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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159151
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】駆動伝達装置及び建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/12 20060101AFI20221006BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20221006BHJP
   E02F 9/02 20060101ALI20221006BHJP
   B60K 17/16 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
E02F9/12 Z
E02F9/00 A
E02F9/02 A
B60K17/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055872
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021060398
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小森 悦朗
【テーマコード(参考)】
2D015
3D042
【Fターム(参考)】
2D015DA04
3D042AA02
3D042AA03
3D042AA06
3D042AA10
3D042AB07
3D042CA01
3D042CA03
(57)【要約】
【課題】駆動源からの伝達によるエネルギー損失を抑え、直進、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく、かつ安定した動作で行うことができ、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。
【解決手段】建設機械の走行体101を支持する下部キャリア106に対して旋回する旋回体103に設けられ動力を発生させる駆動源と、下部キャリア106の建設機械の車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪105aのうち少なくとも1つの駆動輪105aに駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、を備える駆動伝達装置を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の走行部を支持する下部キャリアに対して旋回する旋回体に設けられ動力を発生させる駆動源と、
前記下部キャリアの前記建設機械の車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に前記駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、
を備える、駆動伝達装置。
【請求項2】
前記駆動源は、前記旋回体に設けられるドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータを有し、
前記伝達機構は、
前記ドライブ駆動モータの動力が伝達される差動装置と、
前記方向制御駆動モータの動力が伝達され、前記2つの駆動輪のうちの一方の前記駆動輪に対し、他方の前記駆動輪に回転差を生じさせる変速部と、を備える請求項1に記載の駆動伝達装置。
【請求項3】
前記変速部は、前記一方の前記駆動輪に前記方向制御駆動モータの動力を伝達するかさ歯車を有する請求項2に記載の駆動伝達装置。
【請求項4】
前記伝達機構は、
前記ドライブ駆動モータの動力を受けるドライブシャフトと、
前記方向制御駆動モータの動力を受ける方向制御シャフトと、
を備え、
前記ドライブシャフトは、前記旋回体の旋回中心軸と同軸に設けられ、
前記方向制御シャフトは、前記ドライブシャフトの外回りに公転する請求項2又は3に記載の駆動伝達装置。
【請求項5】
前記伝達機構は、
前記方向制御シャフトに連結される第1平歯車と、
前記第1平歯車に噛み合わされるとともに前記ドライブシャフトを通過させる第2平歯車と、
前記第2平歯車に連結される第1かさ歯車と、
前記第1かさ歯車に噛み合わされ、前記一方の前記駆動輪の車軸に連結される第2かさ歯車と、
を備える請求項4に記載の駆動伝達装置。
【請求項6】
建設機械の走行部を支持する下部キャリアに対して旋回する旋回体に設けられ動力を発生させる駆動源と、
前記下部キャリアの前記建設機械の車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に前記駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、
を備え、
前記駆動源は、前記旋回体に設けられるドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータを有し、
前記伝達機構は、
前記ドライブ駆動モータの動力が伝達される差動装置と、
前記方向制御駆動モータの動力が伝達され、前記2つの駆動輪のうちの一方の前記駆動輪に対し、他方の前記駆動輪に回転差を生じさせる変速部と、を備え、
前記変速部は、前記一方の前記駆動輪に前記方向制御駆動モータの動力を伝達するかさ歯車を有し、
前記伝達機構は、
前記ドライブ駆動モータの動力を受けるドライブシャフトと、
前記方向制御駆動モータの動力を受ける方向制御シャフトと、を備え、
前記ドライブシャフトは、前記旋回体の旋回中心軸と同軸に設けられ、
前記方向制御シャフトは、前記ドライブシャフトの外回りに公転し、
前記伝達機構は、
前記方向制御シャフトに連結される第1平歯車と、
前記第1平歯車に噛み合わされるとともに前記ドライブシャフトを通過させる第2平歯車と、
前記第2平歯車に連結される第1かさ歯車と、
前記第1かさ歯車に噛み合わされ、前記一方の前記駆動輪の車軸に連結される第2かさ歯車と、を備える、駆動伝達装置。
【請求項7】
走行部を支持する下部キャリアと、
前記下部キャリアに対して旋回する旋回体と、
前記下部キャリアの車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪と、
前記旋回体に設けられ動力を発生させる駆動源と、
前記2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に前記駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、
を備えた駆動伝達装置を有する、建設機械。
【請求項8】
第1駆動体に対して旋回する第2駆動体に設けられ動力を発生させる駆動源と、
前記第1駆動体に備えられる2つの駆動軸と、
前記2つの駆動軸のうち少なくとも1つの駆動軸に前記駆動源の動力を伝達する伝達機構と、
を備える駆動伝達装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動伝達装置及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧ショベル等の建設機械は、自走する走行体と、走行体に旋回自在に設けられた旋回体と、を備える。旋回体は、操作者が搭乗される操作室を備える。また、旋回体には、一端が回転自在(揺動自在)に連結された作用部が設けられている。作用部としては、例えば、ブームと、ブームの旋回体とは反対側の他端に回転自在に一端が連結されたアームと、アームのブームとは反対側の他端に回転自在に連結されたバケットと、が挙げられる。
【0003】
また、上述したショベル等の建設機械では、旋回体と走行体との連結部の駆動伝達装置として、ベベルピニオン、ベベルギヤ、クラッチ等を組み合わせた構成としている場合が多い(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、直進走行を対象とし、下部走行機構に対して動力を歯車によって伝達する機構について記載されている。このような旋回体と走行体との連結部には、例えば、スイベルジョイントを用いた流体力の伝達構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3-008986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記した特許文献1に記載の駆動伝達装置では、走行動作と旋回動作を同時に駆動させることができない。ショベル等の建設機械の場合には、走行時に旋回とともに直進のみではなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を効率よく、かつ安定した動作で行えることが求められていた。
また、流体力の伝達では途中の配管ロス等のエネルギー損失が大きく、近年、建設機械の構造簡素化等の観点から電動化も望まれている。しかしながら、電力の伝達の場合には、ショベル等で湿地を走行する機械装置に対して電動機の浸水の課題や感電のおそれがあった。
【0006】
本発明は、駆動源からの伝達によるエネルギー損失を抑え、直進、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく、かつ安定した動作で行うことができる駆動伝達装置及び建設機械を提供する。
また、本発明の他の目的としては、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる駆動伝達装置及び建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る駆動伝達装置は、建設機械の走行部を支持する下部キャリアに対して旋回する旋回体に設けられ動力を発生させる駆動源と、前記下部キャリアの前記建設機械の車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に前記駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、を備える。
【0008】
このように構成することで、駆動源で発生した動力が伝達機構を介して2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に対して機械的に伝達できるので、流体力や電気による伝達機構のような駆動源からの伝達によるエネルギー損失が大きくなることを抑えて、安定した走行動作を行うことができる。また、この場合には、旋回体に伝達機構を介して駆動輪に動力を伝達する駆動源が設けられているので、旋回体の旋回と同時に駆動源の動力を駆動輪に伝達することができる。これにより、走行部の走行動作として、直進のみでなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく行うことができ、かつ安定した動作で行うことができる。
さらに、本態様では、濡れた地面や湿地等で水の影響を受けやすい下部キャリアでなく、その下部キャリアの上部に搭載される旋回体に駆動源が設けられるので、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。とくに、湿地で使用が多い建設機械に本態様の駆動伝達装置を効果的に適用することが可能である。
【0009】
上記構成で、前記駆動源は、前記旋回体に設けられるドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータを有し、前記伝達機構は、前記ドライブ駆動モータの動力が伝達される差動装置と、前記方向制御駆動モータの動力が伝達され、前記2つの駆動輪のうちの一方の前記駆動輪に対し、他方の前記駆動輪に回転差を生じさせる変速部と、を備えることが望ましい。
【0010】
上記構成で、前記変速部は、前記一方の前記駆動輪に前記方向制御駆動モータの動力を伝達するかさ歯車を有することが望ましい。
【0011】
上記構成で、前記伝達機構は、前記ドライブ駆動モータの動力を受けるドライブシャフトと、前記方向制御駆動モータの動力を受ける方向制御シャフトと、を備え、前記ドライブシャフトは、前記旋回体の旋回中心軸と同軸に設けられ、前記方向制御シャフトは、前記ドライブシャフトの外回りに公転することが望ましい。
【0012】
上記構成で、前記伝達機構は、前記方向制御シャフトに連結される第1平歯車と、前記第1平歯車に噛み合わされるとともに前記ドライブシャフトを通過させる第2平歯車と、前記第2平歯車に連結される第1かさ歯車と、前記第1かさ歯車に噛み合わされ、前記一方の前記駆動輪の車軸に連結される第2かさ歯車と、を備えることが望ましい。
【0013】
本発明の他の態様に係る駆動伝達装置は、建設機械の走行部を支持する下部キャリアに対して旋回する旋回体に設けられ動力を発生させる駆動源と、前記下部キャリアの前記建設機械の車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に前記駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、を備え、前記駆動源は、前記旋回体に設けられるドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータを有し、前記伝達機構は、前記ドライブ駆動モータの動力が伝達される差動装置と、前記方向制御駆動モータの動力が伝達され、前記2つの駆動輪のうちの一方の前記駆動輪に対し、他方の前記駆動輪に回転差を生じさせる変速部と、を備え、前記変速部は、前記一方の前記駆動輪に前記方向制御駆動モータの動力を伝達するかさ歯車を有し、前記伝達機構は、前記ドライブ駆動モータの動力を受けるドライブシャフトと、前記方向制御駆動モータの動力を受ける方向制御シャフトと、を備え、前記ドライブシャフトは、前記旋回体の旋回中心軸と同軸に設けられ、前記方向制御シャフトは、前記ドライブシャフトの外回りに公転し、前記伝達機構は、前記方向制御シャフトに連結される第1平歯車と、前記第1平歯車に噛み合わされるとともに前記ドライブシャフトを通過させる第2平歯車と、前記第2平歯車に連結される第1かさ歯車と、前記第1かさ歯車に噛み合わされ、前記一方の前記駆動輪の車軸に連結される第2かさ歯車と、を備える。
【0014】
このように構成することで、ドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータで発生した動力が伝達機構を介して2つの駆動輪のうち少なくとも一方の駆動輪に対して機械的に伝達する差動装置と変速部とを備えているので、流体力や電気による伝達機構のようなドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータからの伝達によるエネルギー損失が大きくなることを抑えて、安定した走行動作を行うことができる。また、この場合には、旋回体に伝達機構を介して駆動輪に動力を伝達するドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータが設けられ、旋回体の旋回と同時にドライブ駆動モータ及び方向制御駆動モータの動力を駆動輪に伝達することができる。しかも変速部によって一方の車軸に対して他方の車軸に回転差を生じさせることができるので、走行部の走行動作として、直進のみでなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく行うことができ、かつ安定した動作で行うことができる。
さらに、本構成では、濡れた地面や湿地等で水の影響を受けやすい下部キャリアでなく、その下部キャリアの上部に搭載される旋回体に駆動源が設けられるので、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。とくに、湿地で使用が多い建設機械に本態様の駆動伝達装置を効果的に適用することが可能である。
また、変速部の方向制御シャフトと、差動装置の走行用のドライブシャフトとが別体で設けられ、変速部の方向制御シャフトのかさ歯車を使用して一方の駆動輪の回転数を増減させて変速することができる。また、この場合には、旋回時に第1伝達シャフト31と第2伝達シャフト41とが干渉することがなく、走行動作と旋回動作とを同時に行うことができる。
さらに、この場合には、方向制御駆動モータの動力が第1平歯車、第2平歯車、第1かさ歯車、第2かさ歯車、車軸の順に伝達され、車軸に連結される駆動輪に動力を伝達することができる。そのため、方向制御駆動モータ及び方向制御シャフトが旋回中心軸から離れた位置に設けることが可能である。
【0015】
本発明の他の態様に係る建設機械は、走行部を支持する下部キャリアと、前記下部キャリアに対して旋回する旋回体と、前記下部キャリアの車幅方向両側に設けられる2つの駆動輪と、前記旋回体に設けられ動力を発生させる駆動源と、前記2つの駆動輪のうち少なくとも1つの駆動輪に前記駆動源の動力を機械的に伝達する伝達機構と、を備えた駆動伝達装置を有する。
【0016】
このように構成することで、駆動源で発生した動力が伝達機構を介して2つの駆動輪のうち少なくとも一方の駆動輪に対して機械的に伝達できるので、流体力や電気による伝達機構のような駆動源からの伝達によるエネルギー損失が大きくなることを抑えて、安定した走行動作を行うことができる。また、この場合には、旋回体に伝達機構を介して駆動輪に動力を伝達する駆動源が設けられているので、旋回体の旋回と同時に駆動源の動力を駆動輪に伝達することができる。これにより、走行部の走行動作として、直進のみでなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく行うことができ、かつ安定した動作で行うことができる。
さらに、本態様では、濡れた地面や湿地等で水の影響を受けやすい下部キャリアでなく、その下部キャリアの上部に搭載される旋回体に駆動源が設けられるので、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。
【0017】
本発明の他の態様に係る駆動伝達装置は、第1駆動体に対して旋回する第2駆動体に設けられ動力を発生させる駆動源と、前記第1駆動体に備えられる2つの駆動軸と、前記2つの駆動軸のうち少なくとも1つの駆動軸に前記駆動源の動力を伝達する伝達機構と、を備える。
【0018】
このように構成することで、駆動源で発生した動力が伝達機構を介して2つの駆動軸のうち少なくとも一方の駆動軸に対して機械的に伝達できるので、流体力や電気による伝達機構のような駆動源からの伝達によるエネルギー損失が大きくなることを抑えて、安定した走行動作を行うことができる。また、この場合には、第2駆動体に伝達機構を介して駆動軸に駆動源の動力を伝達する伝達機構が設けられているので、第2駆動体の旋回と同時に駆動源の動力を駆動軸に伝達することができる。これにより、第1駆動体が走行動作をする場合に、走行動作として、直進のみでなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく行うことができ、かつ安定した動作で行うことができる。
さらに、本態様では、第1駆動体が走行体である場合に、濡れた地面や湿地等で水の影響を受けやすい第1駆動体でなく、その第1駆動体の上部に搭載される第2駆動体に駆動源が設けられるので、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
上述の駆動伝達装置及び建設機械は、駆動源からの伝達によるエネルギー損失を抑え、直進、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく、かつ安定した動作で行うことができる。
また、上述の駆動伝達装置及び建設機械は、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態におけるショベルを側面からみた概略構成図。
図2】本発明の実施形態における旋回部と走行部との連結部の詳細を示す概略構成図。
図3】本発明の実施形態の他の形態における下部キャリアを上方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<ショベル>
図1は、本発明の建設機械に係る実施形態のショベル100を側面からみた概略構成図である。なお、以下の説明では、ショベル100を操作する図示しない操作者が向いている前方を単に前方と称する。前方に対して水平方向反対側を後方と称する。路面にショベル100を配置した状態での上下方向を単に上下方向と称する。前後方向及び上下方向に直交する方向を車幅方向と称する。図1では、ショベル100を車幅方向からみた状態を示している。
【0023】
図1に示すように、ショベル100は、自走する走行体101と、走行体101の上部に旋回機構10を介して設けられ、走行体101に対して旋回する旋回体103(第2駆動体)と、旋回体103上に設けられた作用部104と、を備える。走行体101及び旋回機構10は、図2に示す減速機付き電動モータ(以下、駆動モータ2という)により駆動される。図2に示すように、走行体101は、例えば車幅方向に並ぶ2つのクローラ105(第1クローラ105A、第2クローラ105B)と、これら一対のクローラ105を支持する下部キャリア106(第1駆動体)と、を備える。しかしながらこれに限られるものではなく、クローラ105に代わって車輪等を用いてもよい。クローラ105は、駆動輪105aを備え、駆動輪105aが回転することにより無端状のクローラ105全体が回転駆動する。
【0024】
図1に示すように、作用部104は、前後方向に長いブーム108及びアーム109と、バケット110と、を備える。これらブーム108、アーム109、及びバケット110は、それぞれ駆動伝達装置(図示省略)を介して回転自在に連結されている。
【0025】
図2は、走行体101と旋回体103に設けられる駆動伝達装置1の詳細を示す概略構成図である。走行体101の下部キャリア106は、旋回機構10や駆動伝達装置1を備える。図3は、図2のA-A線の上方から見た他の形態を示す平面図である。図2は、旋回ギア11が上方から見たとき旋回ギア11の外周部が第2平歯車43の上方に重なる外径であり、かつ第1平歯車42がこの第1平歯車42の外周部がリングギア12の下方に重なる外径になっている。一方、図3に示すように、旋回ギア11と第1平歯車42の径寸法が図2に示す旋回ギア11と第1平歯車42よりも小径であってもよい。
駆動伝達装置1は、図2に示す外側の二点鎖線で囲まれる範囲に配置される構成部品を備えている。
【0026】
図2に示すように、駆動モータ2は、ドライブ駆動モータ2A(駆動源)と、方向制御駆動モータ2B(駆動源)と、旋回駆動モータ2Cと、からなる。旋回体103には、動力を発生させる3つの駆動モータ2(2A、2B、2C)を備えている。駆動伝達装置1は、駆動モータ2のうち2つの駆動モータ2A、2B(請求項の駆動源)の回転力を、2つのクローラ105のうち少なくとも1つのクローラ105に伝達する。駆動伝達装置1は、他の1つの駆動モータ2Cの回転数を、旋回力として旋回体に伝達する。
【0027】
ドライブ駆動モータ2Aは、クローラ105の駆動輪105aに回転力を与えて走行体101を走行させる駆動源となる。方向制御駆動モータ2Bは、車幅方向の両側に設けられるクローラ105A,105Bの駆動輪105aに回転差を生じさせるための動力を伝達する駆動源となる。旋回駆動モータ2Cは、走行体101に対して旋回体103を旋回させる駆動源となる。方向制御駆動モータ2Bと旋回駆動モータ2Cとは、ドライブ駆動モータ2Aの第1回転軸線C1から径方向外側で、互いに干渉しない位置に設けられている。
【0028】
各駆動モータ2A、2B、2Cは、例えば旋回体103に設けられた外部電源(バッテリ)の電力が供給されることにより駆動するいわゆる電動モータである。モータ2としては、いわゆるブラシ付きモータやブラシレスモータ等、電力が供給されることにより駆動するさまざまなモータを採用することができる。
【0029】
駆動モータ2A、2B、2Cは、それぞれの回転中心回りに回転するモータシャフト21A、21B、21Cのシャフト軸方向を旋回体103の旋回中心軸Oに平行となる方向に向けて配置されている。後述するドライブ駆動モータ2Aの回転軸(第1伝達シャフト31の第1回転軸線C1)のモータシャフト21Aの第1回転軸線C1と旋回中心軸Oとは、一致している。
【0030】
<旋回機構>
図2及び図3に示すように、旋回機構10は、旋回駆動モータ2Cのモータシャフト21Cに連結された旋回ギア11と、走行体101の上部に設けられ旋回中心軸Oと同軸上に設けられ旋回ギア11が噛み合うリングギア12と、を備える。
リングギア12は、内歯12aを有している。リングギア12の内周側には、旋回ギア11、ドライブ駆動モータ2Aに連結される第1伝達シャフト31(ドライブシャフト)、及び方向制御駆動モータ2Bに連結される第2伝達シャフト41が配置されている。旋回駆動モータ2Cが駆動することにより旋回ギア11がリングギア12の内歯12aに噛み合いながら回転し、その旋回ギア11の回転方向に応じて旋回ギア11がリングギア12の周方向に設けられる内歯12aに沿って正逆方向のいずれかに公転する。これにより、旋回体103が走行体101上で旋回する。
【0031】
<駆動伝達装置>
次に、駆動伝達装置1について説明する。
図2に示すように、駆動伝達装置1は、一対のクローラ105A,105Bの第2回転軸線(請求項の回転軸線の一例)C2上に配置されている。第2回転軸線C2上で、駆動伝達装置1を挟んで両側に、第1クローラ105Aと第2クローラ105Bとが配置される。これらクローラ105A、105Bが駆動伝達装置1に対して支持されることで、駆動伝達装置1の回転駆動力がクローラ105A、105Bに伝達される。これにより一対のクローラ105A、105Bのそれぞれの駆動輪105aは、下部キャリア106に対して第2回転軸線C2回りに回動する。
【0032】
駆動伝達装置1は、下部キャリア106内に収納された差動装置3、及び変速装置4(変速部)を備える。差動装置3は、ドライブ駆動モータ2Aに接続され、ドライブ駆動モータ2Aの動力が伝達される。変速装置4は、方向制御駆動モータ2Bに接続され、方向制御駆動モータ2Bの動力が伝達される。ドライブ駆動モータ2Aの第1モータシャフト21Aと、方向制御駆動モータ2Bの第2モータシャフト21Bとは平行である。
【0033】
<差動装置>
図2に示すように、差動装置3は、第1モータシャフト21Aに接続された第1伝達シャフト31を介して連結されている。差動装置3は、第1伝達シャフト31のドライブ駆動モータ2Aとは反対側端に設けられ、第1回転軸線C1回りに回転する第1かさ歯車32と、第1かさ歯車32に噛み合わされ、第2回転軸線C2回りに回転する第2かさ歯車33と、第2かさ歯車33に固定されたディファレンシャルケース34と、ディファレンシャルケース34内に突出した形で回転自在に支持された一対のピニオンギア35A、35Bと、ピニオンギア35A、35Bに噛み合わされる一対のサイドギア36A、36B(第1サイドギア36A、第2サイドギア36B)と、を備える。
【0034】
第2かさ歯車33の径方向中央には、ディファレンシャルケース34を通過させる円形状の開口穴(図示省略)が形成されている。図2では、見やすいように第2かさ歯車33の一部が省略されている。第2かさ歯車33の開口穴には、ディファレンシャルケース34が通過した状態で固定されている。
【0035】
ディファレンシャルケース34は筒枠状に形成されており、第2回転軸線C2の軸方向で対向配置された2つの側面34a,34b(第1側面34a、第2側面34b)と、これら側面34a,34bの面方向に直交する方向を面方向とし、対向配置された2つの側面34c,34d(第3側面34c、第4側面34d)と、を有する。4つの側面34a~34dのうち、第3側面34cと第4側面34dとがそれぞれ第2かさ歯車33に固定されている。
【0036】
また、第3側面34c及び第4側面34dには、ピニオンギア35A、35Bが設けられている。ピニオンギア35A、35Bは、軸方向と直交する第3回転軸線C3(第1回転軸線C1に平行、かつ第1伝達シャフト31と同軸上に配置された軸線)を軸として各側面34c,34dに回転自在に支持されているとともに、第2回転軸線C2回りにディファレンシャルケース34と一体となって回転する。
【0037】
一対のサイドギア36A,36Bは、ピニオンギア35A、35Bを挟んで両側に配置されている。すなわち、一対のサイドギア36A,36Bのうち、第1サイドギア36Aは、ディファレンシャルケース34の第1側面34aの内側に第2回転軸線C2と同軸上に配置されている。一対のサイドギア36A,36Bのうち、第2サイドギア36Bは、ディファレンシャルケース34の第2側面34bの内側に第2回転軸線C2と同軸上に配置されている。
【0038】
第1サイドギア36Aには、第1側面34a側の端面36aに、第1作動出力軸37A(車軸)の一端が設けられている。第1作動出力軸37Aは、第2回転軸線C2と同軸上に配置されている。第1作動出力軸37Aの他端は、第1側面34aに形成された貫通孔34eを介して突出されている。すなわち、第1サイドギア36Aは、ディファレンシャルケース34の第1側面34aに回転自在に支持されている。第1作動出力軸37Aの他端には、第1クローラ105Aの駆動輪105aに接続されている。つまり、第1作動出力軸37Aの回転力は、第1クローラ105Aの駆動輪105aに伝達され、第1クローラ105Aに回転力を与える。
【0039】
第2サイドギア36Bには、第2側面34b側の端面36bに、第2作動出力軸37B(車軸)の一端が設けられている。第2作動出力軸37Bは、第2回転軸線C2と同軸上に配置されている。第2作動出力軸37Bの他端は、第2側面34bに形成された貫通孔34f及び後述する第4かさ歯車45を介して突出されている。すなわち、第2サイドギア36Bは、ディファレンシャルケース34の第2側面34bに回転自在に支持されている。第2作動出力軸37Bの他端には、第2クローラ105Bの駆動輪105aに接続されている。つまり、第2作動出力軸37Bの回転力は、第2クローラ105Bの駆動輪105aに伝達され、第2クローラ105Bに回転力を与える。
【0040】
<変速装置>
次に、変速装置4について説明する。
図2に示すように、変速装置4は、第2作動出力軸37Bに対して第1作動出力軸37Aに回転差を生じさせる機能をもつ。変速装置4は、差動装置3の第1伝達シャフト31とは別で、方向制御駆動モータ2Bに連結された第2伝達シャフト41(方向制御シャフト)を介して連結されている。具体的に変速装置4は、第2伝達シャフト41の方向制御駆動モータ2Bとは反対側端に設けられた第1平歯車42と、第1平歯車42に噛み合いかつ第1回転軸線C1回りに回転する平歯車からなる第2平歯車43(請求項における平歯車)と、第2平歯車43に同軸上に固定され第1回転軸線C1回りに回転する第3かさ歯車44と、第3かさ歯車44に噛み合わされるとともに、第2作動出力軸37Bに同軸上に固定された第4かさ歯車45と、を備える。
【0041】
図3に示すように、第2伝達シャフト41及び第1平歯車42は、第1伝達シャフト31に対して径方向外側に配置されている。第1平歯車42は、平歯車である。第2平歯車43は、第1平歯車42に噛み合って自転するとともに、旋回体103が走行体101に対して旋回することにより、方向制御駆動モータ2B及び第2伝達シャフト41とともに第1伝達シャフト31の外回り(すなわち第1回転軸線C1回り)に公転する。第2平歯車43の径方向中央には、第1伝達シャフト31を通過させる貫通孔43aが形成されている。第2平歯車43のディファレンシャルケース34側の端面43bの径方向中央には、その端面43bに直交する方向に延びる筒状の連結シャフト46が連結されている。連結シャフト46内には、第1伝達シャフト31が通過している。連結シャフト46の第2平歯車43とは反対側端には、第1回転軸線C1回りに回転する第3かさ歯車44が設けられている。
【0042】
第3かさ歯車44の径方向中央には、第1伝達シャフト31を通過させる貫通孔44aが形成されている。すなわち、第3かさ歯車44は、第1かさ歯車32と同軸上に設けられ、第1回転軸線C1回りに回転する。
第4かさ歯車45は、第2回転軸線C2回りに回転する。第4かさ歯車45の径方向中央には、第2作動出力軸37Bを通過させる貫通孔45aが形成されている。第4かさ歯車45の貫通孔45aには、第2作動出力軸37Bを通過させた状態で固定されている。
【0043】
変速装置4では、ショベル100の走行時に、方向制御駆動モータ2Bの回転数及び回転方向をドライブ駆動モータ2Aの回転数及び回転方向と一致させることにより、第1作動出力軸37Aと第2作動出力軸37Bの回転も一致するため、走行体101は直進する。そして、方向制御駆動モータ2Bの回転数及び回転方向をドライブ駆動モータ2Aの回転数及び回転方向と変えることにより、第1作動出力軸37Aと第2作動出力軸37Bとに回転差が生じ、走行体101は曲進、ピボット、スピンターン等の走行動を行うことができる。
【0044】
<駆動伝達装置の動作>
次に、駆動伝達装置1の動作について説明する。
図2に示すように、旋回体103に設けられたドライブ駆動モータ2Aを駆動させると、そのドライブ駆動モータ2Aのモータシャフト21Aの回転が第1伝達シャフト31を介して駆動伝達装置1の第1かさ歯車32に伝達される。そして、この第1かさ歯車32に噛合う第2かさ歯車33が回転される。さらに、第2かさ歯車33に固定されているディファレンシャルケース34が回転される。すると、ピニオンギア35A、35Bが第2回転軸線C2回りに回転される。これにより、ピニオンギア35A、35Bに噛合う一対のサイドギア36A,36Bが回転される。
【0045】
一対のサイドギア36A,36Bのうち、第1サイドギア36Aの回転は、第1作動出力軸37Aを介して第1クローラ105Aの駆動輪105aに伝達される。一対のサイドギア36A,36Bのうち、第2サイドギア36Bの回転は、第2作動出力軸37Bを介して第2クローラ105Bに伝達される。
このとき、変速装置4の第4かさ歯車45は、第2作動出力軸37Bとともに回転する。第2作動出力軸37Bの回転数は、方向制御駆動モータ2Bによって変速装置4を介して制御される。以下、方向制御時の変速装置4の動作について説明する。
【0046】
変速装置4は、方向制御駆動モータ2Bの駆動によって、第2作動出力軸37Bを適宜な回転数で回転させる。つまり、変速装置4では、第1作動出力軸37Aと第2作動出力軸37Bとの回転数を同じにしたり、回転差を生じさせて回転させる。
【0047】
ショベル100を直進走行させる際には、方向制御駆動モータ2Bの回転数及び回転方向を、ドライブ駆動モータ2Aの回転数及び回転方向と一致させるように制御する。つまり、直進する場合には第1作動出力軸37Aと第2作動出力軸37Bとが同じ回転数で回転するため、変速装置4の第2作動出力軸37Bに固定され第2回転軸線C2回りに回転する第4かさ歯車45、この第4かさ歯車45に噛み合う第1回転軸線C1回りに回転する第3かさ歯車44、第3かさ歯車44に一体で回転する第2平歯車43、第2平歯車43に噛み合う第1平歯車42、及び第1平歯車42を第2伝達シャフト41を介して連結する方向制御駆動モータ2Bを第2作動出力軸37Bと同じ回転数で回転するように制御する。これにより、ショベル100の走行体101は、直進走行となる。
【0048】
ショベル100を曲進走行、あるいはピボット、スピンターン等の走行動を行う際には、方向制御駆動モータ2Bの回転数及び回転方向を、ドライブ駆動モータ2Aの回転数及び回転方向と変えるように制御する。つまり、曲進等する場合には、第1作動出力軸37Aと第2作動出力軸37Bとに回転差が生じるように方向制御駆動モータ2Bが制御される。
【0049】
例えば、走行体101を一方向に曲進(図2に示す第1方向X1)させる場合には、ドライブ駆動モータ2Aの駆動により左右のクローラ105A、105Bを回転させた状態で、第1クローラ105Aを第2クローラ105Bより早く回転させる。具体的には、第2作動出力軸37Bの回転数、すなわち第3かさ歯車44及び第4かさ歯車45の回転数が第1作動出力軸37Aより小さくなる回転差が生じるように制御することで、走行体101は第1方向X1に曲進する。
【0050】
また、走行体101を他方向に曲進(図2に示す第2方向X2)させる場合には、ドライブ駆動モータ2Aの駆動により左右のクローラ105A、105Bを回転させた状態で、第2クローラ105Bを第1クローラ105Aより早く回転させる。具体的には、第2作動出力軸37Bの回転数、すなわち第3かさ歯車44及び第4かさ歯車45の回転数が第1作動出力軸37Aより大きくなる回転差が生じるように制御することで、走行体101は第2方向X2に曲進する。
【0051】
次に、走行体101の走行中に旋回体103が旋回する場合には、ドライブ駆動モータ2Aの走行速度と、旋回駆動モータ2Cの旋回による回転速度とを不図示の制御部で検出し、その検知値に応じて方向制御駆動モータ2Bの回転数を制御する。例えば、走行体101を直進走行させながら旋回する場合には、走行時の回転速度に対して、旋回による回転数を増減することで、第2伝達シャフト41の回転速度を第1伝達シャフト31の回転速度に一致するように方向制御駆動モータ2Bを制御する。さらに、走行体101を曲進走行(ピボット、スピンターン等の走行も同様)させながら旋回する場合には、走行時の回転速度に対して、旋回による回転数を増減することで、第2伝達シャフト41の回転速度を一対の作動出力軸37A、37Bに回転差が生じるように、ドライブ駆動モータ2Aと方向制御駆動モータ2Bがドライブ駆動モータ2Aと異なる回転するとなるように、方向制御駆動モータ2Bを制御する。
【0052】
このように、上述の実施形態では、図2に示すように、駆動伝達装置1は、ショベル100の走行体101を支持する下部キャリア106に対して旋回する旋回体103に設けられ動力を発生させるドライブ駆動モータ2A(駆動源)及び方向制御駆動モータ2B(駆動源)と、下部キャリア106のショベル100の車幅方向両側に設けられる2つのクローラ105(駆動輪)のうち少なくとも1つのクローラ105にドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bの動力を機械的に伝達する伝達機構と、を備える。このため、ドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bで発生した動力が伝達機構を介して2つのクローラ105のうち少なくとも1つのクローラ105に対して機械的に伝達できるので、流体力や電気による伝達機構のような駆動源からの伝達によるエネルギー損失が大きくなることを抑えて、安定した走行動作を行うことができる。また、この場合には、旋回体103に伝達機構を介してクローラ105の駆動輪105aに動力を伝達するドライブ駆動モータ2Aや方向制御駆動モータ2Bの駆動源が設けられているので、旋回体103の旋回と同時にこれら駆動源の動力を駆動輪105aに伝達することができる。これにより、走行体101の走行動作として、直進のみでなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく行うことができ、かつ安定した動作で行うことができる。さらに、本実施形態では、濡れた地面や湿地等で水の影響を受けやすい下部キャリア106でなく、その下部キャリア106の上部に搭載される旋回体103に駆動源が設けられるので、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。とくに、湿地で使用が多い建設機械に本実施形態の駆動伝達装置1を効果的に適用することが可能である。
【0053】
駆動源は、旋回体103に設けられるドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bを有している。伝達機構は、ドライブ駆動モータ2Aの動力が伝達される差動装置3と、方向制御駆動モータ2Bの動力が伝達され、2つの駆動輪105aのうちの一方の駆動輪10aに対し、他方の駆動輪105aに回転差を生じさせる変速装置4と、を備えている。このように構成することで、ドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bで発生した動力が伝達機構を介して2つの駆動輪105aのうち少なくとも一方の駆動輪105aに対して機械的に伝達する差動装置3と変速装置4とを備えているので、流体力や電気による伝達機構のようなドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bからの伝達によるエネルギー損失が大きくなることを抑えて、安定した走行動作を行うことができる。また、この場合には、旋回体103に伝達機構を介して駆動輪105aに動力を伝達するドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bが設けられ、旋回体103の旋回と同時にドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bの動力を駆動輪105aに伝達することができる。しかも変速装置4によって一方の第2作動出力軸37Bに対して他方の第1作動出力軸37Aに回転差を生じさせることができるので、走行部の走行動作として、直進のみでなく、曲進、ピボット、スピンターン等の走行動作を旋回動作と同時に効率よく行うことができ、かつ安定した動作で行うことができる。さらに、本構成では、濡れた地面や湿地等で水の影響を受けやすい下部キャリア106でなく、その下部キャリア106の上部に搭載される旋回体103にドライブ駆動モータ2A及び方向制御駆動モータ2Bが設けられるので、電動機の浸水がなく走行動作を安定させ、感電を防止できる。とくに、湿地で使用が多いショベル100等の建設機械に本実施形態の駆動伝達装置1を効果的に適用することが可能である。
【0054】
変速装置4は、一方の駆動輪105aに方向制御駆動モータ2Bの動力を伝達するかさ歯車44、45を有する。伝達機構は、ドライブ駆動モータ2Aの動力を受ける第1伝達シャフト31と、方向制御駆動モータ2Bの動力を受ける第2伝達シャフト41と、を備えている。第1伝達シャフト31は、旋回体103の旋回中心軸Oと同軸に設けられ、第2伝達シャフト41は、第1伝達シャフト31の外回りに公転する。これにより、変速装置4の第2伝達シャフト41と、差動装置3の走行用の第1伝達シャフト31とが別体で設けられ、変速装置4の第2伝達シャフト41のかさ歯車44、45を使用して一方の駆動輪105aの回転数を増減させて変速することができる。またこの場合には、旋回時に第1伝達シャフト31と第2伝達シャフト41とが干渉することがなく、走行動作と旋回動作とを同時に行うことができる。
【0055】
伝達機構は、第2伝達シャフト41に連結される第1平歯車42と、第1平歯車42に噛み合わされるとともに第1伝達シャフト31を通過させる第2平歯車43と、第2平歯車43に連結される第3かさ歯車44(請求項の第1かさ歯車)と、第3かさ歯車44に噛み合わされ、一方の駆動輪105aの第2作動出力軸37Bに連結される第4かさ歯車45(請求項の第2かさ歯車)と、を備える。これにより、方向制御駆動モータ2Bの動力が第1平歯車42、第2平歯車43、第3かさ歯車44、第4かさ歯車45、第2作動出力軸37Bの順に伝達され、第2作動出力軸37Bに連結される駆動輪105aに動力を伝達することができる。そのため、方向制御駆動モータ2B及び第2伝達シャフト41が旋回中心軸Oから離れた位置に設けることが可能である。
【0056】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0057】
例えば、上記の実施形態では、下部キャリア106に設けられる駆動輪105aによって駆動する走行部として一対のクローラ105を採用しているが、クローラ105に限定されることはなく、車輪であってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、方向制御駆動モータ2Bで作動する変速装置4によってその動力を一方の駆動輪105aのみに伝達して変速する構成としているが、車幅方向両側の駆動輪105aに方向制御駆動モータ2Bの動力を伝達する構成としてもよい。
【0059】
上記実施形態のように、伝達機構は、第2伝達シャフト41に連結される第1平歯車42と、第1平歯車42に噛み合わされるとともに第1伝達シャフト31を通過させる第2平歯車43と、第2平歯車43に連結される第3かさ歯車44と、第3かさ歯車44に噛み合わされ、一方の駆動輪105aの第2作動出力軸37Bに連結される第4かさ歯車45と、を備える構成としているが、このような構成に限定されることはない。
【0060】
また、駆動伝達装置1が備えられる建設機械は、上記の実施形態のようにショベル100に限定されることはなく、ショベル以外の建設機械にも適用することができる。
【0061】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の物体で構成されているものは、当該複数の物体を一体化してもよく、逆に一つの物体で構成されているものを複数の物体に分けることができる。一体化されているか否かにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0062】
1…駆動伝達装置、2…駆動モータ、2A…ドライブ駆動モータ(駆動源)、2B…方向制御駆動モータ(駆動源)、2C…旋回駆動モータ、3…差動装置(伝達機構)、31…第1伝達シャフト(ドライブシャフト)、32…第1かさ歯車、33…第2かさ歯車、34…ディファレンシャルケース、37A…第1作動出力軸(車軸)、37B…第2作動出力軸(車軸)、4…変速装置(変速部、伝達機構)、41…第2伝達シャフト(方向制御シャフト)、42…第1平歯車、43…第2平歯車、44…第3かさ歯車(第1かさ歯車)、45…第4かさ歯車(第2かさ歯車)、10…旋回機構、11…旋回ギア、12…リングギア、100…ショベル(建設機械)、101…走行体(走行部)、103…旋回体(第2駆動体)、105…クローラ、105a…駆動輪(駆動軸)、106…下部キャリア(第1駆動体)、C1…第1回転軸線、C2…第2回転軸線、O…旋回中心軸
図1
図2
図3