(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159130
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】粉末組成物及び用時混合化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20221006BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221006BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221006BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221006BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221006BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/86
A61K9/14
A61K47/24
A61K47/38
A61K47/04
A61K47/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053864
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2021062197
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】和田 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 郁
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076DD38
4C076DD63
4C076DD67
4C076EE31
4C083AA112
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB431
4C083AB432
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC642
4C083AD092
4C083AD201
4C083AD242
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD282
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083BB04
4C083BB23
4C083DD06
4C083DD17
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】 水に分散した際にベシクルを形成する粉末組成物において、保存安定性、水への分散性に優れる粉末組成物の開発、及び粉末組成物と水とを用時混合した場合に、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れる用時混合化粧料の開発
【解決手段】 次の成分(A)および成分(B)を含有する粉末組成物であり、水に分散した際にベシクルを形成する粉末組成物。
(A)リン脂質、及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤
(B)セルロースナノファイバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)および成分(B)を含有する粉末組成物であり、水に分散した際にベシクルを形成する粉末組成物。
(A)リン脂質、及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤
(B)セルロースナノファイバー
【請求項2】
前記成分(A)に対する前記成分(B)の含有質量割合が(B)/(A)=0.01~1.5である請求項1に記載の粉末組成物。
【請求項3】
さらに、成分(C)無機粉体を含有する請求項1または2に記載の粉末組成物。
【請求項4】
前記成分(C)がシリカ、マイカ、及び合成金雲母よりなる群から選択される1種または2種以上の無機粉体である請求項3に記載の粉末組成物。
【請求項5】
さらに、成分(D)糖及び糖アルコールよりなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【請求項6】
前記粉末組成物が実質的に水を含有しないことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の粉末組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の粉末組成物と、水とを使用時に混合する用時混合化粧料。
【請求項8】
前記請求項1~6の何れか1項に記載の粉末組成物と水とを混合して、肌に適用する使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末組成物及び用時混合化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、界面活性剤2分子膜により形成される閉鎖小胞体であるベシクルは、薬剤を内包されることにより貯留性や浸透性を示すことからドラッグデリバリーシステムへの応用が期待され、医薬品や化粧品分野に広く使用されている。化粧品分野においては、角層への薬剤の貯留性等を目的として、主にベシクルを水性媒体中に分散した形態で応用されている。しかし、水性媒体中に分散されたベシクルは、凝集や融合を起こしやすいことから保存安定性の確保が難しいことが課題である。そのため、保存安定性確保を目指したベシクル製剤技術が数多く開発されてきた。
【0003】
上記の技術として、例えば水性媒体中で安定したリポソームを得るために、リポソームの保存液中にアミノ酸を添加し膜構造を強化し、保存安定性を向上させる技術(特許文献1参照)や、リン脂質100モルあたりコレステロール0.1~20モル、および単糖または構成単糖数2~5のオリゴ糖に、単糖1モル当たり、炭素数2~7の二塩基酸1~2モルおよび炭素数6~24の脂肪酸1~2モルがエステル結合した二塩基酸結合型糖脂質0.1~20モル、から構成される脂質から得られるリポソームにより保存安定性を向上させる技術(特許文献2参照)が報告されている。また、保存安定性をさらに向上させるために、リポソームの膜構成成分がホスファチジルコリン含量90重量%以上、ヨウ素価0.1以下である水素添加大豆リン脂質を含有し、リポソームの平均粒径が100~500nmであることを特徴とする化粧料用リポソームを乾燥させ粉末化することで無色、無臭で分散性や使用感の良い化粧料用粉末リポソームおよびリポソームを用いた化粧料が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-273539号公報
【特許文献2】特開平04-082824号公報
【特許文献3】特開2006-124378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば特許文献1の技術の場合、使用感として肌へ使用した際のべたつきを感じやすく、特許文献2の技術の場合、経時で凝集や沈殿が生じやすく、保存安定性に懸念が出やすいことが課題であった。一方で、ベシクルを乾燥し粉末化した特許文献3の技術の場合、保存安定性や溶解性の向上のためにステロール類やアミノ酸を併用すると肌に塗布するとべたつきが出てしまい使用感が損なわれることが課題であった。従って、ベシクルの保存安定性に優れ、使用時の水への分散性が高く、肌に塗布した際のべたつきのない使用性の良いベシクル製剤の開発が待ち望まれている。
【0006】
そこで本発明の課題は、水に分散した際にベシクルを形成する粉末組成物において、保存安定性、水への分散性に優れる粉末組成物の開発、及び粉末組成物と水とを用時混合した場合に、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れる用時混合化粧料の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記実情に鑑み、本発明者らは、ベシクル組成物とコレステロールなど様々な賦形剤を組み合わせ検討したが、保存安定性と使用性が両立した十分な効果を引き出せなかった。そこで、微粒子などを安定化するものとして利用されているセルロースナノファイバーが有用ではないかと考え、ベシクル組成物の保存安定性を向上させるためにセルロースナノファイバーの利用を検討した。その結果、粉末組成物の保存安定性に優れ、さらに、水への分散性、水に分散させた分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)および成分(B)を含有する粉末組成物であり、水に分散した際にベシクルを形成する粉末組成物に関するものである。
(A)リン脂質、及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤
(B)セルロースナノファイバー
【0009】
前記成分(A)に対する前記成分(B)の含有質量割合が(B)/(A)=0.01~1.5である前記記載の粉末組成物に関するものである。
【0010】
さらに、成分(C)無機粉体を含有する前記記載の粉末組成物に関するものである。
【0011】
前記成分(C)がシリカ、マイカ、及び合成金雲母よりなる群から選択される1種または2種以上の無機粉体である前記記載の粉末組成物に関するものである。
【0012】
さらに、成分(D)糖及び糖アルコールよりなる群から選択される1種または2種以上を含有する前記記載の粉末組成物に関するものである。
【0013】
前記粉末組成物が実質的に水を含有しないことを特徴とする前記記載の粉末組成物に関するものである。
【0014】
前記粉末組成物と、水とを使用時に混合する用時混合化粧料に関するものである。
【0015】
前記記載の粉末組成物と水とを混合して、肌に適用する使用方法に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、保存安定性、水への分散性に優れる粉末組成物を提供することができ、粉末組成物と水とを用時混合した場合に、水に分散させた分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れる用時混合化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の詳細について以下に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。また、本発明における「平均粒子径」とは、画像解析装置(ルーゼックスAP、ニレコ社製)による測定により求めたメジアン径D50値である。なお、非対称形状の場合、本発明においては最も大きい粒子径の分布から求めたメジアン径D50を平均粒子径とする。
【0018】
本発明における粉末組成物は、その外観が粉末形態のものを意味する。ここで、粉末形態とは、粒子状、成形した固形粉末状等、いずれの形態でも良い。本発明の粉末組成物は、医薬品、化粧料、皮膚外用剤、食品組成物に利用することができる。本発明の粉末組成物は、水に分散した場合にベシクルとしての効果を奏するものである。そのため、前記の分野に利用した場合、有効成分の浸透性を高めたり、保湿、美白等の効果を継続的に付与する等の効果が期待される。
【0019】
本発明における成分(A)はリン脂質、及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤である。本発明の粉末組成物は、水に分散した際にベシクルを形成するものであり、成分(A)は、水に分散した際にベシクルを形成するために用いられる。ここでベシクルとは、水中で界面活性剤二分子膜が形成する球状の閉鎖小胞体を意味する。本発明に用いられる成分(A)リン脂質、及び非イオン性界面活性剤よりなる群から選択される1種または2種以上の界面活性剤は、特に限定されず、水へ分散した際に透過型電子顕微鏡によりベシクル像が観察されるものであれば、いずれのものも使用できる。ベシクルを形成する物質としては、次のことが知られている。一定の長さの疎水鎖をもち、その断面積と極性部分の断面積が近い構造を持ったシリンダー型分子は、ベシクルを形成することが知られている(堀内照夫ら著、日本油化学会誌、第49巻、第10号、1107-1122、2000年)。透過型電子顕微鏡における観察方法は、例えば、ネガティブ染色法、凍結割断レプリカ法(フリーズフラクチャー法)、クライオTEM法等が挙げられる。これらの中でも、凍結割断レプリカ法(フリーズフラクチャー法)が好ましい。本発明におけるベシクル像の観察は、透過型電子顕微鏡(HT7700 日立製作所社製)を用いて、凍結割断レプリカ法(フリーズフラクチャー法)で行うことができる。
【0020】
リン脂質を用いたベシクルはリポソームと呼ばれる。リン脂質は、リポソーム組成物の界面活性剤二分子膜を形成させる主成分である。本発明におけるリン脂質としては、天然系リン脂質でも、改質系リン脂質でも良い。例えば、天然リン脂質の由来は、特に限定されないが、大豆、卵黄、ヒマワリ種、菜種等が挙げられる。より具体的には、未水添卵黄レシチン、未水添大豆レシチン、水素添加卵黄レシチン、水素添加大豆レシチン等が挙げられる。また、改質系リン脂質は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリンや合成レシチン、PEG修飾レシチン等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、これらのリン脂質の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも大豆由来が好ましく、未水添大豆レシチン、水素添加大豆リン脂質よりなる群から選択される1種または2種以上を用いることがより好ましい。
【0021】
成分(A)のリン脂質の市販品としては、レシノールS-10E(日光ケミカルズ株式会社製)、レシノールS-10EZ(日光ケミカルズ株式会社製)、HSL-70(株式会社ワイエムシィ製)、ベイシスLS-60HR(日清オイリオグループ株式会社製)、卵黄レシチンPL-100P(キユーピー株式会社製)、ミルクセラミド1G(山川貿易株式会社製)、ミルクセラミド4G(山川貿易株式会社製)、PHOSPHOLIPON 90H(Lipoid社製)、PHOSPHOLIPON 90G(Lipoid社製)、LIPOID P 75(Lipoid社製)、LIPOID P 100(Lipoid社製)等が挙げられる。
【0022】
非イオン界面活性剤を用いたベシクルはニオソームとも呼ばれる。本発明における非イオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。より具体的には、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンステロールエーテル、及びソルビタンモノオレートよりなる群から選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0023】
成分(A)の非イオン性界面活性剤の市販品としては、NIKKOL BPS-5(日光ケミカルズ社製)Tween61(SIGMA社製)、Span80(WAKO社製)等が挙げられる。
【0024】
本発明において成分(A)の含有量は、特に限定されないが、粉末組成物全量に対し、10質量%(以下、「%」と略す)以上が好ましく、15%以上がより好ましく、20%以上がさらにより好ましい。また、60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下がさらにより好ましい。また、10~60%が好ましく、15~55%がより好ましく、20~50%がさらにより好ましい。この範囲であれば、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさにより優れるため、より好ましい。
【0025】
本発明における成分(B)セルロースナノファイバーは、繊維状のセルロースまたはその誘導体を2~500nmに微細化したものである。本発明において成分(B)は、平均繊維径が2~500nmであれば特に限定されず、平均繊維径は2~500nmが好ましく、2~100nmがより好ましく、2~50nmがさらにより好ましい。尚、平均繊維径は、電子顕微鏡画像を用い、水に分散させたセルロースまたはその誘導体の20本の繊維径及び繊維長を測定し、得られた測定値の算術平均値として求められる。
【0026】
成分(B)を微細化する方法は特に限定されないが、高圧ホモジナイザーやボールミルを使用する機械的解砕による方法や、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(TEMPO)等のN-オキシル化合物を用いてセルロースを酸化して微細化する化学的解砕による方法、セルラーゼ等の酵素を使用する生物的解砕による方法等が挙げられる。中でも、酸化反応の際にセルロースの水酸基が酸化されて生成したカルボキシル基が耐衝撃性の向上に寄与することから、化学的解砕による方法が好ましい。天然セルロースの由来としては特に限定されず、植物、動物、微生物の産生によって生合成されるもの等が挙げられる。
【0027】
セルロース誘導体としては、TEMPO酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロース、リン酸エステル化セルロース、亜リン酸エステル化セルロース、スルホン化セルロース、硫酸エステル化セルロース等が挙げられる。
【0028】
本発明においては、皮膚や生体内への安全性の観点から、TEMPO酸化セルロース、カルボキシメチル化セルロースが好ましく、保存安定性および水への分散性の観点からTEMPO酸化セルロースがより好ましい。
【0029】
成分(B)において、TEMPO酸化セルロースの市販品としては、レオリスタC-2SP(第一工業製薬社製)、セレンピアTC-01A(王子製紙社製)、カルボキシメチル化セルロースの市販品としては、セレンピアCS-01(王子製紙社製)、リン酸エステル化セルロースの市販品としては、AUROVISCO(王子ホールディングス社製)、亜リン酸エステル化セルロースの市販品としてはELEEX-☆(大王製紙)、未変性セルロースとしては、ELLEX-S(大王製紙)等が挙げられる。
【0030】
本発明において成分(B)の含有量は、特に限定されないが、粉末組成物全量に対し、0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、3%以上がさらにより好ましい。また、80%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、20%以下がさらにより好ましい。また、0.5~80%が好ましく、1~50%がより好ましく、3~20%がさらにより好ましい。この範囲であれば、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさにより優れるため、より好ましい。
【0031】
本発明においては、前記成分(A)及び前記成分(B)を適宜含有することで効果が得られるものではあるものの、前記成分(A)と前記成分(B)の含有する質量割合を特定することにより、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさにより優れるため、より好ましい。このような成分(A)に対する成分(B)の含有質量割合(B)/(A)は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.1以上がさらにより好ましい。また、1.5以下が好ましく、1以下がより好ましく、0.5以下がさらにより好ましい。また、0.01~1.5が好ましく、0.05~1がより好ましく、0.1~0.5がさらにより好ましい。
【0032】
本発明は、さらに、成分(C)無機粉体を含有することができる。成分(C)無機粉体は、無機物質の粒子であり、その形状や粒子径、粒子構造は特に限定されず、いずれのものも使用できる。例えば、形状としては、球状、板状、針状等、粒子径としては、煙霧状、微粒子、顔料級等、粒子構造としては、多孔質、無孔質等が挙げられる。本発明は、前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する粉末組成物であれば良いが、成分(C)を含有することで、前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する粉末組成物の凝集を防ぐ観点から好ましい。
【0033】
本発明の成分(C)の粒子径は特に限定されないが、1~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、8~20μmがさらにより好ましい。この範囲であれば、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさにより優れるため、より好ましい。本発明において成分(C)の平均粒子径は、画像解析装置(ルーゼックスAP、ニレコ社製)による測定により求めたメジアン径D50値である。なお、非対称形状の場合、本発明においては最も大きい粒子径の分布から求めたメジアン径D50を平均粒子径とする。
【0034】
本発明における成分(C)に用いられる無機粉体は、特に限定されないが、例えば、コンジョウ酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、チタン・酸化チタン焼結物、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料、タルク、マイカ、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成金雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、シリカ等の白色体質粉体、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン等の光輝性粉体、アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン等の複合粉体等が挙げられ、これらに限定されるものではないが、これらの無機粉体の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさの観点から、白色体質粉体よりなる群から選択される1種または2種以上が好ましく、特に、シリカ、マイカ、及び合成金雲母から選択される1種または2種以上がより好ましい。
【0035】
成分(C)のシリカの市場品としては、AEROSIL 200、300(日本アエロジル社製)、CHIFFONSIL P-3R、HCS 100M5、SILICA MICRO BEAD BA-1、シリカマイクロビード N-1505、P-1505(日揮触媒化成社製)、コスメシリカCQ4(富士シリシア化学社製)、ゴットボールE-90C(鈴木油脂工業社製)サンスフェア NP-NP-30、NP-100(AGCエスアイテック社製)等が挙げられる。マイカの市場品としては、JS-1(三信鉱工業社製)、MICA POWDER Y-2300、Y-3000、雲母粉 Y-2300WA1(ヤマグチマイカ社製)、エイトパールFK-1000-S(角八魚鱗箔社製)、SE-MA-23(三好化成社製)等が挙げられる。合成金雲母の市場品としてはPDM‐5L、10L、20L、40L、SA-PDM-10L、SLM-15、TLF-64、HERIOS R10R、100S(トピー工業社製)、NK-20G、TWINCLEPEARL 400、511(日本光研工業社製)等が挙げられる。
【0036】
本発明において成分(C)の含有量は、特に限定されないが、粉末組成物全量に対し、15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらにより好ましい。また、65%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、55%以下がさらにより好ましい。また、15~65%が好ましく、20~60%がより好ましく、25~55%がさらにより好ましい。この範囲であれば、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさにより優れるため、より好ましい。
【0037】
本発明は、さらに、成分(D)糖及び糖アルコールよりなる群から選択される1種または2種以上を含有することができる。本発明は、前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する粉末組成物であれば良いが、成分(D)を含有することで、前記成分(A)及び前記成分(B)を含有する粉末組成物の水への分散性の観点から好ましい。成分(D)糖または糖アルコールは、特に限定されず、いずれのものも使用できる。糖は、多価アルコールの酸化生成物であり、アルデヒド基を持つアルドースとケトン基を持つケトースに分類される。また、糖を構成する炭素数に応じて、トリオース(炭素数3)、テトロース(炭素数4)、ペントース(炭素数5)、ヘキソース(炭素数6)、ペフトース(炭素数7)等に分類される。前記アルデヒド基やケトン基等のカルボニル基と、ヒドロキシ基とがグリコシド結合することで、糖鎖が長くなっていく。例えば、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖等が挙げられる。より詳細には、例えば、単糖としては、グルコース(ブドウ糖)、乳糖、トレオース、アラビノース、キシロース、ガラクトース、リボース、グルコース、ソルボース、フルクトース、マンノース等が挙げられ、二糖としては、スクロース (ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、セロビオース、イソマルトース等が挙げられ、オリゴ糖としては、ラフィノース、パノース、マルトトリオース、メレジトース、ゲンチアノース、スタキオース、シクロデキストリン等が挙げられる。また、多糖類としては、セルロース、デンプン、ペクチン、デキストラン、デキストリン等が挙げられる。これらの中でも、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさの観点からスクロース、またはデキストリンが好ましい。
【0038】
一方、糖アルコールは、アルドースやケトースに分類される糖のカルボニル基が還元されて生成した化合物である。特に限定されないが、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、ガラクチトール、アラビトール、トレハロース、ペンタエリスリトール等が挙げられ、これらから1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及びマルチトールよりなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく、エリスリトール、ソルビトール、及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種または2種以上がより好ましく、エリスリトール、及びマンニトールよりなる群から選ばれる1種または2種以上がさらにより好ましく、特にマンニトールが最も好ましい。
【0039】
本発明において成分(D)の含有量は、特に限定されないが、粉末組成物全量に対し、1%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、5%以上がさらにより好ましい。また、30%以下が好ましく、25%以下がより好ましく、20%以下がさらにより好ましい。また、1~30%が好ましく、3~25%がより好ましく、5~20%がさらにより好ましい。この範囲であれば、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさにより優れるため、より好ましい。
【0040】
さらに、本発明の粉末組成物は、コレステロール及び/又はフィトステロール等の膜安定化剤を含んでいてもよく、あらかじめ混合されたものとして用いることも可能である。リン脂質とコレステロール及び/又はフィトステロールの混合物の市販品としてPRESOME CS2-101(日本精化株式会社製)、PRESOME C-2(日本精化株式会社製)、PHYTOPRESOME(日本精化株式会社製)、PYTOCOMPO-PP(日本精化株式会社製)、COMPOSITE-PC(日本精化株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
また、本発明の粉末組成物は、スフィンゴ脂質を含んでいても良い。スフィンゴ脂質としては、セラミド及びその誘導体等が挙げられる。本発明におけるスフィンゴ脂質としては、天然抽出物であっても、合成物であってもよい。より具体的には、スフィンゴシン、フィトスフィンゴシン及びそれらの長鎖脂肪酸アミドであるセラミドEOS(旧称セラミド1)、セラミドNS(旧称セラミド2)、セラミドNP(旧称セラミド3)、セラミドEOH(旧称セラミド4)、セラミドAG(旧称セラミド5)、セラミドAP(旧称セラミド6II)等の天然セラミド類;スフィンゴシン、フィトスフィンゴシンのリン脂質誘導体であるスフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質;それらの配糖体であるセレブロシドやガングリオシド等のスフィンゴ糖脂質及びフィトスフィンゴ糖脂質等である。
【0042】
スフィンゴ脂質の市販品としては、「セラミドTIC-001」(高砂香料工業株式会社製)、「Ceramide I」(コスモファーム社製)、「Ceramide III」(コスモファーム社製)、「Ceramide IIIA」(コスモファーム社製)、「Ceramide IIIB」(コスモファーム社製)、「Ceramide VI」(コスモファーム社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明の粉末組成物は、上記の成分(A)~(D)の他に、例えば、油性成分、成分(C)以外粉体、成分(A)以外の界面活性剤、成分(B)以外の繊維、アルコール類、成分(D)以外の保湿剤等の水性成分、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を妨げない範囲で含有することができる。
【0044】
本発明の粉末組成物としての平均粒子径は、特に限定されないが、1~100μmが好ましい。この範囲であれば、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるため、より好ましい。
【0045】
本発明の粉末組成物は、乾燥によりベシクル内の水も除去されている状態であり、保存安定性の観点から粉末組成物の水の含有量は5%以下が好ましい。水分量の測定方法としては特に限定されないが、乾燥減量法により求められる。例えばMOC63u(嶋図製作所社製)により105℃にて30分間加熱したとき、乾燥減量(%)=乾燥により減少した質量(mg)/採取量(mg)×100にて算出することができる。
【0046】
本発明の粉末組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、成分(A)を含有する水または水溶液を70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合し室温まで冷却してベシクル分散液を得る。成分(B)、必要に応じて(C)~(D)もまた、水または水溶液を添加しホモミキサーにて均一に混合する。噴霧乾燥の場合、成分(A)含有水溶液と成分(B)、必要に応じて(C)~(D)含有水溶液を予め混合してから噴霧しても、噴霧時に別々のノズルから同時に噴射してもよい。噴霧乾燥では、スプレードライヤー機を用いて水を乾燥し除去するが、100℃以上の温度で水を除去することが好ましい。凍結乾燥の場合、成分(A)含有水溶液と成分(B)、必要に応じて(C)~(D)含有水溶液を予め混合してからバイアルやモールドに所定量小分け充填し、凍結乾燥操作を行う。凍結乾燥では、凍結乾燥機を用いて水を昇華させ除去するが、凍結温度を-20℃以下に急速に凍結させること及び10Pa以下の減圧条件で水を昇華させることが好ましい。噴霧凍結乾燥では、成分(A)含有水溶液と成分(B)、必要に応じて(C)~(D)含有水溶液を予め混合してから液体窒素に向け噴霧して予備凍結を行い、その後凍結乾燥機を用いて水を昇華させ除去するが、凍結温度を-20℃以下に急速に凍結させること及び10Pa以下の減圧条件で水を昇華させることが好ましい。必要に応じて、凍結乾燥および噴霧凍結乾燥後にグラインダーやミル等を用いて粉砕し、粉末化してもよい。
【0047】
スプレードライヤーとしてはL/OCシリーズ(大川原化工機社製)、DL410(ヤマト科学社製)などが挙げられる。真空凍結乾燥機としては、RL-Bシリーズ(日精社製)、FD-20STU(日本テクノサービス社製)などが挙げられる。噴霧凍結乾燥機としてはSFD-1000型(東京理化器械社製)が挙げられる。
【0048】
粉末化の方法は特に限定されないが、例えば、成分(A)~(D)を水中で分散させて得る分散物をスプレードライ、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、凍結乾燥粉砕等により粉末化することができる。本発明においては、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥による粉末化が好ましい。
【0049】
本発明の粉末組成物の一実施形態として、例えば、凍結乾燥、噴霧凍結乾燥、凍結乾燥粉砕において、本発明の粉末組成物の状態は、水の昇華によりスポンジ状の多孔質構造をもち、その形態は球状、薄片状、ブロック状等いずれの形態もとり得る。
【0050】
また、一実施形態として、噴霧乾燥において、本発明の粉末組成物の状態は、一般的に球状の形態をとるが、薄片状、ブロック状等いずれの形態もとり得る。また、核となる物質がある場合は、噴霧乾燥によりその核の表面に粒子を形成する形態をとり得る。本発明においては、例えば、成分(C)や成分(D)が核となり得る。粉末組成物の状態は走査型電子顕微鏡(日本電子社製のJCM-6000Plusネオスコープ卓上走査電子顕微鏡)にて観察することができる。
【0051】
本発明の粉末組成物は、特に限定されず、化粧料、皮膚外用剤、食品、医薬品等に用いることができる。例えば、ファンデーション、下地、白粉、コンシーラー、アイシャドウ、頬紅、口紅、アイブロウ等のメイクアップ化粧料、ボディパウダー、制汗パウダー等のスキンケア化粧料等が挙げられる。また、皮膚外用剤としては、外用液剤、外用ゲル剤、軟膏剤、貼付剤等が挙げられる。食品、医薬品としては、経口投与されうるものであり、粉末、粒状、顆粒状、タブレット状、錠剤状、カプセル状等の種々の形態をとりうる。本発明においては、皮膚外用剤または化粧料に用いることが好ましく、化粧料に用いることがより好ましい。
【0052】
本発明の粉末組成物を化粧料に用いる場合は、そのままでも使用することができるが、より使用性を高めるために、水と併せて使用することが好ましい。特に、使用する直前に水と混合する、用時混合形態によりベシクル分散液として用いることで、ベシクル組成物を安定して皮膚に供給できるため好ましい。ここで、用時混合形態によりベシクル分散液とする際に用いられる水は、精製水、温泉水、深層水、植物の水蒸気蒸留水、あるいは水を最外層とする化粧料を用いることができる。水を最外層とする化粧料として、例えば、水性化粧料、水中油型乳化化粧料、水中油中水型乳化化粧料等が挙げられる。
【0053】
また、水に分散した状態のベシクルは、保存安定性に劣るため、前記粉末組成物である化粧料(以下、前記化粧料と略す)は、水を実質的に含有しないことが好ましい。なお、ここでいう水は精製水、温泉水、深層水、植物の水蒸気蒸留水等に含まれる水を指す。ここで実質的に含有しないとは、全く水を含有しないか、含有しても5%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.1%以下がさらにより好ましい。
【0054】
用時混合の方法は特に限定されず、前記化粧料と、水とを使用時に混合して使用することができる。ここで、用時混合に用いる水は、特に限定されず、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いることができる。また、用時混合時に、前記化粧料は水に分散すれば良く、前記水は化粧料に由来するものでも良い。ここで、水を含有する化粧料は、特に限定されずいずれのものも使用できるが、水性型、水中油型、及び油中水型よりなる群から選択される1種または2種以上が好ましい。例えば、化粧水、乳液、クリーム、水性ジェル、美容液、パック剤、日焼け止め、下地、ファンデーション等を用いることができる。ここで、前記化粧料と、水を含有する化粧料を区別するために、前記化粧料を化粧料(X)とし、水を含有する化粧料を化粧料(Y)とする。化粧料(X)及び化粧料(Y)は、特に限定されず、1種または2種以上組み合わせて用いても良い。
【0055】
用時混合化粧料としての使用方法は特に限定されず、例えば、化粧料(X)及び化粧料(Y)を一定量ずつ手のひらで混合して用いることができる。混合方法は、特に限定されず、手のひらで混合する方法、皿状容器に化粧料(X)及び化粧料(Y)を一定量乗せ混合する方法、化粧料(X)及び化粧料(Y)の一定量を容器中で振とうして混合する方法等が挙げられる。ここで一定量とは、使用時に調整する量であり、実際に使用する量に相当するため、例えば、化粧料(X)及び化粧料(Y)をそれぞれ1gずつ混合する等量を選択することができるが、等量のみに限定されるものではない。例えば、化粧料(X)及び化粧料(Y)を混合する質量割合(X)/(Y)は、特に限定されないが、皮膚および生体内へのベシクルの効果的な供給量を確保する観点から0.01以上が好ましい。さらに、水への分散性の観点から、(X)/(Y)は0.5以下が好ましく、0.4以下がより好ましく、0.3以下がさらにより好ましい。また、0.01~0.5が好ましく、0.01~0.4がより好ましく、0.01~0.3がさらにより好ましい。
【実施例0056】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0057】
実施例1~19、比較例1~4:粉末組成物
下記表1~3に示す処方の粉末組成物を調製し、イ.保存安定性、ロ.水への分散性、について下記評価方法により評価した。その結果も併せて表1~3に示す。
【0058】
(評価方法)
下記(イ)、(ロ)の項目について、各試料の効果を確認するための評価を行った。(イ)は1サンプルについて定量試験を行い、(ロ)は、各試料について化粧品評価専門評価者5名により試験を行い、下記評価基準に従い4段階評価をし、下記判定基準に従い判定した。
【0059】
<評価項目>
(イ)保存安定性の評価:3mL容量バイアルに充填し、恒温槽(温度40℃、湿度75%)内で1か月保管した2gの粉末組成物を200メッシュのふるいに通し、ふるい上に残ったものを凝集物として凝集割合を評価した。凝集割合%=(ふるい上残量g/総量2g)×100とした。
(ロ)水への分散性の評価:0.05gの粉末組成物と1gの精製水を15mlファルコンチューブに測り取り、ボルテックスミキサーを用いて振とうした際の水分散性を評価した。
【0060】
<(イ)評価基準>
(評点):(評価)
3 :凝集が全体の5%未満である状態
2 :凝集が全体の5%以上20%未満である状態
1 :凝集が全体の21%以上80%未満である状態
0 :凝集が全体の80%以上である状態
<(ロ)評価基準>
(評点):(評価)
3 :混合時間5秒未満で均一に分散する
2 :混合時間5秒以上10秒未満で均一に分散する
1 :混合時間10秒以上15秒未満で均一に分散する状態
0 :混合時間15秒以上でも分散せず不均一な状態
<判定基準>
(判定):(評価)
◎ :評点総数12以上
〇 :評点総数8以上12未満
△ :評点総数4以上8未満
× :評点総数4未満
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
※1:PHOSPHOLIPON 90H(Lipoid社製)
※2:卵黄レシチンPL-100P(キユーピー株式会社製)
※3:PHOSPHOLIPON 90G(Lipoid社製)
※4:レオクリスタC-2SP(第一工業製薬社製)
※5:セオラスPH-101(旭化成社製)
※6:メトローズ65H4000(信越化学社製)
※7:PDM-10L(トピー工業社製)
【0065】
(実施例1~19および比較例1~4の粉末組成物の製造方法)
A:No.1~8に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後室温まで冷却する。
B:No.9~18に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:Cをスプレードライヤーで噴霧乾燥して、粉末組成物を得た。
【0066】
【0067】
(実施例20~25の粉末組成物の製造方法)
A:No.1~8に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後室温まで冷却する。
B:No.9~18に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:Cを凍結乾燥機にて凍結乾燥して、粉末組成物を得た。
【0068】
実施例26~34:用時混合化粧料
以下に示す処方の水性組成物と実施例1、9、13、20、21,23、24の粉末組成物とを混合し、用時混合化粧料を作成した。用時混合化粧料に用いる粉末組成物と水性組成物の割合、及びその評価結果は表5に示す。
【0069】
<水性組成物の処方>
(成分) (%)
1.精製水 残量
2.1,3-ブチレングリコール 6
3.グリセリン 4
4.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン
デシルテトラデシルエーテル 0.6
5.香料 0.1
【0070】
(水性組成物の製造方法)
A:No.2~5を均一に混合する。
B:AにNo.1を添加し、均一に混合して水性組成物を得た。
【0071】
【0072】
(用時混合化粧料の製造方法)
A:No1~8を均一に混合し、用時混合化粧料を得た。
【0073】
用時混合化粧料について、粉末組成物の水性組成物への分散性と、水性組成物に分散後に分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさを評価した。粉末組成物の水性組成物への分散性については、上記(ロ)の評価方法において、水から上記処方の水性組成物に変更する以外は同条件で評価し、上記(ロ)と同じ評価基準で評価を行った。(ハ)水性組成物に分散後に分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさについては、下記評価基準で評価を行い、下記判定基準に基づき判定を行った。
【0074】
(評価方法)
(ハ)分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさの評価:化粧品評価専門評価者5名が、0.05gの粉末組成物と上記処方の水性組成物1gを手のひらにとり、指で混ぜ合わせて分散させた分散物を肌へ塗布した際のべたつき具合を下記評価基準に基づき官能評価し、評点を付け、下記判定基準に基づき判定した。
<(ハ)評価基準>
(評点):(評価)
3 :非常に良好
2 :良好
1 :不良
0 :非常に不良
<判定基準>
(判定):(評価)
◎ :評点総数12以上
〇 :評点総数8以上12未満
△ :評点総数4以上8未満
× :評点総数4未満
【0075】
実施例26~34の用時混合化粧料は、水性組成物への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れたものであった。
【0076】
実施例35:粉末組成物
(成分) (%)
1.リン脂質(大豆水添)※1 30
2.リン脂質(大豆未水添)※3 10
3.セルロースナノファイバー(純分)※4 10
4.合成金雲母※7 5
5.シリカ※8 残量
6.マンニトール 10
7.メチルパラベン 1
8.フェノキシエタノール 2
9.クエン酸 1
10.クエン酸Na 2
11.EDTA-2Na 1
12.水溶性コラーゲン 2
13.ケイケットウエキス 2
14.アロエベラ葉エキス 2
15.香料 0.5
16.赤色226号 0.1
※8:シリカマイクロビードP-1505(日揮触媒化成社製)
【0077】
(製造方法)
A:No.1~2、8、12~16に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後、マイクロフルイダイザーにて高圧処理を行い、室温まで冷却する。
B:No.3~7、9~11に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:A、BをY字ノズルで噴霧直前に混合させスプレードライヤーで噴霧乾燥して、粉末組成物を得た。
【0078】
実施例35の粉末組成物は、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0079】
実施例36:用時混合化粧料
<乳液の処方>
(成分) (%)
1.精製水 残量
2.1,3-ブチレングリコール 10
3.グリセリン 5
4.トリエタノールアミン 0.5
5.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル
(C10-C30))クロスポリマー 0.3
6.メチルパラベン 0.2
7.ミネラルオイル 5
8.エチルヘキサン酸セチル 5
9.トリエチルヘキサノイン 2
10.イソステアリン酸ソルビンタン 0.3
11.ポリソルベート80 0.3
12.ステアリン酸 0.5
13.セトステアリルアルコール 0.2
14.ベヘニルアルコール 0.2
15.ステアリン酸グリセリル 0.2
16.フェノキシエタノール 0.3
17.香料 0.2
【0080】
(製造方法)
A:No.1~6を70℃にて均一に分散する。
B:No.7~17を70℃にて均一に分散する。
C:BにAを加え、70℃にて乳化する。
D;Cを40℃に冷却して、乳液を得た。
【0081】
実施例35の粉末組成物0.1gと上記処方の乳液1gとを手のひらで用時混合し、肌に塗布した。その結果、実施例35の粉末組成物は上記処方の乳液への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0082】
実施例37:粉末組成物
(成分) (%)
1.リン脂質/コレステロール混合物※9 15
2.リン脂質/セラミド混合物※10 15
3.セルロースナノファイバー(純分)※11 10
4.合成金雲母※7 残量
5.コンスターチ 10
6.デキストリン 15
7.デヒドロ酢酸Na 2
8.フェノキシエタノール 2
9.塩化ナトリウム 2
10.トコフェロール 2
11.レチノール 2
12.ナイアシンアミド 3
13.トラネキサム酸 2
14.ラベンダー油 0.2
15.黄色酸化鉄 0.5
16.黄色4号 0.1
※9:PRESOME CS2―101(日本精化株式会社製)
※10:PRESOME Cera-236(日本精化株式会社製)
※11:AUROVISCO(王子ホールディングス社製)
【0083】
(製造方法)
A:成分1及び2に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後室温まで冷却する。
B:成分3~16に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにA均一に混合する。
D:Cをスプレードライヤーで噴霧乾燥して、粉末組成物を得た。
【0084】
実施例37の粉末組成物は、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0085】
実施例38:用時混合化粧料
<下地の処方>
(成分) (%)
1.精製水 残量
2.トリエタノールアミン 1
3.カルボマー 0.2
4.ミネラルオイル 10
5.ジチルポリシロキサン(25℃動粘度6CS) 10
6.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
7.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1.5
8.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 0.8
9.ステアリン酸 1.5
10.ステアリン酸グリセリル 0.4
11.セテアリルアルコール 0.4
12.ポリソルベート80 1
13.PEG-10水添ヒマシ油 0.5
14.キサンタンガム 0.1
15.エタノール 5
16.フェノキシエタノール 0.2
17.メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 2.5
18.ラウリン酸ポリグリセリル-10 0.5
19.1,3-ブチレングリコール 10
20.ポリソルベート80 0.5
21.PEG-10水添ヒマシ油 0.2
22.レシチン 0.1
23.ナイロン-12 1.5
24.シリカ2%処理酸化チタン(平均粒子径0.3μm) 5
25.タルク 1.5
26.グンジョウ 0.5
27.赤色酸化鉄 0.2
【0086】
(製造方法)
A:No.1~3を75℃にて均一に分散する。
B:No.4~13を75℃にて均一に分散する。
C:BにAを加え、75℃にて乳化する。
D:Cを40℃に冷却する。
E:No.14~18をDに加え均一に混合する。
F:No.19~27を三本ローラーにて処理する。
G:EにFを加え均一に混合して、下地を得た。
【0087】
実施例37の粉末組成物0.3gと上記処方の下地1.5gとを手のひらで用時混合し、肌に塗布した。その結果、実施例37の粉末組成物は上記処方の下地への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0088】
実施例39:粉末組成物
(成分) (%)
1.リン脂質(大豆未水添)※3 20
2.セルロースナノファイバー(純分)※12 10
3.マイカ※13 残量
4.セルロース粉末※14 10
5.デキストリン 10
6.マンニトール 10
7.安息香酸Na 2
8.フェノキシエタノール 2
9.トリエタノールアミン 2
10.ヘパリン類似物質 2
11.ヒアルロン酸Na 3
12.加水分解ヒアルロン酸 2
13.アセチルヒアルロン酸Na 2
14.テトラヘキシルデカン酸アスコルビル※15 2
15.オレイン酸フィトステリル 2
16.スクワラン 2
17.黄色酸化鉄 0.5
18.赤色酸化鉄 0.3
19.黒色酸化鉄 0.1
※12:セレンピアCS-01(王子製紙社製)
※13:MICA POWDER Y-2300(ヤマグチマイカ社製)
※14:CELLUKOBEADS D-5(大東化成工業社製)
※15:NIKKOL VC-IP(日光ケミカルズ社製)
【0089】
(製造方法)
A:No.1、5、8、14~19に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後、マイクロフルイダイザーにて高圧処理を行い、室温まで冷却する。
B:No.2~4、6~7、9~13に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:Cをフリーズドライヤーで凍結乾燥して、粉末組成物を得た。
【0090】
実施例39の粉末組成物は、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0091】
実施例40:用時混合化粧料
<ファンデーションの処方>
(成分) (%)
1.シリコーン処理酸化チタン(平均粒子径0.3μm) 10
2.シリコーン処理酸化チタン(平均粒子径0.05μm) 3
3.シリコーン処理酸化亜鉛(平均粒子径0.035μm) 5
4.トリエトキシカプリリルシラン2%処理黄色酸化鉄 0.7
5.トリエトキシカプリリルシラン2%処理赤色酸化鉄 0.4
6.トリエトキシカプリリルシラン2%処理黒色酸化鉄 0.1
7.タルク 2.5
8.パルミチン酸オクチル 5
9.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1
10.ラウリン酸PEG-9ポロジメチルシロキシエチルジメチコン 0.7
11.ジステアルジモニウムヘクトライト 0.8
12.ステアラルコニウムヘクトライト 0.4
13.メチルトリメチコン 5
14.ジメチルポリシロキサン(25℃動粘度2CS) 20
15.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
16.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
17.シリカ 1
18.香料 0.2
19.精製水 残量
20.エタノール 5
21.1,3-ブチレングリコール 5
22.メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 1.7
23.ラウリン酸ポリグリセリル-10 0.3
24.塩化Na 0.3
25.フェノキシエタノール 0.2
【0092】
(製造方法)
A:No.1~13を三本ローラーにて処理する。
B:No.14~18を均一に分散する。
C:AをBに加え均一に混合する。
D:No.19~25を均一に分散する。
E:DをCに加え乳化して、ファンデーションを得た。
【0093】
実施例39の粉末組成物0.05gと上記処方のファンデーション0.5gとを手のひらで用時混合し、肌に塗布した。その結果、実施例39の粉末組成物は上記処方のファンデーションへの分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0094】
実施例41:粉末組成物
(成分) (%)
1.ポリオキシエチレンソルビタンステアレート※16 10
2.セルロースナノファイバー(純分)※12 2
3.マンニトール 10
4.スクロース 残量
5.クロルフェネシン 0.2
6.フェノキシエタノール 1
7.クエン酸 0.2
8.クエン酸Na 2.5
※16:NIKKOL BPS―5(日光ケミカルズ社製)
【0095】
(製造方法)
A:成分1に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後室温まで冷却する。
B:成分2~8に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:Cを噴霧凍結乾燥機で予備凍結した後に凍結乾燥して、粉末組成物を得た。
【0096】
実施例41の粉末組成物は、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0097】
実施例42:粉末組成物
(成分) (%)
1.ポリオキシエチレンソルビタンステアレート※17 5
2.ソルビタンモノオレート 5
3.ポリオキシエチレンステアリルエーテル 5
4.セルロースナノファイバー(純分)※12 1
5.デキストリン 5
6.スクロース 残量
7.クロルフェネシン 0.2
8.フェノキシエタノール 0.5
9.クエン酸 0.2
10.クエン酸Na 2.5
※17:Tween61(SIGMA社製)
【0098】
(製造方法)
A:成分1~3に100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後室温まで冷却する。
B:成分4~10に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:Cを凍結乾燥機にて凍結乾燥して、粉末組成物を得た。
【0099】
実施例42の粉末組成物は、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0100】
実施例43:粉末組成物
(成分) (%)
1.リン脂質(大豆未水添)※3 20
2.リン脂質(大豆水添)※1 10
3.パルミチン酸レチノール※18 5
4.セルロースナノファイバー(純分)※12 2
5.スクロース 残量
6.クロルフェネシン 0.2
7.フェノキシエタノール 1
8.クエン酸 0.2
9.クエン酸Na 2.5
※18:理研Aパルミテート1000(E)
【0101】
(製造方法)
A:成分1~3を10質量部のエタノールに溶解した後、100質量部となるように精製水を加え70℃に加熱し、ホモミキサーにて均一に混合した後室温まで冷却する。
B:成分4~9に100質量部となるように精製水を加え、ホモミキサーにて均一に混合する。
C:BにAを添加し、均一に混合する。
D:Cを噴霧凍結乾燥機で予備凍結した後に凍結乾燥する。
E:Dをハンマーミルにて粉砕し、粉末組成物を得た。
【0102】
実施例43の粉末組成物は、保存安定性、水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。
【0103】
実施例44:用時混合化粧料
<化粧水の処方>
(成分) (%)
1.グリチリチン酸ジカリウム 0.1
2.精製水 残量
3.グリセリン 8
4.エタノール 5
5.ジプロピレングリコール 7
6.1,3―ブチレングリコール 5
7.リン酸一水素Na 0.05
8.リン酸二水素Na 0.02
9.セスキオレイン酸ソルビタン 0.02
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.08
11.ポリオキシエチレンアルキル(12~15)
エーテルリン酸(8E.O) 0.02
12.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 0.1
13.香料 0.01
14.フェノキシエタノール 0.1
【0104】
A:成分9~14を50℃に加熱し均一溶解混合する。
B:成分1~8を室温で均一に溶解する。
C:BにAを添加混合しホモミキサーにて乳化して化粧水を得た。
【0105】
実施例41~43の粉末組成物について、粉末組成物それぞれ3gを3つのスポイト瓶に1実施例毎に入れ、上記処方の化粧水15gを各スポイト瓶の中で用時混合し、肌に塗布した。その結果、実施例41~43の粉末組成物全ては上記処方の化粧水への分散性、分散物を肌に塗布した際のべたつきのなさに優れるものであった。