(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159164
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221006BHJP
B29C 48/154 20190101ALI20221006BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20221006BHJP
【FI】
B32B27/00 B
B29C48/154
B29C48/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056605
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021061174
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 優佳
(72)【発明者】
【氏名】菅俣 祐太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F100AK03B
4F100AK05A
4F100AK07B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100CA23B
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4F100YY00B
4F207AA03
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4F207KA17
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4F207KB26
4F207KK64
4F207KL84
4F207KM15
4F207KW41
(57)【要約】
【課題】本発明は、機能層による機能性を付与しつつ、成形速度を高速化かつシートを薄層化してもドローレゾナンスが発生しにくい積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備え、前記押出ラミネート層は、支持層と機能層の少なくとも2層を含み、前記支持層は、230℃、ひずみ速度1sec
-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4である、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備え、
前記押出ラミネート層は、支持層と機能層の少なくとも2層を含み、
前記支持層は、230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4である、積層体。
【請求項2】
前記押出ラミネート層は共押出ラミネート層である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記支持層は、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記支持層は、ポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記支持層は、分岐鎖を有するポリプロピレン系樹脂を含有する、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項6】
前記押出ラミネート層は延伸層である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項7】
前記支持層はフィラーを含有し、前記フィラーの平均粒子径が0.01~25μmである、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項8】
前記機能層が印刷受容層である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項9】
前記機能層がヒートシール層である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項10】
前記支持層は高密度ポリエチレンを含有する、請求項1または2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂をシート状に成形する方法として、押出成形法が知られている。押出成形法は、押出機の先にある金型(ダイ)から樹脂を押し出すことで成形する方法であり、1種類の樹脂を押し出す方法だけでなく、複数の樹脂を同時に押し出す共押出成形法や、基材上に樹脂を押し出しながら積層する押出ラミネート法等がある。このような押出成形法では、ダイから押し出された樹脂がロール間に引き取られ、シート状に成形される。
【0003】
ここで、近年の環境問題対策やコストダウンの観点から、成形速度の高速化や、シートの薄層化が求められている。シートを薄層化しようとすると、ダイからの樹脂の押出速度を低下させなければならない。また、成形速度を大きくすると、ダイから押し出された樹脂の引取速度が大きくなる。このとき、押出速度が小さく、引取速度が大きくなると、押し出される樹脂に大きな負荷がかかり、押出後引取前の樹脂が波打つようなムラ、いわゆるドローレゾナンス(サージング)が発生することがある。
【0004】
押出速度と引取速度のバランスをとりつつ成形速度を遅くするとドローレゾナンスを抑制することができるが、生産性が低下する。このため、材料の面で改善する方法が試みられている。例えば、樹脂の流動性を向上させることや、低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐ポリプロピレン等を添加すること(特許文献1、2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-181425号公報
【特許文献2】特許第5862486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、積層体表面に、ヒートシール等の機能を付与する層を設けようとすると、かかる層の成形におけるドローレゾナンス改良の困難性が高まる。たとえば、インモールドラベルではヒートシール層に分子量分布が狭い樹脂を用いるため、ドローレゾナンス等の成形不良が生じやすい。樹脂の流動性が高すぎると、ヒートシール時に成形不良を生じやすく、特許文献1、2に記載の技術では、密着性が低下するなど、積層体における機能層の性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、機能層による機能性を付与しつつ、成形速度を高速化かつシートを薄層化してもドローレゾナンスが発生しにくい積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ひずみ硬化度が調整された支持層を機能層と共に共押出することで、機能層の性能を阻害することなくドローレゾナンスを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0009】
[1] 基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備え、
前記押出ラミネート層は、支持層と機能層の少なくとも2層を含み、
前記支持層は、230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4である、積層体。
[2] 前記押出ラミネート層は共押出ラミネート層である、[1]に記載の積層体。
[3] 前記支持層は、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000である、[1]または[2]に記載の積層体。
[4] 前記支持層は、ポリオレフィン系樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか1に記載の積層体。
[5] 前記支持層は、分岐鎖を有するポリプロピレン系樹脂を含有する、[1]~[4]のいずれか1に記載の積層体。
[6] 前記押出ラミネート層は延伸層である、[1]~[5]のいずれか1に記載の積層体。
[7] 前記支持層はフィラーを含有する、[1]~[6]のいずれか1に記載の積層体。
[8] 前記機能層が印刷受容層である、[1]~[7]のいずれか1に記載の積層体。
[9] 前記機能層がヒートシール層である、[1]~[8]のいずれか1に記載の積層体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機能層を有する積層体において、成形速度を高速化かつシートを薄層化しても機能層の性能を阻害することなくドローレゾナンスが発生しにくい積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の積層体について詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0013】
[積層体]
本発明の積層体は、基材層と、基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備える。押出ラミネート層は、支持層と機能層の少なくとも2層を含み、支持層は、230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4である。
支持層のひずみ硬化度が上記特定の範囲内であることで、機能層の性能を阻害することなくドローレゾナンスが発生しにくい積層体を得ることができる。押出ラミネート層が基材層の両面に設けられる場合、両側の機能層の性能を阻害することなくドローレゾナンスが発生しにくい積層体を得ることができ、積層体に同一又は異なる機能を付与することができる。
【0014】
押出成形において、ダイより押し出され基材層と貼り合わされるまでの距離(エアギャップ)は、小さい方がドローレゾナンス抑制の観点からは有利である。一方、押出ラミネート層を基材層にラミネートする際に、押出ラミネート層の幅を基材層の幅に合わせる必要があり、その方法としてエアギャップを変更することが考えられる。しかし、エアギャップ変更に伴い、押し出された樹脂が基材層に到達するまでの間に両側縁部の膜厚が増加するネックイン現象により、押出ラミネート層の幅が変化するおそれがある。したがって、エアギャップをドローレゾナンス抑制の目的で変更することは難しい。そこで、押出ラミネート層が、上記特定のひずみ硬化度を有する支持層を含むことで、押出ラミネート層自体の材料面からドローレゾナンス抑制にアプローチすることとした。
【0015】
<押出ラミネート層>
押出ラミネート層は支持層と機能層の少なくとも2層を含む。機能層とは別に支持層を有することで、機能層をラミネートする際のドローレゾナンスやネックインを抑制し、成形性を良好に維持できる。
支持層と機能層の配置は特に制限されず、基材層上に支持層と機能層がこの順で設けられていてもよく、基材層上に機能層と支持層がこの順で設けられていてもよい。
また、押出ラミネート層は基材層の少なくとも一方の面に設けられ、基材層の両面に設けられてもよい。
【0016】
図1および
図2は、基材層10の一方の面に押出ラミネート層20が設けられた積層体1の断面図である。
さらに、
図1の積層体1では、基材層10の一方の面に支持層21と機能層22がこの順で設けられおり、
図2の積層体1では、基材層10の一方の面に機能層22と支持層21がこの順に設けられている。
図3は、基材層10の両面に押出ラミネート層20A,20Bが設けられた積層体1の断面図である。さらに、
図3の積層体1では、基材層10の一方の面に支持層21Aと機能層22Aがこの順に設けられ、他方の面に支持層21Bと機能層22Bがこの順に設けられている。
【0017】
押出ラミネート層は共押出ラミネート層であることが好ましい。機能層と支持層を共押出することで、ドローレゾナンス等の成形不良が生じやすい樹脂を機能層に使用した場合でも、機能層の性能を阻害することなく成形性を改善することができる。
【0018】
押出ラミネート層を共押出ラミネート層とする場合、支持層樹脂と機能層樹脂間の粘度差を少なくすることで、ダイス内部での積層時に乱流の発生を抑制することができ、機能層の性能が阻害されることを防ぐことができる。支持層樹脂のメルトフローレート(MS:230℃、2.16kg荷重)に対する機能層樹脂のメルトフローレート(MF:230℃、2.16kg荷重)の比(MF/MS)は、上記観点から、0.1~10であることが好ましく、0.2~5であることがより好ましく、0.4~3であることがさらに好ましく、0.5~2であることが特に好ましい。
【0019】
種々の機能の付加を可能とする観点から、押出ラミネート層は、延伸層であることが好ましい。延伸軸数は1軸以上が好ましく、押出ラミネート層は1軸延伸層または2軸延伸層であることが好ましい。
【0020】
押出ラミネート層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、積層体全体を薄くしつつ種々の機能の付加を可能とする観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。なお、押出ラミネート層が延伸層である場合、押出ラミネート層の厚みは、上記厚みを延伸倍率で除した範囲内であることが好ましい。
【0021】
押出ラミネート層は、延伸層であることが好ましい。延伸することによって印刷用紙として各種印刷適性に優れる厚み寸法及びコシ(stiffness)が得られやすく、また、印刷用紙の総厚み寸法のバラツキが緩和されて均一厚みが得られやすく、さらには平坦な表面が得られやすくなる。フィラーを含有しない場合、シートの透明性も向上する。さらに、支持層のひずみ硬化度が上記特定の範囲内であることで、延伸時に薄膜の部分の粘度が上昇し、より厚みが均一なシートが得られる。また、延伸は少なくとも一方向にされていればよい。一方、表面破れを防止する観点からは、押出ラミネート層は無延伸層であることが好ましい。
【0022】
<支持層>
支持層は、機能層をラミネートする際のドローレゾナンスやネックインを抑制し、成形性を良好に維持するために設けられる。
【0023】
支持層は、230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4である。
ひずみ硬化度は溶融、伸長時の強度を表す指標である。ひずみ硬化度が大きいと、引取ロール付近で粘度が向上する結果、押出成形の際のドローレゾナンスを抑制することができる。また、ひずみ硬化度が大きいと、溶融張力が向上する結果、押出成形の際のネックインを抑制することができる。一方、ひずみ硬化度を小さく制御することにより引取ロール付近の過剰な張力上昇によるエアギャップ(ダイの押出口から引取ロールまでの空間)間の応力分散の不均一性を解消し、ドローレゾナンスの悪化や成形中の破断を抑制することができる。かかる観点から、ひずみ硬化度は、0.05以上、好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.15以上である。また、ひずみ硬化度は、0.4以下、好ましくは0.37以下、さらに好ましくは0.34以下である。
【0024】
ひずみ硬化度の具体的な測定方法は、実施例において説明する。
【0025】
支持層は、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000であることが好ましい。
複素粘度は、粘性率を表す指標であり、一般的な樹脂では複素粘度が大きいほど流動性が低い傾向にある。3η+を上記下限値以上とすると、押出時に乱流の発生によるシャークスキンなどの成形不良を抑制し、3η+を上記上限値以下とすると、押出時の樹脂圧力の上昇とこれによる押出口のリップの開きを抑制し、ドローレゾナンスを抑制できる傾向がある。かかる観点から、3η+は好ましくは2000以上、さらに好ましくは4000以上、特に好ましくは5000以上である。また、3η+は15000以下、好ましくは14000以下、さらに好ましくは13000以下である。
【0026】
複素粘度は、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で、粘弾性測定装置を用いて測定して得られる。
なお、複素粘度は、上記のとおり230℃で測定するため、かかる温度では樹脂が溶融状態にある。したがって、支持層形成用樹脂組成物と支持層の複素粘度は同値となる。
【0027】
支持層は、樹脂組成物を成形して得られる。
支持層に用いられる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましく、特に限定されないが、機械的強度の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂が好ましい。
また、支持層のひずみ硬化度を上記特定範囲とするために、樹脂組成物はひずみ硬化性を有する樹脂を含むことが好ましい。ひずみ硬化性とは、ひずみにより粘度が上昇する特性を意味する。ひずみ硬化性を有する樹脂として具体的には分岐鎖を有する樹脂及び超高分子量樹脂等が挙げられる。
【0028】
分岐鎖を有するポリオレフィン系樹脂としては、長鎖分岐状ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂(密度0.910~0.930g/cm3)、低分子量ポリエチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。長鎖分岐状であることは、分岐指数g’の算出により確認することができる。分岐指数g’は下記式から算出できる。分岐指数g’が1より小さい値であると、長鎖分岐構造を有すると判断できる。長鎖分岐構造は、1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより形成される短鎖分岐構造とは区別される。
分岐指数g’=Vbr/Vlin
Vbrは長鎖分岐構造を有する樹脂の固有粘度、Vlinは長鎖分岐構造を有する樹脂と同じ分子量を有する線状樹脂の固有粘度を示す。
超高分子量ポリオレフィン系樹脂としては、超高分子量ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
特に長鎖分岐状のポリプロピレン系樹脂が、耐熱性の観点から好ましく、特にメタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合によって製造されたポリプロピレンが好ましい。かかるポリプロピレンは合成されたものでもよく、また市販品も使用でき、日本ポリプロ(株)社製:ウェイマックスMFX3、ウェイマックスMFX6、ウェイマックスMFX8等が好適に用いられる。
ひずみ硬化性を有する樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
【0029】
支持層における、ひずみ硬化性を有する樹脂の含有量は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。かかる範囲であることで、樹脂組成物のひずみ硬化度が十分な範囲となり成形性が良好となり、また、溶融張力が高くなり過ぎずドローレゾナンスの悪化や成形中の破断が低減する傾向がある。
【0030】
支持層は、ひずみ硬化性を有する樹脂以外に、その他の樹脂をさらに含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン等の直鎖状ポリオレフィン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。上記その他の樹脂は、直鎖状ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、直鎖状ポリプロピレン系樹脂を含むことがより好ましい。これらは2種以上混合して用いることもできる。支持層のひずみ硬化度を所定の範囲内とするためには、上記その他の樹脂の含有量は、ひずみ硬化性を有する樹脂100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることがさらに好ましい。また、上記その他の樹脂の含有量は、ひずみ硬化性を有する樹脂100質量部に対して2000質量部以下であることが好ましく、1000質量部以下であることがより好ましく、500質量部以下であることがさらに好ましい。
また、押出ラミネート層が延伸層である場合は、支持層は高密度ポリエチレン系樹脂をさらに含むことが好ましい。高密度ポリエチレン系樹脂は0.940~0.960g/cm3の密度を有するポリエチレン系樹脂である。支持層がさらに高密度ポリエチレン系樹脂を含むことで、延展性が向上し、延伸時の破断や偏肉を抑制することができる。支持層中の高密度ポリエチレン系樹脂の含有量は、ひずみ硬化性を有する樹脂100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。また、支持層中の高密度ポリエチレン系樹脂の含有量は、支持層のひずみ硬化度を所定の範囲内とするために、500質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
支持層は、さらに、フィラーを含有することが好ましい。これによりプラスチックの割合を相対的に減量できる。また、フィラーを核とした微細な空孔が支持層内部に形成され多孔質の層となるため、積層体の剛度、白色度または不透明度が調整され、積層体に紙の風合いを付与できる。一方、支持層がフィラーを含有すると、含有しない場合と比べて成形不良が生じやすくなる。このため、支持層はフィラーを含有しなくてもよい。しかし、本実施形態に係る積層体では、支持層がフィラーを含有する場合にも成形不良が発生することなく積層体を製造することができる。
使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0032】
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素等の無機微細粉末、無機微細粉末の核の周囲にアルミニウム酸化物又は水酸化物を有する複合無機微細粉末、中空ガラスビーズ等を例示することができる。なかでも、炭酸カルシウム、焼成クレー又は珪藻土は、安価で延伸によって多くの空孔を形成できるため、好ましい。なお、炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムが挙げられる。
【0033】
有機フィラーとしては、支持層に用いられる樹脂よりも融点又はガラス転移点が高く、支持層に用いられる樹脂とは非相溶性の樹脂が、空孔形成の観点から好ましい。有機フィラーの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレン等との共重合体(COC)等が挙げられる。
支持層に用いられる樹脂として結晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、有機フィラーとして、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状オレフィンの単独重合体及び環状オレフィンとエチレン等の共重合体(COC)を用いることが好ましい。
【0034】
フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上であり、また、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、よりさらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは3μm以下である。
平均粒子径が0.01μm以上であることで樹脂中でフィラーが凝集せず、均一に分散するため、ドローレゾナンスが良好である傾向がある。また、25μm以下であることで樹脂の分子鎖の絡み合いが阻害されず、ドローレゾナンスが良好であることに加え、延伸した際の表面破れによる外観不良を抑制できる傾向がある。
【0035】
また、支持層がフィラーを含有する場合、ひずみ硬化性を有する樹脂による効果の阻害を抑制する観点から、フィラーのアスペクト比が1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1~2であることがさらに好ましい。このようなフィラーの形状としては、球状及び不定形状等が挙げられる。
【0036】
支持層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、フィルムの不透明度等を付与しやすいことから、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、樹脂配合によりドローレゾナンスを良化させるため、またフィラーの分散状態を維持する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0037】
<その他の成分>
支持層は、必要に応じて公知の添加剤を任意に含むことができる。添加剤としては、分散剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤等の公知の助剤が挙げられる。
【0038】
分散剤は、無機フィラー粉末の分散の均一性を高める観点から配合される任意成分である。分散剤は無機フィラーの表面処理剤として存在していてもよい。分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそれらの塩等が挙げられ、これらの中でも、特に支持層が延伸層である場合に無機フィラーの凝集又は異物で発生する表面破れによる外観不良を抑制する観点から、高級脂肪酸または金属石鹸が好ましく、炭素数8~20の炭化水素基を有する酸、当該酸のエステル、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物がより好ましい。支持層における分散剤の含有量は、十分な分散性が得られやすいことから、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、分散剤の含有量は、無機フィラー粉末の凝集を回避しやすいことから、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
支持層の厚みは、成形性の観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上であり、また、積層体全体を薄くしつつ種々の機能の付加を可能とする観点から、好ましくは380μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは90μm以下である。なお、支持層が延伸層である場合、支持層の厚みは、上記厚みを延伸倍率で除した範囲内であることが好ましい。
【0040】
また、成形性の観点から、支持層の厚みは、押出ラミネート層全体の厚みに対し、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。
【0041】
<機能層>
機能層は、積層体に各種機能を付与するために設けられる層であり、例えば、印刷層、印刷受容層、ヒートシール層、ガスバリア層、インモールド成形の接着層などが挙げられる。
【0042】
印刷層とは、印刷インクまたはトナーにて形成された文字や画像等からなる層であり、印刷方式としては、オフセット印刷、インクジェット方式、電子写真(レーザー)方式、熱記録方式、熱転写方式等の各種印刷方式を用いることができる。
印刷層は従来公知のものを、公知の方法で用いることができる。
【0043】
印刷受容層とは、印刷層を設ける際のインクまたはトナー受理層として機能する層である。印刷受容層の性質により、印刷層の耐摩耗性や帯電防止性、印刷性、耐水性、保管安定性等の各特性を調整することができる。
印刷受容層は従来公知のものを、公知の方法で用いることができる。
【0044】
ヒートシール層は、熱可塑性樹脂を主成分とする層であり、基材層と他の樹脂とを接合する接着剤の働きを有するものである。
ヒートシール層は、基材層が含む熱可塑性樹脂の融点よりも低い熱可塑性樹脂を含む。ヒートシール層が含む熱可塑性樹脂の融点は、基材層が含む熱可塑性樹脂の融点よりも10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましく、30℃以上低いことがさらに好ましい。また、ヒートシール層が含む熱可塑性樹脂の融点は、支持層が含む熱可塑性樹脂の融点よりも低いことが好ましい。
【0045】
ヒートシール層に用いるのに好適な熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体(アルキル基の炭素数は1~8)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(例えばZn、Al、Li、K、Naから選択される金属との塩)等の樹脂が挙げられる。また熱可塑性樹脂としては、分子内に炭素2~20個を有するα-オレフィンから選択された少なくとも2種以上のコモノマーを共重合して得られるα-オレフィンのランダム共重合体またはブロック共重合体が挙げられる。
これらの中でも、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、メタロセン触媒を用いて共重合したエチレン系共重合体が好ましい。
ヒートシール層に用いる熱可塑性樹脂は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
機能層に用いられる樹脂としては、特に限定されないが、支持層との層間強度を高める観点ではポリオレフィン系樹脂が好ましい。
また、機能層はフィラーを含んでもよい。
【0047】
機能層の厚みは、機能発現の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、また、積層体全体を薄くしつつ種々の機能の付加を可能とする観点から、好ましくは250μm以下、より好ましくは120μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。なお、機能層が延伸層である場合、機能層の厚みは、上記厚みを延伸倍率で除した範囲内であることが好ましい。
【0048】
<基材層>
基材層は、積層体の支持体として設けられる。基材層を構成する樹脂としては、機械的強度の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、フィルム形成性の観点から、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0049】
基材層は、フィラーを含有してもよい。使用できるフィラーとしては、上記した支持層に用いられる無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。
【0050】
基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
【0051】
基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造であってもよい。多層化により、機械特性、筆記性、耐擦過性又は2次加工適性等の様々な機能を基材層に付与することが可能となる。
【0052】
基材層の厚みは、機械的強度及び印刷時の搬送性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、好ましくは800μm以下、より好ましくは400μm以下、特に好ましくは150μm以下である。
【0053】
基材層は、延伸層であることが好ましい。延伸することによって印刷用紙として各種印刷適性に優れる厚み寸法及びコシ(stiffness)が得られやすく、また、印刷用紙の総厚み寸法のバラツキ(偏肉)が緩和されて均一厚みが得られやすく、さらには平坦な表面が得られやすくなる。また、延伸は少なくとも一方向にされていればよい。
【0054】
上記構成の本発明の積層体は、押出成形におけるドローレゾナンスの発生が抑制される。押出成形において、引取速度と押出速度の比率(引取速度/押出速度=ドラフト比)が大きいほどドローレゾナンスが発生しやすく、このドローレゾナンスを抑制しようと成形速度を遅くしようとすると生産性が低下する。
【0055】
積層体の厚みは、製造コスト削減及び廃プラスチック削減の観点から1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。また、高速成形性、強度の観点から、25μm以上であることが好ましい。なお、積層体の厚さは、例えばJIS K7130:1999「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に従って測定される。
【0056】
[製造方法]
本発明の積層体は、公知の方法によって製造することができる。
積層体の製造方法としては、スクリュー型押出機に接続されたTダイ、Iダイ等により、樹脂および任意成分を含む樹脂組成物を溶融してシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等が挙げられる。
【0057】
積層体の製造方法としては、基材層及び押出ラミネート層をそれぞれ形成した後、積層してもよい。または、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等の通常の手法を使用して、基材層と押出ラミネート層の成形と積層を並行して製造することもできる。さらに、押出ラミネート層は、支持層と機能層を共押出により積層することが好ましい。
【0058】
積層体を構成する各層は、無延伸フィルムであってもよいし、1軸方向又は2軸方向に延伸された延伸フィルムであってもよい。フィラーを含有する場合の空孔の形成性及び機械的強度の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。
【0059】
例えば、積層体を構成する各層に使用される熱可塑性樹脂の融点より低い温度で1軸方向又は2軸方向に延伸することにより、全層を1軸方向又は2軸方向に延伸した延伸フィルムを得ることができる。
【0060】
また、積層体においては、1軸方向に延伸した基材層に、押出ラミネート層を積層し、基材層と異なる軸方向に1軸延伸することにより、1軸/2軸の延伸フィルムを得ることもできる。基材層と押出ラミネート層を個別に延伸して積層してもよいが、各層を積層した後にまとめて延伸する方が簡便で生産コストを下げることができ、好ましい。
【0061】
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸等が挙げられる。ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、目的の剛性、不透明度、平滑度、光沢度等が得られやすく、好ましい。
【0062】
延伸温度は、通常、樹脂の融点より5~60℃低い温度である。2種以上の樹脂を用いる場合、延伸温度は、配合量の最も多い樹脂の融点より通常5℃以上低い温度であることが好ましい。
【実施例0063】
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。製造例及び実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0064】
以下に使用した材料を示す。
<ポリオレフィン系樹脂>
プロピレン単独重合体A:日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP FY6、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.5g/10分
プロピレン単独重合体B:日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP MA3、MFR(230℃、2.16kg荷重):11g/10分
プロピレン単独重合体C:日本ポリプロ(株)製、商品名:ウェイマックス MFX3、MFR(230℃、2.16kg荷重):9.0g/10分、分岐指数:0.85
プロピレン単独重合体D:日本ポリプロ(株)製、商品名:ウェイマックス MFX6、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.5g/10分、分岐指数:0.88
高密度ポリエチレン:日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD HJ381、MFR(190℃、2.16kg荷重):11g/10分
メタロセン系ポリエチレン:The Dow Company製、商品名:エンゲージ 8401、MFR(ASTM D1238):30g/10分、密度0.885g/cm3、融点(JIS-K7121):81℃
【0065】
<フィラー>
炭酸カルシウムA:備北粉化工業社製、商品名:ソフトン1800、平均粒子径:1.25μm、アスペクト比:1.78
炭酸カルシウムB:備北粉化工業社製、商品名:ソフトン3200、平均粒子径:0.7μm
炭酸カルシウムC:丸尾カルシウム社製、商品名:YM30、平均粒子径:0.3μm、脂肪酸表面処理
炭酸カルシウムD:備北粉化工業社製、商品名:BF200、平均粒子径:5μm
【0066】
[樹脂組成物1-1~1-9、2-1~2-2]
表1に示す組成の、押出ラミネート層の支持層用樹脂組成物1-1~1-8を調製した。
表1に示す組成の、押出ラミネート層の機能層用樹脂組成物1-9を調製した。
表1に示す組成の、基材層用樹脂組成物2-1~2-2を調製した。
【0067】
<3η+>
粘弾性測定装置(Anton Paar製 MCR301)を用いて、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で、樹脂組成物1-1~1-8の複素粘度(Pa・s)を測定し、3倍して3η+を算出した。
【0068】
<ひずみ硬化度>
レオメトリック・サイエンティフィック社製 ARES―2000を用いて、230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で樹脂組成物1-1~1-8の伸長粘度(ηe+)を測定した。伸長粘度を時間に対してプロットした際の、ひずみ量1~4のうち傾きが一定となる範囲でプロットηe+(ε1)を3点以上抽出した。
下記関係式を用いて、各プロットにおける非線形パラメーター(λn)を計算した。
λn=ηe+(ε1)/3η+
ηe+(ε1):ひずみ速度1(sec-1)のときの伸長粘度
3η+:上記で算出した複素粘度(Pa・s)の3倍値
非線形パラメーター(λn)を用いて、ひずみ硬化度(SH)を下記式により算出した。
SH=dLn(λn)/dε
【0069】
樹脂組成物1-1~1-8の評価結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
[実施例1]
表1に示す基材層用樹脂組成物2-1を、250℃に設定した押出機にて溶融混練した後、シート状に押し出し、約60℃まで冷却して無延伸シートを得た。次いでこの無延伸シートを、シート表面の温度が150℃になるよう熱ロールで再加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に4.8倍延伸し、冷却ロールにてシート表面の温度が約60℃になるまで冷却して縦延伸樹脂シートからなる基材層を得た。
次いで支持層用樹脂組成物1-1と、機能層用樹脂組成物1-9とを、250℃に設定した口径40mmφの2台の押出機にてそれぞれ溶融混練した後、250℃に設定したTダイより2.5m/分の速度でシート状に共押出しながら上記基材層の片面に積層し、これを冷却ロールにて30m/分の速度で引取(エアギャップ60mm)し、約60℃まで冷却して、基材層/支持層/機能層の3層構造を有する積層シートを得た。
次いでこの積層シートを60℃にまで冷却した後、150℃にまで再加熱した後、シートの幅方向に9倍延伸し、次いで165℃でアニーリング処理した。その後、60℃まで冷却して、耳部をスリットして3層構造(二軸延伸/一軸延伸/一軸延伸)の総厚み50μm(基材層/支持層/機能層)の積層体を得た。
【0072】
[実施例2]
支持層と機能層の厚みを表2に示すとおりとした点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0073】
[実施例3]
支持層と機能層の厚みを表2に示すとおりとした点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0074】
[実施例4]
積層シートを150℃に再加熱すること、幅方向への延伸及びアニーリング処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様に、3層構造(二軸延伸/無延伸/無延伸)の総厚み162μm(基材層/支持層/機能層)の積層体を得た。
【0075】
[実施例5]
支持層用樹脂組成物を1-2に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0076】
[実施例6]
基材層用樹脂組成物を2-2に変更した点以外は実施例5と同様に、積層体を得た。
【0077】
[実施例7]
支持層用樹脂組成物を1-3に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0078】
[実施例8]
支持層用樹脂組成物を1-4に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0079】
[実施例9]
支持層用樹脂組成物を1-5に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0080】
[実施例10]
支持層用樹脂組成物を1-8に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0081】
[実施例11]
基材層の両面に支持層用樹脂組成物1-1と機能層用樹脂組成物1-9とをシート状に共押出して積層し、機能層/支持層/基材層/支持層/機能層の5層構造を有する積層シートを得た点以外は実施例1と同様に、5層構造(一軸延伸/一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸/一軸延伸)の総厚み64μm(基材層/支持層/機能層)の積層体を得た。
【0082】
[比較例1]
支持層用樹脂組成物を1-6に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0083】
[比較例2]
支持層用樹脂組成物を1-7に変更した点以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0084】
[比較例3]
支持層を設けず、機能層の厚みを表2に示すとおりとした以外は実施例1と同様に、積層体を得た。
【0085】
<限界ドラフト比>
上記支持層および機能層の共押出成形において、押出速度(m/分)を減少させ、ドローレゾナンスが発生した押出速度からドラフト比(引取速度/押出速度)を計算し、この値を限界ドラフト比とした。ドローレゾナンスは、シートの端部の揺れを目視で観察し、採取したシートの流れ方向の厚みムラを測定することで判定し、20μm以上の偏肉があったものをドローレゾナンスありとした。
限界ドラフト比(A~Dが合格)
A:14.5以上
B:13以上14.5未満
C:11.5以上13未満
D:10以上11.5未満
E:8以上10未満
F:8未満
【0086】
<ネックイン>
上記支持層および機能層の共押出成形において、押出速度2.5m/分のときのシート幅を測定した。ダイス幅230mmからの減少量をネックイン量とした。
ネックイン量(AまたはBが合格)
A:24mm未満
B:24mm以上32mm未満
C:32mm以上35mm未満
D:35mm以上
【0087】
<表面破れ>
積層体1m2中に目視で確認できる異物や、異物により発生する表面の破れの数を測定した。
表面破れ数(○または△が合格)
○:2個未満
△:2個以上6個未満
×:6個以上
【0088】
<偏肉>
得られた押出成形シートの厚みをJIS K7130:1999「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に従って測定し、その最大値と最小値の差を偏肉とした。
【0089】
実施例1~11、比較例1~3の評価結果を表2に示す。
【0090】
【0091】
上記結果より、ひずみ硬化度および3η+がいずれも所定の範囲内である樹脂組成物1-1~1-5、1-8を押出ラミネート層における支持層にそれぞれ用いた実施例1~11の積層体は、いずれも限界ドラフト比が高く、また、ネックイン量が小さく、成形性に優れているとともに機能層によるヒートシール性が発揮可能なものであった。
また、実施例2および3は支持層A厚み割合の高い実施例1に比べ、限界ドラフト比が低下したものの、限界ドラフト比及びネックイン量のいずれも合格と判定できるものであった。
実施例4の積層体は、押出ラミネート層が無延伸の層であるため、偏肉が大きい結果となったが、限界ドラフト比及びネックイン量のいずれも合格と判定できるものであった。
実施例5、6、7、8、10の積層体は、支持層中にフィラーを含有することによりレゾナンスが阻害され、フィラーを含有しない実施例1に比べ限界ドラフト比が低下したものの、限界ドラフト比及びネックイン量のいずれも合格と判定できるものであった。実施例8では、表面処理をされたフィラーを用いたことにより、分散性が向上し、限界ドラフト比は良好であった。
実施例9の積層体は、高密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物1-5を押出ラミネート層における支持層に用いたため、レゾナンスは低下したが合格と判定できるものであり、延展性が向上し、ネックイン特性は良好であり偏肉も抑制できた。
実施例11の積層体は、押出ラミネート層の延伸軸数を変えて製造した例であるが、限界ドラフト比及びネックイン量のいずれも合格と判定できるものであった。
【0092】
一方、ひずみ硬化度が所定の範囲より大きい樹脂組成物1-6を押出ラミネート層における支持層に用いた比較例1の積層体は、限界ドラフト比が低く、また、ひずみ硬化度が0.01未満である樹脂組成物1-7を押出ラミネート層における支持層に用いた比較例2の積層体と、支持層を有さず押出ラミネート層が単層構造である比較例3の積層体は、限界ドラフト比が低く、ネックイン量が大きく、成形性が良好ではなかった。