(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159167
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】ブラシ付きモータ及び電気製品
(51)【国際特許分類】
H02K 13/00 20060101AFI20221006BHJP
【FI】
H02K13/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022056648
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】202110346463.3
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】劉 慧
(72)【発明者】
【氏名】李 超
【テーマコード(参考)】
5H613
【Fターム(参考)】
5H613AA06
5H613BB23
5H613GA12
5H613KK01
5H613PP02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】整流子のピンとブラシが衝突してブラシが破損するのを抑制することができるブラシ付きモータ及び電気製品を提供する。
【解決手段】ブラシ付きモータは、シャフト10と、軸周りに設けられた電機子20と、電機子の軸方向の一側に位置する整流子30と、整流子30の軸方向の一側に位置するブラシカード40と、ハウジング50と、を備える。ブラシカード40における整流子30に面する表面のうち、整流子30と面する位置に凸部41が設けられている。整流子30は、シャフト10の周りに設けられた本体部31と、本体部31の軸方向他方側の端部から径方向外側及び軸方向の一方側に向かって屈曲したピン32と、を有する。ピン32と、ブラシカード40上に配置されたブラシ42との間の距離は、本体部31と凸部41との間の距離よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、
前記シャフトの周りに設けられた電機子と、
前記電機子の軸方向の一方側に位置する整流子と、
前記整流子の軸方向の一方側に位置するブラシカードと、
前記シャフトの一部、前記電機子、前記整流子及び前記ブラシカードの一部を収容する筒状のハウジングと、を備えるブラシ付きモータであって、
前記ブラシカードにおける前記整流子に面する表面のうち、軸方向において前記整流子と対向する位置に凸部が設けられており、
前記整流子は、前記シャフトの周りに設けられた本体部と、前記本体部の軸方向他方側の端部から径方向外側及び軸方向の一方側に向かって屈曲したピンと、を有し、
前記ピンと、前記ブラシカード上に配置されたブラシとの間の距離は、前記本体部と前記凸部との間の距離よりも大きい、ブラシ付きモータ。
【請求項2】
前記凸部と前記ブラシカードとが一体成形されている、請求項1に記載のブラシ付きモータ。
【請求項3】
前記凸部の数は、少なくとも3つであり、
複数の前記凸部は、周方向に沿って等間隔に配置される、請求項1又は請求項2に記載のブラシ付きモータ。
【請求項4】
前記電機子が軸方向の引っ張り力を受けていない状態において、前記整流子と前記凸部とは、互いに接触しない、請求項1~3のいずれか一項に記載のブラシ付きモータ。
【請求項5】
前記ブラシカードは、前記シャフトの周りに設けられるとともに軸方向に垂直な方向に沿って延びる第1の環状部と、前記第1の環状部の外周に位置するとともに軸方向に垂直な方向に沿って延びる第2の環状部と、を有し、
前記凸部は、前記第1の環状部において軸方向に前記整流子と対向する表面に設けられ、
複数の前記ブラシは、前記第2の環状部において、軸方向において前記整流子と対向する表面に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載のブラシ付きモータ。
【請求項6】
前記凸部は、径方向に沿って延在し、
前記凸部の径方向内側の端部と前記シャフトは、所定の距離離れて配置されている、請求項5に記載のブラシ付きモータ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のブラシ付きモータを備える、電気製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、ブラシ付きモータ及び電気製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、ブラシ付きモータは、ブラシ装置を内含する回転モータであり、電気エネルギーを機械エネルギーに変換する(電動機)か又は機械エネルギーを電気エネルギーに変換する(発電機)。ブラシ付きモータは動作時に、コイルと整流子が回転し、瓦状磁石とブラシは回転せず、コイル電流方向の交互変化は、モータに従って回動する整流子およびブラシにより遂行される。
【0003】
技術的背景についての上記の説明は、本願の技術的解決策について明確且つ十全に説明するとともに、当業者の理解を容易にするために叙述したものであるに過ぎないことには留意しなければならない。これらの解決策が本願の背景技術部分において叙述を行っていることのみを理由に、上記の技術的解決策が当業者にとって公知であると見なしてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、従来の構造において、モータを転倒及び反転させる際に、電機子のがたつきが、ブラシ等の電子部品への整流子の配線ピンの衝突を引き起こし、ブラシ及び内部構造の破壊につながり、モータの性能に影響することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願発明の実施例は、ブラシ付きモータ及び電気製品を提供する。
【0007】
本願発明の1つの実施例によれば、シャフトと、シャフトの周りに設けられた電機子と、電機子の軸方向の一方側に位置する整流子と、整流子の軸方向の一方側に位置するブラシカードと、シャフトの一部、電機子、整流子及びブラシカードの一部を収容する筒状のハウジングと、を備えるブラシ付きモータにおいて、ブラシカードにおける整流子に面する表面のうち、整流子と面する位置に凸部が設けられており、整流子は、シャフトの周りに設けられた本体部と、本体部の軸方向他側の端部から径方向外側及び軸方向の一方側に向かって屈曲したピン、とを有し、ピンと、ブラシカード上に配置されたブラシとの間の距離は、本体部と凸部との間の距離よりも大きいブラシ付きモータを提供する。
【0008】
本願発明の1つの実施例では、凸部とブラシカードとが一体成形されている。
【0009】
本願発明の1つの実施例では、凸部の数は少なくとも3つであり、複数の凸部は周方向に沿って等間隔に配置される。
【0010】
本願発明の1つの実施例では、電機子が軸方向の引っ張り力を受けていない状態において、整流子と凸部とは、互いに接触しない。
【0011】
本願発明の1つの実施例では、ブラシカードは、シャフトの周りに設けられるとともに軸方向に垂直な方向に沿って延びる第1の環状部と、第1の環状部の外周に位置するとともに軸方向に垂直な方向に沿って延びる第2の環状部と、を有し、凸部は、第1の環状部において、軸方向に整流子と対向する表面に設けられ、複数のブラシは第2の環状部において、軸方向に整流子と対向するに表面に設けられている。
【0012】
本願発明の1つの実施例では、凸部は径方向に沿って延在し、凸部の径方向内側の端部とシャフトは、所定の距離離れて配置されている。
【0013】
本願発明の1つの実施例によれば、前述のいずれか一つの実施例に記載のブラシ付きモータを有する電気製品を提供する。
【0014】
本願発明の一実施例によれば、ブラシカード上に凸部を追加することによって、電機子が上向きに引っ張られる際に整流子と凸部が先に接触し、整流子のピンとブラシとが衝突するのを抑制することができる。
【0015】
後述の説明及び図面を参照すると、本願発明の特定の実施形態を詳細に開示しており、本願発明の原理が採用され得る形態を明示している。本願発明の実施形態は、特許請求の範囲内において、本願発明の実施形態は多くの変更、修正及び均等を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本願発明の第1の実施例のブラシ付きモータの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すブラシ付きモータの軸方向に沿う断面図である。
【
図3】
図3は、ブラシカードを軸方向下側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照すると、以下の明細書によって、本願発明の前述の特徴及びその他の特徴が明確になる。本願発明の原則を採用可能な一部の実施形態を示している、本願発明の特定の実施形態を、明細書及び図面において具体的に開示している。本願発明は、明細書等に開示された実施形態に限定されない。本願発明は、添付された特許請求項の範囲に該当するすべての修正、変形及び均等物を含む。
【0018】
本願発明の実施例においては、「及び/又は」という用語は、関連して列挙される用語の1種又は複数のうちのいずれか1つ及びすべての組み合わせを含む。「を含む」、「を備える」、「を有する」等の用語は、申し述べる特徴、要素、部品又はアセンブリの存在を指すが、1つ又は複数の他の特徴、要素、部品又はアセンブリが存在するか又はそれらを付加することを排除しない。
【0019】
本願発明の実施例においては、「一」、「該」等の単数形は複数形を含んでいてよく、「一種の」又は「一タイプの」であると広義に理解するべきであり、「1つの」という意味合いに限定するものではない。また、「前記」という用語は、前後で別途明示されていない限り、単数形も複数形も含む。また、前後で別途明示されていない限り、「によれば」という用語は「少なくとも部分的に……によれば」と理解するべきであり、「に基づいて」という用語は、「少なくとも部分的に……に基づいて」と理解するべきである。
【0020】
なお、本願発明の下記説明においては、説明の都合のために、モータの中心軸Oに沿って延在する方向又はそれと平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。モータハウジングの底部からモータハウジングの開口を指向する方向を「上方」又は「上側」又は「軸方向上側」又は「軸方向一方側」と呼び、モータハウジングの開口からモータハウジングの底部を指向する方向を「下方」又は「下側」又は「軸方向下側」又は「軸方向他方側」と呼ぶ。中心軸Oを中心とする半径方向を「径方向」と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Oに近づく方向を「径方向内側」と呼び、中心軸Oから遠ざかる方向を「径方向外側」と呼ぶ。中心軸Oを取り囲む方向を「周方向」と呼ぶ。ただし、これらは説明の都合のための定義であるに過ぎず、モータの使用及び製造時の向きを限定しない。
【0021】
以下、図面を参照し、本願発明の実施例の実施形態について説明する。
【0022】
<第1の実施例>
【0023】
本願発明の第1の実施例は、ブラシ付きモータを提供する。
【0024】
図1は、本願発明の実施例のブラシ付きモータ斜視図であり、
図2は、
図1に示すブラシ付きモータの軸方向に沿う断面図である。
図1及び
図2に示すように、ブラシ付きモータは、シャフト10と、シャフト10の周りに設けられた電機子20と、電機子20の軸方向の一側に位置する整流子30と、整流子30の軸方向の一側に位置するブラシカード40と、シャフト10の一部、電機子20、整流子30及びブラシカード40の一部を収容する筒状のハウジング50と、を備える。
【0025】
以上は、ブラシ付きモータの構造について例を挙げて説明したものに過ぎない。ブラシ付きモータは、さらに、例えば軸受や軸受保持部材など、通常のモータが備える部品を備えていていてもよく、関連技術を具体的に参照してよい。
【0026】
第1の実施例においては、
図2に示すように、ブラシカード40における、整流子30に面する表面のうち、軸方向において整流子30と対向する位置に凸部41が設けられている。整流子30が、シャフト10の周りに設けられた本体部31と、本体部31の軸方向他側(
図2に示す軸方向下側)の端部から径方向外側及び軸方向の一側に向かって屈曲したピン32と、を有する。凸部41と本体部31の少なくとも一部分どうしは、軸方向において互いに対向している。ブラシ42とピン32の少なくとも一部分どうしは、軸方向において互いに対向している。ピン32と、ブラシカード40上に配置されたブラシ42との間の距離d1が、本体部31と凸部41との間の距離d2よりも大きい。距離d1及び距離d2は軸方向の距離である。
【0027】
ブラシカード上に凸部が配置されることによって、電機子が上向きに引っ張られる際に整流子と凸部が先に接触し、整流子のピンとブラシが衝突してブラシを破損するのを抑制することができる。
【0028】
第1の実施例では、電機子20が軸方向の引っ張り力を受けていない状態において、整流子30と凸部41とは、互いに接触しない。
【0029】
第1の実施例では、凸部41とブラシカード40とは一体成形されている。これにより成形しやすく、凸部41とブラシカード40とを組み付ける工数を省くことができる。ただし、凸部41とブラシカード40とが一体成形された構成には限定されない。ブラシカード40が成形された後に該ブラシカード40に凸部41が固定される構造であってもよく、その固定方式についても限定されない。凸部41とブラシカード40とが別で成形された構造により、凸部41を有さない従来のブラシカード40の構造を変更する必要がない。そのため、ブラシカード40を成形するための金型を変更する必要がなく、成形に関するコストを節約することができる。
【0030】
第1の実施例では、凸部41の数は少なくとも3つであり、且つ、これらの凸部41が周方向に沿って等間隔に配置される。これにより、整流子30と凸部41とが接触する際に、3つ又は3つより数の多い凸部41によって平衡支持の効果を実現することができる。
【0031】
図3は、第1の実施例のブラシ付きモータにおけるブラシカード40概略を示すものであり、軸方向下側から軸方向上側に向かってブラシカード40を見た図である。
【0032】
図3に示すように、第1の実施例では、ブラシカード40は、第1の環状部43と第2の環状部44とを有している。第1の環状部43は、シャフト10の周りに設けられるとともに、軸方向に垂直な方向に沿って延びる。第2の環状部44は、第1の環状部43の外周に位置するとともに、軸方向に垂直な方向に沿って延びる。凸部41は、第1の環状部43における、整流子30に面する表面に設けられている。複数のブラシ42は、第2の環状部44における整流子30に面する表面に設けられている。
【0033】
これにより、凸部41が、ブラシカード40上の他の部材に干渉するのを抑制することができる。
【0034】
図3に示すように、凸部41の数は4つであるが、これには限定されない。必要に応じて、さらに多数の凸部41を設けるか、又は3つの凸部41を設けてもよい。
【0035】
図3に示すように、ブラシ42の数は4つであるが、これには限定されない。ブラシ42の数及び設置方式に関しては関連技術を参照することができ、ここでは説明を省略する。なお、ブラシ42以外に、ブラシカード40上に他の部材をさらに設けてもよく、具体的には関連技術を参照することができ、ここでは説明を省略する。
【0036】
第1の実施例では、
図3に示すように、凸部41が径方向に沿って延び、且つ、凸部41の径方向内側の端部とシャフト10との間が所定の距離だけ離れて配置されている。これにより、凸部41の設置スペースを確保し易く、且つ、凸部41とシャフト10に干渉を抑制することができる。
【0037】
以上、本願発明に関連するブラシ付きモータの構成について例示的な説明を行った。本願発明はこれに限定されず、上記した実施例を基礎として適当な変形を行ってもよい。また、上述のように、各部材についても例示的な説明を行った。本願発明はこれに限定されず、各部材の具体的な構造については関連技術を参照してもよい。また、
図1~
図3に示していない部材を追加するか、又は、
図1~
図3のうちの1つ又は複数の部材を減らしてもよい。ブラシ付きモータの他の構成及び構造については、関連技術を参照することができ、ここでは説明を省略する。
【0038】
本願発明の実施例によれば、ブラシカード上に凸部を追加することによって、電機子が上向きに引っ張られる際に整流子と凸部が先にし、整流子のピンとブラシとが衝突するのを抑制することができる。
【0039】
<第2の実施例>
【0040】
本願発明の第2の実施例は、第1の実施例に記載のブラシ付きモータを有する電気製品を提供する。第1の実施例において、ブラシ付きモータの構造についてすでに詳しく説明しており、ここでは説明を省略する。
【0041】
第2の実施例において、該電気製品は、ブラシ付きモータが設置された任意の電気機器である。例えば、空気調和機の室内機、空気調和機の室外機、給水機、洗濯機、掃除機、圧縮機、送風機、ミキサー等の家電機器、又は、ポンプ、コンベア、エレベータ、標準工業用汎用マウンター、風力発電機、磨砕機、トラクションモータ等の工業機器又は各種情報処理機器、又は、自動車の電気式パワーステアリングシステム、自動車のサンルーフ調節部材、シート調節部材、トランスミッション、ブレーキ装置等の自動車の各部材を採用することができる。
【0042】
以上、具体的な実施形態を結び付けて本願発明について記述したが、これらの記述はいずれも例示的なものであり、本願発明の保護範囲に対する制限ではない。当業者は、本願発明の趣旨と原理に基づいて、本願発明に対して種々の変形や修正を行うことができ、これらの変形や修正も本願発明の範囲内にある。
【0043】
以上、図面を参照して本願の好ましい実施形態について記述した。これらの実施形態の多くの特徴及び利点は、該詳細な明細書によると明白であり、従って、添付された請求項の目的は、これらの実施形態の、真の趣旨及び範囲に該当するこれらの特徴及び利点をすべてカバーすることにある。なお、当業者は多くの修正及び変更を容易に想到するため、本願発明の実施形態を、例示及び記述された精確な構造及び操作に限定するのではなく、その範囲に該当する適当な修正及び均等物をすべて包含することができる。