装置10に送信される(ステップS3)。農業支援装置10は、管理者端末40aからデータを受信すると、管理者端末40aがアクセス権限を有するか確認する(ステップS4)。アクセス権限は端末の識別番号に基づき判定する。農業支援装置10は、管理者端末40aがアクセス権限を有しないと判断すると、管理者端末40aに「アクセス不可」情報を送信し、以降の操作を終了する。
【0102】
一方、農業支援装置10は、管理者端末40aがアクセス権限を有すると判断すると(ステップS4)、作業情報作成のために必要なデータ入力画面を送信する(ステップS5)。管理者は、管理者端末40aに表示されるデータ入力画面を通じて、指定日の指定、圃場名及び作業情報の種類等を選択する(ステップS6)。当該データは管理者端末40aから農業支援装置10に送信される。
【0103】
農業支援装置10は、管理者端末40から作業情報の作成に関するデータ(作成条件)を受信すると、データベースから必要なデータを読み出し(ステップS7)、また気象データ提供手段200にアクセスし、必要な気象データを取得する(ステップS8)。農業支援装置10は、生育モデルを用い生育状態を算出し(ステップS9)、さらにこの生育状態から作業項目、作業日程、作業時間、作業項目を実施するに必要なスキル、作業項目を実施するに必要な作業者人数及び機械・資材を算出する(ステップS10)。
【0104】
農業支援装置10は、その後、算出した情報(データ)を用いて所定の様式の作業情報を作成し、要求した管理者端末40aに作成した作業情報を送信する。また作成した作業情報を記憶装置14に保存する(ステップS11)。管理者は、受信した作業情報のデータを修正することも可能である。作業情報のデータを修正するときは、管理者端末40a上で受信したデータを修正した後、農業支援装置10に送信する(ステップS12)。農業支援装置10は、管理者端末40aから修正された作業情報を受信すると記憶装置14に保存する(ステップS13)。
【0105】
以上のように本発明の第1実施形態の農業支援システム1は、生育モデルを用い生育状態を予測し、生育状態と紐付けられた作業項目(作業内容)、さらに作業項目と直接的に又は間接的に紐付けられた各種情報を用いて作業項目、作業日程、作業時間などを含む作業スケジュールを立案し、また作業に必要なスキル、作業者の人数、機械・資材等を算出することができるので、これを用いることで圃場の効率的な管理、作業指示、機械・資材の分配が可能となり、経営管理に要する時間を削減することができる。
【0106】
本発明の第1実施形態の農業支援システム1は、定植後の作業情報のみならず定植前の作業スケジュール等を含む作業情報を算出することができるので年間を通じた作業計画を立案することができる。このような農業支援システム1は、新規に農業経営に参加する者、圃場を増やすことを計画している管理者等にとって好適である。
【0107】
また本発明の第1実施形態の農業支援システム1は、標準生育モデルの他に圃場固有の生育モデルを用いて生育状態を予測することができ、また圃場の大きさに対応した作業時間の上乗せ、雨天による作業の延期等も考慮した作業スケジュールを立案することができるので実態に近い作業スケジュール、作業情報が得られる。
【0108】
また本発明の第1実施形態の農業支援システム1は、作業者及び機械の移動距離を考慮した作業者及び機械の割り振りも算出できるため効率的な運営が可能となる。特に圃場の数が多い場合、圃場が分散しているような場合には、作業者及び機械の移動距離を最小とする配置は効果が大きい。
【0109】
また本発明の第1実施形態の農業支援システム1は、管理者、地区責任者、作業者が使用、管理する端末から農業支援装置10にアクセスし、農業支援装置10に作業情報の作成・送信の要求、作業情報の修正、閲覧が可能なため使い勝手がよい。例えば管理者は、農業支援装置10から得た作業情報に対して修正を加えることができるので、作業者の病気等による作業者の配置替え、あるいは実際の生育状態に合致した計画に修正することができる。修正された作業情報は、農業支援装置10に保存されるため、作業者は、農業支援装置10から作業情報を読み出すことで自分のスケジュールをいつでも確認することができる。
【0110】
また本発明の第1実施形態の農業支援システム1は、農業支援装置10が端末のアクセス権限を設定することができるので、情報を適切に管理することができる。
【0111】
以上、本発明の第1実施形態の農業支援システム1を用いて本発明に係る農業支援装置、農業支援装置で用いるプログラム、農業支援システムを説明したが、本発明に係る農業支援装置、農業支援装置で用いるプログラム、農業支援システムは、これに限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。
【0112】
本発明の第1実施形態の農業支援システムの説明において、数値が使用されているがここに示された数値は、代表的な数値あるいは理解を容易にするために使用された数値であり、本発明がこの数値に拘束されるものではない。また作業情報も上記実施形態に限定されるものではない。
【0113】
また本発明の第1実施形態の農業支援システムは、複数の圃場でキャベツ栽培を行う場合を例として説明されているが、本発明に係る農業支援装置、プログラム、農業支援システムは、キャベツ栽培に限定されるものではなく、幅広い作物に適用することができる。作物により生育モデル、作業項目、作業項目を実施するに要する作業時間、作業者人数、必要な作業スキル、必要な機械などの各種情報(データ)も異なる場合もある。この場合にはその作物の対応した生育モデル、各種情報(データ)を用いて作業スケジュールなどの作業情報を算出する。
【0114】
気象データを使用する生育モデル、例えば葉齢増加モデルを用いて生育状態を予測するときの気象データは、過去の気象データであっても予報気象データ、つまりこれからの気象データ(将来の気象データ)であってもよい。
【0115】
生育モデルによる生育状態に予測において、予測値と実際の生育状態が異なる場合も想定される。よって生育モデルは、実際の生育状態を入力し、これを起点とし生育状態を予測できる機能を備えるものが好ましい。このような生育モデルを使用すれば、短期の作業計画においては高い精度で計画立案ができる。
【0116】
上記実施形態の農業支援システムは、圃場の大きさに対応した作業時間の上乗せを可能とする。作業項目のうち定植、中耕追肥、防除等は雨天でも行える作業であるが、雨天でない場合に比較すると作業効率が低下し、結果として作業時間が長くなることが予測される。このため定植、中耕追肥、防除等の作業に対して、雨天時には作業時間を上乗せすることが好ましい。この雨天時の作業時間の上乗せは、雨天時における上乗せ作業時間を予め作業項目毎に定め、これを作業時間補正手段に組み込み実行させるのがよい。
【0117】
図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【実施例0118】
本発明に係る農業支援装置(含むプログラム、以下同じ)・農業支援システムを使用することで、管理者(経営者)1名を含め社員10名のフラット組織で従来技術や機械化の限界を超えたキャベツ100ha規模の効率的な大規模経営を実現した。具体的には以下のとおりである。
【0119】
パソコン,スマートフォンを用い、圃場や農作業などに関するさまざまな情報を記録・集計・出力できる営農支援ツールであるアグリノート(登録商標)と、本発明の農業支援装置・農業支援システムとを連携させた。本発明に係る農業支援装置・農業支援システムを導入し作業・経営管理を効率化させたことにより、社員10名を維持したまま経営面積を75haから100haに拡大させることができた。
【0120】
また本発明に係る農業支援装置・農業支援システムを導入することで、75ha規模で1000時間(2.7時間/日)投下されていた経営管理工数を100ha規模で約730時間(2.0時間/日)に圧縮することができた。さらに本発明に係る農業支援装置・農業支援システムを導入する前に比較して、作業スケジュール等が明確となったため育苗苗数も5,120本/10aから3,980本/10aに削減できた。以上より生産コストを600万円以上削減できた。
【0121】
本発明に係る農業支援装置・農業支援システムが、管理者(経営者)に1.7時間/日の空き時間を与えた効果は非常に大きいものと評価できる。また本発明に農業支援装置・農業支援システムの導入により、これまで熟練の技術と経験を持った経営者のみが実施可能であった農業管理について、地区責任者(現場責任者)による効果的な現状把握~作業計画の立案も可能となった。
【0122】
また本発明に係る農業支援装置・農業支援システムの導入により社員(作業者)も今後の作業スケジュール、日々の収穫実績と目標値との対比を把握することが可能となり、社員(作業者)の責任感・モチベーションの向上につながり、さらに社員(作業者)からの積極的な品目提案等の効果も生まれた。
【符号の説明】
【0123】
1 農業支援システム
10 農業支援装置
11 本体
12 入力装置
13 表示装置
14 記憶装置
21 生育状態予測手段
22 作業情報算出手段
23 スケジュール補正手段
24 作業時間補正手段
25 作業情報作成手段
26 作業情報管理手段
27 定植前作業情報算出手段
28 データ送受信手段
29 データベース管理手段
30 メニュー提供手段
31 アクセス権限設定手段
40、40a、40b 管理者端末
50、50a、50b 責任者端末
60、60a、60b、60c 作業者端末
100 ネットワーク
200 気象データ提供手段
図1
図2
図3
図4
図5