(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022159173
(43)【公開日】2022-10-17
(54)【発明の名称】非水系電解液及び該非水系電解液を備える非水系電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20221006BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221006BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221006BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221006BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221006BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057082
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021060739
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西尾 晃一
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA09
5H050AA12
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
(57)【要約】
【課題】常温内部抵抗の低減、自己放電の抑制、及び電池内ガス発生の抑制、を併せて達成し得る非水系電解液及び該非水系電解液を備える非水系電解液二次電池を提供する。
【解決手段】下記式(I)で表されるアニオンを含む化合物を含有する非水系電解液。
(前記式(I)中、R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質及びこれを溶解する非水系溶媒を含有する非水系電解液であって、下記式(I)で表されるアニオンを含む化合物を含有する非水系電解液。
【化16】
(前記式(I)中、R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記式(I)で表されるアニオンが、下記式(I-i)又は(I-ii)より選ばれるアニオンである、請求項1に記載の非水系電解液。
【化17】
(前記式(I-i)又は(I-ii)中、R
2、n及びn’は、前記式(I)のR
2、n及びn’と同義であり、R
4~R
6は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含む1価の置換基及び/又はオキソ基を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である。R
4又はR
5は、R
2と結合して環を形成してもよく、その場合はR
4又はR
5は、R
2と一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成する。)
【請求項3】
前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物が、アルカリ金属カチオンを含有する化合物である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して、0.001質量%以上、8質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項5】
前記電解質の含有量に対する前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物の含有量の質量比が0.00001以上、1以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
該非水系電解液が、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、イソシアネート基を有する有機化合物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、シュウ酸塩、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩並びにF-S結合を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を更に含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水系電解液。
【請求項7】
金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極並びに負極と、請求項1~6のいずれか1項に記載の非水系電解液とを備える、非水系電解液二次電池。
【請求項8】
前記正極が、下記組成式(2)で表されるリチウム遷移金属系化合物を含む、請求項7に記載の非水系電解液二次電池。
Li1+xMO2 ・・・(2)
(前記組成式(2)中、xは-0.1以上0.5以下であり、Mは少なくとも1種の遷移金属である。)
【請求項9】
前記組成式(2)中、Mが少なくともNiを含み、Ni/Mモル比が0.05以上1.0以下である、請求項8に記載の非水系電解液二次電池。
【請求項10】
前記式(2)中、MがMnを含む、請求項8又は9に記載の非水系電解液二次電池。
【請求項11】
前記正極が正極活物質を有し、前記正極活物質が炭酸塩を10μmol/g以上含有する、請求項7~10のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池。
【請求項12】
下記式(I)で表されるアニオンを含む化合物。
【化18】
(前記式(I)中、R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
【請求項13】
下記式(I’)で表される化合物である、請求項12に記載の化合物。
【化19】
(前記式(I’)中、A
m+はm価のカチオンを表し、mは1又は2であり、kは式(I)で表されるアニオンの価数であって1以上(n’+1)以下の整数であり、前記カチオンは、金属イオン、[N(R
3)
4]
+又は[P(R
3)
4]
+であり、前記R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~12の有機基又は水素原子であり、少なくとも1つのR
3は炭素数1~12の有機基であり、複数のR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、1以上のR
3は、当該R
3が結合している窒素原子又はリン原子と共に環を形成してもよく;R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
【請求項14】
前記式(I)で表されるアニオンが、下記式(I-i)又は(I-ii)より選ばれるアニオンである、請求項12又は13に記載の化合物。
【化20】
(前記式(I-i)又は(I-ii)中、R
2、n及びn’は、前記式(I)のR
2、n及びn’と同義であり、R
4~R
6は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含む1価の置換基及び/又はオキソ基を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である。R
4又はR
5は、R
2と結合して環を形成してもよく、その場合はR
4又はR
5は、R
2と一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成する。)
【請求項15】
前記化合物が、アルカリ金属カチオンを含有する、請求項12~14のいずれか1項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及び該非水系電解液を備える非水系電解液二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池等の非水系電解液二次電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液二次電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、特に、高容量、低温使用特性、高温保存特性、サイクル特性、過充電時安全性等の種々の電池特性の改善が要望されている。
これまで、非水系電解液二次電池の高温保存特性やサイクル特性を改善するための手段として、正極や負極の活物質や、セパレータ、非水系電解液を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、過充電時における安全性と、高温貯蔵性および低温での充電特性に優れた電気化学素子を提供するために、特定の負極及びセパレータを備え、さらにC=C二重結合を有する有機スルホン酸リチウム塩を含有する電気化学素子を構成することが検討されている。
特許文献2では、電気化学デバイスのサイクル特性の向上のために、オキソカーボン酸等の金属塩を含有する負極が開示され、該負極を備えることにより、電気化学デバイスの電解質の分解を抑制することが検討されている。
特許文献3では、高温環境下におけるサイクル特性および保存特性などの電池特性に優れる二次電池を提供するために、特定のスルホン酸リチウム塩を含むリチウム二次電池用負極が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-277723号公報
【特許文献2】特開2009-21229号公報
【特許文献3】国際公開第2014/119375号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の技術では、非水系電解液二次電池の各種性能を高いレベルで併せ持つことは、未だ達成されていない。例えば、特許文献1~3の非水系電解液二次電池では、常温における内部抵抗が大きいという問題がある。また、特許文献2~3の非水系電解液二次電池では、正極表面における電解液の分解反応を抑制することができず、自己放電や電池内ガス発生量が大きいという問題がある。
本願発明は、上記問題点を解決し、常温内部抵抗の低減、自己放電の抑制、及び電池内ガス発生の抑制、を併せて達成し得る非水系電解液及び該非水系電解液を備える非水系電解液二次電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定のアニオンを含む化合物を含有する非水系電解液を備えた非水系電解液二次電池とすることで、上記問題点を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
[1]
電解質及びこれを溶解する非水系溶媒を含有する非水系電解液であって、下記式(I)で表されるアニオンを含む化合物を含有する非水系電解液。
【化1】
(前記式(I)中、R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
[2]
前記式(I)で表されるアニオンが、下記式(I-i)又は(I-ii)より選ばれるアニオンである、[1]に記載の非水系電解液。
【化2】
(前記式(I-i)又は(I-ii)中、R
2、n及びn’は、前記式(I)のR
2、n及びn’と同義であり、R
4~R
6は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含む1価の置換基及び/又はオキソ基を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である。R
4又はR
5は、R
2と結合して環を形成してもよく、その場合はR
4又はR
5は、R
2と一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成する。)
[3]
前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物が、アルカリ金属カチオンを含有する化合物である、[1]又は[2]に記載の非水系電解液。
[4]
前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物の含有量が、前記非水系電解液の全量に対して、0.001質量%以上、8質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の非水系電解液。
[5]
前記電解質の含有量に対する前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物の含有量の質量比が0.00001以上、1以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の非水系電解液。
[6]
該非水系電解液が、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、イソシアネート基を有する有機化合物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、シュウ酸塩、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩並びにF-S結合を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を更に含む、[1]~[5]のいずれかに記載の非水系電解液。
[7]
金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極並びに負極と、[1]~[6]のいずれかに記載の非水系電解液とを備える、非水系電解液二次電池。
[8]
前記正極が、下記組成式(2)で表されるリチウム遷移金属系化合物を含む、[7]に記載の非水系電解液二次電池。
Li
1+xMO
2 ・・・(2)
(前記組成式(2)中、xは-0.1以上0.5以下であり、Mは少なくとも1種の遷移金属である。)
[9]
前記組成式(2)中、Mが少なくともNiを含み、Ni/Mモル比が0.05以上1.0以下である、[8]に記載の非水系電解液二次電池。
[10]
前記式(2)中、MがMnを含む、[8]又は[9]に記載の非水系電解液二次電池。
[11]
前記正極が正極活物質を有し、前記正極活物質が炭酸塩を10μmol/g以上含有する、[7]~[10]のいずれか1項に記載の非水系電解液二次電池。
[12]
下記式(I)で表されるアニオンを含む化合物。
【化3】
(前記式(I)中、R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
[13]
下記式(I’)で表される化合物である、[12]に記載の化合物。
【化4】
(前記式(I’)中、A
m+はm価のカチオンを表し、mは1又は2であり、kは式(I)で表されるアニオンの価数であって1以上(n’+1)以下の整数であり、前記カチオンは、金属イオン、[N(R
3)
4]
+又は[P(R
3)
4]
+であり、前記R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~12の有機基又は水素原子であり、少なくとも1つのR
3は炭素数1~12の有機基であり、複数のR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、1以上のR
3は、当該R
3が結合している窒素原子又はリン原子と共に環を形成してもよく;R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
[14]
前記式(I)で表されるアニオンが、下記式(I-i)又は(I-ii)より選ばれるアニオンである、[12]又は[13]に記載の化合物。
【化5】
(前記式(I-i)又は(I-ii)中、R
2、n及びn’は、前記式(I)のR
2、n及びn’と同義であり、R
4~R
6は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含む1価の置換基及び/又はオキソ基を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である。R
4又はR
5は、R
2と結合して環を形成してもよく、その場合はR
4又はR
5は、R
2と一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成する。)
[15]
前記化合物が、アルカリ金属カチオンを含有する、[12]~[14]のいずれかに記載の化合物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非水系電解液二次電池の、常温内部抵抗の低減、自己放電の抑制、及び電池内ガス発生の抑制、を併せて達成し得る非水系電解液を提供できる。また、当該非水系電解液を備えた非水系電解液二次電池を提供できる。
本発明の構成を有する非水系電解液が、このような優れた効果を奏する理由について、本発明者は以下のように推測する。特許文献1のC=C二重結合を有する有機スルホン酸リチウム塩はC=C二重結合部位が負極と反応し被膜を形成するため、負極の抵抗が上がってしまう。また、特許文献1~3では負極上に金属塩や特定スルホン酸塩が固定化されてしまうため、正極表面保護効果が乏しく、正極表面での電解液分解反応が進行するために非水系電解液二次電池の自己放電や電池内ガス発生が十分に抑えられないものと考えられる。
本発明は、酸素原子を炭化水素基間に有するアルキルスルホン酸をアニオンとして含有するイオン性化合物を非水系電解液に含有することにより、当該アニオンのスルホン酸部位と炭素骨格中の酸素原子の作用による正極金属へのキレート効果が発現し、正極上により強固に作用し電解液の分解反応を抑制することで、非水系電解液二次電池の自己放電や電池内ガス発生を抑制できると、本発明者は考える。また、スルホン酸部位に加え、炭化水素中の酸素原子は電極・電解液界面の電子伝導性を向上するために、非水系電解液二次電池の内部抵抗の低減を従来よりも高いレベルまで達成できると、本発明者は考える。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ただし、以下に記載する説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
【0010】
[1.非水系電解液]
本発明の一態様に係る非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様に、電解質及びこれを溶解する非水系溶媒を含有し、下記式(I)で表されるアニオンを有する化合物を含有することを特徴とする。以下、各構成について説明する。
【0011】
[1-1.式(I)で表されるアニオンを有する化合物]
【化6】
前記式(I)中、R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。
【0012】
(R1、R2、n、n’)
R1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基である。
R2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である。本明細書において脂肪族炭化水素基は、直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、炭素-炭素不飽和結合を有していてもよいし、分岐構造を有していてもよいし、環状構造を有していてもよい。なお、式(I)で表されるアニオンとしては、炭素-炭素不飽和結合を有しないものが好ましい。
【0013】
R1及びR2における「ヘテロ原子を有していてもよい」とは、脂肪族炭化水素基の1以上の炭素原子がヘテロ原子に置換されてもよく、脂肪族炭化水素基の1以上の炭素原子が置換基としてオキソ基(=O)等のヘテロ原子を有してもよく、脂肪族炭化水素基の1以上の水素原子がアルコキシ基等のヘテロ原子を含む1価の置換基に置換されてもよいことを意味する。ただし、該ヘテロ原子を含む1価の置換基はスルホニルオキシ基等のイオン性の置換基は包含しない。脂肪族炭化水素基の1以上の炭素原子が置換基としてオキソ基(=O)を有する場合、オキソ基を有する炭素原子はカルボニル基{-C(=O)-}となる。ヘテロ原子としては、ハロゲン原子、酸素原子、又は窒素原子等が挙げられ、電池内での構造安定性の観点から、ハロゲン原子、窒素原子、又は酸素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられ、なかでも、電池内での副反応性が小さいことからフッ素原子、又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。ヘテロ原子を含む1価の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、シアノ基、イソシアナト基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられ、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
【0014】
R1の脂肪族炭化水素基としては、nが0の場合は、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。なかでもアルキル基が好ましい。nが1の場合は、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。なかでもアルキレン基が好ましい。
R1の炭素数は1以上20以下であり、10以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下がさらに好ましく、3以下が特に好ましく、1又は2が最も好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、1-ペプチニル基、1-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基、2-メチル-1-プロペニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、プロパルギル基等が挙げられる。
アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、テトラメチルエチレン基、n-プロピレン基(トリメチレン基)、1-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、1,1,2-トリメチルプロピレン基、1,1,3-トリメチルプロピレン基、n-ブチレン基(テトラメチレン基)、2-メチル-1,4-ブチレン基、3-メチル-1,4-ブチレン基、2,2-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,3-ジメチル-1,4-ブチレン基、2,2,3-トリメチル-1,4-ブチレン基、n-ペンチレン基(ペンタメチレン基)、n-ヘキサニレン基(ヘキサメチレン基)、1,4-シクロへキシレン基等が挙げられる。
アルケニレン基としては、例えば、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基等が挙げられる。
アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基等が挙げられる。
【0015】
n’は1以上5以下の整数である。n’が2以上の場合、複数のnは同一であっても異なっていてもよい。n’が2以上の場合、複数のR1は同一であっても異なっていてもよいが、入手の容易さの点から、2つ以上のR1が同一であることが好ましく、全てのR1が同一であることが好ましい。
【0016】
R2の脂肪族炭化水素基としては、n’が1の場合は、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基が挙げられる。なかでもアルキレン基が好ましい。n’が2以上5以下の整数である場合、R2の脂肪族炭化水素基としては、鎖状若しくは環状の、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の水素原子をn’個引き抜いて得られる基が挙げられる。n’は1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
R2の炭素数は1以上10以下であり、5以下が好ましく、2以下がより好ましい。
R2で表される脂肪族炭化水素基が置換基を有する場合の置換基としては、R1で表される脂肪族炭化水素基の置換基として例示したものが挙げられる。
R1とR2は結合して環を形成してもよい。R1とR2は環を形成していないことが好ましい。なお、R1とR2は結合して環を形成する場合、R1とR2は一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成することが好ましい。
R1としては、無置換の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
R2としては、無置換の脂肪族炭化水素基が特に好ましい。
R1及びR2の両方が、無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0017】
前記式(I)におけるR
1が、下記式(i)~(iv)からなる群より選ばれる基であることが好ましく、下記式(i)又は(ii)であることがより好ましい。
【化7】
上記式中、*はスルホニルオキシ基又は酸素原子との結合を表す。
【0018】
前記式(I)におけるR
1が、下記式(i)~(iv)からなる群より選ばれる基である場合、式(I)で表されるアニオンはそれぞれ下記式(I-i)~(I-iv)である。
【化8】
【0019】
上記式(i)~(iv)、(I-i)~(I-iv)中、R2、n及びn’は、前記式(I)のR2、n及びn’と同義であり、R4~R10は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を含む1価の置換基及び/又はオキソ基を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基である。R4、R5、R7及びR9は、R2と結合して環を形成してもよく、その場合はR4、R5、R7及びR9は、R2と一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成することが好ましい。
【0020】
(R4~R10)
R4、R5、R7及びR9の脂肪族炭化水素基としては、nが0の場合、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。なかでも、アルキル基が好ましい。nが1の場合には、R4、R5、R7及びR9の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基等の2価基が挙げられる。R6、R8及びR10の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、及びアルキニレン基等の2価基が挙げられる。なかでも、アルキレン基が好ましい。
R4~R10は、ヘテロ原子を含む1価の置換基により置換された、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であってよく、また、R4~R10は、オキソ基を有する炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であってもよい。R4~R10がヘテロ原子を含む1価の置換基を有する場合、当該置換基としては、(R1、R2、n、n’)で説明したヘテロ原子を含む1価の置換基と同義である。
R4~R10の炭素数は1以上10以下であり、5以下が好ましく、3以下がより好ましい。
R4、R5、R7及びR9は、R2と結合して環を形成してもよい。R4、R5、R7及びR9は、R2と環を形成していないことが好ましい。なお、R4、R5、R7及びR9が、R2と結合して環を形成する場合、R4、R5、R7及びR9のいずれか1つとR2が互いに結合して形成される環は、3~6員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0021】
式(I)で表されるアニオンを有する化合物が有するカチオンとしては、特に限定されないが、金属イオン、[N(R3)4]+又は[P(R3)4]+であることが好ましい。ここで、R3は、炭素数1~12の有機基又は水素原子であり、少なくとも1つのR3は炭素数1~12の有機基である。
前記炭素数1~12の有機基としては、特に限定はないが、例えば、後述の[1-2.式(I’)で表される化合物]において説明した基が挙げられる。
[N(R3)4]+又は[P(R3)4]+で表されるカチオンにおいて、4つのR3の内、少なくとも1つのR3は炭素数1~12の有機基である。すなわち4つのR3の全部が水素原子であることはない。また、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよいが、入手及び取り扱いのしやすさや、電池内部抵抗抑制の点から、2つ以上のR3が同一であることが好ましく、3つのR3が同一であることがより好ましい。
1又は2以上のR3は、当該R3が結合している窒素原子又はリン原子と共に環を形成してもよい。
前記カチオンは、金属イオンであることが好ましく、アルカリ金属元素のイオン(アルカリ金属カチオン)であることがより好ましく、負極との反応性の観点からリチウムイオン、又はナトリウムイオンがさらに好ましい。
【0022】
上記式(I)で表されるアニオンを有する化合物は1種のみ含有させてもよく、2種以上を含有させてもよい。
上記式(I)で表されるアニオンを有する化合物の分子量は特段限定されないが、通常50以上であり、また通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは300以下、最も好ましくは200以下である。上記範囲であることで、化合物が取扱い易く、また添加した際の電解液の粘度を適度にできる。
非水系電解液中の、上記式(I)で表されるアニオンを有する化合物の含有量は特段限定されないが、非水系電解液全量に対し、通常0.001質量%以上であり、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、また通常8質量%以下であり、4質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。上記式(I)で表されるアニオンを2種以上含有する場合は、総含有量が上記範囲であることが好ましい。
上記式(I)で表されるアニオンを有する化合物は、公知の方法(例えば、特開平4-149168号公報、Eur. J. Org. Chem. 2018, 1774-1784等を参照。)を準用して合成することができる。
非水系電解液中の上記式(I)で表されるアニオンを有する化合物の同定、及び含有量の測定方法は磁気共鳴(NMR)分光法を用いて行う。なお、式(I)で表されるアニオンを有する化合物は非水系電解液中、式(I)で表されるアニオンとカチオンに電離して存在し得るが、当該化合物の電離度は特に限定されない。
【0023】
上記式(I)で表されるアニオンとしては、例えば、以下に示すアニオン1~44が挙げられる。
【0024】
【0025】
[1-2.式(I’)で表される化合物]
式(I)で表されるアニオンを有する化合物も本発明の一態様である。式(I)で表されるアニオンを有する化合物としては、式(I’)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【化11】
(前記式(I’)中、A
m+はm価のカチオンを表し、mは1又は2であり、kは式(I)で表されるアニオンの価数であって1以上(n’+1)以下の整数であり、前記カチオンは、金属イオン、[N(R
3)
4]
+又は[P(R
3)
4]
+であり、前記R
3は、それぞれ独立して、炭素数1~12の有機基又は水素原子であり、少なくとも1つのR
3は炭素数1~12の有機基であり、複数のR
3は互いに同一であっても異なっていてもよく、1以上のR
3は、当該R
3が結合している窒素原子又はリン原子と共に環を形成してもよく;R
1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、R
2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。R
1とR
2は結合して環を形成してもよい。)
【0026】
(R1、R2、n、n’、k)
R1は、それぞれ独立して、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、式(I)で表されるアニオンのR1と同義である。また、同様に、前記式(I’)におけるR1が、前記式(i)~(iv)からなる群より選ばれる基であることが好ましく、前記式(i)又は(ii)であることがより好ましい。
R2は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基であり、式(I)で表されるアニオンのR2と同義である。
nは、それぞれ独立して、0又は1であり、n’は1以上5以下の整数である。n及びn’も式(I)で表されるアニオンのn及びn’とそれぞれ同義である。
n’が2以上の場合、複数のnは同一であっても異なっていてもよい。したがって、式(I)で表されるアニオンの価数kは、Σni+1(i=1~n’)である。より具体的には、式(I’)を、nを用いずに下記式で表した場合、k=n”+1である。
[Am+](n”+1)/m[(-O3SR1O)n”R2(OR1
(n’-n”))(SO3
-)]
(上記式中、n”は0以上5以下の整数、n’-n”=0~5の整数)
n’が2以上の場合、複数のR1は同一であっても異なっていてもよいが、入手の容易さの点から、2つ以上のR1が同一であることが好ましく、全てのR1が同一であることが好ましい。
R1とR2は結合して環を形成してもよく、R1とR2は一緒に単結合、アルキレン基又はアルキレンオキシ基を形成することが好ましい。
【0027】
(Am、R3、m)
Am+はm価のカチオンを表し、mは1又は2であり、前記カチオンは、金属イオン、[N(R3)4]+又は[P(R3)4]+である。
R3は、それぞれ独立して、炭素数1~12の有機基又は水素原子であり、少なくとも1つのR3は炭素数1~12の有機基であり、1以上のR3は当該R3が結合している窒素原子又はリン原子と共に環を形成してもよい。
炭素数1~12の有機基としては、特に限定はないが、例えば、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子若しくはアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子若しくはアルキル基で置換されていてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR3が、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基又は窒素原子含有複素環基であることが好ましい。
[N(R3)4]+又は[P(R3)4]+で表されるカチオンにおいて、4つのR3の内、少なくとも1つのR3は炭素数1~12の有機基である。すなわち、4つのR3の全部が水素原子であることはない。
また、複数のR3は互いに同一であっても異なっていてもよいが、入手及び取り扱いのしやすさや、電池内部抵抗抑制の点から、2つ以上のR3が同一であることが好ましく、3つのR3が同一であることがより好ましい。
1又は2以上のR3は、当該R3が結合している窒素原子又はリン原子と共に環を形成してもよい。
kは式(I)で表されるアニオンの価数であって1以上(n’+1)以下の整数である。
【0028】
アニオン及びカチオンを含む化合物(I’)としては、電池の容量及び耐久性の点から、カチオンが、リチウムイオンであることが好ましい。
【0029】
アニオン及びカチオンを含む化合物(I’)としては、電池内部抵抗抑制の点から、式(I)で表されるアニオンが、n=1のアニオンであることが好ましい。
【0030】
アニオン及びカチオンを含む化合物(I’)としては、入手及び取り扱いのしやすさの点から、式(I)で表されるアニオンが、上記アニオン1、アニオン2、アニオン25、又はアニオン27を含むことが好ましく、上記アニオン1、アニオン2、アニオン25、又はアニオン27であることがより好ましい。
アニオン及びカチオンを含む化合物(I’)としては、入手及び取り扱いのしやすさの点から、アニオンとして上記アニオン1のリチウム塩若しくはナトリウム塩、アニオン2のリチウム塩、アニオン25のリチウム塩若しくはナトリウム塩、又はアニオン27のリチウム塩若しくはナトリウム塩が好ましい。
【0031】
なお、式(I)で表されるアニオンが上記アニオン2である場合、電池内部抵抗抑制の点から、カチオンは、ナトリウムイオンを含まないことが好ましい。
【0032】
上記式(I’)で表される化合物の分子量は特段限定されないが、通常50以上であり、また通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは300以下、最も好ましくは200以下である。上記範囲であることで、化合物が取扱い易く、また添加した際の電解液の粘度を適切な範囲にできる。
上記式(I’)で表される化合物は、公知の方法(例えば、特開平4-149168号公報、Eur. J. Org. Chem. 2018, 1774-1784等を参照。)を準用して合成することができる。
【0033】
[1-3.電解質]
<リチウム塩>
非水系電解液における電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いられることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
例えば、フルオロホウ酸リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、タングステン酸リチウム塩類、カルボン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムメチド塩類、リチウムオキサラート塩類、及び含フッ素有機リチウム塩類等が挙げられる。
中でも、フルオロホウ酸リチウム塩類としてLiBF4;フルオロリン酸リチウム塩類としてLiPF6、Li2PO3F、LiPO2F2;スルホン酸リチウム塩類としてLiFSO3、CH3SO3Li;リチウムイミド塩類としてLiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド;リチウムメチド塩類として、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3;リチウムオキサラート塩類として、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が、低温出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点からより好ましい。さらに好ましくは、LiPF6、LiN(FSO2)2、リチウムビス(オキサラト)ボレート及びLiFSO3であり、特に好ましくはLiPF6である。また、上記電解質は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ただし、[1-5.助剤]に該当する電解質化合物が非水系電解液に含まれる場合、助剤に該当するリチウム塩以外の電解質を必ず含有する。また、該電解質化合物の含有量が5.0質量%以下の場合、本明細書においては「助剤」に分類する。したがって、本実施形態の非水系電解液の構成成分として、「助剤に該当する化合物」が「電解質」に該当する場合であっても、「電解質」の量には、該「助剤に該当する化合物」の量は含まれない。
本明細書において、「式(I)で表されるアニオンを有する化合物」は、「電解質」には分類されない。したがって、本実施形態の非水系電解液の構成成分として、「式(I)で表されるアニオンを有する化合物」が「電解質」に該当する場合であっても、「電解質」の量には、「式(I)で表されるアニオンを有する化合物」の量は含まれない。したがって、スルホン酸リチウム塩類は式(I)で表されるアニオンを有する化合物を除くものとする。
2種類以上の電解質の組み合わせとして、特段の制限はないが、LiPF6及びLiN(FSO2)2;LiPF6及びLiBF4;LiPF6及びLiN(CF3SO2)2;LiBF4及びLiN(FSO2)2;LiBF4及びLiPF6及びLiN(FSO2)2が挙げられる。なかでも、LiPF6及びLiN(FSO2)2;LiPF6及びLiBF4;LiBF4、LiPF6及びLiN(FSO2)2が好ましい。
非水系電解液中の電解質の含有量(総濃度)は、特に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上であり、また、通常18質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の含有量が上記範囲内であると、電気伝導率が電池動作に適正となるため、十分な出力特性が得られる傾向にある。
非水系電解液中の、電解質の含有量に対する前記式(I)で表されるアニオンを含む化合物の含有量の質量比(式(I)で表されるアニオンを含む化合物[g]/電解質[g])は、通常0.00001以上、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上、さらに好ましくは0.01以上であり、一方、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.07以下である。上述の範囲であることにより、電池の出力特性と電解液副反応抑制を両立できる点で好ましい。
【0034】
[1-4.非水系溶媒]
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質を溶解する非水系溶媒を含有する。用いられる非水系溶媒は上述した電解質を溶解すれば特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル、エーテル系化合物、及びスルホン系化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
2種以上の有機溶媒の組み合わせとして、特段の制限はないが、飽和環状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステル、環状カルボン酸エステル及び鎖状カーボネート、並びに飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルが挙げられる。なかでも、飽和環状カーボネート及び鎖状カーボネート、並びに飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルが好ましい。
【0035】
[1-4-1.飽和環状カーボネート]
飽和環状カーボネートとしては、例えば、炭素数2~4のアルキレン基を有するものが挙げられ、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から炭素数2~3の飽和環状カーボネートが好ましく用いられる。また、フッ素原子を有する飽和環状カーボネート類も好適に用いることがでる。
【0036】
飽和環状カーボネートとしては、具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、又はモノフルオロエチレンカーボネートが好ましく、酸化・還元されにくいエチレンカーボネート又はモノフルオロエチレンカーボネートがより好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上であり、一方、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。飽和環状カーボネートの含有量をこの範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなり、非水系電解液の酸化・還元耐性が向上し、負極に対する安定性、高温保存時の安定性が向上する傾向にある。
なお、本実施形態における体積%とは25℃、1気圧における体積を意味する。
【0037】
[1-4-2.鎖状カーボネート]
鎖状カーボネートとしては、例えば、炭素数3~7のものが用いられ、電解液の粘度を適切な範囲に調整するために、炭素数3~5の鎖状カーボネートが好ましく用いられる。
鎖状カーボネートとしては、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが挙げられる。特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はエチルメチルカーボネートである。
【0038】
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、当該複数のフッ素原子は同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
【0039】
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フルオロメチルメチルカーボネート等のフッ素化ジメチルカーボネート誘導体;2-フルオロエチルメチルカーボネート等のフッ素化エチルメチルカーボネート誘導体;エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート等のフッ素化ジエチルカーボネート誘導体;等が挙げられる。
【0040】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上であり、また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の出力特性を良好な範囲としやすくなる。
【0041】
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常15体積%以上、好ましくは20体積%以上、また、通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また、通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、高温安定性に優れ、ガス発生が抑制される傾向がある。
【0042】
[1-4-3.鎖状カルボン酸エステル]
鎖状カルボン酸エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、吉草酸メチル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、及びピバル酸メチルが挙げられる。なかでも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルが電池特性向上の点から好ましい。上述の化合物の水素の一部をフッ素で置換した鎖状カルボン酸エステル(例えば、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸エチル等)も好適に使える。
【0043】
鎖状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、鎖状カルボン酸エステルの含有量は、通常70体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0044】
[1-4-4.環状カルボン酸エステル]
環状カルボン酸エステルとしては、γ-ブチロラクトン、及びγ-バレロラクトンが挙げられる。これらの中でも、γ-ブチロラクトンがより好ましい。上述の化合物の水素の一部をフッ素で置換した環状カルボン酸エステルも好適に使える。
環状カルボン酸エステルの含有量は、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの含有量は、通常70体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0045】
[1-4-5.エーテル系化合物]
エーテル系化合物としては、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の炭素数3~10の鎖状エーテル、及びテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等炭素数3~6の環状エーテルが好ましい。なお、上述のエーテル系化合物の一部の水素がフッ素にて置換されていてもよい。
なかでも、炭素数3~10の鎖状エーテルとしては、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させ、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン又はエトキシメトキシメタンが好ましく、炭素数3~6の環状エーテルとしては、高いイオン電導度を与えることから、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン又は1,4-ジオキサン等が好ましい。
エーテル系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が上記の範囲内であれば、エーテル系化合物によるリチウムイオン解離度の向上と非水系電解液の粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素系材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、入出力特性や充放電レート特性を適正な範囲とすることができる。
【0046】
[1-4-6.スルホン系化合物]
スルホン系化合物としては、特に制限されず、環状スルホンであってもよく、鎖状スルホンであってもよい。環状スルホンの場合、炭素数が通常3~6、好ましくは3~5であり、鎖状スルホンの場合、炭素数が通常2~6、好ましくは2~5である。また、スルホン系化合物1分子中のスルホニル基の数は、特に制限されないが、通常1又は2である。
【0047】
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類等;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
【0048】
スルホラン類としては、スルホラン及びスルホラン誘導体が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子、アルキル基、又はフッ素置換アルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、又は3-トリフルオロメチルスルホラン等が、イオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
【0049】
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン等が挙げられる。なかでも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、又はモノフルオロメチルメチルスルホンが電解液の高温保存安定性が向上する点で好ましい。
【0050】
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されず、本実施形態に係る発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の非水系溶媒全量に対して、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が上記範囲内であれば、高温保存安定性に優れた電解液が得られる傾向にある。
【0051】
[1-5.助剤]
本発明の非水系電解液には、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の助剤を含有していてもよい。助剤としては、従来公知のものを任意に用いることができる。なお、助剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
非水系電解液に含有していてもよい助剤としては、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、イソシアネート基を有する有機化合物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、芳香族化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、エーテル結合を有する環状化合物、カルボン酸無水物、ホウ酸塩、シュウ酸塩、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩、F-S結合を有する塩等が例示できる。例えば、国際公開公報第2015/111676号に記載の化合物等が挙げられる。
なかでも、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、イソシアネート基を有する有機化合物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、硫黄含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、シュウ酸塩、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩、並びにF-S結合を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が、自己放電が小さく電池内のガス発生量が小さい点で好ましく、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、イソシアネート基を有する有機化合物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、硫黄含有有機化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、シュウ酸塩、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩、並びにF-S結合を有する塩からなる群より選ばれる少なくとも1種がさらに好ましい。
また、抵抗増加を抑制する観点から、シュウ酸塩、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩、及びF-S結合を有する塩から選択される1種以上が好ましく、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩、又はF-S結合を有する塩がより好ましく、F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩がさらに好ましい。
また、ガス発生を抑制する観点から、硫黄含有有機化合物が好ましく、環状スルホン酸エステル、又は環状硫酸エステルが好ましく、環状スルホン酸エステルがより好ましい。
また、ガス発生量と自己放電特性のバランスの観点から、カルボン酸無水物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、イソシアネート基を有する有機化合物、及びフッ素非含有カルボン酸エステルから選択される1種以上が好ましく、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、又はイソシアネート基を有する有機化合物がより好ましい。
本明細書において、「式(I)で表されるアニオンを有する化合物」は、「助剤」には分類されない。したがって、本実施形態の非水系電解液の構成成分として、「式(I)で表されるアニオンを有する化合物」が「助剤」に該当する場合であっても、「助剤」の量には、「式(I)で表されるアニオンを有する化合物」の量は含まれない。
【0052】
(助剤の含有量)
助剤は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。非水系電解液が助剤を含有する場合、助剤の含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液全量に対し、通常1.0×10-3質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常5質量%以下であり、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。助剤の含有量がこの範囲内であれば、電池特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この効果を奏する原理については定かではないが、この比率で助剤を含有することで、電極上での電解液成分の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0053】
(式(I)で表されるアニオンを有する化合物と助剤との質量比)
上記式(I)で表されるアニオンを有する化合物の含有量に対する助剤(2種以上の場合は合計量)の含有量との質量比(助剤[g]/式(I)で表されるアニオンを有する化合物[g])は、通常100/10000以上であり、好ましくは100/500以上、より好ましくは100/300以上、また、通常100/1以下であり、好ましくは100/2以下、より好ましくは100/10以下、更に好ましくは100/20以下である。該質量比がこの範囲であれば、電池特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この原理については定かではないが、この比率で助剤及び(式(I)で表されるアニオンを有する化合物を含有することで、電極上での電解液成分の副反応を最小限に抑えられるためと考えられる。
【0054】
(電解質と助剤との質量比:助剤/LiPF6)
非水系電解液が助剤及びLiPF6を含有する場合において、LiPF6の含有量に対する助剤(2種以上の場合は合計量)の含有量の質量比(助剤[g]/LiPF6[g])は、通常0.00005以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上、特に好ましくは0.025以上、通常0.5以下、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下である。該質量比がこの範囲であれば、電池特性、特に耐久特性を著しく向上させることができる。この効果を奏する原理については定かではないが、この比率で助剤及びLiPF6を含有することで、電池系内でのLiPF6の分解副反応が最小限に抑えられるためと考えられる。
【0055】
[1-5-1.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート]
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」ともいう)としては、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば特に制限されない。本明細書において、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート類;ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート等の芳香環もしくは炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、ビニレンカーボネート類が好ましく、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートがより好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがさらに好ましく、ビニレンカーボネートが特に好ましい。
【0056】
[1-5-2.フッ素含有環状カーボネート]
フッ素含有環状カーボネートは、環状のカーボネート構造を有し、かつフッ素原子を含有するものであれば特に制限されない。
フッ素含有環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物(以下、「フッ素化エチレンカーボネート」と記載する場合がある)、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
フッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート等が挙げられる。
特に、電解液に高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜形成の観点から、フッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネートが好ましく、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネートがより好ましく、モノフルオロエチレンカーボネートがさらに好ましい。
【0057】
[1-5-3.イソシアネート基を有する有機化合物]
イソシアネート基を有する有機化合物としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有する有機化合物であれば、特に制限されない。イソシアネート基の数は、一分子中、好ましくは1以上4以下であり、より好ましくは2又は3であり、さらに好ましくは2である。
イソシアネート基を有する有機化合物としては、例えば、メチルイソシアネート、ビニルイソシアネート、プロパルギルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート等のモノイソシアネート化合物;モノメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、カルボニルジイソシアネート、1,4-ジイソシアナト-2-フルオロブタン等のジイソシアネート化合物;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがより好ましく、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンがさらに好ましい。
【0058】
[1-5-4.イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物]
イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物(以下、「イソシアヌレート化合物」ともいう。)としては、分子内に少なくとも1つイソシアヌル酸骨格を有する有機化合物であれば、特に制限されない。イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられる。
【化12】
【0059】
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、ハロゲン原子を有してもよい、飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基を有するイソシアヌレート化合物が好ましく、末端に炭素-炭素不飽和結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を有するイソシアヌレート化合物がより好ましく、イソシアヌル酸トリアリルがさらに好ましい。
【0060】
[1-5-5.硫黄含有有機化合物]
硫黄含有有機化合物としては、分子内に硫黄原子(S)を少なくとも1つ有している有機化合物であれば、特に制限されない。好ましくはS=O結合を少なくとも1つ有する有機化合物であり、より好ましくは鎖状スルホン酸エステル、環状スルホン酸エステル、鎖状硫酸エステル、環状硫酸エステル、鎖状亜硫酸エステル及び環状亜硫酸エステル等のS=O結合を有するエステル化合物が挙げられる。ただしフルオロスルホン酸塩に該当するものは、「硫黄含有有機化合物」ではなく、後述する「F-S結合を有する塩」に包含されるものとする。
硫黄含有有機化合物としては、具体的には、
フルオロスルホン酸メチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、メタンスルホニルオキシ酢酸メチル、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル、メタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、メタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸メトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸エトキシカルボニルメチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-メトキシカルボニルエチル、1,3-ブタンジスルホン酸1-エトキシカルボニルエチル等のアルキルジスルホン酸エステル等の鎖状スルホン酸エステル;
1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1,5-ペンタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等の環状スルホン酸エステル;
ジメチルスルフェート、エチルメチルスルフェート、ジエチルスルフェート等の鎖状硫酸エステル;
1,2-エチレンスルフェート、1,2-プロピレンスルフェート、1,3-プロピレンスルフェート、1,2-ブチレンスルフェート、等の環状硫酸エステル;
ジメチルスルファイト、エチルメチルスルファイト、ジエチルスルファイト等の鎖状亜硫酸エステル;
1,2-エチレンスルファイト、1,2-プロピレンスルファイト、1,3-プロピレンスルファイト、1,2-ブチレンスルファイト、等の環状亜硫酸エステル;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、鎖状または環状スルホン酸エステル、環状硫酸エステル、もしくは環状亜硫酸エステルがさらに好ましく、環状スルホン酸エステルまたは環状硫酸エステルが特に好ましく、1,3-プロパンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、1,2-エチレンスルフェートが最も好ましい。
【0061】
[1-5-6.フッ素非含有カルボン酸エステル]
フッ素非含有カルボン酸エステルは、分子内にフッ素原子を有さないカルボン酸エステルであれば、特に制限されない。好ましくはフッ素非含有の鎖状カルボン酸エステルであり、より好ましくはフッ素非含有の飽和鎖状カルボン酸エステルである。フッ素非含有の鎖状カルボン酸エステルの総炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、好ましくは7以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは5以下である。
鎖状カルボン酸エステルとしは、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル、ピバル酸n-プロピル、ピバル酸イソプロピル、ピバル酸n-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、2-プロピン酸メチル等が挙げられる。
特に、電池の出力特性向上の観点から酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-プロピルが好ましく、プロピオン酸メチルがより好ましい。
【0062】
[1-5-7.シアノ基を有する有機化合物]
シアノ基を有する有機化合物としては、分子内にシアノ基を少なくとも1つ有する有機化合物であれば、特に制限されない。
シアノ基を有する有機化合物としては、例えば、
プロピオニトリル、ブチロニトリル、ペンタンニトリル、ヘキサンニトリル、デカンニトリル、ウンデカンニトリル、ドデカンニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル等の分子内にシアノ基を1有する有機化合物;
スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、1,4-ジシアノペンタン、1,2-ジジアノベンゼン等の分子内にシアノ基を2有する有機化合物;
1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,2,3-トリス(2-シアノエトキシ)プロパン、1,3,5-シクロヘキサントリカルボニトリル、1,3,5-ベンゼントリカルボニトリル等の分子内にシアノ基を3有する有機化合物;等が挙げられる。
特に安定な界面保護被膜形成の観点からシアノ基を2個有する有機化合物が好ましく、スクシノニトリル、アジポニトリルがより好ましく、アジポニトリルがさらに好ましい。
【0063】
[1-5-8.ケイ素含有化合物]
ケイ素含有化合物としては、分子内に少なくとも1つのケイ素原子を有する化合物であれば、特に制限されない。
ケイ素含有化合物としては、例えば、
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、ホウ酸トリス(トリエチルシリル)、ホウ酸トリス(ジメチルビニルシリル)等のホウ酸化合物;
リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリエチルシリル)、リン酸トリス(トリフェニルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)等のリン酸化合物;
亜リン酸トリス(トリメチルシリル)、亜リン酸トリス(トリエチルシリル)、亜リン酸トリス(トリフェニルシリル)、亜リン酸トリス(トリメトキシシリル)、亜リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)等の亜リン酸化合物;
メタンスルホン酸トリメチルシリル、テトラフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等のスルホン酸化合物;
テトラメチルシラン、トリメチルビニルシラン、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等のシラン化合物;
ヘキサメチルジシラン、ヘキサエチルジシラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、1,2-ジフェニルテトラメチルジシラン等のジシラン化合物;
ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジフェニルジシロキサン等のジシロキサン化合物;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、ジシラン化合物、ジシロキサン化合物が好ましく、ジシロキサン化合物がより好ましく、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンがさらに好ましく、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンが特に好ましい。
【0064】
[1-5-9.カルボン酸無水物]
分子内に少なくとも1つのカルボン酸無水物骨格を有する化合物であれば、特に制限されない。1つのカルボン酸無水物骨格とは、2つのカルボン酸が脱水縮合した際に生じる骨格である。
具体的には無水酢酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、プロピン酸無水物、安息香酸無水物、フルオロ酢酸無水物、4-フルオロ安息香酸無水物、酢酸プロピオン酸無水物、無水琥珀酸、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、4-フルオロ琥珀酸無水物、アリル琥珀酸無水物等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、メタクリル酸無水物、無水琥珀酸、無水マレイン酸、アリル琥珀酸無水物が好ましく、無水琥珀酸がより好ましい。
【0065】
[1-5-10.シュウ酸塩]
本発明で用いるシュウ酸塩としては、分子内にシュウ酸骨格を有する塩であれば特に制限されない。
(カウンターカチオン)
シュウ酸塩のカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属が挙げられ、なかでもリチウムが好ましい。
シュウ酸塩としては、リチウムビスオキサラートボレート、リチウムジフルオロオキサラートボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート、リチウムトリス(オキサラト)ホスフェート等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、リチウムビス(オキサラト)ボレートが好ましい。
【0066】
[1-5-11.F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩]
F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩としては、分子内にF-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩であれば特に制限されない。
(カウンターカチオン)
F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩のカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオンが挙げられ、なかでもリチウムイオンが好ましい。
F-P結合及びP=O結合を有するリン酸塩としては、例えば、Li2PO3F等のモノフルオロリン酸塩;LiPO2F2、NaPO2F2、KPO2F2等のジフルオロリン酸塩;が挙げられる。
特に、電池の出力特性と電極界面保護のバランスの観点から、ジフルオロリン酸塩が好ましく、ジフルオロリン酸リチウムがより好ましい。
【0067】
[1-5-12.F-S結合を有する塩]
F-S結合を有する塩としては、分子内にF-S結合を有する塩であれば特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを用いることができる。
(カウンターカチオン)
F-S結合を有する塩のカウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオンが挙げられ、中でもリチウムイオンが好ましい。
F-S結合を有する塩としては、例えば、FSO3Li、FSO3Na、FSO3K、FSO3(CH3)4N、FSO3(C2H5)4N、FSO3(n-C4H9)4N等のフルオロスルホン酸塩類;LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、等のフルオロスルホニルイミド塩類;LiC(FSO2)3等のフルオロスルホニルメチド塩類;等が挙げられる。
特に、電池の出力特性と電極界面保護のバランスの観点から、フルオロスルホン酸塩が好ましく、フルオロスルホン酸リチウムがより好ましい。
【0068】
[2.非水系電解液二次電池]
本発明の一実施態様である非水系電解液二次電池は、金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極活物質を有する正極と、金属イオンを吸蔵及び放出しうる負極活物質を有する負極とを備える非水系電解液二次電池であって、非水系電解液を備える。非水系電解液二次電池としては、非水系電解液リチウム二次電池が好ましい。
【0069】
[2-1.非水系電解液]
非水系電解液としては、上述の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において上述の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を混合して用いることも可能である。
【0070】
[2-2.正極]
正極は、正極活物質を集電体表面の少なくとも一部に有する。
【0071】
[2-2-1.正極活物質]
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
【0072】
[2-2-1-1.リチウム遷移金属系化合物]
リチウム遷移金属系化合物は、リチウムイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、ケイ酸化合物、ホウ酸化合物、リチウム遷移金属複合酸化物などが挙げられる。なかでも、リン酸塩化合物又はリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。
リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。
スピネル構造を有するリチウム遷移金属系化合物は、一般的に下記組成式(1)で表される。
Lix’M’2O4・・・(1)
(式(1)中、x’は1≦x’≦1.5であり、M’は少なくとも1種の遷移金属元素を表す。)
具体的には、LiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoVO4などが挙げられる。
層状構造を有するリチウム遷移金属系化合物は、一般的に下記組成式(2)で表される。
Li1+xMO2・・・(2)
(組成式(2)中、xは-0.1≦x≦0.5であり、Mは少なくとも1種の遷移金属元素を表す。)
組成式(2)中、Mが少なくともNiを含むことが好ましい。MがNiを含む場合、Ni/Mモル比が0.05以上1.0以下であることが好ましく、0.1以上0.9以下がより好ましく、0.3以上0.8以下がさらに好ましい。
具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、Li1.00Ni0.61Mn0.19Co0.20O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2などが挙げられる。
【0073】
なかでも、電池容量を向上させる観点から、層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、下記組成式(3)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることがより好ましい。
Lia1Nib1Mc1O2・・・(3)
(式(3)中、a1、b1及びc1はそれぞれ、0.90≦a1≦1.10、0.05≦b1≦0.98、0.00≦c1≦0.50を満たす数値であり、b1+c1=1を満たす。MはCo、Mn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(3)中、b1は0.3以上が好ましく、0.45以上がより好ましく、0.55以上が更に好ましく、0.60以上が殊更に好ましく、0.65以上が特に好ましく、0.75以上が最も好ましい。また、c1は0.01以上であることが好ましい。
【0074】
特に、リチウム遷移金属複合酸化物の構造安定性の観点から下記組成式(4)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましい。
Lia2Nib2Coc2Md2O2・・・(4)
(式(4)中、a2、b2、c2及びd2はそれぞれ、0.90≦a2≦1.10、0.05≦b2≦0.98、0.01≦c2<0.50、0.00≦d2<0.50を満たす数値であり、b2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
組成式(4)中、b2は0.3以上が好ましく、0.45以上がより好ましく、0.55以上が更に好ましく、0.60以上が殊更に好ましく、0.65以上が特に好ましく、0.75以上が最も好ましい。また、d2は0.01以上が好ましく、0.10以上がより好ましい。
組成式(4)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物の好適な具体例としては、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.50Co0.20Mn0.30O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、Li1.00Ni0.61Mn0.19Co0.20O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、Li1.05Ni0.34Mn0.33Co0.33O2等が挙げられる。
各組成式中、MはMn又はAlを含むことが好ましく、Mnを含むことがより好ましく、Mn又はAlであることがさらに好ましい。リチウム遷移金属複合酸化物の構造安定性が高まり、繰り返し充放電した際の構造劣化が抑制されるためである。
【0075】
[2-2-1-2.異元素導入]
また、リチウム遷移金属複合酸化物は、上述の組成式に含まれる元素以外の元素(異元素)が導入されてもよい。
【0076】
[2-2-1-3.表面被覆]
上記正極活物質の表面に、正極活物質とは異なる組成の物質(表面付着物質)が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸リチウム等の硫酸塩、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられ、硫酸塩又は炭酸塩が好ましい。特に、組成式(3)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物においてb1が0.45以上であるニッケル含有量が多いリチウム遷移金属複合酸化物と炭酸塩を組み合わせて用いることが好ましい。副反応によるガス発生を好適に抑制できるからである。
表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。
表面付着物質の量は特に限定されないが、該正極活物質に対して、好ましくは1μmol/g以上であり、10μmol/g以上がより好ましく、20μmol/g以上であることが更に好ましく、40μmol/g以上であることが特に好ましく、また、通常1mmol/g以下であり、副反応によるガス発生抑制の観点から、好ましくは、100μmol/g以下で用いられる。
表面付着物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。表面付着物質を2種以上用いる場合は、その合計量が上記範囲であることが好ましい。
なお、上記のリチウム遷移金属系化合物に含まれる炭酸塩の量は、例えば、水抽出イオンクロマトグラフ法により測定することができる。
本明細書においては、正極活物質の表面に、上記表面付着物質が付着したものも「正極活物質」という。
【0077】
[2-2-1-4.ブレンド]
なお、これらの正極活物質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0078】
[2-2-2.正極の構成と製造方法]
以下に、正極の構成と製造方法について述べる。本実施形態において、正極活物質を用いる正極の製造は、常法により行うことができる。即ち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を、水系溶媒又は有機系溶媒等の液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成する塗布法により正極を得ることができる。また、例えば、上述の正極活物質をロール成形してシート電極としてもよいし、圧縮成形によりペレット電極としてもよ
い。
以下、正極集電体に順次スラリーの塗布及び乾燥する場合について説明する。
【0079】
[2-2-2-1.活物質含有量]
正極活物質層中、正極活物質の含有量は、通常80質量%以上、99.5質量%以下である。
【0080】
[2-2-2-2.導電材]
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック等の炭素系材料等が挙げられる。導電材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、50質量%以下含有するように用いられる。
【0081】
[2-2-2-3.結着剤]
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、例えば、塗布法により正極活物質層を形成する場合は、スラリー用の液体媒体に対して溶解又は分散される材料であれば、その種類は特に制限されないが、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等からポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー;等が好ましい。
また、上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体なども使用できる。なお、結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、結着剤として樹脂を用いる場合、その樹脂の重量平均分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1万以上300万以下である。分子量がこの範囲であると電極の強度が向上し、電極の形成を好適に行うことができる。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上80質量%以下である。
【0082】
[2-2-2-4.集電体]
正極集電体の材質としては特に制限されず、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料が挙げられる。中でもアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらのうち、金属箔又は金属薄膜が好ましい。なお、金属薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
正極の集電体の形状が板状や膜状等である場合、該集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上、1mm以下である。
【0083】
[2-2-2-5.正極板の厚さ]
正極(「正極板」ともいう。)の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、正極板の厚さから集電体の厚さを差し引いた正極活物質層の厚さは、集電体の片面に対して通常10μm以上、500μm以下である。
【0084】
[2-2-2-6.電極密度]
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。集電体上に存在している正極活物質層の密度は、通常1.5g/cm3以上、4.5g/cm3以下である。
【0085】
[2-2-2-7.正極板の表面被覆]
また、上記正極板は、その表面に、正極板とは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよく、当該物質としては、正極活物質の表面に付着していてもよい表面付着物質と同じ物質が用いられる。
【0086】
[2-3.負極]
負極は、負極活物質を集電体表面の少なくとも一部に有する。
【0087】
[2-3-1.負極活物質]
負極に使用される負極活物質としては、電気化学的に金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料、リチウム含有金属複合酸化物材料、及びこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でもサイクル特性及び安全性が良好でさらに連続充電特性も優れている点で、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する粒子及びLiと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する粒子と黒鉛粒子との混合物を使用するのが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0088】
[2-3-1-1.炭素系材料]
炭素系材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、炭素被覆黒鉛、黒鉛被覆黒鉛及び樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。なかでも、天然黒鉛が好ましい。炭素系材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛及び/又はこれらの黒鉛に球形化や緻密化等の処理を施した黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性又は充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛粒子が特に好ましい。
黒鉛粒子の平均粒子径(d50)は、通常1μm以上、100μm以下である。
【0089】
[2-3-1-2.炭素系材料の物性]
負極活物質としての炭素系材料は、以下の(1)~(4)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1つを満たしていることが好ましく、複数を同時に満たすことが特に好ましい。
(1)X線回折パラメータ
炭素系材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335nm以上、0.360nm以下である。また、学振法によるX線回折で求めた炭素系材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上である。
(2)体積基準平均粒径
炭素系材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上、100μm以下である。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素系材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上、1.5以下である。
また、炭素系材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm-1以上、100cm-1以下である。
(4)BET比表面積
炭素系材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m2・g-1以上、100m2・g-1以下である。
負極活物質中に性質の異なる炭素系材料が2種以上含有していてもよい。ここでいう性質とは、X線回折パラメータ、体積基準平均粒径、ラマンR値、ラマン半値幅及びBET比表面積を意味する。
好ましい例としては、体積基準粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならないこと、ラマンR値が異なる炭素系材料を2種以上含有していること、及びX線パラメータが異なる炭素系材料を2種以上含有すること等が挙げられる。
【0090】
[2-3-1-3.Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料]
Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料は、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、例えば、Sb、Si、Sn、Al、As、及びZnからなる群より選ばれる金属及び/若しくは半金属元素の単体又はその化合物のであることが好ましい。また、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料が2種類以上の元素を含有する場合、当該材料は、これらの金属の合金からなる合金材料であってもよい。
また、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素の材料としては、酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。これらは、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を2種以上含有していてもよい。
なかでも、金属Si(以下、Siと記載する場合がある)又はSi含有無機化合物が高容量化の点で、好ましい。
また、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素の材料は、後述する負極の製造時で既にLiと合金化されていてもよい。
本明細書では、Si又はSi含有無機化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiOx(0≦x≦2)等が挙げられる。Liと合金化された金属化合物としては、具体的には、LiySi(0<y≦4.4)、Li2zSiO2+z(0<z≦2)等が挙げられる。Si化合物としてSi含有酸化物(SiOx1、0<x1≦2)が、黒鉛と比較して理論容量が大きい点で好ましく、又は非晶質SiもしくはナノサイズのSi結晶が、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能である点で好ましい。
Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料が粒子である場合、その平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、10μm以下である。
【0091】
[2-3-1-4.Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子と黒鉛粒子との混合物]
負極活物質として用いられるLiと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子と黒鉛粒子との混合物は、前述のLiと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子と前述の黒鉛粒子が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合体でもよいし、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子が黒鉛粒子の表面又は内部に存在している複合体でもよい。
Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子の含有割合は、通常1質量%以上、99質量%以下である。
【0092】
[2-3-1-5.リチウム含有金属複合酸化物材料]
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能であれば、特に制限されないが、高電流密度充放電特性の点からチタンを含むリチウム含有金属複合酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する場合がある)がより好ましく、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物が出力抵抗を大きく低減するので特に好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウム及び/又はチタンが、他の金属元素、例えば、Al、Ga、Cu及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。
リチウムチタン複合酸化物として、Li4/3Ti5/3O4、Li1Ti2O4及びLi4/5Ti11/5O4が好ましい。また、リチウム及び/又はチタンの一部が他の元素で置換されたリチウムチタン複合酸化物として、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3O4が好ましい。
【0093】
[2-3-2.負極の構成と製造方法]
負極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、負極活物質に、結着剤、水系溶媒又は有機系溶媒等の液体媒体、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスして負極活物質層を形成することによって作製することができる。
【0094】
[2-3-2-1.活物質含有量]
負極活物質の、負極活物質層中の含有量は、通常80質量%以上、99.5質量%以下である。
【0095】
[2-3-2-2.電極密度]
塗布、乾燥によって得られた負極活物質層は、負極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質層の密度は、通常1g・cm-3以上、2.2g・cm-3以下である。
【0096】
[2-3-2-3.増粘剤]
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限されないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上、5質量%以下である。
【0097】
[2-3-2-4.結着剤]
負極活物質を結着する結着剤としては、非水系電解液や電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、エチレン-プロピレンゴム等のゴム状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等のフッ素系高分子;等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対する結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、20質量%以下である。
特に、結着剤がSBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対する結着剤の割合は、好ましくは0.1質量%以上、5質量%以下である。また、結着剤がポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する結着剤の割合は、好ましは1質量%以上、15質量%以下である。
【0098】
[2-3-2-5.集電体]
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
集電体の形状としては、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。これらのうち、金属箔又は金属薄膜が好ましい。なお、金属箔及び金属薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
負極の集電体の形状が板状や膜状等である場合、該集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上、1mm以下である。
【0099】
[2-3-2-6.負極板の厚さ]
負極(「負極板」ともいう。)の厚さは用いられる正極に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、負極材の厚さから集電体厚さを差し引いた負極活物質層の厚さは、通常15μm以上、300μm以下である。
【0100】
[2-3-2-7.負極板の表面被覆]
また、負極板は、その表面に、負極活物質とは異なる組成の物質が付着したもの(表面付着物質)を用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム等の酸化物、硫酸リチウム等の硫酸塩、炭酸リチウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0101】
[2-4.セパレータ]
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。
【0102】
[2-5.電池設計]
[2-5-1.電極群]
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合は、通常40%以上、90%以下である。
【0103】
[2-5-2.集電構造]
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減する構造も好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0104】
[2-5-3.保護素子]
保護素子として、過大電流等による発熱とともに抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)素子、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0105】
[2-5-4.外装体]
非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではないが、軽量化の観点から、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の金属又はラミネートフィルムが好適に用いられる。
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。
【0106】
[2-5-5.形状]
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【実施例0107】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用した化合物を以下に示す。
【0108】
【0109】
<<合成例A 化合物1,2の合成>>
【0110】
【化14】
50ml二口フラスコ中で亜硫酸ナトリウム(3.983g、31.605mmol)、水(11ml)、2-クロロエチルメチルエーテル(3.0g、31.732mmol)を混合し、110℃で加熱攪拌した。減圧して水と余剰の2-クロロエチルメチルエーテルを除去し、2-メトキシエタンスルホン酸ナトリウムの粗体6.1953gを得た。
50ml二口フラスコ中で2-メトキシエタンスルホン酸ナトリウムの粗体(3.3g)、水(4.0ml)、濃塩酸(4.0ml)を混合し、100℃で1.5時間攪拌した。室温に戻した後、イソプロピルアルコールに希釈して不溶物を濾別し、ろ液の上層を濃縮して2-メトキシエタンスルホン酸の粗体1.3052gを得た。
100ml四口フラスコ中で2-メトキシエタンスルホン酸の粗体(1.3052g)、水酸化リチウム一水和物(312mg)、水(4.0ml)を混合した。混合時の発熱が収まってから減圧して水を除去し、得られた残渣をアセトンに懸濁させた。この懸濁液を加熱還流し、加熱したまま溶液を抜き出した。この溶液からアセトンを減圧留去し、2-メトキシエタンスルホン酸リチウム274mgを得た。
1H-NMR(400MHz,D
2O,3-(トリメチルシリル)-1-プロパンスルホン酸ナトリウムのトリメチル=0.0ppm):δ=3.81(t,J=6.4Hz,2H),3.37(s,3H), 3.18(t,J=6.4Hz,2H)
13C-NMR(101MHz,D
2O,1,4-ジオキサン=67.2ppm):δ=67.7,58.6,50.9
MS(ECI,m/z):139.01(M
-,スルホン酸アニオンの理論値:139.01)
【0111】
<<合成例B 化合物17の合成>>
【0112】
【化15】
200ml四口半の容器に1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタン(6.0g)、亜硫酸リチウム・n水和物(純度60%、10.546g)、エタノール(20ml)、水(45.6ml)を混合し、70℃にて18時間攪拌した。この反応液から減圧下にて水とエタノールを除去した。再度亜硫酸リチウム・n水和物(純度60%、7.532g)、水(50ml)を加えて110℃で3.5時間攪拌した。この反応液を減圧下で濃縮し、析出物が目視できたところで減圧を解除した。このスラリーを静置し、成長した結晶を洗浄して3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジスルホン酸ジリチウム(175mg)を得た。
1H-NMR(400MHz,D
2O,3-(トリメチルシリル)-1-プロパンスルホン酸ナトリウムのトリメチル=0.0ppm):δ=3.88(t,J=6.8Hz,4H),3.70(s,4H), 3.20(t,J=6.8Hz,4H)
13C-NMR(101MHz,D
2O,1,4-ジオキサン=67.2ppm):δ=70.1,66.3,51.0
MS(ECI,m/z):283.01(M
-,スルホン酸アニオンの理論値:283.01)
なお、1,2-ビス(2-クロロエトキシ)エタンに代えて、ビス(2-クロロエチル)エーテルを原料として用いることにより、化合物3を合成することができる。
【0113】
また、本実施例に使用した助剤(化合物7~16)を以下に示す。
化合物7: ジフルオロリン酸リチウム
化合物8: 無水琥珀酸
化合物9: イソシアヌル酸トリアリル
化合物10: 1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
化合物11: プロピオン酸メチル
化合物12: フルオロスルホン酸リチウム
化合物13: リチウムビス(オキサラト)ボレート
化合物14: 1,3-プロパンスルトン
化合物15: メチレンメタンジスルホネート
化合物16: 1,2-エチレンスルフェート
【0114】
<実施例A-1~A-7、比較例A-1~A-4>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(体積比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2mol/L(14.5質量%、非水系電解液中の濃度として)溶解させた非水系電解液を基準として、ビニレンカーボネートを1質量%、更に表1に記載の組み合わせで、化合物1~6,17(式(I)で表されるアニオンを含む化合物に対応)、化合物7~16(助剤)(表中、「添加剤」の項に示す)を溶解させた非水系電解液を調製した。なお、ビニレンカーボネート、表中の添加剤の含有量(質量%)は、各非水系電解液全量を100質量%とした時の含有量である。表には、電解質(LiPF6)の含有量に対する、化合物1~6,17(式(I)で表されるアニオンを含む化合物に対応)の含有量の質量の比((I)/電解質)、電解質(LiPF6)の含有量に対する助剤の含有量の質量の比(助剤/電解質)、化合物1~6,17(式(I)で表されるアニオンを含む化合物に対応)の含有量に対する助剤の含有量の質量の比(助剤/(I))を併せて示す。
【0115】
[正極の作製]
正極活物質としてLi1.00Ni0.61Mn0.19Co0.20O2(Ni/Mモル比=0.61、炭酸塩(Li2CO3)濃度91μmоl/g)を94質量部、導電材としてのアセチレンブラックを3質量部、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を3質量部とを、N-メチル-2-ピロリドン中で混合・スラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔に均一に塗布、乾燥した後、ロールプレスを行い正極とした。なお、正極活物質層の密度は3.4g/cm3であった。
【0116】
[負極の作製]
グラファイト粉末49質量部に、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)50質量部と、バインダーとしてスチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度49質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に均一に塗布して乾燥し、ロールプレスして負極とした。
【0117】
[非水系電解液二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、前述の非水系電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0118】
[非水系電解液二次電池の評価:常温抵抗]
作製した非水系電解液二次電池は、以下の通りに常温抵抗を評価した。
25℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を0.05C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で3.7Vまで定電流充電し、次いで0.2Cで4.25Vの電圧まで定電流-定電圧充電し、その後0.2Cで2.5Vまでの定電流放電を行った。
さらに、4.1Vまで0.2Cで定電流-定電圧充電した後に、60℃で24時間保管することで非水系電解液二次電池を安定させた。その後、25℃にて2.5Vまで定電流放電し、次いで3.7Vの電圧まで0.2Cで定電流-定電圧充電を実施した。これを25℃において各々0.05C、0.1C、0.25C、0.5C、0.75C、1Cで放電させ、10秒経過時点の電圧を各々測定した。この電流-電圧直線より内部抵抗を求め、常温抵抗とした。表1に実施例A-1~A-7、及び比較例A-1~A-4の常温抵抗を示す。
なお、常温抵抗は小さいほど好ましいといえる。
【0119】
【表1】
※表中、「助剤合計」は、化合物7~16及びビニレンカーボネートの合計を意味する。
【0120】
表1から明らかなように、化合物1~3,17を非水系電解液に含む非水系電解液二次電池(実施例A-1~A-5,A-7)は、常温抵抗が、化合物1~3を含有しない場合(比較例A-1)に比べ低減されている。化合物1に加え、さらに、化合物7を含有させた場合においても、常温抵抗がさらに低減されたことがわかる(実施例A-6)。一方、従来技術(特許文献1~3)で開示されているアニオンを含む化合物4~6を含有させた電解液を備える非水系電解液二次電池(比較例A-2~A-4)は、化合物4~6を含有しない場合(比較例A-1)に比べ常温抵抗が同じか大きい傾向にある。
【0121】
<実施例B-1~B-11、比較例B-1~B-4>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合物(体積比3:4:3)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2mol/L(14.5質量%、非水系電解液中の濃度として)溶解させ、ビニレンカーボネートを1質量%溶解させた非水系電解液を基準として、更に表2に記載の組み合わせで、化合物1~6(式(I)で表されるアニオンを含む化合物に対応)、化合物7~16(助剤)(表中、「添加剤」の項に示す)を溶解させた非水系電解液を調製した。表には、電解質(LiPF6)の含有量に対する、化合物1~6(式(I)で表されるアニオンを含む化合物に対応)の含有量の質量の比((I)/電解質)、電解質(LiPF6)の含有量に対する助剤の含有量の質量の比(助剤/電解質)、化合物1~6(式(I)で表されるアニオンを含む化合物の含有量に対応)に対する助剤の含有量の質量の比(助剤/(I))を併せて示す。
【0122】
[正極の作製]
実施例A-1~A-7、比較例A-1~A-4と同様の正極を作製して用いた。
【0123】
[負極の作製]
実施例A-1~A-7、比較例A-1~A-4と同様の負極を作製して用いた。
【0124】
[非水系電解液二次電池の製造]
実施例A-1~A-7、比較例A-1~A-4と同様に非水系電解液二次電池を作製した。
【0125】
[非水系電解液二次電池の評価:自己放電特性、ガス発生量]
作製した非水系電解液二次電池は、以下の通りに自己放電特性及びガス発生量を評価した。
25℃の恒温槽中、シート状の非水系電解液二次電池を0.05C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする。以下同様。)で3.7Vまで定電流充電し、次いで0.2Cで4.25Vの電圧まで定電流-定電圧充電し、その後0.2Cで2.5Vまでの定電流放電を行った。
さらに、4.1Vまで0.2Cで定電流-定電圧充電した後に、60℃で24時間保管することで非水系電解液二次電池を安定させた。その後、25℃にて2.5Vまで定電流放電し、このときの放電容量を初期容量(A)とした。次に、4.25Vの電圧まで0.2Cで定電流-定電圧充電を実施し、85℃、24時間の条件で放置した。その際、放置前後に非水系電解液二次電池を常温の状態でエタノール浴中に浸して体積を測定し、放置中の体積変化を電池の「ガス発生量」とした。
この非水系電解液二次電池を25℃の恒温槽中で、0.2Cで2.5Vまでの定電流放電を行ったときの放電容量を、放置後容量(B)とし、初期容量(A)と放置後容量(B)の差の割合((A-B)/A×100)を「自己放電率」とした。表2に、比較例B-1を100とする相対値で、実施例B-1~B-11、及び比較例B-1~B-4のガス発生量及び自己放電率を示す。
なお、ガス発生量、及び自己放電率は小さいほど好ましいといえる。
【0126】
【表2】
※表中、「助剤合計」は、化合物7~16及びビニレンカーボネートの合計を意味する。
【0127】
表2から明らかなように、式(I)で表されるアニオンを有する化合物である化合物1又は3を非水系電解液に含む非水系電解液二次電池(実施例B-1及びB-2)は、ガス発生量及び自己放電率が、化合物1又は3を含有しない場合(比較例B-1)に比べ低減されている。一方、従来技術(公知文献1~3)で開示されている化合物4~6を含有させた電解液(比較例B-2~B-4)は、化合物4~6を含有しない場合(比較例B-1)に比べ、ガス発生量の抑制が不十分であり、自己放電率がほとんど同じか大きい傾向にある。
また化合物1と、助剤として化合物8~16を併用した場合においては、ガス発生量及び自己放電がさらに抑制されることが分かった(実施例B-3~B-11)。
以上の実験結果に示された通り、式(I)で表されるアニオンを含む化合物を含有する非水系電解液は、非水系電解液二次電池の常温内部抵抗の低減、自己放電の抑制、及び電池内ガス発生の抑制、を併せて達成し得る。