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特開2022-159123高分子プロアトシアニジン組成物及びその応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159123
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】高分子プロアトシアニジン組成物及びその応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/765 20060101AFI20221006BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K31/765
A61K31/353
A61P39/06
A61P25/00
A61P35/00
A61P21/00
A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022053438
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/084584
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522125320
【氏名又は名称】ベルクス・バイオ-ファーマシューティカル(タイワン)・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BELX BIO-PHARMACEUTICAL (TAIWAN) CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シャウ-フェン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ-シン・チョン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086FA02
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA75
4C086ZA94
4C086ZB26
4C086ZC52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】活性酸化物の生成によって引き起こされる脳疾患、老化関連疾患、肝疾患、腫瘍及びサルコペニアを治療又は予防するための、医薬組成物を提供する。
【解決手段】下式で表され、50~65の重合度を有するプロアントシアニジンを含む医薬組成物とする。

[式中、R、R、Rは、H、OH、OCH等;Rは、3-(α)-OH、3-(β)-OH、3-(α)-O-糖又は3-(β)-O-糖である]
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のプロアントシアニジン{ここで、プロアントシアニジンのモノマー単位は、下記式:
【化4】

[式中、RがOCHである場合、RはOHであり、そしてRはHであるか、RがOHである場合、RはHであり、そしてRはHであるか、RがOHである場合、RはOHであり、そしてRはHであるか、又はRがOHである場合、RはOHであり、そしてRはOHであり;そしてRは、3-(α)-OH、3-(β)-OH、3-(α)-O-糖又は3-(β)-O-糖である]を有し、そしてプロアントシアニジンは、50~65の範囲の重合度を有する}、及び薬学的に許容し得る担体又は塩を含む、医薬組成物。
【請求項2】
プロアントシアニジンのモノマー単位が、C4-C8結合、C4-C6結合、又はC2-C7結合を介して互いに結合している、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
プロアントシアニジンのモノマー単位が、C2、C3又はC4でのR又はS光学異性体を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
フラボノイド化合物が、ガロカテキン、ガロエピカテキン又はエピガロカテキンを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物が、カテキン、エピカテキン、エピアフゼレキン、ガラート類、フラボノール類、フラバンジオール類、ロイコシアニジン類又はプロシアニジン類を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物が、フラバン-3-オールを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
プロアントシアニジンが、55~60の範囲の重合度を有する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項8】
薬学的に許容し得る塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、ジシクロヘキシルアミン塩、メチル-D-グルコサミン塩、アルギニン塩、リシン塩、ヒスチジン塩又はグルタミン塩を包含する、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項9】
活性酸化物の生成によって引き起こされる脳疾患、老化関連疾患を治療又は予防するため、あるいは老化を予防及び治療するための、請求項1記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
肝疾患、腫瘍及びサルコペニアなどの疾患の治療及び予防のための、請求項9記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化の分野、特に高分子プロアトシアニジン(proathocyanidin)の組成物、及び抗酸化ストレスに関連する疾患の処置の分野におけるその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
プロアントシアニジンは、プロアントシアニジンとしても知られ、英語名は、OPCs又はOPCと略されるオリゴマープロアントシアニジンである。これは、熱酸処理下でアントシアニンを生成させることができるポリフェノール化合物であり、現在、非常に強力なインビボ活性で人体のフリーラジカルを捕捉するための有効な天然の抗酸化剤として国際的に認められている。OPCは一般に、わずかな臭い及び渋味がある赤褐色の粉末であり、水及び大部分の有機溶媒に可溶性である。プロアントシアニジンは、カテキン((+)-カテキン)、エピカテキン((-)-エピカテキン)又は没食子酸エピカテキン((-)-エピカテキン-3-ガラート)などのモノマーから、C4→C8又はC4→C6結合を介して縮合したポリフェノールである。二量体、三量体、四量体…十量体など、縮合の数及び結合の位置に応じて、様々なタイプのポリマーが形成されるが;具体的には、重合度に応じて、プロアントシアニジンをオリゴマープロアントシアニジン(オリゴマープロアトシアニジン、OPC)及び高分子プロアントシアニジン(高分子プロアトシアニジン、PPC)に分類することができる。同時に、プロアントシアニジンの重合度が高くなると、それに応じて溶解度が低下し、PPCがヒトの腸管に吸収されにくくなることが研究によって示されている。したがって、オリゴマープロアントシアニジンは、より強い生理活性を有する。プロアントシアニジンは、体内の過剰なフリーラジカルを捕捉し、体の免疫を向上させることができる。それらは、抗癌性、抗変異原性、及び心臓血管疾患の薬物の主要活性成分として、また安全で無毒な天然の抗酸化剤などとして使用できる。それらは、医学、ヘルスケア、食品、日常の化学薬品及び他の分野で広く使用されている。
【0003】
活性酸素種(ROS)は、内因性及び外因性過程によって生成され、それらの負の効果は、抗酸化防御によって削ぐことができる。酸化ストレスとは、体内の酸化と抗酸化の間の不均衡の状態のことをいい、酸化に傾きがちであるため、好中球の炎症性浸潤、プロテアーゼの分泌増加、及び多数の酸化中間体の産生につながる。酸化ストレスは、体内のフリーラジカルの負の効果であり、老化及び疾患の重要な要因であると考えられている。老化は、組織及び臓器の機能が徐々に失われることを特徴とする過程である。老化の酸化ストレス理論は、加齢に伴う機能喪失がROS誘導性損傷の蓄積に起因するという仮定に基づいている。一方、酸化ストレスは、サルコペニア及びフレイルを含む幾つかの加齢に伴う疾患(例えば、心血管疾患CVD、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎疾患、神経変性疾患、及び癌)に関係している。多くの臨床疾患及び老化の病因における酸化ストレスの重要な役割を考えると、抗酸化処置は幾つかの疾患の自然経過に積極的に影響を与える可能性がある(Ilaria Liguori, et.al., Clinical Interventions in Aging 2018, 13:757-772)。炎症性老化(inflammaging)と呼ばれる老化に関連する慢性炎症状態は、高齢者集団によく見られる種々の病状に関連することが指摘されている。炎症性老化は、細胞内の過剰なROSに関連しており、これが、細胞成分の酸化及び損傷、炎症の増加、並びに細胞死経路の活性化につながる可能性がある(Li Zuo, et.al., Int. J. Mol. Sci. 2019, 20:4472)。アテローム性動脈硬化症は、酸化ストレス及び内皮機能障害に関連する慢性血管炎症性疾患である。炎症性ケモカイン及びサイトカインの放出、ROS、成長因子の産生、並びに血管平滑筋細胞の増殖など、種々の要因がアテローム性動脈硬化症の経過を加速する。炎症及び免疫は、アテローム性動脈硬化症の進行及び合併症の重要な要因である(Patricia Marchio, et.al., Oxidative Medicine and Cellular Longevity Volume 2019, Article ID 8563845, 32 pages)。
【0004】
ROSの生成及び捕捉の均衡は、生細胞において重要な役割を果たし、DNA損傷及び発癌効果を有しており、そしてこれは、腫瘍の発生及び進行に密接に関連している(Guo C, et.al., Oncotarget, 2017, 8:75767-75777)。現在、遺伝子発現を含む、種々の細胞機能には適切なレベルのROSが必要であることは認識されている。代謝率、遺伝子変異及び相対的低酸素症の増加に起因して、腫瘍細胞ではROSの産生が増加し、同細胞での抗酸化酵素経路及び非酵素経路の増加によって過剰なROSが抑制される。ROSの増加は、様々なシグナル伝達経路に関与し、DNA変異を誘導するため、腫瘍の促進及び進行を含む、種々の病態を引き起こす可能性がある。ROSはまた、プログラム細胞死(PCD)を引き起こすこともある。癌を処置するためにROSレベルを調節する機序に基づく治療戦略は有用である(Perillo, et al.Experimental & Molecular Medicine, 2020, 52:192-203)。既存の研究では、プログラム細胞死のネクロトーシスとROSの間に密接な相関関係があることも証明されているが、これらは両方とも、炎症調節及び癌生物学などのヒトの生理的状態において重要な役割を果たす。実験では、幾つかの低分子を使用して、ROSとプログラムされた壊死を調節することによって癌細胞を排除した(Sheng-Kai Hsu, et.al., Cancers, 2020, 12:2185)。
【0005】
現在、プロアントシアニジンの研究は、主にOPC、即ち、重合度が2~4のオリゴマーフラボノイドに焦点を合わせているが、これは、多数の研究が、OPCはモノマー及びポリマーよりも良好な生理活性を有することを示しているからである。例えば、これは、食品、医薬品、化粧品、及び他の分野で紫外線ダメージ修復効果のある添加剤として使用され、また、ROSの抗酸化ストレスとして、酸化ストレス、肝機能及び肝臓病変、並びに運動制御などの分野で使用できる。PPCは入手しやすいものの、分子量が大きいため人体に吸収されにくく、そして立体障害効果がフェノール性ヒドロキシル基の活性に影響を与えるため、生物活性が低下し、その他の問題が発生し、そのため、それらはめったに研究されることがなく、業界では無効であるとさえ認識されている。
【0006】
この適用の研究において、ある程度の重合度を有するPPCは、より低い重合度を有するプロアントシアニジンよりも良好な抗酸化ストレスを達成でき、肝疾患、腫瘍、サルコペニア及び他の分野の治療及び予防に有意な効果を有することが予想外に見い出された。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、医薬組成物、特に、ROSの産生を阻害する良好な能力を有し、そして肝疾患、インフルエンザ、サルコペニアなどの疾患の治療及び予防において有意な効果を有する、高分子プロアントシアニジンを含有する医薬組成物を提供することである。
【0008】
本発明は、有効量のプロアントシアニジン{ここで、プロアントシアニジンのモノマー単位は、下記式:
【化1】
【0009】
[式中、RがOCHである場合、RはOHであり、そしてRはHであるか、RがOHである場合、RはHであり、そしてRはHであるか、RがOHである場合、RはOHであり、そしてRはHであるか、又はRがOHである場合、RはOHであり、そしてRはOHであり;そしてRは、3-(α)-OH、3-(β)-OH、3-(α)-O-糖又は3-(β)-O-糖である]を有し、そしてプロアントシアニジンは、50~65の範囲の重合度を有する}、及び薬学的に許容し得る担体又は塩を含有する医薬組成物を開示する。
【0010】
プロアントシアニジンのモノマー単位は、C4-C8結合、C4-C6結合、又はC2-C7結合を介して互いに結合している。プロアントシアニジンのモノマー単位は、C2、C3又はC4でのR又はS光学異性体を更に含む。
【0011】
プロアントシアニジンのモノマー単位は、ガロカテキン、ガロエピカテキン又はエピガロカテキンなどのフラボノイド化合物を含む。
【0012】
本発明に開示される医薬組成物は、カテキン、エピカテキン、エピアフゼレキン、ガラート類、フラボノール類、フラバンジオール類、ロイコシアニジン類又はプロシアニジン類及びフラバン-3-オールを含む。
【0013】
本発明に開示される医薬組成物は、ツツジ科(Ericaceae)、バラ科(Rosaceae)、マツ科(Pinaceae)、ブドウ科(Vitaceae)又はイラクサ科(Urticaceae)の植物、カラムシ(Boehmeria nivea L. Gaud)を含むイラクサ科の植物から抽出される。
【0014】
本発明に開示される医薬組成物のプロアントシアニジンは、50~65の範囲、好ましくは55~65、より好ましくは55~60の範囲の重合度を有する。
【0015】
本発明に開示される医薬組成物の薬学的に許容し得る塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、ジシクロヘキシルアミン塩、メチル-D-グルコサミン塩、アルギニン塩、リシン塩、ヒスチジン塩又はグルタミン塩を包含する。
【0016】
本発明に開示される医薬組成物は、活性酸化物の生成によって引き起こされる脳疾患、老化関連疾患を治療又は予防するため、あるいは老化を予防及び治療するために使用できる。
【0017】
本発明に開示される医薬組成物は、肝疾患、腫瘍及びサルコペニアなどの疾患を治療及び予防するために使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】マルチアングルレーザー光散乱分光法(MALS)を検出器として使用したプロアントシアニジン試料1のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。
図2】マルチアングルレーザー光散乱分光法(MALS)を検出器として使用したプロアントシアニジン試料1の質量分布分析。
図3】プロアントシアニジン試料1の質量分布分析の再現性実験の図。
図4】プロアントシアニジン試料1の溶出体積に対する微分重量分率のプロット。
図5A】PPCポリマーの比屈折率増分の分析。
図5B】PPCポリマーの比屈折率増分の分析。
図6】PPCポリマーによるヘパトーマ細胞(Huh7)におけるROS産生の阻害の実験グラフ。
図7】PPCポリマーによる大腸癌細胞(HRT-18)におけるROS産生の阻害の実験グラフ。
図8】大腸癌細胞(HRT-18)におけるPPCポリマーとOPCポリマーとの間のROS産生の阻害の実験的比較。
図9】PPCポリマーは、C2C12筋管の阻害に対する腫瘍分泌因子(肺癌条件培地、LLC)の効果を改善する。
図10A】PPCポリマーは、腫瘍分泌因子(LLC)誘導性C2C12筋管細胞萎縮関連遺伝子であるアトロギン-1(Atrogin-1)の発現を阻害する。
図10B】PPCポリマーは、腫瘍分泌因子(LLC)誘導性C2C12筋管細胞萎縮関連遺伝子であるMuRF-1の発現を阻害する。
図11】PPCポリマーは、C2C12筋管による腫瘍分泌因子(LLC)誘導性IL-6産生を阻害する。
図12】PPCポリマーは、MnClによって誘導されるC2C12筋管細胞損傷を改善する。
図13A】PPCポリマーは、Hによって誘導されるC2C12筋管細胞損傷に関連する遺伝子アトロギン-1の発現を阻害する。
図13B】PPCポリマーは、Hによって誘導されるC2C12筋管細胞損傷に関連する遺伝子MuRF-1の発現を阻害する。
図14】PPCポリマーは、C2C12筋管によるH誘導性IL-6産生を阻害する。
【0019】
詳細な説明
本発明の技術的解決策は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。当然のことながら、本明細書に記載の特定の実施態様は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではない。本出願の範囲は、これらの実施態様によって限定されないが、特許出願の範囲の下にある。
【0020】
本開示において、プロアントシアニジンは、植物から抽出され得る。使用される植物は、マメ科(Leguminosae)、ベンケイソウ科(Crassulaceae)、シクンシ科(Combretaceae)、ガガイモ科(Asclepiadaceae)、バラ科、ツツジ科、マツ科、シソ科(Lamiaceae)、タデ科(Polygonaceae)、ブドウ科又はイラクサ科、好ましくはイラクサ科のカラムシを含み得る。植物の抽出部位は、根、茎、葉及び/又は果実を含み得る。
【0021】
本開示において、植物は、一般的な既知の方法を使用して抽出され得る。1つの実施態様において、植物の乾燥根、茎、葉及び/又は果実は、薄切りされるか又はすりおろされる。次に、抽出液を使用して植物を抽出する。1つの実施態様において、カラムシの根及び/又は茎が、抽出のために選択される。
【0022】
抽出液は、水、又は水と水とは異なる極性の溶媒とを混合した溶液から選択されてもよい。水とは異なる極性の溶媒は、エタノール、アセトン、メタノール又は酢酸エチルを含み得る。溶媒は、単独で使用しても、互いに混合して使用しても、又は水と混合して使用してもよい。植物に対する抽出液の比率には特に制限はない。1つの実施態様において、植物に対する抽出液の比は、1:10(W/W)である。
【0023】
抽出中、様々な抽出液が選択されるため、抽出温度はわずかに変化させてもよい。1つの実施態様において、植物を室温で抽出液に浸漬させてもよい。別の実施態様において、抽出液をその還流温度(60~100℃)に加熱してもよい。抽出時間は、抽出温度に応じて、約2時間~7日である。更には、抽出操作中に、例えば、塩化ナトリウム、希無機酸(例えば、希塩酸)又は有機酸(例えば、ビタミンC又は酒石酸)を、抽出液のpH値を調整するために必要に応じて抽出液に添加してもよい。
【0024】
次に、プロアントシアニジンポリマー活性成分を含有する抽出物を濃縮乾燥するか、又は必要に応じて抽出物に対して部分精製若しくは完全精製を行うことができる。1つの実施態様において、部分精製の方法では、乾燥抽出物を95%エタノール及び/又はメタノール水溶液に再溶解する。次に、得られた溶液を、極性の異なる溶媒を使用して抽出して一部の不純物を除去するが、例えば、非極性溶媒(例えば、n-ヘキサン)を使用して脂質及び非極性物質を除去し、次にトリクロロメタン及び/又は酢酸エチルを使用して、低分子フェノール化合物を除去する。次に、溶媒抽出された液相を濃縮乾燥して、部分精製されたプロアントシアニジンを得る。
【0025】
完全精製の方法は、以下の工程を含み得る。部分精製された抽出物をエタノール又はメタノール水溶液に溶解し、モレキュラーシーブカラムに入れる。次に、様々な溶液及び/又は混合溶液を使用して溶出を行い、プロアントシアニジンを精製及び分離する。1つの実施態様において、様々な溶液の溶出順序は、95%エタノール、95%エタノール/メタノール(1:1、v/v)、50%メタノール及び50%アセトン水溶液である。各溶離液から溶出される溶液は、数回に分けて収集される。次に、溶出液中の精製プロアントシアニジンを液体クロマトグラフィー(254nm)を用いて検出する。種々の分子量分布を有するプロアントシアニジンポリマー溶液は、異なる溶離液から溶出される溶液を収集することによって得られる。次に、溶出された各溶液を40℃未満で濃縮し、凍結乾燥して、精製プロアントシアニジンポリマーを得る。1つの実施態様において、溶出に使用されるモレキュラーシーブカラムは、セファデックスLH-20カラム(German Amersham Corporationから購入)である。
【0026】
本開示において、精製プロアントシアニジンのモノマー単位は、下記式を有する:
【0027】
【化2】
【0028】
1つの実施態様において、RがOCHである場合、RはOHであり、そしてRはHである。別の実施態様において、RがOHである場合、RはHであり、そしてRはHである。別の実施態様において、RがOHである場合、RはOHであり、そしてRはOHである。式中、Rは、3-(α)-OH、3-(β)-OH、3-(α)-O-糖又は3-(β)-O-糖であってよく、ここで、プロアントシアニジンのモノマー単位は、C4-C8結合、C4-C6結合、又はC2-C7結合を介して互いに結合している。
【0029】
プロアントシアニジンのモノマー単位は、C2、C3又はC4でのR又はS光学異性体を含む。
【0030】
プロアントシアニジンのモノマー単位はまた、カテキン、エピカテキン、エピアフゼレキン、ガロカテキン、ガロエピカテキン、エピガロカテキンなどのフラボノイド類、ガラート類、フラボノール類、フラバンジオール類、ロイコシアニジン類又はプロシアニジン類を包含することができる。1つの実施態様において、プロアントシアニジンのモノマー単位は、フラバン-3-オール又はフラバン誘導体を含む。
【0031】
本発明に開示される医薬組成物のプロアントシアニジンは、50~65の範囲の重合度を有する;平均分子量は、15,000~19,500ダルトン、好ましくは16,500~18,000ダルトンである。
【0032】
分子量は、MALS検出器(SEC-MALS)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって決定される。MALS検出器(Malvern Instruments Ltd.(Malvern, UK)によって製造されたものなどのマルチアングル光散乱検出器)は、相対分子量(即ち、基準に対する)ではなく、絶対分子量を決定する。
【0033】
本発明における精製プロアントシアニジンは、単一の重合度を有するプロアントシアニジンを含み得る。それはまた、種々の重合度を有するプロアントシアニジン混合物を含み得る。
【0034】
薬学的に許容し得る担体は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張性吸収遅延剤又は医薬用相溶化剤を含み得るが、これらに限定されない。様々な投与方式のために、医薬組成物は、既知の方法を使用して種々の適切な剤形に調製され得る。
【0035】
薬学的に許容し得る塩は、無機塩又は有機塩を含み得るが、これらに限定されない。無機塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩若しくはアミン塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩若しくはカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、又は亜鉛塩、アルミニウム塩若しくはジルコニウム塩などの二価若しくは四価カチオン塩を含み得る。有機塩は、ジシクロヘキシルアミン塩、メチル-d-グルカミン塩、又はアルギニン塩、リシン塩、ヒスチジン塩若しくはグルタミン塩などのアミノ酸塩を含み得る。
【0036】
医薬組成物の投与方式は、経口、非経口、吸入スプレーによる、又は移植リザーバーによる投与を含み得る。非経口方式は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内又は病巣内の注射又は灌流法を含み得る。
【0037】
経口剤形は、錠剤、カプセル剤、乳剤、水性懸濁剤、分散剤又は液剤を含み得るが、これらに限定されない。
【実施例0038】
実施例1:PPCの調製
カラムシ(Boehmeria nivea L. Gaud)医薬原料からの繋がる根茎を洗浄して自然環境下で乾燥させた。乾燥した医薬原料を厚さ約5mmの薄切りにして、4℃で保存した。保存されたカラムシ医薬原料をすり棒で粉砕し、20メッシュの篩を通した。得られた粉末を95%エタノール(1:10、w/w)に分散させ、2時間(2回)熱還流した後、室温まで冷却した。加熱及び室温への冷却によって得られた抽出溶液を遠心分離バッグに入れ、遠心分離により濾過した。次に、濾液を40℃未満の温度で真空エバポレーターにより濃縮し、次いで凍結乾燥機により凍結乾燥して、プロアントシアニジン含有混合物を得た。
【0039】
プロアントシアニジン含有混合物を水/エタノール溶液に溶解し、40℃未満の温度で真空エバポレーターによりエタノールを除去して、ヘキサン(1:10、v/v)を添加して30分間振盪(数回の抽出を行った)することにより抽出物中の脂質を除去した。得られた水相を酢酸エチル(水層:酢酸エチル=1:1、v/v)に加え、30分間振盪した(この工程で複数回の抽出を行った)。得られた水相に1-ブタノール(1:1、v/v)を加え、30分間振盪した(この工程で複数回の抽出を行った)。水相溶液を40℃未満の温度で真空エバポレーターにより濃縮し、次に凍結乾燥機により凍結乾燥して、精製プロアントシアニジン含有カラムシ抽出物を得る。
【0040】
部分精製されたプロアントシアニジン含有カラムシ抽出物をゲル浸透クロマトグラフィー(セファデックスLH-20、長さ45cm、直径4cm)によって分離し、様々な極性比を有する溶媒を使用して溶出して不純物を除去した。部分精製されたカラムシ 2.5gを95%エタノール 0.5mlに溶解して、ゲル浸透クロマトグラフィーカラムに適用し、一連の溶媒で溶出した。様々な溶媒で溶出された溶出液を収集した。溶媒は、95%エタノール 300ml、95%エタノール/メタノール(1/1、v/v)300ml、メタノール 300ml、50%水性メタノール 300ml、50%水性アセトン 300ml、及びアセトン 300mlとした。95%エタノール 300mlで溶出された溶出液を除いて、他の全ての溶出液を、40℃未満の温度で真空エバポレーターにより濃縮し、凍結乾燥機により凍結乾燥した。凍結乾燥した材料を、後で使用するために-20℃で保存した。部分精製及び/又は精製されたプロアントシアニジンを含む凍結乾燥されたカラムシ抽出物の物理化学的特性を分析した。凍結乾燥した溶出液は、部分精製及び/又は精製されたプロアントシアニジン成分を有する。
【0041】
実施例2:プロアントシアニジンポリマーのモノマー単位の構造決定
プロアントシアニジンのモノマー単位構造を、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(PGC/MS)によって検出した。検出方法において、固体精製プロアントシアニジン(実施例1の精製試料)を直接熱分解ガスクロマトグラフィーに入れ、徐々に加温したか、又はセグメント化温度(50℃~500℃)若しくは単一温度操作方式で瞬時に加温した。熱分解された試料を、熱分解ガスクロマトグラフィーの特定の金属カラムを通して分離した。プロアントシアニジンポリマーのモノマー単位構造は、質量分析の検出器から出されたスペクトルによって決定された。プロアントシアニジンポリマーの決定されたモノマー単位構造の式は、次のように表される:
【化3】
【0042】
[式中、RがOCHである場合、RはOHであり、そしてRはHであるか、又はRがOHである場合、RはHであり、そしてRはHであるか、又はRがOHである場合、RはOHであり、そしてRはOHである]。熱分解ガスクロマトグラフィーで測定した質量スペクトルは配糖体シグナルを含有するピークを示したため、Rは、3-(α)-OH、3-(β)-OH、3-(α)-O-糖又は3-(β)-O-糖であると推定された。
【0043】
実施例3:プロアントシアニジンポリマーの分子量決定
工程1:SEC-MALSによる平均分子量の決定
実施例1で得られた試料から3つの群、即ち、試料1、試料2又は試料3を選択した。各試料を3等分した後、プロアントシアニジンポリマーの質量分布を、マルチアングルレーザー散乱分光計(SEC-MALS)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーによって評価及び入手して、平均分子量を算出した。本発明で採用したSEC-MALS法において、移動相としてエタノール+蒸留水の溶液を使用することができる;試料の注入量は100μL、流量は0.5mL/分であり、実験温度は25℃とした。プロアントシアニジンの平均分子量Mwは、SEC-MALS法を使用して直接得られた。試料1の結果を図1及び2に示したが、試料の測定された平均分子量は16.484kDaであった。
【0044】
各試料について3群の並行実験を実施し、プロアントシアニジンの平均分子量をSEC-MALS法によって得た。3つの並行実験の再現性は非常に良好であった。試料1の3つの結果を図3に示した。
【0045】
工程2:多分散分析
工程1の各試料について3群の並行実験を実施し、非対称流れ流動場分離(AF4)の分析によって多分散性を算出したが、ここで表1のデータは、具体的には試料1A、1B及び1Cを含む試料1から得られた。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から、試料1の重量平均分子量(Mw)は16.662kDaであり、数平均分子量(Mn)は16.598kDaであり、3つの試料の多分散指数は1.004であり、そして濃度は非常に高い、即ち、試料が非常に均一であることが容易に分かる。
【0048】
工程3:プロアントシアニジンの重合度のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析
工程1の各試料について3群の並行実験を実施し、対応するスペクトルをAF4を使用して得た。試料1の3つの結果を図4に示したが、3つの結果のピークは、それぞれ15.840kDa、16.079kDa、及び16.763kDaであった。
【0049】
試料1、2及び3のデータをそれぞれ分析した。試料1の平均分子量は、それぞれ16.484kDa、16.703kDa及び16.799kDaであった;試料2の平均分子量は、それぞれ15.580kDa、15.623kDa及び15.383kDaであった。試料3の測定された平均分子量は、それぞれ16.325kDa、16.132kDa及び16.277kDaであった。詳細を表2-1から2-3に示した。
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
表2-1~表2-3から、以下のことが分かる:試料1の重合度は55~65の範囲であり、モル質量分布は16.5kDa~19.5kDaであり;試料2の重合度は50~60の範囲であり、モル質量分布は15.0kDa~18.0kDaであり;試料3の重合度は50~65の範囲であり、モル質量分布は15.0kDa~19.5kDaの範囲である。即ち、本発明の抽出及び精製によって得られるPPCの重合度は、50~65、好ましくは55~60の範囲である。
【0054】
実施例4:比屈折率の増分検出
示差屈折計(RI: Optilab T-rEX)を備えたGPC装置を使用して、エタノール:蒸留水=1:1(体積)に溶解して、試料を示差屈折計のフローセルに注入して、屈折率を検出した。濃度範囲は0.2~3.5mg/mlであり、試料流量は0.3ml/分であり、実験温度は25℃であり、屈折率の変化率を希薄溶液濃度の変化率に応じて微分して測定した。並行実験の2群の結果を図5A及び5Bに示した。比屈折率増分(dn/dc)は、それぞれ0.2021±0.0019mL/g及び0.1999±0.0015mL/gであったことが分かる。異なる試料で溶媒の相対屈折率(dn/dc)は類似しており、試験した試料の特性が類似していることを示している。
【0055】
実施例5:ROS産生の阻害の実験
方法1:
実施例1の試料3から、細胞株をMnClで刺激して活性酸素種(ROS)の細胞内産生を誘導して、様々な濃度で様々な分子量の分離された試料を加えて、以下の表3に示されるROS産生の阻害に関するデータを得た(酸化ストレス阻害が明らかになった)。
【0056】
【表5】
【0057】
表3の阻害率は、酸化ストレスの阻害を表す。データによると、PPCはROSの産生を阻害する良好な能力を有することが分かる。具体的には、低濃度でも一定の阻害効果を有しており、より高濃度、即ち、25μg/mlでは阻害率はほぼ99%に達した。
【0058】
方法2:
細胞培養:ヒトヘパトーマ細胞(Huh7)をMEMで培養した。培地には、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物及び1%非必須アミノ酸、1% GlutaMAX-I、1mMピルビン酸ナトリウム及び10%ウシ胎仔血清を補足した。細胞を37℃、5%COインキュベーターで培養した。
【0059】
10mMの一般的な酸化ストレスインジケーターCM-HDCFDAを細胞に添加し、37℃で15分間インキュベートし、そして蛍光プローブとの共インキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄した。細胞をHで誘導してROSを産生させ、ROSに対するそれらの阻害活性について試料を試験した。本発明のPPCは、本明細書以下でBEL-Xと呼ばれる。
【0060】
実験群の設定:
(1)ブランク対照:無処理細胞;
(2)H処理:0.5mM又は1mM H培地を添加して、細胞を誘導してROSを産生させた;
(3)BEL-X及びH処理:5μg/ml又は10μg/ml BEL-Xをそれぞれ0.5mM又は1mM Hを含む培地に添加した。
【0061】
上記の群の細胞を2時間培養し、蛍光強度を分光光度計で測定して、細胞におけるH誘導性ROS産生に対するBEL-Xの阻害効果を算出した。得られたデータを表4に示した。
【0062】
【表6】
【0063】
表4の阻害率は、試験試料中の細胞におけるH誘導性ROS産生の阻害効果を特徴とした。データにより、精製されたPPCはROSの産生を阻害する良好な能力を有することが分かる。
【0064】
方法3:
細胞培養:ヒトヘパトーマ細胞(Huh7)をMEMで培養し、ヒト大腸癌細胞(HRT-18)をDMEMで培養した。上記の培地には、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物及び1%非必須アミノ酸、1% GlutaMAX-I、1mMピルビン酸ナトリウム及び10%ウシ胎仔血清を補足した。細胞を37℃、5%COインキュベーターで培養した。
【0065】
細胞をMnClで誘導してROSを産生させ、ROSに対する試料の阻害活性を試験した。
【0066】
実験群の設定:
(1)ブランク対照:無処理細胞;
(2)DMSO処理:DMSOを溶液に添加したが、DMSO濃度は1.4mg/mlとした;
(3)BEL-X処理:本発明の試料BEL-Xを溶媒に溶解して、最終濃度を25μg/mlとした;
(4)MnCl誘導:200μM MnClを添加した;
(5)BEL-X及びMnClの併用処理:200μM MnCl及び25μg/ml BEL-X試料を添加した;上記の5群の細胞はそれぞれ37℃、5% COインキュベーターで4時間培養した;
(6)BEL-X前処理+MnCl:25μg/ml BEL-X試料を添加後、細胞を4時間培養し、次に200μM MnClを添加し、次いで2時間培養した。
【0067】
ROS産生の検出:10mM CM-HDCFDAを上記細胞に添加して、37℃で45分間インキュベートした。蛍光プローブとのインキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄して、蛍光強度を分光光度計で測定して、図6~7に示されるROSデータを得た。
【0068】
図6~7から、PPCが、MnClによって誘導されたROSの産生を阻害できることが分かる。
【0069】
実施例6:様々な重合度での活性酸化物の阻害に関する比較実験
細胞培養:ヒト大腸癌細胞(HRT-18)をMEMで培養した。培地には、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物及び1%非必須アミノ酸、1% GlutaMAX-I、1mMピルビン酸ナトリウム及び10%ウシ胎仔血清を補足した。細胞を37℃、5%COインキュベーターで培養した。
【0070】
細胞をMnClで誘導してROSを産生させ、ROSに対する試料の阻害活性を試験した。
【0071】
実験群の設定:
(1)ブランク対照:無処理細胞;
(2)DMSO処理:溶液中のDMSO濃度が1.4mg/mlになるまでDMSOを添加した;
(3)MnCl処理:200μM MnClを添加して、細胞を誘導してROSを産生させた;
(4)BEL-X処理:本発明の試料BEL-Xを溶媒に溶解して、最終濃度を25μg/mlとした;
(5)BEL-X及びMnClの併用処理:200μM MnCl及びBEL-X(25μg/ml)を試料に添加した;
(6)BEL-X分子量>3K処理:試料BEL-X(分子量3kDa超)を溶媒に溶解し、次に希釈して細胞培養培地に添加し、最終濃度を25μg/mlとした;
(7)BEL-X分子量>3K及びMnClの併用処理:200μM MnCl及び25μg/ml BEL-X(分子量>3kDa)を細胞培養培地に同時に添加した;
(8)BEL-X分子量<3K処理:試料BEL-X(分子量3kDa未満)を溶媒に溶解し、次に希釈して細胞培養培地に添加し、最終濃度を25μg/mlとした;
(9)BEL-X分子量<3K及びMnClの併用処理:200μM MnCl及びBEL-X(分子量3kDa未満)25μg/mlの濃度を同時に細胞培養培地に添加した。
【0072】
ROS産生の検出:10mM CM-HDCFDAを上記細胞に添加して、37℃で45分間インキュベートした。蛍光プローブとのインキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄して、蛍光強度を分光光度計で測定して、図8に示されるROSデータを得た。
【0073】
図8から、PPCは、MnClによって誘導されたROSを効果的に阻害できるが、一方オリゴマープロアントシアニジンは、ROS生成を阻害する能力を持たないことが分かる。
【0074】
実施例7:癌誘導性サルコペニアを改善するPPCの実験
方法1:
細胞培養:マウス筋芽細胞(C2C12)を、10% FBSを含有するDMEM培地で37℃及びCOインキュベーターで24~72時間培養した。
【0075】
ウマ血清誘導:上記細胞を、2%ウマ血清を含有するDMEM培地で72時間共培養して、筋管分化を誘導した。
【0076】
実験群の設定:
(1)ブランク対照:細胞を、誘導後24時間DMEM培地で培養した;
(2)BEL-X処理:本発明の試料BEL-Xを溶媒に溶解して、次に細胞培養培地に添加し、BEL-Xの最終濃度を50μg/mlとし、次に細胞を24時間培養した;
(3)LLC処理:肺癌条件培地(LLC)を、LLC濃度が25%になるよう培地に添加して、細胞を24時間培養した;
(4)LLC+BEL-X併用処理:本発明の試料BEL-Xを溶媒に溶解し、次に25% LLCを含有する細胞培養培地に添加し、BEL-Xの最終濃度を50μg/mlとし、次に24時間培養した。
【0077】
ミオシン重鎖(MyHC)の検出:上記の4群の細胞を収集し、C2C12細胞を増殖させて筋管を形成させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で濯いだ後、細胞を、-20℃で5分間予冷した100%メタノールに固定した。次に、細胞を自然乾燥させ、4℃で保存した。固定細胞を、0.5%トゥイーン20を含有するPBSに再溶解して、氷上に10分間置き、細胞膜に穴を開け、次に0.1%トゥイーン20及び0.2% BSAを含有するPBSで1時間処理した後、室温で1時間、MHC一次抗体(Millipore)と混合した。次に、細胞をPBSで2回洗浄し、マウス抗MHC二次抗体(Invitrogen)と1時間反応させ、核をDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)染色剤で染色した。免疫染色された筋管を蛍光顕微鏡で観察し、Image J ソフトウェア(NIH, Bethesda, MD, USA)を使用して画像を取り込んだ。各実験群について少なくとも筋管100個の面積を測定し、各筋管の平均面積を3回の測定の平均として算出した。得られた実験結果を図9に示されるとおりプロットする。
【0078】
図9から、肺癌条件培地(LLC)がC2C12筋管細胞の萎縮を誘導し得ることが分かる。したがって、C2C12筋管細胞をLLCで共培養すると、ミオシン重鎖の発現が大幅に減少したが、一方BEL-Xを添加するとミオシン重鎖の発現が回復したため、本発明のBEL-Xは、C2C12筋管細胞の萎縮を効果的に阻害し、更にサルコペニアの治療及び予防に寄与することを証明している。
【0079】
方法2:
細胞培養及び実験群の設定は、上記の方法1と同じとした。
【0080】
LLC誘導:細胞を肺癌条件培地(LLC)に移して、アトロギン-1(Atrogin-1)及びMuRF-1遺伝子発現、即ち、筋萎縮の現象を誘導した。
【0081】
C2C12筋管細胞における遺伝子発現のRT-PCR検出:Qiagen RNeasyキットを使用してRNAを抽出し、Biora iScriptキットを使用して一本鎖cDNAを合成した。Riorad iQ SYBRグリーンスーパーミックスを使用してRT-PCRを実行した。増幅条件は、(1)95℃で30分、(2)95℃で15秒、及び60℃で45秒、40サイクルとした。標的mRNAの量は、アクチン遺伝子に対して正規化された。得られた実験結果を図10A及び10Bに示されるとおりプロットした。
【0082】
図10A及び10Bから、LLCがC2C12筋管細胞においてアトロギン-1及びMuRF-1遺伝子の発現を誘導し、それにより細胞萎縮を引き起こし得ることが分かる。したがって、C2C12筋管細胞をLLCで共培養すると、遺伝子発現が有意に増加したが、一方BEL-Xを添加すると遺伝子発現が回復した、即ち、本発明のBEL-Xは、C2C12筋管細胞においてアトロギン-1及びMuRF-1遺伝子の発現を効果的に防止することができ、そしてこのことは、サルコペニアの治療及び予防に更に役立つ。
【0083】
方法3:
細胞培養、ウマ血清によって誘導されたC2C12細胞における筋管形成、及び実験群の設定は、方法1と同じとした。
【0084】
インターロイキン-6(IL-6)のELISA検出:マウスIL-6 Quantikine ELISAキット(R&D systems)を使用して、その検出工程に従いインターロイキン-6の含有量を検出した。得られた実験結果を図11に示されるとおりプロットした。
【0085】
図11から、LLCをC2C12筋管細胞に添加すると、大量のIL-6を産生したことが分かる、即ち、LLCは、C2C12筋管細胞の炎症反応を誘導することができ、更に、BEL-Xを添加した後、IL-6の発現は有意に減少した、即ち、本発明のBEL-Xは抗炎症効果を有する。
【0086】
実施例8:PPCは酸化ストレスによって引き起こされるサルコペニアを改善する
方法1:
細胞培養及びウマ血清によって誘導されたC2C12細胞における筋管形成は、実施例
7の方法1と同じとした。
【0087】
実験群の設定:
(1)ブランク対照:細胞を、誘導後24時間培地中で培養した。
(2)BEL-X処理:本発明の試料BEL-Xを溶媒に溶解し、次にBEL-Xの濃度が50μg/mlになるよう細胞培養培地に添加して、細胞と共に24時間培養した;
(3)H処理:Hの濃度が100μMになるようにHを培地に添加して、細胞と共に24時間培養した;
(4)H+BEL-Xの併用処理:本発明の試料BEL-Xを溶媒に溶解し、次にBEL-Xの濃度が50μg/mlになるようにHを含有する細胞培養培地に添加し、次に24時間培養した。
【0088】
ミオシン重鎖を検出するための方法は、実施例7の方法1に記載された方法と一致し、得られた結果を図12に示されるとおりプロットした。
【0089】
図12から、最初に、本発明のBEL-Xは筋管の形成を増強し得るが、一方HはC2C12細胞における筋管の形成を減少させ得ることが分かる。したがって、C2C12筋管細胞の培地にHを添加すると、ミオシン重鎖の発現は有意に減少した。ミオシン重鎖の発現は、BEL-Xを添加すると回復した、即ち、本発明のBEL-Xは、筋管の形成を増強し、また、Hが筋管を損傷するのを効果的に防止することができ、そしてこのことは、サルコペニアの治療及び予防に更に役立つ。
【0090】
方法2:
細胞培養及びC2C12筋管細胞における遺伝子発現のRT-PCR検出の方法は、実施例7の方法2と同じとした。
【0091】
ROS誘導:Hを含有する培地に細胞を移して、アトロギン-1又はMuRF-1遺伝子発現、即ち、筋損傷の現象を誘導した。
【0092】
実験群の設定は、実施例8の方法1と同じとした。
【0093】
得られたプロットを図13A及び13Bに示した。図13A及び13Bから、HがC2C12筋管細胞においてアトロギン-1及びMuRF-1遺伝子の発現を誘導し、それにより筋管損傷を引き起こし得ることが分かる。したがって、C2C12筋管細胞をHで共培養すると、遺伝子発現が有意に増加したが、一方BEL-Xの添加後は遺伝子発現レベルが回復したか又は対照群のレベルよりも低くすらなった。即ち、本発明のBEL-Xは、C2C12筋管細胞においてアトロギン-1及びMuRF-1遺伝子の発現を効果的に防止することができ、そしてこのことは、サルコペニアの治療及び予防に更に役立つ。
【0094】
方法3:
細胞培養及びインターロイキン-6の検出の方法は、実施例7の方法3と同じとした。
【0095】
ROS誘導及び実験群の設定は、実施例8の方法2と同じとした。
【0096】
得られたプロットを図14に示した。図14から、HはC2C12筋管細胞において大量のIL-6を誘導し得ることが分かるが、IL-6は、細胞の炎症反応を誘導することができ、BEL-Xを添加した後、IL-6の発現は有意に減少した、即ち、本発明のBEL-Xは、H誘導性IL-6産生を減少させることができ、そして抗炎症効果を有する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
【外国語明細書】