(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159165
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】押出成形シート、積層体および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221006BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20221006BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20221006BHJP
C08L 23/12 20060101ALI20221006BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20221006BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08L23/00
C08L23/06
C08L23/12
C08K3/26
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056606
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021061175
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 優佳
(72)【発明者】
【氏名】菅俣 祐太郎
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA16
4F071AA20
4F071AA88
4F071AB21
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4F100AC03A
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4J002BB01W
4J002BB03X
4J002BB12W
4J002DE236
4J002FD016
(57)【要約】
【課題】本発明は、フィラー含有系において、成形不良を生じることなく、成形速度を高速化、かつシートを薄層化しても、ドローレゾナンスが発生しにくい押出成形シート、当該押出成形シートを用いた積層体、当該押出成形シートに用いるための樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】230℃、ひずみ速度1sec
-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4であり、230℃、振り角1%、角周波数1s
-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η
+が2000~15000であり、フィラーを含有する、押出成形シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4であり、
230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000であり、
フィラーを含有する、押出成形シート。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂を含む、請求項1に記載の押出成形シート。
【請求項3】
多孔質である、請求項1又は2に記載の押出成形シート。
【請求項4】
少なくとも一方向に延伸された延伸層である、請求項1又は2に記載の押出成形シート。
【請求項5】
高密度ポリエチレンをさらに含む、請求項4に記載の押出成形シート。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂は、分岐鎖を有するポリプロピレン系樹脂を含有する、請求項2に記載の押出成形シート。
【請求項7】
前記フィラーの含有量が3~60質量%である、請求項1又は2に記載の押出成形シート。
【請求項8】
前記フィラーの平均粒子径が0.01~25μmである、請求項1又は2に記載の押出成形シート。
【請求項9】
前記フィラーが炭酸カルシウムである、請求項1又は2に記載の押出成形シート。
【請求項10】
基材層と前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備え、
前記押出ラミネート層は請求項1又は2に記載の押出成形シートを含む、積層体。
【請求項11】
印刷用である、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4であり、
230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000であり、
フィラーを含有する、押出成形用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形シート、積層体および樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂をシート状に成形する方法として、押出成形法が知られている。押出成形法は、押出機の先にある金型(ダイ)から樹脂を押し出すことで成形する方法であり、1種類の樹脂を押し出す方法だけでなく、複数の樹脂を同時に押し出す共押出成形法や、基材上に樹脂を押し出しながら積層する押出ラミネート法等がある。このような押出成形法では、ダイから押し出された樹脂がロール間に引き取られ、シート状に成形される。
【0003】
ここで、近年の環境問題対策やコストダウンの観点から、成形速度の高速化や、シートの薄層化が求められている。シートを薄層化しようとすると、ダイからの樹脂の押出速度を低下させなければならない。また、成形速度を大きくすると、ダイから押し出された樹脂の引取速度が大きくなる。このとき、押出速度が小さく、引取速度が大きくなると、押し出される樹脂に大きな負荷がかかり、押出後引取前の樹脂が波打つようなムラ、いわゆるドローレゾナンス(サージング)が発生することがある。
【0004】
押出速度と引取速度のバランスをとりつつ成形速度を遅くするとドローレゾナンスを抑制することができるが、生産性が低下する。このため、材料の面で改善する方法が試みられている。例えば、樹脂の流動性を向上させることや、低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐ポリプロピレン等を添加すること(特許文献1、2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-181425号公報
【特許文献2】特許第5862486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、押出成形シートには、樹脂の割合を相対的に減らす観点や、多孔質を形成でき紙の風合いを出せる観点から、有機粒子や無機粒子等のフィラーを添加することが行われている。しかし、フィラーを含有する系は、フィラーによる不均一性から、非含有系に比べさらに成形不良を生じやすくなる。
【0007】
そして、フィラー含有系においては、樹脂の流動性を向上させると、ドローレゾナンスの抑制には寄与するものの、フィラーの不均一性が悪化し、成形不良を生じるおそれがある。このようなフィラー含有系においてはフィラーを含有しない系と比べて溶融張力が高く、特許文献1、2に記載の技術を単に適用すると、さらに張力が上昇し、押出時にエアギャップ間で端部が破断しやすく、成形が困難となるおそれがある。
【0008】
本発明は、フィラー含有系において、成形不良を生じることなく、成形速度を高速化、
かつシートを薄層化しても、ドローレゾナンスが発生しにくい押出成形シート、当該押出成形シートを用いた積層体、当該押出成形シートに用いるための樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ひずみ硬化度および流動性のバランスを調整することで、成形不良を生じることなく、ドローレゾナンスを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
[1] 230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4であり、
230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000であり、
フィラーを含有する、押出成形シート。
[2] ポリオレフィン系樹脂を含む、[1]に記載の押出成形シート。
[3] 多孔質である、[1]又は[2]に記載の押出成形シート。
[4] 少なくとも一方向に延伸された延伸層である、[1]~[3]のいずれか1に記載の押出成形シート。
[5] 高密度ポリエチレンをさらに含む、[4]に記載の押出成形シート。
[6] 前記ポリオレフィン系樹脂は、分岐鎖を有するポリプロピレン系樹脂を含有する、[2]~[4]のいずれか1に記載の押出成形シート。
[7] 前記フィラーの含有量が3~60質量%である、[1]~[6]のいずれか1に記載の押出成形シート。
[8] 前記フィラーの平均粒子径が0.01~25μmである、[1]~[7]のいずれか1に記載の押出成形シート。
[9] 前記フィラーが炭酸カルシウムである、[1]~[8]のいずれか1に記載の押出成形シート。
[10] 基材層と前記基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備え、
前記押出ラミネート層は[1]~[9]のいずれか1に記載の押出成形シートを含む、積層体。
[11] 印刷用である、[10]に記載の積層体。
[12] 230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で測定したひずみ硬化度が0.05~0.4であり、
230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で測定した複素粘度を3倍した値3η+が2000~15000であり、
フィラーを含有する、押出成形用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フィラー含有系において、成形不良を生じることなく、成形速度を高速化、かつシートを薄層化しても、ドローレゾナンスが発生しにくい押出成形シート、当該押出成形シートを用いた積層体、当該押出成形シートに用いるための樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は本発明の押出成形シートの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は本発明の積層体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の押出成形シートおよび押出成形用樹脂組成物について詳細に説明する。
以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0014】
[押出成形用樹脂組成物]
本発明の押出成形シートは、本発明の押出成形用樹脂組成物を押出成形して得られる。
本発明の押出成形用樹脂組成物は、フィラーを含有し、ひずみ硬化度が0.05~0.4であり、複素粘度3倍値3η+が2000~15000である。
ひずみ硬化度および3η+が上記特定の範囲内であることで、フィラーを含有してもドローレゾナンスの発生を抑制した押出成形シートを得ることができる。
【0015】
<フィラー>
本発明の押出成形用樹脂組成物は、フィラーを含有する。これによりプラスチックの割合を相対的に減量できる。また、フィラーを核とした微細な空孔がシート内部に形成され多孔質のシートとなるため、シートの剛度、白色度または不透明度が調整され、シートに紙の風合いを付与できる。
使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0016】
無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素等の無機微細粉末、無機微細粉末の核の周囲にアルミニウム酸化物又は水酸化物を有する複合無機微細粉末、中空ガラスビーズ等を例示することができる。なかでも、炭酸カルシウム、焼成クレー又は珪藻土は、安価で延伸によって多くの空孔を形成できるため、好ましい。なお、炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムが挙げられる。
【0017】
有機フィラーとしては、シートに用いられる樹脂よりも融点又はガラス転移点が高く、シートに用いられる樹脂とは非相溶性の樹脂が、空孔形成の観点から好ましい。有機フィラーの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体又は共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、環状オレフィンの単独重合体、環状オレフィンとエチレン等との共重合体(COC)等が挙げられる。
シートに用いられる樹脂として結晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、有機フィラーとして、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状オレフィンの単独重合体及び環状オレフィンとエチレン等の共重合体(COC)を用いることが好ましい。
【0018】
フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上であり、また、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、よりさらに好ましくは5μm以下であり、特に好ましくは3μm以下である。
平均粒子径が0.01μm以上であることで樹脂中でフィラーが凝集せず、均一に分散するため、ドローレゾナンスが良好である傾向がある。また、25μm以下であることで樹脂の分子鎖の絡み合いが阻害されず、ドローレゾナンスが良好であることに加え、延伸した際の表面破れによる外観不良を抑制できる傾向がある。
【0019】
また、ひずみ硬化性を有する樹脂による効果の阻害を抑制する観点から、フィラーのアスペクト比が1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1~2であることがさらに好ましい。このようなフィラーの形状としては、球状、不定形状等が挙げられる。
【0020】
押出成形用樹脂組成物におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、フィルムの不透明度等を付与しやすいことから、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、樹脂配合によりドローレゾナンスを良化させるため、またフィラーの分散状態を維持する観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0021】
<ひずみ硬化度>
本発明の押出成形用樹脂組成物は、ひずみ硬化度が0.05~0.4である。
ひずみ硬化度は溶融、伸長時の強度を表す指標である。ひずみ硬化度が大きいと、引取ロール付近で粘度が向上する結果、押出成形の際のドローレゾナンスを抑制することができる。また、ひずみ硬化度が大きいと、溶融張力が向上する結果、押出成形の際のネックインを抑制することができる。一方、ひずみ硬化度を小さく制御することにより引取ロール付近の過剰な張力上昇によるエアギャップ(ダイの押出口から引取ロールまでの空間)間の応力分散の不均一性を解消し、ドローレゾナンスの悪化や成形中の破断を抑制することができる。かかる観点から、ひずみ硬化度は、0.05以上、好ましくは0.08以上、さらに好ましくは0.15以上である。また、ひずみ硬化度は、0.4以下、好ましくは0.37以下、さらに好ましくは0.34以下である。
【0022】
ひずみ硬化度の具体的な測定方法は、実施例において説明する。
【0023】
<複素粘度>
本発明の押出成形用樹脂組成物は、複素粘度の3倍値3η+が2000~15000である。
複素粘度は、粘性率を表す指標であり、一般的な樹脂では複素粘度が大きいほど流動性が低い傾向にある。3η+を上記下限値以上とすると、フィラーの凝集及び分散性の悪化を抑制し、成形不良を低減できる。3η+を上記上限値以下とすると、押出時の樹脂圧力の上昇とこれによる押出口のリップの開きを抑制し、ドローレゾナンスを抑制できる。かかる観点から、3η+は2000以上、好ましくは4000以上、さらに好ましくは5000以上である。また、3η+は15000以下、好ましくは14000以下、さらに好ましくは13000以下である。
【0024】
樹脂組成物の複素粘度は、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で、粘弾性測定装置を用いて測定して得られる。
【0025】
<ポリオレフィン系樹脂>
本発明の押出成形用樹脂組成物に用いられる樹脂は熱可塑性樹脂が用いられ、特に限定されないが、機械的強度の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、特にポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂が好ましい。
また、樹脂組成物のひずみ硬化度および複素粘度3倍値を上記特定範囲とするために、樹脂組成物はひずみ硬化性を有する樹脂を含むことが好ましい。ひずみ硬化性とは、ひずみにより粘度が上昇する特性を意味する。ひずみ硬化性を有する樹脂として具体的には分岐鎖を有する樹脂及び超高分子量樹脂等が挙げられる。
【0026】
分岐鎖を有するポリオレフィン系樹脂としては、長鎖分岐状ポリプロピレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂(密度0.910~0.930g/cm3)、低密度ポリエチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。長鎖分岐状であることは、分岐指数g’の算出により確認することができる。分岐指数g’は下記式から算出できる。分岐指数g’が1より小さい値であると、長鎖分岐構造を有すると判断できる。長鎖分岐構造は、1-ブテンなどのα-オレフィンと共重合を行うことにより形成される短鎖分岐構造とは区別される。
分岐指数g’=Vbr/Vlin
Vbrは長鎖分岐構造を有する樹脂の固有粘度、Vlinは長鎖分岐構造を有する樹脂と同じ分子量を有する線状樹脂の固有粘度を示す。
超高分子量ポリオレフィン系樹脂としては、超高分子量ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
特に長鎖分岐状のポリプロピレン系樹脂が、耐熱性の観点から好ましく、特にメタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合によって製造されたポリプロピレンが好ましい。かかるポリプロピレンとしては市販品も使用でき、日本ポリプロ(株)社製:ウェイマックスMFX3、ウェイマックスMFX6、ウェイマックスMFX8等が好適に用いられる。
ひずみ硬化性を有する樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
【0027】
押出成形用樹脂組成物における、ひずみ硬化性を有する樹脂の含有量は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。かかる範囲であることで、樹脂組成物のひずみ硬化度が十分な範囲となり成形性が良好となり、また、溶融張力が高くなり過ぎずドローレゾナンスの悪化や成形中の破断のおそれが低減する傾向がある。
【0028】
押出成形用樹脂組成物は、ひずみ硬化性を有する樹脂以外に、その他の樹脂をさらに含有してもよい。その他の樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン等の直鎖状ポリオレフィン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0029】
また、押出成形シートが延伸層である場合は、押出成形用樹脂組成物は高密度ポリエチレン系樹脂をさらに含むことが好ましい。高密度ポリエチレン系樹脂は0.940~0.960g/cm3の密度を有するポリエチレン系樹脂である。押出成形シートがさらに高密度ポリエチレン系樹脂を含むことで、延展性が向上し、延伸時の破断や偏肉を抑制することができる。押出成形シート中の高密度ポリエチレン系樹脂の含有量は、ひずみ硬化性を有する樹脂100質量部に対して10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。また、押出成形シート中の高密度ポリエチレン系樹脂の含有量は、押出成形シートのひずみ硬化度を所定の範囲内とするために、500質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましい。
【0030】
上記その他の樹脂は、直鎖状ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、直鎖状ポリプロピレン系樹脂を含むことがより好ましい。これらは2種以上混合して用いることもできる。押出成形用樹脂組成物のひずみ硬化度を所定の範囲内とするためには、上記その他の樹脂の含有量は、ひずみ硬化性を有する樹脂100質量部に対して50質量部以上であることが好ましく、100質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることがさらに好ましい。また、上記その他の樹脂の含有量は、ひずみ硬化性を有する樹脂100質量部に対して2000質量部以下であることが好ましく、1000質量部以下であることがより好ましく、500質量部以下であることがさらに好ましい。
【0031】
<その他の成分>
押出成形用樹脂組成物は、必要に応じて公知の添加剤を任意に含むことができる。添加剤としては、分散剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、脂肪酸アミド等のスリップ剤、染料、顔料、離型剤、難燃剤等の公知の助剤が挙げられる。
【0032】
分散剤は、無機フィラー粉末の分散の均一性を高める観点から配合される任意成分である。分散剤は無機フィラーの表面処理剤として存在していてもよい。分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそれらの塩等が挙げられ、これらの中でも、特に押出ラミネート層が延伸層である場合に無機フィラーの凝集又は異物で発生する表面破れによる外観不良を抑制する観点から、高級脂肪酸または金属石鹸が好ましく、炭素数8~20の炭化水素基を有する酸、当該酸のエステル、及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物がより好ましい。押出成形用樹脂組成物における分散剤の含有量は、十分な分散性が得られやすいことから、0.01質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましい。また、分散剤の含有量は、無機フィラー粉末の凝集を回避しやすいことから、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
上記構成の本発明の押出成形用樹脂組成物は、押出成形におけるドローレゾナンスの発生が抑制される。押出成形において、引取速度と押出速度の比率(引取速度/押出速度=ドラフト比)が大きいほどドローレゾナンスが発生しやすく、このドローレゾナンスを抑制しようと成形速度を遅くしようとすると生産性が低下する。
【0034】
[押出成形シート]
本発明の押出成形シートは、本発明の押出成形用樹脂組成物を押出成形して得られる。
本発明の押出成形シートは、フィラーを含有し、ひずみ硬化度が0.05~0.4であり、複素粘度3倍値3η+が2000~15000である。
なお、ひずみ硬化度および複素粘度は、上記のとおり230℃で測定するため、かかる温度では樹脂が溶融状態にある。したがって、押出成形用樹脂組成物と押出成形シートのひずみ硬化度および複素粘度は同値となる。
【0035】
押出成形シートの厚みは、機械的強度及び印刷時の搬送性等の観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、また、製造コスト削減及び廃プラスチック削減の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、さらに好ましくは500μm以下、よりさらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは130μm以下である。なお、押出成形シートが延伸シートである場合、押出成形シートの厚みは、上記厚みを延伸倍率で除した範囲内であることが好ましい。
【0036】
押出成形シートは、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一層は本発明の押出成形用樹脂組成物を押出成形して得られる層である。
図1に示す押出成形シート10は、単層構造である。
【0037】
押出成形シートは、少なくとも一方向に延伸された延伸層であることが好ましい。延伸することによって印刷用紙として各種印刷適性に優れる厚み寸法及びコシ(stiffness)が得られやすく、また、印刷用紙の総厚み寸法のバラツキ(偏肉)が緩和されて均一厚みが得られやすく、さらには平坦な表面が得られやすくなる。
【0038】
[積層体]
本発明の積層体は、基材層と、基材層の少なくとも一方の面に設けられた押出ラミネート層とを備え、押出ラミネート層は本発明の押出成形シートを含む。
図2に示す積層体20Aは、基材層2と、基材層2の一方の面に設けられた押出ラミネート層1Aとを備える。多層化により、印刷性、塗工適性、耐擦過性、ラベリング適性、2次加工適性等の様々な機能の付加が可能となる。
【0039】
<基材層>
基材層は、積層体の支持体として設けられる。基材層を構成する樹脂としては、機械的強度の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、フィルム形成性の観点から、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0040】
基材層は、フィラーを含有してもよい。使用できるフィラーとしては、上記した押出形成用樹脂組成物および押出成形シートに用いられる無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。
【0041】
基材層は、必要に応じて、熱安定剤(酸化防止剤)、光安定剤、分散剤、滑剤、又は核剤等をさらに含有することができる。
【0042】
基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造であってもよい。
【0043】
基材層の厚みは、機械的強度及び印刷時の搬送性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上であり、また、好ましくは800μm以下、より好ましくは400μm以下であり、特に好ましくは150μm以下である。
基材層は、少なくとも一方向に延伸された延伸層であることが好ましい。延伸することによって印刷用紙として各種印刷適性に優れる厚み寸法及びコシ(stiffness)が得られやすく、また、印刷用紙の総厚み寸法のバラツキが緩和されて均一厚みが得られやすく、さらには平坦な表面が得られやすくなる。
【0044】
<押出ラミネート層>
本発明の積層体における押出ラミネート層は、本発明の押出成形シートを含む。
押出成形において、ダイより押し出され基材層と貼り合わされるまでの距離(エアギャップ)は、小さい方がドローレゾナンス抑制の観点からは有利である。一方、押出ラミネート層を基材層にラミネートする際に、押出ラミネート層の幅を基材層の幅に合わせる必要があり、その方法としてエアギャップを変更することが考えられる。しかし、エアギャップ変更に伴い、押し出された樹脂が基材層に到達するまでの間に両側縁部の膜厚が増加するネックイン現象により、押出ラミネート層の幅が変化するおそれがある。したがって、エアギャップをドローレゾナンス抑制の目的で変更することは難しい。そこで、押出ラミネート層を、上記特定のひずみ硬化度および複素粘度範囲を有する本発明の押出成形シートとすることで、押出ラミネート層自体の材料面からドローレゾナンス抑制にアプローチすることとした。
【0045】
押出ラミネート層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも一層は本発明の押出成形シートである。
【0046】
また、押出ラミネート層は、基材層の一方の面に設けられていても、両面に設けられていてもよい。
図2に示す積層体20Aは、基材層2の片面に押出ラミネート層1Aが設けられている。
図3に示す積層体20Bは、基材層2の両面に押出ラミネート層1A,1Bがそれぞれ設けられている。
【0047】
押出ラミネート層の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、また、積層体全体を薄くしつつ種々の機能の付加を可能とする観点から、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。なお、押出ラミネート層が延伸層である場合、押出ラミネート層の厚みは、上記厚みを延伸倍率で除した範囲内であることが好ましい。
【0048】
押出ラミネート層は、少なくとも一方向に延伸された延伸層であることが好ましい。延伸することによって印刷用紙として各種印刷適性に優れる厚み寸法及びコシ(stiffness)が得られやすく、また、印刷用紙の総厚み寸法のバラツキが緩和されて均一厚みが得られやすく、さらには平坦な表面が得られやすくなる。一方、表面破れを防止する観点からは、押出ラミネート層は無延伸層であることが好ましい。
【0049】
積層体の厚みは、製造コスト削減及び廃プラスチック削減の観点から1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。また、機械的強度の点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上である。なお、積層体の厚さは、例えばJIS K7130:1999「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に従って測定される。
【0050】
本発明の積層体は、印刷用に有用であり、積層体の両面に印刷することができる。印刷方法は特に制限されず、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等、通常用いられている方法を採用することができる。
【0051】
[押出成形シートおよび積層体の製造方法]
本発明の押出成形シートおよび積層体は、公知の方法によって製造することができる。
押出成形シートの製造方法としては、スクリュー型押出機に接続されたTダイ、Iダイ等により、樹脂およびフィラー等を含む樹脂組成物を溶融してシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等が挙げられる。
積層体の製造方法としては、基材層及び押出ラミネート層をそれぞれ形成した後、積層してもよい。または、フィードブロック、マルチマニホールドを使用した多層ダイス方式、複数のダイスを使用する押出しラミネーション方式等の通常の手法を使用して、基材層と押出ラミネート層の成形と積層を並行して製造することもできる。
【0052】
押出成形シートおよび積層体を構成する各層は、無延伸フィルムであってもよいし、1軸方向又は2軸方向に延伸された延伸フィルムであってもよい。空孔の形成性及び機械的強度の向上の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。
【0053】
例えば、押出成形シートおよび積層体を構成する各層に使用される熱可塑性樹脂の融点より低い温度で1軸方向又は2軸方向に延伸することにより、全層を1軸方向又は2軸方向に延伸した延伸フィルムを得ることができる。
【0054】
また、積層体においては、1軸方向に延伸した基材層に、押出ラミネート層を積層し、基材層と異なる軸方向に1軸延伸することにより、1軸/2軸の延伸フィルムを得ることもできる。基材層と押出ラミネート層を個別に延伸して積層してもよいが、各層を積層した後にまとめて延伸する方が簡便で生産コストを下げることができ、好ましい。
【0055】
延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸等が挙げられる。ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、目的の剛性、不透明度、平滑度、光沢度等が得られやすく、好ましい。
【0056】
延伸温度は、通常、樹脂の融点より5~60℃低い温度である。2種以上の樹脂を用いる場合、延伸温度は、配合量の最も多い樹脂の融点より通常5℃以上低い温度であることが好ましい。
【実施例0057】
以下に、製造例、実施例、比較例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。製造例及び実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0058】
以下に使用した材料を示す。
<ポリオレフィン系樹脂>
プロピレン単独重合体A:日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP FY6、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.5g/10分
プロピレン単独重合体B:日本ポリプロ(株)製、商品名:ノバテックPP MA3、MFR(230℃、2.16kg荷重):11g/10分
プロピレン単独重合体C:日本ポリプロ(株)製、商品名:ウェイマックス MFX3、MFR(230℃、2.16kg荷重):9.0g/10分、分岐指数:0.85
プロピレン単独重合体D:日本ポリプロ(株)製、商品名:ウェイマックス MFX6、MFR(230℃、2.16kg荷重):2.5g/10分、分岐指数:0.88
高密度ポリエチレン:日本ポリエチレン(株)製、商品名:ノバテックHD HJ381、MFR(190℃、2.16kg荷重):11g/10分
【0059】
<フィラー>
炭酸カルシウムA:備北粉化工業社製、商品名:ソフトン 1800、平均粒子径:1.25μm、アスペクト比:1.78
炭酸カルシウムB:備北粉化工業社製、商品名:ソフトン3200、平均粒子径:0.7μm
炭酸カルシウムC:丸尾カルシウム社製、商品名:YM30、平均粒子径:0.3μm、脂肪酸表面処理
炭酸カルシウムD:備北粉化工業社製、商品名:BF200、平均粒子径:5μm
【0060】
[実施例1~7、比較例1~3]
表1に示す原材料を二軸混練機にて混練し、ストランド状に押し出してカッティングし、ペレットを得た(樹脂組成物1-1~1-6)。得られたペレットを、それぞれ、250℃に設定された口径40mmφの押出機で溶融混錬して、押出機に装着したTダイス(ダイス幅230mm、ダイリップ開度0.8mm)から、4m/分の速度で押出成形し、冷却ロール(表面温度40℃)で30m/分の速度で引取(エアギャップ60mm)し、厚み130μmの単層のキャスト押出成形シートを得た。
【0061】
<3η+>
粘弾性測定装置(Anton Paar製 MCR301)を用いて、230℃、振り角1%、角周波数1s-1の条件で実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の複素粘度(Pa・s)を測定し、3倍して3η+を算出した。
【0062】
<ひずみ硬化度>
レオメトリック・サイエンティフィック社製 ARES―2000を用いて230℃、ひずみ速度1sec-1の条件で実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の伸長粘度(ηe+)を測定した。伸長粘度を時間に対してプロットした際の、ひずみ量1~4のうち傾きが一定となる範囲でプロットηe+(ε1)を3点以上抽出した。
下記関係式を用いて、各プロットにおける非線形パラメーター(λn)を計算した。
λn=ηe+(ε1)/3η+
ηe+(ε1):ひずみ速度1(sec-1)のときの伸長粘度
3η+:上記で算出した複素粘度(Pa・s)の3倍値
非線形パラメーター(λn)を用いて、ひずみ硬化度(SH)を下記式により算出した。
SH=dLn(λn)/dε
【0063】
<限界ドラフト比>
押出速度(m/分)を減少させ、ドローレゾナンスが発生した押出速度からドラフト比(引取速度/押出速度)を計算し、この値を限界ドラフト比とした。ドローレゾナンスは、シートの端部の揺れを目視で観察し、採取したシートの流れ方向の厚みムラを測定することで判定し、20μm以上の偏肉があったものをドローレゾナンスありとした。
限界ドラフト比(A~Dが合格)
A:14.5以上
B:13以上14.5未満
C:11.5以上13未満
D:10以上11.5未満
E:8以上10未満
F:8未満
【0064】
<ネックイン>
上記押出成形において、押出速度2.5m/分のときのシート幅を測定した。ダイス幅230mmからの減少量をネックイン量とした。
ネックイン量(AまたはBが合格)
A:24mm未満
B:24mm以上30mm未満
C:30mm以上35mm未満
D:35mm以上
【0065】
<偏肉>
得られた押出成形シートの厚みをJIS K7130:1999「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に従って測定し、その最大値と最小値の差を偏肉とした。
【0066】
樹脂組成物1-1~1-10の評価結果を表1に示す。
実施例1~7、比較例1~3の押出成形シートの評価結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
上記結果より、ひずみ硬化度および3η+がいずれも所定の範囲内である樹脂組成物1-1~1-7をそれぞれ用いた実施例1~7の押出成形シートは、限界ドラフト比とネックインのいずれも良好な結果となり、成形性に優れていた。一方、ひずみ硬化度および3η+のいずれかが所定の範囲外である樹脂組成物1-8~1-10をそれぞれ用いた比較例1~3の押出成形シートは、特に限界ドラフト比が伸び悩む結果となった。
【0070】
[実施例8]
表1に示す原材料を二軸混練機にて混練し、ストランド状に押し出してカッティングし、ペレットを得た(樹脂組成物2-1)。得られたペレットを、250℃に設定された押出機で溶融混錬してこれをシート状に押出成形し、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃にまで再度加熱させた後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向に4.8倍の延伸を行って、縦延伸樹脂フィルムを得た。
次いで、表1に示す樹脂組成物1-1を、250℃に設定された口径40mmφの押出機で溶融混錬し、2.5m/分の速度で基材層の両面に押出しながら積層し、冷却ロール(表面温度40℃)で30m/分の速度で引取(エアギャップ60mm)し、厚み100μmの押出ラミネート層を備える積層シートを得た。
得られた積層シートを60℃にまで冷却した後、再び150℃にまで再加熱して、テンターを用いてシート幅方向に9倍延伸し、次いで165℃でアニーリング処理した。その後、再び60℃まで冷却して、三層構造(一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の総厚み寸法60μm(押出ラミネート層/基材層/押出ラミネート層=11μm/38μm/11μm)の積層体を得た。
【0071】
[実施例9]
基材層の樹脂組成物を2-2に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0072】
[実施例10]
表1に示す原材料を二軸混練機にて混練し、ストランド状に押し出してカッティングし、ペレットを得た(樹脂組成物2-1)。得られたペレットを、250℃に設定された押出機で溶融混錬してこれをシート状に押出成形し、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃にまで再度加熱させた後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向に4.8倍の延伸を行って、縦延伸樹脂フィルムを得た。
次いで、得られた積層シートを60℃にまで冷却した後、再び150℃にまで再加熱して、テンターを用いてシート幅方向に9倍延伸し、次いで165℃でアニーリング処理した。その後、再び60℃まで冷却して、厚み38μmの二軸延伸樹脂フィルムを得た。
表1に示す樹脂組成物1-1を、250℃に設定された口径40mmφの押出機で溶融混錬し、2.5m/分の速度で二軸延伸樹脂フィルムの両面に押出しながら積層し、冷却ロール(表面温度40℃)で30m/分の速度で引取(エアギャップ60mm)し、三層構造(無延伸/二軸延伸/無延伸)の総厚み寸法238μm(押出ラミネート層/基材層/押出ラミネート層=100μm/38μm/100μm)の積層体を得た。
【0073】
[実施例11]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-2に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0074】
[実施例12]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-3に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0075】
[実施例13]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-4に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0076】
[実施例14]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-5に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0077】
[実施例15]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-6に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0078】
[実施例16]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-7に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0079】
[比較例4]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-8に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0080】
[比較例5]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-9に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0081】
[比較例6]
押出ラミネート層の樹脂組成物を1-10に変更した以外は実施例8と同様にして、積層体を得た。
【0082】
<押出ラミネート層成形性>
厚み100μmの押出ラミネート層を備える積層シート(延伸して積層体となる前)の端部の揺れを目視で観察し、採取したシートの流れ方向の厚みムラを測定し、20μm以上の偏肉があったものをドローレゾナンス発生シートとした。
A:成形中にドローレゾナンスが発生せず、厚みムラが起きなかった。
C:成形中にドローレゾナンスが発生し、厚みムラが起きた。
(Aが合格)
【0083】
<表面破れ>
積層体1m2中に目視で確認できる異物や、異物により発生する表面の破れの数を測定した。
表面破れ数(○または△が合格)
○:2個未満
△:2個以上6個未満
×:6個以上
【0084】
実施例8~16、比較例4~6の評価結果を表3に示す。
【0085】
【0086】
上記結果より、ひずみ硬化度および3η+がいずれも所定の範囲内である樹脂組成物1-1~1-7をラミネート層にそれぞれ用いた実施例8~16の積層体は、いずれも成形中にドローレゾナンスが発生せず押出ラミネート層成形性に優れていた。
実施例10の積層体は、無延伸の層を含むため偏肉が大きいが、押出ラミネート層成形性は良好であった。
実施例12~14の積層体はラミネート層中にフィラーを含有する。実施例12の積層体はフィラーの粒径が小さいことで凝集が起こりやすく、表面破れが発生した。実施例14の積層体はフィラーの粒径が大きく樹脂の絡み合いを阻害するため偏肉、表面破れが発生した。実施例13の積層体は、表面処理をされたフィラーを用いたことにより、分散性が向上し、表面破れが発生しなかった。
実施例15の積層体は、高密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物1-6をラミネート層に用いたため、延展性が向上し、表面破れや偏肉の発生を抑制できた。
【0087】
一方、ひずみ硬化度および3η+のいずれかが所定の範囲外である樹脂組成物1-8~1-10を押出ラミネート層にそれぞれ用いた比較例4~6の積層体は、いずれも成形中にドローレゾナンスが発生し押出ラミネート層成形性が良好ではない結果となった。