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特開2022-159137アデノ随伴ウイルスベクターを含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159137
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】アデノ随伴ウイルスベクターを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20221006BHJP
   C12N 15/35 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221006BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221006BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221006BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20221006BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/35 ZNA
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/19
A61K48/00
A61P3/00
A61P43/00 105
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】54
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022054718
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】63/169428
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/268676
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100147186
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 眞紀
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】タマラ シェーファー ホッジ
(72)【発明者】
【氏名】エカテリーナ ワシリエヴナ トーレス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076BB13
4C076CC21
4C076DD09E
4C076DD23
4C076DD50Z
4C076DD67
4C076FF15
4C076FF36
4C076FF61
4C076GG06
4C076GG47
4C084AA13
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZC21
4C084ZC54
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA44
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZC21
4C087ZC54
(57)【要約】
【課題】臨床投与に適した安定なrAAVベクター調合物を提供すること。
【解決手段】本発明は、組換えAAV(rAAV)ベクターおよび1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤を含む組成物を提供する。当該組成物は、他のrAAV組成物と比較して安定性が向上している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
バッファー、
塩、
凍結保護物質、および
界面活性剤
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【請求項2】
バッファーの濃度が、約1mMから約100mM、場合により約20mMである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
バッファーがTrisである、請求項1から2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
塩の濃度が約10mMから約200mM、場合により約100mMである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
塩が塩化マグネシウム(MgCl)である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
凍結保護物質の濃度が、約1%(w/v)から約10%(w/v)、場合により約4%(w/v)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
凍結保護物質がスクロースである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
界面活性剤の濃度が、約0.002%(w/v)から約0.2%(w/v)、場合により約0.02%(w/v)である、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
界面活性剤がポリオキサマー188である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
約1E+11ベクターゲノム(vg)/mLから約1E+15vg/mL、または約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
pHが、約7.3から約7.9、場合により約7.6である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の粘度が、約0.5mPaから約5mPa、場合により約1mPaから約1.5mPa、または場合により約1.19mPaである、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
組成物の密度が、約0.5g/cmから約5g/cm、場合により約1g/cmから約1.5g/cm、または場合により約1.03g/cmである、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物の伝導性が、約1mS/cmから約40mS/cm、場合により約10mS/cmから約20mS/cm、または場合により約16.9mS/cmである、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型のカプシドポリペプチドを含み、場合により、カプシドポリペプチドがAAV3B血清型のものである、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
AAV3B血清型のカプシドポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
rAAVベクターが、ATP7B導入遺伝子またはその断片を含むrAAVベクターゲノムを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
ATP7B導入遺伝子が、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、iii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、またはiv)これらの組み合わせである、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
rAAVベクターゲノムが、AATプロモーター、ポリAシグナル配列、ならびに隣接する5’および3’ITR配列からなる群から選択される、ATP7B導入遺伝子の発現のための1つまたは複数のエレメントをさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
ITR配列がAAV2血清型のものである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
rAAVベクターが、配列番号9の核酸配列を含むかまたはこれからなるベクターゲノムを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約20mMのTris、
約100mMのMgCl
約4%(w/v)のスクロース、および
約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
rAAVベクターが、AAV3B血清型のポリペプチドを含み、前記ポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなっていてもよい、請求項22から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
rAAVベクターが、導入遺伝子および1つまたは複数のエレメントを含むベクターゲノムを含み、前記導入遺伝子がATP7Bまたはその断片であってもよく、前記ATP7B導入遺伝子が、金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする核酸を含んでいてもよく、また、前記ATP7B導入遺伝子が、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸を含んでいてもよく、またはその両方であってもよい、請求項22から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
1つまたは複数のエレメントが、AATプロモーター、ポリAシグナル配列、ならびに隣接する5’および3’ITR配列を含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
ITR配列がAAV2血清型のものである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
rAAVベクターが、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含むプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、ならびに配列番号5~8のいずれか一つの配列を含んでいてもよい5’ITRおよび3’ITRを含む核酸を含むかまたはこれからなるベクターゲノムを含む、請求項22から27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
AAV3B血清型のカプシドポリペプチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約14mMから約26mMのTris、
約70mMから約130mMのMgCl
約2.8%(w/v)から約5.2%(w/v)のスクロース、および
約0.014%(w/v)から約0.26%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【請求項30】
rAAVベクターが、導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および銅輸送ATPase 2タンパク質またはその断片をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約20mMのTris、
約100mMのMgCl
約4%(w/v)のスクロース、ならびに
約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【請求項32】
導入遺伝子が、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、iii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、またはiv)これらの組み合わせである、請求項30から31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
ベクターゲノムが、プロモーター、ポリAシグナル配列、少なくとも1つのITR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのエレメントを含む、請求項30から32のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項34】
プロモーターが、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなる、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
ポリAシグナル配列が、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなる、請求項33から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
ITR配列が、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる、請求項33から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約20mMのTris、
約100mMのMgCl
約4%(w/v)のスクロース、ならびに
約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【請求項38】
ベクターゲノムが、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなるプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなるポリAシグナル配列、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる少なくとも1つのITR配列、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのさらなるエレメントを含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
ベクターゲノムが、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含むプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、ならびに配列番号5~8のいずれか一つの配列を含んでいてもよい5’ITRおよび3’ITRを含む核酸を含むかまたはこれからなる、請求項37から38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
凍結乾燥されているまたは凍結乾燥されていない、請求項1から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
0.5mLから10mLの請求項1から40のいずれか一項に記載の組成物を含むバイアル。
【請求項42】
環状オレフィンコポリマー製であるか、適所の熱可塑性エラストマーストッパーを有するか、またはその両方である、請求項41に記載のバイアル。
【請求項43】
有効量の請求項1から40のいずれか一項に記載の医薬組成物を、疾患を有するヒト対象に投与することを含む、疾患を処置する方法。
【請求項44】
医薬組成物が、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
医薬組成物が静脈内投与される、請求項43から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
医薬組成物の有効量が、約5E+11vg/kgから約1E+14vg/kg、場合により約1E+12vg/kgまたは約1+E13vg/kgである、請求項43から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
疾患が、銅輸送ATPase 2の欠乏または機能障害に起因し、場合により疾患がウィルソン病である、請求項43から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
請求項1から40のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項41から42のいずれか一項に記載のバイアルの内容物を、ヒト対象に静脈内投与することを含み、場合によりヒト対象がウィルソン病を有する、それを必要とするヒト対象における肝銅を低減させる方法。
【請求項49】
請求項1から40のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項41から42のいずれか一項に記載のバイアルの内容物を、ヒト対象に静脈内投与することを含む、それを必要とするヒト対象におけるウィルソン病を処置する方法。
【請求項50】
疾患の処置のための薬品の製造における、請求項1~40のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項51】
場合により疾患がウィルソン病である、銅輸送ATPase 2の欠乏または調節異常に起因する疾患の処置のための薬剤の製造における、請求項1~40のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項52】
ヒト対象を処置する方法における使用のための、請求項1~40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
場合により疾患がウィルソン病である、銅輸送ATPase 2の欠乏または調節異常に起因する疾患を有するヒト対象を処置する方法における使用のための、請求項1~40のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
請求項1から40のいずれか一項に記載の医薬組成物、または請求項41から42のいずれか一項に記載の少なくとも一つのバイアル、および使用のための指示を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本願は、EFS-Webを介して電子出願され、電子的に提出されたテキストフォーマットの配列表を含む。このテキストファイルは、2022年3月7日に作成され、29.3KBのサイズを有する、「PC072723A_SequenceListing_ST25.txt」というタイトルの配列表を含有する。このテキストファイルに含まれる配列表は、明細書の一部であり、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、組換えAAV(rAAV)ベクターを含むアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの医薬調合物の分野に関する。具体的には、本発明は、医薬品の調合物、およびrAAVベクター、特にAAV3Bカプシドポリペプチドを含むrAAVベクターの使用に関する。
【0003】
治療用導入遺伝子を送達するために組換えAAV(rAAV)ベクターを使用するものを含む、遺伝子療法は、治療法がない、また多くのケースにおいて存在する処置が限られている広範な重篤な疾患を処置する可能性を有する(Wangら(2019)Nature Reviews 18:358~378)。rAAVベクターを使用する遺伝子療法は、欠陥遺伝子の健康なコピーを患者に導入し、すると当該患者は、正常な構造または機能を有するタンパク質を発現する。
【0004】
rAAVベクターは、AAVの天然血清型、合成血清型、またはキメラ血清型のいずれかを使用して作製することができる。良く特徴付けされたAAV2血清型と緊密に関連するAAV3は、ヒト由来源から誘導された(Hogganら(1966)PNAS 55:1467~1474)。AAV3はアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC、Manassas、VA)にAAV3 H株として寄託され、その後、2つの異なる単離株、AAV3AおよびAAV3Bを含むことが明らかにされた。これら2つの単離株は後でクローニングされ、シーケンシングされ、そして、Capタンパク質の間で6つのアミノ酸の違いが、またRepタンパク質の間で5つのアミノ酸の違いが明らかにされた(Muramatsuら(1996)Virology 221:28~217;Rutledgeら(1998)J.Virology 72:309~319)。AAV3B VP1ポリペプチドのアミノ酸配列(GenBank受託番号AF028705.1)は、AAV2 VP1ポリペプチドのアミノ酸配列(GenBank受託番号NC_001401.2)に87.9%同一である。AAV3B VP1遺伝子のヌクレオチド配列(GenBank受託番号AF028705.1)は、AAV2 VP1遺伝子(GenBank受託番号NC_001401.2)のヌクレオチド配列に81%同一である。AAV3Bが固有の血清型であることの確証は、抗AAV2血清がAAV3Bによる細胞導入をブロックできないことによって示された(Rutledgeら(1998)J.Virology 72:309~319)。組換えAAV3ベクターはヒト初代肝細胞に効率的に形質導入することが示されているが、それは、AAV3Bがヒト肝細胞増殖因子受容体を細胞受容体として使用するためである(Liら(2015)Mol.Ther.23(12):1867~1876)。
【0005】
ウィルソン病(WD)は、出現が3万人に約1人の稀な遺伝子疾患であり、これには治療法がなく、したがって、生涯にわたる処置を要する。WDは、肝臓の、神経学的、および/または精神医学的症候を呈し得る、銅の代謝および蓄積の障害である(AggarwalおよびBhatt(2013)Internat.Rev.Neurobiol.110:313~348;MohrおよびWeiss(2019)Clin.Biochem.Rev.40(2):59~77;Weiss,K.H.Gene Reviews ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1512/)。WDを有する患者における症候の発病は、10代または青年期で典型的には生じ、患者は、黄疸、肝炎、肝不全、および慢性肝疾患を呈し得る。神経学的症候としては、運動障害および/またはジストニアが含まれる。体内の銅レベルが高いと、WD患者は眼にカイザー・フライシャー輪を呈する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US6,491,907
【特許文献2】WO2006/066066
【特許文献3】WO2010/093784
【特許文献4】WO2014/144229
【特許文献5】WO2013/029030
【特許文献6】WO2015/013313
【特許文献7】WO2007/120542
【特許文献8】WO2016/097218
【特許文献9】WO2016/097219
【特許文献10】米国特許第7,906,111号
【特許文献11】WO2016/210170
【特許文献12】WO2013/063379
【特許文献13】WO2014/194132
【特許文献14】WO2015/121501
【特許文献15】国際特許公開第WO00/28061号
【特許文献16】WO99/61601
【特許文献17】WO98/11244
【特許文献18】米国特許第6,156,303号
【特許文献19】米国特許第7,172,893号
【特許文献20】WO2015/054653
【特許文献21】米国特許第6,566,118号
【特許文献22】WO98/09657
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wangら(2019)Nature Reviews 18:358~378
【非特許文献2】Hogganら(1966)PNAS 55:1467~1474
【非特許文献3】Muramatsuら(1996)Virology 221:28~217
【非特許文献4】Rutledgeら(1998)J.Virology 72:309~319
【非特許文献5】Liら(2015)Mol.Ther.23(12):1867~1876
【非特許文献6】AggarwalおよびBhatt(2013)Internat.Rev.Neurobiol.110:313~348
【非特許文献7】MohrおよびWeiss(2019)Clin.Biochem.Rev.40(2):59~77
【非特許文献8】Weiss,K.H.Gene Reviews ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1512/
【非特許文献9】Rabinowitzら(2004)J.Virol.78(9)、4421~4432
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【非特許文献61】Hubertら(2020)、J.Pharm.Sci.109:830~844
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【非特許文献65】Horowitzら(2013)、87(6):2994~3002
【非特許文献66】Hubertら(2020)、J.Pharma.Sci.109:830~844
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
WDは、常染色体劣性疾患として遺伝し、銅輸送ATPase 2(UniProtKB受託番号P35670)をコードするATP7B遺伝子(GenBank受託番号NM_000053.4)における突然変異(約500の突然変異が同定されている)に起因する。食品由来の銅を代謝する部位である肝臓において、銅輸送ATPase 2は、(i)過剰な銅を胆管経路を介して便中に排出することによる肝細胞銅濃度の調節、および(ii)循環セルロプラスミンを含む銅依存性酵素への銅の移動、という2重の役割に関与する。現在のWD処置は、生涯にわたるキレート化法、食品由来の銅の制限、および医療に応答しないまたは副作用を理由に処置を許容し得ない患者では肝臓移植に、主に依存している。現在の治療に伴う疾病率を理由に、遺伝子療法は、WDのための有望な処置および治療法をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、臨床投与に適した安定なrAAVベクター調合物を提供する。rAAVベクター、特にAAV3Bポリペプチドを含むrAAVベクター、ならびに長期保存の間におよびストレス条件下でベクターの安定性を維持し得る賦形剤を含む組成物が、提供される。一態様において、本開示は、pHが約7.3から約7.9であり、非経口投与に適した、rAAVベクター、バッファー(例えばTris)、塩(例えば塩化マグネシウム(MgCl))、凍結保護物質(例えばスクロース)、およびポリオキサマー(例えばポリオキサマー188)を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
別の態様において、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、バッファー、塩、凍結保護物質、および界面活性剤を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、バッファーの濃度は約1mMから約100mMである。一部の実施形態において、バッファーの濃度は約20mMである。一部の実施形態において、バッファーはTrisである。一部の実施形態において、Trisは、Tris塩基、Tris HCl、またはTris塩基とTris HClとの組み合わせである。一部の実施形態において、塩の濃度は約10mMから約200mMである。一部の実施形態において、塩の濃度は約100mMである。一部の実施形態において、塩は塩化マグネシウム(MgCl)である。一部の実施形態において、凍結保護物質の濃度は、約1%(w/v)から約10%(w/v)である。一部の実施形態において、凍結保護物質の濃度は、約4%(w/v)である。一部の実施形態において、凍結保護物質はスクロースである。一部の実施形態において、界面活性剤の濃度は、約0.002%(w/v)から約0.2%(w/v)である。一部の実施形態において、界面活性剤の濃度は、約0.02%(w/v)である。一部の実施形態において、界面活性剤はポリオキサマーである。一部の実施形態において、ポリオキサマーはポリオキサマー188である。
【0011】
一部の実施形態において、医薬組成物は、約1E+11ベクターゲノム(vg)/mLから約1E+15vg/mL、または約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、約0.5E+13vg/mL、約0.6E+13vg/mL、約0.7E+13vg/mL、約0.8E+13vg/mL、約0.9E+13vg/mL、約1E+13vg/mL、約1.1E+13vg/mL、約1.2E+13vg/mL、1.3E+13vg/mL、1.4E+13vg/mL、約1.5E+13vg/mL、約1.6E+13vg/mL、約1.7E+13vg/mL、約1.8E+13vg/mL、約1.9E+13vg/mL、約2.0E+13vg/mL、約2.1E+13vg/mL、約2.2E+13vg/mL、約2.3E+13vg/mL、約2.43E+13vg/mL、約2.5E+13vg/mL、約2.6E+13vg/mL、約2.7E+13vg/mL、約2.8E+13vg/mL、約2.9E+13vg/mL、または約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含む。
【0012】
一部の実施形態において、医薬組成物のpHは、約7.3から約7.9であり、場合により約7.6である。
【0013】
一部の実施形態において、医薬組成物の粘度は、約0.5mPaから約5mPaである。一部の実施形態において、医薬組成物の粘度は、約1mPaから約1.5mPaであり、場合により約1.19mPaである。
【0014】
一部の実施形態において、医薬組成物の密度は、約0.5g/cmから約5g/cmである。一部の実施形態において、医薬組成物の密度は、約1g/cmから約1.5g/cmであり、場合により約1.03g/cmである。
【0015】
一部の実施形態において、医薬組成物の伝導性は、約1mS/cmから約40mS/cmである。一部の実施形態において、医薬組成物の伝導性は、約10mS/cmから約20mS/cmであり、場合により約16.9mS/cmである。
【0016】
一部の実施形態において、医薬組成物のrAAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型のカプシドポリペプチドを含み、場合により、カプシドポリペプチドはAAV3B血清型のものである。一部の実施形態において、AAV3B血清型のカプシドポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【0017】
一部の実施形態において、医薬組成物のrAAVベクターは、ATP7B導入遺伝子またはその断片を含むベクターゲノムを含む。一部の実施形態において、ATP7B導入遺伝子は、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、iii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、またはiv)これらの組み合わせである。一部の実施形態において、rAAVベクターゲノムは、ATP7B導入遺伝子の発現のための1つまたは複数のエレメントをさらに含む。一部の実施形態において、1つまたは複数のエレメントとしては、AATプロモーター、ポリAシグナル配列、ならびに隣接する5’および3’ITR配列が含まれる。一部の実施形態において、ITR配列は、AAV2血清型のものである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、配列番号9の核酸配列を含むかまたはこれからなるベクターゲノムを含む。
【0018】
別の態様において、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、約20mMのTris、約100mMのMgCl、約4%(w/v)のスクロース、および約0.02%(w/v)のポリオキサマー188を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、組成物は、約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、組成物は、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、医薬組成物のrAAVベクターは、AAV3B血清型のポリペプチドを含み、当該ポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなっていてもよい。一部の実施形態において、rAAVベクターは、導入遺伝子および1つまたは複数のエレメントを含むベクターゲノムを含み、当該導入遺伝子はATP7Bまたはその断片であってもよく、また、当該ATP7B導入遺伝子は、金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする核酸を含んでいてもよいか、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸を含んでいてもよいか、またはその両方であってもよい。一部の実施形態において、1つまたは複数のエレメントとしては、AATプロモーター、ポリAシグナル配列、ならびに隣接する5’および3’ITR配列が含まれる。一部の実施形態において、ITR配列は、AAV2血清型のものである。一部の実施形態において、rAAVベクターは、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含むプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、ならびに配列番号5~8のいずれか一つの配列を含んでいてもよい5’ITRおよび3’ITRを含む核酸を含むかまたはこれからなるベクターゲノムを含む。
【0019】
別の態様において、本開示は、AAV3B血清型のカプシドポリペプチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、約14mMから約26mM、場合により約20mMのTris、約70mMから約130mM、場合により約100mMのMgCl、約2.8%(w/v)から約5.2%(w/v)、場合により約4%(w/v)のスクロース、および約0.014%(w/v)から約0.26%(w/v)、場合により約0.02%(w/v)のポリオキサマー188を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、医薬組成物のrAAVベクターは、導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む。一部の実施形態において、導入遺伝子は、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、iii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、またはiv)これらの組み合わせである。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、プロモーター、ポリAシグナル配列、少なくとも1つのITR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのエレメントを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ポリAシグナル配列は、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ITR配列は、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含むプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、ならびに配列番号5~8のいずれか一つの配列を含んでいてもよい5’ITRおよび3’ITRを含む核酸を含むかまたはこれからなる。
【0020】
別の態様において、本開示は、AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および銅輸送ATPase 2タンパク質またはその断片をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、約20mMのTris、約100mMのMgCl、約4%(w/v)のスクロース、ならびに約0.02%(w/v)のポリオキサマー188を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、導入遺伝子は、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、iii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、またはiv)これらの組み合わせである。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、プロモーター、ポリAシグナル配列、少なくとも1つのITR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのエレメントを含む。一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ポリAシグナル配列は、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ITR配列は、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含むプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、ならびに配列番号5~8のいずれか一つの配列を含んでいてもよい5’ITRおよび3’ITRを含む核酸を含むかまたはこれからなる。
【0021】
別の態様において、本開示は、AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、約20mMのTris、約100mMのMgCl、約4%(w/v)のスクロース、ならびに約0.02%(w/v)のポリオキサマー188を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなるプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなるポリAシグナル配列、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる少なくとも1つのITR配列、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのさらなるエレメントを含む。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含むプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、ならびに配列番号5~8のいずれか一つの配列を含んでいてもよい5’ITRおよび3’ITRを含む核酸を含むかまたはこれからなる。
【0022】
一部の態様において、本開示は、凍結乾燥されているまたは凍結乾燥されていない医薬組成物を提供する。一部の態様において、本開示は、0.5mLから10mLの本明細書において開示されている医薬組成物を含むバイアルを提供する。一部の実施形態において、バイアルは、環状オレフィンコポリマー製である。一部の実施形態において、バイアルは、適所の熱可塑性エラストマーストッパーを有する。
【0023】
一部の態様において、本開示は、有効量の本明細書において開示されている医薬組成物を、疾患を有するヒト対象に投与することを含む、疾患を処置する方法を提供する。一部の実施形態において、医薬組成物は、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、医薬組成物は、静脈内に投与される。一部の実施形態において、医薬組成物の有効量は、約5E+11vg/kgから約1E+14vg/kgである。一部の実施形態において、医薬組成物の有効量は、約1E+12vg/kgまたは約1+E13vg/kgである。一部の実施形態において、疾患は、銅輸送ATPase 2の欠乏または機能障害に起因する。一部の実施形態において、疾患はウィルソン病である。
【0024】
一部の態様において、本開示は、本明細書において開示されている医薬組成物、または本明細書において開示されている医薬組成物を含むバイアルの内容物を、ヒト対象に静脈内投与することを含む、それを必要とするヒト対象における肝銅を低減させる方法を提供する。一部の実施形態において、ヒト対象は、ウィルソン病を有する。
【0025】
一部の態様において、本開示は、本明細書において開示されている医薬組成物、または本明細書において開示されている医薬組成物を含むバイアルの内容物を、ヒト対象に静脈内投与することを含む、それを必要とするヒト対象におけるウィルソン病を処置する方法を提供する。
【0026】
一部の態様において、本開示は、疾患の処置のための薬品の製造における、本明細書において開示されている医薬組成物の使用を提供する。実施形態において、疾患はウィルソン病である。
【0027】
一部の態様において、本開示は、銅輸送ATPase 2の欠乏または調節異常に起因する疾患の処置のための薬品の製造における、本明細書において開示されている医薬組成物の使用を提供する。一部の実施形態において、疾患はウィルソン病である。
【0028】
一部の態様において、本開示は、ヒト対象を処置する方法において使用するための、本明細書において開示されている医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、疾患はウィルソン病である。
【0029】
一部の態様において、本開示は、銅輸送ATPase 2の欠乏または調節異常に起因する疾患を有するヒト対象を処置する方法において使用するための、本明細書において開示されている医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、疾患はウィルソン病である。
【0030】
一部の態様において、本開示は、本明細書において開示されている医薬組成物、または本明細書において開示されている医薬組成物を含む少なくとも1つのバイアル、および使用のための指示を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、qPCRによって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的な導入遺伝子力価(vg/mL)を示すグラフである。
図2】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的なウイルス粒子力価(vp/mL)を示すグラフである。
図3】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、SE-HPLCによって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の高分子質量種(HMMS)の例示的な百分率を示すグラフである。
図4】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、SE-HPLC A260/A280によって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の、例示的な空カプシドの完全カプシドに対する比を示すグラフである。
図5】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、SE-HPLCによって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的なベクター純度(%単量体)を示すグラフである。
図6】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、50%組織培養感染量(TCID50)として測定された、rAAVベクターを含む医薬組成物のベクター感染力を示すグラフである。
図7】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後の、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的なpHを示すグラフである。
図8】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、還元条件でのキャピラリーゲル電気泳動(rCGE)によって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的なカプシドパーセント純度を示すグラフである。
図9】医薬組成物を5℃、-20℃、および-70℃で6カ月までの間保管した後、動的光散乱法(DLS)によって測定した、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的なZ平均(nm)を示すグラフである。
図10】医薬組成物を5℃で6カ月までの間保管した後、平均蛍光強度(MFI)によって測定された、rAAVベクターを含む医薬組成物の例示的な非可視粒子カウントを示すグラフである。
図11】種々の緩衝溶液中の相対的空rAAV3Bカプシド(上のパネル)および相対的完全rAAV3Bカプシド(下のパネル)についての、5℃で0時間目(T0)および2週間時(T2wk)における、例示的なカプシド力価(VP/mL)および収率(%)を示すグラフである。
図12】種々の緩衝溶液中の相対的空および相対的完全rAAV3Bカプシドについての、0時間目(T0)における例示的なカプシド収率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、AAVベクターおよび1つまたは複数の薬学的に許容できる賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本AAVベクター組成物は、目的のタンパク質(例えば治療用タンパク質)の発現のための組換え核酸をそのベクターゲノムが有するrAAVを含み得る。本発明者らは、バッファー、塩、凍結保護物質、および界面活性剤を含む、AAVベクターの調合物を開発した。有利には、これらの調合物は、調合物中のrAAVベクターを長期間にわたりおよびストレス条件(例えば、せん断(sheer)、凍結/解凍)下で安定化させる。本発明者らはまた、rAAVベクター、特に、AAV3Bカプシドポリペプチドを含むrAAVベクターを含む、このような調合物が、長期保存(例えば6カ月)の間、およびストレス条件(例えばせん断(sheer)、凍結/解凍)下で、外見、導入遺伝子力価、ウイルス粒子力価、高分子量種のパーセンテージ、0から100のカプシド率、ウイルス純度、感染力、カプシド純度、凝集、およびpHを含む、製品の品質特性を、許容できるレベルで維持することも発見した。
【0033】
I.定義
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的のものであり、本発明を限定することを意図したものではない。本発明および添付の特許請求の範囲の記載において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から別段のことが明らかに示されていない限り、複数形も含むものである。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(including)」、および「有する(having)」は、包含的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素も存在し得ることを意味する。実施形態が「含む(comprising)」という表現を用いて本明細書において記載される場合は常に、「からなる(consisting of)」および/または「から基本的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の実施形態もまた提供されることが理解される。以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「A260/A280」または「A260/A280比」は、260nmで測定された吸光度と280nmで測定された吸光度との比率を指す。rAAVカプシド(例えば調合される原薬)を含む溶液のA260/A280比は、溶液中に存在する、DNAがパッケージングされたカプシド(すなわち、完全カプシドおよび中間カプシド)とDNAがパッケージングされていないカプシド(すなわち空カプシド)との相対量の推定を提供する。例えば、その値が高いほど、医薬調合物などの溶液中に存在する完全カプシドおよび中間カプシドのパーセンテージは大きい。溶液間のA260/A280比を比較することによって、カプシド種の相対的推定が可能となり、その結果、A260/A280が高い方の溶液は、A260/A280比が低い方の溶液よりも、完全カプシドおよび中間カプシドのパーセンテージが大きい。一部の実施形態において、吸光度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)系の分析的なサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して測定され、吸光度の測定は、1つまたは複数の波長(例えば260nmおよび/または280nm)で行われ得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「約」または「およそ」は、値が、その値を決定するために利用されている装置または方法の誤差の標準偏差を含むことを示すために、使用される。一部の実施形態において、用語「約」は、数字が、測定した際の誤差の標準偏差を有する範囲において、本明細書において記述されるあらゆる数字に加えることができる。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙事項の1つまたは複数の任意のおよび全ての考えられる組み合わせ、ならびに代替で解釈される場合(「または」)には組み合わせの欠如を、指すおよび包含する。
【0037】
本明細書において使用される場合、用語「キメラ」は、その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Rabinowitzら、US6,491,907において記載されているように、異なるパルボウイルス、好ましくは異なるAAV血清型に由来するカプシド配列または粒子配列を有する、ウイルスカプシドまたはウイルス粒子を指す。また、Rabinowitzら(2004)J.Virol.78(9):4421~4432も参照されたい。一部の実施形態において、キメラウイルスカプシドは、以下の突然変異を有するAAV2カプシドの配列を有するAAV2.5カプシドである:263のQからA、265の挿入T、705のNからA、708のVからA、および716のTからN。このようなカプシドをコードするヌクレオチド配列は、WO2006/066066において記載されているように、配列番号15と規定される。他の好ましいキメラAAVカプシドとしては、限定はしないが、WO2010/093784において記載されているAAV2i8、WO2014/144229において記載されているAAV2G9およびAAV8G9、ならびに、AAV9.45(Pulicherlaら(2011)Molecular Therapy 19(6):1070~1078)、WO2013/029030において記載されているAAV-NP4、NP22、およびNP66、AAV-LK0からAAV-LK019、WO2015/013313において記載されているRHM4-1、およびRHM15_1からRHM5_6、WO2007/120542において記載されているAAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9が含まれる。
【0038】
本明細書において使用される場合、薬剤、化合物、または医薬組成物の「有効投与量」または「有効量」は、何らかの1つまたは複数の有利なまたは所望の結果をもたらすために十分な量である。より具体的な態様において、有効量は、疾患の症候を予防する、軽減する、もしくは改善する、および/または処置される対象の生存を延ばす。予防的使用では、有利なまたは所望の結果としては、リスクを無くすもしくは低減させること、重症度を下げること、または、疾患の生化学的、組織学的、および/もしくは行動的症候、その合併症、ならびに疾患の発症の際に現れる中間の病理学的表現型を含む疾患の発生を遅らせることが含まれる。治療的使用では、有利なまたは所望の結果としては、疾患の1つまたは複数の症候の低減などの臨床結果が含まれる。用語「治療有効量」は、それが投与されるものに対して所望の治療効果をもたらす量を指す。一部の実施形態において、当該用語は、治療用投薬レジメンに従って、疾患、障害、または状態に罹患しているまたは罹患しやすい集団に投与された場合に、疾患、障害、または状態を処置するために十分な量を指す。一部の実施形態において、治療有効量は、疾患、障害、および/もしくは状態の1つもしくは複数の症候の出現および/もしくは重症度を低減させる、ならびに/または前記症候の発病を遅らせる量である。当業者なら、用語「治療有効量」が、特定の個体において処置が成功裏に達成されることを実際には要さないことを理解するであろう。むしろ、治療有効量は、このような処置を必要とする患者に投与された場合に、有意な数の対象において特定の所望の薬理学的応答をもたらす量であり得る。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「調合物」または「組成物」は、rAAVベクターに関連する場合、pHが定義された通りの、少なくとも1つのバッファー、少なくとも1つの塩(好ましくは、二価陽イオンを供給するもの)、少なくとも1つの凍結保護物質、および少なくとも1つの界面活性剤を含む薬学的に許容できる賦形剤と組み合わせたrAAVベクターを記載することを目的としている。「医薬調合物」または「医薬組成物」は、活性成分の生物学的活性が効果的となる形態の調製物を指す。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「断片」は、その構造が、完全体の個別の一部分を含むが、完全体で見られる1つまたは複数の部分を欠いている、材料または実体を指す。一部の実施形態において、断片は、個別の一部分からなる。一部の実施形態において、断片は、完全体において見られる特徴的な構造要素または構造部分からなるかまたはそれを含む。一部の実施形態において、ポリマー断片は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、2500、3000、3500、4000の、またはそれを超える(この中に収まる範囲を含む)、完全体ポリマーで見られるモノマー単位(例えば、アミノ酸残基、ヌクレオチド)を含むかまたはそれからなる。
【0041】
一部の実施形態において、断片は、銅輸送ATPase 2ポリペプチドの断片である。一部の実施形態において、断片は、約420のアミノ酸から約440のアミノ酸(例えば約430のアミノ酸)が欠失した銅輸送ATPase 2ポリペプチドである。一部の実施形態において、断片は、約1020のアミノ酸から約1050のアミノ酸(例えば約1035のアミノ酸)を含む銅輸送ATPase 2ポリペプチド断片である。一部の実施形態において、銅輸送ATPase 2ポリペプチドの断片は、金属結合部位(MBS)の部位MBS1、MBS2、MBS3、およびMBS4を含まない。一部の実施形態において、銅輸送ATPase 2ポリペプチドの断片は、少なくとも1つのMBS領域が欠失しているが、MBS5およびMBS6を保持している。
【0042】
一部の実施形態において、断片は、APT7B遺伝子の断片である。一部の実施形態において、断片は、約1280のヌクレオチドから約1300のヌクレオチド(例えば約1290のヌクレオチド)が欠失したATP7B遺伝子である。一部の実施形態において、ATP7B遺伝子の断片は、約3090のヌクレオチドから約3200のヌクレオチド(例えば約3105のヌクレオチド)を含む。
【0043】
カプシドが、導入遺伝子を含む完全なベクターゲノムを有する場合、rAAVベクターは、「完全」、「完全カプシド」、「完全ベクター」、または「完全にパッケージングされたベクター」と呼ばれる。宿主細胞によるrAAVベクターの産生の際、完全カプシドほどには核酸がパッケージングされておらず、また、例えば部分的なまたはトランケートされたベクターゲノムを含有するベクターが、産生され得る。これらのベクターは、「中間体」、「中間カプシド」、「部分的」、または「部分的にパッケージングされたベクター」と呼ばれる。中間カプシドはまた、分析的な超遠心分離によって分析すると、完全カプシドの沈降率と空カプシドの沈降率との間の沈降率である中間沈降率を有するカプシドでもあり得る。宿主細胞はまた、いかなる検出可能な核酸材料も含有しないウイルスカプシドも産生し得る。これらカプシドは、「空」または「空カプシド」と呼ばれる。完全カプシドは、SEC-HPLCによって決定されるA260/A280比に基づいて空カプシドから区別され得、SEC-HPLCでは、A260/A280比は、分析的な超遠心分離によって分析されたカプシド(すなわち、完全、中間体、および空)に対して事前に較正されている。カプシドを特徴付けするための当技術分野において公知の他の方法としては、CryoTEM、キャピラリー等電点電気泳動、および電荷検出質量分析が含まれる。空および完全AAV9カプシドでは、約6.2および約5.8の計算された等電点がそれぞれ報告されている(Venkatakrishnanら(2013)J.Virology 87.9:4974~4984)。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「遺伝子」は、転写および翻訳された後の特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードし得る少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを指す。「遺伝子移入」または「遺伝子送達」は、外来DNAを宿主細胞に確実に挿入するための方法または系を指す。このような方法は、組み込まれていない移入DNAの一過性発現、移入されたレプリコン(例えばエピソーム)染色体外での複製および発現、ならびに/または宿主細胞のゲノムDNAへの移入遺伝物質の組み込みを生じさせ得る。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「同一性」または「~に同一」は、ポリマー分子間、例えば核酸分子(例えばDNA分子および/もしくはRNA分子)間、ならびに/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。「同一性」は、コンピュータプログラムの特定の数学モデル(すなわち「アルゴリズム」)によって行われるギャップアラインメントでの、2つ以上の配列の間の同一マッチのパーセントの尺度である。
【0046】
一部の実施形態において、ポリマー分子は、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であれば、互いに「実質的に同一」であると見なされる。
【0047】
2つの核酸配列またはポリペプチド配列のパーセント同一性の計算は、例えば、最適比較の目的で2つの配列をアラインすることによって行うことができる(例えば、最適なアラインメントのためにギャップを第1および第2の配列の一方または両方に導入することができ、また、同一でない配列は比較目的では無視してよい)。ある種の実施形態において、比較目的でアラインされる配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%である。対応する位置にあるヌクレオチドが次いで比較される。第1の配列における位置に、第2の配列における対応する位置と同じ残基(例えばヌクレオチドまたはアミノ酸)が存在する場合、分子はその位置で同一である。2つの配列の間のパーセント同一性は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮した、配列が共有する同一の位置の数の関数である。2つの配列の間の配列比較およびパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して行うことができる。
【0048】
パーセント同一性を決定するために、配列を、ワールドワイドウェブのncbi.nlm.nih.gov/BLAST/で入手可能なBLASTを含む方法およびコンピュータプログラムを使用してアラインすることができる。他のアラインメントプログラムとしては、バイオインフォマティクスソフトウェア(DNASTAR(登録商標),Inc.、Madison、WI)のLasergene(登録商標)スイートのMegAlign(登録商標)プログラムが含まれる。別のアラインメントアルゴリズムは、マディソン、ウィスコンシン州、USAのGenetics Computing Group(GCG)パッケージで入手可能なFASTAである。アラインメントのための他の技術は、Metods in Enzymology、第266巻:Computer Methods for Macromolecular Sequence Analysis(1996)、Doolittle編、Academic Press, Inc.において記載されている。特に興味深いものは、配列内のギャップを可能にするアラインメントプログラムである。Smith-Watermanは、配列アラインメントにおけるギャップを可能にする1つのタイプのアルゴリズムである。Meth.Mol.Biol.70:173~187(1997)を参照されたい。また、配列をアラインするために、Needleman and Wunschアラインメント法を使用するGAPプログラムを利用することができる。J.Mol.Biol.48:443~453(1970)を参照されたい。
【0049】
また、配列同一性を決定するために、SmithおよびWaterman(1981、Advances in Applied Mathematics 2:482~489)の局所的相同性アルゴリズムを使用するBestFitプログラムも有意義である。ギャップ生成ペナルティは一般に1から5の範囲、通常は2から4の範囲であり、一部の実施形態においては3である。ギャップ伸長ペナルティは一般に約0.01から0.20の範囲であり、一部の場合において0.10である。プログラムは、比較するためにインプットされる配列によって決定されるデフォルトパラメーターを有する。好ましくは、配列同一性は、プログラムによって決定されるデフォルトパラメーターを使用して決定される。このプログラムは、マディソン、ウィスコンシン州、USAのGenetics Computing Group(GCG)パッケージからも入手可能である。別の有意義なプログラムは、FastDBアルゴリズムである。FastDBは、Current Methods in Sequence Comparison and Analysis, Macromolecule Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applications、127~149、1988、Alan R.Liss,Inc.において記載されている。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「感染力比(infectivity ratio)」または「IR」は、細胞を感染させるために必要なrAAVベクター粒子の数を指す。一部の実施形態において、細胞はインビトロ系にある。一部の実施形態において、細胞は、rAAVベクターでの処置が必要な対象内のまたは当該対象から採取された細胞である。感染力比は、細胞ベースのqPCRアッセイを含む当技術分野において公知のあらゆる方法によって測定することができる。感染力は、50%組織培養感染量(TCID50)として測定することができる。感染力は、容積当たりの感染力単位(IU)、すなわちIU/mL、またはvg単位の存在量に対する感染力単位(IU)、すなわちIU/vgとして表すことができる。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「逆方向末端反復」、「ITR」、「末端反復」、および「TR」は、最も相補的な対称的に配置された配列を含む、AAVウイルスゲノムの末端にあるまたは末端の近傍のパリンドローム末端反復配列を指す。これらITRはフォールディングして、DNA複製の開始の際にプライマーとして機能するT状のヘアピン構造を形成し得る。これらはまた、宿主ゲノムから逃れるための、宿主ゲノムへのウイルスゲノムの組み込みに、および成熟ビリオン内へのウイルス核酸のカプシド形成に必要である。ITRは、ベクターゲノムの複製およびウイルス粒子へのそのパッケージングのためには、シスである必要がある。「5’ITR」は、AAVゲノムの5’末端にあるおよび/または組換え導入遺伝子に対して5’側のITRを指す。「3’ITR」は、AAVゲノムの3’末端にあるおよび/または組換え導入遺伝子に対して3’側のITRを指す。野生型ITRは、およそ145bpの長さである。修飾ITRまたは組換えITRは、野生型AAV ITR配列の断片または一部分を含み得る。当業者なら、連続的なDNA複製ラウンドの際にITR配列がスワップして、その結果5’ITRが3’ITRになり得ること、および逆の場合も同様であることを理解するであろう。一部の実施形態において、少なくとも1つのITRが組換えベクターゲノムの5’および/または3’末端に存在し、その結果、ベクターゲノムがカプシドにパッケージングされて、ベクターゲノムを含むrAAVベクター(本明細書において、「rAAVベクター粒子」または「rAAVウイルス粒子」とも呼ばれる)が産生され得る。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「核酸構築物」は、組換えDNA技術の使用の結果生じる非天然の核酸分子(例えば組換え核酸)を指す。核酸構築物は、天然では見られない様式で組み合わされ配置されている核酸配列のセグメントを含有するように修飾されている、一本鎖または二本鎖の核酸分子である。核酸構築物は、「ベクター」(例えば、プラスミド、rAAVベクターゲノム、発現ベクターなど)、すなわち、外因的に生成されたDNAを宿主細胞に送達するように設計された核酸分子であり得る。
【0053】
本明細書において使用される場合、用語「純度パーセント」、「純度%」は、無傷のカプシド、すなわち完全カプシド、空カプシド、および中間カプシドを含む溶液の純度を指す。純度パーセントは、逆相HPLC、非還元条件(RP-HPLC、NR)を含む、当技術分野において公知の方法によって決定される。溶液中に存在するカプシドに因る、RP-HPLC、NRによって作成されたクロマトグラム吸光度曲線下面積は、吸光度曲線下面積全体に対するパーセンテージとして表される。純度パーセントはまた、SDS-PAGEまたはキャピラリー電気泳動によっても測定され得る。
【0054】
本明細書において使用される場合、用語「カプシド純度パーセント」または「カプシド純度%」は、個々のカプシドポリペプチド、すなわち、VP1、VP2、およびVP3の純度の評価を指す。一部の実施形態において、VP1、VP2、およびVP3の各々の純度は、CGEによって還元条件下で評価される。一部の実施形態において、VP1、VP2、およびVP3の各々の純度は、RP-HPLCによって還元条件下で評価される。
【0055】
本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容できる」および「生理学的に許容できる」は、1つもしくは複数の投与経路、インビボ送達、または接触に適した、生物学的に許容できる調合物、気体、液体、もしくは固体、またはこれらの混合物に言及したものである。「薬学的に許容できる賦形剤」(媒体、添加物)は、有効用量の採用された活性成分を提供するために対象に安全に投与され得るものである。本明細書において使用される用語「賦形剤」または「担体」は、薬剤のための希釈剤、媒体、防腐剤、結合剤、または安定剤として一般に使用される、不活性物質を指す。本明細書において使用される場合、用語「希釈剤」は、薬学的に許容できる(ヒトへの投与に安全かつ無毒な)溶媒を指し、本明細書における液体調合物の調製に有用である。典型的な希釈剤としては、限定はしないが、注射用の滅菌水および静菌水(BWFI)が含まれる。
【0056】
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、ポリマー形態の、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチド、または、修飾形態のいずれかのタイプのヌクレオチドを指し、また、一本鎖または二本鎖形態であり得る。「ポリヌクレオチド」配列または「核酸」配列は、別段の特定がない限り、その相補体を包含する。本明細書において使用される場合、用語「単離されたポリヌクレオチド」、「単離された核酸」、または「単離された組換え核酸」は、その由来源または派生源に基づいて以下の1つから3つのことを有する、ゲノム由来、cDNA由来、もしくは合成由来のポリヌクレオチド、または一部のこれらの組み合わせを意味する:(1)天然で「単離されたポリヌクレオチド」と共に見られるポリヌクレオチドを、全くもしくはその一部分も伴わない、(2)それが天然で連結していないポリヌクレオチドに、作動可能に連結している、または(3)天然では、より大きな配列の一部としては存在しない。
【0057】
本明細書において使用される場合、用語「組換え」は、クローニングステップ、制限ステップ、もしくはライゲーションステップの様々な組み合わせ(例えば、それに含まれるポリヌクレオチドもしくはポリペプチドに関する)、および/または天然で見られる生成物と異なる構築物を生じさせる他の手順の産物である、ベクター、ポリヌクレオチド(例えば組換え核酸)、ポリペプチド、または細胞に言及したものである。組換えウイルスまたはベクター(例えばrAAVベクター)は、組換え核酸(例えば、導入遺伝子および導入遺伝子の発現のための1つまたは複数の調節エレメントを含む核酸)を含むベクターゲノムを含む。これらの用語はそれぞれ、オリジナルのポリヌクレオチド構築物の複製物、およびオリジナルのウイルス構築物の子孫を含む。
【0058】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、生物、例えば哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト哺乳動物、非ヒト霊長類、霊長類、実験動物、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、ネコ、イヌ)を指す。一部の実施形態において、ヒト対象は、成人、青年期、または小児の対象である。一部の実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態、例えば、本明細書において提供されているように処置され得る疾患、障害、または状態に罹患している。一部の実施形態において、対象は、欠損または機能障害のある銅輸送ATPase 2に伴う疾患、障害、または状態、例えばウィルソン病に罹患している。一部の実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態に罹患しやすい。一部の実施形態において、罹患しやすい対象は、疾患、障害、または状態を発症するリスクの増大を示す傾向があるおよび/または示す(参照対象または参照集団で見られる平均リスクと比較して)。一部の実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態の1つまたは複数の症候を提示する。一部の実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態の特定の症候(例えば疾患の臨床的兆候)も特徴も提示しない。一部の実施形態において、対象は、疾患、障害、または状態のいかなる症候も特徴も提示しない。一部の実施形態において、対象は、ヒト患者である。一部の実施形態において、対象は、診断および/または治療が行われているおよび/または行われた(例えば、ウィルソン病のための遺伝子療法)個体である。一部の実施形態において、対象は、ウィルソン病を有するヒト患者である。
【0059】
本明細書において使用される場合、用語「実質的な」または「実質的に」は、目的の特徴または特性の完全なまたはほぼ完全な範囲または程度の表示の質的条件を指す。当業者なら、生物学的および化学的現象が完了することおよび/または完全性もしくは達成もしくは絶対的結果まで進むことは仮にあっても稀であることを理解するであろう。用語「実質的な」または「実質的に」は、それ故、多くの生物学的および化学的現象に固有の完全性の潜在的欠如を表すために、本明細書において使用される。
【0060】
本明細書において使用される場合、用語「治療用ポリペプチド」は、標的細胞(例えば単離細胞)または生物(例えば対象)におけるタンパク質の不在または欠陥の結果生じる症候を軽減し得るまたは低減させ得る、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質(例えば、酵素、構造タンパク質、膜貫通タンパク質、輸送タンパク質)である。導入遺伝子によってコードされる治療用ポリペプチドまたはタンパク質は、対象に、例えば、遺伝的欠陥を正常化するため、発現または機能に関連する遺伝子の欠乏を正常化するための利益を付与するものである。同様に、「治療用導入遺伝子」は、治療用ポリペプチドをコードする導入遺伝子である。一部の実施形態において、宿主細胞において発現される治療用ポリペプチドは、導入遺伝子(すなわち、宿主細胞に導入されている外因性核酸)から発現される酵素である。一部の実施形態において、治療用ポリペプチドは、肝細胞に形質導入された治療用導入遺伝子から発現される銅輸送ATPase 2タンパク質またはその断片である。
【0061】
本明細書において使用される場合、用語「導入遺伝子」は、宿主細胞、標的細胞、または生物(例えば対象)への送達および/またはこれらにおける発現のための、あらゆる異種ポリヌクレオチドを意味するために使用される。このような「導入遺伝子」は、ベクター(例えばrAAVベクター)を使用して宿主細胞、標的細胞、または生物に送達され得る。導入遺伝子は、プロモーターなどの制御配列に作動可能に連結している場合がある。当業者なら、発現制御配列が、宿主細胞、標的細胞、または生物における導入遺伝子の発現を促進する能力に基づいて選択され得ることを理解するであろう。一般に、導入遺伝子は、天然で導入遺伝子に伴う内因性プロモーターに作動可能に連結している場合があるが、より典型的には、導入遺伝子は、導入遺伝子が天然では伴わないプロモーターに作動可能に連結している。導入遺伝子の例は、治療用ポリペプチド、例えば銅輸送ATPase 2ポリペプチド、またはその断片をコードする核酸であり、典型的なプロモーターは、銅輸送ATPase 2ポリペプチドをコードするヌクレオチドに天然では作動可能に連結していないものである。このような非内因性プロモーターとしては、当技術分野において公知の多くの他のものの中でも、α1-アンチトリプシン(AAT)プロモーター、AATプロモーターの一部分、または肝臓特異的なプロモーターが含まれ得る。一部の実施形態において、AATプロモーターの一部分は、共に参照によって本明細書に組み込まれるWO2016/097218およびWO2016/097219において開示されている最小のAATプロモーターである。
【0062】
本明細書において使用される場合、用語「処置」は、有利なまたは望ましい臨床結果を得るためのアプローチを指す。本開示の目的では、有利なまたは望ましい臨床結果としては、限定はしないが、以下の1つまたは複数が含まれる:銅代謝の回復(例えば、便および腎臓での銅の排出の増大、血清中の銅の減少、ならびに肝銅の減少によって測定される)、血清中セルロプラスミンレベルの増大、尿中の銅の減少、肝銅の減少、肝臓損傷の好転(例えば、肝機能および酵素パラメーターの正常化)、亜鉛塩での処置および/またはキレート化療法が低減することまたは不要であること、正常上限より低い/正常上限に等しい血清中アラニントランスアミナーゼレベル、正常上限より低い/正常上限に等しい血清中アスパラギン酸トランスアミナーゼレベル、ならびに神経学的症候の減少。
【0063】
本明細書において使用される場合、用語「ベクター」は、プラスミド、ウイルス(例えばrAAV)、コスミド、または、核酸(例えば組換え核酸)の挿入もしくは組み込みによって操作され得る他の媒体を指す。ベクターは、例えば、細胞に核酸を導入/移入するため、挿入された核酸を細胞内で転写または翻訳するための遺伝子操作(例えばクローニングベクター)を含む、様々な目的で使用することができる。一部の実施形態において、ベクターの核酸配列は、少なくとも、細胞内で増殖するための複製起点を含有する。一部の実施形態において、ベクターの核酸は、異種核酸配列、発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー)、選択マーカー(例えば抗生物質耐性)、ポリアデノシン(ポリA)シグナル配列、および/またはITRを含む。一部の実施形態において、宿主細胞に送達されると、核酸配列は増殖する。一部の実施形態において、インビトロまたはインビボで宿主細胞に送達されると、細胞は、異種核酸配列(例えば導入遺伝子)によってコードされるポリペプチドを発現する。一部の実施形態において、宿主細胞に送達されると、核酸配列または核酸配列の一部分は、カプシドにパッケージングされる。宿主細胞は、単離細胞または宿主生物内の細胞であり得る。ポリペプチドまたはタンパク質をコードする核酸配列(例えば導入遺伝子)に加えて、さらなる配列(例えば調節配列)が同じベクター内に(すなわち、遺伝子に対してシスで)存在し得、遺伝子に隣接し得る。一部の実施形態において、調節配列は別の(例えば第2の)ベクター上に存在し得、当該ベクターは、遺伝子の発現を調節するためにトランスで作用する。プラスミドベクターは、本明細書において、「発現ベクター」と呼ばれ得る。
【0064】
本明細書において使用される場合、用語「ベクターゲノム」は、rAAVベクターを形成するためにAAVカプシドにパッケージング/カプシド形成され得る核酸を指すが、必ずしもパッケージング/カプシド形成されなくてよい。典型的には、ベクターゲノムは、異種ポリヌクレオチド配列(例えば、導入遺伝子、調節エレメントなど)および少なくとも1つのITRを含む。組換えベクター(例えばrAAVベクター)を構築または製造するために組換えプラスミドが使用されるケースでは、ベクターゲノムは、プラスミド全体は含まず、むしろ、ウイルスベクターによる送達のための配列のみを含む。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は「プラスミド骨格」と呼ばれ、これは、組換えウイルスベクター産生の広がりに必要なプロセスであるプラスミドのクローニング、選択、および増幅に重要であるが、これ自体は、rAAVベクターにパッケージングもカプシド形成もされない。典型的には、カプシドにパッケージングされる異種配列には、プラスミド骨格から切断されると異種配列がカプシドにパッケージングされるように、ITRが隣接している。
【0065】
本明細書において使用される場合、用語「ウイルス粒子/mL」または「vp/mL」は、医薬調合物などの溶液中の無傷のAAVカプシドの数、量、またはレベルを指す。無傷のAAVカプシドとしては、完全カプシド、空カプシド、および中間カプシドが含まれる。vp/mLは、医薬調合物の品質特性として用いられる場合、力価として表され得る。
【0066】
本明細書において使用される場合、用語「ウイルスベクター」は一般に、核酸送達媒体として機能し、その中に(すなわちカプシド内に)ベクターゲノム(例えば、野生型repおよびcapに代わる導入遺伝子を含む)がパッケージングされている、ウイルス粒子を指し、これとしては、AAV血清型およびバリアント(例えばrAAVベクター)を含む、例えばレンチウイルスおよびパルボウイルスが含まれる。本明細書の他の箇所で指摘されているように、組換えウイルスベクターは、repおよび/またはcap遺伝子を有するウイルスゲノムは含まず、むしろ、これらの配列は除去されて、目的の導入遺伝子を有する能力がベクターゲノムにもたらされる。
【0067】
本明細書において使用される場合、用語「粘度」は、「絶対粘度」または「動粘度」であり得る。「絶対粘度」は時として動的粘度または単純粘度と呼ばれるが、流体の流れ抵抗を表現する量である。「動粘度」は、絶対粘度と流体密度との商である。動粘度は、キャピラリー粘度計を使用して流体の抵抗の流れを特徴付ける場合に報告されることが多い。等容積の2つの流体が同一のキャピラリー粘度計内に置かれ、重力によって流れるようにされる場合、粘性流体は、キャピラリーの中を流れるために、より粘性ではない流体よりも長い時間を要する。一方の流体が流れ終わるまでに200秒かかり、別の流体が400秒かかる場合、第2の流体は第1の流体よりも動粘度スケールで2倍粘性である。両流体が同じ密度を有する場合、第2の流体は第1の流体よりも絶対粘度スケールで2倍粘性である。動粘度の大きさはL/Tであり、式中、Lは長さを表し、Tは時間を表す。動粘度のSI単位はm/sである。一般に、動粘度はセンチストーク、cStで表され、これはmm/sに等しい。絶対粘度の大きさはM/L/Tであり、式中、Mは質量を表し、LおよびTは長さおよび時間をそれぞれ表す。絶対粘度のSI単位はPa・sであり、これはkg/m/sに等しい。絶対粘度はセンチポイズ、cPという単位で一般に表され、これはミリパスカル・秒、mPa・sに等しい。
【0068】
別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0069】
本発明の態様または実施形態がマーカッシュグループまたは他の代替的なグルーピングの表現で記載されている場合、本発明は、列挙されたグループ全体を丸ごと包含するだけではなく、グループの各メンバーを個別に、またメイングループの全ての考えられるサブグループも包含し、また、グループメンバーの1つまたは複数が不在のメイングループも包含する。本発明はまた、特許請求の範囲に記載の発明においてグループメンバーのいずれかの1つまたは複数を明確に排除することを想定する。
【0070】
本開示は、rAAVベクターおよび賦形剤を含む医薬組成物を提供する。特に、本開示は、長期保存(例えば6カ月)の間およびストレス条件(例えばせん断(sheer)および凍結/解凍)下で安定な、rAAVベクター、バッファー、塩、凍結保護物質、および界面活性剤を含む医薬組成物を提供する。本開示のこれらの態様の各々は、次の節でさらに論じられる。
【0071】
II.一般的な技術
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当技術分野の技術の範囲内である、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技術を利用する。このような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Sambrookら、1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編、1984);Methods in Molecular Biology、Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis編、1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney編、1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.MatherおよびP.E.Roberts、1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle、J.B.Griffiths、およびD.G.Newell編、1993~1998)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編、1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction(Mullisら編、1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coliganら編、1991);Short Protocols in Molecular Biology(WileyおよびSons、1999);Immunobiology(C.A.JanewayおよびP.Travers、1997);Antibodies(P.Finch、1997);Antibodies:a practical approach(D.Catty.編、IRL Press、1988~1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.ShepherdおよびC.Dean編、Oxford University Press、2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.HarlowおよびD.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1999);The Antibodies(M.ZanettiおよびJ.D.Capra編、Harwood Academic Publishers、1995)などの文献において十分に説明されている。
【0072】
III.AAVおよびrAAV
A.AAV
「アデノ随伴ウイルス」および/または「AAV」は、直鎖状の一本鎖DNAゲノムおよびそのバリアントを有するパルボウイルスを指す。この用語は、別段のことが必要とされる場合を除き、全てのサブタイプ、ならびに天然形態および組換え形態の両方を網羅する。AAVを含むパルボウイルスは、細胞に侵入し、核酸(例えば導入遺伝子)を核に導入することができるため、遺伝子療法ベクターとして有用である。一部の実施形態において、導入された核酸(例えばrAAVベクターゲノム)は環状コンカテマーを形成し、これは、形質導入された細胞の核においてエピソームとして存続する。一部の実施形態において、導入遺伝子は、宿主細胞ゲノム内の特異的部位に、例えばヒト19番染色体上のある部位に挿入される。部位特異的な組み込みは、ランダムな組み込みとは対照的に、予測可能な長期の発現プロファイルをもたらす可能性が高いと考えられている。ヒトゲノムへのAAVの挿入部位は、AAVS1と呼ばれる。細胞に導入されると、核酸によってコードされるポリペプチドは、細胞によって発現され得る。AAVはヒトにおいていかなる病原性疾患にも伴わないため、AAVによって送達される核酸は、ヒト対象における疾患、障害および/または状態を処置するための治療用ポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0073】
標準的なAAV野生型ゲノムは4681塩基を含み(Bernsら(1987)Advances in Virus Research 32:243~307)、また、各末端に、ウイルスのDNA複製起点としておよびパッケージングシグナルとしてシスで機能する末端反復配列(例えば逆方向末端反復(ITR))を含む。ゲノムは、AAV複製(「AAV rep」または「rep」)遺伝子およびカプシド(「AAV cap」または「cap」)遺伝子としてそれぞれ公知の2つの大きなオープンリーディングフレームを含む。AAV repおよびcapはまた、本明細書において、AAVの「パッケージング遺伝子」とも呼ばれる。これらの遺伝子は、ウイルスゲノムの複製およびパッケージングに関与するウイルスタンパク質をコードする。
【0074】
野生型AAVは、3つのタンパク質、VP1、VP2、およびVP3からなる小さな(20~25nm)正二十面体のウイルスカプシドと、当該カプシドを含む60のカプシドタンパク質とを含む。3つのカプシド遺伝子、VP1、VP2、およびVP3は、単一のオープンリーディングフレーム内で互いにオーバーラップしており、選択的スプライシングによってVP1、VP2、およびVP3が産生される(Griegerら(2005)J.Virol.79(15):9933~9944)。単一のP40プロモーターによって、3つ全てのカプシドタンパク質がVP1、VP2、VP3についてそれぞれ約1:1:10の比率で発現され、これが、AAVカプシドの産生を補う。さらに具体的には、VP1は完全長タンパク質であり、VP2およびVP3は、N末端のトランケーションの増大に起因して次第に短くなっている。周知の例は、米国特許第7,906,111号において記載されているAAV9のカプシドであり、当該カプシドにおいて、VP1は、番号123と同定されている配列のアミノ酸残基1から736を含み、VP2は、番号123と同定されている配列のアミノ酸残基138から736を含み、そしてVP3は、番号123と同定されている配列のアミノ酸残基203から736を含む。AAV2カプシドタンパク質配列は、Genbank:VP1(735アミノ酸、Genbank受託番号AAC03780)、VP2(598アミノ酸、Genbank受託番号AAC03778)、およびVP3(533アミノ酸、Genbank受託番号AAC03779)で入手可能である。本明細書において使用される場合、用語「AAV Cap」または「cap」は、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2、および/またはVP3、ならびにこれらのバリアントおよび類似体を指す。
【0075】
カプシド遺伝子の第2のオープンリーディングフレームは、カプシドアセンブリープロセスに必須の、アセンブリー活性化タンパク質(AAP)と呼ばれるアセンブリー因子をコードする(Sonntagら(2011)J.Virol.85(23):12686~12697)。
【0076】
少なくとも4つのウイルスタンパク質、すなわち、それらの見かけの分子量に従って名付けられたRep78、Rep68、Rep52、およびRep40が、AAV rep遺伝子から合成される。本明細書において使用される場合、「AAV rep」または「rep」は、AAV複製タンパク質Rep78、Rep68、Rep52、および/またはRep40、ならびにこれらのバリアントおよび類似体を意味する。本明細書において使用される場合、repおよびcapは、野生型および組換え(例えば修飾されたキメラなど)の両方のrepおよびcap遺伝子、ならびにこれらがコードするポリペプチドを指す。一部の実施形態において、repをコードする核酸は、2つ以上のAAV血清型のヌクレオチドを含む。例えば、repタンパク質をコードする核酸は、AAV2血清型のヌクレオチドおよびAAV3血清型のヌクレオチドを含み得る(Rabinowitzら(2002)J.Virology 76(2):791~801)。
【0077】
複数のAAV血清型が天然で存在し、少なくとも15の野生型血清型(すなわち、AAV1~AAV15)がこれまでヒトから同定されている。天然血清型およびバリアント血清型は、他のAAV血清型と血清学的に異なるタンパク質カプシドを有することによって区別される。天然のおよび非天然のAAV血清型としては、とりわけ、AAVタイプ1(AAV1)、AAVタイプ2(AAV2)、AAVタイプ3A(AAV3A)およびAAVタイプ3B(AAV3B)を含むAAVタイプ3(AAV3)、AAVタイプ4(AAV4)、AAVタイプ5(AAV5)、AAVタイプ6(AAV6)、AAVタイプ7(AAV7)、AAVタイプ8(AAV8)、AAVタイプ9(AAV9)、AAVタイプ10(AAV10)、AAVタイプ12(AAV12)、AAVrh10、AAVrh74(WO2016/210170を参照されたい)、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1(WO2015/013313の配列番号5)、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AAV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAV、AAVタイプ2i8(AAV2i8)、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9が含まれる(例えば、全て参照によって本明細書に組み込まれる、Fieldsら「Virology」第2巻、第69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers);米国特許第7,906,111号;Gaoら(2004)J.Virol.78:6381;Morrisら(2004)Virol.33:375;WO2013/063379;WO2014/194132;WO2015/121501;WO2015/013313を参照されたい)。ヒトCD34+細胞から単離されたAAVバリアントとしては、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15が含まれる(参照によって本明細書に組み込まれる、Smithら(2014)Molecular Therapy 22(9):1625~1634)。
【0078】
血清型の特殊性は、別のAAVと比較した、1つのAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。このような交差反応性の違いは通常、カプシドタンパク質配列および抗原決定基の違いに起因する(例えば、AAV血清型の、VP1、VP2、および/またはVP3配列の違いに起因する)。しかし、一部の天然AAVまたは人工的なAAV突然変異体(例えば組換えAAV)は、現在公知の血清型のいずれとも血清学的な違いを示さない場合がある。これらウイルスはしたがって、対応するタイプのサブグループ、またはより単純にはバリアントAAVであると見なされ得る。したがって、本明細書において使用される場合、用語「血清型」は、血清学的に異なるウイルス、例えばAAVと、血清学的には異ならないが所与の血清型のサブグループまたはバリアントに含まれ得るウイルス、例えばAAVとの両方を指す。
【0079】
公知のAAV血清型のカプシドのアミノ酸配列の包括的なリストおよびアラインメントは、刊行物全体が参照によってここで組み込まれる、Marsicら(2014)Molecular Therapy 22(11):1900~1909、特に補足の図1によって提供されている。
【0080】
様々な血清型のAAVのゲノム配列、ならびに、ネイティブな逆方向末端反復(ITR)、repタンパク質、およびカプシドサブユニットの配列は、当技術分野において公知である。このような配列は、文献またはGenBankなどの公共のデータベースで見ることができる。例えば、その開示が参照によって本明細書に組み込まれる、GenBank受託番号NC_002077(AAV1)、AF063497(AAV1)、NC_001401(AAV2)、AF043303(AAV2)、NC_001729(AAV3)、AF028705.1(AAV3B)、NC_001829(AAV4)、U89790(AAV4)、NC_006152(AAV5)、AF028704(AAV6)、AF513851(AAV7)、AF513852(AAV8)、NC_006261(AAV8)、AY530579(AAV9)、AY631965(AAV10)、AY631966(AAV11)、およびDQ813647(AAV12)を参照されたい。また、例えば、これら全てが参照によってここで本明細書に組み込まれる、Srivistavaら(1983)J.Virology 45:555;Chioriniら(1998)J.Virology 71:6823;Chioriniら(1999)J.Virology 73:1309;Bantel-Schaalら(1999)J.Virology 73:939;Xiaoら(1999)J.Virology 73:3994;Muramatsuら(1996)Virology 221:208;Shadeら(1986)J.Virol.58:921;Gaoら(2002)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 99:11854;Morisら(2004)Virology 33:375~383;国際特許公開WO00/28061、WO99/61601、WO98/11244、WO2013/063379、WO2014/194132、WO2015/121501、ならびに米国特許第6,156,303号および米国特許第7,906,111号を参照されたい。
【0081】
本明細書において開示されている医薬組成物の一実施形態において、rAAVベクターは、配列番号10のアミノ酸配列を含むAAV3B VP1ポリペプチド(本明細書において「カプシドタンパク質」とも呼ばれる)を含む。AAV3B VP2およびVP3は、配列番号10(GenBank受託番号AAB95452.1)のアミノ酸138から736辺りおよびアミノ酸203から736辺りを包含する。本明細書において開示されている医薬組成物の一実施形態において、rAAVベクターは、配列番号11の核酸配列(GenBank受託番号AF028705.1のヌクレオチド2208~4418)によってコードされるAAV3B VP1ポリペプチド(本明細書において「カプシドタンパク質」とも呼ばれる)を含む。
【0082】
B.組換えAAV(rAAV)
「組換えアデノ随伴ウイルス」または「rAAV」(本明細書において「rAAVベクター」、「rAAVウイルス粒子」、および/または「rAAVベクター粒子」とも呼ばれる)は、別段の具体的な指摘がない限り、ベクターゲノムを含むAAVカプシドを指す。ベクターゲノムは、天然のAAVに少なくとも部分的に由来していないポリヌクレオチド配列(例えば、野生型AAVには存在しない異種ポリヌクレオチド)を含み、当該ベクターゲノムにおいて、野生型AAVゲノムのrepおよび/またはcap遺伝子がベクターゲノムから除去されている。AAV由来のITRがベクターゲノムに付加されているか、またはベクターゲノムにおいて維持されている。それ故、rAAVベクターという用語は、カプシドを含むが完全なAAVゲノムは含まないrAAVウイルス粒子を包含し、代わりに組換えウイルス粒子は、異種の、すなわちカプシド内に元々は存在しない、核酸、ベクターゲノムを含み得る。したがって、「rAAVベクターゲノム」(または「ベクターゲノム」)は、必ずではないがAAVカプシド内に含有され得る、異種ポリヌクレオチド配列(少なくとも1つのITRを含む)を指す。rAAVベクターゲノムは、二本鎖(dsAAV)、一本鎖(ssAAV)、または自己相補的(scAAV)であり得る。典型的には、ベクターゲノムは、治療用導入遺伝子、例えば、配列番号2で示されるATP7B遺伝子、またはその断片をコードすることが多い、異種核酸を含む。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、配列番号1で示される銅輸送ATPase 2タンパク質またはその断片をコードする異種核酸を含む。
【0083】
rAAVベクターおよび上記で示した用語は、組換えではない「AAVウイルス粒子」または「AAVウイルス」から区別され、repおよびcap遺伝子をコードするウイルスゲノムを含有し、また、AAVウイルスは、アデノウイルスおよび/もしくは単純ヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスならびに/またはこれらに由来する所要のヘルパー遺伝子も含む細胞内に存在する場合に、複製し得る。したがって、rAAVベクターの産生は必ず、組換えDNA技術を使用する組換えベクターゲノムの産生を含み、この場合、組換えベクターゲノムはAAVカプシド内に含有されて、rAAVベクターが形成される。
【0084】
本開示は、rAAVベクターを含む医薬組成物、およびそれを使用する方法を提供する。一部の実施形態において、rAAVベクターはAAV3Bカプシドを含み、場合により、治療的処置の標的であるポリペプチドをコードする導入遺伝子(例えば、ウィルソン病を処置するための銅輸送ATPase 2またはその断片をコードする核酸、例えば配列番号2)を含む。対象(例えば患者)へのrAAVベクターの送達または投与によって、コードされるタンパク質およびペプチドが対象に提供される。こうして、rAAVベクターは、疾患、障害、および/または状態の処置のために発現させるための異種ポリヌクレオチドを移入/送達するために使用することができる。一部の実施形態において、rAAVベクターは、ATP7Bのコピーまたはその断片(例えば、MBS1~4のコード領域が欠失したATP7B)を肝細胞に移入し、これが、ウィルソン病を処置するための短縮された銅輸送ATPase 2として発現される。
【0085】
rAAVベクターゲノムは通常、ウイルスのrepおよびcap遺伝子に代わる異種核酸配列に対してシスの、130から145塩基のITRを保持している。このようなITRは、AAVゲノムの複製およびパッケージングを仲介するため、組換えAAVベクターの産生に必要である。しかし、修飾AAV ITR、および部分的にまたは完全に合成の配列を含む非AAV末端反復もまた、この目的を果たし得る。ITRはヘアピン構造を形成し、感染後の相補的DNA鎖の宿主細胞介在性の合成のためのプライマーとして例えば働くように機能する。ITRはまた、ウイルスのパッケージング、組み込みなどにおいても役割を演じる。ITRは、AAVゲノムの複製およびrAAVベクターへのパッケージングのためにシスで必要な唯一のAAVウイルスエレメントである。rAAVベクターゲノムは、異種配列(例えば、目的の遺伝子をコードする導入遺伝子)を含むベクターゲノムの5’および3’末端に通常ある、2つのITRを含んでいてもよい。5’および3’ITRは共に同じ配列を含み得るか、または各々が、異なる配列(例えば、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8)を含み得る。一部の実施形態において、本開示のrAAVベクターゲノムは、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなるITRを含む。一部の実施形態において、本開示のrAAVベクターゲノムは、配列番号5~8のいずれか一つに80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、ITRを含む。AAV ITRは、限定はしないが、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、もしくは11、またはあらゆる他のAAVを含む、あらゆるAAVに由来し得る。
【0086】
本開示のrAAVベクターゲノムは、カプシドの血清型(例えばAAV3Bまたはその他)と異なるAAV血清型(例えば、野生型AAV2、その断片またはバリアント)に由来するITRを含み得る。1つの血清型に由来する少なくとも1つのITRを含むが異なる血清型に由来するカプシドを含む、このようなrAAVベクターゲノムは、ハイブリッドウイルスベクターと呼ぶことができる(米国特許第7,172,893号を参照されたい)。rAAV ITRは、野生型ITR配列全体を含み得るか、または、そのバリアント、断片、もしくは修飾物であり得るが、機能性は保持している。
【0087】
導入遺伝子および少なくとも1つのITRに加えて、ベクターゲノムはまた、様々な調節エレメントまたは制御エレメントも含み得る。典型的には、調節エレメントは、作動可能に連結しているポリヌクレオチド(例えば導入遺伝子)の発現に影響する核酸配列である。遺伝子発現に有用な調節エレメントの正確な性質は、生物ごとおよび細胞型ごとに異なり、これとしては例えば、異種ポリヌクレオチドの適切な転写および翻訳を促進することを目的とした、プロモーター、エンハンサー、イントロンなどが含まれる。調節性の制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージの安定性などのレベルで行われ得る。
【0088】
一部の実施形態において、本開示の医薬組成物は、少なくとも1つのITR、導入遺伝子、プロモーター、およびポリアデニル化シグナル(ポリA)配列を含む組換え核酸を含むrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、導入遺伝子は、銅輸送ATPase 2またはその断片をコードする。一部の実施形態において、導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる銅輸送ATPase 2またはその断片をコードする。一部の実施形態において、導入遺伝子は、配列番号1に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一なアミノ酸を含む、銅輸送ATPase 2またはその断片をコードする。
【0089】
一部の実施形態において、ATP7B導入遺伝子は、WO2016/097219(配列番号6のヌクレオチド473~3580;参照によって本明細書に組み込まれる)において開示されている。一部の実施形態において、導入遺伝子は、銅輸送ATPase 2またはその断片をコードする配列番号2の核酸を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、導入遺伝子は、ATP7B遺伝子またはその断片(例えば配列番号2)である。一部の実施形態において、導入遺伝子は、配列番号2の核酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む。
【0090】
一部の実施形態において、プロモーターは、最小のAATプロモーターである。一部の実施形態において、最小のAATプロモーターは、WO2016/097219(配列番号1のヌクレオチド156~460;参照によって本明細書に組み込まれる)において開示されている。一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、プロモーターは、配列番号3の核酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む。
【0091】
一部の実施形態において、ポリAシグナル配列は、ウサギβ-グロビン遺伝子に由来する。一部の実施形態において、ポリAシグナル配列は、WO2016/097219(配列番号1のヌクレオチド4877~4932;参照によって本明細書に組み込まれる)において開示されている。一部の実施形態において、ポリAシグナル配列は、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなる。一部の実施形態において、ポリAシグナル配列は、配列番号4の核酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む。
【0092】
一部の実施形態において、典型的なベクターゲノムは、銅輸送ATPase 2をコードする核酸、最小のAATプロモーター、ポリA配列、および2つのITR配列を含む。一部の実施形態において、ベクターゲノムは、金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、および/または配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含む最小のAATプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリA、ならびに2つのAAV2 ITR配列を含む。一部の実施形態において、ITR配列は、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含む。
【0093】
rAAVベクターのウイルスカプシドは、限定はしないが、上記の野生型AAVおよびバリアントAAVのいずれかであり得る。一部の実施形態において、ウイルスカプシドポリペプチドは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択される、AAV血清型のものである。
【0094】
一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、AAV3Bカプシドである。一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、GenBank受託番号AF028705.1の配列の少なくとも一部分(例えばヌクレオチド2208~4418)によってコードされるポリペプチドを含む。一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、配列番号11を含むかまたはこれからなる核酸配列によってコードされるポリペプチドを含む。一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、配列番号10の核酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列によってコードされるポリペプチドを含む。
【0095】
一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、GenBank受託番号AAB95452.1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなるポリペプチドを含む。一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなるポリペプチドを含む。一部の実施形態において、rAAVベクターのウイルスカプシドは、配列番号10のアミノ酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一なポリペプチドである。
【0096】
一部の実施形態において、rAAVベクターは、i)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードするおよび/または配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含む最小のAATプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリA、ならびに、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含んでいてもよい2つのAAV2 ITR配列を含むベクターゲノムと、ii)AAV3Bカプシド(例えば配列番号10のアミノ酸配列)を含むカプシドとを含む。
【0097】
一部の実施形態において、本開示は、インビボ遺伝子療法のための、rAAVベクターにおいて使用するための祖先AAVベクターの使用を提供する。具体的には、インシリコ由来の配列をデノボ合成し、生物学的活性について特徴付けすることができる。祖先配列の予測および合成は、rAAVベクター内へのアセンブリーに加えて、その内容が参照によって本明細書に組み込まれるWO2015/054653において記載されている方法を使用して行うことができる。特に、祖先ウイルスの配列からアセンブリーされたrAAVベクターは、現代のウイルスまたはその一部分と比較して、ヒト集団における既存の免疫性に対する感受性の低減を示し得る。
【0098】
一部の実施形態において、2つ以上のAAV血清型(例えば、野生型AAV血清型、バリアントAAV血清型)に由来するヌクレオチド配列によってコードされるカプシドタンパク質を含むrAAVベクターは、「キメラベクター」または「キメラカプシド」と呼ばれる(その開示全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,491,907号を参照されたい)。一部の実施形態において、キメラカプシドタンパク質は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超えるAAV血清型に由来する核酸配列によってコードされる。一部の実施形態において、組換えAAVベクターは、例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAVrh74、AAVrh10、AAV2i8、またはこれらのバリアントに由来するカプシド配列を含み、前述のAAV血清型のいずれかのアミノ酸の組み合わせを含むキメラカプシドタンパク質を生じさせる(Rabinowitzら(2002)J.Virology 76(2):791~801を参照されたい)。あるいは、キメラカプシドは、1つの血清型のVP1、異なる血清型のVP2、さらに異なる血清型のVP3、およびこれらの組み合わせの混合物を含み得る。例えばキメラウイルスカプシドは、AAV1 capタンパク質またはサブユニット、および少なくとも1つのAAV2 capタンパク質またはサブユニットを含み得る。キメラカプシドは、1つまたは複数のB19 capサブユニットを有するAAVカプシドを例えば含み得、例えば、AAV capタンパク質またはサブユニットが、B19 capタンパク質またはサブユニットによって置き換えられていてもよい。例えば、一実施形態において、AAVカプシドのVP3サブユニットは、B19のVP2サブユニットによって置き換えられていてよい。
【0099】
一部の実施形態において、キメラベクターは、改変された向性または特定の組織型もしくは細胞型に対する向性を示すように変更されている。用語「向性」は、ある種の細胞型もしくは組織型へのウイルスの優先的な侵入、および/または、ある種の細胞型もしくは組織型への侵入を促進する細胞表面との優先的な相互作用を指す。AAVの向性は一般に、異なるウイルスカプシドタンパク質とそれらの同族細胞受容体との間の特異的相互作用によって決定される(Lykkenら(2018)J.Neurodev.Disord.10:16)。好ましくは、ウイルスまたはウイルスベクターが細胞に侵入すると、ベクターゲノム(例えばrAAVベクターゲノム)が有する配列(例えば、導入遺伝子などの異種配列)が発現する。
【0100】
「向性プロファイル」は、1つまたは複数の標的細胞、標的組織、および/または標的器官への形質導入のパターンを指す。例えば、AAVカプシドは、筋肉細胞への効率的な形質導入を特徴とする向性プロファイルを有し得、例えば脳細胞への形質導入はわずかにすぎない。
【0101】
本明細書において記載されるrAAVベクターは、哺乳動物細胞AAV産生系(例えば、293TまたはHEK293細胞に基づくもの)ならびに昆虫細胞AAV産生系(例えば、sf9昆虫細胞に基づくものおよび/またはバキュロウイルスヘルパーベクターを使用するもの)などの任意の公知の産生系によって得ることができる。
【0102】
rAAVベクターは、当技術分野における標準的な方法によって、例えば、任意の数のカラムクロマトグラフィー方法(例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー)または塩化セシウム勾配によって、精製することができる。rAAVベクターを精製するための方法は当技術分野において公知であり、当該方法としては、Clarkら(1999)Human Gene Therapy 10(6):1031~1039;Schenppら(2002)Methods Mol.Med.69:427~443、米国特許第6,566,118号、およびWO98/09657において記載されている方法が含まれる。
【0103】
rAAVベクターが産生および精製された後、これらは、ウィルソン病を有するヒト対象などの対象に投与するための組成物を調製するために力価測定され得る(例えば、サンプル中のrAAVベクターの量が定量され得る)。rAAVベクターの力価測定は、当技術分野において公知の方法を使用して行うことができる。
【0104】
C.典型的な組換えAAV
典型的な実施形態において、本開示は、例えば正常胆管および/または銅の便排出の回復、ならびにセルロプラスミンへの銅の積載の正常化のための、ウィルソン病(WD)を処置するための、rAAVベクターを含む改良された医薬組成物を提供する。rAAVベクターは、AAV3Bカプシド、ならびに、AATプロモーターに隣接するAAV2 ITRを有するベクターゲノム、MBS1~4が欠失したATP7B導入遺伝子、およびポリAシグナル配列を含む(例えば、各々が参照によって本明細書に組み込まれるWO2016/097219およびWO2016/097218を参照されたい)。
【0105】
一部の実施形態において、rAAVベクターは、i)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードするおよび/または配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸、配列番号3の核酸配列を含む最小のAATプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリA、ならびに、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含んでいてもよい2つのAAV2 ITR配列を含むベクターゲノムと、ii)AAV3Bカプシドを含むカプシドとを含む。一部の実施形態において、AAV3Bカプシドポリペプチドは、配列番号10で明記され、GenBank受託番号AAB95452.1で、かつ/または、配列番号11で明記され、GenBank受託番号AF028705.1のヌクレオチド2208~4418のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。
【0106】
IV.rAAVベクターの調合物
精製されると、AAV調製物は、所望の成分を含む組成物となるように、本明細書において記載される通りに、例えば、タンジェンシャルフロー濾過、撹拌セルを使用するノーマルフロー濾過、ゲル濾過、透析、カラムクロマトグラフィー、および/または脱塩カラムによるバッファー交換によって調合することができる。実例として、精製されたウイルス調製物は、まず限外濾過(UF)によって、次いでダイアフィルトレーションによって濃縮することができる。
【0107】
調合物は、緩衝剤、二価陽イオンを生じさせる塩、抗凍結剤、および界面活性剤を含み得る。本明細書において使用される場合、「バッファー」は、典型的にはその酸-塩基コンジュゲート成分の作用によって液体のrAAVベクター調合物をpHの変化に耐えるようにする、添加される組成物を指す。バッファーの濃度に言及がある場合、記述された濃度は、バッファーの遊離酸または遊離塩基形態のモル濃度を表すことを意図する。AAVのpIはおよそ6.3であり、したがって、それより高いpHが、rAAVベクターを含む調合物に最適である。rAAVベクター、特にrAAV3Bベクターを含む調合物のpHが低下していくと、ベクターにおける立体構造の変化が生じ得、これによって、品質特性パラメーターの変化によって示されるように、その安定性が低減する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの一部のバッファーのpHは凍結すると低下していくことが当技術分野において公知である。他のバッファーのpHは凍結した場合にこのような変化を示さず、そのため、このようなバッファー(例えばTris)は、保存の際に凍結されるであろう、rAAVベクターを含む調合物に好ましい。
【0108】
緩衝剤としては、例えば、酢酸塩、コハク酸塩(例えばコハク酸二ナトリウム六水和物)、コハク酸、グルコン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、酢酸、リン酸塩、リン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸塩、マレイン酸、グリシン、乳酸塩、乳酸、重炭酸塩、炭酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、エデト酸塩、イミダゾール、Tris(例えば、Tris塩基、Tris HCL、またはその両方)、およびこれらの混合物が含まれ得る。一部の実施形態において、rAAVベクターを含む組成物は、Trisを含む。
【0109】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物中のバッファー(例えばTris)の濃度は、約1mMから約500mMのTris、例えば、約1mMから約450mM、約1mMから約400mM、約1mMから約350mM、約1mMから約300mM、約1mMから約250mM、約1mMから約200mM、約1mMから約150mM、約1mMから約100mM、約1mMから75mM、約1mMから50mM、約1mMから25mM、約5mMから約30mM、約10mMから約30mM、または約14mMから約26mMである。
【0110】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物中のバッファー(例えばTris)の濃度は、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、約100mM、約125mM、約150mM、約175mM、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、約300mM、約325mM、約350mM、約375mM、約400mM、約425mM、約450mM、約475mM、または約500mMである。一部の実施形態において、rAAV(例えばAAV3B)ベクターを含む調合物中のTrisの濃度は、約20mMである。
【0111】
本明細書において使用される場合、用語「二価陽イオン」は、原子価が+2の陽イオンを指す。このタイプのイオンは、陰イオンと2つの化学結合を形成し得る。二価陽イオンは、例えばMgCl、MgSO、およびCaClを含む塩として調合物中に供給され得る。rAAVベクター、特にrAAV3Bベクターを含む調合物における二価陽イオンによって、調合物が顕著に高張になることなく高いイオン強度を有することが可能となる。いかなる特定の理論にも拘束されることは望まないが、調合物中のMgClなどの塩は、AAVカプシド上の正の電荷パッチ、特に、AAV3BカプシドのVP3電荷パッチを安定化させる。一部の実施形態において、一価陽イオンは、例えばNaCl、NaSO、または酢酸ナトリウムを含む塩として調合物中に供給され得る。
【0112】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物中の二価陽イオンを供給する塩(例えばMgCl)の濃度は、約1mMから約500mM、例えば、約1mMから約450mM、約1mMから約400mM、約1mMから約350mM、約1mMから約300mM、約1mMから約250mM、約1mMから約200mM、約1mMから約150mM、約1mMから約100mM、約10mMから約450mM、約10mMから約400mM、約10mMから約350mM、約10mMから約300mM、約10mMから約250mM、約10mMから約200mM、約10mMから約175mM、約10mMから約150mM、約10mMから約125mM、約50mMから約450mM、約50mMから約400mM、約50mMから約350mM、約50mMから約300mM、約50mMから約250mM、約50mMから約200mM、約50mMから約150mMまたは約75mMから約450mM、約75mMから約400mM、約75mMから約350mM、約75mMから約300mM、約75mMから約250mM、約75mMから約200mM、約75mMから約150mM、約75mMから約125mM、または約70mMから約130mMである。
【0113】
一部の実施形態において、調合物中の塩(例えばMgCl)の濃度は、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約91mM、約92mM、約93mM、約94mM、約95mM、約96mM、約97mM、約98mM、約99mM、約100mM、約101mM、約102mM、約103mM、約104mM、約105mM、約106mM、約107mM、約108mM、約109mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、約300mM、約325mM、約350mM、約375mM、約400mM、約425mM、約450mM、約475mM、または約500mMである。一部の実施形態において、rAAV(例えばrAAV3B)ベクターを含む調合物中のMgClの濃度は、約100mMである。
【0114】
本明細書において使用される場合、用語「凍結保護物質」は、タンパク質(例えばrAAVベクター)と組み合わされると、凍結およびその後の保存の際のタンパク質の生理化学的不安定性およびタンパク質の分解を顕著に予防するまたは低減させる分子を指す。一部の実施形態において、凍結保護物質は、液体組成物の凍結の際の氷晶の形成を予防するように機能する。調合物中の凍結保護物質はまた、浸透圧調整剤または凍結乾燥保護物質としても機能し得る。一部の実施形態において、凍結保護物質は、rAAVベクターのガラス転移温度(Tg’)を低減させ得、その結果、rAAVベクターは約-70℃ではなく約-40℃で保存され得る。一部の実施形態において、rAAVベクターのガラス転移温度(Tg’)は、変調示差走査熱量測定(mDSC)によって測定される。凍結保護物質は、例えば、糖(例えば、デキストロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトース、マンノース、ソルボース、スクロース、トレハロース、キシロース)、糖アルコール(例えば、エリスリトール、エチレングリコール、グリセロール、イソマルト、イノシトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール)、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、アルギニン)、ポリペプチド、タンパク質(例えば、アルブミン、ゼラチン)、ポリマー(例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、水溶性グルカン、またはこのような分子の任意の組み合わせであり得る。
【0115】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約0.1%から約20%(w/v)、例えば、約0.1%から約19%(w/v)、約0.1%から約18%(w/v)、約0.1%から約17%(w/v)、約0.1%から約16%(w/v)、約0.1%から約15%(w/v)、約0.1%から約14%(w/v)、約0.1%から約13%(w/v)、約0.1%から約12%(w/v)、約0.1%から約11%(w/v)、約0.1%から約10%(w/v)、約0.1%から約9%(w/v)、約0.1%から約8%(w/v)、約0.1%から約7%(w/v)、約0.1%から約6%(w/v)、約0.1%から約5%(w/v)、約0.1%から約4%(w/v)、約0.1%から約3%(w/v)、約0.1%から約2%(w/v)、約0.1%から約1%(w/v)、約1%から約19%(w/v)、約1%から約18%(w/v)、約1%から約17%(w/v)、約1%から約16%(w/v)、約1%から約15%(w/v)、約1%から約14%(w/v)、約1%から約13%(w/v)、約1%から約12%(w/v)、約1%から約11%(w/v)、約1%から約10%(w/v)、約1%から約8%(w/v)、約1%から約6%(w/v)、約2%から約6%(w/v)、または約2.8%から約5.2%(w/v)の凍結保護物質(例えばスクロース)を含む。
【0116】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約2.5%(w/v)、約2.6%(w/v)、約2.7%(w/v)、約2.8%(w/v)、約2.9%(w/v)、約3%(w/v)、約3.1%(w/v)、約3.2%(w/v)、約3.3%(w/v)、約3.4%(w/v)、約3.5%(w/v)、約3.6%(w/v)、約3.7%(w/v)、約3.8%(w/v)、約3.9%(w/v)、約4%(w/v)、約4.1%(w/v)、約4.2%(w/v)、約4.3%(w/v)、約4.4%(w/v)、約4.6%(w/v)、約4.7%(w/v)、約4.8%(w/v)、約4.9%(w/v)、約5%(w/v)、約5.1%(w/v)、約5.2%(w/v)、約5.3%(w/v)、約5.4%(w/v)、約5.5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、約10%(w/v)、約11%(w/v)、約12%(w/v)、約13%(w/v)、約14%(w/v)、約15%(w/v)、約16%(w/v)、約17%(w/v)、約18%(w/v)、約19%(w/v)、または約20%(w/v)の凍結保護物質(例えばスクロース)を含む。一部の実施形態において、rAAV(例えばrAAV3B)ベクターを含む調合物は、約4%(w/v)のスクロースを含む。
【0117】
本明細書において使用される場合、用語「界面活性剤」は、液体rAAVベクター調合物の表面張力を改変し得る賦形剤を指す。界面活性剤は、rAAVベクターと共に調合された場合に、製造の際のせん断応力からのベクターの保護を含む、1つまたは複数の機能をもたらし得る。一部の実施形態において、界面活性剤は、液体rAAVベクター調合物の表面張力を低減させる。さらに他の実施形態において、「界面活性剤」は、調合物中のrAAVベクターの安定性の向上に寄与し得る。界面活性剤は、調合されたrAAVベクターの凝集を低減させ得る、および/または調合物中の微粒子の形成を最小化し得る、および/または吸着を低減させ得る。界面活性剤はまた、凍結/解凍サイクルの間および後のrAAVベクターの安定性を向上させ得る。
【0118】
界面活性剤は、例えば、ポリソルベート、ポリオキサマー(ポリオキサマー188を含む)、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ココイルメチルタウリンナトリウム、オレイルメチルタウリン二ナトリウム、ジヒドロキシプロピルPEG5リノールアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはこのような分子の任意の組み合わせであり得る。界面活性剤は、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート21、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート61、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、ポリソルベート85、PEG3350、またはこのような分子の任意の組み合わせであり得る。一部の実施形態において、界面活性剤は、ポリオキサマー188である。
【0119】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約0.001%(w/v)から約0.5%(w/v)、例えば、約0.001%から約0.4%(w/v)、約0.001%から約0.3%(w/v)、約0.001%から約0.2%(w/v)、約0.001%から約0.1%(w/v)、約0.002%から約0.5%(w/v)、約0.002%から約0.4%(w/v)、約0.002%から約0.3%(w/v)、約0.002%から約0.2%(w/v)、約0.002%から約0.15%(w/v)、約0.002%から約0.1%(w/v)、約0.002%から約0.05%(w/v)、約0.002%から約0.04%(w/v)、約0.002%から約0.03%(w/v)、約0.005%から約0.5%(w/v)、約0.005%から約0.4%(w/v)、約0.005%から約0.3%(w/v)、約0.005%から約0.2%(w/v)、約0.005%から約0.15%(w/v)、約0.005%から約0.1%(w/v)、約0.005%から約0.05%(w/v)、約0.005%から約0.04%(w/v)、約0.005%から約0.03%(w/v)、約0.01%から約0.5%(w/v)、約0.01%から約0.4%(w/v)、約0.01%から約0.3%(w/v)、約0.01%から約0.2%(w/v)、約0.01%から約0.1%(w/v)、約0.01%から約0.05%(w/v)、約0.01%から約0.03%(w/v)、または約0.014%から約0.03%(w/v)の界面活性剤(例えばポリオキサマー188)を含む。
【0120】
一部の実施形態において、調合物は、約0.005%(w/v)、約0.006%(w/v)、約0.007%(w/v)、約0.008%(w/v)、約0.009%(w/v)、約0.01%(w/v)、約0.014%、約0.015%(w/v)、0.016%(w/v)、0.017%(w/v)、約0.018%(w/v)、約0.019%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.021%(w/v)、約0.022%(w/v)、0.023%(w/v)、0.024%(w/v)、約0.025%(w/v)、約0.026%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.06%(w/v)、約0.07%(w/v)、約0.08%(w/v)、約0.09%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、約0.5%(w/v)、約0.6%(w/v)、約0.8%(w/v)、約0.9%(w/v)、または約1%(w/v)の界面活性剤(例えばポリオキサマー188)を含む。一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約0.02%(w/v)のポリオキサマー188を含む。
【0121】
本明細書において使用される場合、用語「凍結乾燥保護物質」は、目的のタンパク質と組み合わされると、凍結乾燥およびその後の保存の際のタンパク質の物理化学的不安定性を顕著に予防するまたは低減させる分子を指す。典型的な凍結乾燥保護物質としては、糖類およびこれらの対応する糖アルコール;グルタミン酸ナトリウムまたはヒスチジンなどのアミノ酸;ベタインなどのメチルアミン;硫酸マグネシウムなどのリオトロピック塩;三価のまたは高分子量の糖アルコールなどのポリオール、例えばグリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトール;プロピレングリコール;ポリエチレングリコール;Pluronics(登録商標);ならびにこれらの組み合わせが含まれる。さらなる典型的な凍結乾燥保護物質としては、グリセリンおよびゼラチン、ならびに糖類であるメリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、およびスタキオースが含まれる。還元糖の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロース、およびラクツロースが含まれる。非還元糖の例としては、糖アルコールおよび他の直鎖状ポリアルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが含まれる。好ましい糖アルコールは、モノグリコシド、特に、ラクトース、マルトース、ラクツロース、およびマルツロースなどの二糖の還元によって得られる化合物である。グリコシドの側基は、グルコシド性またはガラクトシド性のいずれかであり得る。糖アルコールのさらなる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、およびイソマルツロースである。好ましい凍結乾燥保護物質は、非還元糖であるトレハロースまたはスクロースである。
【0122】
凍結乾燥保護物質は、「凍結乾燥保護をする量」で凍結乾燥前の調合物に添加されるが、この量は、凍結乾燥保護をする量の凍結乾燥保護物質の存在下でタンパク質を凍結乾燥した後、タンパク質が凍結乾燥および保存の際にその物理化学的安定性を基本的に保持することを意味する。
【0123】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約0.1%(w/v)から約10%(w/v)、例えば、約0.1%から約9%(w/v)、約0.1%から約8%(w/v)、約0.1%から約7%(w/v)、約0.1%から約6%(w/v)、約0.1%から約5%(w/v)、約0.1%から約4%(w/v)、約0.1%から約3%(w/v)、約0.1%から約2%(w/v)、約0.1%から約1%(w/v)、約0.5%から約10%(w/v)、約0.5%から約9%(w/v)、約0.5%から約8%(w/v)、約0.5%から約7%(w/v)、約0.5%から約6%(w/v)、約0.5%から約5%(w/v)、約0.5%から約4%(w/v)、約0.5%から約3%(w/v)、約0.5%から約2.5%(w/v)、約0.7%(w/v)から約2.6%、または約1%から2%の凍結乾燥保護物質(例えばソルビトール)を含む。
【0124】
本開示の一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物のpHは、約7から約8.5、例えば約7.1から約8.1の範囲であり得る。一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物のpHは、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、または約8.5であり得る。さらに、一部の実施形態において、rAAV3Bベクターを含む調合物のpHは、約7.6である。
【0125】
一部の実施形態において、本開示は、粘度が約0.5mPaから約5mPaの間、例えば、約0.5mPaから約4mPa、約0.5mPaから約3mPa、約0.5mPaから約2mPa、約0.5mPaから約1.5mPa、約1mPaから約4mPa、約1mPaから約3mPa、約1mPaから約2mPa、または約1mPaから約1.5mPaの間の、rAAVベクターを含む調合物を提供する。一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約0.5mPa、約0.6mPa、約0.7mPa、約0.8mPa、約0.9mPa、約1.0mPa、約1.1mPa、約1.2mPa、約1.3mPa、約1.4mPa、約1.5mPa、約1.6mPa、約1.7mPa、約1.8mPa、約1.9mPa、約2.0mPa、約2.5mPa、約3.0mPa、約3.5mPa、約4.0mPa、約4.5mPa、または約5.0mPaの粘度を有する。一部の実施形態において、rAAV(例えばrAAV3B)ベクターを含む調合物は、21℃で測定すると、約1.19mPaまたは約1.193mPaの粘度を有する。
【0126】
一部の実施形態において、本開示は、密度が約0.5g/cmから約5g/cmの間、例えば、約0.5g/cmから約4g/cm、約0.5g/cmから約3g/cm、約0.5g/cmから約2g/cm、約0.5g/cmから約1.5g/cm、約1g/cmから約4g/cm、約1g/cmから約3g/cm、約1g/cmから約2g/cm、または約1g/cmから約1.5g/cmの間の、rAAVベクターを含む調合物を提供する。
【0127】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約0.5g/cm、約0.6g/cm、約0.7g/cm、約0.8g/cm、約0.9g/cm、約1.0g/cm、約1.1g/cm、約1.2g/cm、約1.3g/cm、約1.4g/cm、約1.5g/cm、約1.6g/cm、約1.7g/cm、約1.8g/cm、約1.9g/cm、約2.0g/cm、約2.5g/cm、約3.0g/cm、約3.5g/cm、約4.0g/cm、約4.5g/cm、または約5.0g/cmの密度を有する。一部の実施形態において、rAAV(例えばrAAV3B)ベクターを含む調合物は、約1.03g/cmまたは約1.025g/cmの密度を有する。
【0128】
一部の実施形態において、本開示は、伝導性が約1mS/cmから約40mS/cmの間、例えば、約1mS/cmから約35mS/cm、約1mS/cmから約30mS/cm、約1mS/cmから約25mS/cm、約1mS/cmから約20mS/cm、約1mS/cmから約15mS/cm、約1mS/cmから約10mS/cm、約5mS/cmから約40mS/cm、約5mS/cmから約35mS/cm、約5mS/cmから約30mS/cm、約5mS/cmから約25mS/cm、約5mS/cmから約20mS/cm、約5mS/cmから約15mS/cm、約5mS/cmから約10mS/cm、約10mS/cmから約40mS/cm、約10mS/cmから約35mS/cm、約10mS/cmから約30mS/cm、約10mS/cmから約25mS/cm、約10mS/cmから約20mS/cm、または約10mS/cmから約15mS/cmの間の、rAAVベクターを含む調合物を提供する。
【0129】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約1mS/cm、約2mS/cm、約3mS/cm、約4mS/cm、約5mS/cm、約6mS/cm、約7mS/cm、約8mS/cm、約9mS/cm、約10mS/cm、約10.5mS/cm、約11mS/cm、約11.5mS/cm、約12mS/cm、約12.5mS/cm、約13mS/cm、約13.5mS/cm、約14mS/cm、約14.5mS/cm、約15mS/cm、約15.5mS/cm、約16.1mS/cm、約16.2mS/cm、約16.3mS/cm、約16.4mS/cm、約16.5mS/cm、約16.6mS/cm、約16.7mS/cm、約16.8mS/cm、約16.9mS/cm、約17mS/cm、約17.1mS/cm、約17.2mS/cm、約17.3mS/cm、約17.4mS/cm、約17.5mS/cm、約17.6mS/cm、約17.7mS/cm、約17.8mS/cm、約17.9mS/cm、約18mS/cm、約18.5mS/cm、約19mS/cm、約19.5mS/cm、約20mS/cm、約25mS/cm、約30mS/cm、約35mS/cm、または約40mS/cmの伝導性を有する。一部の実施形態において、rAAV(例えばrAAV3B)ベクターを含む調合物は、約16.94mS/cmの伝導性を有する。
【0130】
医薬組成物は、アスコルビン酸(ビタミンC)、亜硫酸塩、ソルビン酸塩、ベンゾエート、フェノール、m-クレゾール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、および/またはパラベン(例えばメチルパラベン)などの1つまたは複数の防腐剤をさらに含み得る。一部の実施形態において、医薬組成物は、いずれの防腐剤も添加されていない。
【0131】
本開示は、rAAVベクター、ならびに、バッファー、塩、凍結保護物質、界面活性剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの他の成分を含む医薬組成物を提供し、場合によりベクターはrAAV3Bベクターである。一部の実施形態において、医薬組成物は、rAAVベクター、ならびに、Tris、MgCl、スクロース、ポリオキサマー188、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの他の成分を含み、場合によりベクターはrAAV3Bベクターである。一部の実施形態において、医薬組成物は、rAAVベクター、ならびに、pH7.6で、20mMのTris、約100mMのMgCl、約4%(w/v)のスクロース、および約0.02%(w/v)のポリオキサマー188を含み、場合によりベクターはrAAV3Bベクターである。
【0132】
一部の実施形態において、調合物は、約1E+11vg/mLから約1E+15vg/mLのrAAVベクターを含む。一部の実施形態において、調合物は、約3.0E+11vg/mLから約4.0E+13vg/mL、例えば、約3.0E+11vg/mLから約3.5E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約2.5E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約2.0E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約1.5E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約1.0E+13vg/mL、約、3.0E+11vg/mLから約5.0E+12vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約1.0E+12vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約4.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約3.5E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約2.5E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約2.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約1.5E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約1.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約5.0E+12vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約5.0E+13vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約4.0E+13vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約3.0E+13vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約2.0E+13vg/mL、または約5.0E+12vg/mLから約1.5E+13vg/mLのrAAVベクターを、場合によりrAAV3Bベクターを含む。
【0133】
一部の実施形態において、調合物は、約3.5E+11vg/mL、約4.0E+11vg/mL、約5.0E+11vg/mL、約6.0E+11vg/mL、約7.0E+11vg/mL、約8.0E+11vg/mL、約9.0E+11vg/mL、約1.0E+12vg/mL、約2.0E+12vg/mL、約3.0E+12vg/mL、約4.0E+12vg/mL、約5.0E+12vg/mL、約6.0E+12vg/mL、約7.0E+12vg/mL、約8.0E+12vg/mL、約9.0E+12vg/mL、約9.1E+12vg/mL、約9.2E+12vg/mL、約9.3E+12vg/mL、約9.4E+12vg/mL、約9.5E+12vg/mL、約9.6E+12vg/mL、約9.7E+12vg/mL、約9.8E+12vg/mL、約1.0E+13vg/mL、約1.1E+13vg/mL、約1.2E+13vg/mL、1.3E+13vg/mL、約1.4E+13vg/mL、約1.5E+13vg/mL、約1.6E+13vg/mL、約1.7E+13vg/mL、約1.8E+13vg/mL、約1.9E+13vg/mL、約2.0E+13vg/mL、約2.1E+13vg/mL、約2.2E+13vg/mL、約2.3E+13vg/mL、約2.4E+13vg/mL、約2.5E+13vg/mL、約3.0E+13vg/mL、または約3.5E+13vg/mLのrAAVベクターを、場合によりrAAV3Bベクターを含む。
【0134】
一部の実施形態において、rAAVベクターを含む調合物は、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含み、場合によりrAAVベクターはrAAV3Bベクターである。
【0135】
医薬組成物はまた、医薬組成物の有効性を増強させる他の試薬を含み得る。医薬組成物は、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子、および小胞などの送達媒体を含有し得る。
【0136】
一部の典型的な実施形態において、本開示は、約7.3から約7.9のpHの、約3E+11vg/mLから約3E+13vg/mLの濃度のrAAVベクター、約10mMから約30mMの濃度のバッファー、約50mMから約150mMの濃度の塩、約1.0%(w/v)から約10%(w/v)の濃度の凍結保護物質、および約0.01%(w/v)から約0.1%(w/v)の濃度の界面活性剤を含む、改良された医薬組成物を提供し、ここで、rAAVベクターは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなるポリペプチドを場合によりコードする、ATP7B導入遺伝子またはその断片を含むベクターゲノムを含んでいてもよく、また、rAAVベクターは、AAV3Bカプシドポリペプチドを含んでいてもよい。
【0137】
一部の典型的な実施形態において、本開示は、約7.3から約7.9(例えば約7.6)のpHの、約3E+11vg/mLから約3E+13vg/mLの濃度のrAAVベクター、約10mMから約30mM(例えば約20mM)の濃度のTris、約50mMから約150mM(例えば約100mM)の濃度のMgCl、約1.0%(w/v)から約10%(w/v)(例えば約4%)の濃度のスクロース、および約0.01%(w/v)から約0.1%(w/v)(例えば約0.02%)の濃度のポリオキサマー188を含む、改良された医薬組成物を提供し、ここで、rAAVベクターは、配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなるポリペプチドを場合によりコードする、ATP7B導入遺伝子またはその断片を含むかまたはこれからなるベクターゲノム、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなるAATプロモーター、AAV2 ITR配列が隣接する、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなるポリAシグナル配列を含み、また、rAAVベクターはAAV3Bカプシドポリペプチドを含んでいてもよい。
【0138】
V.組換えAAV調合物の使用
本開示の医薬組成物は、APT7B遺伝子における突然変異に起因する、稀な、消耗性の、命に関わる銅ホメオスタシス障害であるウィルソン病(WD)を処置するために使用することができる。一部の実施形態において、WDを有する対象への、本明細書において開示されているrAAVベクター(例えば、金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードするおよび/または配列番号1のアミノ酸配列を含む銅輸送ATPase 2をコードする核酸を含むベクターゲノムを有するrAAV3Bベクター)を含む医薬組成物の投与は、銅代謝の回復(例えば、便および腎臓での銅の排出の増大、血清中の銅の減少、ならびに肝銅の減少によって測定される)、血清中セルロプラスミンレベルの増大、尿中の銅の減少、肝銅の減少、肝臓損傷の好転(例えば、肝機能および酵素パラメーターの正常化)、亜鉛塩での処置および/またはキレート化療法が低減することまたは不要であること、正常上限より低い/正常上限に等しい血清中アラニントランスアミナーゼレベル、正常上限より低い/正常上限に等しい血清中アスパラギン酸トランスアミナーゼレベル、ならびに神経学的症候の減少を含む、1つまたは複数の処置効果を生じさせ得る。
【0139】
本発明の医薬組成物は、本明細書において記載される組成物を保有するための容器および使用のための指示を含む製品(例えばキット)において供給され得る。一部の実施形態において、組成物を保有するための容器は、バイアルである。一部の実施形態において、バイアルは、環状オレフィンコポリマーバイアルである。一部の実施形態において、バイアルは、無菌の高密度ポリエチレン(HDPE)バイアルである。一部の実施形態において、バイアルは、0.5~50mL(例えば1~10mL)中に約1E+11vg/mLから約1E+15vg/mLのrAAVベクターを含有する。
【0140】
一部の実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1mLから約50mL、例えば約1mLから約5mL、約1mLから約10mL、約1mLから約15mL、約1mLから約20mL、約1mLから約25mL、約1mLから約30mL、約1mLから約35mL、約1mLから約40mL、または約1mLから約45mLの投与容積で投与される。
【0141】
一部の実施形態において、本開示の医薬組成物は、約1mL、約1.5mL、約2mL、約2.5mL、約3mL、約3.5mL、約4mL、約4.1mL、約4.2mL、約4.3mL、約4.4mL、約4.5mL、約4.6mL、約4.7mL、約4.8mL、約4.9mL、約5.0mL、約5.1mL、約5.2mL、約5.3mL、約5.4mL、約5.5mL、約5.6mL、約5.7mL、約5.8mL、約5.9mL、約6.0mL、約6.1mL、約6.2mL、約6.3mL、約6.4mL、約6.5mL、約6.6mL、約6.7mL、約6.8mL、約6.9mL、約7.0mL、約7.1mL、約7.2mL、約7.3mL、約7.4mL、約7.5mL、約7.6mL、約7.7mL、約7.8mL、約7.9mL、約8.0mL、約8.1mL、約8.2mL、約8.3mL、約8.4mL、約8.5mL、約8.6mL、約8.7mL、約8.9mL、約9.0mL、約9.1mL、約9.2mL、約9.3mL、約9.4mL、約9.5mL、約9.6mL、約9.7mL、約9.8mL、約9.9mL、約10.0mL、約10.5mL、約15mL、約20mL、約25mL、約30mL、約35mL、約40mL、約45mL、または約50mLの投与容積で投与される。
【0142】
本開示の医薬組成物は、1回、または2回以上、患者に投与され得る。例えば、組成物は、1カ月未満、3カ月未満、6カ月未満、9カ月未満、または1年未満の間隔で患者に投与され得る。一部の実施形態において、組成物は、2年未満、5年未満、7年未満、10年未満、または15年未満の間隔で患者に投与され得る。医薬組成物は、処置されるべき疾患に適した経路を介して、それを必要とする患者に提供され得る。例えば、組成物は、静脈内注射、動脈内注射、頭蓋内注射、腹腔内注射、門脈注射、筋肉内注射、髄腔内投与、または皮下注射によるものを含む、非経口投与をされ得る。例えば、治療用導入遺伝子の発現のためのrAAVベクターを含む医薬組成物は、約5E+11vg/kgから約1E+14vg/kgの用量で、例えば約1E+12vg/kgから約1E+13vg/kgなどの用量で、それを必要とする患者に静脈内で提供され得る。一部の実施形態において、本開示の医薬組成物は、一定期間にわたり、例えば30分から5時間の期間にわたり、静脈内注入によって患者に投与される。
【0143】
一部の実施形態において、ATP7B導入遺伝子の発現のためのrAAV3Bを含む医薬組成物は、約5E+11vg/kgから約1E+14vg/kgまたは約1E+12vg/kgから約1E+13vg/kgの用量で、ウィルソン病患者に静脈内で提供される。
【0144】
一部の実施形態において、本開示の医薬組成物は、12歳を超えるWDを有する患者に投与される。一部の実施形態において、本開示の医薬組成物は、18~60歳の、場合により標準治療法、例えばキレート化療法を受けている、WDを有する対象に投与される。
【0145】
一部の実施形態において、本開示の組成物は、凍結乾燥されているおよび/または凍結乾燥にかけられたものである。一部の実施形態において、本開示の組成物は凍結乾燥されておらず、また、凍結乾燥にかけられていない。
【0146】
一部の態様において、rAAVベクターを含む組成物は、本明細書において記載される、ATP7B遺伝子の発現の喪失または低減に伴う疾患(例えばウィルソン病)の処置のための薬品の製造に提供される。
【0147】
一部の態様において、rAAVベクターを含む組成物は、本明細書において記載される、ATP7B遺伝子の発現の喪失または低減に伴う疾患(例えばウィルソン病)を処置する方法において使用するために提供される。
【0148】
本明細書において別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有する。本明細書において言及される全ての刊行物および他の参考文献は、参照によってその全体が組み込まれる。多くの文献が本明細書において引用されているが、この引用は、これらの文献のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を形成するものであることの承認を構成するものではない。
【0149】
実施形態
当業者であれば、通常の試験を使用すれば、本明細書において記載される発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するかまたはそれを確認することができる。このような均等物は、以下の実施形態(E)に包含されるものとする。
【0150】
E1. 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
バッファー、
塩、
凍結保護物質、および
界面活性剤
を含み、pHが約7.0から約8.5である医薬組成物。
【0151】
E2.バッファーの濃度が、約1mMから500mMのTris、例えば、約1mMから約450mM、約1mMから約400mM、約1mMから約350mM、約1mMから約300mM、約1mMから約250mM、約1mMから約200mM、約1mMから約150mM、約1mMから約100mM、約1mMから75mM、約1mMから50mM、約1mMから25mM、約5mMから約30mM、約10mMから約30mM、または約14mMから約26mMである、E1に記載の組成物。
【0152】
E3.バッファーの濃度が、約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約26mM、約27mM、約28mM、約29mM、約30mM、約35mM、約40mM、約45mM、約50mM、約55mM、約60mM、約65mM、約70mM、約75mM、約80mM、約85mM、約90mM、約95mM、約100mM、約125mM、約150mM、約175mM、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、約300mM、約325mM、約350mM、約375mM、約400mM、約425mM、約450mM、約475mM、または約500mMである、E1またはE2に記載の組成物。
【0153】
E4.バッファーの濃度が約20mMである、E1~E3のいずれか一つに記載の組成物。
【0154】
E5.バッファーが、酢酸塩、コハク酸塩(例えばコハク酸二ナトリウム六水和物)、コハク酸、グルコン酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、酢酸、リン酸塩、リン酸、アスコルビン酸塩、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸塩、マレイン酸、グリシン、乳酸塩、乳酸、重炭酸塩、炭酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸、エデト酸塩、イミダゾール、Tris(例えば、Tris塩基、Tris HCL、または両方)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E1~E4のいずれか一つに記載の組成物。
【0155】
E6.バッファーがTrisである、E1~E5のいずれか一つに記載の組成物。
【0156】
E7. Trisが、Tris塩基、Tris HCl、またはTris塩基とTris HClとの組み合わせである、E1~E6のいずれか一つに記載の組成物。
【0157】
E8.塩の濃度が、約1mMから約500mM、例えば、約1mMから約450mM、約1mMから約400mM、約1mMから約350mM、約1mMから約300mM、約1mMから約250mM、約1mMから約200mM、約1mMから約150mM、約1mMから約100mM、約10mMから約450mM、約10mMから約400mM、約10mMから約350mM、約10mMから約300mM、約10mMから約250mM、約10mMから約200mM、約10mMから175mM、約10mMから150mM、約10mMから125mM、約50mMから約450mM、約50mMから約400mM、約50mMから約350mM、約50mMから約300mM、約50mMから約250mM、約50mMから約200mM、約50mMから約150mMまたは約75mMから約450mM、約75mMから約400mM、約75mMから約350mM、約75mMから約300mM、約75mMから約250mM、約75mMから約200mM、約75mMから約150mM、約75mMから約125mM、または約70mMから約130mMである、E1~E7のいずれか一つに記載の組成物。
【0158】
E9.塩の濃度が、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約91mM、約92mM、約93mM、約94mM、約95mM、約96mM、約97mM、約98mM、約99mM、約100mM、約101mM、約102mM、約103mM、約104mM、約105mM、約106mM、約107mM、約108mM、約109mM、約110mM、約120mM、約130mM、約140mM、約150mM、約160mM、約170mM、約180mM、約190mM、約200mM、約225mM、約250mM、約275mM、約300mM、約325mM、約350mM、約375mM、約400mM、約425mM、約450mM、約475mM、または約500mMである、E1~E8のいずれか一つに記載の組成物。
【0159】
E10.塩の濃度が約100mMである、E1~E9のいずれか一つに記載の組成物。
【0160】
E11.塩が、MgCl、MgSO、CaCl、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E1~10のいずれか一つに記載の組成物。
【0161】
E12.塩がMgClである、E1~E11のいずれか一つに記載の組成物。
【0162】
E13.凍結保護物質の濃度が、約0.1%から約20%(w/v)、例えば、約0.1%から約19%(w/v)、約0.1%から約18%(w/v)、約0.1%から約17%(w/v)、約0.1%から約16%(w/v)、約0.1%から約15%(w/v)、約0.1%から約14%(w/v)、約0.1%から約13%(w/v)、約0.1%から約12%(w/v)、約0.1%から約11%(w/v)、約0.1%から約10%(w/v)、約0.1%から約9%(w/v)、約0.1%から約8%(w/v)、約0.1%から約7%(w/v)、約0.1%から約6%(w/v)、約0.1%から約5%(w/v)、約0.1%から約4%(w/v)、約0.1%から約3%(w/v)、約0.1%から約2%(w/v)、約0.1%から約1%(w/v)、約1%から約19%(w/v)、約1%から約18%(w/v)、約1%から約17%(w/v)、約1%から約16%(w/v)、約1%から約15%(w/v)、約1%から約14%(w/v)、約1%から約13%(w/v)、約1%から約12%(w/v)、約1%から約11%(w/v)、約1%から約10%(w/v)、約1%から約8%(w/v)、約1%から約6%(w/v)、約2%から約6%(w/v)、または約2.8%から約5.2%(w/v)である、E1~E12のいずれか一つに記載の組成物。
【0163】
E14.凍結保護物質の濃度が、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約2.5%(w/v)、約2.6%(w/v)、約2.7%(w/v)、約2.8%(w/v)、約2.9%(w/v)、約3%(w/v)、約3.1%(w/v)、約3.2%(w/v)、約3.3%(w/v)、約3.4%(w/v)、約3.5%(w/v)、約3.6%(w/v)、約3.7%(w/v)、約3.8%(w/v)、約3.9%(w/v)、約4%(w/v)、約4.1%(w/v)、約4.2%(w/v)、約4.3%(w/v)、約4.4%(w/v)、約4.6%(w/v)、約4.7%(w/v)、約4.8%(w/v)、約4.9%(w/v)、約5%(w/v)、約5.1%(w/v)、約5.2%(w/v)、約5.3%(w/v)、約5.4%、約5.5%(w/v)、約6%(w/v)、約7%(w/v)、約8%(w/v)、約9%(w/v)、約10%(w/v)、約11%(w/v)、約12%(w/v)、約13%(w/v)、約14%(w/v)、約15%(w/v)、約16%(w/v)、約17%(w/v)、約18%(w/v)、約19%(w/v)、または約20%(w/v)である、E1~E13のいずれか一つに記載の組成物。
【0164】
E15.凍結保護物質の濃度が約4%(w/v)である、E1~E14のいずれか一つに記載の組成物。
【0165】
E16.凍結保護物質が、糖(例えば、デキストロース、ラクトース、グルコース、フルクトース、マルトース、マンノース、ソルボース、スクロース、トレハロース、キシロース)、糖アルコール(例えば、エリスリトール、エチレングリコール、グリセロール、イソマルト、イノシトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール)、アミノ酸(例えば、グリシン、ヒスチジン、アルギニン)、ポリペプチド、タンパク質(例えば、アルブミン、ゼラチン)、ポリマー(例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、水溶性グルカン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E1~E15のいずれか一つに記載の組成物。
【0166】
E17.凍結保護物質がスクロースである、E1~E16のいずれか一つに記載の組成物。
【0167】
E18.界面活性剤の濃度が、約0.001%(w/v)から約0.5%(w/v)、例えば、約0.001%から約0.4%(w/v)、約0.001%から約0.3%(w/v)、約0.001%から約0.2%(w/v)、約0.001%から約0.1%(w/v)、約0.002%から約0.5%(w/v)、約0.002%から約0.4%(w/v)、約0.002%から約0.3%(w/v)、約0.002%から約0.2%(w/v)、約0.002%から約0.15%(w/v)、約0.002%から約0.1%(w/v)、約0.002%から約0.05%(w/v)、約0.002%から約0.04%(w/v)、約0.002%から約0.03%(w/v)、約0.005%から約0.5%(w/v)、約0.005%から約0.4%(w/v)、約0.005%から約0.3%(w/v)、約0.005%から約0.2%(w/v)、約0.005%から約0.15%(w/v)、約0.005%から約0.1%(w/v)、約0.005%から約0.05%(w/v)、約0.005%から約0.04%(w/v)、約0.005%から約0.03%(w/v)、約0.01%から約0.5%(w/v)、約0.01%から約0.4%(w/v)、約0.01%から約0.3%(w/v)、約0.01%から約0.2%(w/v)、約0.01%から約0.1%(w/v)、約0.01%から約0.05%(w/v)、約0.01%から約0.03%(w/v)、または約0.014%から約0.026%である、E1~E17のいずれか一つに記載の組成物。
【0168】
E19.界面活性剤の濃度が、約0.005%(w/v)、約0.006%(w/v)、約0.007%(w/v)、約0.008%(w/v)、約0.009%(w/v)、約0.01%(w/v)、約0.014%(w/v)、約0.015%(w/v)、約0.016%(w/v)、約0.017%(w/v)、約0.018%(w/v)、約0.019%(w/v)、約0.02%(w/v)、約0.021%(w/v)、約0.022%(w/v)、約0.023%(w/v)、約0.024%(w/v)、約0.025%(w/v)、約0.026%(w/v)、約0.03%(w/v)、約0.04%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.06%(w/v)、約0.07%(w/v)、約0.08%(w/v)、約0.09%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.2%(w/v)、約0.3%(w/v)、約0.4%(w/v)、または約0.5%(w/v)である、E1~18のいずれかに記載の組成物。
【0169】
E20.界面活性剤の濃度が約0.02%(w/v)である、E1~E19のいずれか一つに記載の組成物。
【0170】
E21.界面活性剤が、ポリソルベート、ポリオキサマー、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、ステアリル-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、ステアリル-サルコシン、リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ココイルメチルタウリンナトリウム、オレイルメチルタウリン二ナトリウム、ジヒドロキシプロピルPEG5リノールアンモニウムクロリド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E1~E20のいずれか一つに記載の組成物。
【0171】
E22.界面活性剤がポリオキサマー188である、E1~E21のいずれか一つに記載の組成物。
【0172】
E23. pHが約7.0から約8.5、例えば約7.1から約8.1である、E1~E22のいずれか一つに記載の組成物。
【0173】
E24. pHが、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、または約8.5である、E1~E23のいずれか一つに記載の組成物。
【0174】
E25. pHが約7.6+/-0.5である、E1~E24のいずれか一つに記載の組成物。
【0175】
E26.粘度が約0.5mPaから約5mPaである、E1~E25のいずれか一つに記載の組成物。
【0176】
E27.粘度が、約0.5mPa、約0.6mPa、約0.7mPa、約0.8mPa、約0.9mPa、約1.0mPa、約1.1mPa、約1.2mPa、約1.3mPa、約1.4mPa、約1.5mPa、約1.6mPa、約1.7mPa、約1.8mPa、約1.9mPa、約2.0mPa、約2.5mPa、約3.0mPa、約3.5mPa、約4.0mPa、約4.5mPa、または約5.0mPaである、E1~26のいずれかに記載の組成物。
【0177】
E28.粘度が、約1mPaから約1.5mPa、場合により約1.19mPaまたは約1.93mPaである、E1~E27のいずれか一つに記載の組成物。
【0178】
E29.密度が約0.5g/cmから約5g/cmである、E1~E28のいずれか一つに記載の組成物。
【0179】
E30.密度が、約0.5g/cm、約0.6g/cm、約0.7g/cm、約0.8g/cm、約0.9g/cm、約1.0g/cm、約1.1g/cm、約1.2g/cm、約1.3g/cm、約1.4g/cm、約1.5g/cm、約1.6g/cm、約1.7g/cm、約1.8g/cm、約1.9g/cm、約2.0g/cm、約2.5g/cm、約3.0g/cm、約3.5g/cm、約4.0g/cm、約4.5g/cm、または約5.0g/cmである、E1~E29のいずれか一つに記載の組成物。
【0180】
E31.密度が、約1g/cmから約1.5g/cm、場合により約1.03g/cmまたは約1.025g/cmである、E1~E30のいずれか一つに記載の組成物。
【0181】
E32.伝導性が約1mS/cmから約40mS/cmである、E1~E31のいずれか一つに記載の組成物。
【0182】
E33.伝導性が、約1mS/cm、約2mS/cm、約3mS/cm、約4mS/cm、約5mS/cm、約6mS/cm、約7mS/cm、約8mS/cm、約9mS/cm、約10mS/cm、約10.5mS/cm、約11mS/cm、約11.5mS/cm、約12mS/cm、約12.5mS/cm、約13mS/cm、約13.5mS/cm、約14mS/cm、約14.5mS/cm、約15mS/cm、約15.5mS/cm、約16.1mS/cm、約16.2mS/cm、約16.3mS/cm、約16.4mS/cm、約16.5mS/cm、約16.6mS/cm、約16.7mS/cm、約16.8mS/cm、約16.9mS/cm、約17mS/cm、約17.1mS/cm、約17.2mS/cm、約17.3mS/cm、約17.4mS/cm、約17.5mS/cm、約17.6mS/cm、約17.7mS/cm、約17.8mS/cm、約17.9mS/cm、約18mS/cm、約18.5mS/cm、約19mS/cm、約19.5mS/cm、約20mS/cm、約25mS/cm、約30mS/cm、約35mS/cm、または約40mS/cmである、E1~E32のいずれか一つに記載の組成物。
【0183】
E34.伝導性が、約10mS/cmから約20mS/cm、場合により約16.9mS/cmまたは約16.94mS/cmである、E1~E33のいずれか一つに記載の組成物。
【0184】
E35. rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型のカプシドポリペプチドを含む、E1~E34のいずれか一つに記載の組成物。
【0185】
E36. rAAVベクターが、AAV3B血清型のカプシドポリペプチドを含む、E1~E35のいずれか一つに記載の組成物。
【0186】
E37. AAV3B血清型のカプシドポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる、E36に記載の組成物。
【0187】
E38. AVV3B血清型のカプシドポリペプチドが、配列番号11の核酸配列によってコードされる、E36またはE37に記載の組成物。
【0188】
E39. rAAVベクターが、ATP7B導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む、E1~E38のいずれか一つに記載の組成物。
【0189】
E40. ATP7B導入遺伝子が、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、および/またはiii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、E39に記載の組成物。
【0190】
E41. rAAVベクターゲノムが、AAVのプロモーターの核酸配列、ポリAシグナル配列、および少なくとも1つのITR配列をさらに含む、E39またはE40に記載の組成物。
【0191】
E42. rAAVベクターゲノムが、AATプロモーターの核酸配列、ウサギβ-グロビン遺伝子のポリAシグナル配列、およびAAV2血清型の少なくとも1つのITR配列をさらに含む、E39~E40に記載の組成物。
【0192】
E43.少なくとも1つのITR配列が5’ITRおよび3’ITRである、E41またはE42に記載の組成物。
【0193】
E44.プロモーターが、配列番号3に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E41~E43のいずれか一つに記載の組成物。
【0194】
E45.ポリAシグナル配列が、配列番号4に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E41~E44のいずれか一つに記載の組成物。
【0195】
E46.少なくとも1つのITRが、配列番号5~8からなる群から選択される核酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列、およびこれらの組み合わせを含む、E41~E45のいずれか一つに記載の組成物。
【0196】
E47.組成物が約1E+11vg/mLから約1E+15vg/mLのrAAVベクターを含み、rAAVベクターがrAAV3Bベクターであってもよい、E1~E46のいずれか一つに記載の組成物。
【0197】
E48.組成物が約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含み、rAAVベクターがrAAV3Bベクターであってもよい、E1~E47のいずれか一つに記載の組成物。
【0198】
E49.約3.0E+11vg/mLから約3.5E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約2.5E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約2.0E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約1.5E+13vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約1.0E+13vg/mL、約、3.0E+11vg/mLから約5.0E+12vg/mL、約3.0E+11vg/mLから約1.0E+12vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約4.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約3.5E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約2.5E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約2.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約1.5E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約1.0E+13vg/mL、約5.0E+11vg/mLから約5.0E+12vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約5.0E+13vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約4.0E+13vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約3.0E+13vg/mL、約1.0E+12vg/mLから約2.0E+13vg/mL、または約5.0E+12vg/mLから約1.5E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、E1~E48のいずれか一つに記載の組成物。
【0199】
E50.組成物が、約3.0E+11vg/mL、約3.5E+11vg/mL、約4.0E+11vg/mL、約5.0E+11vg/mL、約6.0E+11vg/mL、約7.0E+11vg/mL、約8.0E+11vg/mL、約9.0E+11vg/mL、約1.0E+12vg/mL、約2.0E+12vg/mL、約3.0E+12vg/mL、約4.0E+12vg/mL、約5.0E+12vg/mL、約6.0E+12vg/mL、約7.0E+12vg/mL、約8.0E+12vg/mL、約9.0E+12vg/mL、約9.1E+12vg/mL、約9.2E+12vg/mL、約9.3E+12vg/mL、約9.4E+12vg/mL、約9.5E+12vg/mL、約9.6E+12vg/mL、約9.7E+12vg/mL、約9.8E+12vg/mL、約9.5E+12vg/mL、約1.0E+13vg/mL、約1.1E+13vg/mL、約1.2E+13vg/mL、約1.3E+13vg/mL、約1.4E+13vg/mL、約1.5E+13vg/mL、約1.6E+13vg/mL、約1.7E+13vg/mL、約1.8E+13vg/mL、約1.9E+13vg/mL、約2.0E+13vg/mL、約2.1E+13vg/mL、約2.2E+13vg/mL、約2.3E+13vg/mL、約2.4E+13vg/mL、約2.5E+13vg/mL、約3.0E+13vg/mL、約3.5E+13vg/mL、または約4.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含み、rAAVベクターがrAAV3Bベクターであってもよい、E1~E49のいずれか一つに記載の組成物。
【0200】
E51.組成物が、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含み、rAAVベクターがrAAV3Bベクターであってもよい、E1~E50のいずれか一つに記載の組成物。
【0201】
E52. 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約1mMから約500mMのTris、場合により約20mMのTris、
約1mMから約500mMのMgCl、場合により約100mMのMgCl
約0.1%から約20%(w/v)のスクロース、場合により約4%(w/v)のスクロース、および
約0.001%から約0.5%(w/v)のポリオキサマー188、場合により約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【0202】
E53. 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約14mMから約26mMのTris、
約70mMから約130mMのMgCl
約2.8%から約5.2%(w/v)のスクロース、および
約0.014%から約0.026%(w/v)のポリオキサマー188、
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【0203】
E54.約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、E52またはE53に記載の組成物。
【0204】
E55.約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、E52~E54のいずれか一つに記載の組成物。
【0205】
E56. rAAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3A、AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAVrh74、AAV12、AAV2i8、NP4、NP22、NP66、AAVDJ、AAVDJ/8、AAVDJ/9、AAVLK03、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4、RHM15-6、AAV hu.26、AAV1.1、AAV2.5、AAV6.1、AAV6.3.1、AAV9.45、AAV2i8、AAV29G、AAV2.8G9、AVV-LK03、AAV2-TT、AAV2-TT-S312N、AAV3B-S312N、AAVHSC1、AAVHSC2、AAVHSC3、AAVHSC4、AAVHSC5、AAVHSC6、AAVHSC7、AAVHSC8、AAVHSC9、AAVHSC10、AAVHSC11、AAVHSC12、AAVHSC13、AAVHSC14、およびAAVHSC15からなる群から選択されるAAV血清型のポリペプチドを含む、E52~E55のいずれか一つに記載の組成物。
【0206】
E57. rAAVベクターが、AAV3B血清型のカプシドポリペプチドを含む、E52~E56のいずれか一つに記載の組成物。
【0207】
E58. AAV3B血清型のカプシドポリペプチドが、配列番号10のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる、E57に記載の組成物。
【0208】
E59. AAV3B血清型のカプシドポリペプチドが、配列番号11の核酸配列によってコードされる、E57またはE58に記載の組成物。
【0209】
E60. rAAVベクターが、導入遺伝子を含むベクターゲノムおよび導入遺伝子の発現のための1つまたは複数の調節エレメントを含み、導入遺伝子がATP7Bまたはその断片であってもよい、E52~E59のいずれか一つに記載の組成物。
【0210】
E61. ATP7B導入遺伝子が、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、および/またはiii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、E60に記載の組成物。
【0211】
E62. 1つまたは複数の調節エレメントが、プロモーター、ポリAシグナル配列、少なくとも1つのITR配列、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E60またはE61に記載の組成物。
【0212】
E63. 1つまたは複数の調節エレメントが、α1-アンチトリプシン(AAT)プロモーター、ウサギβ-グロビン遺伝子のポリAシグナル配列、少なくとも1つのITR配列、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、E60またはE62に記載の組成物。
【0213】
E64.少なくとも1つのITR配列がAAV2血清型のものである、E62またはE63に記載の組成物。
【0214】
E65.少なくとも1つのITR配列が5’ITRおよび3’ITRである、E62からE64のいずれか一つに記載の組成物。
【0215】
E66.プロモーターが、配列番号3に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E62~E65のいずれか一つに記載の組成物。
【0216】
E67.ポリAシグナル配列が、配列番号4に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E62~E66のいずれか一つに記載の組成物。
【0217】
E68.少なくとも1つのITRが、配列番号5~8からなる群から選択される核酸配列に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列、およびこれらの組み合わせを含む、E62~E67のいずれか一つに記載の組成物。
【0218】
E69. rAAVベクターが、配列番号9に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一なベクターゲノムを含む、E52~E68のいずれか一つに記載の組成物。
【0219】
E70. rAAVベクターが、配列番号9の核酸配列を含むかまたはこれからなるベクターゲノムを含む、E52~E69のいずれか一つに記載の組成物。
【0220】
E71. AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約14mMから約26mM、場合により約20mMのTris、
約70mMから約130mM、場合により約100mMのMgCl
約2.8%(w/v)から約5.2%(w/v)、場合により約4%(w/v)のスクロース、ならびに
約0.14%(w/v)から約0.026%(w/v)、場合により約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【0221】
E72. AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および銅輸送ATPase 2タンパク質またはその断片をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約14mMから約26mM、場合により約20mMのTris、
約70mMから約130mM、場合により約100mMのMgCl
約2.8%(w/v)から約5.2%(w/v)、場合により約4%(w/v)のスクロース、ならびに
約0.14%(w/v)から約0.026%(w/v)、場合により約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【0222】
E73. AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および銅輸送ATPase 2タンパク質またはその断片をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約20mMのTris、
約100mMのMgCl
約4%(w/v)のスクロース、ならびに
約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【0223】
E74.導入遺伝子が、i)配列番号2の核酸配列を含むかもしくはこれからなる、ii)金属結合部位(MBS)1~4が欠失した銅輸送ATPase 2をコードする、および/またはiii)配列番号1のアミノ酸配列を含むかもしくはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする、E71~E73のいずれか一つに記載の組成物。
【0224】
E75.導入遺伝子が、配列番号2に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E71~E74のいずれか一つに記載の組成物。
【0225】
E76.ベクターゲノムが、プロモーター、ポリAシグナル配列、少なくとも1つのITR、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのエレメントをさらに含む、E71~E75のいずれか一つに記載の組成物。
【0226】
E77.プロモーターが、α1-アンチトリプシン(AAT)プロモーター、AATプロモーターの一部分、または肝臓特異的なプロモーターである、E76に記載の組成物。
【0227】
E78.プロモーターが、配列番号3に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E76またはE77に記載の組成物。
【0228】
E79.プロモーターが、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなる、E76~E78のいずれか一つに記載の組成物。
【0229】
E80.ポリAシグナル配列が、ウサギβ-グロビン遺伝子に由来する、E76~E79のいずれか一つに記載の組成物。
【0230】
E81.ポリAシグナル配列が、配列番号4に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E76~E80のいずれか一つに記載の組成物。
【0231】
E82.ポリAシグナル配列が、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなる、E76~E82のいずれか一つに記載の組成物。
【0232】
E83.少なくとも1つのITR配列がAAV2 ITRである、E76~E82のいずれか一つに記載の組成物。
【0233】
E84.少なくとも1つのITR配列が5’ITRおよび3’ITRである、E76~E83のいずれか一つに記載の組成物。
【0234】
E85.少なくとも1つのITRが、配列番号5~8のいずれか一つに80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E76~E84のいずれか一つに記載の組成物。
【0235】
E86.少なくとも1つのITR配列が、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる、E76~E85のいずれか一つに記載の組成物。
【0236】
E87.ベクターゲノムが、配列番号9に80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な、または最大で少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、もしくは100%同一な核酸配列を含む、E71~E86のいずれか一つに記載の組成物。
【0237】
E88.ベクターゲノムが、配列番号9の核酸を含むかまたはこれからなる、E72~E87のいずれか一つに記載の組成物。
【0238】
E89. AAV3B血清型のカプシドポリペプチド、および配列番号1のアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる銅輸送ATPase 2をコードする導入遺伝子を含むベクターゲノムを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター、
約20mMのTris、
約100mMのMgCl
約4%(w/v)のスクロース、ならびに
約0.02%(w/v)のポリオキサマー188
を含み、pHが約7.1から約8.1である医薬組成物。
【0239】
E90.ベクターゲノムが、配列番号3の核酸配列を含むかまたはこれからなるプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むかまたはこれからなるポリAシグナル配列、ならびに5’ITRおよび3’ITR配列をさらに含む、E89に記載の組成物。
【0240】
E91. 5’ITRおよび/または3’ITR配列が、配列番号5~8のいずれか一つの核酸配列を含むかまたはこれからなる、E90に記載の組成物。
【0241】
E92.ベクターゲノムが、配列番号9の核酸配列を含むかまたはこれからなる、E89またはE90に記載の組成物。
【0242】
E93.凍結乾燥されているまたは凍結乾燥されていない、E1~E92のいずれか一つに記載の組成物。
【0243】
E94. 1mLから10mLのE1~E92のいずれか一つに記載の組成物を含むバイアル。
【0244】
E95.環状オレフィンコポリマー製である、E94に記載のバイアル。
【0245】
E96.無菌の高密度ポリエチレン(HDPE)製である、E94に記載のバイアル。
【0246】
E97.適所の熱可塑性エラストマーストッパーを有する、E94~E96のいずれか一つに記載のバイアル。
【0247】
E98.有効量のE1~E93およびE94~E97のいずれか一つに記載の医薬組成物を、疾患を有するヒト対象に投与することを含む、疾患を処置する方法。
【0248】
E99.組成物が、約3.0E+11vg/mLから約3.0E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、E98に記載の方法。
【0249】
E100.医薬組成物が、約4E+11vg/mL、約2E+12vg/mL、約1E+13vg/mL、または約2E+13vg/mLのrAAVベクターを含む、E98またはE99に記載の方法。
【0250】
E101.医薬組成物が非経口投与される、E98~E100のいずれか一つに記載の方法。
【0251】
E102.医薬組成物が、静脈内注射、動脈内注射、頭蓋内注射、腹腔内注射、門脈注射、筋肉内注射、髄腔内投与、または皮下注射によって投与される、E98~E101のいずれか一つに記載の方法。
【0252】
E103.医薬組成物が静脈内投与される、E98~E102のいずれか一つに記載の方法。
【0253】
E104.医薬組成物が、約5E+11vg/kgから約1E+14vg/kgの用量で投与される、E98~E103のいずれか一つに記載の方法。
【0254】
E105.医薬組成物が、約1E+12vg/kgから約1E+13vg/kgの用量で投与される、E98~E104のいずれか一つに記載の方法。
【0255】
E106.疾患が、銅輸送ATPase 2の欠乏または機能障害に起因する、E98~E105のいずれか一つに記載の方法。
【0256】
E107.疾患がウィルソン病である、E98~E106のいずれか一つに記載の方法。
【0257】
E108. ATP7B導入遺伝子を含むrAAV3Bベクターを、約5E+11vg/kgから約1E+14vg/kgの用量で、ウィルソン病を有する患者に静脈内投与することを含む、E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物を投与する方法。
【0258】
E109. E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物を、約1E+12vg/kgから約1E+13vg/kgの用量で、ウィルソン病を有する患者に投与する方法。
【0259】
E110. E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物、またはE94~E97のいずれか一つに記載のバイアルの内容物を、ヒト対象に静脈内投与することを含む、それを必要とするヒト対象における肝銅を低減させる方法。
【0260】
E111.ヒト対象がウィルソン病を有する、E110に記載の方法。
【0261】
E112. E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物、またはE94~E97のいずれか一つに記載のバイアルの内容物を、ヒト対象に静脈内投与することを含む、それを必要とするヒト対象におけるウィルソン病を処置する方法。
【0262】
E113.疾患の処置のための薬品の製造における、E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物の使用。
【0263】
E114.疾患がウィルソン病である、E113に記載の使用。
【0264】
E115.銅輸送ATPase 2の欠乏または調節異常に起因する疾患の処置のための薬品の製造における、E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物の使用。
【0265】
E116.疾患がウィルソン病である、E115に記載の使用。
【0266】
E117.処置が、E97からE106のいずれか一つに定義される通りである、E113~E116のいずれか一つに記載の使用。
【0267】
E118.疾患を処置する方法における使用のための、E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0268】
E119.銅輸送ATPase 2の欠乏または調節異常に起因する疾患を有するヒト対象を処置する方法における使用のための、E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0269】
E120.疾患がウィルソン病である、E118またはE119に従った使用のための、医薬組成物。
【0270】
E121.処置する方法が、E98からE107のいずれか一つにおいて定義される通りである、E118からE120のいずれか一つに従った使用のための、医薬組成物。
【0271】
E122. E1~E93のいずれか一つに記載の医薬組成物、またはE94~E97のいずれか一つに記載のバイアルの内容物、および使用のための指示を含むキット。
【実施例0272】
本発明について、以下の実験実施例を参照することにより、さらに詳述する。こうした実施例は、例証の目的で提供するに過ぎず、別段指定しない限り、限定する意図はない。したがって、本発明は、一切、以下の実施例に限定されると解釈すべきでなく、むしろ、本明細書で示した教示の結果として明白になる、ありとあらゆる変形形態を包含すると解釈すべきである。
【0273】
以下の実施例では、本発明者らが、凍結-解凍サイクルの間、撹拌ストレスをかけられながら、時間を経てもかなりの程度の安定性を示す一方、品質属性が、許容できるレベル内で維持され、熱および撹拌ストレス試験より前のrAAVベクターと比較して保たれる、rAAVベクターのための調合物を発見した研究について記載する。一部の実施形態では、かなりの程度のベクター安定性を示すrAAVは、少なくとも1種のAAV3Bカプシドタンパク質(たとえば、VP3)を含む。
【0274】
(実施例1)
rAAV3Bベクターの熱および凍結-解凍安定性
ウィルソン病処置のためのrAAV遺伝子療法ベクターの化学的および物理的安定性を評価した。rAAVベクターは、肝臓特異的ヒトα-1アンチトリプシン(AAT)プロモーターの制御下にあるヒトATP7B遺伝子の短縮版、ポリAシグナル配列、および隣接するITRを有する一本鎖ベクターゲノムを収容するAAV3Bカプシドを含むものであった。導入遺伝子カセットのヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするATP7B導入遺伝子、配列番号3の核酸配列を含むAATプロモーター、配列番号4の核酸配列を含むポリAシグナル配列、および隣接するAAV2 ITR配列を含むものであった。ATP7B遺伝子は、銅輸送ATPase 2をコードする。銅輸送ATPase 2の機能喪失によって、特に肝臓内の組織における銅の蓄積を特徴とするウィルソン病が引き起こされる。
【0275】
1.材料および方法
rAAVベクターを、pH7.6の、20mMのTris、100mMのMgCl、4%(w/v)のスクロース、0.02%(w/v)のポロキサマー188中に原薬として調合した。rAAVベクター原薬は、3つの異なる濃度(4E+11vg/mL、2E+12vg/mL、および1E+13vg/mL)で調製し、高密度ポリエチレン(HDPE)滅菌バイアル(Fisher Scientific)に入れて-65℃以下で保管した。
【0276】
-65℃以下の冷凍保管庫から取り出した後、バルク原薬を2℃~8℃で解凍し、解凍が完了した後、穏やかに4回反転させた。1E+13vg/mLの濃度であった、解凍されたバルク原薬を、数回穏やかにかき回すことによって、同じ調合物で25倍に希釈することにより、4E+11vg/mLの原薬を調製した。解凍されたバルク原薬を、数回穏やかにかき回すことによって、同じ調合物で5倍に希釈することにより、2E+12vg/mLの原薬を調製した。
【0277】
層流フード下で、希釈および無希釈の原薬サンプルをシリンジに抜き取り、0.22μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)シリンジフィルター(Millipore)を介してHDPEバイアルに濾過した。7mLのHDPEバイアル中に1mLの容れ目体積を使用して、最悪の場合の表面積対体積比の代わりとした。
【0278】
1E+13vg/mLの濃度で調合された原薬の品質属性を、0時間目の時点、ならびに1)-65℃より低温で7日間および1カ月間保管後、2)2℃~8℃で1日および7日間保管後、3)25℃で8時間および24時間保管後、4)-65℃以下で12時間を超える保管に続く25℃で8時間の保管からなる凍結/解凍(F/T)サイクルを3回経た後、および5)制御された室温条件下、バイアルを横にして300rpmで24時間撹拌後に評価した。各F/Tサイクル後は、バイアルを穏やかに4回反転させた。
【0279】
2E+12vg/mLの濃度で調合された原薬の品質属性を、0時間目の時点、ならびに1)2℃~8℃で5日間保管後、および2)25℃で24時間保管後に評価した。4E+11vg/mLの濃度で調合された原薬の品質属性を、0時間目の時点、ならびに1)2℃~8℃で1日および7日間保管後、2)25℃で8時間および24時間保管後、3)-65℃以下で12時間を超える保管に続く25℃で8時間の保管からなる凍結/解凍(F/T)サイクルを3回経た後、および4)制御された室温条件下、バイアルを横にして300rpmで24時間撹拌後に評価した。各F/Tサイクル後は、バイアルを穏やかに4回反転させた。
【0280】
品質属性には、外観(色、澄明度、可視微粒子を含む)、カプシドの百分率ならびにVP1、VP2、およびVP3それぞれの百分率(還元条件でのCGEによって測定)、vg力価(vg/mL、導入遺伝子のqPCR分析によって測定)、ウイルス感染力価(IU/mL、TCID50によって測定)、非可視粒子(MFIによって測定)、pH、ウイルス粒子(完全、空、および中間のカプシドを含む)、力価(vp/mL、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定)、%単量体(SECによって測定)、%高分子質量種(HMMS、SECによって測定、1を超えるカプシドの徴候)、および完全カプシドに対する空の尺度としてのA260/A280を含めた。可視微粒子の観察、非可視粒子の測定、および%HMMS種によって、凝集を評価した。張性の尺度としてのオスモル濃度を、0時間目の時点で測定した。
【0281】
2.結果
1E+13vg/mLで調合された原薬の熱安定性研究の結果を表1に示す。試験したすべての品質属性において、65℃以下で1カ月、2℃~8℃で7日、および25℃で24時間後に、有意な変化は示されなかった。試験したすべての品質属性において、-65℃以下で12時間以上に続いて25℃の制御された室温で8時間の、凍結-解凍サイクルを3回経た後、有意な変化は示されなかった。試験したすべての品質属性が、有意な変化を示さず、方法の変動性の範囲内にあった。原薬のオスモル濃度は、0時間目の時点で436mOsm/H0 kgであった。原薬は、0時間目の時点で、密度が1.025g/cm、粘度が1.193mPa、伝導率が16.94mS/cmであった。
【0282】
【表1】
【0283】
2E+12vg/mLで調合された原薬の熱安定性研究の結果を表2に示す。試験したすべての品質属性において、2℃~8℃で5日、および25℃で24時間後に、有意な変化は示されなかった。原薬のオスモル濃度は、0時間目の時点で436mOsm/kgであった。
【0284】
【表2】
【0285】
4E+11vg/mLで調合された原薬の熱安定性試験の結果を表3に示す。外観、pH、ウイルスゲノム力価、感染力価、非可視粒子、ウイルス粒子力価、およびカプシド比は、2℃~8℃で7日および25℃で24時間後に、有意な変化を示さなかった。25℃の制御された室温で24時間後に、凝集がわずかに増加していた。原薬の濃度は、純度について、許容される最低のレベルにあった(CGE法によって測定)。試験したすべての品質属性において、-65℃以下で12時間以上に続いて25℃の制御された室温で8時間の、凍結サイクルを3回経た後、有意な変化は示されなかった。300rpmで24時間の極度のせん断応力がかけられた後、凝集が増加していた。試験した他のすべての品質属性は、有意な変化を示さず、すべてが方法の変動性の範囲内にあった。原薬のオスモル濃度は、0時間目の時点で436mgOsm/kgであった。
【0286】
【表3】
【0287】
この研究によって、pH7.6の、20mMのTris、100mMのMgCl、4.0%(w/v)のスクロース、および0.02%(w/v)のポロキサマー188中に4E+11vg/mL~1E+13vg/mLであるrAAV3Bベクターが、-65℃以下で1カ月までの間、2℃~8℃で7日間、および25℃で24時間、安定していたことが証明された。加えて、調合物は、-65℃以下~25℃の間での凍結-解凍サイクルに3回まで曝されても安定していた。
【0288】
(実施例2)
凍結/解凍循環および撹拌試験
1.rAAV3Bベクターの供給源および調合物の調製
実施例1に記載したとおりの銅輸送ATPase 2導入遺伝子(ATP7B)を含むrAAV3Bベクターの多数のロットを、このような研究において使用した。すべてのロットが、限外濾過/ダイアフィルトレーションにかけられて、pH7.6の、20mMのTris、100mMのMgCl中に1.1E+13vg/mLの目標濃度に到達した。この材料を賦形剤緩衝液に加えることによって調合して、最終濃度を、pH7.6の、20mMのTris、100mMのMgCl、4%(w/v)のスクロース、0.02%(w/v)のポロキサマー188中に1E+13vg/mLのrAAV3Bベクターとした。調合緩衝液またはn-食塩水で希釈することにより、より低い濃度を調製した。
【0289】
2.長期保管、加速ストレス法、および投与溶液安定性
充填されたバイアルを、制御された安定性チャンバーにおいて保管して、保管試験の間、一定の温度を維持した。チャンバーは、相対湿度(RH)65%で、-90℃~-60℃(結果では-70℃として報告する)、2℃~8℃(結果では5℃として報告する)、および23℃~27℃に保った。長期保管研究については、バイアルをまっすぐに立てて、1カ月、3カ月、および6カ月間保管した。
【0290】
加速ストレス法では、制御されない凍結-解凍サイクルを使用した。制御されない凍結-解凍は、-90℃~-60℃のチャンバーにおいてバイアルを凍結させた後、2℃~8℃で解凍することによって行った。
【0291】
バイアルをオービタルシェーカーにおいて300rpmで24時間、卓上で震盪することにより、撹拌ストレスを評価した。
【0292】
3.実験方法
色および乳白光を標準と比較することに加え、可視微粒子を調べることにより、目視検査を行った。ウイルス粒子含有量、空/完全カプシド比、ウイルス純度、および凝集を、サイズ排除-高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によってモニターした。導入遺伝子含有量を定量的PCR(qPCR)によってモニターした。感染力を、活性についてのTCID50によってモニターした。カプシド純度を、還元キャピラリーゲルCGE(rCGE)によってモニターした。平均蛍光強度(MFI)を使用して、非可視粒子カウントを評価した。pHもモニターした。
【0293】
4.結果
長期および加速安定性研究を実施して、調合物の適格性を検証した。安定性研究では、pH7.6の、20mMのTris、100mMのMgCl、4%のスクロース、0.02%のポロキサマー188を含む調合物にしたrAAV3Bベクターの長期および加速安定性を、環状オレフィン一次容器バイアルにおいて調査した。図1~10は、長期を企図した-70℃の保管条件ならびに-20℃および5℃の加速保管条件下での、一次容器における、6カ月までのrAAV3Bベクターの安定性を示す。すべての時点において、外観が評価され、澄明、無色であり、可視微粒子は本質的に存在しなかった。
【0294】
-70℃、-20℃、および5℃で保管された、rAAV3Bベクターを含む調合物の導入遺伝子力価(vg/mL)を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、qPCRによって測定した。時点間または保管条件間に、導入遺伝子力価の有意差は認められなかった(図1)。
【0295】
-70℃、-20℃、および5℃で保管された、rAAV3Bベクターを含む調合物のウイルス粒子力価(vg/mL)を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、SE-HPLCによって測定した。時点間または保管条件間に、ウイルス粒子力価の有意差は認められなかった(図2)。
【0296】
-70℃、-20℃、および5℃で保管された、rAAV3Bベクターを含む調合物のHMMSの百分率を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、SE-HPLCによって測定した。時点間または保管条件間に、HMMSの百分率の有意差は認められなかった(図3)。
【0297】
-70℃、-20℃、および5℃で保管された、rAAV3Bベクターを含む調合物における、完全カプシドに対する空の比を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、SE-HPLCによってA260/A280で測定した。時点間または保管条件間に、完全カプシドに対する空の比の有意差は認められなかった(図4)。
【0298】
-70℃、-20℃、および5℃で保管された、rAAV3Bベクターを含む調合物のウイルス純度(%単量体)を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、SE-HPLCによって測定した。5℃で6カ月まで保管された組成物について、純度のわずかな低下が認められたが、予め決められた85%の許容閾値は超えなかった(図5)。
【0299】
-70℃、-20℃、および5℃で保管されたrAAV3Bベクターを含む調合物のベクター感染力を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、50%組織培養感染量(TCID50)によって測定した。TCID50は、すべての保管条件下で6カ月までに増加し、したがって、許容性の最低限のレベルを下回らなかった(図6)。
【0300】
-70℃、-20℃、および5℃で保管された、rAAV3Bベクターを含む調合物のpHを、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で測定した。時点間または保管条件間に、pHの有意差は認められなかった(図7)。
【0301】
-70℃、-20℃、および5℃で保管されたrAAV3Bベクターを含む調合物におけるカプシドのパーセント純度を、0時間目、1カ月、3カ月、および6カ月の時点で、還元条件でのキャピラリーゲル電気泳動(rCGE)によって測定した。時点間または保管条件間に、カプシドパーセント純度の有意差は認められなかった(図8)。
【0302】
-70℃、-20℃、および5℃で保管されたrAAV3Bベクターを含む調合物のZ平均(nm)を、0時間目、1カ月、および6カ月の時点で、動的光散乱法(DLS)によって測定した。Z平均は、溶液中に存在するrAAVカプシドの凝集のレベルの尺度である。時点間または保管条件間に、Z平均の有意差は認められなかった(図9)。
【0303】
-70℃、-20℃、および5℃で保管されたrAAVベクターを含む調合物中に存在する、10μmおよび25μmの範囲にある非可視粒子の数を、0時間目および6カ月の時点で、平均蛍光強度(MFI)によって測定した。10μMの範囲にある粒子の数が、6カ月の時点では、0時間目の時点における数に比べてわずかに増加していた。また、0時間目の時点では、25μmの範囲にある粒子が観察されなかったが、6カ月の時点では、この範囲にある100個未満の粒子が観察された(図10)。6カ月の時点で観察された非可視粒子の増加はいずれも、10μmでは6000粒子、25μmでは600粒子である、予め決められた許容性の閾値を超えなかった。
【0304】
rAAV3Bベクターを含む調合物を、もとのバイアルにおいて、-90℃~-60℃で12時間の凍結および2℃~8℃で8時間の解凍からそれぞれがなる、5回の制御されない凍結-解凍サイクルである加速ストレス法によって試験した。0時間目の時点、および5回の凍結解凍サイクルの後に、外観についてバイアルを評価し、澄明、無色であり、可視微粒子が本質的に存在しないことが観察された。
【0305】
0時間目の時点、および5回の凍結-解凍サイクル後のrAAV3Bベクターを含む調合物間に、測定された品質属性の有意差は存在しなかった。
【0306】
【表4】
【0307】
rAAVベクター調合物を含有するバイアルを、室温において、オービタルシェーカーの上に横にして置き、300rpmで24時間撹拌した後、撹拌ストレスを評価した。両方の時点において、外観が評価され、澄明、無色であり、可視微粒子は本質的に存在しなかった。
【0308】
【表5】
【0309】
凍結解凍循環および撹拌という追加のストレスと組み合わせた長期および加速保管の結果、研究した調合物中のrAAVベクターは、観察された劣化が最小限からゼロに抑えられ、安定していたことが示された。
【0310】
(実施例3)
単塩の存在下または非存在下でのAAV3Bカプシドの凝集しやすさの評価
実施例1に記載したとおりの銅輸送ATPase 2導入遺伝子(ATP7B)を含むrAAV3Bベクターを、このような研究において使用した。相対的完全(F)および相対的空(E)rAAV3Bベクターについて、50kDaの膜を使用して、緩衝液を、1)試験調合物(20mMのTris、100mMのMgCl、4%w/vのスクロース、0.02%のポロキサマー188、pH7.6)、2)150mMのNaClを含有するPBS、3)10mMのTris pH7.4、4)NaClが添加されたTris緩衝液、5)MgClが添加されたTris緩衝液、または6)CaClが添加されたTris緩衝液に交換した。
【0311】
動的光散乱法(DLS)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、視覚的外観、平均蛍光強度(MFI)、光学顕微鏡観察、およびNTA(ナノ粒子トラッキング解析)データを、すべてのサンプルについて収集し、分析して、緩衝液交換の際、および5℃で2週間保管後のベクター凝集の抑制に塩が寄与する効果を明らかにした。
【0312】
1.材料
rAAV3Bベクター原薬は、pH7.6の、30mMのクエン酸ナトリウム、85mMのTris、200mMの酢酸ナトリウム、0.0085%のP188中に供給された。相対的空(E)rAAV3Bベクターのサンプルは、濃度が6.43E+13ウイルス粒子(VP)/mLであり、R=0.61であった。相対的完全(F)rAAV3Bのサンプルは、濃度が5.89E+13VP/mLであり、R=0.86であった。
【0313】
2.1方法-緩衝液交換スクリーニング
相対的空および相対的完全rAAV3Bベクターサンプルを、pH7.6の、30mMのクエン酸ナトリウム、85mMのTris、200mMの酢酸ナトリウム、0.0085%のP188から、50kDaの膜およびローター遠心分離によって、試験調合物、1×PBS、およびpH7.4の20mMのTris(塩なし)のそれぞれへの交換にかけた。膜を水および緩衝液(2回)で洗浄した。交換は、それぞれ3体積の緩衝液を用いて3000RCFで行った。交換後、各サンプルに、20μLの1%P188を添加した。最終サンプル体積は、100μLに正規化した。
【0314】
各サンプル50μLを0.8μmの金フィルターで濾過し、水ですすいだ。サンプルを、光学顕微鏡観察およびフーリエ変換赤外分光法-減衰全反射(FTIR-ATR)によって評価した。Tris中の相対的完全サンプルは、濁りを帯びており、濁りは、Tris中の相対的空サンプルでは、それほど明白でなかった。PBS中の相対的空サンプルは、環様の濁りを帯び、PBS中の相対的完全サンプルは、輝く微粒子を伴った。試験調合物中の相対的空および相対的完全サンプルは、比較的すっきりしていた。Tris中のrAAV3Bベクターサンプルは、FTIR-顕微鏡観察によって、反射率モードで分析した。
【0315】
2.2方法- 5℃での2週間安定性
各緩衝液40mLを調製し、80μLの0.1%P188を添加した。膜を水および緩衝液(2回)で洗浄した。相対的空および相対的完全rAAV3Bベクターサンプルを、pH7.6の、30mMのクエン酸ナトリウム、85mMのTris、200mMの酢酸ナトリウム、0.0085%のP188から、表6に示す各緩衝液3体積への、3000RCFでの交換にかけた。各サンプルの最終体積は、2000μLに正規化した。0.22μmのPVDF膜を使用して、サンプルを滅菌濾過した。
【0316】
【表6-1】
【0317】
【表6-2】
【0318】
2.3分析方法
サイズ排除クロマトグラフィー:これを使用して、ウイルス粒子濃度(VP/mL)、%高分子質量種(HMMS)、214nmにおけるAAV単量体純度、および260nm/280nmにおけるAAV単量体ピークの比を算出した。核酸は、260nmにおいて吸光度極大を示し、タンパク質は、280nm前後において吸光度極大を示すことがわかっている。溶液中の完全対空カプシドの相対的変化を推定するために、260nm/280nm比が報告されている(Sommerら(2003)、Molecular Therapy 7(1):122~128)。比の低下によって、DNAで満たされたカプシド(たとえば、完全カプシド)の減少が示され、比の上昇によって、空カプシドの減少が示された。注入体積を様々に変えて、サンプル面積が検量線範囲内に確実に収まるようにした。
【0319】
動的光散乱法:DynaProプレートリーダーを使用して、すべてのサンプルの流体力学的半径、多分散性、および正規化強度を測定した。加えて、Dynamicsソフトウェアを使用して、最も小さいピークの%質量および半径を推定し、報告した。測定は二通りに行い、平均を報告した。このアッセイにおいて使用したパラメーターは、少なくとも一部は、Stetefeldら(2016)、Biophys.Rev.8(4):409~427から得たものである。
【0320】
Nanosight(NTA):Nanosight機器を使用して、NTAデータを収集した。カメラは、レベル12に設定したが、使用者によって選択されるいくつかのパラメーターに高感度である。このアッセイにおいて使用したパラメーターは、少なくとも一部は、Hubertら(2020)、J.Pharm.Sci.109:830~844から得たものである。
【0321】
この実施例では、50~500nmの範囲の粒子をモニターするために、検出閾値は、20という控えめな値に設定した。20nmの閾値では、50nmより小さい粒子が検出される見込みは低い。視覚的データ分析に基づき、100nm未満の粒子の量とHMMSとには、相関関係が存在した。したがって、100nm未満のカウントを報告した。分布傾向を調べ、それをMFIと比較するために、100nm以上および500nm以上のカウントも報告した。DLSおよびNTAの両方において、Stokes-Einstein式を使用して、粒子拡散係数を粒径に変換した。式の分母には粘度が使用された。したがって、データを粘度について正規化し、粘度は、この実施例において測定および報告した。
【0322】
平均蛍光強度(MFI):これを収集し、1μm以上、2μm以上、5μm以上、8μm以上、10μm以上、25μm以上のサイズのビンについてのカウント/mLを報告し、1μm以上をNanosightの500μm以上と比較した。
【0323】
固有示差走査熱量測定(DSF)および静的光散乱法(SLS):これらは、Nanotemper Prometheus機器によって、20℃~95℃において1℃/分でモニターした。ソフトウェアにおいて自動で積分を行った。
【0324】
色素系示差走査熱量測定(DSF):これを、Biorad CFX96 thermo-cyclerを使用して行って、サンプルにDNA特異的色素SYBRゴールドおよびタンパク質特異的色素SYPROオレンジを添加した後の色素特異的な蛍光バンドをモニターした。色素系DNA検出法では、AAV材料を加熱する間にいくつものピークが分解されることが知られている。データ解釈を簡潔にするために、初期蛍光および最初のピーク出現を報告した。同じ実験にのせた種々のサンプルについてのデータを、定性的にも比較した。Lumetics LINKソフトウェアにおいて自動で積分を行った。
【0325】
3.結果
ウイルスカプシド力価:SEC-HPLCによって測定されたrAAV力価(VP/mL)を、表7(0時間目)、表8(5℃で2週間時)、および図11に示す。Tris、12mM NaCl、および12mM MgCl緩衝液中のサンプルでは、AAV単量体ウイルスカプシド力価回収率が非常に低かった(12%未満)。PBS、12mM CaCl、および100mM NaCl中のサンプルでは、ウイルスカプシド力価回収率が中程度であった(25%を超えるが40%未満)。試験調合物、100mM MgCl、100mM CaCl、2M NaCl、および2M MgCl緩衝液中のサンプルでは、約80%という良好な回収率が認められた。クロマトグラフィーの際にリン酸移動相におけるカルシウム沈殿が懸念されるため、2M CaCl中にはサンプルを調製しなかった。
【0326】
緩衝液交換を行うと、すべてのサンプルにおいて、遠心分離せん断のために力価低下が認められた。表6に示すとおり、出発材料におけるウイルスカプシド力価は、5.89E+13VP/mL(相対的完全)および6.43E+13VP/mL(相対的空)であったが、1.4E+13VP/mL未満に低下した。対照的に、5℃で2週間経過後、試験したサンプルのいずれにおいても、ウイルス粒子の有意な減少は認められなかった(図11)。
【0327】
試験調合物、Tris、および2M MgCl中のサンプルを除いては、相対的空カプシドについての回収率が、相対的完全カプシドに比べてわずかに良好であった(図12)。試験調合物は、T0における緩衝液交換の後、示されたウイルス力価の、相対的完全カプシドサンプルと相対的空カプシドサンプル間の変動量が最も小さかったため、最もロバストであった。完全および空両方のrAAVベクターの一貫した安定性を維持する能力は、AAVベクター試験調合物の有益な特徴である。
【0328】
これらのデータによって、ウイルス粒子力価を維持し、カプシドの凝集を制限するのに、塩(たとえば、二価カチオン、たとえばMgCl、CaCl)の濃度が100mM以上である必要があることも実証された。0時間目および2週間時の100mM MgClまたは100mM CaCl緩衝液において、相対的空および相対的完全両方のカプシドサンプルについてのVP/mLは同様であったが、いくつかの理由で、CaClよりも、MgClを含む調合物が好ましい。カルシウムイオンは、(たとえば、アッセイ試薬がリン酸塩を含有するとき)粒子を形成して品質属性の分析を困難にすることにより、分析方法の妨げとなることが知られている。また、カルシウムは、長期間保管される間に、薬物製品および/または原薬における粒子形成の一因になりかねない。したがって、MgClが、緩衝液調合物に好ましい二価カチオンになる。
【0329】
HMMS、DLS、NTA、およびMFI: サンプルは、交換の後に濾過されたため、T0の時点で約0.2μmの凝集塊が濾別されたことが考えられる。5℃で2週間経過後、Tris、12mM NaCl、および12mM MgClサンプルにおいて、有意な量の粒子状物質がMFIによって検出された(表9)。PBSサンプルでは、NTAによって異常に高いカウントが検出された(表9)。
【0330】
有意な力価低下および非可視粒子生成は、%HMMSの増大と相関関係になかった。HMMSが、AAV単量体ピーク減少に対して線形または比例的に変化しなかったことも注目された。たとえば、T0の時点において214nmで測定された、12mM MgCl相対的空サンプルからのAAV単量体ピーク(500K AU未満)は、12mM CaCl相対的空サンプルからのAAV単量体ピーク(1300K AU超)よりかなり小さく、それにもかかわらず、214nmで測定されたHMMSピーク面積は、これらのサンプルについてほぼ同じままであった(すなわち、それぞれ、2,799AUおよび2,292AU)。したがって、MgClサンプルにおける%HMMSを算出すると、CaClサンプルにおける%HMMSの3倍の高さになった(0.6%対0.2%)。この現象は、T0時点のPBS相対的完全サンプル(すなわち、HMMS面積が約11K AU、AAV単量体面積が1,287K AU)を、T0時点のTris相対的完全サンプル(すなわち、HMMS面積が約10K AU、AAV単量体面積が約500K AU)と比較した場合において、より顕著であった。すなわち、HMMS面積には有意差がないが(それぞれ、約11K AU対約10K AU)、算出された%HMMSは、(それぞれ、0.9%対2.2%)であった(表10)。
【0331】
粒子半径の有意な増大(凝集の指標)を示したDLS結果は、力価低下が最も大きいサンプルと相関した(表7および8)。これは、T0の時点(すなわち、濾過直後)および2週間後に認められた。たとえば、DLSによる12mM NaClサンプルの平均粒子半径は、242.9nmであり、AAV力価は、5.13E+11VP/mLであった(T0時点の相対的完全)。対照的に、DLSによる試験調合物の平均粒子半径は、20.1nmであり、AAV力価は、9.26E+12VP/mLであった(T0時点の相対的完全サンプル)。2週間時点では、DLSによる12mM NaClサンプルの平均粒子半径は、242.9nmであり、AAV力価は、5.13E+11VP/mLであった(T2週時点の相対的完全)。対照的に、DLSによる試験調合物の平均粒子半径は、14.3nmであり、AAV力価は、9.45E+12VP/mLであった(T2週時点の相対的完全サンプル)。したがって、DLS測定値には、AAV力価の低下が大いに影響する場合がある。
【0332】
Tris、12mM NaCl、および12mM MgClにおける高レベルのAAV3B凝集が、MFIによって確認された(表9)。たとえば、Tris中の相対的完全サンプル(T2週)は、MFIが1μmで469,090カウント/mLであったのに対し、凝集がほとんどない試験調合物中の相対的完全サンプル(T2週)は、MFIが1μmで6,708カウント/mLであった。Nanosightによって、PBS中でのAAV3B凝集が確認された。12mM NaClおよびTris単独に比べて少ないカウントを示した12mM MgClサンプルを除いては、同じ相対的空サンプルが、澄明度の向上も示した。
【0333】
HMMSピーク面積に対して、100nm未満のNTAカウントは正の相関を示し、D10は負の相関を示したが、しかし、これは、すべてのサンプルについて一貫してはいない。
【0334】
260nmでの%HMMSシグナル(表10)は、材料がどれだけの完全カプシドを含有していたかに関係なく、調合物タイプごとに一定であった。260nmで最大吸光度を示すのはDNAであったが、タンパク質も260nmでシグナルを生じる。このデータに基づくと、AAV3Bの%HMMSは、タンパク質に関連するものと思われる。HMMSシグナルは、相対的空カプシドサンプルに比べて、相対的完全カプシドにおいてより高度であった。試験調合物中のサンプルでは、全体としてのHMMS面積がより高度であった。これには、AAV調製物において%HMMSを増大させることがわかっている、試験調合物中のスクロースの存在によるものと考えられた。%HMMSは、AAV調合物の効力に影響を及ぼすと考えられておらず、微粒子が生成する恐れがより低いことと相関がある。
【0335】
DSF:DSFのAAV安定性との相互関係は、まだ十分に理解されていない。AAV安定性とDSF結果を相関付けるいくつかの報告があるものの(Rieserら(2020)、J.Pharm.Sci.109(1):854~862;Rayaproluら(2013)、J.Virol.87(24):13150~13160;Bennettら(2017)、Molec.Therap.Methods Clin.Dev.6:171~182;Horowitzら(2013)、87(6):2994~3002)、効力とDSF結果の相関関係は確立されていない。しかし、以下の知見を得ることができた(表8)。色素に基づくDNA漏出最高ピーク温度(SYBRゴールドを使用している)は、330/350の固有DSF比と申し分なく相関した。最も高い初期DNA蛍光は、相対的完全Trisサンプルにおいて観察され、これは、濁り度の上昇および最も高いMFIカウントと相関した。DNA漏出の出現は、報告された値より高いまたはそれに近いAAV材料の熱安定性と相関することが予想される。この実験では熱安定性を実施しなかったため、このパラメーターを評価することはできなかった。最良の熱安定性は、高レベルのNaClまたはMgClの存在下にあると予想される。
【0336】
SLS:静的光散乱の出現によって、固有DSF(330nm/350nm)または色素系(SYPROオレンジ)DSFとは異なるカプシド融解についての情報が得られる。8μm以上での粒子カウントが最も高い相対的空サンプル(Tris、12mM NaCl、12mM MgCl)では、20℃から95℃に加熱する間、SLSシグナルの検出可能な変化はなかった(表8)。ウイルス粒子力価が40%未満である、すべての相対的完全サンプルについて、粒子凝集にもかかわらず、SLSシグナルは検出されなかった。
【0337】
4.結論
塩の非存在下(すなわち、塩なしのTris)では、50kDaの膜を用いた3000RCFでの緩衝液交換の後、有意なAAV3Bウイルス粒子力価低下が観察された(表7)。塩濃度が2Mもの高さになっても(すなわち、NaClまたはMgCl)、マイナスの影響は認められなかった。
【0338】
より低い濃度(すなわち、12mM)のCaClは、同等の濃度のNaClまたはMgClより安定性を付与した。
【0339】
MgClに比べるとNaClのイオン強度は3分の1であるが、MgClの方が、同じモル濃度(すなわち、100mM)でNaClより安定性を付与した。
【0340】
HMMSピーク面積に対して、100nm未満のNTAカウントは正の相関を示し、D10は負の相関を示すが、しかし、すべてのサンプルについて一貫してはいない。
【0341】
【表7-1】
【0342】
【表7-2】
【0343】
DLSは、粘度に対して正規化したものであり、57.1は、当該機器によって報告することができる最大の多分散性値であり、HMMSについての検出閾値は1%である。ND=検出されず、NSA=分析に不適
調合物中のスクロースの存在のために、賦形剤ピークからの散乱光強度が、試験サンプルについてピーク2と報告されたAAVカプシドからの散乱光強度(データは示さず)より強くなった。
【0344】
【表8-1】
【0345】
【表8-2】
【0346】
【表8-3】
【0347】
DLSは、粘度に対して正規化したものであり、57.1は、当該機器によって報告することができる最大の多分散性値であり、HMMSについての検出閾値は1%である。ND=検出されず、NSA=分析に不適
調合物中のスクロースの存在のために、賦形剤ピークからの散乱光強度が、試験サンプルについてピーク2と報告されたAAVカプシドからの散乱光強度(データは示さず)より強くなった。
【0348】
【表9-1】
【0349】
【表9-2】
【0350】
【表9-3】
【0351】
ND=検出されず。DLSは、粘度に対して正規化したものであり、HMMSについての検出閾値は1%である。D10、D50、およびD90は、Hubertら(2020)、J.Pharma.Sci.109:830~844において規定されているとおりの、第10、第50、および第90パーセンタイルにおける粒径値を表す。
【0352】
【表10-1】
【0353】
【表10-2】
【0354】
ND=検出されず。HMMSについての検出閾値は1%である。
【0355】
均等物
前述の書面による明細は、当業者による本開示の実施を可能にするのに十分であるとみなされる。前述の説明および実施例では、本開示のある特定の例示的な実施形態を詳述している。しかし、前述の事項が本文中でどれだけ詳細であるように思われることがあろうと、本開示は、多くのやり方で実施することができ、また本開示は、添付の請求項およびそのいずれかの均等物に従って解釈されるべきであると認識される。
【0356】
特許、特許出願、論文、教本などを始めとする、本文書で引用したすべての参考文献、およびその中で引用されている参考文献は、すでに援用されていない限り、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0357】
【表11-1】
【0358】
【表11-2】
【0359】
【表11-3】
【0360】
【表11-4】
【0361】
【表11-5】
図1
図2
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【配列表】
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【外国語明細書】